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「ボルドーワイン」の版間の差分

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[[ファイル:Weinbaugebiete-frankreich-bordeaux.png|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Weinbaugebiete-frankreich-bordeaux.png|サムネイル|350x350ピクセル|ボルドー地区の地図。ほぼ全てのアペラシオンが掲載されている。ガロンヌ川とドルトーニュ川、ジロンド河口が各地域を区切る地形として重要である。]]
'''ボルドーワイン'''は、[[フランス]]南西部[[ボルドー]]を中心とした一帯で産出される[[ワイン]]である。
'''ボルドーワイン'''(仏:vin de Bordeaux)は[[フランス]]南西部の都市[[ボルドー]]周辺および[[ガロンヌ川]]沿いに位置するボルドー地区で生産される[[ワイン]]である。ボルドー市街の北では[[ドルドーニュ川|ドルトーニュ川]]がガロンヌ川に合流し、[[ジロンド川|ジロンド]]と呼ばれる広大な[[三角江]]を形成している。[[ジロンド県]]におけるブドウ畑の面積は総計120,000ヘクタールにも達し<ref name="Bordeaux_Figures2">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Data/media/DPCIVBBordeaux2010UK_1EssentialGuide.pdf |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=Synopsis of Bordeaux wines |date=2009 |archive-url=https://web.archive.org/web/20110724111000/http://www.bordeaux.com/Data/media/DPCIVBBordeaux2010UK_1EssentialGuide.pdf |archive-date=2011-07-24 |access-date=2022-08-21}}</ref>、フランスでも最も広いブドウ栽培地域である。


平均的な年では7億本を超えるワインが生産されているが、生産されるワインは大量生産される普段使いのテーブルワインから世界でも最高級の名高いワインに至るまで幅広い。生産量の多くを占めるのは[[赤ワイン]]で、これはイギリスでは「クラレット」と呼ばれることもある。その他、[[ソーテルヌ (ワイン)|ソーテルヌ]]に代表される甘口[[白ワイン]]や、辛口白ワイン、そしてごく少数ながら[[ロゼワイン]]や[[スパークリングワイン]](クレマン・ド・ボルドー)も造られている。8500を超える[[シャトー]](仏:''château、城の意'')と呼ばれる生産者が存在する。ボルドーワインの[[アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ|アペラシオン]]<ref group="注釈">アペラシオンは、アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(仏:Appellation dʼOrigine Contrôlée、AOC)に基づく産地の名称である。AOCは農産物に対して原産地の名称を保護するフランスの法律であり、ワインの場合は生産地域のほか、ブドウ品や収量、アルコール度数などの規定がある。この規定に則ることで、ワインは各産地の名称(アペラシオン)を名乗ることができる。</ref>は60に分かれている<ref name="Bordeaux_Figures2" /><ref name=":0">{{cite web |url=http://www.newbordeaux.com/documents/bordeaux_figures.html |title=Bordeaux In Figures |website=New Bordeaux |access-date=20 July 2012 |url-status=dead |archive-url=https://web.archive.org/web/20120418063824/http://www.newbordeaux.com/documents/bordeaux_figures.html |archive-date=18 April 2012}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.bordeaux-wines.jp/knowledge/appellations/ |title=ボルドーワイン委員会(C.I.V.B)日本公式サイト |access-date=2022-08-21 |publisher=ボルドーワイン委員会}}</ref>。シャトーは醸造所が付随したブドウ園を持つ生産者であり、なかには格付けがなされているシャトーもある<ref>{{Cite book|和書|title=受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2016年版>|date=2016-04-27|publisher=リトルモア|page=53}}</ref>。
==概要==
[[ジロンド県]]全域にわたる地域で「ボルドー」を名乗ることができ、この一帯は世界的に最も有名な[[ワイン]]産地の一つである。ここで産出される赤ワインは、クラレット/クレレ(Claret)とも呼ばれる。また、白ワインについても[[ソーテルヌ]]の甘口な[[貴腐]]ワイン、[[ソーテルヌ (ワイン)|ソーテルヌ・ワイン]]などがその高い品質で知られる。


== 歴史 ==
ボルドー産の赤ワインに使用されるブドウは、[[カベルネ・ソーヴィニヨン]]、[[カベルネ・フラン]]、[[メルロー]]といった品種が中心で、適度な酸味と甘みが溶け合い、その繊細な味わいから「ワインの女王」と称されている。ボルドーでもサンテミリオン地区で生産される赤ワインにはメルローの使用割合が多くなり、また違った味わいを持っている。
[[ファイル:France_12thC.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:France_12thC.jpg|右|サムネイル|アキテーヌがプランタジネット朝の支配下にあった時代のフランスの州が描かれた地図。ボルドー(Bordeaux)の記載が見える。]]
ボルドーにワインが持ち込まれたのは[[ローマ帝国]]によるもので、おそらくは1世紀半ばの出来事である。その頃は当地で消費されるワインが造られていたが、それ以来、ボルドーでのワイン生産は連綿と続いている<ref name="Johnson_atlas2">{{cite book|author1=Johnson, Hugh|author2=Robinson, Jancis|title=The World Atlas of Wine|edition=7th|date=2013-10-08|publisher=Mitchell Beazley|isbn=978-1845336899|pages=13, 81}}</ref>。


12世紀には[[ヘンリー2世 (イングランド王)|ヘンリー2世]]と[[アリエノール・ダキテーヌ]]の結婚をきっかけに、ボルドーワインの人気が[[イングランド]]において急騰した<ref name="Bordeaux.com2">{{cite web |title=Vins de Bordeaux (US) |date=2016 |url=https://www.bordeaux.com/us/Our-know-how/History |format=Official site |url-status=live |archive-url=https://web.archive.org/web/20170614124154/http://www.bordeaux.com/us/Our-know-how/History |archive-date=2017-06-14 |access-date=2022-08-21}}</ref>。この結婚によりアキテーヌ地域圏はアンジュ―帝国の一部となり、それ以来ボルドーワインはイングランドに輸出されるようになったのである<ref name="Bordeaux.com2" />。そのころの主要なワイン産地は[[グラーヴワイン|グラーヴ]]であり、クレレと呼ばれるスタイルが一般的であった。なお、現代においてもクラレットという語はイギリスでよく目にするが、これはこの時代の名残であり、実際には特にクレレのスタイルのことを指しているわけではなく、単に赤ワインのことを指す語として使われている。ボルドーワインの輸出は1337年にフランスとイングランドの間で勃発した百年戦争により停滞した<ref name="Bordeaux.com2" />。1453年に戦争が終結すると、フランスはこの地域を取り戻し、ボルドーにおけるワイン生産の実権を握った<ref name="Bordeaux.com2" />。[[古い同盟]]に基づき、[[スコットランド]]の商人にはクラレットの取引に関する特権が認められていたが、この地位は{{仮リンク|エディンバラ条約|en|Treaty of Edinburgh}}によってフランス・スコットランド間の軍事同盟が解消されたのちも大部分は継続された<ref name="BBC.co.uk2">{{cite web |title=BBC |date=2014-09-09 |url=https://www.bbc.co.uk/history/scottishhistory/europe/features_europe_auldalliance.shtml |access-date=2022-08-21}}</ref>。カトリックであるフランスに対する[[ユグノー]]の反乱が[[ラ・ロシェル包囲戦|ラ・ロシェル]]で発生すると、イングランドとスコットランドはともにスチュアート朝の支配を受けるプロテスタントの国家であるため、ユグノーへの軍事的な支援を試みていた。そのような事態にもかかわらず、スコットランドの交易船はジロンドへの入港を認められていただけでなく、ユグノーの私掠船から守るためにフランス海軍による港での警護まで受けていた。
一方、白ワインでは[[ソーヴィニヨン・ブラン]]といった品種が多く使用される。しかし、ソーテルヌ地区で生産される甘口の貴腐ワインには[[セミヨン]]が使用される。


17世紀には[[オランダ]]の貿易商が[[メドック]]の湿地帯を干拓したことでブドウ栽培が可能になり、やがてはグラ―ヴを上回りボルドーのなかでも最も高名なワイン産地となった。この地域では19世紀までは[[マルベック]]が主要なブドウ品種であったが、19世紀初頭からは[[カベルネ・ソーヴィニヨン|カベルネソーヴィニヨン]]にとってかわられた<ref name="Johnson_atlas2" />。
ボルドーでは、古くから品質にしたがって[[ボルドーワインの格付け|ワインの格付け]]が行われており、特に[[1855年]]のメドック地区における赤ワインの格付けが有名である。


1855年には初めて[[ボルドーワインの格付け]]が行われたが、この格付けは今でも広く受け入れられている。1875年から1892年の間にはボルドーは[[ブドウネアブラムシ|フィロキセラ]]禍にみまわれ、ほぼ全てのブドウ畑が打撃を受けた([[19世紀フランスのフィロキセラ禍]])<ref name="Bordeaux.com2" />。この対策としてフィロキセラ耐性のあるアメリカ系ブドウの台木を用い元々あった品種を接ぎ木して栽培する技術が見いだされ、ワイン産業は回復した<ref name="Bordeaux.com2" />。
==メドックの第1級格付けワイン==
[[ファイル:Vignoble de Pauillac.jpg|thumb|upright=1.2|[[ポーイヤック]] (Pauillac)はボルドーワインの1つ。[[メドック]]に6つある村名[[アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ|AOC]]のひとつで、町内には、メドックの5つある1級格付け[[シャトー]]のうちの3つがある。]]
メドック地区での格付けは、第1級から第5級までに分類されており、今なおワインの市場価格に影響力を持っている。なお第1級に格付けされているワインは、次の5銘柄である。<ref>オー・ブリオンはメドック地区ではなく、グラーヴ地区であるが例外的に入っている</ref>
;[[シャトー・ラフィット・ロートシルト]](Ch.Lafite Rothschild)
:ポイヤック村産。ロートシルトとは、大財閥である[[ロスチャイルド家]]のこと。セカンドラベルは、カリュアード・ドゥ・ラフィット。
;[[シャトー・マルゴー]](Ch.Margaux)
:マルゴー村産。文豪[[アーネスト・ヘミングウェイ|ヘミングウェイ]]は、孫娘にこのワインの名前を名づけた。セカンドは、パヴィヨン・ルージュ・デュ・シャトー・マルゴー。白ワインは、パヴィヨン・ブラン・デュ・シャトー・マルゴー。
;[[シャトー・ラトゥール]](Ch.Latour)
:ポイヤック村産。ラトゥールとは、塔のこと。塔の名前は、トゥール・ド・サン・ランベール。セカンドは、レ・フォール・ドゥ・ラトゥール。
;[[シャトー・オー・ブリオン]](Ch.Haut Brion)
:グラーブ地区のペサック村産。元々グラーブ地区は辛口白ワインの産地でも知られていたが、現在では赤ワインのシャトーの方が多い。セカンドは、ル・クラランス・ド・オー・ブリオン(2006年まではシャトー・バアン・オー・ブリオン)。
;[[シャトー・ムートン・ロートシルト]](Ch.Mouton Rothschild)
:ポイヤック村産。ラベルの絵は、[[パブロ・ピカソ|ピカソ]]や[[マルク・シャガール|シャガール]]など毎年異なる[[画家]]により描かれる。日本人では[[堂本尚郎]](1979)・[[Setsuko]]([[バルテュス]]夫人[[出田節子]])(1991)が描いている。[[1855年]]では2級に格付けされていたが[[1973年]]に1級に昇格した。セカンドは、ル・プティ・ムートン・ドゥ・ムートン・ロートシルト(1993年まではスゴン・ヴァン・ムートン・ロートシルトの名でリリースされていた。)


== 気候と地質 ==
==ボルドーのその他の有名なワイン==
[[ファイル:Cars,_Gironde.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Cars,_Gironde.jpg|右|サムネイル|ボルドー右岸に位置するブライのブドウ畑]]
===赤ワイン===
[[ファイル:Vignoble_de_Pauillac.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Vignoble_de_Pauillac.jpg|サムネイル|ボルドー左岸に位置するポイヤックのブドウ畑]]
;シャトー・コス・デストゥルネル(Ch.Cos d'Estournel)
ボルドーにおけるワイン産業の成功の主要因として、ブドウ栽培に極めて好適な自然環境が挙げられる。この地域の基礎地質は[[石灰岩]]であり、[[カルシウム]]が豊富な土壌構造を形成している。ジロンド河口は支川であるガロンヌ川とドルトーニュ川とともにこの地域の環境に多大な影響を与えている。すなわち、この地に水を供給するとともに、[[海洋性気候]]である大西洋気候をもたらしている<ref name="MacNeil pp 118,1202">{{cite book|author=MacNeil, Karen|title=The Wine Bible|pages=118, 120|publisher=Workman Publishing|date=2001-10-20|isbn=978-0761185727}}</ref>。ドルトーニュ川とガロンヌ川が合流し、ジロンド川に注ぐ地点を中心にボルドーは広がっているのである<ref name="Wine_Month2">{{cite web |url=https://www.winemonthclub.com/france-wine-region-guide |title=French Wine Regions |website=International Wine of the Month Club |access-date=2018-06-28 |language=en-US}}</ref>。
:サンテステフ産。メドック第2級。
;シャトー・カロン・セギュール(Ch.Calon-Segur)
:サンテステフ産。メドック第3級。ラベルのハートマークで知られる。
;シャトー・ピション・ロングヴィル・コンテス・ドゥ・ラランド(Ch.Pichon Longueville Comtesse de Lalande)
:ポイヤック産。メドック第2級。
;シャトー・レオヴィル・ラス・カーズ(Ch.Leoville Las Cases)
:サン・ジュリアン産。メドック第2級。
;[[シャトー・ペトリュス]](Ch.Petrus)
:[[ポムロール]]産。ボルドーで最も高い価格で取引されるワインの一つ。
;シャトー・トロタノワ(Ch.Trotanoy)
:[[ポムロール]]産。ペトリュスに次いで高い評価を得ている。
;シャトー・ル・パン(Ch.Le Pin)
:[[ポムロール]]産。ペトリュスとほぼ同額で取引されている。
;[[シャトー・オーゾンヌ]](Ch.Ausone)
:サンテミリオン産。サンテミリオン特別1級A。
;[[シャトー・シュヴァル・ブラン]](Ch.Cheval-Blanc)
:サンテミリオン産。サンテミリオン特別1級A。カベルネ・フランの使用率が高い。
;シャトー・フィジャック(Ch.Figeac)
:サンテミリオン産。サンテミリオン特別1級B。


ボルドーのワイン生産地域は、これらの川によっていくつかの地域に区切られている。
===白ワイン===
;[[シャトー・ディケム]](Ch.d'Yquem)
:ソーテルヌ産の貴腐ワインで、特に高級品として扱われる。


* '''右岸'''は北部のドルトーニュ川右岸、[[リブルヌ]]周辺に広がる地域を指す。粘土質の土壌が多く、これは[[メルロー]]に適している<ref name=":10">{{Cite web|和書|url=https://www.enoteca.co.jp/article/archives/934/ |title=ボルドーワインの基礎知識!右岸と左岸の違い |access-date=2022-08-21 |publisher=ENOTECAonline}}</ref>。
==ボルドーの主なAOC==
* '''アントル・ドゥー・メール'''(仏:Entre-Deux-Mers)はフランス語で「2つの海の間」という意味であり、ドルトーニュ川とガロンヌ川にはさまれた地域である。どちらの川も干満の影響を受ける。ボルドーの中央に位置する。
===メドック地区===
* '''左岸'''はガロンヌ川左岸に位置し、ボルドーの西部と北部が含まれる。ボルドー市街の周辺に位置する。土壌は砂利質であることが多く、[[カベルネ・ソーヴィニヨン]]の栽培に向く<ref name=":10" />。左岸はさらに細かい地域に分かれており、
* [[サンテステフAOC]](Saint Estéphe)
** グラーヴはボルドー市街よりも上流側に位置する。
* [[ポイヤック]](Pauillac)
** メドックはボルドー市街よりも下流側の、ジロンド側と大西洋に挟まれた半島に位置する。
* [[サン=ジュリアンAOC]](Saint Julien)
* [[マルゴーAOC]](Margaux)
* [[ムリス]]
* [[リストラック=メドックAOC]]
* オー・メドック(Haut Médoc)
* [[メドック・ワイン|メドック]](Médoc)


ボルドーにおいては、ワイン生産に[[テロワール]]を主軸に据えた考え方をとることがある。そのため、トップレベルの造り手ではブドウが採れた場所の特色を反映したテロワール優先のワイン造りを意図し、単一の畑で収穫されたブドウでワインが造られることも多い<ref name="MacNeil pp 118,1202" />。ボルドーの土壌は[[砂利]]、[[砂岩]]、[[粘土]]からなる。ブドウ畑として最も優れているのは水はけの良い砂利質の土壌の土地であり、ジロンド川の近くに多い。古くからボルドーでは、優れた畑からは「川が見える」と言い伝えられている。川沿いの土地の大部分は格付けシャトーが占めている<ref name="MacNeil pp 118,1202" />。
===グラーヴ地区===
* [[ペサック・レオニャン]](Péssac Léognan)
* [[グラーヴワイン|グラーヴ]](Grave)
===ソーテルヌ地区===
* [[ソーテルヌ (ワイン)|ソーテルヌ]](Sauternes)
* [[ソーテルヌ (ワイン)|バルサック]](Barsac)


== ブドウ ==
===ドルドーニュ川右岸地区===
[[ファイル:Cabernet_Sauvignon_grapes_from_Château_Cos_D'Estournel.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Cabernet_Sauvignon_grapes_from_Ch%C3%A2teau_Cos_D'Estournel.jpg|左|サムネイル|メドックで栽培されているカベルネ・ソーヴィニヨン]]
* [[サン=テミリオンAOC|サン=テミリオン]](Saint Emilion)
[[ファイル:Semillon_grapes_at_Château_Doisy-Védrines,_Barsac,_Sauternes.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Semillon_grapes_at_Ch%C3%A2teau_Doisy-V%C3%A9drines,_Barsac,_Sauternes.jpg|左|サムネイル|[[バルサック|バルザック]]で栽培されているセミヨン]]
* [[リュサック・サンテミリオン]] (Lussac-Saint-Emillion)
* [[モンターニュ (ジロンド県)|モンターニュ・サンテミリオン]] (Montagne-Saint-Emillion)
* [[モンターニュ (ジロンド県)|サンジョルジュ・サンテミリオン]] (Saint-George-Saint-Emillion)
* [[ピュイスガン・サンテミリオン]] Puisseguin-Saint-Emmilion)
* [[ポムロールAOC|ポムロール]] Pomerol
* [[ラランド・ド・ポムロール]] Lalande-de-Pomerol
* [[フロンサックAOC]]
* [[カノン・フロンサック]]
* [[コート・ド・カスティヨン]]
* [[ボルドー・コート・ド・フラン]]


===ジロンド川河口===
=== 赤ワイ用ブ===
ボルドーの赤ワインでは、通常複数のブドウ品種をブレンドして造られる。使用が許可されているのはカベルネ・ソーヴィニヨン、[[カベルネ・フラン]]、メルロー、[[プティ・ヴェルド]]、[[マルベック]]および稀にしか使われない[[カルメネール]]である<ref name="Brook_36-742">{{cite book|last=Brook|first=Stephen|title=The Complete Bordeaux: The Wines The Châteaux The People|edition=revised|date=2012-11-07|place=London|publisher=Mitchell Beazley|asin=B00E8V3G76|pages=36–74|url=https://www.amazon.com/Complete-Bordeaux-Wines-Ch%C3%A2teaux-People/dp/B00E8V3G76}}</ref>。カルメネールは、格付け5級のシャトー・クレール・ミロンがいまだに使っているなど僅かな例があるほかは滅多に使われていない。2019年6月に行われた決定により、この地域の温暖化を懸念してさらに4つのブドウ品種の使用が2021年ヴィンテージから認められることになった。新たに許可されたのはマルサラン、トゥーリガ・ナシオナル、カステ、アリナルノアであり<ref name=":02">{{Cite web |url=https://www.wine-searcher.com/m/2019/07/new-grapes-approved-for-bordeaux |title=New Grapes Approved for Bordeaux |date=2019-07-02 |author=Gray, W. Blake |website=Wine-Searcher |language=en-US |archive-url=https://web.archive.org/web/20190807031649/https://www.wine-searcher.com/m/2019/07/new-grapes-approved-for-bordeaux |archive-date=2019-08-07 |url-status=live |access-date=2019-07-20}}</ref>、これらの追加品種は最大10%と少量を補助的に用いることしかできない<ref name=":11">{{Cite web|和書|url=http://www.worldfinewines.com/news19/190616newvarietiesinbdx.html |title=ボルドー、AOCで複数の新品種を認定へー温暖化の影響で |access-date=2022-09-03 |publisher=ワールドファインワインズ}}</ref>。
* [[ブライAOC]]
* [[ブール村|ブール]]
===中州地区===
* [[アントル・ドゥー・メール]](Entre-Deux-Mers)
* [[プルミエール・コート・ド・ボルドー]]
* [[コート・ド・ボルドー・サン・マケール]]
* [[サント・クロワ・デュ・モン]]
* [[ルーピヤック]]
* [[カディヤック]]
* [[サント・フォワ・ボルドー]]
*[[グラーヴ・ド・ヴェール]]


カベルネ・ソーヴィニヨンはボルドーで2番目に多く植えられている品種であるが、一般論としてメドックやその他ジロンド川左岸の地域で造られる赤ワインでは中心的な品種として使われる。典型的には、トップレベルのシャトーではカベルネソーヴィニヨンが70%ほど、カベルネ・フランとメルローがそれぞれ15%ほど使われることが多い。このようなブレンドを「ボルドーブレンド」と呼ぶことがある。サン=テミリオンやポムロールなど右岸のアペラシオンではメルローが優勢であり、メルローが70%ほど、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランがそれぞれ15%ほど使われるのが典型的である<ref name="Clarke pg 1292">{{cite book|title=Grapes and Wines:Encyclopedia of Grapes|author1=Clarke, Oz|author2=Rand, Margaret|page=129|publisher=Time Warner Books|location=United Kingdom|date=2001-09-30|isbn=978-0316857260}}</ref>。
===県全域===
* [[ボルドーAOC]]
* [[ボルドー・シュペリュール]]


=== 白ワイン用ブドウ ===
== 5大シャトー等の分類について ==
白ワイン用のブドウ品種としては、[[セミヨン]]、[[ソーヴィニヨン・ブラン]]、[[ミュスカデル]]が主に用いられ、とくに甘口のソーテルヌの場合はもっぱらこれらの品種が使われる。赤ワイン同様、ブレンドされていることが一般的である。典型的にはセミヨンが80%、ソーヴィニヨン・ブランが20%ほどで、セミヨンが多めに使われ、 ソーヴィニヨン・ブランはそれより少ないことが多い。その他、ソーヴィニヨン・グリ、[[ユニ・ブラン]]、[[コロンバール]]、メルロー・ブラン、オンダンク、モーザックの使用が許可されている。2019年6月には[[アルバリーニョ]]、プティ・マンサン、リリオリラの3品種が追加されたが<ref name=":02" />、赤ワイン用追加品種と同じく補助的な使用に制限されており、2021年ヴィンテージから認可される<ref name=":11" />。
シャトー・ラフィット・ロートシルト、シャトー・マルゴー、シャトー・ラトゥール、シャトー・オー・ブリオン、シャトー・ムートン・ロートシルトの5つは、世界最高峰のボルドーワインとして5大シャトー(海外では元々の意味のメドックの第1級格付け(First Growths (Premiers Crus)))と呼称され、認知されている<ref>{{Cite web|title=ボルドーワインの最高峰!五大シャトーとは? {{!}} エノテカ - ワインの読み物|url=https://www.enoteca.co.jp/article/archives/3532/|website=www.enoteca.co.jp|date=2018-08-27|accessdate=2020-09-15|language=ja|last=エノテカ編集部}}</ref>。


世界中のワイナリーでボルドースタイルのワインが造られている。1988年では[[アメリカ合衆国|アメリカ]]の生産者グループがメリタージュ協会(''The Meritage Association'')を組織し、このスタイルのワインを定義した。メリタージュワインは多くが[[カリフォルニア州|カリフォルニア]]で造られていているが、協会にはアメリカの18の州および[[アルゼンチン]]、[[オーストラリア]]、[[カナダ]]・[[イスラエル]]・[[メキシコ]]の5ヶ国の生産者も加盟している。
ワイン愛好家の間では、上記の5大シャトーに匹敵ないし超える値段や味わいを持つ銘柄を加えた分類がある。5大シャトーにシャトー・オーゾンヌ、シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・ディケムの3つを加えた8大シャトー、さらにシャトー・ペトリュス、シャトー・ル・パンを加えた9大シャトーないし10大シャトーという分類がある。


== ブドウ栽培と醸造 ==
ワイン雑誌等ではボルドー左岸の10大シャトーとして、5大シャトーに加え、シャトー・ディケム、シャトー・ラ・ミッション・オー・ブリオン、シャトー・ラヴィル・オー・ブリオン、シャトー・クリマンス、シャトー・モンローズを加えた分類がある<ref>{{Cite web|title=ワイナート 2008年5月号 第44号|美術出版社|url=https://www.bijutsu.press/books/2674/|website=ワイナート 2008年5月号 第44号|美術出版社|date=2008-04-05|accessdate=2020-09-15}}</ref>。
[[ファイル:Merlot_grapes_being_sorted_at_Chateau_Kirwan.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Merlot_grapes_being_sorted_at_Chateau_Kirwan.jpg|サムネイル|シャトー・キルヴァンでメルローが選別される様子]]


=== ブドウ栽培 ===
これらの分類については当然、明確な規定があるものではないことに留意しなければならない。
ボルドーでの赤ワイン用ブドウの栽培面積は、メルロー(62%)、カベルネソーヴィニヨン(25%)、カベルネ・フラン(12%)およびプティ・ヴェルド、マルベック、カルメネールが少量(計1%)である。白ワイン用ブドウではセミヨン(54%)、ソーヴィニヨン・ブラン(36%)、ミュスカデル(7%)のほか、ユニ・ブラン、コロンバール、フォル・ブラン(計3%)がわずかに栽培されている<ref name="Bordeaux_Figures2" />。ボルドーは湿度の高い気候であるため、ウドンコ病やベト病といった病害の被害を受けやすい。薬剤の散布による対策を行うことが一般的ではあるが、多くの生産者が減農薬農法(リュット・レゾネ)を採用しているほか、有機農法に取り組む生産者もいる<ref>{{Cite book|和書|title=FINEST WINE ボルドー|date=2011-10-20|publisher=ガイアブックス|pages=33-34|author=ジェイムス・ローサー|translator=山本博}}</ref>。ブドウの樹は通常ギヨ・サンプル(仏:''Guyot Simple'')ないしはギヨ・ドゥーブル(仏:''Guyot Double'')と呼ばれる垣根仕立てにされる。多くの名門シャトーでは手摘みで収穫を行うが、それ以外では収穫機がよく使われる<ref name="Brook_36-742" />。

=== 醸造 ===
収穫後のブドウは通常、選別・除梗を行った後に破砕される。破砕は伝統的には足で踏んで行うが、現在ではほぼ完全に破砕機に置き換わっている。[[補糖]]が許可されており、いまやありふれた工程である。次いで発酵が行われるが、通常はステンレスタンクで温度を管理して行われる。その後、圧搾を行い、得られたワインは多くはバリックと呼ばれる樽に移されて熟成される。樽熟成は1年程度であることが一般的である。ボルドーにおける伝統的なバリックは225リットルの[[オーク]]製である。圧搾から瓶詰めまでのどこかのタイミングでブレンドが行われる。ボルドーでは単一品種ワインはほとんどないため、ブレンドは必須の工程であるといえる。すなわち、[[ヴィンテージ]]の状況をみながら異なるブドウ品種をブレンドすることで、各々のシャトーが望むスタイルのワインを造り上げるのである。品種の差異以外にも、ブドウ畑の区画によって別々に熟成を行うこともあり、生産者の判断によって[[セカンドラベル|セカンドワイン]]への格下げを行ったり、卸売りに回すこともある。最終的にワインは瓶詰めされ、売り出されるまでさらに熟成される<ref name="Brook_36-742" />。

== ワインのスタイル ==
[[ファイル:Pichon01.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Pichon01.jpg|サムネイル|シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン。在[[ポーイヤック|ポイヤック]]]]
[[ファイル:Château_d'Yquem.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Ch%C3%A2teau_d'Yquem.jpg|サムネイル|シャトー・ディケム。在[[ソーテルヌ]]]]
[[ファイル:Château_Cheval-Blanc.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Ch%C3%A2teau_Cheval-Blanc.jpg|サムネイル|シャトー・シュヴァル・ブラン。在[[サン=テミリオン]]]]
[[ファイル:Petrus01-2.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Petrus01-2.jpg|サムネイル|シャトー・ペトリュス。在[[ポムロール]]]]
ボルドーで栽培されるブドウは、2014年において赤ワイン用が89%に対し白ワイン用が11%であり、赤ワインの生産が圧倒的に多い<ref>{{Cite book|和書|title=受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2016年版>|date=2016-04-27|publisher=リトルモア|page=52}}</ref>。ボルドーのワイン産地は、[[サン=テミリオンAOC|サン=テミリオン]]、[[ポムロールAOC|ポムロール]]、[[メドックAOC|メドック]]、[[グラーヴワイン|グラーヴ]]などの区域に分かれている。60あるボルドーのアペラシオンと、そこで作られるワインのスタイルは通常6つに大別される。赤ワインは生産する地域により4つに分けられ、白ワインは甘さで2つに分けられる<ref name="CIVB prod2">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?culture=en-US&country=OTHERS |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=The 60 Appellations |archive-url=https://web.archive.org/web/20090430144559/http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?culture=en-US&country=OTHERS |archive-date=2009-04-30 |format=read on May 28, 2010 |access-date=2022-08-21}}</ref>。以下、AOCは[[アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ|アペラシオン]]を指す。

* ボルドー、およびボルドー・シュペリュールの赤ワイン。この2つはボルドーのワイン産地全域に広がるアペラシオンであり、ボルドーのブドウ畑のおよそ半分がボルドーAOCないしはボルドー・シュペリュールAOCに指定されている。アントル・ドゥー・メールにあるシャトーで作られるワインは[[メルロー]]種主体であることが一般的であり、その他のボルドー系品種とブレンドされることも多い。家族経営のごく小規模なシャトーも多いが、ワイン商を通じて商業的なブランド名のもとにブレンドされ販売されるワインもある。ボルドーAOCはフルーティーでオーク樽の風味は控えめな傾向があり、若いうちに飲まれることを想定している。ボルドー・シュペリュールAOCも同じ地域で作られるが、低収量にするなど[[ムスト]]はより厳しい管理を受け、オーク樽での熟成を行うことが多い。過去10年にわたり、生産者による活発かつ継続的な投資が畑と醸造設備の両方に対して行われてきたことで、ワインの品質は向上してきた。2008年にはボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン生産者組合によりアペラシオンの変更がなされた。67%はフランス国内で消費され、33%は輸出されている。1秒ごとに14本が消費されているとの試算がある<ref name="CIVB prod2" /><ref name="autogenerated12">Bordeaux & Bordeaux Supérieur Press Kit, 2011, CIVB Economie et Etudes Nov 16, 2010.</ref>。ボルドーにおけるワイン生産の50%を占める<ref>{{Cite web |url=https://www.bordeaux.com/gb/Our-Terroir/Bordeaux-and-Bordeaux-Superieur |title=BORDEAUX AND BORDEAUX SUPÉRIEUR |access-date=2022-10-01 |publisher=CIVB}}</ref>。
* コート・ド・ボルドーの赤ワイン。周辺的な丘陵地に位置する8つのアペラシオンが属する。造られるワインはメルロー主体であることが多い。スタイルと品質の両面で、通常のボルドーの赤ワインと右岸や左岸のより名の通ったアペラシオンの中間的なワインを産出する。もっとも、コート・ド・ボルドーには傑出した知名度のシャトーがあるわけではないので、価格帯はそれほど高くない。コート・ド・ボルドーには公的な格付けが存在しない<ref name=":1">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabCotesBordeaux&culture=en-US&country=OTHERS#TabMenu |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=The 60 Appellations – Côtes de Bordeaux |archive-url=https://web.archive.org/web/20090430151059/http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabCotesBordeaux&culture=en-US&country=OTHERS |archive-date=2009-04-30 |format=read on May 28, 2010 |access-date=2022-08-21}}</ref>。ボルドーにおけるワイン生産の14%を占める<ref name="CIVB prod2" />。
* リブルヌないしは右岸の赤ワイン。[[リブルヌ]]周辺の10のアペラシオンではメルロー主体のワインが造られ、カベルネ・ソーヴィニヨンは僅かしか使われない。なかでもサン=テミリオンとポムロールの知名度は高い。ワインは果実味豊かでタンニンは柔らかく、長期熟成に耐えるものが多い。サン=テミリオンには公式の格付けが存在する<ref name=":2">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabLibournais&culture=en-US&country=OTHERS#TabMenu |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=The 60 Appellations – Saint-Emilion, Pomerol, Fronsac |archive-url=https://web.archive.org/web/20090430144940/http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabLibournais&culture=en-US&country=OTHERS |archive-date=2009-04-30 |format=read on May 28, 2010 |access-date=2022-08-21}}</ref>。ボルドーにおけるワイン生産の10%を占める<ref name="CIVB prod2" />。
* グラーヴおよびメドック、もしくは左岸の赤ワイン。ボルドー市街の南北に広がる伝統的な地域であり、カベルネ・ソーヴィニヨンが主体のワインが造られるが、メルローが重要視される場合もある。凝縮感がありタンニンが強く、長期熟成に耐えるワインが造られており、ほとんどは熟成を経てから飲まれることを想定している。いわゆる5大シャトーはこの地域に存在する。メドック・グラーヴともに公式の格付けが存在する<ref name=":3">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabMedocsGraves&culture=en-US&country=OTHERS#TabMenu |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=The 60 Appellations – Médoc and Graves |archive-url=https://web.archive.org/web/20090430144016/http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabMedocsGraves&culture=en-US&country=OTHERS |archive-date=2009-04-30 |format=read on May 28, 2010 |access-date=2022-08-21}}</ref>。ボルドーにおけるワイン生産の15%を占める<ref name="CIVB prod2" />。
* 辛口白ワイン。ボルドー全域で造られ、アペラシオンはボルドー・ブランAOCである。ソーヴィニヨン・ブラン100%か、もしくはソーヴィニヨン・ブランとセミヨン主体のブレンドであることが一般的である。グラーヴの辛口白ワインは特に有名であり、辛口白ワインとしては唯一格付けが存在する地域でもある。高品質なワインにはオーク樽の香りがあるものが多い<ref name=":4">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabVinsBlancSec&culture=en-US&country=OTHERS#TabMenu |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=The 60 Appellations – Dry white wines |archive-url=https://web.archive.org/web/20090430145241/http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabVinsBlancSec&culture=en-US&country=OTHERS |archive-date=2009-04-30 |format=read on May 28, 2010 |access-date=2022-08-21}}</ref>。ボルドーにおけるワイン生産の8%を占める<ref name="CIVB prod2" />。
* 甘口白ワイン。いくつかのアペラシオンで、[[貴腐]]化したセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルから甘口白ワインが造られる。もっともよく知られているのがソーテルヌであり、公的な格付けも存在するが、これは世界でも最も著名な甘口ワインのひとつに数えられる。ソーテルヌ地区はガロンヌ川支流の[[シロン川]]によってソーテルヌとバルサックに分かれているが、このシロン川の影響で霧が発生しやすく、貴腐化しやすい気象条件となっている<ref>{{Cite book|和書|title=受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2016年版>|date=2016-04-27|publisher=リトルモア|page=56}}</ref>。ソーテルヌに隣接するガロンヌ川対岸のアペラシオンであるルピアック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モンでも同様のワインが造られる。ボルドー全域における甘口ワインのアペラシオンはボルドー・シュペリュール・ブランAOCである<ref name=":5">{{cite web |url=http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabVinsBlancOr&culture=en-US&country=OTHERS#TabMenu |website=Vins de Bordeaux (CIVB) |title=The 60 Appellations – Dry white wines |archive-url=https://web.archive.org/web/20090430145219/http://www.bordeaux.com/Tout-Vins/Les-Appellations.aspx?SelectedTabMenu=tabVinsBlancOr&culture=en-US&country=OTHERS |archive-date=2009-04-30 |format=read on May 28, 2010 |access-date=2022-08-21}}</ref>。ボルドーにおけるワイン生産の3%を占めるが<ref name="CIVB prod2" />、[[貴腐菌]]が付着するかどうかは気象条件に大きく依存するため、生産量は年により差が大きい<ref>{{Cite book|和書|title=ワインの女王 ボルドー ―クラシック・ワインの真髄を探る|date=2005-07-21|publisher=早川書房|page=315}}</ref>。
ボルドーは、同じくフランスの著名な赤ワインを産地である[[ブルゴーニュワイン|ブルゴーニュ]]と比較されることがある。産出されるワインの性質も対照的である。ブルゴーニュの赤ワインが明るい色合いを持ち、酸味を強く感じられる優雅で軽やかな味わいであるのに対し、ボルドーの赤ワインはより深い色調で、渋みをもたらす[[タンニン]]が豊富な重厚な味わいとなる。豊富なタンニンのため長期熟成にも向いている<ref>{{Cite book|和書|title=ワインの女王 ボルドー ―クラシック・ワインの真髄を探る|year=2005-07-21|publisher=早川書房|pages=10-13}}</ref>。生産量はボルドーが大きく上回り、ブルゴーニュの5倍程度である<ref>{{Cite book|和書|title=ボルドーvs.ブルゴーニュ―せめぎあう情熱|date=2007-09-01|publisher=日本評論社|pages=175-179|translator=大友竜|author=ジャン‐ロベール・ピット}}</ref>。

== 格付け ==
{{Main|ボルドーワインの格付け|}}ボルドーワインには、地域によっては公式に定められた格付けが存在する<ref name=":12" />。

* 1855年のボルドーワインに対する格付け。メドックの赤ワイン(例外のシャトーが1つだけ存在する<ref group="注釈">グラーヴに存在するシャトー・オー・ブリオンが例外的に1級に格付けされている。シャトー・オー・ブリオンはグラーヴの格付けにも含まれる。</ref>)とソーテルヌ、バルサックの甘口ワインが対象とされた。
* サン=テミリオンの格付け。サン=テミリオンの赤ワインが対象とされている。およそ10年に1度、格付けの見直しが行われる<ref name=":12">{{Cite web|和書|url=https://www.bordeaux-wines.jp/knowledge/bordeaux-wine-classification.html |title=ボルドーの格付けを学ぶ |access-date=2022-09-23 |publisher=ボルドーワイン委員会}}</ref>。
* グラーヴの格付け。1959年にグラーヴのワインを対象として制定された。はじめ1953年にに行われたが、1959年に改定があった。赤ワイン、白ワインの各々に対して格付けされている<ref>{{Cite book|和書|title=受験のプロに教わるソムリエ対策講座 ワイン地図帳付き<2016年度版>|date=2016-04-27|publisher=リトルモア|pages=64-65}}</ref>。格付けは赤・白ともに1段階であり、赤ワインのみ格付けされたシャトーが7つ、白ワインのみが3つ、赤・白ともに格付けされているのが6つである<ref>{{Cite book|和書|title=受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座 ワイン地図帳付き<2016年版>|date=2016-04-27|publisher=リトルモア|pages=64-65}}</ref>。
* クリュ・ブルジョワ。メドック地区<ref group="注釈">メドック、オー・メドック、リストラック、ムーリ、マルゴー、サン・ジュリアン、ポイヤック、サン・テステフの8つのアペラシオン</ref>で生産された赤ワインに対する格付けである<ref name=":13">{{Cite web|和書|url=https://www.enoteca.co.jp/article/archives/6069/ |title=安くて美味しいボルドーワインの証「クリュ・ブルジョワ」とは? |access-date=2022-08-17 |publisher=エノテカ編集部}}</ref>。クリュ・ブルジョワは非公式の格付けとして1932年に444のシャトーが選定されたのが始まりである。2003年に公的に認められ、247のシャトーがクリュ・ブルジョワに格付けされた。しかし、格付けに漏れた生産者が審査の公平性に不満を持ち訴訟が起こされたことで関連する法令が無効となり、格付けも取り消された<ref name=":13" /><ref>{{Cite web|和書|url=https://www.visi-vin.com/articles/2020-02-23.html |title=メドックのクリュ・ブルジョワ 新たな格付けとして再登場 |access-date=2022-09-23 |publisher=visi-vin}}</ref>。2010年9月には新たにクリュ・ブルジョワの品質認証が行われるようになったが、これは非公式の格付けである。認証は毎年更新される。その後、2018年ヴィンテージからはクリュ・ブルジョワ・エクセプショネル、クリュ・ブルジョワ・シュペリュール、クリュ・ブルジョワの3通りの認証がなされることに決まった<ref name=":13" />。
* クリュ・アルティザン。[[欧州連合|EU]]が1994年に認定した、メドック地区の栽培面積6ha以下の小規模なシャトーを対象にした格付けである。2006年に44のシャトーが登録された<ref name=":12" />。

ポムロールには公的な格付けは存在しない。もっとも、[[シャトー・ペトリュス]]やシャトー・ル・パンといった高名なワインは1855年の格付けの1級と同格視されることもあり、それらより高値が付くことも珍しくない<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.dragee.co.jp/fs/dragee/c/gr288 |title=ポムロルのワイン |access-date=2022-09-23 |publisher=ワインショップ ドラジエ}}</ref>。

=== 1855年のボルドーワインに対する格付け ===
1855年の格付けは[[ナポレオン3世]]が[[パリ万国博覧会 (1855年)|パリ万博]]のために作らせたものである。メドック地区の赤ワインに対する格付けでは、当時の価格に基づいて5段階に格付けしたものが、僅かな例外を除き現代にまで続いている<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.enoteca.co.jp/article/archives/11483/ |title=日本で一番詳しい「1855年メドック格付け」の裏側 |access-date=2022-09-23 |publisher=ENOTECA online}}</ref><ref>{{Cite book|和書|title=FINE WINEシリーズ ボルドー|date=2011-10-20|publisher=ガイアブックス|pages=46-47|author=ジェイムズ・ローサー|translator=山本博}}</ref><ref group="注釈">翌1856年にシャトー・カントメルルが5級に加わったこと、1973年にシャトー・ムートン・ロートシルトが2級から1級に昇格したことが例外である。その他、シャトーの分裂・吸収・改名による変化が起きている。</ref>。
[[ファイル:Margaux_exterior.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Margaux_exterior.jpg|右|サムネイル|シャトー・マルゴー。格付け1級のシャトーである。]]
以下に示す格付け1級のシャトーは、4つがメドック産、1つがグラーヴ産である(括弧内はアペラシオン)。

* [[シャトー・ラフィット・ロートシルト]](ポイヤック)
* [[シャトー・マルゴー]](マルゴー)
* [[シャトー・ラトゥール]](ポイヤック)
* [[シャトー・オー・ブリオン]](ペサック・レオニャン)、グラーヴ産
* [[シャトー・ムートン・ロートシルト]](ポイヤック)、1973年に2級から1級に昇格した。

その他、1級から5級までを合わせて61のシャトーが格付けされている<ref name=":14">{{Cite book|和書|title=受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座 ワン地図帳付き<2016年版>|date=2016-04-27|publisher=リトルモア|pages=59-64}}</ref>。

同時に、ソーテルヌとバルサックの甘口ワインについても3段階に格付けが行われ、27のシャトーが選定された。唯一[[シャトー・ディケム]]だけが最高位である特別1級に格付けされている<ref name=":14" />。

=== サン=テミリオンの格付け ===
1955年のサン=テミリオンの格付けは3段階に分かれている。最高位であるプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAには当時以下の2つのシャトーが存在していた<ref name="OCW Classification2">{{cite book|editor=Robinson, Jancis|title=The Oxford Companion to Wine|edition=3rd|pages=175–177, 212–216|publisher=Oxford University Press|date=2006-10-01|isbn=0-19-860990-6}}</ref>。

* シャトー・オーゾンヌ
* [[シャトー・シュヴァル・ブラン]]

2012年の格付けで、さらに2つがプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに追加された。

* シャトー・アンジェリュス
* シャトー・パヴィ

2022年には格付け見直しが行われる予定だが、格付け最高位のシャトー・オーゾンヌ、シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・アンジェリュスを含む複数のシャトーが格付けからの脱退を表明している。これは、審査基準のなかにワインの品質と無関係な項目があること、審査者とシャトーの間に利害関係があることなどに対する不満の表れである<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.winomy.jp/blog/column/34213/ |title=Winomy, サン=テミリオンの格付け辞退 |access-date=2022-08-17 |publisher=阪急百貨店}}</ref><ref>{{Cite web|和書|url=https://firadis.net/news/news-no-0064/ |title=Ch. Angelus サン=テミリオン格付け離脱へ |access-date=2022-09-23 |publisher=Firadis}}</ref>。

== ラベル ==
[[ファイル:Saint-Emilion_Chateau_l'angelus_1978.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Saint-Emilion_Chateau_l'angelus_1978.jpg|サムネイル|1978年のシャトー・アンジェリュス]]
ボルドーワインのラベルには、通常以下の事項が記載されている<ref>{{cite news|author=Sanderson, B|title=A Master Class in Cabernet|page=62|website=Wine Spectator|date=May 15, 2007}}</ref>。

# シャトーやブランドの名前(右図では ''Château L'Angelus'')
# 格付け(右図では ''Grand Cru Classé'')
# アペラシオン(右図では ''Saint-Émilion'')。AOCの規定によれば、ラベルに特定のアペラシオンを記載するためには、そのアペラシオンで収穫されたブドウをだけを使う必要がある。アペラシオンはワインのスタイルを左右する重要な要因である。右図では、アペラシオンがサン=テミリオンであるため、赤ワインであることが分かり、主要品種はメルローであろうと推測できる。
# シャトーで瓶詰めされたか、ネゴシアン(ワイン商)によるものかの区別(右図では ''Mis en Bouteille au Château、シャトー元詰めの意'')
# ヴィンテージ(右図では ''1978'')
# アルコール度数(右図の写真には見られない)

== クラレット ==
[[ファイル:Claret,_English_silver_bottle_ticket,_by_Sandylands_Drinkwater,_circa_1740_or_1750.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Claret,_English_silver_bottle_ticket,_by_Sandylands_Drinkwater,_circa_1740_or_1750.jpg|左|サムネイル|クラレットと書かれたイギリスのボトルチケット。Sandylands Drinkwater製。]]
'''クラレット'''(英:''claret'')とは、ボルドーの赤ワインを指して通常イギリスで使われる語である。

フランス語のクレレ(仏:''clairet'')に由来するが<ref name="OCW-Claret2">{{cite book|title=Oxford Companion to Wine|chapter=Clairet|format=Clairet|edition=3rd|url=https://www.oxfordreference.com/view/10.1093/acref/9780198609902.001.0001/acref-9780198609902-e-0746?rskey=LVKPKc&result=746|publisher=Oxford University Press|date=2014|isbn=9780198609902}}</ref>、これは今日ではあまり一般的ではなくなった濃い色のロゼワインを指す。18世紀まではボルドーから最も盛んに輸出されていたワインであった。アキテーヌ地域圏がアンジュー帝国の一部であった頃と、その後の継続してイギリス王室の影響下にあった12世紀から15世紀の間、イングランドではクレレを大量に消費しており、そのため英語化してクラレットと呼ばれるようになったのである。300年以上にわたってイギリスのワイン貿易業でこの名称が使われてきたことを鑑み、現在ではクラレットという語はボルドーの赤ワインを指す名称としてはEUに保護されている<ref name="OCW-Claret2" />。

クラレットという名称は、アメリカにおいてもボルドースタイルのワイン、すなわちボルドーで使用が許可されている品種のブドウで造るワインを示す語として、セミ・ジェネリックワイン<ref group="注釈">セミ・ジェネリックワインは、アメリカにおいて他国の有名産地の名前をラベルに記載したワインである。2006年にEUとアメリカの間で結ばれた協定により、それ以降は新規の販売は禁じられている。</ref>に時おり用いられる。フランスで輸出向け以外でこの語が使われることはない。クラレットの持つ意味合いは徐々に変化してきており、現在では辛口で深い赤色のボルドーワインを指す<ref name="OCW-Claret2" />。今でもイギリス上流階級を想起させる語であるため、市場におけるステータスを向上させるため、ボルドーの赤ワインのラベルに記載されることがある。2011年11月に、''Union des Maisons de Négoce de Bordeauxの''長官はクラレットという語の意味を「軽くフルーティーで飲みやすい、数世紀前にイギリスで称賛されていた元々のクラレットと同じスタイルのワイン」とする旨の声明を発表した<ref name=":6">{{cite web |last=Anson |first=Jane |url=http://www.decanter.com/news/wine-news/529481/bordeaux-reclaims-claret-name |title=Bordeaux reclaims 'claret' name |publisher=Decanter |date=2011-11-03 |access-date=2012-10-23}}</ref>。クラレットはボルドーワインの色のような、深く紫がかった赤をあらわす色名としても用いられることがある。イギリスやオーストラリアでは血を意味する[[スラング]]としても使われる<ref name=":7">{{cite web |url=https://www.lexico.com/en/definition/claret |title=Definition of claret in English |author=<!--Not stated--> |website=Lexico (Oxford Dictionaries) |access-date=28 July 2019}}</ref>。

== 流通・販売 ==
[[ファイル:Lynch_Bages_1970;_Leoville-Las-Cases_1970_in_decanters.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Lynch_Bages_1970;_Leoville-Las-Cases_1970_in_decanters.jpg|右|サムネイル|ボルドーの赤ワイン]]
[[ファイル:Rothschild_white_Bordeaux.jpg|リンク=https://en-two.iwiki.icu/wiki/File:Rothschild_white_Bordeaux.jpg|サムネイル|292x292ピクセル|ボルドーの辛口白ワイン]]
ボルドーワインのなかでも著名なものの多くは、あらかじめ支払いを済ませた後に売り渡される。これはプリムールと呼ばれる。ボルドーワインは、長命である、生産量が非常に多い、評価が確立しているといった特徴があるため、オークションに出品されるワインのなかでも多数を占める。

2009年2月に公表された市場調査によれば、最高級ワインの価格は下落傾向にあるにもかかわらず、市場規模は購買力ベースで128%に拡大した<ref name=":8">Ghatineh, Aarash, WineInvestment.org</ref>。

ボルドーワインの流通に関与する業者として、仲買人('''クルティエ'''、仏:''courtier'')とワイン商('''ネゴシアン'''、仏:''négociant'')が挙げられる。仲買人はワイン生産者とワイン商の仲介業務のみを行い、手数料を徴収する。ワイン商は生産者が瓶詰めまで行ったワインを買い付けて輸出販売を行うほか、ブドウや[[ムスト]](若いワイン)を買い付けて自ら醸造したり、樽やタンクで買い付けたワインをブレンドして自身のブランド名で販売することもある<ref name=":9">{{Cite journal|author=二宮麻里、タチアナ・ボージン=シャミーバ|year=2012|title=ボルドーワインの生販分業型流通システムと販売問題|journal=福岡大学商学論叢|volume=56|issue=4|pages=377-396|ISSN=0285-2780}}</ref>。

特に20世紀半ばまでは、ワインの販売はワイン商がほぼ独占していた。というのも、長期の樽熟成期間を要するボルドーワインでは常に在庫を抱える必要があるため、ワイン生産者では運転資金を負担できず、資金力のある商人に頼る必要があったのである。また、ワイン商は熟成時の品質管理やブレンドなどのノウハウを蓄積していくこととなり、ワインの品質向上にも寄与した<ref name=":9" />。プリムール取引が一般化した現在においても、ワイン商を介したワインの取引は生産者・買付業者の双方にとって効率的であるといえる<ref name=":9" />。

ボルドーには42のワイン醸造共同組合と6の醸造協同組合連合が存在し、生産者の43%がいずれかに所属している。これらの組合は、共同の醸造設備で醸造・ボトリングを行い、組合によるブランド名で販売するほか、所属する生産者に対して経営支援・技術指導を行うことが多い<ref name=":9" />。


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Wines_of_Bordeaux}}
*[[フランスワイン]]
*[[AOCワインの一覧]]
*[[シャトー]]
*[[イングリッド・バーグマン]] - ボルドーワインで一般的に用いられる「肩幅の広い」ボトルを「バーグマン型」と呼ぶことがある。


* [[フランスワイン]]
== 脚注 ==
* [[ブルゴーニュワイン]]
<references/>
* [[カヌレ]]

== 参考文献 ==
<references group="" responsive="1"></references>


== 注釈 ==
{{Normdaten}}
<references group="注釈" />
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{{Good article}}
[[Category:フランスワイン|*ほると]]
[[Category:フランスワイン|*ほると]]
[[Category:ボルドーワイン|*]]
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2024年3月6日 (水) 13:56時点における最新版

ボルドー地区の地図。ほぼ全てのアペラシオンが掲載されている。ガロンヌ川とドルトーニュ川、ジロンド河口が各地域を区切る地形として重要である。

ボルドーワイン(仏:vin de Bordeaux)はフランス南西部の都市ボルドー周辺およびガロンヌ川沿いに位置するボルドー地区で生産されるワインである。ボルドー市街の北ではドルトーニュ川がガロンヌ川に合流し、ジロンドと呼ばれる広大な三角江を形成している。ジロンド県におけるブドウ畑の面積は総計120,000ヘクタールにも達し[1]、フランスでも最も広いブドウ栽培地域である。

平均的な年では7億本を超えるワインが生産されているが、生産されるワインは大量生産される普段使いのテーブルワインから世界でも最高級の名高いワインに至るまで幅広い。生産量の多くを占めるのは赤ワインで、これはイギリスでは「クラレット」と呼ばれることもある。その他、ソーテルヌに代表される甘口白ワインや、辛口白ワイン、そしてごく少数ながらロゼワインスパークリングワイン(クレマン・ド・ボルドー)も造られている。8500を超えるシャトー(仏:château、城の意)と呼ばれる生産者が存在する。ボルドーワインのアペラシオン[注釈 1]は60に分かれている[1][2][3]。シャトーは醸造所が付随したブドウ園を持つ生産者であり、なかには格付けがなされているシャトーもある[4]

歴史

[編集]
アキテーヌがプランタジネット朝の支配下にあった時代のフランスの州が描かれた地図。ボルドー(Bordeaux)の記載が見える。

ボルドーにワインが持ち込まれたのはローマ帝国によるもので、おそらくは1世紀半ばの出来事である。その頃は当地で消費されるワインが造られていたが、それ以来、ボルドーでのワイン生産は連綿と続いている[5]

12世紀にはヘンリー2世アリエノール・ダキテーヌの結婚をきっかけに、ボルドーワインの人気がイングランドにおいて急騰した[6]。この結婚によりアキテーヌ地域圏はアンジュ―帝国の一部となり、それ以来ボルドーワインはイングランドに輸出されるようになったのである[6]。そのころの主要なワイン産地はグラーヴであり、クレレと呼ばれるスタイルが一般的であった。なお、現代においてもクラレットという語はイギリスでよく目にするが、これはこの時代の名残であり、実際には特にクレレのスタイルのことを指しているわけではなく、単に赤ワインのことを指す語として使われている。ボルドーワインの輸出は1337年にフランスとイングランドの間で勃発した百年戦争により停滞した[6]。1453年に戦争が終結すると、フランスはこの地域を取り戻し、ボルドーにおけるワイン生産の実権を握った[6]古い同盟に基づき、スコットランドの商人にはクラレットの取引に関する特権が認められていたが、この地位はエディンバラ条約英語版によってフランス・スコットランド間の軍事同盟が解消されたのちも大部分は継続された[7]。カトリックであるフランスに対するユグノーの反乱がラ・ロシェルで発生すると、イングランドとスコットランドはともにスチュアート朝の支配を受けるプロテスタントの国家であるため、ユグノーへの軍事的な支援を試みていた。そのような事態にもかかわらず、スコットランドの交易船はジロンドへの入港を認められていただけでなく、ユグノーの私掠船から守るためにフランス海軍による港での警護まで受けていた。

17世紀にはオランダの貿易商がメドックの湿地帯を干拓したことでブドウ栽培が可能になり、やがてはグラ―ヴを上回りボルドーのなかでも最も高名なワイン産地となった。この地域では19世紀まではマルベックが主要なブドウ品種であったが、19世紀初頭からはカベルネソーヴィニヨンにとってかわられた[5]

1855年には初めてボルドーワインの格付けが行われたが、この格付けは今でも広く受け入れられている。1875年から1892年の間にはボルドーはフィロキセラ禍にみまわれ、ほぼ全てのブドウ畑が打撃を受けた(19世紀フランスのフィロキセラ禍[6]。この対策としてフィロキセラ耐性のあるアメリカ系ブドウの台木を用い元々あった品種を接ぎ木して栽培する技術が見いだされ、ワイン産業は回復した[6]

気候と地質

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ボルドー右岸に位置するブライのブドウ畑
ボルドー左岸に位置するポイヤックのブドウ畑

ボルドーにおけるワイン産業の成功の主要因として、ブドウ栽培に極めて好適な自然環境が挙げられる。この地域の基礎地質は石灰岩であり、カルシウムが豊富な土壌構造を形成している。ジロンド河口は支川であるガロンヌ川とドルトーニュ川とともにこの地域の環境に多大な影響を与えている。すなわち、この地に水を供給するとともに、海洋性気候である大西洋気候をもたらしている[8]。ドルトーニュ川とガロンヌ川が合流し、ジロンド川に注ぐ地点を中心にボルドーは広がっているのである[9]

ボルドーのワイン生産地域は、これらの川によっていくつかの地域に区切られている。

  • 右岸は北部のドルトーニュ川右岸、リブルヌ周辺に広がる地域を指す。粘土質の土壌が多く、これはメルローに適している[10]
  • アントル・ドゥー・メール(仏:Entre-Deux-Mers)はフランス語で「2つの海の間」という意味であり、ドルトーニュ川とガロンヌ川にはさまれた地域である。どちらの川も干満の影響を受ける。ボルドーの中央に位置する。
  • 左岸はガロンヌ川左岸に位置し、ボルドーの西部と北部が含まれる。ボルドー市街の周辺に位置する。土壌は砂利質であることが多く、カベルネ・ソーヴィニヨンの栽培に向く[10]。左岸はさらに細かい地域に分かれており、
    • グラーヴはボルドー市街よりも上流側に位置する。
    • メドックはボルドー市街よりも下流側の、ジロンド側と大西洋に挟まれた半島に位置する。

ボルドーにおいては、ワイン生産にテロワールを主軸に据えた考え方をとることがある。そのため、トップレベルの造り手ではブドウが採れた場所の特色を反映したテロワール優先のワイン造りを意図し、単一の畑で収穫されたブドウでワインが造られることも多い[8]。ボルドーの土壌は砂利砂岩粘土からなる。ブドウ畑として最も優れているのは水はけの良い砂利質の土壌の土地であり、ジロンド川の近くに多い。古くからボルドーでは、優れた畑からは「川が見える」と言い伝えられている。川沿いの土地の大部分は格付けシャトーが占めている[8]

ブドウ

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メドックで栽培されているカベルネ・ソーヴィニヨン
バルザックで栽培されているセミヨン

赤ワイン用ブドウ

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ボルドーの赤ワインでは、通常複数のブドウ品種をブレンドして造られる。使用が許可されているのはカベルネ・ソーヴィニヨン、カベルネ・フラン、メルロー、プティ・ヴェルドマルベックおよび稀にしか使われないカルメネールである[11]。カルメネールは、格付け5級のシャトー・クレール・ミロンがいまだに使っているなど僅かな例があるほかは滅多に使われていない。2019年6月に行われた決定により、この地域の温暖化を懸念してさらに4つのブドウ品種の使用が2021年ヴィンテージから認められることになった。新たに許可されたのはマルサラン、トゥーリガ・ナシオナル、カステ、アリナルノアであり[12]、これらの追加品種は最大10%と少量を補助的に用いることしかできない[13]

カベルネ・ソーヴィニヨンはボルドーで2番目に多く植えられている品種であるが、一般論としてメドックやその他ジロンド川左岸の地域で造られる赤ワインでは中心的な品種として使われる。典型的には、トップレベルのシャトーではカベルネソーヴィニヨンが70%ほど、カベルネ・フランとメルローがそれぞれ15%ほど使われることが多い。このようなブレンドを「ボルドーブレンド」と呼ぶことがある。サン=テミリオンやポムロールなど右岸のアペラシオンではメルローが優勢であり、メルローが70%ほど、カベルネ・ソーヴィニヨンとカベルネ・フランがそれぞれ15%ほど使われるのが典型的である[14]

白ワイン用ブドウ

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白ワイン用のブドウ品種としては、セミヨンソーヴィニヨン・ブランミュスカデルが主に用いられ、とくに甘口のソーテルヌの場合はもっぱらこれらの品種が使われる。赤ワイン同様、ブレンドされていることが一般的である。典型的にはセミヨンが80%、ソーヴィニヨン・ブランが20%ほどで、セミヨンが多めに使われ、 ソーヴィニヨン・ブランはそれより少ないことが多い。その他、ソーヴィニヨン・グリ、ユニ・ブランコロンバール、メルロー・ブラン、オンダンク、モーザックの使用が許可されている。2019年6月にはアルバリーニョ、プティ・マンサン、リリオリラの3品種が追加されたが[12]、赤ワイン用追加品種と同じく補助的な使用に制限されており、2021年ヴィンテージから認可される[13]

世界中のワイナリーでボルドースタイルのワインが造られている。1988年ではアメリカの生産者グループがメリタージュ協会(The Meritage Association)を組織し、このスタイルのワインを定義した。メリタージュワインは多くがカリフォルニアで造られていているが、協会にはアメリカの18の州およびアルゼンチンオーストラリアカナダイスラエルメキシコの5ヶ国の生産者も加盟している。

ブドウ栽培と醸造

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シャトー・キルヴァンでメルローが選別される様子

ブドウ栽培

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ボルドーでの赤ワイン用ブドウの栽培面積は、メルロー(62%)、カベルネソーヴィニヨン(25%)、カベルネ・フラン(12%)およびプティ・ヴェルド、マルベック、カルメネールが少量(計1%)である。白ワイン用ブドウではセミヨン(54%)、ソーヴィニヨン・ブラン(36%)、ミュスカデル(7%)のほか、ユニ・ブラン、コロンバール、フォル・ブラン(計3%)がわずかに栽培されている[1]。ボルドーは湿度の高い気候であるため、ウドンコ病やベト病といった病害の被害を受けやすい。薬剤の散布による対策を行うことが一般的ではあるが、多くの生産者が減農薬農法(リュット・レゾネ)を採用しているほか、有機農法に取り組む生産者もいる[15]。ブドウの樹は通常ギヨ・サンプル(仏:Guyot Simple)ないしはギヨ・ドゥーブル(仏:Guyot Double)と呼ばれる垣根仕立てにされる。多くの名門シャトーでは手摘みで収穫を行うが、それ以外では収穫機がよく使われる[11]

醸造

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収穫後のブドウは通常、選別・除梗を行った後に破砕される。破砕は伝統的には足で踏んで行うが、現在ではほぼ完全に破砕機に置き換わっている。補糖が許可されており、いまやありふれた工程である。次いで発酵が行われるが、通常はステンレスタンクで温度を管理して行われる。その後、圧搾を行い、得られたワインは多くはバリックと呼ばれる樽に移されて熟成される。樽熟成は1年程度であることが一般的である。ボルドーにおける伝統的なバリックは225リットルのオーク製である。圧搾から瓶詰めまでのどこかのタイミングでブレンドが行われる。ボルドーでは単一品種ワインはほとんどないため、ブレンドは必須の工程であるといえる。すなわち、ヴィンテージの状況をみながら異なるブドウ品種をブレンドすることで、各々のシャトーが望むスタイルのワインを造り上げるのである。品種の差異以外にも、ブドウ畑の区画によって別々に熟成を行うこともあり、生産者の判断によってセカンドワインへの格下げを行ったり、卸売りに回すこともある。最終的にワインは瓶詰めされ、売り出されるまでさらに熟成される[11]

ワインのスタイル

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シャトー・ピション・ロングヴィル・バロン。在ポイヤック
シャトー・ディケム。在ソーテルヌ
シャトー・シュヴァル・ブラン。在サン=テミリオン
シャトー・ペトリュス。在ポムロール

ボルドーで栽培されるブドウは、2014年において赤ワイン用が89%に対し白ワイン用が11%であり、赤ワインの生産が圧倒的に多い[16]。ボルドーのワイン産地は、サン=テミリオンポムロールメドックグラーヴなどの区域に分かれている。60あるボルドーのアペラシオンと、そこで作られるワインのスタイルは通常6つに大別される。赤ワインは生産する地域により4つに分けられ、白ワインは甘さで2つに分けられる[17]。以下、AOCはアペラシオンを指す。

  • ボルドー、およびボルドー・シュペリュールの赤ワイン。この2つはボルドーのワイン産地全域に広がるアペラシオンであり、ボルドーのブドウ畑のおよそ半分がボルドーAOCないしはボルドー・シュペリュールAOCに指定されている。アントル・ドゥー・メールにあるシャトーで作られるワインはメルロー種主体であることが一般的であり、その他のボルドー系品種とブレンドされることも多い。家族経営のごく小規模なシャトーも多いが、ワイン商を通じて商業的なブランド名のもとにブレンドされ販売されるワインもある。ボルドーAOCはフルーティーでオーク樽の風味は控えめな傾向があり、若いうちに飲まれることを想定している。ボルドー・シュペリュールAOCも同じ地域で作られるが、低収量にするなどムストはより厳しい管理を受け、オーク樽での熟成を行うことが多い。過去10年にわたり、生産者による活発かつ継続的な投資が畑と醸造設備の両方に対して行われてきたことで、ワインの品質は向上してきた。2008年にはボルドー&ボルドー・シュペリュールワイン生産者組合によりアペラシオンの変更がなされた。67%はフランス国内で消費され、33%は輸出されている。1秒ごとに14本が消費されているとの試算がある[17][18]。ボルドーにおけるワイン生産の50%を占める[19]
  • コート・ド・ボルドーの赤ワイン。周辺的な丘陵地に位置する8つのアペラシオンが属する。造られるワインはメルロー主体であることが多い。スタイルと品質の両面で、通常のボルドーの赤ワインと右岸や左岸のより名の通ったアペラシオンの中間的なワインを産出する。もっとも、コート・ド・ボルドーには傑出した知名度のシャトーがあるわけではないので、価格帯はそれほど高くない。コート・ド・ボルドーには公的な格付けが存在しない[20]。ボルドーにおけるワイン生産の14%を占める[17]
  • リブルヌないしは右岸の赤ワイン。リブルヌ周辺の10のアペラシオンではメルロー主体のワインが造られ、カベルネ・ソーヴィニヨンは僅かしか使われない。なかでもサン=テミリオンとポムロールの知名度は高い。ワインは果実味豊かでタンニンは柔らかく、長期熟成に耐えるものが多い。サン=テミリオンには公式の格付けが存在する[21]。ボルドーにおけるワイン生産の10%を占める[17]
  • グラーヴおよびメドック、もしくは左岸の赤ワイン。ボルドー市街の南北に広がる伝統的な地域であり、カベルネ・ソーヴィニヨンが主体のワインが造られるが、メルローが重要視される場合もある。凝縮感がありタンニンが強く、長期熟成に耐えるワインが造られており、ほとんどは熟成を経てから飲まれることを想定している。いわゆる5大シャトーはこの地域に存在する。メドック・グラーヴともに公式の格付けが存在する[22]。ボルドーにおけるワイン生産の15%を占める[17]
  • 辛口白ワイン。ボルドー全域で造られ、アペラシオンはボルドー・ブランAOCである。ソーヴィニヨン・ブラン100%か、もしくはソーヴィニヨン・ブランとセミヨン主体のブレンドであることが一般的である。グラーヴの辛口白ワインは特に有名であり、辛口白ワインとしては唯一格付けが存在する地域でもある。高品質なワインにはオーク樽の香りがあるものが多い[23]。ボルドーにおけるワイン生産の8%を占める[17]
  • 甘口白ワイン。いくつかのアペラシオンで、貴腐化したセミヨン、ソーヴィニヨン・ブラン、ミュスカデルから甘口白ワインが造られる。もっともよく知られているのがソーテルヌであり、公的な格付けも存在するが、これは世界でも最も著名な甘口ワインのひとつに数えられる。ソーテルヌ地区はガロンヌ川支流のシロン川によってソーテルヌとバルサックに分かれているが、このシロン川の影響で霧が発生しやすく、貴腐化しやすい気象条件となっている[24]。ソーテルヌに隣接するガロンヌ川対岸のアペラシオンであるルピアック、カディヤック、サント・クロワ・デュ・モンでも同様のワインが造られる。ボルドー全域における甘口ワインのアペラシオンはボルドー・シュペリュール・ブランAOCである[25]。ボルドーにおけるワイン生産の3%を占めるが[17]貴腐菌が付着するかどうかは気象条件に大きく依存するため、生産量は年により差が大きい[26]

ボルドーは、同じくフランスの著名な赤ワインを産地であるブルゴーニュと比較されることがある。産出されるワインの性質も対照的である。ブルゴーニュの赤ワインが明るい色合いを持ち、酸味を強く感じられる優雅で軽やかな味わいであるのに対し、ボルドーの赤ワインはより深い色調で、渋みをもたらすタンニンが豊富な重厚な味わいとなる。豊富なタンニンのため長期熟成にも向いている[27]。生産量はボルドーが大きく上回り、ブルゴーニュの5倍程度である[28]

格付け

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ボルドーワインには、地域によっては公式に定められた格付けが存在する[29]

  • 1855年のボルドーワインに対する格付け。メドックの赤ワイン(例外のシャトーが1つだけ存在する[注釈 2])とソーテルヌ、バルサックの甘口ワインが対象とされた。
  • サン=テミリオンの格付け。サン=テミリオンの赤ワインが対象とされている。およそ10年に1度、格付けの見直しが行われる[29]
  • グラーヴの格付け。1959年にグラーヴのワインを対象として制定された。はじめ1953年にに行われたが、1959年に改定があった。赤ワイン、白ワインの各々に対して格付けされている[30]。格付けは赤・白ともに1段階であり、赤ワインのみ格付けされたシャトーが7つ、白ワインのみが3つ、赤・白ともに格付けされているのが6つである[31]
  • クリュ・ブルジョワ。メドック地区[注釈 3]で生産された赤ワインに対する格付けである[32]。クリュ・ブルジョワは非公式の格付けとして1932年に444のシャトーが選定されたのが始まりである。2003年に公的に認められ、247のシャトーがクリュ・ブルジョワに格付けされた。しかし、格付けに漏れた生産者が審査の公平性に不満を持ち訴訟が起こされたことで関連する法令が無効となり、格付けも取り消された[32][33]。2010年9月には新たにクリュ・ブルジョワの品質認証が行われるようになったが、これは非公式の格付けである。認証は毎年更新される。その後、2018年ヴィンテージからはクリュ・ブルジョワ・エクセプショネル、クリュ・ブルジョワ・シュペリュール、クリュ・ブルジョワの3通りの認証がなされることに決まった[32]
  • クリュ・アルティザン。EUが1994年に認定した、メドック地区の栽培面積6ha以下の小規模なシャトーを対象にした格付けである。2006年に44のシャトーが登録された[29]

ポムロールには公的な格付けは存在しない。もっとも、シャトー・ペトリュスやシャトー・ル・パンといった高名なワインは1855年の格付けの1級と同格視されることもあり、それらより高値が付くことも珍しくない[34]

1855年のボルドーワインに対する格付け

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1855年の格付けはナポレオン3世パリ万博のために作らせたものである。メドック地区の赤ワインに対する格付けでは、当時の価格に基づいて5段階に格付けしたものが、僅かな例外を除き現代にまで続いている[35][36][注釈 4]

シャトー・マルゴー。格付け1級のシャトーである。

以下に示す格付け1級のシャトーは、4つがメドック産、1つがグラーヴ産である(括弧内はアペラシオン)。

その他、1級から5級までを合わせて61のシャトーが格付けされている[37]

同時に、ソーテルヌとバルサックの甘口ワインについても3段階に格付けが行われ、27のシャトーが選定された。唯一シャトー・ディケムだけが最高位である特別1級に格付けされている[37]

サン=テミリオンの格付け

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1955年のサン=テミリオンの格付けは3段階に分かれている。最高位であるプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAには当時以下の2つのシャトーが存在していた[38]

2012年の格付けで、さらに2つがプルミエ・グラン・クリュ・クラッセAに追加された。

  • シャトー・アンジェリュス
  • シャトー・パヴィ

2022年には格付け見直しが行われる予定だが、格付け最高位のシャトー・オーゾンヌ、シャトー・シュヴァル・ブラン、シャトー・アンジェリュスを含む複数のシャトーが格付けからの脱退を表明している。これは、審査基準のなかにワインの品質と無関係な項目があること、審査者とシャトーの間に利害関係があることなどに対する不満の表れである[39][40]

ラベル

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1978年のシャトー・アンジェリュス

ボルドーワインのラベルには、通常以下の事項が記載されている[41]

  1. シャトーやブランドの名前(右図では Château L'Angelus
  2. 格付け(右図では Grand Cru Classé
  3. アペラシオン(右図では Saint-Émilion)。AOCの規定によれば、ラベルに特定のアペラシオンを記載するためには、そのアペラシオンで収穫されたブドウをだけを使う必要がある。アペラシオンはワインのスタイルを左右する重要な要因である。右図では、アペラシオンがサン=テミリオンであるため、赤ワインであることが分かり、主要品種はメルローであろうと推測できる。
  4. シャトーで瓶詰めされたか、ネゴシアン(ワイン商)によるものかの区別(右図では Mis en Bouteille au Château、シャトー元詰めの意
  5. ヴィンテージ(右図では 1978
  6. アルコール度数(右図の写真には見られない)

クラレット

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クラレットと書かれたイギリスのボトルチケット。Sandylands Drinkwater製。

クラレット(英:claret)とは、ボルドーの赤ワインを指して通常イギリスで使われる語である。

フランス語のクレレ(仏:clairet)に由来するが[42]、これは今日ではあまり一般的ではなくなった濃い色のロゼワインを指す。18世紀まではボルドーから最も盛んに輸出されていたワインであった。アキテーヌ地域圏がアンジュー帝国の一部であった頃と、その後の継続してイギリス王室の影響下にあった12世紀から15世紀の間、イングランドではクレレを大量に消費しており、そのため英語化してクラレットと呼ばれるようになったのである。300年以上にわたってイギリスのワイン貿易業でこの名称が使われてきたことを鑑み、現在ではクラレットという語はボルドーの赤ワインを指す名称としてはEUに保護されている[42]

クラレットという名称は、アメリカにおいてもボルドースタイルのワイン、すなわちボルドーで使用が許可されている品種のブドウで造るワインを示す語として、セミ・ジェネリックワイン[注釈 5]に時おり用いられる。フランスで輸出向け以外でこの語が使われることはない。クラレットの持つ意味合いは徐々に変化してきており、現在では辛口で深い赤色のボルドーワインを指す[42]。今でもイギリス上流階級を想起させる語であるため、市場におけるステータスを向上させるため、ボルドーの赤ワインのラベルに記載されることがある。2011年11月に、Union des Maisons de Négoce de Bordeauxの長官はクラレットという語の意味を「軽くフルーティーで飲みやすい、数世紀前にイギリスで称賛されていた元々のクラレットと同じスタイルのワイン」とする旨の声明を発表した[43]。クラレットはボルドーワインの色のような、深く紫がかった赤をあらわす色名としても用いられることがある。イギリスやオーストラリアでは血を意味するスラングとしても使われる[44]

流通・販売

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ボルドーの赤ワイン
ボルドーの辛口白ワイン

ボルドーワインのなかでも著名なものの多くは、あらかじめ支払いを済ませた後に売り渡される。これはプリムールと呼ばれる。ボルドーワインは、長命である、生産量が非常に多い、評価が確立しているといった特徴があるため、オークションに出品されるワインのなかでも多数を占める。

2009年2月に公表された市場調査によれば、最高級ワインの価格は下落傾向にあるにもかかわらず、市場規模は購買力ベースで128%に拡大した[45]

ボルドーワインの流通に関与する業者として、仲買人(クルティエ、仏:courtier)とワイン商(ネゴシアン、仏:négociant)が挙げられる。仲買人はワイン生産者とワイン商の仲介業務のみを行い、手数料を徴収する。ワイン商は生産者が瓶詰めまで行ったワインを買い付けて輸出販売を行うほか、ブドウやムスト(若いワイン)を買い付けて自ら醸造したり、樽やタンクで買い付けたワインをブレンドして自身のブランド名で販売することもある[46]

特に20世紀半ばまでは、ワインの販売はワイン商がほぼ独占していた。というのも、長期の樽熟成期間を要するボルドーワインでは常に在庫を抱える必要があるため、ワイン生産者では運転資金を負担できず、資金力のある商人に頼る必要があったのである。また、ワイン商は熟成時の品質管理やブレンドなどのノウハウを蓄積していくこととなり、ワインの品質向上にも寄与した[46]。プリムール取引が一般化した現在においても、ワイン商を介したワインの取引は生産者・買付業者の双方にとって効率的であるといえる[46]

ボルドーには42のワイン醸造共同組合と6の醸造協同組合連合が存在し、生産者の43%がいずれかに所属している。これらの組合は、共同の醸造設備で醸造・ボトリングを行い、組合によるブランド名で販売するほか、所属する生産者に対して経営支援・技術指導を行うことが多い[46]

関連項目

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参考文献

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  35. ^ 日本で一番詳しい「1855年メドック格付け」の裏側”. ENOTECA online. 2022年9月23日閲覧。
  36. ^ ジェイムズ・ローサー 著、山本博 訳『FINE WINEシリーズ ボルドー』ガイアブックス、2011年10月20日、46-47頁。 
  37. ^ a b 『受験のプロに教わるソムリエ試験対策講座 ワン地図帳付き<2016年版>』リトルモア、2016年4月27日、59-64頁。 
  38. ^ Robinson, Jancis, ed (2006-10-01). The Oxford Companion to Wine (3rd ed.). Oxford University Press. pp. 175–177, 212–216. ISBN 0-19-860990-6 
  39. ^ Winomy, サン=テミリオンの格付け辞退”. 阪急百貨店. 2022年8月17日閲覧。
  40. ^ Ch. Angelus サン=テミリオン格付け離脱へ”. Firadis. 2022年9月23日閲覧。
  41. ^ Sanderson, B (May 15, 2007). “A Master Class in Cabernet”. p. 62 
  42. ^ a b c “Clairet” (Clairet). Oxford Companion to Wine (3rd ed.). Oxford University Press. (2014). ISBN 9780198609902. https://www.oxfordreference.com/view/10.1093/acref/9780198609902.001.0001/acref-9780198609902-e-0746?rskey=LVKPKc&result=746 
  43. ^ Anson, Jane (2011年11月3日). “Bordeaux reclaims 'claret' name”. Decanter. 2012年10月23日閲覧。
  44. ^ Definition of claret in English”. Lexico (Oxford Dictionaries). 28 July 2019閲覧。
  45. ^ Ghatineh, Aarash, WineInvestment.org
  46. ^ a b c d 二宮麻里、タチアナ・ボージン=シャミーバ (2012). “ボルドーワインの生販分業型流通システムと販売問題”. 福岡大学商学論叢 56 (4): 377-396. ISSN 0285-2780. 

注釈

[編集]
  1. ^ アペラシオンは、アペラシオン・ドリジーヌ・コントロレ(仏:Appellation dʼOrigine Contrôlée、AOC)に基づく産地の名称である。AOCは農産物に対して原産地の名称を保護するフランスの法律であり、ワインの場合は生産地域のほか、ブドウ品や収量、アルコール度数などの規定がある。この規定に則ることで、ワインは各産地の名称(アペラシオン)を名乗ることができる。
  2. ^ グラーヴに存在するシャトー・オー・ブリオンが例外的に1級に格付けされている。シャトー・オー・ブリオンはグラーヴの格付けにも含まれる。
  3. ^ メドック、オー・メドック、リストラック、ムーリ、マルゴー、サン・ジュリアン、ポイヤック、サン・テステフの8つのアペラシオン
  4. ^ 翌1856年にシャトー・カントメルルが5級に加わったこと、1973年にシャトー・ムートン・ロートシルトが2級から1級に昇格したことが例外である。その他、シャトーの分裂・吸収・改名による変化が起きている。
  5. ^ セミ・ジェネリックワインは、アメリカにおいて他国の有名産地の名前をラベルに記載したワインである。2006年にEUとアメリカの間で結ばれた協定により、それ以降は新規の販売は禁じられている。