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「ロクでなし魔術講師と禁忌教典」の版間の差分

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== ゲーム ==
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; [[ファンタジア・リビルド]]
; [[ファンタジア・リビルド]]
: 2020年12月17日より配信されている[[パーソナルコンピュータ|PC]] / [[iOS (Apple)|iOS]] / [[Android (オペレーティングシステム)|Android]]用アプリゲーム。
: 2020年12月17日より配信されている[[パーソナルコンピュータ|PC]] / [[iOS]] / [[Android (オペレーティングシステム)|Android]]用アプリゲーム。
: ファンタジア文庫作品のクロスオーバーRPGであり、リリース時より本作のキャラクターが登場する。
: ファンタジア文庫作品のクロスオーバーRPGであり、リリース時より本作のキャラクターが登場する。



2021年11月10日 (水) 04:46時点における版

ロクでなし魔術講師と禁忌教典アカシックレコード

テレビアニメ版ロゴ
ジャンル 学園ファンタジー
小説
著者 羊太郎
イラスト 三嶋くろね
出版社 KADOKAWA
レーベル 富士見ファンタジア文庫
刊行期間 2014年7月 -
巻数 既刊28巻(本編19巻+短編集9巻)
(2021年10月現在)
漫画
原作・原案など 羊太郎(原作)
三嶋くろね(キャラクター原案)
作画 常深アオサ
出版社 KADOKAWA
掲載誌 月刊少年エース
レーベル 角川コミックス・エース
発表号 2015年5月号 - 2021年8月号
発表期間 2015年3月26日[1] - 2021年6月25日[2]
巻数 全16巻
話数 全72話
アニメ
原作 羊太郎
監督 和ト湊
シリーズ構成 待田堂子
脚本 待田堂子、池田臨太郎、戸田力良
佐藤裕、樋口達人
キャラクターデザイン 木村智
音楽 堤博明
アニメーション制作 ライデンフィルム
製作 ロクでなし製作委員会
放送局 AT-XTOKYO MXほか
放送期間 2017年4月4日 - 6月20日
話数 全12話
ラジオ:システィ&ルミアの禁忌通信
放送期間 2017年4月4日 - 6月27日
放送局 音泉
放送時間 毎週火曜日
放送回数 全13回
放送形式 ストリーミング
パーソナリティ 藤田茜宮本侑芽
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベル漫画アニメ
ポータル 文学漫画アニメ

ロクでなし魔術講師と禁忌教典』(ロクでなしまじゅつこうしとアカシックレコード、Akashic records of bastard magic instructor)は、羊太郎による日本ライトノベル及びそれを原作としたテレビアニメコミカライズ作品。イラスト三嶋くろねが手掛けている[3]。原作小説はKADOKAWA富士見ファンタジア文庫より刊行。KADOKAWAが使用している略称は、「ロクでなし[4][5][6][7][8]。第26回ファンタジア大賞大賞受賞作[3]。投稿時のタイトル名は「ニートなボクが魔術の講師になったワケ」。一般に用いられている略称は「ロクアカ」。2020年10月時点でシリーズ累計発行部数は360万部を突破している[9][10]

あらすじ

ルヴァフォース聖暦1853年、仕事を辞めて1年間無職を続け、家主であるセリカのすねをかじり続けていた青年・グレンだったが、ついに痺れを切らされて、強制的にアルザーノ帝国魔術学院の非常勤講師として働くこととなる。

初めは仕事を早く辞めたいと願い、やる気のない授業を繰り返すが、生徒であるシスティーナルミアとの関わりを通し、学生たちがそれまで学んだことのないような素晴らしい授業を行うようになる。それまで評判は最悪だったが、一躍して人気の講師となった。そんな中、政府と敵対する魔術結社「天の智慧研究会」が学院を襲い、グレンは戦いに巻き込まれていく。

登場人物

声はテレビアニメ版のもの。

主要人物

グレン=レーダス
- 斉藤壮馬佐倉綾音(幼少期)
本作の主人公。アルザーノ帝国魔術学院2年2組の担当講師。魔術学院の卒業生。黒髪黒眼で長身痩躯の青年。19歳(原作1巻より)。
前職を辞めて以来、育ての親でもあるセリカのもとで1年間ひきこもっていたが、業を煮やした彼女に脅され、非常勤講師として働くことになる。後述の理由で「魔術は人殺しの役にしか立たない」と考える極度の魔術嫌いで、当初は早く講師を辞めるために「授業中に居眠り」「教科書を黒板に釘で刺して放置」するなど適当な授業を繰り返していたが、システィーナとルミアの夢を聞き真摯な授業を行うようになり、1巻終盤の学院襲撃事件を経て正式な講師になった。ただし授業以外は適当なままで、講師の雇用契約更新に必要な魔術論文の執筆はおろか、ロクな研究もしていないせいで解雇されそうになったこともある。
講師として十分な給料を稼いでいるが、ギャンブルで散財する、生徒のために自腹を切る、リィエルの編入後は彼女の破壊行為の弁償などで慢性的な金欠に陥っている。そのため食費もままならず、給料日前は学院にあるシロッテ[注 1]の枝で飢えをしのぐことも。ぐーたらでロクでなしではあるが、授業自体は真面目にやっていて、生徒に対してはわりと真摯で誠実、学園のピンチを命がけで何度も救い続けてきた実績があるため、女生徒からは意外にモテる[11]
元《塔》のアンリエッタの手で滅ぼされた村の生き残りで、人体実験を受けていたせいでセリカに拾われるまでの記憶を失っている。現在の名前は彼女が救えなかった少年からとってつけられたもの。「メルガリウスの魔法使い」のような正義の魔術師に憧れ、セリカから魔術を学んで育つ。わずか11歳で学院に入学するが、その後の成績は平凡で、自身の魔術特性を利用した固有魔術を開発したものの、一般に無益とされるようなものだったため論文は焼却され、卒業の名目で実質退学となる。しかし、その魔術に価値を見出した帝国宮廷魔導師団特務分室に引き抜かれ、15歳のころから執行者ナンバー0・コードネーム《愚者》として活動することとなった。当初は出世に喜んだが、その任務が主に外道魔術師の暗殺である事にすぐに違和感を覚え、3年間仕事を繰り返しすごと心が擦り切れていった末に、数少ない自身の支えであったセラが自分を庇って殉職したことで魔術に絶望し辞職、現在の生活に至る。最終軍階は最下級士官の《正騎士》[12]
魔術師としての位階は第三階梯。魔術特性「変化の停滞・停止」の影響で、男性ながら魔力操作の感覚と略式詠唱のセンスが致命的にないため、初歩の汎用魔術ですら呪文の一節詠唱ができず、魔術戦では苦手な略式詠唱は持続付呪(デュレーション)型の術で補う。魔力容量1865.MP、魔力濃度121.AMPと、世界最高峰の魔術学院で講師をするにはあまりにも数値が低い[13]。軍用の攻性呪文は【ライトニング・ピアス】、【ブレイズ・バースト】、【アイス・ストーム】といった基本三属しか使えないにもかかわらず、黒魔【タイム・アクセラレイト】など無駄に癖の強い変則的な呪文ばかりに適性がある。高度な魔力操作が必要とされる無属性系攻性魔術も苦手で、狂霊などの存在とは特に相性が悪い。むしろ魔術師よりも格闘家としての才能に恵まれているとされる。ただし、魔術師としては三流だが魔導士としては一流で、一定の時間、自分を中心に有効射程半径50メトラの範囲内で魔術起動を完全封殺する固有魔術【愚者の世界】を編み出している。この固有魔術は自分や近くにいる仲間も魔術を使えなくなるという重大な欠陥があるが、宮廷魔導師団時代に身につけた卓越した帝国式軍隊格闘術や魔銃《ペネトレイター》という魔術に頼らない武器を持つため、魔術のみに傾倒した敵相手には有利に立ち回れる。ただ、すでに発動している魔術を封じることはできないため、相手より先んじて発動させる必要があるうえ、あくまで初見殺しなので手の内が割れれば自分を窮地に追い込む諸刃の剣になり得る。魔導士としての適性が偏りすぎているため共闘できる人材がかなり限られており、先手必勝の不意打ちならともかく対複数の拠点防衛ではほとんど役に立たない。切り札として、セリカが編み出した【イクスティンクション・レイ】を使えるが、貴重な魔術触媒《虚量石(ホローツ)》と七節もの長大な詠唱を必要とする上に、使用後マナ欠乏症でまともに動けなくなるデメリットがある。特殊な弾薬「イヴ=カイズルの玉薬」を込めた銃弾に自身の魔術特性を乗せて放つことで、どんな魔術防御も無視してあらゆる物理エネルギー変化を停止させ、実体のない霊魂にも破滅の停滞をもたらす固有魔術【愚者の一刺し(ペネトレイター)】を軍属時代に開発したが、こちらも零距離射撃でないと効果がない上に、軍属時代のトラウマから使用を避けている。さらに、「アリシア3世の手記」の世界で女王から、なぜか自分の魔力波長にしか反応しない魔銃《クイーンキラー》を譲り受ける。これは小型の砲のような威力と、“撃ち出した弾丸の弾道を、射手のイメージ通りに操作できる”、“撃った後、銃は射手の魔力を吸って弾丸と装薬を錬成、1分間で自動的に再装填が完了する”という性質を併せ持つ。
軍属時代、どんな絶望的な戦いからも生還していたことから、“100回中99回負ける戦いでも、残り1回の勝利を一番最初に引き当てる男”と呼ばれていた[12]
魔術競技祭および生存戦で担当クラスを勝利に導き、暗殺者から女王アリシアを救い、《炎の船》からフェジテを守り、スノリアを滅亡から救う、といった活躍のために帝国の英雄として国の上層部からは非常に高く評価されており、国の威信もかかった魔術祭典では帝国代表の総監督に指名されている。また、現在までに打ち立てた数々の伝説から、王室親衛隊の隊員などからは英雄として高い人気を得ていた。ただ、自分の手柄でないことも含まれるうえ、全てが成り行きと偶然でしかない自覚があるので、本気で買い被られていると感じている。
聖暦前4000年の世界にタイムスリップして正義の魔法使い(セリカ)の弟子として魔王との決戦に介入する。魔王撃破後、セリカと一緒に現代に帰還できない状況で初めてセリカを「母さん」と呼び、いつか必ず彼女を迎えに行くことを涙ながらに伝える。ナムルスと契約が結ばれた[注 2]ことで時天神秘が使用可能となる。さらにセリカの魔術知識の全てを記録した《世界石》を譲り受けたことにより、“時間を操る魔術師”としては限定的に世界最強となった。
レーン=グレダス
聖リリィ魔術女学院に臨時赴任する際に、セリカが施した白魔【セルフ・ポリモルフ】の応用魔術によって女体化した姿。変身後はルミア並みの抜群のスタイルとなるが、女性らしく振舞うことへの抵抗から、言葉遣いも衣服も男のままにしている。
途中で魔術の効果が切れてグレンの姿に戻ってしまうが、聖リリィの生徒には「魔術の失敗により、お湯を被ると男になってしまう体質になった」という言い訳で誤魔化した(ジニーのみ気づいたが言及しなかった)。後にフランシーヌとコレットに再会した際に事情を明かしている。
システィーナ=フィーベル
声 - 藤田茜
本作のヒロインの1人。フィジテ地方の大地主である大貴族・フィーベル家の令嬢。銀髪の美少女。ルミアからは「システィ」、グレンからは「白猫」の愛称で呼ばれる。聖暦1838年グラムの月(12月)24日生まれ、身長157cm、B76/W55/H78[14]
典型的なメルガリアンで、祖父が叶えられなかった「メルガリウスの天空城の謎を解く」という夢を自身が果たすため、魔導考古学者を目指して日夜魔術の研鑽に励む。
生真面目な性格で、初めは適当な授業を繰り返すグレンを軽蔑していた。グレンが授業態度を改めるようになってからは彼を見直しており、しばしば見せる情けない姿に呆れながらも信頼を見せている。また、学院が「天の智慧研究会」に襲撃され、ぼろぼろになってまで戦い続ける姿を見てからグレンに好意を抱いている。長らく自分の気持ちにはっきりと気付いてはいなかったが、魔術祭典2回戦で不調に陥った時にグレンから激励を受けたことで遂に自分の恋心を自覚した[15]。恩返しのため母親から料理を習うなど、健気なところもある。
気が強く口うるさいこともあり、「お付き合いしたくない美少女」「説教女神」「真銀(ミスリル)の妖精」[注 3]などと呼ばれ、男子からの人気はそれほど高くない。胸の成長に乏しく、スタイルのいいルミアに少々嫉妬している。また、グレン同様オバケが苦手で、ヘビも苦手。普段は意地っ張りで素直になれないため周囲からの評価は「面倒臭い子」だが、アルコールが入ると陽気かつ素直になる。学院で起きたある事件で記憶喪失になり素直な態度を取れるようになった時には、短時間でファンクラブが形成されるほどに人気が出た。趣味は小説を書くことだが、文才はない。
いわゆるヘタレで極限状態での精神面に脆さが見られ、遠征学修にてルミアがリィエルに拉致された時も足が竦んで動けなかった。自身の婚約騒動の際には「天使の塵」中毒者を容赦なく始末するグレンを突き放したが、日常を取り戻すため恐怖を乗り越え奮起し、彼と共にジャティスに立ち向かっている。そして自身を陵辱しようとしたジンが蘇り襲撃してきた際には、恐怖から竦んでしまう心を奮い立たせ自滅すれすれの荒技で紙一重の勝利を掴んでいる。その後、数十年ぶりに開催された魔術祭典では、かつての祖父と同じ帝国代表選手団のメイン・ウィザードとして大会に参加し、アディル・サクヤといった同年代最高の俊英たちと親交を結び、競い合った。
学年トップの秀才で位階は第二階梯。魔術特性は【流転の加速・支配】という魔術師の申し子と言っても過言ではないもので、ほぼ全ての黒魔術に相性が良く、風のように各種パラメータが次々と変化し続ける魔術に特に相性が良い。白魔術をやや苦手とするが、座学・実技共に高成績で一節詠唱を使いこなし、グレンの教えをもとに即興で呪文の改変を行うなど非常に優秀。また、現在顕在的に使用可能な魔力容量こそさほどでもないが、潜在的な魔力容量については数十年に一人というレベルの逸材であり、グレンに師事してわずか半年で魔力容量10820、魔力濃度195という一流魔術師の水準を遥かに上回る規格外の数値を記録するほどになった[16]。ルーシャスの思念体によると、外宇宙の邪神の1柱とされる風統べる女王《風神イターカ》の神官家の末裔であり、髪色と魔力がその証拠だという[17]
いざというときにルミアを守れるように家族には内緒でグレンから魔術戦の手ほどきを受け、立ち回り方や即興の呪文改変の練度も上がってきており、同年代の学生と比較すると段違いに実戦慣れしている。魔力量に任せて呪文改変を連発することで援護を行うのが主な戦術。グレンでは指導しきれないほどに力を上げてからはイヴにも師事しており、戦闘技術や実戦経験こそ不足しているものの、実力を発揮できればプロ同士の魔術戦でも通用するレベルになっている。「超一流の戦い」にはまだついて行けず戦力外と見なされることもあるが、幼馴染のエレンを救うための戦いでグレンに「相棒」と認められる。そして魔術祭典で据わった覚悟を得て本物の魔術師へと至り、かつては歯が立たなかったジンを無傷で一蹴する程の凄腕となった。その成長をグレンは「帝国最強級であるガチのイヴやアルベルト相手でも、簡単には落とされない」とルミアに評した。
グレンと共に聖暦前4000年にタイムスリップした際には、魔王との決戦で最後の魔将星で自分の先祖であるシル=ヴィーサと交戦。圧倒的な実力差を前に敗北を覚悟するが、風の本質が“気圧差で空気が動く、在り来りな物理現象”ではなく万物流転の加速と支配を司る世界最強の魔術属性であることを示され、託された魔法遺産《風の外套》の力も借り、魔術師としての集大成である風天神秘【CLOAK OF WIND(クロークオブウィンド)】を完成させた。
様々な面でセラとよく似ており、グレンがシスティーナを「白猫」と呼んでいるのは、かつて「白犬」と呼んでいたセラとは別人だと心の中で言い聞かせるためでもある。
ルミア=ティンジェル
声 - 宮本侑芽
本作のヒロインの1人。フィーベル家に下宿する金髪の美少女。聖暦1838年トーマの月(7月)7日生まれ、身長158cm。
3年前にフィーベル家にやってきた当初はとある事情からシスティーナにも心を開いていなかったが、システィーナと間違われて誘拐されて以来本当の姉妹のように仲が良い。誘拐事件の際に自分を救い出したのが特務分室時代のグレンで、それ以来ずっと彼のことを慕っている。そのため、講師になったばかりのグレンが周りに嫌われている中でも唯一好意的に接していた。知性によって正しく魔術を制するような世界を作りたいという夢は、魔術嫌いのグレンの考えを改めさせるきっかけになった。
優しく素直な性格で、スタイルも抜群。このため男子からの人気も高く、学院には男子生徒で結成されたファンクラブが存在する。趣味は手芸とバイオリン演奏。他人の心の機微には人一倍敏感。少々不器用で料理はあまり得意ではないらしく、早起きも苦手。しかし最近では後悔しないようにと料理の練習も行っている。
本来の素性はアルザーノ帝国第二王女エルミアナ=イェル=ケル=アルザーノ。自分が触れた相手の魔力や魔術を自分の意思で何十倍にも増幅できる異能「感応増幅者」であり、王家の威信に影響を与えかねない存在となったため、表向きは流行病にかかって死亡したという形で王位継承権を剥奪され野に下る。実は「感応増幅者」とは似て非なる特殊な能力者で、その本質は《王者の法(アルス・マグナと呼ばれる。そのためか、今でも「天の智慧研究会」に「双生児の器」「空の巫女」として身柄を狙われ続けている。
追放されてなお暗殺者に身を脅かされた経緯からいつ死んでもいいような心構えを常にしているため、精神力が非常に強く、その胆力を見込まれて2年次の魔術競技祭では「精神防御」に出場し優勝を果たす。図らずも自分を追いだすこととなった母親とは確執があったが、魔術競技祭の一件を経て和解に至る。一方で自分は生まれるべきではなかったという思いも抱いており、そのために他者のために自分の順位が極端に下がってしまうという精神的な問題も抱え、努めて“いい子”になろうとしていた。アセロ=イエロとの戦いでも自己犠牲でフェジテを守ろうとしていたが、皆と共に生きたいという本当の望みを自覚したことで命を捨てない選択肢を選ぶ。それまではシスティーナに遠慮してグレンへの恋を諦めていたが、この事件で考えを改め正々堂々恋のライバルになることを宣言した。また、学院に講師として赴任したイヴを同様に恋のライバルと認識している。
位階は第一階梯。法医呪文と浄化呪文を中心とする白魔術と座学は優秀で、触媒さえあれば高位司祭が使うような高等浄化呪文さえ使えるものの、その他の実技が苦手なので成績は中ほど。しかし強靭な精神力ゆえに眼前まで敵の構成魔術が迫って来ても呪文詠唱を途切れさせないため、実戦においては成績以上の実力を発揮する。バランス良く、綺麗で無駄のない理想的な身体能力強化魔術を使うことができ、技量だけならシスティーナを超えているが、センスの有無の問題で直接戦闘には向かない。
ナムルスによって1日だけ魔法を使えるようになった時には空間を支配する《銀の鍵》を操り、異能の遠隔付与に覚醒、魔術ではあり得ない現象まで引き起こしたが、使うほどに人間から存在が離れていくうえに本当の願いに蓋をしていたため真の力は発揮できなかった。だが、第十三聖伐実行隊との戦いで、グレンのために生きることが自分が自分のために生きることだと強く願ったことで、自分自身の《ルミアの鍵》を獲得、《銀の鍵》に比べれば力は大きく劣るものの、思い通りに異能を使えるようになった。
建国以来魔王が繰り返していた【マグダリアの受胎儀式】によってR因子適合率及び《王者の法》付与率は98%に達しており、ほとんど《空の天使》レ=ファリアそのものと言えるほどになっている。タウムの天空神殿でフェロードによって復活させられたレ=ファリアによって意識を塗り潰されそうになるが、残された力を振り絞って彼女の妨害を試み、力を奪われ人間でなくなってしまったもののナムルスやル=シルバの協力もあって完全に乗っ取られることは阻止した。
リィエル=レイフォード
声 - 小澤亜李[18]
本作のヒロインの1人。帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー7《戦車》。階級は正騎士[19]。櫛を入れていない淡青色の髪と「表情が死滅した」と表現される無表情、幼い見た目が特徴の少女。
苺タルトが好物で野菜が苦手。制約によって苺タルトを食べられなくなった際には、禁断症状で発作を起こすようになったほど[20]
得意魔術が尖りすぎているので、一般的な魔術師としての成績は壊滅的に悪い。周囲からの評価は一貫して「バカ」で、作戦行動の意味を全く理解せず敵に吶喊する悪癖があり、お目付け役のグレンとアルベルトは常に手を焼いている。しかし、相手が格上であっても気合いでどうにかしてしまうため、特務分室のエースとして重用されている。
元々は「天の智慧研究会」で行われた『Project: Revive Life』の唯一の成功例である魔造人間。オリジナルであるイルシア=レイフォードの能力と記憶を引き継いでいるが、生まれて2年程度であるため精神面は未熟で依存心が非常に強く、自分を助けてくれたグレンのために力を尽くそうと考えるようになっている。イルシアの遺言を聞いたグレンに保護され、経歴を伏せられたうえで特務分室に籍を置くことになった。
魔術競技祭からしばらくして、ルミアの護衛という形で学院に編入する。当初はフィーベル邸の近くに立つアパートの一室を拠点としていたが、紆余曲折あってフィーベル邸に下宿している。徐々にクラスにも慣れていったが、遠征学修先で兄を名乗るライネルに騙され「天の智慧研究会」側につきルミアを拉致するものの、その過程で自分の正体を知り絶望する。しかし、グレンとルミアに受け入れてもらえたことから過去と決別し、グレンたちのもとに戻った。この一件以降はルミアを友人として守ることを誓い、ついでのシスティーナ以外のクラスメイトにはあまり関心がなかったようだが、次第に他の面々にも愛着が湧くようになっており、聖リリィ魔術女学院のエルザとは留学中の紆余曲折を経て親友と言える関係を築いた。この人間的な成長からジャティスも特務分室最弱という評価を改めるようになっている。
ルーンの仕様に存在するバグを利用した【隠す爪(ハイドゥン・クロウ)】と呼ばれる禁呪法に近い高速武器練成、および白魔【フィジカル・ブースト】による怪力を利用した力押しが主な戦法(本人曰く、魔術で作った武器を使う戦闘なのでれっきとした攻性呪文)。正式な剣術を学んだわけではないため邪法ともいえるような技を使うが、たぐいまれな戦闘勘によって勝利を引き寄せている。戦闘中に魔術を使わないという特性上、グレンの【愚者の世界】の影響を受けないため、彼とは一緒に組んで仕事をしていた。魔力容量6500の魔力濃度180と帝国軍でも数える程の高数値を持っているが、その資質を全然生かせていない[21]。なお、遠距離攻撃系の攻性呪文の腕は壊滅的でロクに的に当たらないが、後にグレンの指導により「攻性魔術の零距離射撃」という本末転倒な新技を編み出している。また、エーテル乖離症で死にかけた時に《剣の姫》エリエーテの精神データの一部が上書きされたことがきっかけで、彼女が見ていた黄昏色の剣閃を視認し“開く”ことができるようになる。
学力は非常に低いが優れた暗記力を持ち、複雑な武器錬成術式も丸暗記したものをそのまま使用している。ただし応用力が欠如しており、数学の問題も数式自体を覚えて解答するため、数字の順番が変わっただけで解けなくなってしまう。
セリカ=アルフォネア
声 - 喜多村英梨[18]
アルザーノ帝国魔術学院の教授。元・帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー21《世界》。
グレンの育ての親で魔術の師匠。見た目は20歳ほどの美女だが、真の「永遠者(イモータリスト)」と呼ばれる不老不死の体質。400年前に記憶喪失となり、それ以前の記憶を持たないものの、時折聞こえる「内なる声」に悩まされている。200年前の戦争で人類の切り札として活躍した『六英雄』の一人で、外宇宙から召喚された邪神の眷属を殺害した伝説を持つ《灰燼の魔女》、《惨劇の魔王》、《竜殺し》と恐れられた、人外と評される第七階梯に至った大陸最高峰の魔術師。かつては帝国各地で自分の縁や痕跡を探していたが、結局それ以前に生きていた痕跡や形跡、自分を知る存在を見つけることはできなかった。8000年から6000年前の時代を舞台とする「メルガリウスの魔法使い」に登場する魔将星たちと面識があり、彼らから「空(セリカ)」と呼ばれているなど謎が多い存在。
長い時を孤独の中で過ごし、大切な人たちとの別れを幾度となく繰り返してきたせいでグレンを拾うまでは酒に溺れ自傷行為を繰り返す荒んだ生活を送っていた。しかし、元同僚アンリエッタの暴走で滅ぼされた村の唯一の生き残りであるグレンを引き取ったことを機に特務分室を引退、現在は教授職と並行して「内なる声」が告げる使命に従い、自身の特異体質の謎を解くために学院地下に存在する古代遺跡の一つに当たる地下迷宮の探索を定期的に行っている。学生の指導はしないが、グレンの代理で授業を受け持った時には生徒の理解度を超越した神殺しの術式の講義を始めたりと、自身の技量が桁違いすぎるせいでどの程度まで教えれば良いかの境界が漠然としてしまっている模様。
グレンのクズっぷりに頭を痛めるが実のところは家族として溺愛しており、講師の職を斡旋したのも真人間になってほしいという思いのほかに、魔術と同じく自分のことも嫌いになってしまったのではないかという不安があったためである。また、グレンの性格はセリカの影響を大いに受けており、根本的に似たもの師弟である。一方で自身の異常性から家族だと思っているのは自分だけではないかという不安も抱えていた。グレンが講師になってから親バカが悪化しており、学生のための授業参観に教員の親として参加する、お世辞でもグレンが褒められると有頂天になる、グレンが忙しくしているのを見て拗ねるなどの行為が目立つようになる。
グレンの魔術論文執筆を兼ねた「タウムの天文神殿」調査に同行した際にルミアとシスティーナによって開かれた「星の回廊」を通って、自身が踏破し得なかった地下迷宮の89階に到達。そこで起きたアール=カーンとの戦闘で霊体を激しく損傷し魔術師としての生命が絶たれかけたが、ナムルスによって最悪の事態は免れた。
『フェジテ最悪の3日間』以来《内なる声》が強くなり、非道な殺戮をしている自分の姿を夢に見るようになる。焦りを感じて秋休みにグレンとスノリアへ家族旅行に向かうが、記憶を失う以前の自身を知るル=シルバが復活し、またも戦いに巻き込まれる。白銀竜を追って足を踏み入れた《銀竜教団》の本部で自身がル=シルバに鍵を刺している記憶の一部を取り戻し、自身が魔王である可能性に思い至るが、グレンが憧れた『正義の魔法使い』で在り続けるため覚悟を決める。旅行を終えると休職して、眠ったままの白銀竜だった幼女を自宅で介抱している。だが、邪神兵が降臨した際に記憶を取り戻し、グレンを守るために彼の元を離れる。
全ての物理法則を破壊し自在に再構築する魔術特性【万理の破壊・再生】により、攻性呪文の高威力行使や時間の頚城の破壊といった、一個人の枠を超えた卓越した魔術行使が可能。二反響唱を超える三重唱を使いこなし、ただ一言の呪文改変で3つのB級軍用魔術を発動する。魔力容量・魔力濃度は共に測定不能。大量消費・大破壊をとにかく好み、炎熱・冷気・電撃の三属呪文を強引に重ね合わせることで生み出した虚数エネルギーにより対象を根源素(オリジン)にまで分解消滅させるという、個人で使用する術の中では最高峰の威力を持つ黒魔術【イクスティンクション・レイ】を開発、グレンに伝授している。さらに「ラ=ティリカの時計」と名づけた懐中時計型の魔導器を使って自分以外の時を止める固有魔術【私の世界】という魔導第二法則の頸木から逸脱した魔術を使うことができる。また白魔改【ロード・エクスペリエンス】を使い、かつての仲間《剣の姫》エリエーテの遺品である真銀製の剣を使用することで彼女の卓越した剣技を再現することも可能となり、白兵戦でも隙がない。アール=カーン戦で魂に負った傷の影響で魔力容量が減退したため長期戦が以前より苦手になっているが、魔力濃度こそ世界最高峰のままなので魔術の威力はさほど変わらず、全盛期の力がなくとも古代竜と戦い勝利できるだけの強さを持つ。だが、その力押しゆえに“戦術には長けているが、戦略には疎い”ことが弱点で、権謀術数や盤外戦術のような搦め手には弱い。
その正体は、古代の伝承で語られる“正義の魔法使い”その人。【イクスティンクション・レイ】の原型となった最強必滅神殺呪文である古代魔術【イクスティンクション・ノヴァ】などの高度な魔術を使いこなし、ラ=ティリカとの契約により時天神秘の権能を、さらに換魂の儀式魔術により自身の魂を擦り削って無限の魔力へ転化する命天神秘【SOUL SONG SACRIFICE (ソウルソングサクリファイス)】という切り札を持っていた。ローザリア国の王女だったが、魔王に故郷を滅ぼされた上に妹を拐われてしまい、復讐を目的にラ=ティリカと契約して《永遠者》になり、魔術の研鑽を重ねる。だが、100年の間に妹を含めかつての自分を知る者は全員死亡し、積み重ねた技量も魔王には通用せず、追放されて記憶を失い未来に漂着していた。記憶を取り戻すとグレンが憧れたような“正義の魔法使い”になるため、そして何よりグレン達の未来を守るために、《星の回廊》を通って再び過去へと戻り、同じ魔道具を使って過去に来たグレンがアセロ=イエロを倒した隙に乗じて天空城へと侵入、魔王に従う魔術師を殲滅し、命をかけた決戦の末に仲間達からの援護を受けて魔王を撃破する。命を消費しきる前に目的を達することはできたが、魔術能力がほぼ完全に失われた上に魂が時間移動の負荷に耐えられないほどに傷つき、あと1回の使用で壊れる天象儀装置を修復するために単身過去に残ることを決め、グレンとシスティーナを未来へ送り出す。
イヴ=イグナイト
声 ‐ 下地紫野ファンタジア・リビルド[22][23]
真紅の髪に紫炎色の瞳をした、19歳の女性。当初は帝国宮廷魔導士団特務分室室長、執行官ナンバー1《魔術師》であったが、後述の経緯で免職され、帝国魔術学院へ赴任する。
近距離魔術戦最強の《紅炎公(ロード・スカーレット)》として恐れられるイグナイト公爵家の生まれだが、妾の子という出自のせいで肩身の狭い思いをしてきたせいで上昇志向が強く、プライドが高い。課せられる重圧が過酷な一方、親戚一同だけでなく父からでさえもまともな扱いを受けて育ってこなかったという貴族社会特有の壮絶な人生を歩んでおり、幼い頃からイヴの面倒をみてきたバーナードからは幼い少女だった彼女が現在のような彼女として振舞う生き方しかできなくなっていることに同情を寄せられている。
幼少期は元イグナイト家使用人だった平民の母と共に貧民街で生活していたが、貧苦の中でも深く愛情を注いでくれた母と9歳で死別し、“病死”したアリエスの代わりにイグナイト家に引き取られた。14歳にして飛び級を重ねて帝国軍士官候補学校を歴代最短で卒業、模擬魔術戦会では圧倒的な戦績で1位を叩き出すなど優秀な能力を発揮したが、父親からは遂に認められることはなかった。一族の中で唯一自分に優しかった姉のリディアが自分を守って魔術能力を失ってからは、繰り上がりで次期当主になり、姉の願いであった家の体質改善をするべく手柄を求め続けたが、度重なる地獄の重責と重圧で心は徐々にすり切れていき、いつしか初心を忘れて冷酷な人格が形成されていった[24]
傲岸不遜に振舞うが、これは父から「イグナイト家の名誉を守る」ことのみを行動目的にするよう秘伝の暗示魔術をかけられているためで、その目的のためならば他人のみならず自分の心すら裏切って利用する。かつてセラが殉職したのは彼女が父からの圧力に屈し救援を送らなかったことが原因であり、グレンにはこの件で特に嫌われているが、本質的にはグレンと同じく弱者を放ってはおけない善人であり、セラの件も内心では罪悪感と後悔に苛まれ続けている。特に「正義の味方」という夢を砕かれながらも、未だ心の底では正義の魔法使いであり続けているグレンの存在は、イヴ自身にとっては彼女自身の生き方を全否定されかねないほどのコンプレックスとなっているので、基本任務に私情を挟まない自らの感情を乱す例外である。グレンに対して一方的な従属を強いる彼女の物言いはこのコンプレックスからきており、グレンのやり方を否定しなければ自分のやり方が間違いになってしまうという途轍もないプレッシャーを感じている。とはいえどんな時でも自分に対等に向かってくるグレンは特別な存在であり、内心ではその姿を姉に重ねている節があった。
ルミア暗殺計画ではルミア自身を囮とすることで第二団のザイードを生け捕りにする計画を立て、リィエルの秘密を盾にグレンを計画に巻き込むが、功を焦ったことが災いしてザイードの術中に嵌ってしまい、『魔曲』で彼の傀儡とされてしまうことになった。事件解決後、勢いとはいえグレンにそれまで感じてきたコンプレックスを吐露、普段とあまりに違う言い方でグレンには理解されなかったものの単なる卑劣で冷酷な元上司という認識が若干変わることとなった。
ジャティスによるフェジテ市庁舎爆破テロの際には、ジャティスの確保・抹殺を優先するあまりにグレンを孤立させ囮に使うが、ジンに追い詰められるシスティーナにかつて死なせてしまったセラの姿を重ね、目的を忘れ思わず救助する。その後、ジャティスとの戦闘に際してグレンに共闘を拒まれたため単独で戦闘に臨むが、意志の強さを持たないことからグレンを含めた特務分室のメンバー中で最弱と酷評され、自身の行動を全て先読みされたあげく左腕を肘から切り落とされるなど満身創痍の状態になるまで追い詰められる。グレンを侮辱したために殺害されそうになったところで、自身の命令を無視して駆けつけた部下たちにかろうじて救助されたものの、アルベルトからは独断での利己的な行動を厳しく咎められることとなる。
『フェジテ最悪の三日間』の後、度重なる失態と負傷のショックによる左腕の魔術能力喪失によって父アゼルに勘当されてしまい、以降対外的には母方の姓である「イヴ=ディストーレ」を名乗る。軍においても特務分室から第八魔導兵団への異動、百騎長から従騎士長への軍階降格という左遷処分を受け、新たに導入されることになった「軍事教練」の戦術訓練教官として学院に派遣された。言葉こそ厳しいが丁寧な教え方で学院内での評判も良く、「裏学院」での騒動で生徒たちを守るため奮戦したこともあって生徒達から強い信頼を得ている。
魔術祭典後に父がクーデターを首謀した際にはグレンに励まされて反逆者を自ら討ち取ると宣言し、友軍の総指揮を執る。根本的な魔力や技量の規格差で複製されたリディアに次第に圧倒され、【第七園】の奥義《無間大煉獄真紅・七園》によって絶体絶命になるが、オリジナルと思しきリディアの幻聴によって奮起し、左手の魔術機能を取り戻して第七園を乗っ取ってリディアを撃破。そして父から植え付けられた呪縛を自力で振り解き、炎の魔人と化した大嫌いな父親をグレンが倒すのを援護し、自らの葛藤に決着をつけた。神がかり的な戦勝を収めた後、『最後の鍵』計画によって帝国軍幹部が軒並み戦死していたことから、ミラーノでの戦闘『炎の一刻半』における戦功を鑑みた女王の勅命で《魔術師》へ再任、同時に元帥へと任命されフェジテでの最終戦における総司令官を務める。
魔術戦の技能はアルベルトに迫る程に高く、左腕が使えない状態でもB級軍用魔術を難なく使いこなせる。最も得意とするのは《紅炎公》の所以となった炎熱系魔術で、指定した領域内における炎熱系魔術の起動『五工程』(クイント・アクション)をすべて省略できる眷属秘呪【第七園(だいななえん)】による、領域内における炎の“完全支配”は可能。弱点はもの凄い手間と工数をかけて周囲一帯に幾つもの霊点(レイ・スポット)を魔術的に構築しなければ領域を形成できないことで、このために領域内に敵を誘い込むという罠的な運用がなされるのが常。殺意・悪意を視覚化する索敵系の眷属秘呪【イーラの炎】と多重起動することで領域内で殺意を抱いた者を無力化するなど、事前の準備は必要だが広範囲の敵を一度に倒すことも可能。炎そのもので形成された剣を操る近接格闘戦用の秘伝魔術【焰刃】も使えるので、接近戦でも隙がない。また、イグナイト家が長きに渡り秘匿している独自の情報網を持ち、そこから得られる情報を利用した権謀術策に長ける。ピエラという空戦型の神鳳を子供の頃から飼育している。

アルザーノ帝国魔術学院

2年次生2組

ギイブル=ウィズダン
声 - 本城雄太郎
システィーナに次ぐ成績を誇る男子生徒。位階は第二階梯。
平民の出身で、反骨心とハングリー精神の塊。皮肉屋で周囲となれ合おうとしないが、仲間思いなところもあり周りの雰囲気に流されることもある。錬金術については絶対の自信を持っており、転入早々に高い実力を見せつけたリィエルをライバル視している。日頃毒づきはするがグレンのことは信頼しているようで、学園で【メギドの火】が発動しようとしたときには彼の登場や決断を信じ級友達を説得していた。
カッシュとは正反対な性格で、彼に苦言を呈したり皮肉ったりすることが多いが、いがみ合うほど険悪でもない奇妙な間柄。
正統派な魔術師と言え、“魔術師の強さは手札の強さではなく、切り方”というグレンの教えを愚直なまでに実践する頭脳派で、これまでの弛まぬ努力で学生ではトップクラスの魔術知識と習得呪文数を誇る。身体能力面には不安が残り、近接戦闘は苦手だが、追い詰められた状況で、冷静に逆転の一手を見出せる[25]。魔力祭典選抜会の時点で、魔力容量1950、魔力濃度145と、魔力の質に関しては一流魔術師に匹敵しつつあり[26]、座学試験でも860点(1000点満点)で60人中7位[27]。錬金術でゴーレムを並べて、罠をはり、隙間から魔術狙撃をするという、嫌らしいながらも地道な努力が見える戦法で、決闘戦では勝率80%推移[28]を叩き出し、サブ・ウィザードの1人に選出され、実力、状況判断能力、思考の柔軟性についてはシスティーナからも高く評価されている[29]
ウェンディ=ナーブレス
声 - 石川由依
ワイン製造で財を成した地方の有力領地貴族ナーブレス公爵家の令嬢。高飛車な性格で、お嬢様口調とツインテールが特徴的。両親は普通の思想を持つが、本人だけがなぜかカチコチの前時代的貴族主義者。領地は水も空気もよく、とても過ごしやすい所として有名。
テレサやリンとは実家の領地へ招待するほど親しい。また、「フェジテ最悪の3日間」で命を救われてからは、イヴのことを尊敬している。自称「システィーナの永遠のライバル」だが、周囲からはその思いは一方通行だと指摘されている[30]
位階は第二階梯。システィーナやギイブルに匹敵する実力者だが、不器用かつ少々どんくさく肝心なところでドジを踏む。そのため魔術競技祭では「決闘戦」のメンバーから外されるが、クラストップの【リード・ランゲージ】の腕前を買われ「暗号早解き」に出場し優勝した。代表選抜会の時点での能力は、魔力容量2024、魔力濃度94[31]、座学は775点の13位だった[27]が、決闘戦では性分が災いして勝率約50%推移だった[32]ため、代表選手には選考されなかった。
カッシュ=ウィンガー
声 - 榎木淳弥
大柄な少年。田舎の農家の三男で、センスはあるが、同級生より本格的に魔術修練を始めるのが遅かったというハンデを背負っている。下宿暮らしで、代書屋でアルバイトをしている。
社交的な性格で、友人も多い。学校の行事などで遠出するときは、必ずと言っていいほど女子風呂への覗きを敢行するという思春期の男子らしい行動をとっているが、成功したことはない。グレンに対して好意的な学生の一人だがクラスの美少女達と親しいことには不満があるため、時折同志を募って敵対することもある。ギイブルとは正反対の性質で言い合うも多いが険悪ではない不思議な間柄。
位階は第一階梯でそれほど優秀とはいえないが、身体能力と状況判断力に優れており、魔術競技祭ではウェンディに代わり「決闘戦」に出場した。グレンが担任になってからの半年間で成長し、魔術祭典の代表候補に選ばれるまでになった。最終選考には残れなかったものの、毎日欠かさず続けた魔力錬成の鍛錬の結果、魔力容量1643、魔力濃度85と同年代の平均を超える数値に達し[33]、選抜会の座学試験では545点の28位と半分以上の順位[34]を取っており、決闘戦では勝率約40%推移、強敵相手にも引き分けにまで持ち込むなど良好な成績を収める[32]
セシル=クレイトン
声 - 土岐隼一
女顔で小柄な少年。
読書家で集中力が高く、座学は得意。一方で実技が苦手だったが、魔術競技祭で「魔術狙撃」に出場して好成績を収めて以来、狙撃に関して実力を着実に伸ばしている。フェジテ防衛戦時にはアルベルトに観測手として抜擢され、狙撃部隊に配置された。
リン=ティティス
声 - 山口愛
小柄で小動物的な雰囲気を持つ少女。着やせするタイプで、胸のサイズはルミアに匹敵する。
領地経営に失敗して没落した貧乏貴族の末裔。入学早々ボッチに成りかけていたが、カッシュに紹介されてウェンディと仲良くなったという経緯がある。
自己評価が低く、魔術の実技が苦手なこともあり、魔術競技祭では「変身」に出場することになり直前まで怯えていたが、グレンの後押しを受けて奮起し、最高得点をたたき出している。
位階は第一階梯。
カイ=ファニス、ロッド=リブリー
声 - 落合福嗣(カイ)、須田祐介(ロッド)
魔術競技祭で「飛行競技」に出場、ペース配分の練習を重点的に行ったのが功を奏し3位に入賞した。ややトラブルメーカー。カイは調理技術に関して非常に詳しい。
テレサ=レイディ
声 - 田澤茉純
メリハリの利いたモデル体型の少女。
貿易商レイディ商会の娘。おっとりとした雰囲気とは裏腹に、抜け目のないところがある。休学して魔術祭典を応援しに行く際には、実家の伝手を活用して全員をミラーノまで連れてきた。
天性の豪運の持ち主で、異常に賭け事が強く、イカサマを駆使したグレンでも相手にならなかった。ウェンディのことを「要所でドジさえしなければ、いつでも首席を狙える」と高く評価しており、彼女と度々ペアで戦っている。
念動系の白魔術のうち特に遠隔操作系の魔術が得意。
アルフ=モップス、ビックス=ガヤス、シーサー=エキストラト
声 - 須田祐介(アルフ)
仲良し3人組。チームワークを期待され魔術競技祭では「グランツィア」に出場、グレンの指導によって難度の高い戦術「サイレント・フィールド・カウンター」を成功させ優勝する。

その他学生

リゼ=フィルマー
3年次生の首席で、学院の生徒会長。灰色の髪と黒瞳の怜悧な美少女。グレンからは「キツネ」と呼ばれる。
情報収集に長けており、グレンが隠蔽した不祥事の証拠を握って様々な雑用を彼に任せているが、そのお人好しなところに信頼を置いている。入学したばかりで周囲から浮いていたシスティーナを助けたことがあるため、彼女からは強く信頼されている。
本名はリーゼリット=ルチアーノ。建国以来の大物マフィアにして騎士の家系であるルチアーノ家の跡取りで、左手の甲に家紋である「天翔ける双頭竜」が刻まれている。
やや非力だが、魔術に加え剣術にも秀でるなど文武両道を体現した生粋のオールラウンダーで、凄まじい修羅場をくぐり抜け続けるシスティーナや軍属のリィエルのような規格外を除けば生徒の中でも最強と評されている。習得している呪文も、攻性呪文から法医呪文まで、数も種類も豊富、咄嗟の機転や応用力もあることから「器用万能」とも評される[35]。選抜会では、魔力容量3240、魔力濃度125[26]、座学でも915点で4位[27]と、既にセミプロの域に達しており、学生の身ながら「フェジテ最悪の3日間」でも大人に負けない戦果を出し、決闘戦ではシスティーナ、レヴィンに追随する勝率を上げた。魔術祭典のサブ・ウィザードにも選出されて、選手団随一の柔軟さと状況対応力を遺憾なく発揮する。
ジャイル=ウルファート
声 - 山橋正臣
2年次5組の学生。魔術士らしからぬ大柄で鍛え上げられた体格を持つ、厳つい強面の少年。没落弱小貴族の三男。学院内では札付きの不良として有名。相当な修羅場を潜っているのか精神力はかなり強靱で、競技際では「精神防御」にてルミアと激しい戦いを繰り広げ惜敗した。
ガラも口も悪いが律儀な性格をしており、不良グループの仲間からも慕われている。また、グループの面々を引き連れて地下下水道の定期保守作業なども請け負っている。
自己強化系の魔術を主体とする、生粋の前衛盾兼パワー・ファイター。特に白魔【ボディ・アップ】や黒魔【トライ・レジスト】の自己防御系魔術の技量が高く、とにかくタフで頑健であり、どんな状況でも最後まで2本の足で立っている[36]。魔術祭典の代表選抜会では、魔力容量2380、魔力濃度131[37]、座学試験685点の21位[34]、決闘戦では勝率85%推移[38]とかなり優秀な記録を出しており、グレンからも只者ではないと思われている。
アース=カメンター
声 - 中尾智
魔術競技祭実行委員会として実況を担当した男子生徒。アニメ版ではグレンとレオスの魔導兵団戦でも実況を務めた。
クライス=アインツ、エナ=ウーノ
声 - 小川ゲン(クライス)
2年次生1組の生徒。共に1組では上位の生徒で、競技祭にも出場している。
アセロ=イエロがフェジテを襲った際には恐怖心に負けてルミアを責め、決戦が開始されてからも避難所にとどまっていたが、彼女が自分たちのために犠牲になろうとしている様子をナムルスに見せられて奮起し、結界の補助に駆けつけた。
アルフォンス=アルガント
3年次生の男子生徒。帝国議会上院議員の息子であり、家柄を傘にきた高慢な性格。
リゼに前年の生徒会選挙で敗れたことを根に持ち、彼女を失脚させ生徒会に代わる「学生議会」を立ち上げようという野望から、上流階級へ不満を抱く生徒たちを扇動して学院に「特別講座」の半額化を要求するデモを行う。しかし、(自称)学院側全権交渉者のグレンが時間を稼いでいる間にリゼが学院の説得を成功させたことで計画が頓挫、裏で行なっていた数々の犯罪行為を暴かれたことで警邏庁に連行される。父親の権力で即日釈放され、取り巻きを率いてリゼに復讐を目論むも、彼女が自分よりも格上のルチアーノ家であることを知り、恐れをなして逃げ去った。
マリア=ルーテル
1年次生。仄かに桃色がかった色素の薄い髪の少女で、華奢で小柄な身体つき、よく整った顔立ちに大きなくりくりした瞳のために、小動物的な印象を与える。
国籍はアルザーノ帝国だが、実はレザリア王国の出身。実家は教会で、幼少期からの習慣で旧教を信仰しており毎日の礼拝を欠かさない。しかし、何らかの理由で捨て子となり、現在はフェジテにある修道院で下宿しながら学院に通っており、故郷への帰還は帝国と王国の不安定な関係では無理だと諦めている。
誰に対しても分け隔てなく絡んでいくコミュ力の怪物。色々言動性格に難があり、少々うっとうしいが、明るく人懐っこいので邪険にし辛い。「フェジテ最悪の3日間」における英雄であるグレンに憧れており、学院では彼にやたら絡んでいる。
周囲にはあまり見せないがかなりの努力家で、ひたむきな努力と鍛錬の賜物なのか、卓越した魔力容量を誇り、中でも白魔術の腕前は学生離れしている。
魔術祭典に出場して有名になって父親と再会したいという願いから代表選手団入りを目指し、優れた才能から1年次生ながらに選手の1人に選抜され、その性格からマスコット、あるいはムードメーカー的な立ち位置を確立する。劣っている体力面と戦闘経験を補うために、基礎体力訓練や魔術戦の地稽古などの地味でハードな訓練メニューを課されているが努力で乗り越える。
本名はミリアム=カーディスといい、《無垢なる闇の巫女》を輩出する血族の生き残りであるカーディス家の出身で、聖エリサレス教会司祭枢機卿を勤めるファイスの実娘である。隔世遺伝で《無垢なる闇の巫女》の力を生まれ持ってしまったため、8年前に死んだことにして別人としてアルザーノ帝国へ送られたのだが、魔術祭典の直後にジャティスの指示で誘拐され、《邪神兵》招来の儀式に利用されてしまう。
ハインケル=ベーツ
2年次1組の生徒。長身痩躯で寡黙な少年。魔力制御の感覚に優れ、遠距離からの面制圧系攻性呪文の操作を得意とする。さらに近距離魔術戦も高いレベルでこなし、懐に入られても足手まといにはならない[39]
魔術祭典の代表選手団に選抜され、イヴの指導の元で支援火力役としての訓練を積んだ。

講師・教授

リック=ウォーケン
声 - 浦山迅
アルザーノ帝国魔術学院学院長を務める初老の男性。若い頃は精霊使いで、剣を片手に遺跡探検をしていた。
立場上グレンやルミア、リィエルの素性を当初から把握しており、学院内で起こる生徒や職員が原因のトラブルの数々に頭を悩ませている。「フェジテ最悪の3日間」においてはセルフィと共に奮闘し、事件後にマキシムの策略で一時更迭されたものの、彼の失脚により再び学院長に返り咲いた。
セルフィ
リックと契約している水の精霊で、外見は10代前半だが人間の数倍の時を生きている。彼の妻を自称しているが、周囲からの視線を気にするリックの意向により学院では滅多に姿を現さない。
ハーレイ=アストレイ
声 - 川田紳司
2年次生1組の担当講師。若くして第五階梯に至った天才魔術師。26歳。
性格は典型的な昔気質の魔術師で、教え方も古臭く、権威主義者、傲慢で尊大、頑固、自分以下の人間を見下すというとっつきにくさから苦手意識を持たれることも多い。2年次生2組の生徒たちに対しても「雑魚供」呼ばわりしたり、セリカに対しても嫌悪感を隠さないなど当初から暴言が目立つ。しかし「真の魔術師」としての矜持があり、勝ち目がなくとも決して戦いから逃げない信念も持っている。
人の名前をフルネームで呼ぶ癖がある。経歴の低さからグレンのことを毛嫌いしているが、当のグレンには「ハーなんとか先輩」など適当な名前で呼ばれ相手にされていない。年齢の割に生え際が後退していることを気にしており、グレンに「ハーゲイ先輩」と呼ばれた時には激怒した。一応内心ではグレンの実力は認めており評価もしている。
炎熱・冷気・電撃を操作する「活性/流動系」と物質のエネルギー密度や分布を操作する「収束/分散系」が専門分野。最小限の魔力で最大限の効果を生む方法を突き詰め、C級軍用攻性呪文の軽さと魔力消費でB級の物理作用力をもたらす「収束起動」という超技巧を編み出している。さらに失伝魔術であるはずの「力天使の盾」の効果すら条件付きで再現するという優れた研究者としての側面も見せている。
自分の研究成果を守るためと言いつつも、実は学院や生徒を心の底から本当に大切に思っていたらしく、「六英雄」のラザールの襲撃で多くの講師や教授が怯える中でもセリカが駆け付けるまでツェストと二人で奮戦し続けた。
ツェスト=ル=ノワール
声 - 宮崎敦吉
アニメ版は「ツェスト=ド=ノワール」表記。
アルザーノ帝国魔術学院の教授で精神作用系魔術の権威。領地貴族ノワール男爵家当主。位階は第六階梯。
伊達男だが、精神魔術で少女の心を汚染していくのを見るのが好きな変態であり、オーウェル共々学院内では危険人物とされ、リックも内心クビ候補に挙げている。通称「変態男爵」。
ただし、魔術師としての実力は非常に優れており、勝てはしなかったものの「六英雄」のラザール相手に精神魔術を駆使して味方の損害を抑え、驚異的なまでの粘りを見せた。
オーウェル=シュウザー
アルザーノ帝国魔術学院の魔導工学教授。学院に毎年莫大な出資をしている領地貴族シュウザー侯爵家の当主で、第五階梯に至った若き天才。
根本的にはマトモな愛国者だが、あり余る熱意と才能があさっての方向に空回りする変人。通称「天災教授」。常識を変えるような凄まじい発明をいくつも片手間で行っているが、自分ではその凄さをまるで理解しておらず、間違った使い方ばかりしている。発明品の検証助手に選ばれた者は決まって強烈なトラウマを植え付けられるため、教師の間では公然と「生贄」と呼ばれている。なお、一緒にするとより危険であるためセリカだけは助手に選ばれていない。助手を務めた一件以来、グレンのことを最大の好敵手かつ心友として一方的に認め、以降も発明の検証に無理矢理巻き込んでいる。
セシリア=ヘステイア
アルザーノ帝国魔術学院の医務室に勤める法医師。儚げな印象の美女で、新聞部の学内ランキングでは「守ってあげたい儚げな美人ランキング」で常に首位を独走している。19歳。
例外的に公的な立場で法医治療を一般人に施すことを許されている、法医術研究の大家であるヘステイア家の出身。若くして第四階梯に至り、法医呪文や魔術薬学に関する造詣や腕前は学院随一。切断された腕を元通りに接合できるほどの技量を持つなど将来有望だが、生まれつきほぼすべての内臓が弱い虚弱・病弱体質で、頻繁に吐血する。その虚弱さから教師の道を断念した過去を持つ。
ほんの一部の特権階級だけしか法医治療を受けられない現状を憂いており、将来的には平等に治療を受けられる「法医院」を設立することが夢。その夢を叶えるため、法医術の研鑽をしつつ、魔術に関する法律などを学び、講演会を通して自分の考えを広め、魔術師としての位階を高めて魔術学会での影響力を得ようと努力している。
レオス=クライトス
声 - 小野賢章
クライトス伯爵本家の嫡男で次期当主候補。システィーナの婚約者。容姿端麗な男性。エレンの兄。
昔からシスティーナに求婚しており、システィーナ自身も幼いころは彼に憧れを抱いていた。しかし、魔導考古学者という彼女の夢を否定するようになったことですれ違いが生じており、その好意は薄れてしまっている。
私立校であるクライトス魔術学院の教師で、帝国総合魔術学会でも名の知られた有名人。病気による長期療養という名目で表舞台から遠ざかっていたが、特別講師としてアルザーノ帝国魔術学院に赴任、高度な軍用魔術理論を普通の学生に理解させる高い指導力から一気に人気を取る。その知識量は素晴らしくグレンも感服していたが、一方でそれに伴う実践と経験がまるで伴わない知識だけの付け焼刃にされたような姿に当初から違和感を抱いていた。
実は学院に赴任した時点でジャティスに「天使の塵」で操られており、グレンとの魔導兵団戦で引き分けた直後に限界を迎え中毒死した。その後は正体を現すまで、ジャティス本人が変身魔術でレオスに成り代わっていた。
ローレンス=タルタロス
魔術教授の一人で楽奏クラブの顧問を務める文化人。恰幅のいい中年男性。ルミア暗殺計画が持ち上がったころにはすでにザイードの「魔曲」の影響下に置かれており、自分を研究会の協力者だと思い込まされて計画に荷担させられていた。
マキシム=ティラーノ
「マキシム魔道塾」という私塾の塾長として貴族の三男坊を中心にアマチュア軍人としての魔術師の育成を行っている初老の男。魔術学院の第366期卒業生。在学中は、優秀だが非常にプライドが高く、同期との諍いが絶えなかった問題児で、卒業後は人間関係の問題を起こして各地の魔術関連機関を転々としていた。かつて魔術学院学院長だったが人間関係の問題でリックにその座を奪われたことがあり、武断派の教導省関係者や理事会有力者への賄賂とコネを使い、「フェジテ最悪の三日間」を経てリックを更迭し魔術学院の新学院長に就任する。
極端な武力至上主義者で、そこに直結しない科目を切り捨てる仕分けを敢行しようとした。しかしグレンの行動パターンをインプットした「複製人形(コピー・ドール)」に反感を抱かれ、決闘を申し込まれたうえにカツラを大衆の面前でむしり取られてしまう。威信を取り戻すために「裏学院」での生存戦をグレンに持ち掛けるも、2週間の特訓を経た2組の生徒たちに教え子を次々と倒され、さらには突如として現れた「本の怪物」に圧倒されて完全に戦意を喪失する。その際、グレンから教育者としての在り方について説教されて反省し、脱出後セリカが集めた裏工作の証拠を提示され学院長を罷免となったときも反論せず「自分が人に物を教えるのは早かった」と素直に認め退陣した。
フォーゼル=ルフォイ=エルトリア
学院の魔導考古学教授。37歳の独身男性。雰囲気は陰鬱でダウナー系、偏屈で頑固そうなしかめ面、獅子の鬣のような金褐色の髪、鍛え上げられた歴戦の猛者か荒武者のような風貌。一方で行動はアッパー系でアグレッシブ、人の話を全く聞かず、自分勝手で我儘で頑固な性格と、非常に性質が悪い駄目人間。女性に危険を侵させるわけにはいかないと考えているが、言動のせいで男尊女卑の思想を持っていると思われがち。
魔導考古学研究に全てを捧げており、研究のためなら莫大な費用を経費として無断で払い、遺跡への不法侵入や盗掘などの犯罪行為さえ辞さず、国家が絡む仕事にも協力しないという問題人物。しかも、論文はたまに論理が強引で支離滅裂になるので、人から理解を得られない。加えて出版物もほとんど売れていない。システィーナとは魔導考古学について意見をぶつけ合う喧嘩友達のような関係。
東方では“九十九拳”と呼ばれた徒手空拳の極地《天曲》の達人で、危険な遺跡からも難なく生還し、小隊規模の魔術師なら瞬時に制圧できるほど強い。
ロラン=エルトリアの子孫であるが、いろいろ面倒なので気を許した相手以外にはフルネームを明かさないようにしている。暗号文章の中に書き手の感情と記憶の全てを出力し、隠匿する1つの小世界を構築するという「エルトリア暗号」を解読できる唯一の人物[40]で、その暗号を用いて記述された「アリシア三世の手記」の解読を半ば強引にグレンから引き受けている。
魔術祭典の代表選抜会の時は、1週間がループしていることを知らされないまま、グレンの頼みで《ル=キル時計》の謎解きを手伝う。数々の不始末の埋め合わせで魔術祭典の監督補佐を任されるが、職務を放棄して遺跡都市の探検に行ってしまう。決勝前夜まで戻らなかったが、その間に手記の解読は済ませていた。クーデター時には向こう1年間グレンを助手にすることを条件に、反乱軍の鎮圧に協力する。

アルザーノ帝国王室関係者

アリシア=イェル=ケル=アルザーノ七世
声 - 大西沙織
現アルザーノ帝国女王。ルミア(エルミアナ)の母。かつては「アルザーノの白百合」と呼ばれた美女で、今でもその美貌は衰えを知らない。アルザーノ帝国魔術学院の卒業生で、社交舞踏会では亡き夫と共に「妖精の羽衣」を勝ち取ったことがある。
ルミアのことは愛しているが、政治的問題から彼女を放逐したことに長年負い目を感じている。魔術競技祭の観戦のため魔術学院を訪れた際、エレノアが施した呪いによって暗殺されかけ、解呪する条件としてルミアを殺さなければならない状況に追い込まれるも、グレンたちの尽力により事なきを得る。その後、あらためてルミアと向き合い和解し、彼女にお守りとして魔術触媒となる香油を贈った。
平時の行動が自然と人を跪かせる覇王のカリスマを持ち、その気になれば世界を支配できるほどの大器がある。
グレンのことは部下としてだけでなくルミアの命の恩人として信頼すると同時に、彼が心をすり減らして辞職したことに負い目を感じている。また、娘がグレンに惚れていることを見抜いており、その恋路を応援している。
魔術祭典の最中に行われたレザリア王国との首脳会談では舌戦で交渉を有利に進めていくが、各勢力それぞれの思惑により和平を妨害され、ジャティスの介入がとどめとなり目標達成に失敗する。《邪神兵》招来によって揺れる各国首脳陣を圧倒的なカリスマで従えるも、帝国軍を洗脳してクーデターを起こしたイグナイト卿に命を狙われる。親衛隊総隊長らの犠牲もあってその場から脱出した後は、自らを囮とするイヴの作戦に賛同し戦場に現れた。
ゼーロス=ドラグハート
声 - 長谷川敦央
王室親衛隊総隊長を務める初老の男。40年前の奉神戦争を生き抜いた猛者で、二刀細剣の達人。かつては『双紫電』の異名で呼ばれていた。言葉少なで分かりにくいが女王や国家へ対する忠誠心は本物であり、必要であれば自分を犠牲にすることも厭わない武人。同時にルミアの事情を知る人物でもある。
エレノアに命を狙われたアリシアを守るため、己を犠牲にする覚悟で王室親衛隊を動員しルミア殺害を図る[注 4]。助太刀に入ったグレンの妨害により失敗するが、状況を理解した彼の【愚者の世界】で呪いは無効化されることになった。
グラッツ=ル=エドワルド
女王府官房長官を務める片眼鏡の老紳士。爵位は侯爵。「円卓会」のメンバーでもある。かつては《ワルドの金獅子》と呼ばれていた。話が長くつまらないのが玉に瑕。
アゼル=ル=イグナイト
女王府国軍大臣兼、国軍省統合参謀本部長。巌の表情に顔の向こう傷の赤毛の男。帝国王家の分家筋にあたる三大公爵家の一角。前《紅焰公》。武断派の筆頭で、レザリア王国に対抗するために軍拡を主張する。
女王を温いと評し、自らが真に強き指導者として滅びゆく帝国を救うという野望を持つ。数十年に一人の傑物ではあるが、他者に対する理解に乏しい。自分の考えが最も正しいと絶対視してそれ以外の考えを否定する視野の狭さ、他者を過小評価してまるで顧みない姿勢を取るが、内実は小心の小物であり、自分が圧倒的有利な状況では賭けに出ることができない。己の薄汚い欲望と野望を正義がある尊いもののように語り、矜恃や信念という小綺麗な言葉で矮小な醜さを取り繕うことから、イヴからは史上最低最悪のゲスでクズと内心嫌悪されていた。
イヴの父親だが、虐待のような理不尽な扱いを強いており、私生児の彼女を「卑賎」扱いして恐怖で支配している。次期当主の“予備”であったアリエスを魔術で焼き、表向きは“病死”したことにして、新たな“予備”として放逐していた庶子のイヴを引き取り、嫡子のリディアが魔術能力を失った後はイヴを次期当主に据えリディアを処分するが、彼女が失態を繰り返したことで勘当し公爵家から追放している。
かつて接触してきた大導師から魔将星に転ずるための“赤い鍵”を受け取っており、その力を高めるべく、10年以上前には疫病の根絶という虚偽の題目を掲げて「グスタの悲劇」と呼ばれる無辜の人民に対する虐殺を引き起こす。
「フェジテ最悪の三日間」の折、アンドリューの捕縛を敢行し、円卓会の文治派メンバーの発言力を低下させ、後釜に武断派を加入させて自身の発言力を高めている。【英霊再臨の儀】の雛形になる『Project:Revive Life』を手中に収めるために蒼天十字団を一時的に牛耳り、儀式の完成後はイリアの幻術で不良債権となった蒼天十字団を一斉摘発させ、自らを英雄として国内での発言力と影響力をさらに高める。
《邪神兵》降臨で混乱する各国首脳陣に対して女王が覇王のカリスマを見せたことで切羽詰まり、自らの野心のままに女王を弑しようと帝国軍を洗脳して急遽クーデターを起こし、首脳陣を人質に取り、情報操作を行ってその汚名を女王に着せる。あと一歩で女王まで手が届くところまで追い詰めるも、システィーナらの援護により取り逃し、3日後、女王も友軍も囮とするという大胆な策を立てたイヴに翻弄されて、小心ゆえに兵力を二分するという愚を犯し、リディアしか周りに居なくなった状況でグレンとイヴから攻撃を受ける。格下であるはずのグレンに手こずるも、【愚者の世界】が途切れたタイミングを見計らって切り札の“赤い鍵”を使い、《炎魔帝将》ヴィーア=ドォルに転生。グレンを追い詰めたが、トラウマを乗り越えたイヴの加勢でグレンに敗北。【愚者の一刺し】を受けて全身が崩壊しつつある中、魔人としての身体と力を全て放棄して、全身に醜い大火傷を負ったまま逃走を試みるが、かつて自分が切り捨てた娘に復讐され、短剣で滅多刺しにされ死亡した。
前《紅焰公》だけあって近接魔術戦の達人であり、格闘戦でもグレンと渡り合う。娘たちや配下の兵士には“イグナイトという名への心酔、畏怖、忠誠”といった崇敬する心を“楔”とした誓約系の呪いを施し、自分の言葉に逆らえないように魔術的処置で洗脳している。イグナイトの名声を高めることに執着していたのは、この術で支配できる手駒を増やすためでもある。
エイブラム=ルチアーノ
帝国老舗マフィア『西マハード会社』を牛耳るルチアーノ家現当主。爵位は騎士爵。派手な伊達姿の傾き老人。
ルチアーノ家は、帝国の裏社会を取り仕切る建国以来の大物マフィアでありながら女王に忠誠を誓い、代々伝統的に騎士の称号を与えられ、円卓会にも席を持つ大家として有名。
アンドリュー=ル=バートレイ
円卓会のメンバーで三大公爵家の一角。文治派の筆頭で「蒼天十字団」を運営し、裏では天の智慧研究会の「急進派」に協力していた。「フェジテ最悪の三日間」の折にアゼルに捕縛され、その際に死亡する。
アリシア三世
およそ400年前に在位していた第13代女王。病床に伏せる先代女王に代わり10代半ばの頃から政務を引き受ける傍ら、王宮を抜け出して幼なじみのロランと魔導考古学の探究に励んでいた。
帝国の栄光と発展は魔術にありという卓越した先見の明から、当時各魔術ギルドや魔術結社に散逸していた知識や技能を国が全て統括するという方策を打ち出した名君で、その集大成としてアルザーノ帝国魔術学院を設立し、その初代学院長となった。その一方で晩年は原因不明の病に冒され発狂していた、異能者の迫害を始めた最初の人物、「蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)」の創設者、「Project:Flame of megiddo」や「Project:Revive Life」を最初に打ち立てたなど非常に曰くの多い人物でもあり、その最期は公的には病死とされるものの死因には様々な説が存在している。「何かとてつもない脅威が空からやってくる」「遥か遠き後世、聖なる王の血より生まれ落ちる悪魔の化身が国に災いをもたらす」といった予言をしていたとされている。
フェジテで《嘆きの塔》を発掘して以来、《魔王遺物》と《禁忌教典》の存在に取り憑かれ、アルザーノ帝国魔術学院を運営する陰でロランの忠告を無視して研究を継続していた。だが、《封印の地》で王家の家系図を見たことで、「アルザーノ王家は《天空の双生児》を生むための孕み袋で、女しか生まれないように魔王の呪いを受けていること」「アルザーノ帝国は禁忌教典に至るために魔王が作った広大な魔術儀式場で、アルザーノの民は畜産増殖された生贄であること」に気付いてしまい、発狂して二重人格障害者になっていた。狂気に陥った人格と正気の人格が存在し、狂気の人格は魔王が《天空の双生児》と共に世界へ再降臨し《禁忌教典》を手にして世界を破滅させると確信して、《禁忌教典》に対抗する《Aの奥義書》を作るために裏学院を構築、蒼天十字団を結成し、英雄クラスの人材を保存する【Project:Revive Life】や《嘆きの塔》をフェジテごと吹き飛ばすための【Project:Flame of megiddo】といった禁断の魔術を研究させ、未来に己の血統から生まれる《天空の双生児》を根絶する慣習を広めるために異能者に対する差別と弾圧を行った。それを食い止めようとした正気の間で完全に自己矛盾した行動をとり、最期は「Aの奥義書」を「裏学院」ごと封じた後で、自ら拳銃でその命を絶った。
ロラン=エルトリア
400年ほど前の人物で、「魔導考古学の父」と呼ばれる近世では有名な魔導考古学者であり、童話作家。代表作はメルガリアンのバイブルである「メルガリウスの天空城」、童話にして古代神話大成である「メルガリウスの魔法使い」。アルザーノ王家の遠い親戚で、ひと回りほど歳下のアリシア三世と共に研究を行っていた。子孫のフォーゼルとそっくりなノリをした人物で、“正義の魔法使い”の真の顔を知るために魔導考古学者になったが、学問にかまけるあまり妻子に愛想を尽かされている。
聖暦前古代史研究を行う課程で世界各地に伝わる古代の神話・伝説・民間伝承を独自の分析・解釈を元に編纂していた。研究の末に《禁忌教典》と《魔王遺物》の存在に触れ、超魔法文明が暗黒と悪夢の世界だと知り、魔王遺物が世に出れば国が滅びるほどの大混乱が起きると懸念して夢を断念した。魔王や魔王遺物とは直接関係のない物語を童話として編纂し直し「メルガリウスの魔法使い」を出版するが、それから5年後、魔王遺物である「無垢なる闇の印」を刻まれた神官家の生き残りを探して単身レザリア王国に足を踏み入れるも、聖エリサレス教会がひた隠しにしていた“外宇宙の邪神”を囲っているという秘密に迫ったため、異端者として捕らえられ「邪悪な思想の書籍を世に出し、無辜なる民を惑わした罪」で火刑に処された。
原作に記されている言葉「教典は万物の叡智を司り、創造し、掌握する。故に、それは人類を破滅へと向かわせることとなるだろう。」は火刑台に上った彼が最後に残したとされる言葉。
ルーシャス
アリシア三世の夫。ロランとも古い付き合いであった。夢を追うアリシアが好きだったと、ロランが魔王の研究から手を引いた後も彼女の研究を黙って見守っていたが、最期は発狂した妻に射殺される。
その正体は古代の魔王の人間としての姿のひとつ。正体に勘付いたアリシア三世に殺されたが、その思念体は「アリシア三世の手記」に干渉し、彼女の記憶に自分の記憶を重ねることで“魔王の正体”を検閲削除していた。エルトリア暗号を解いたグレンを手記の精神世界に閉じ込めたが、1つのミスで正体を見抜かれる。「無垢なる闇の印」で眷属を召喚しグレンを殺そうとしたが、精神世界に突入してきたシスティーナ、ルミア、リィエルによって失敗、グレンを正位置の愚者と認め【イクスティンクション・レイ】を浴びて消滅する。

帝国宮廷魔導士団

現職者

クリストフ=フラウル
声 - 逢坂良太
帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー5法皇。涼やかで落ち着いた物腰の、10代後半の少年。自他共に認める女顔。
生来、虫も殺せぬ優しく穏やかな性格であるが、心の奥底には不屈の闘志と女王に対する強い忠誠心を持っている。本気になった戦い方は非常に荒々しく、言動も普段のものは大きく異なるものへと変化する。女王のために命を捨てる覚悟をしており、ジャティスは「真の忠義に生きる者」と評している。
魔導の名門フラウル家の出身で、特務分室ではまだ若輩ながら結界魔術に関しては随一の実力者。結界術を近距離魔術戦でも使えるようにした宝玉式結界魔術を得意とする。
真理を探求する研究者としての魔術師の家系であるが、幼い頃にアリシア7世の卓越した能力とカリスマ性に心酔し、女王の役に立ちたいと家族の反対を押し切ってアルザーノ帝国軍士官候補学校に入学し、職業軍人の「魔導士」を志す。攻性呪文に決定力がないため1対1の戦いで力を発揮するのは苦手だが、“直接的な戦闘では然程目立たぬものの、結界魔術を瞬時に展開し、部隊の戦術を大幅に広げられる希有な人材”と学生時代から高く評価され、卒業直前には様々な部署からスカウトを受けていた。当初は王室親衛隊に入るつもりでいたが、城塞都市ハノイでの遠征実習訓練中にアンダンテのテロに巻き込まれ、特務分室の面々と共に事件を解決し、その際に自身の結界魔術が役に立ったことがきっかけで特務分室への入隊を決意した。
グレンのことを慕っていたため彼が帝国宮廷魔導士団特務分室を去ったこと自体には怒りを感じてたものの、今でもグレンを大切な仲間と感じており好意的に接している。基本的に温和な性格だが、イヴを完全に「貰い手のいない嫁き遅れ」扱いする曲者でもある。
ルミア暗殺計画の一件でグレンと再会し、任務では研究会のグレイシアと戦う。『フェジテ最悪の3日間』では、ハーレイらと共同でメギドの火を無効化する 結界魔法法陣【ルシエルの聖域】を作り上げ、そのメイン制御を任される。蒼天十字団一斉検挙の際には、アルベルトに始末されたことにして影で作戦行動を取っていた。
バーナード=ジェスター
声 - 小山剛志
帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー9隠者。分室内でも古株の老人で、グレンからは「ジジイ」、アルベルトからは「翁」と呼ばれている。若かりしころは奉神戦争などで活躍した英雄であり、当時は執行官ナンバー8《剛毅》として魔闘術を奮い、敵からは「破壊魔人」として恐れられた。グレンにとっては格闘術の師でもある。
女好きかつ飄飄とした性格で好戦的。ジャティスからは「生死の狭間にいなければ生きている実感を得られない究極のスリルジャンキー」と評されている。望めば千騎長、万騎長などの高位軍階にも就けたはずだが、出世して責任が伴えばサボることもできないと、軍規違反を繰り返し、他人に戦果を譲ってまで十騎長の地位にしがみついている[41]。公文書を偽造してまでアルベルトを騙してからかっている一方で、辛い現実に苦悩するグレンやイヴには年長者としての気遣いを見せる。特にイヴは幼い頃から何かと面倒を見てきたこともあり、現在のような彼女として振舞う生き方しか選べなかったことに複雑な思いを抱いている。人を見る目は確かで、上層部が“使えない”と切り捨てたグレンを拾い上げ、エースになるまで鍛え上げた[41]
敵味方を問わず「食えない男」と評されており、全盛期に比べれば魔力量も衰えて魔闘術の冴えも失いつつあるとされるものの、マスケット銃の早撃ちや鋼糸術など様々な道具の扱いに習熟し、ワイヤーアクションを用いた人間離れした変態的な軌道で動き回り、巧みな話術で相手を翻弄するなど、周囲に引けを取らない実力を備えている。
ルミア暗殺計画の時にグレンと再会、初戦ではゼトを退け、再戦時はザイードに操られたイヴの足止めをした。『フェジテ最悪の3日間』では、不調のイヴに代わり総指揮官を務めながらも、自ら前線で奮闘し味方の士気向上に努めた。蒼天十字団一斉検挙の際には、アルベルトに始末されたことにして影で作戦行動を取っていた。
エルザ=ヴィーリフ
聖リリィ魔術学院学生→帝国魔導士団特務分室執行官ナンバー10運命の輪[19]。階級は従騎士長。
眼鏡が特徴の生徒。学院に向かう鉄道に乗る際にリィエルと出会い、何かと世話を焼くようになる。成績優秀、礼儀正しく物静かで心優しいが、誰に対しても一定の距離を置いており、派閥にも属していない。
その本質は剣士であり、抜刀術「春風一刀流」の使い手。異邦人ながらも帝国のために軍人として尽くした父に憧れ軍学校に通っていたが、2年前に父を疎んだ「天の智慧研究会」が刺客として送り込んだイルシアに両親を殺害された挙句、叔母のマリアンヌら親戚に遺産を奪われ、しまいには軍学校を辞めさせられ夢までも奪われた。さらには事件に起因するトラウマを発症し、生家を焼いた「炎」、イルシアの髪の色である「赤」、両親が死ぬときに流れた「血」を直視すると錯乱するようになってしまった。親しい友人がいなかったのは、このトラウマのために周囲に迷惑[注 5]をかけてしまっている後ろめたさによるものである。
マリアンヌに「イルシアがリィエルと名を変えて軍に在籍している」という嘘を吹き込まれ、彼女を倒したら軍学校に戻すという約束でマリアンヌに加担する。留学中のリィエルの面倒を見ていたのも彼女の所作を観察し仇討を成功させるためだったが、仇討を決行した直後にマリアンヌに騙されていたことを知り絶望のまま捕らえられる。しかし、全てを許したリィエルと和解し、トラウマを乗り越えマリアンヌを討ち果たした。事件後はリィエルに対し友情以上の感情を抱くようになり、いつか彼女と肩を並べられるような剣士になるため鍛錬に励むようになる。
秋休みの後にはその甲斐あって帝国軍からスカウトの声がかかり、特務分室に配属されかつて父のナンバーを拝命。最初の任務として魔術祭典におけるグレンたちの護衛に付く。
アルベルト=フレイザー
声 - 高橋広樹[18]
帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー17。長髪で鷹のように鋭い目つきを持つ、22、3歳の青年。特務分室の最強エース。
本名をアベルといい、13年前に住んでいた村を悪魔に襲われて両親を殺され、姉とともにパウロ牧師に引き取られて5年間厳しい魔術の訓練を受けながら育ち、司祭の資格を取得する。若さに似合わぬ能力の基礎はこの時期に培われた。だが、8年前に師父が「天の知恵研究会」の一員で、彼こそが《葬姫》の分霊を宿す姉を利用するために親を殺した仇であること、さらに家族同然の他の孤児たちを儀式で犠牲にしたこと、そして自分が1を捨てる決断ができなかったせいで再び家族を全員失うという悲劇に絶望。外道魔術師を滅ぼすため、自らの甘さと共に名前と神への信仰を捨て、“9を救うために、1を切る”主義を生涯貫き復讐者として生きた謂れを持つ“偽りの英雄”アルベルト=フレイザーを演じ続けている。その過去から、ジャティスは「復讐鬼」「報われない茨の道を行く聖者」と評する。
リィエルと共にグレンとはよく組んで仕事をした仲で、彼が辞職して以降一人でリィエルの手綱を取り続けた苦労人。グレンが理想と現実の間で精神をすり減らしていたことに気づき案じていたが、自分たちに何も言わずに姿を消したことには怒っていた。一見効率と数字を信奉する冷血漢のようだが仲間に対しては義理堅い。現実主義者であるため10を救おうとする理想主義者のグレンとは馬が合わないが、長い間相棒として任務をこなしていただけのことはあり、戦闘時の息の合い方は見事なもの。帝国民を守るという強い信念のもと、必要悪として己の正義を実行する。
搦め手を一切使わず、正確無比な魔力制御による的確・適切な魔術運用を行うという正統派魔術師の教科書のような強さを持つ。主力にするのは規格化された軍用魔術のみ(後述のように極限まで洗練・最適化された完成品である)で、固有魔術、眷属秘呪、秘伝魔術は1つとして使えないが、ずば抜けた判断力と分析力、幅広い呪文と知識で、あらゆる局面に対応、凌駕してのけるという、桁違いの本体性能が最大の強み。その結果として狙撃の腕は世界でも5指に入るとされ、「帝国随一の狙撃手」の異名で呼ばれ、条件さえ揃えば観測手なしの3000メトラ級狙撃さえ的中させる。グレンと組んだ時には【愚者の世界】の範囲外から、黒魔【ライトニング・ピアス】や、それを改変し固有魔術レベルにまで昇華した光速の超・長距離狙撃用攻性呪文の黒魔改【ホークアイ・ピアス】などを使って敵魔術師を攻撃していた。狙撃手と呼ばれながら単独での近接魔術戦にも長けており、一節詠唱のみならず時間差起動や二反響唱、B級軍用魔術の三節詠唱すら可能。上述した司祭としての経験から神学の知識も豊富で、上級悪魔の分霊を単独で消滅させる悪魔祓いの技術も持ち、B級軍用魔術【プラズマ・フィールド】を独自改良し、数十条を超える聖なる稲妻で悪魔を滅ぼす黒魔改【パニッシュメント・ホライゾン】も完成させている。また、東方の武術・骨法を習得しているため近接格闘戦でも強く、ナイフの投擲も得意とする。効率無比な“戦略”を立てられるクレーバーさから、特務分室で唯一セリカに勝利しうる可能性を持つとも言われている。さらに、普段から「他人を演じている」ためか高い演技力を身につけており、潜入に役立てている。一方で真面目過ぎて融通が利かず、物事を額面通りに捉えて柔軟な対応ができないという欠点があり、またバーナードに騙されて奇行に及ぶこともある。
グレンの再就職後は、しばしば彼が関わる案件で共闘する機会が増えている。白金魔導研究所の一件では洗脳されたリィエルに致命傷を負わされたグレンを治療し、研究会に内通していたバークス所長を始末する。ルミア暗殺計画ではヴァイスの殺害と、ザイードの無力化を行う。『フェジテ最悪の3日間』では援護狙撃部隊の指揮を取り、敵ゴーレム人形の狙撃や《炎の船》の魔導砲を潰滅させるなど大きく貢献する。蒼天十字団撲滅作戦ではイリアの危険性に狙撃手である自分だけが対抗できることから、狂言で女王の暗殺未遂を引き起こす。討伐部隊の精鋭魔導師15名を狙撃で倒し、新任執行官の《剛毅》《太陽》《節制》の3名も圧倒して魔術師生命を断つ。そしてリィエルを人質に取られたグレンと熾烈な戦いを繰り広げ、リィエルを犠牲にすることへの苦悩により僅差で敗北する。作戦前に『封印の地』での任務で深層領域で国の根幹に関わる真実を知り、フェロードから“青い鍵”を渡されていたが、グレンとの問答で仲間を頼る決断をしたことで鍵を砕き、帝国の秘密をバーナードとクリストフに相談する。イグナイト卿によるクーデターの際に怨敵パウエルに遭遇するもバーナード・クリストフと共闘してなお歯が立たず、瀕死の重傷を負った上に右目を失うという惨敗を喫したが、身を隠して『炎の一刻半』には駆けつけた。最終決戦を前に固有魔法として創った義眼の移植という難題をセシリアに依頼、無事に成功を収めた。
イリア=イルージェ
帝国宮廷魔道士団特務分室所属、執行官ナンバー18
イグナイト卿の直属の配下であり、空席だった《月》の地位を利用して幻術で様々な工作を行なっている。【英霊再臨の儀】に必要なリィエルの『パラ・オリジンエーテル』入手任務では、『シオン・ライブラリー』を持つサイラスの元へ潜り込むと共に、蒼天十字団を検挙するために軍上層部を幻術で誘導する。アルベルトの討伐任務では法医術の達人ということにして、小隊運営の管理監督役(チーフ・マネージャー)でグレンたちに同行、後方支援を行っていたが、グレンを騙すためにセラの名を使ったことが仇となって幻術を見抜かれており、儀式中にイヴの襲撃を受け、幻術勝負でできた隙をシスティーナにつかれて【ゲイル・ブロウ】二重詠唱により敗北。蒼天十字団の一斉検挙でほかの関係者と共に収監されたが、不要になったサイラスら4名を暗殺した後で、リィエルから得た『パラ・オリジンエーテル』と共に本来の上司であるイグナイト卿の元に戻る。魔術祭典が開催された際には、潜入調査でアーチボルトによる教皇暗殺を察知しイグナイト卿に報告、アーチボルト配下の暗殺者の始末を命じられるが、待ち構えていたジャティスに一蹴されて命乞いをする羽目になり、「グレンほどじゃないが面白い」と見逃され、信じて突き進めば願いは叶うと激励までされるという屈辱を味わう。
その正体はイグナイト家の次女であり、本名はアリエス=イグナイト。卓越した幻術の才能を持っていたが、炎の魔術の才能に恵まれなかったため父から冷遇される。10年ほど前に父の魔術で体を焼かれて殺されかけた時、姉リディアに救われて名前を変えて遠い家に逃されたことに感謝して、姉を助けることを誓い幻術の腕を磨く。だが、魔術を使えなくなったことを理由に姉が父親に殺されたことで復讐を決意し、人間を辞めた父を殺す機会を窺ってあえて腹心として仕えることにした。クーデターの際には「異界」の外へ偵察に出ていたエルザに接触し、「本物のリディアは死んでいて、【Project:Revive Life】で作られた偽物だ」という情報を伝えさせ、事件後、瀕死の重傷を負って逃亡する父親に自らの正体と目的を明かし、手にした短剣で滅多刺しにして惨殺、復讐を遂げる。
固有魔術として【月読ノ揺リ籠(ムーン・クレイドル)】という現実を塗り替える究極の幻術を持つ。夜空に輝く月光を触媒にして、世界そのものへ幻術をかけ、「実体を持つ幻」をこの世界へ生み出し、その幻に付随する人々の認識や記憶すらも捏造し、自在に弄ることができる。ただ、違和感に気づかれてしまうと容易く認識、看破されてしまうという弱点があり、自分自身の認識さえも欺くため、世界支配を使いすぎると本当の自分が分からなくなるらしい。さらに、世界改変中は常に魔力を消費し続け、脳の深層意識領域を圧迫するという欠点があり、しかもねじ曲げた事実が現実から乖離するほど負担が増大するので、本体がまともに戦闘行動を取れない[42]。それ故に、幻術が通用しない相手には弱く、あらゆる事象を数字として取得できるジャティスは天敵と言える。また、“あらゆる精神防御を絶対貫通する”対人幻術による精神支配も可能であり、こちらには月光の触媒を必要としない。グレンと同年代か少し年下で、亜麻色の長髪、金色の瞳をした華奢で小柄な少女や、黒髪の女魔導師姿などに化けているが、本当の姿はイグナイト家特有の真紅色の髪と紫炎色の瞳を持った女性で、父親に殺されかけた時の火傷が顔の半分を覆っている。
クロウ=オーガム
「鬼の戦闘専門部署」として知られる第一室の室長。暑苦しく、竹を割ったような性格。
士官候補学校の卒業生で、宮廷魔導士団に入隊後、わずか1年で模擬魔術戦会で第3位に入賞するほどの実力者だが、1期下のイヴには敵わなかった[24]。イヴを永遠のライバルと勝手に認定しているが、荒くれ者ばかりの部下を率いて余計な被害を出しては特務分室に後始末を任せるため、イヴ当人には迷惑がられている[41]
ベア=フリーデン
クリストフの士官候補学校時代の同期で、寮でも同室の友人。生まれは貧乏貴族の三男。クリストフより一回り大柄で、やんちゃ坊主感溢れる容姿をしている。同期生の中でも特に攻性呪文の技量に長けており、卒業直前に帝国宮廷魔導士団第一室からスカウトを受ける。
マックス=ローガン
城塞都市ハノイに駐屯する帝国東部カンターレ方面軍第二師団・第三駐屯兵団の兵団長。

退職・殉職者

サイラス=シュマッハ
帝国宮廷魔道士団特務分室室長、執行官ナンバー1《魔術師》。年齢は20代後半で、人の良さげでうだつの上がらなそうな眼鏡の優男。軍階は百騎長。
“神の頭脳の持ち主”と噂された天才魔術士。かつては東の国境付近で戦い続けたバリバリの実戦派で、魔道士団の魔導技術開発室室長や、白金魔導研究所の魔導技術開発派遣武官を経て、イヴの後任として本来イグナイト家の者に限定される特務分室室長に特例で就任している。
その正体は蒼天十字団の団長。リィエルを素体に《剣の姫》エリエーテを復活させ、帝国の過去の英霊を復活させる【英霊再臨の儀】を実用化しようとしたが、イヴの妨害で失敗し帝国軍に拘束・収監される。その後蒼天十字団諸共イグナイト卿に切り捨てられ、3人の部下共々イリアの手で暗殺される。
リディア=イグナイト
帝国宮廷魔道士団新団長、執行官ナンバー1《魔術師》。イグナイト卿の嫡子。燃え上がる炎のような長髪が特徴の20歳過ぎくらいの女性で、家庭的で親しみやすい地母神のような美しさを持ち、柔和な笑みを浮かべるが、所作には一切の隙も無駄もない不思議な魅力を持つ。階級は千騎長 [43]
帝国全ての魔導士達の規範となり持たざる弱き民を守るという誇りを掲げた祖父を尊敬する反面、古典的貴族主義に凝り固まった父親に反発しており、敵を作り過ぎたイグナイト家は遠くない未来に滅びると確信していた。平民の血が混じったイヴに対しても優しく、一方で、父への恐怖から自身の“予備”とされてきた妹のアリエスを見捨ててしまった過去から、自分にはイグナイトの資格がないとも思っており、償いとして本当のイグナイトになろうと頑張ってきた[24]
イグナイト家2000年の歴史の中に現れた天才の中の天才で、戦闘力、魔術能力、指揮能力、作戦立案能力、政治力の全てが完璧という、一軍の将になるために生まれてきたかのような人物。【第七園】発動に必要な霊点の構築を戦闘中の片手間でやってのけ、支配領域内の全空間を一片の隙なく超高熱の極炎で満たし焼き尽くす必中必滅の術式《無間大煉獄真紅・七園》すら使いこなす。若くしてS級魔導士となったが、イグナイト家を恨む魔導士達に嵌められたイヴを守るために、己が魂を燃やし自分自身を炎とする眷属秘呪【大終炎(フィーニス)】を発動し、敵を殲滅したものの副作用で魔術能力を完全に失う[24]
その後は魔術能力を取り戻すためにどこかの法医院に入れられたとされ[24]、魔術祭典開催と同時期に奇跡の快復を遂げ、サイラスの後任の特務分室室長に就任する。しかし、勘当された異母妹のイヴを全く知らないような素振りを見せるなど、記憶に不自然な違和感を抱える[44]
だが本物のリディアは魔術を使えなくなったことを理由に父親の手で既に殺されており、新たに隊長となった彼女は、イグナイト卿の便利な消耗品としてリディアを含む複数の霊魂をもとに【Project:Revive Life】で作り出された偽物である。部分的な記憶の欠落、不自然なまでに父親に抱く忠誠心、自分の中の価値基準の歪さはこれに起因する。クーデター時はイグナイト卿に盲目的に従い、偽物ではあってもその力量でイヴを圧倒して見せたが、霊魂に含まれていた本物のリディアの残滓によるものかとどめを刺すことに失敗し、《無間大煉獄真紅・七園》を逆用されて焼き尽くされ死亡するが、最期の瞬間だけオリジナルの人格が戻ったかのような反応を見せた。
セラ=シルヴァース
声 - 寿美菜子
元帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー3《女帝》。白い髪と白い肌に刻まれた赤い紋様が特徴的な美女。グレンからは「白犬」と呼ばれる。作中ではすでに故人。
レザリア王国の宗教浄化政策で故郷を追われた遊牧民族シルヴァース一族出身の女性で、族長の娘に当たる元姫君。レザリア王国から故郷を取り戻すことを条件に、古い盟約のもとアルザーノ帝国の宮廷魔導士団に所属していたが、それが実現困難な夢だとも理解していた。暇を見つけては自分たちが任務で救った子供達がいる孤児院に足繁く通っていた。
位階は第四階梯。呪歌と舞踏による風霊召喚術や風の黒魔術の扱いに長け、風の魔術に関しては世界でもトップクラスの天才。《風の戦巫女》《風使い》の異名を持っていた。男性2人を抱えながらでも超難度の高等技術である超高速立体機動《疾風脚(シュトロム)》で軍内の誰よりも速く移動できるが、空中で螺旋横転を繰り出すなどの無茶苦茶な変態機動を行うため、一緒に任務に従事した相手は平衡感覚と重力感覚が麻痺してトラウマを植え付けられる。
理想主義者だったグレンの数少ない理解者の一人で、何かにつけてはかいがいしく世話を焼き、グレンが「イヴ=カイズルの玉薬」を初めて使った際に、半狂乱に陥った彼を必死に励ましている。しかし約1年前にジャティスが引き起こした「天使の塵」に関わる大事件の際、グレンを庇って致命傷を負い、失った故郷へ想いを馳せながら息を引き取った。
ファーガス=ストレガー
長年空席だった特務分室執行官ナンバー8《剛毅》に就任した、大柄な若い男。年齢は17、8歳ぐらいで、筋骨隆々かつ、育ちが悪そうな目つきをしている。
外見の通り近接格闘戦を得意とし、さらに身体能力強化系の魔術を極限まで極めたことで編み出した、“全身体能力の限界強化”を行う固有魔術【剛曲(ごうこく)】を使い、弾速と同等の毎秒400メトラで動くことができる。その力は白魔【フィジカル・ブースト】を使う軍用格闘術の名手ですら相手にならず、圧倒的な速度に任せて相手を圧殺する。
特務分室の最強コンビだったグレンとアルベルトに対して敵愾心を抱いており、模擬戦でグレンを相手に格闘戦で圧倒したことで、討伐任務では相棒であったアルベルトのことも侮るが、実戦での戦術の拙さを指摘された末、自身の移動速度を越える魔術の光速射撃の前に敗北。蒼天十字団関係者として収監中にイリアに始末された。
サキョウ=スイゲツ=ヴィーリフ
元執行官ナンバー10《運命の輪》。エルザの父で、“守るための剣を振るえ”、“人を活かす剣を振るえ”と教えてきた[45]
東方出身の「東方剣士(サムライ)」で、異邦人ながらも帝国のために軍人として尽くした。肺の病気を患って体が衰えつつありながらも軍人を続けていたが、2年前に天の智慧研究会から送り込まれた刺客のイルシアにより、妻と共に殺害される。
ジャティス=ロウファン
声 - 鈴木達央
元帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー11正義。灰色の髪と色白の肌、酷薄さを際立たせる攻撃的な美貌を持つ長身痩躯の青年。最終軍階は最下級士官の《正騎士》[12]
何者にも依らず自分自身だけで強固たる絶対的な個を確立しており、在籍当時から苛烈な言動と独善的な信念、手段を選ばず犠牲を全く厭わない問題児だったが、「天の智慧研究会」に対する敵意は本物だった。その狂気に等しい正義感は霊魂の分割・消費すらなし得るほどで、勝率が1割を切る賭けでも躊躇なく命を賭けられる。重要なのは『正義』が正しく執行され、『悪』が滅びるか否かだと考えており、そのためならば自分の命はどうでもいいとさえ思っている[12]
後述する自身の固有魔術を覆しうる「人の強き意志」を基準にした独自の価値観を持っており、高く評価している特務分室のメンバーの中でも特級のイレギュラーとしてグレンに対して強い執着を持つ。軍属時代は「正義の魔法使い」に憧れるグレンを疎み、戦死率の高い任務から生還しても「運だけで生き残っている、つまらない男」と評していたが、ある任務で彼を試した際に自分の目論見を崩したことから評価を改め、倒すべき相手として定めた。
本編開始の2年ほど前、『封印の地』の調査任務を行なった時に王家の真実を知ったことで、国家に叛意を翻す。直後に研究会から勧誘を受け「禁忌教典」の存在に触れるが、自身の正義への侮辱ととらえ激怒、自身の「絶対正義」を狂信するようになり「禁忌教典」の全知全能の力を使ってこの世の全ての悪を滅ぼすことを決意する。その少し後に1人で帝国相手に戦いを仕掛け、禁断の麻薬「天使の塵」を使い帝都で大惨劇を引き起こすが、セラの犠牲の下でグレンに撃破され、その際死亡したとみられていた。しかし1年間の雌伏を経て活動を再開、フェジテで「天使の塵」を蔓延させレオスを操り暗躍する。かつて自分を倒したグレンに対して異常な執着心を抱き、「復讐」ではなく「挑戦」を目的として彼を戦場に引きずり出すため、魔導兵団戦後死亡したレオスに成り代わり、ルミアとリィエルの秘密を盾にシスティーナとの結婚を強要する。結婚式に殴りこんできたグレンと交戦、恐怖を乗り越えたシスティーナとのコンビネーションの前に敗北して撤退、死者84名を含む多数の犠牲者を出しながらも特務分室の追手を振り切り逃走に成功する。
しばらく後でアセロ=イエロを復活させ自身の手で討つためあえて黒幕の意図に乗り、グレンを利用して【メギドの火】起動を成功させると同時に研究会構成員を殲滅するという目的のためルミアを誘拐する。まんまと目的を達した後はグレンを侮辱したイヴを殺害しようとしたが、アルベルト等が救援に現れたため撤退を選ぶ。その後分割した魂の片方を《炎の船》へと乗り込ませ、勝率が1%もないことを把握した上でアセロ=イエロに呪いを掛けて死亡したが、もう半分の魂は、グレンに致命傷を受け辛くも逃げ延びた彼の前に現れ、その神鉄の左手の支配権を呪いで奪い取ることで撃破する。また、第二団《地位》の主要メンバーを暗殺、「Project: Revive Life」のバックアップ用の元データや儀式場、術式を全て破壊する、など単独で研究会に痛撃を与えていった。
レザリア王国とアルザーノ帝国が全面戦争になって血が流れれば世界が破滅すると知り、世界を救うために第二次魔導大戦を引き起こすことを決意する。魔術祭典の裏で開かれる首脳会談が引き金になると考えて隣国レザリア王国に移り、強硬派筆頭のアーチボルト枢機卿を影で操る。これらの一連の行動は全て天の智恵研究会の首魁であるフェロードとパウエルを炙り出し、表舞台に引きずり出すための行動であり、細工を施した霊脈回線によって彼らのあらゆる個人情報を世界中に拡散させる。その後もフェロードを挑発し続けたため、腹に据えかねた彼の古代魔術で二度と帰って来られないように異次元へと追放された。
記録上の位階は第五階梯。卓越した錬金術師であり、戦闘では手袋に仕込んだ疑似霊素粒子粉末を利用した人工精霊召喚術を使用する。また、数秘術を突き詰めることで、「自分の目に映るあらゆる事象・現象・具象を数値化・数式化して取得する」ことで未来予測を行う固有魔術【ユースティアの天秤】を編み出している。これは人間の脳内電気信号と生体化学反応すら数値化し、意思や感情すら数式に当てはめることが出来るため、自由意志まで含めた行動予測が可能だが、場合によっては「人の強き意志」によって覆される場合がある。固有魔術による予測と人工精霊による不可視の罠【見えざる神の剣(スコトーマ・セイバー)】を組み合わせることで一歩も動かずに相手を切り刻むことすら可能で、先読みと格闘術の組み合わせではリィエルをも打倒するほどの白兵戦能力を発揮する。さらに、その確固たる自我により魂の分割という本来ありえない外法すら可能となっており、分割した霊魂を錬金術で作った肉体に入れることで完璧な分身を創り出す。ただその代償で寿命が激減しており、もって5〜6年しか生きられないとされている。
シャルロッテ=アンジェ
長年空席だった執行官ナンバー14節制に就任した、妙齢の金髪女性。
強大な概念存在である大天使憑依召喚(ポゼッション)という、世界を背負うような行為を可能とする、固有魔術にして魔術特性【適合者(アダプター)】を持つ。これによって第二位:主天使の位にある《断罪の天使》アトスを常時我が身に降ろしており、長時間の祈りで自己暗示をかけることで、炎に燃える大鎌と霊的に超強化された肉体を武器に、三対六翼の絶大な推進力で高速移動する。しかし、堕天使に近いとされる概念に引きずられ、殺意と憎悪に流されて暴走するというリスクがある。
グレンとの模擬戦では、暴走して彼を殺害しようとしたため病身のリィエルに妨害される。だが、アルベルト相手には手も足も出ず圧倒され、収監中にサイラス同様収監中にイリアに始末された。
アンリエッタ=ドゥール
元帝国宮廷魔導士団特務分室所属、執行官ナンバー16。「人形師」の異名を持つ女性魔術師。
特務分室時代のセリカに対して対抗意識を燃やし、決闘を挑むが完敗している。その後歪んだ選民思想や老化に対する焦りから偽りの「永遠者」であるリッチへと転生、村を一つ滅ぼし送り込まれた3名の同僚をも罠にはめて殺害し、リッチ・ミニオンに変えていた。ミニオンの少年をセリカに接近させることで罠にはめ魔術を封じようとしたが失敗、【イクスティンクション・レイ】をその身に受けて完全に消滅した。
ニコル=ソーレス
長年空席だった執行官ナンバー19太陽に就任した、赤毛の年若い少年。
固有魔術として、頭上の“黒太陽”にマナを吸収させ、身体能力と魔力と魔術威力を制限する【逆位置の太陽(フォールン・サン)】を編み出している。通常は直接触れるか、複雑な手順と道具が必要な付呪を、目視するだけで“広域戦場弱体化(デバフ)”として発動する一種の結界魔術で、これに加え弱体化の呪を刻んだナイフの投擲で相手を追い詰める。
グレンとアルベルトをロートル呼ばわりし、模擬戦ではファーガスに敗れたグレンを事前に仕込んでいた固有魔術で倒す。だが、アルベルトには固有魔術の弱点を見抜かれ、黒魔【ダーク・カーテン】で視界を完全に奪われたことで攻撃手段を失い、気配のみで狙撃され敗北した。その後、収監中にサイラス同様収監中にイリアに始末された。
リーザフ
帝国軍所属の魔導士。階級は正騎士で、当時14歳だったイヴの部下。鬱屈とした雰囲気の神経質そうな青年。
実はイグナイト家最大の汚点である「グスタの悲劇」唯一の生き残りであり、帝国軍を足抜けしたイグナイト家に恨みを持つ7人の魔導士と連携してイヴを罠に嵌め、拷問してアゼルを脅そうとした。炎熱系術式を妨害する割込術式結界を展開する事で、その場に駆けつけたリディアをも圧倒したが、彼女が魔術師生命を捨てて発動した禁呪【大終炎】を受けて蒸発する[24]

聖リリィ魔術女学院

マリアンヌ
聖リリィ魔術女学院学院長。40代の女性。エルザの叔母。
学生同士の派閥抗争に悩む人の良さそうな女性を装うが、かつては蒼天十字団の研究員をしており、本性は傲慢で利己的。過去の失態が原因で現職に追いやられ、復帰のための手土産として「Project:Revive Life」の成功例であるリィエルを求め、彼女を強引に成績不良による退学寸前に追い込んだ上で救済措置として聖リリィへ留学させる。さらにエルザを騙して戦わせ無力化し、学院での生活に不満を抱く学生を洗脳して配下とし逃走を図るも、ジニーからの急報で駆けつけたグレン達に妨害される。自身の計画を狂わせたグレンに激昂し、魔将星の1人である《炎魔帝将》ヴィーア=ドゥルが用いたとされる魔法遺産「炎の剣(フレイ・ヴード)」から引き出した戦闘技術と強力な炎で彼らを苦しめるが、トラウマを克服したエルザの奥義がきっかけとなり敗北。事件後は捕縛されるも魔法遺産の過剰使用により発狂してしまい、証拠能力を疑われたため結局蒼天十字団を追い詰める一手にはならなかった。
ローナ=ローゼンバーグ
マリアンヌの更迭後に就任した新学院長。
フランシーヌ=エカティーナ
女学院の最大派閥「白百合会」のトップに君臨する女学生。金髪縦ロールのお嬢様風の少女。やや高飛車で傲慢な性格。自分に逆らうものには容赦なく、コレットとは犬猿の仲。
レイピアによる剣術や乗馬など貴族の子女らしい技能を持ち、魔術についても召喚術、特に雪の精(スノー・ホワイト)や鬼火ウィル・オ・ウィスプ)など精霊系の召喚を得意とするなど学生離れした実力を持つが、感情や動揺がすぐに顔に出てしまうのが欠点。
当初はレーン(グレン)のことを完全に舐めていたが、システィーナ達との模擬戦に完敗したことで改心、さらに自分たちの無法を許してくれたレーンにコレットら他の生徒同様惚れる。以降は意識を改め「魔術使い」から「魔術師」になるための努力を始める。
マリアンヌの事件後も訓練を続けており、秋休みは両派閥の交流の一環でホワイトタウンの『銀竜祭』を訪れ、グレンたちと再会する。修行の成果で手持ちの契約精霊の数は最早学生とは思えないほどになっており、さらには高難度とされるマルアハの召喚を体得するなど成長を見せている。選抜会時点で魔力容量2510、魔力濃度62[26]と、やや集中力不足ながら同年代ではかなり魔力容量が多い部類に入り、決闘戦でも勝率70%推移[32]と優秀な成績を残し、代表選手に選抜される。しかし、つい最近までほとんど勉強していなかったので学力は低く、座学試験はコレットと並び下位の355点で55位[46]だった。
コレット=フリーダ
女学院で2番目に大きい派閥「黒百合会」のトップの女学生。長い黒髪と切れ長の瞳の少女。姐御肌で傘下の者に対しては面倒見が良い。大雑把で傍若無人な性格。
魔術の他にも貴族のたしなみとして幼い頃から鍛錬していた古式拳闘術を主体に、拳打に魔術を載せる魔闘術を得意としている。野生の勘とでも呼ぶべき抜群の近接格闘戦のセンスを持ち、将来的には完全にグレンの上位互換になると目されるほど[47]。だが、戦略を考えるのが苦手で行動が単純なため模擬戦ではシスティーナが仕掛けた罠にあっさり引っかかった。しかし、リィエル奪還の際にはグレンの教えを教訓に立ち回り、フランシーヌと共に露払いの役目を成し遂げた。
マリアンヌの事件後も訓練を続けており、魔闘術の修行を重ね、体に爆炎を灯して戦えるようになっている。選抜会時点で魔力容量2490、魔力濃度64[26]、決闘戦の勝率70%推移[32]と、フランシーヌ同様成長を見せて代表選手に選抜されるが、やはり座学試験は下位の320点で56位[46]だった。
ジニー=キサラギ
フランシーヌ付きの侍女で、東方の「シノビ」の技を伝える里の出身。灰色の髪をお下げにした表情に乏しい少女。表向きは主人の忠犬のように振る舞うが、事あるごとにコレットと喧嘩を始める様や派閥抗争には内心で辟易としており、時折淡々と痛烈な毒を吐く。控えめに見えて自意識とプライドが高く、強敵と相対すると実力差を忘れてつい深追いし過ぎてしまう欠点がある。
短期留学最終日、偶然マリアンヌの素顔を知ってしまい、彼女に洗脳された学生達に包囲される。しかしグレンに欠点を指摘されたことを思い出し、重傷を負いながらも離脱しリィエル拉致の知らせをグレンたちに届けた。
魔力容量1620、魔力濃度83と、魔術祭典参加メンバーとしては能力は平均的[37]で魔術能力は然程高くないが、元々習得していた魔術に依らないシノビの技「忍法」を、魔術で補強する形で使用することで独特の強さを発揮する。気配隠しや姿隠しなどの隠形術、不意を突いて相手を仕留める暗殺術、毒の知識、潜入や開錠などの盗賊技術もピカ一で、状況次第ではかなり強力[48]。法医呪文よりも外科処置の方が得意。グレンの影響により派閥争いが収まる前から座学をこなしていたため、選抜会の座学試験では女学院メンバーで最高点の640点24位[34]を取り、決闘戦での勝率は校内で3位の60%推移[32]だった。

クライトス魔術学院

ゲイソン=ル=クライトス
クライトス魔術学院の学院長。クライトス家の主家筋出身であり、当主グラハムの父で、レオスやエレンの祖父。
クライトスの家だけを愛する老害で、才能偏重主義によって分家が勢い付いていることを憂い、魔術祭典の代表選抜会ではエレンを強引に代表候補にねじ込んだ。そして、《ル=キル時計》の竜頭だけを取り外して本体をエレンに持たせ、邪魔が入った時には排除するように設定した上で、ループが起きていることを理解しつつも自分はループごとの記憶を持たない状態にして、エレンがメイン・ウィザードになるまで延々とループを発生させていた。フォーゼルの解析で時計の機能を知ったグレンに犯行を暴かれたが、5000回を超えるループで時計が限界を迎えたことで事態の主導権をル=キルに奪われ、一瞬で消滅させられてしまう。
そしてグレンとシスティーナがル=キルを倒したことで時空の歪みが正され命を拾ったが、なぜ竜頭が失われたのか理解できないまま完全に力を失った。
レヴィン=クライトス
クライトス分家の御曹司で、本家筋のレオスやエレンの従兄弟。柔らかそうな金髪、貴公子然とした佇まい、彫像のように整った甘く美しい顔立ちの少年。
天才的な魔術の才の持ち主と言われ、魔力容量4200、魔力濃度160と魔力測定では既に一流魔術師の水準を超えており[49]、選抜会の座学も935点の3位[50]。学校内には切磋琢磨できるようなライバルがおらず、次期当主の座に最も近いと噂されている。
魔術祭典ではシスティーナとメイン・ウィザードの座を争ったが敗北、サブ・ウィザードとして参加することになる。訓練ではシスティーナに匹敵する能力を持つ練習相手として、学生レベルを超越した魔術戦を繰り広げる。一方、選抜会以来性格の変化したエレンには戸惑うことも多い。実は年相応な面もあり、祭典中にカッシュと意気投合して一緒に女風呂への覗きを敢行し、報復されている。
エレン=クライトス
クライトス本家の娘で、レオスの妹。金髪を三つ編みにまとめている。生まれつき魔力が極端に少ない体質で、それでも必死の努力を続けて魔力容量945、魔力濃度43とぎりぎり魔術師を名乗れる程度まで力を伸ばしている。才能偏重主義のクライトス家では兄とは対照的に冷遇されており、親戚の圧力から守ってくれていた父と兄が相次いで亡くなってしまったことで、祖父からの虐待を受け重責と心労を背負うことになる。
祖父の指示で自分では制御できないループの中に閉じ込められ、主観で100年もの繰り返しを重ね、5000回を超える頃には魔力容量9640、魔力濃度186とシスティーナに匹敵する域にまで成長したものの、凡人の我流では天才であるシスティーナに勝つことができず、彼女に対して憎悪を募らせていく。《ル=キル時計》が壊れた際にル=キルに取り憑かれ、閉じた時間の中で永遠に繰り返しを続けると絶望するが、システィーナとグレンに解放された。
その後はループによって積み重ねた記憶と実力を失ったものの、泥臭いながらも周囲が認めるほどの健闘を見せ、システィーナにも唯一惜しいところまで喰らい付いた。加えてグレンがフィーベル家を通じてクライトス家に働きかけたことによって祖父の呪縛からも解放され、アルザーノ帝国魔術学院への長期留学が決定する。だが、少しループの記憶が残っているのではないかと思えるほど、システィーナに対する好感度が異様に高くなっており、隙を見ては不純同性交遊に及ぶようになっている。代表選手には選抜されなかったが、マネージャーとして選手団を支える立場となり、ほぼシスティーナ専属で世話を焼いている。

その他帝国民

レナード=フィーベル
声 - 山橋正臣
システィーナの父親。魔導省の高級官僚で非常に厳格な性格だが、極度の愛妻家かつ親バカで娘たちや妻のことになると人が変わったように暴走し、その度に妻に止められている。
一時的に記録保存した詠唱呪文を呪文詠唱なしで即時発動させる、「詠唱呪文の保存装置」という高度な機能を持つ指輪の魔導機を自作できるほどの、超一流の魔術師[51]
若いころの一時期、官僚試験を受ける以前に父親に反発して家出し、生活費を稼ぐためにアルザーノ魔術学院の講師を務めていたことがあり、当初は不真面目でいい加減な授業をしていたが徐々に真面目で生徒想いな講師となったという過去がある。
フィリアナ=フィーベル
声 - 冨樫かずみ
システィーナの母親。魔導省の秘書官で、帝都とフェジテを行き来する忙しい生活を送る。10代半ばの娘がいるとは思えないほど若々しい。夫のストッパー役でもあり、彼が暴走を始めると即座に絞め落とす
夫が講師をしていたころの教え子で、徐々に生徒想いになっていった彼に惹かれていくようになり押し切るような形で結ばれたという過去を持つ。かつての夫に似ているグレンに惹かれる娘たちを、微笑ましく思いながら見守っている。
レドルフ=フィーベル
声 - 宮崎敦吉
システィーナの祖父。故人。優れた魔術師であり魔導考古学者。かつて魔術祭典が行われていた時代には、メイン・ウィザードに選ばれたこともある。「タウムの天文神殿」などに関する優れた論文を残しているが、考古学に執着しなければ魔術師としてより優れた功績を残せただろうと惜しまれている。メルガリアンとして天空城の秘密を解き明かすことを夢見ていたが病気と老齢によって生前に目標をかなえることはできなかったため、システィーナがその遺志を受け継いでいる。
だが死の間際、魔王ティトゥス=クルォーから古代魔法文明の真理をだしに契約を持ちかけられ、《継魂法》によって記憶と人格、肉体を利用されている。
ニーナ=ウィーナス
グレンが魔術学院在学中に出会った少女。年齢はグレンより3歳ほど歳上で、フェジテの孤児院で暮らしている。院の院長から帝国式軍隊格闘術を教わっており腕に覚えはあるが、学校に通えないため学はあまりない。貧民街で不良少年3人組に襲われていたグレンを助けたことで知り合い、経営難の院を立て直すために彼から勉強を教わる。グレンにとっては魔術と関わりのない数少ない友人で、彼女との出会いが【愚者の世界】開発のきっかけとなった。
実は悪名高いウィーナス商会の会長の私生児。子供すら「道具」と見なす実父からは愛されておらず、扱いに困るという理由で孤児院送りにされていた。しかし、実家の権力争いによって謀殺された嫡出子の代わりとして引き取られることになり、院を守るためにそれを了承する。そのせいでダニーに殺害されそうになるが、グレンに助けられた。
その後はグレンと別れフェジテを去ったが、勉強の末に22歳の若さで商会の会長に就任。実父ら旧経営陣を失脚させて商会の暗部を一掃し、帝国各地の経営難の孤児院に援助と教育支援を行っていることが新聞で報じられている。
ダニー
ニーナの従兄弟にあたる魔術師。商会の次期会長の座を手に入れるために候補である会長の子を病死に見せかけて毒殺したが、ニーナの存在が発覚したことで計画が狂い、彼女も殺そうと襲いかかる。しかし、立ちふさがったグレンが使った不完全な【愚者の世界】で魔術起動を遅延させられ、素手で倒される。その後は殺人容疑と殺人未遂で送検され、失脚する。
ジョン=マイヤール
ホワイトタウンの若き新市長。35歳。高貴な細面はやや童顔で、年齢より若く見える紳士。聖人のような人格者。アルザーノ帝国大学で最新の経済学を修め、政府高官職のスカウトも蹴って郷土復興政策を推進、交渉手腕と大学時代の人脈でホワイトタウンまで鉄道を敷き、卓越した施政手腕で観光事業を主軸にスノリアを蘇らせた。質素な生活を旨としていたが、それなりの格式を求める市民たちの意見を聞き、豪奢な市長邸で暮らしている。
復活したル=シルバが引き起こした史上類を見ない大寒波と氷の骸骨による被害で街に大きな打撃を受けるが、生きている限りかならず乗り越えられると前向きに考え再起を誓う。
ミリア
ジョンの侍女兼秘書。優秀だが感情的になりやすいのが欠点。《銀竜教団》を蛇蝎のごとく嫌っている。
エルネスト
《銀竜教団》の内陣教団員。外陣の若い教団員たちの暴走に頭を痛めながらも、「天の智慧研究会」の協力で数千年来の悲願を達成しようと目論んでいた。しかし、他の教団員と共にエレノアが施した儀式の犠牲となり、命を全て奪われミイラ化して死亡した。
ロザリー=デイナート
デイナート子爵家の次女。グレンの魔術学院生時代の後輩。無駄に気位とプライドが高いが、努力家なので在学中はグレンがなにかと面倒を見ていた。
魔力の関わらない座学は優秀だったが、自身のマナを魔力に昇華する感覚に極端に欠落しているせいで魔力容量が極端に低く、在学中は落ちこぼれだった。魔導探偵に必須な魔術を使用した情報収集術は初等汎用魔術ですらほぼ全て使えず、魔力消費のないダウジング探査くらいしかできない。さらに聞き込みなどの地道な情報収集も疎かにしがち。一方で魔術なしの剣術大会で何度も優勝したほどの剣の名手で、警邏庁から幾度もスカウトを受けていた。
「魔導探偵シャール=ロックの事件簿」シリーズに憧れて魔導探偵を志すも、志望した魔導探偵事務所関連には就職できず、政略結婚を強制されたことで実家から出奔。隙間風のひどいボロ屋を借りて個人事務所を設立したものの、入ってくる仕事はペット探しなどばかりでほとんど収入がなく、その上貴族としての矜持から服に金をかけすぎて食費にも苦労している。
ペット探しをグレンと行なった際、依頼主が古銭窃盗犯だと知ると、詐欺同然の目に遭った悲しみから敵を一網打尽にした。その後、一派が繋がっていたマフィアの進出を食い止めるという大活躍だったことが判明し、新聞に取り上げられて一躍有名人になった。
ラス=ワーテルロ
人類の進化への貢献と称して“人間の人工的な吸血鬼化”という禁忌の研究を行なっていたS級外道魔術師。3年前、領民が片端から謎の失踪を遂げていたことから、宮廷魔導士団に犯行が露見。国内では音に聞こえた超一流の魔術師だったが、魔術研究の素体に利用された大量の食屍鬼に溢れる城内を踏破したグレンに魔術の起動を封じられ、頼みの綱のカーミラがセラに足止めされてしまい、グレンの手で射殺された。
カーミラ
ワーテルロ卿の研究で作り出された人工吸血鬼。被験体ナンバーは365号。外見は黒髪の少女だが、眼光は鮮血のように朱く、血色を失った肌は冷たく青白く、口には鋭い犬歯が光る。腕を振るえば衝撃波が発生するほどの膂力を誇り、爪には生命力吸収(エナジー・ドレイン)の呪力がある。
《隷属刻印》による命令でグレンを殺害しようとするも、先にワーテルロ卿が殺されて刻印から解放されたことで逃走。アルベルトに追われて帝都に逃げ込み、グレンの血を飲んで真の吸血鬼に至ろうとしたが、セラの想いを汲んで理想を歩き続けることを決めた彼に浄銀弾で撃たれて致命傷を負う。最期は正気を取り戻し、自分が地獄に落ちる前に本当の意味で救ってくれたことに感謝しながら、浄化の炎に焼かれて灰と化した。
ジェシカ=ヘステイア
セシリアの母親。年齢は40代半ばほど、眼鏡越しの瞳は理知的で、若い頃は相当の美女だったことが容易に伺える容姿の持ち主。セシリアの法医術の師匠であり、彼女の腕前が温く思えてしまうほどに懸絶した法医術師である。
「枯渇症」を患っており、虚弱な娘を実家に連れ帰ろうと魔術学院を訪問した際に、病状が悪化して倒れてしまう。しかし、治療のために必要な大儀式を娘が成功させたことを知ると、考えを改めて好きに生きることを許した。
アリア
アベル(アルベルト)の2、3歳年上の姉。故郷の村を悪魔に滅ぼされた後はパウロに拾われて、弟や他の孤児とともに5年間暮らしてきた。
実は魂の一部に六魔王の1柱である《葬姫》アリシャールの分霊を宿しており、大悪魔を下僕にしたいと考えていたパウロに利用されていた。8年前に【適合者】の孤児9名を生贄にした分霊覚醒の儀式でアリシャールへと変貌してしまうが、最後に力を振り絞り未契約で己の意思では動けないはずでありながらパウロへ立ち向かい、自らの魂ごと自爆することで弟を守り抜き、パウロを退けた。
ゼパル=ディレック[12]
帝国軍の要である『ライモンド法医学研究所』の所長をしていた40過ぎの中年男性。帝国宮廷魔導師団・魔導技術開発室からの元派遣武官。娘の命が狙われたとして、特務分室に護衛を依頼した。
しかし、実は天の智慧研究会とつながり、娘の特異体質を利用して、致死性の病原菌を霊魂体(エーテル)化させ、人の霊魂体そのものに感染して死に至らしめるという咒葬兵器【黒幽死病(レイペスト)】を開発していた。真なる黒幽死病制御術式が完成し親保菌者の量産が可能になったことで、護衛に来ていたグレンとジャティスを始末しようとするが、感染に備えていたジャティスによって研究員諸共粛清され、無惨な死を遂げた。
ネージュ=ディレック[12]
ゼパルの娘。色白で線の細い、はかなげな雰囲気の少女。先天的な肺病で入院しており、移動には車椅子が必要。付きっきりで護衛をするグレンに懐き、淡い好意を抱くようになる。
黒幽死病菌に感染しても著しい体力低下と体調不良に陥るだけで、黒幽死病では決して死なないという特異体質を持ち、そのため、父からは幼いころから黒幽死病の親保菌者の研究実験体として扱われていた。制御術式の完成により、グレンとジャティスを感染させることで病気から解放してもらう約束をするが、グレンに情が移っていたため殺すことができなかった。罪を犯しながらも、グレンの勇気ある行動に免じてジャティスから見逃され、特効薬を投与されて病気は完治。しばらくは軍の監視下に置かれたが、ある程度の自由を許される生活に戻り、医者を目指して帝国大学進学のために勉強に励む。
シェラ=ディストーレ
イヴの生母。故人。
代々イグナイト家に奉公する使用人だったが、平民でありながらアゼルとの間にイヴを身籠った為に暇を出されて放逐された。世間知らずで、特に学があったわけでも、職業技能に秀でていたわけでもなかったので、貧民街に暮らし見入りの少ない仕事をせざるを得なかった。しかし、その境遇にもめげることなく、無理と苦労が祟り身体を壊しがちだったが、娘を虐待する事もなく、いつも笑っていた。だが、イヴが9歳の時に帝国軍と外道魔術師との戦いに巻き込まれ、娘を庇って命を落とした[24]
アンダンテ=カロッサ
クリストフの士官候補生時代に、城塞都市ハノイを占拠した外道魔術師。ゴーレム工学の天才で、希代の魔導工学博士を自称している。自業自得で魔術学会から追放され、閑職に追いやられたと逆恨みし、帝国と女王へ復讐するため、天の智恵研究会の援助を受けてテロを企てる。
ハノイとの物資取引を一手に引き受けていたアンダルッセ商会に運び込ませた資材から大量のゴーレムを創造、物量作戦で第三駐屯兵団を拘束すると、住民を人質に帝国へ身代金を要求する。上層部が対策を取るまで3日は必要だとタカを括っていたが、声明を出した直後に特務分室からの攻撃を受け敗北する。
エリエーテ=ヘイヴン
200年前に活躍した『六英雄』の1人。通称《剣の姫》。青い髪を後ろでまとめて垂らし、腰には十字架型の柄(クロスヒルト)を設えた片手半剣(バスターソード)を吊っている。
帝国史上最強と謳われた剣士であり、同じ六英雄だったラザールでも敵わないほどで、現在もセリカが【ロード・エクスペリエンス】で剣技を再現して近接戦に役立てている。ある時から見えるようになった“開く”黄昏色の剣閃を習得しており、いつしか師匠が赤子に見えるほどの達人となり、魔導大戦では【孤独の黄昏(トワイライト・ソリチュード)】によって汚泥の異形達を倒していった [52]
エーテル乖離症に倒れ、サイラスに自らの精神データを上書きされつつあるリィエルの夢に現れ、友人のセリカに少し似ているリィエルを気にかけ励ました。システィーナが書き換え儀式を中断させたことで消滅するも、リィエルの魂と相性が良かったため、彼女の深層意識部の一部にほんの少しだけ残ることができた。
イグナイト家によって【英霊再臨の儀】によって兵器として不必要な倫理観や善悪価値、道徳心が欠如した状態で復活させられる。イグナイトの傀儡となっていたが、天の智恵研究会の手で解放され、剣を極めるという生前は倫理観から果たせなかった目標を達成するため、研究会に協力することを決め、鎮圧に向かった帝国軍一個師団を壊滅させる。

レザリア王国

フューネラル=ハウザー
聖エリサレス教会教皇庁の最高指導者である教皇。老境にありながらしっかりした体格の、好々爺然とした老人。その正体は天の智恵研究会の【神殿の首領】パウエル=フューネ。
ファイス=カーディス
司祭枢機卿。齢40を超えるとは思えない、流れるような金髪に古典彫刻のように整った顔立ちの美丈夫。
大恩あるレザリア王国が国家として限界に来ていることを見かね、国を救うために異端中の異端である“融和派”を標榜して、密かにアリシア七世と連絡を取り合い和平・協調路線を模索していた。そのため強硬派による異端審問や暗殺未遂に何度も遭遇している。自国民の側に無礼があったなら、異教徒相手でも頭を下げる人格者。
魔術祭典に世界を滅ぼす力を秘めた子が参加していると知り、警戒のために部下の第十三聖伐実行隊を投入するも、ジャティスの暗躍で2人は制御を離れて音信不通になっていた。アルザーノ帝国チームが1回戦を突破した夜、グレンへ接触して情報の一部を隠したまま事情を説明、その際にルナの襲撃を受けたため自ら志願して【子守歌】に倒れた生徒たちの護衛を務めた。
「信仰兵器」としてレザリア王国に囲われるカーディス家の一員にしてマリア(ミリアム)の実の父親であり、《無垢なる闇の巫女》の力を得た娘を助けるため、8年前に死んだことにしてアルザーノ帝国へ向かわせた。その際、フューネラルに手助けしてもらったことから彼に肯定的な立場を取っていたが、ジャティスにより正体が暴かれたことで全てが天の智恵研究会の掌の上だったのではないかと考える。
アーチボルト=アンビス
有力枢機卿の1人。40歳過ぎとは思えない若々しさと美貌を持つが、目は鋭く、常に表情が険しいので、他者を拒絶するような攻撃的な相貌であり、少し悪い顔色が病的な雰囲気を醸し出す。
帝国の武力併合を望む強硬派の最右翼にて、もっとも力を持っている傑物であり、強硬派きっての切れ者。宗教浄化政策を強力に推進して成功を収め続け、支持する者は教皇庁内にも多い。一方で黒い噂も多く、野心家で、4年前の前教皇の急な崩御にも関わっていたとする説もあり、圧勝を確信していた教皇選挙でなぜかフューネラルに僅差で敗北してからも、未だ虎視眈々と教皇の座を狙っている。
とにかく疑り深く、用心深く、人を信用しないことで有名。ことを起こす時は必ず人質を取り、側近たちは大なり小なり弱みや人質を握られている。
和平反対派の筆頭。《信仰兵器》を手に統一エリサレス教皇に就き、世界の信仰を浄化するという野望を持っていたが、その地位と野心ゆえにジャティスに目をつけられ「天使の塵」で支配下に置かれる。彼の提案で天の智恵研究会と手を組み、《ヨトの釘》の制御権限を使ってファイスの部下である第十三聖伐実行隊を傀儡として帝国代表選手団を脱落させると共に、教皇と司祭枢機卿の暗殺を目論む。首脳会談の場でチェイスにより吸血鬼化させていた帝国高官により教皇と司祭枢機卿を暗殺しようと企むが、ジャティスに盛られていた「天使の塵」の副作用で頭部が破裂し死亡した。
ロクス=イェル=ケル=レザリア5世
レザリア王国の国王。衣装だけは立派な痩せぎすの老人。王とは名ばかりのお飾りで、政務や統治を教皇庁に全て丸投げした無能。敬虔な聖エリサレス教信徒であり、教皇庁を神聖視・絶対視して積極的に服従している。
首脳会談ではアルザーノ王家を劣等傍系と嫌悪し侮蔑するも、アリシア七世との舌戦に完敗。だが、交渉がまとまりかけたところで会談に乱入したジャティスにより、大臣達共々首を刎ねられて殺害される。
ルナ=フレアー
聖エリサレス教会聖堂騎士団・第十三聖伐実行隊の隊員。神々しい金髪に透明で冷たい美貌を持つ女性。
聖堂騎士団でも落ちこぼれの三流騎士で、4年前に仲間とともに戦死している。しかし、【天使転生】に成功する可能性が高かったことで秘儀の施術を受け、当代の《戦天使》イシェルへと転生。これにより、どこか魔将星を彷彿とさせる人の規格を超越した武威や、石壁に大穴を開ける威力の弾丸を弾き返すほどの超高密度の法力、そして人間には使えない天使言語(エンジェリッシュ)を使えるようになり、恐ろしく高射程で強力無比な天使言語魔法(エンジェリック・オラクル)を使い、狙った相手にピンポイントで歌を届けることも、広域を無差別に制圧することも可能。【子守歌】は魂の中に直接歌が浸透して暴力的な睡魔に襲われ、抵抗できずに一度囚われてしまえば第3者が術者をどうにかしないと絶対に逃れられず、陥っている時間が長ければ長いほど深く眠ってしまい、1週間後まで目覚めない可能性すらある。直接戦闘においては【賛美歌】という、歌っている間、歌い手の身体能力を少しずつ上昇させていく強力な自己強化術を施し、歌い続ける限り上昇幅の際限なく強くなっていく。さらには聞いた相手を直接死に至らしめる【葬送歌】という危険な切り札も持つ。
自身が死んだ戦いで家族同然だった仲間も全滅していることに苦しみ、兵器になったことには後悔していないが、認めてくれる相手は誰もいない悲しみを抱える。自分が人間を辞めて強くなるまでできなかったことを、ただの凡人のまま成し遂げてきたグレンに嫉妬し、一方的に敵視している。
唯一残った家族であるチェイスを心の拠り所にしており、彼の命を握っている《ヨトの釘》の制御権限をジャティスに奪われてしまい、アーチボルトの命令に従わされることになり、アルザーノ帝国を魔術祭典から脱落させようと行動する。魔術祭典の開催セレモニーの最中、認識阻害の結界を展開し、アルザーノ帝国代表選手団の総監督であるグレンに出場を辞退するよう脅迫するも、女王の勅命により失敗、試合中にチェイスの能力で敗北させようとしたもののグレンに策を見抜かれてしまい、その夜に自らの手でチームを脱落させるため【子守歌】で選手を昏倒させてグレンたちを試合会場へおびき出す。《戦天使》の【賛美歌】による圧倒的な力でグレンを痛めつけるが、どれだけボロボロにしてもルミアを信じる彼の心を絶望で折ることは叶わず、《ルミアの鍵》で発動した空間凍結を解いた時に【賛美歌】を止めてしまい、その隙を逃さなかったグレンに敗北。
チェイスを守るためにマリアを誘拐し、「ナイアールの祭祀場」で禁断の天使言語魔法【十三番】を歌い、《邪神兵》を降臨させてしまう。約束通りチェイスが解放されると、危険人物であるジャティスに襲いかかるが、逆に即座に逃亡するべきだと提案される。これを拒みチェイスの制止を振り切ったために、儀式場に現れたフューネラルによってチェイスを処分され、教皇こそが自分たちの死の原因を作った黒幕だったことを知り激昂するも、手刀のひと振りで戦闘不能に陥る。
チェイス=フォスター
第十三聖伐実行隊の隊員。燃え尽きた灰のような髪色、血色のない青白い肌、真紅の瞳が特徴的な黒づくめの青年。ルナの幼馴染。
かつては聖堂騎士団でもその名を馳せた凄腕中の凄腕であったが、4年前に戦死し、吸血鬼の真祖として復活させられ、ルナの魔術的従者となる。
吸血鬼特有の圧倒的な身体能力で双剣を振るう。真祖なので日光や浄化に対しても強く、通常の浄銀弾はおろか、並みの吸血鬼ならば1本で10回滅ぼしてお釣りが来るほどの浄化力を付呪したイグナイト家の秘伝【十字聖火】さえ通用せず、心臓に打ち込まれた《ヨトの釘》だけが致命的な弱み。炎が苦手なのも通常の吸血鬼と同じだが、【元素操作】の能力で自身に触れる炎をぎりぎりで押し止めるため、よほど強力な炎魔術師でなければ防御を突破することもできない。また、気配や身体の構造すら変えた世界最高峰の変身術、黒い霧に変化して物理攻撃を防御、魔眼による魔獣などの操作も可能。ただ、不死者ゆえに常人に比べて異常に低くなっている体温は誤魔化せない。
魔術祭典でアルザーノ帝国チームを敗退させるため、1回戦に投入された銀の飛竜を魔眼で操りシスティーナを襲わせたが、グレンに正体を看破されて撤退。その夜、ルナと共に帝国の学生を襲撃しイヴと交戦、相性の悪さから全身が焼け焦げるほどの重傷を負いつつも生存し、敗北を認めて見逃してくれるよう懇願した。ルナがジャティスに従い《邪神兵》を招来したことでジャティスから解放されたものの、「ナイアールの祭祀場」に現れたフューネラルからルナを庇って致命傷を負い、塵と灰になって消滅した。
マルコフ=ドラグノフ
フォルネリア統一神学校の学生。やせぎすで顔色が悪い少年。旧教の偏執的狂信者であり、他宗教に対して閉鎖的で排他的な思想を持っているため、異教徒を見る昏い瞳には侮蔑と嫌悪が籠る。
魔術祭典ではレザリア王国代表選手団のメイン・ウィザードとして参加。その性格から、魔術祭典開催前に他国の学生を侮辱し、危うくアディルと戦闘になりかけ、ファイスの取り成しでその場は収まったが、それでも自分は頭を下げなかった。1回戦ではセリア同盟の大魔術ギルドの初等科チームと陣取り合戦で戦い、旧教秘伝の魔術を駆使して真正面から敵チームの魔術師を撃破し、ほとんどの拠点を制圧して勝利、2回戦でも工業国家ガルツに圧勝する。だが、実は祭典の途中からジャティスによってレザリア選手団全員が「天使の塵」を盛られており、決勝戦でのアルザーノ帝国代表との試合中に活動限界に達し死亡した。

日輪の国

サクヤ=コノハ
日輪の国にある天帝陰陽寮に所属する、艶やかな黒髪と黒眼が特徴的な美少女。
システィーナと互角の同世代では最高峰の実力者。式神で18体の分身体を作り出し対象を包囲して一斉攻撃する【十八字格子式方】[53]、途中の空間をすっ飛ばしたかのような機動で駆ける【縮地】や厄除けの【禹歩】といった特殊な魔術的歩法[54]、死者の怨念で相手の行動を奪う死霊術【十種神宝・布瑠の言(とくさのかんだから・ふるのこと)】[55]など、陰陽術と呼ばれる東方独自の魔術を得意とする。だが、強い魔力や魔力制御能力を得る代わりに、魔術行使をするほど心臓に負担がかかって寿命が削れるという先天的な魔術疾患「天恵祝呪」を患う。貴人の雰囲気を漂わせるが、実は極貧家庭の出身で、魔術祭典で優勝し貴族になることで生活を安定させることを目的としている[56]
魔術祭典では日輪の国代表のメイン・ウィザードとして参加、開会式前にシスティーナに声をかけて「敵として競い合うだけでは寂しい」と交流を求め親睦を深めた。1回戦では南東密林国家アルマネスの呪術大学とゴーレム撃破数を争い、密林フィールドという相手に地の利がある不利な状況でありながら、式神使役術と索敵術を駆使して活躍し、厳重なプロテクトをかけられたフィールド上のゴーレムすら支配して勝利した。2回戦ではライン攻防戦でアルザーノ帝国代表選手団と戦い、シグレが密かにかけていた呪言を破ったシスティーナと全力で魔術戦を繰り広げ、血反吐を吐くほどの負担も意に介さず奮戦したが、回復タイムでも回復しきれないダメージを受けて戦闘不能になった。
シグレ=ススキナ
天帝陰陽寮の代表選手団のひとりで、サクヤの従者兼主治医。胡散臭げな愛想笑いを浮かべる糸目の少年。魔力容量では魔術祭典に参加する選手中ワースト1位 [57]だが、日輪の国ですら最早廃れた「呪言師」としての顔を隠し持ち、呪文ではないただの“言葉”で相手の心に語りかけ、行動や感情を操作・強制する催眠呪術を使うことができる [58]。ただ、白魔術でいう精神支配攻撃といっても相手の心の隙を抉って動揺させるという程度で、心の頑丈な相手には通用しない[59]うえ、術を破られると全ての呪詛が自分にフィードバックするリスクがある[60]
家が貧しく病気を抱えるサクヤを支えてきたが故に、家柄、才能、金、環境の全てを生まれながらに持っているシスティーナに敵意を抱き、2回戦開始直前にサクヤの弱みを開示することで呪言の釘を刺して良心につけこむ。試合本番でサクヤでも実力では簡単に倒せないと悟ると呪言を発動してシスティーナを惑わしたが、グレンの言葉で奮起した彼女に術を破られ、“呪詛返り”で死にかけるがサクヤに治療され命を拾う。試合後、システィーナに謝罪するが「魔術戦の範疇」と赦され、器の差を感じて完敗したことを悟る。

ハラサ

アディル=アルハザッド
占星天文塔に所属する学士生。《砂漠の炎狼》[61]の異名を持つ、浅黒い肌のエキゾチックな美少年。
自らの運命に課した“誓約”で世界に介入する《星天術》の使い手で、頭上に星図を描き、独特な韻を踏んだ呪文を唱える。習得した柔軟な体術と緻密な身体強化術式により野生動物のようにしなやかな挙動が可能で、最高速度で勝るシスティーナを振り切るほどの敏捷性を発揮できる。出血多量で死ぬ危険があるので長時間は使えないが、己の血液を燃料に「炎の魔神(イフリート」を形成し灼熱の炎嵐を起こすという切り札を有する。勝利に対して純粋な価値観の持ち主で、国の威信と己が目指す高みのためには仲間を踏み台にすることも辞さない。学生らしからぬ実戦慣れをしており、独特の凄みを持つ。
魔術祭典では砂漠の国ハラサ代表のメイン・ウィザードとして参加。1回戦でアルザーノ帝国代表と、使役召喚された魔獣が放し飼いにされたフィールドでメイン・ウィザードを倒すという形式で試合する。敵将であるシスティーナと1対1で戦うために仲間4人の脱落と引き換えに断絶結界を展開、激しい近接魔術戦を繰り広げるもチェイスの介入で戦いが中断したため、1人で残った相手のサブ・ウィザード全員をまとめて倒そうとした。しかし、チェイスの撤退により戦線復帰したシスティーナにメンバーをまとめて吹き飛ばされ、彼女との一騎打ちに臨み敗退した。
エルシード
ハラサ代表のサブ・ウィザード。浅黒い肌に黒髪の美少女。
魔術祭典1回戦ではアディルとシスティーナを閉じ込めた結界の護衛をしており、銀の飛龍の乱入で計画が破綻した後は残った仲間4人を率いて相手のサブ・ウィザードを出来るだけ減らそうとする。だが、ギイブルとジーニーの時間稼ぎによって泥仕合に持ち込まれ、アディルが相手を一網打尽にしようとしている間に、駆けつけたシスティーナが放った暴風で吹き飛ばされ、戦線離脱した。

天の智慧研究会

天の智慧研究会は本作における主要な敵対勢力。

フェロード=ベリフ
声 - 津田健次郎[注 6]
天の智慧研究会・第三団《天位》(ヘヴンス・オーダー)【大導師(ヘヴン)】。組織の創設者にして最高指導者。正体どころか実在すら分からないとされ、時に大男、時に美しい女性、時に年端もいかぬ幼児とも噂される。その正体は《継魂法》という術を使うことで体を乗り換えている《魔王ティトゥス=クルォー》の転生体であり、5年前からは若返らせたレドルフ=フィーベルの肉体を利用している。左手の甲には研究会の秘中の秘奥である《天空の双生児(タウム)》の印章を刻んでいる。アルザーノ帝国を舞台とした戯曲の脚本家兼演出家を自称している。
聖暦前4000年に起きた“正義の魔法使い”との戦いで肉体を失い、時間経過による精神(アストラル体)の劣化を克服するために開発した《継魂法》で永遠者化している。これは不滅の霊魂に魔王としての原初の《意思》を刻印して他人に継承させ、新鮮な精神を自身の霊魂へと上書きして再活動を可能とした外法で、《意思》を除く記憶や人格、肉体は他人のもの。両者の合意と、《意思》のベクトルが一致していること、つまりメルガリウスの天空城に至ろうとするか、その先の真理を求める魔術師達でなければならないという条件がある。
メルガリウスの天空城に至り、その先の真理である禁忌教典を再び手に掴むことで、異次元の邪神達から人類を“救済”することが目的。遥か遠い昔、正義の魔法使いとの戦いで滅ぼされてバラバラになっていた《空の天使》レ=フィリアを修復するため、アルザーノ王家を利用した魔術儀式【マグダリアの受胎儀式】を繰り返してきた。自身が何千年もかけて紡いだ戯曲の終幕に向けた第一幕としてル=シルバの復活を見届けると共に、『銀竜祭』に来ていたルミアと接触するため、人形劇を生業とする旅芸人を装いホワイトタウンを訪れた。
魔術祭典が行われたミラーノでジャティスが《邪神兵》招来を実行したため、彼を始末するべくパウエルを伴って儀式場に姿を現すが、その際に探知を避けるため霊脈に触れずに侵入するという絶技を行ったことが仇となり、霊脈回線に仕込まれた細工に気付けず、自らの姿をはじめとする様々な個人情報を世界中にバラ撒かれるという失態を犯す。その後、罠を仕掛けたジャティスを古代魔術【次元追放】で異次元へ吹き飛ばし、邪神招来の儀式制御と邪神の制御権奪取に専念することになる。ジャティスの妨害を取り除いた後、タウムの天空神殿でグレン達を迎え撃ち、ルミアをレ=フィリアとして復活させ、グレンとシスティーナを追い詰めたが、ナムルスとル=シルバの妨害によって取り逃す。
パウエル=フューネ
第三団《天位》クラスの男性。【神殿の首領(マジスタ・テンプリ)】を名乗り、ソロームの指輪の下、魔界の三十六悪魔将と666の悪魔軍団を従えし、世界最古にして現世最高の悪魔召喚士を自称する。天の智慧研究会の創設者にして最古参のメンバーであり、大導師に次ぐ立場にいる。
その力は魔人と評されるほどに強大で、人外となったルナやチェイスを瞬殺し、アルベルトら特務分室メンバーが3人がかりでも圧倒されるほど。
数年前、《葬姫》アリシャールを下僕にしたいと考え、その分霊を魂に宿すアリアを狙って彼女の村を滅ぼす。そして司祭のパウロ=セインズを名乗ってアリアを辺境の片田舎に引き取り、その弟のアベル(アルベルト)に戯れで魔術を指導する傍ら、5年かけて【適合者】の素質を持つ子供達を集めた。8年前、大導師から新たな使命を与えられたことで準備してきた儀式を実行に移し、孤児を生贄にしてアリアを《葬姫》に分霊覚醒させる。儀式を中断させようとするアベルを懸絶した実力で退け、自らに攻撃してきたアリシャールを抑え込むが、彼女の自爆に巻き込まれて姿を消す。
その後はフェロードが用意した新たな偽装身分のフューネラル=ハウザーとして聖エリサレス教会の枢機卿に着任、卓越した能力と人徳で枢機卿会内における力と発言力を高め、前教皇の死後に行われた4年前の教皇選挙(コンクラーベ)を経て教皇の地位を得ると、教会でも異端とされる融和派の後見として立場を盤石なものとする。その裏では《無垢なる闇》の敵対者である《戦天使》イシェルを手中に収めるため、ルナを【天使転生】させ手駒に加えていた。魔術祭典後、《邪神兵》降臨のために温存していたルナがジャティスに唆されて【十三番】を勝手に歌ったことに失望し、チェイスを抹殺した上で逆上したルナを一蹴する。そして、クーデターから女王を救出しようと現場に向かっていたアルベルトら3人を足止めし、傷一つ負うことなく戦闘不能に追いやった。
ラザール=アスティール
200年前に『六英雄』の一人、《鋼の聖騎士》と称された男。元・聖エリサレス教会聖堂騎士団総長。当時の邪神との戦いの中で死亡したとされているが、邪神に妻子を殺されたことで神への信仰を見失い、大導師との出会いで禁忌教典の存在を知り「内なる声」を受け入れた。現在は第三団《天位》クラスの急進派メンバーとなっている。
《鋼》の二つ名の由来となった日緋色金製の武装力天使の盾』は、あらゆるエネルギーを吸収し100%の効率で光へと変換、拡散するという魔力場を展開する性質があり、魔力遮断物質である真銀でなければ攻撃を通すことすらできない。武器は「聖剣」シリーズの最高傑作とされる輝く槍《聖槍ロタリキア》で、噴出する絶大な法力で作り上げた光の塔のような規模の「法力剣(フォース・セイバー)」による攻撃を得意とするが、《剣の姫》に勝ったことはなかったらしい。
「内なる声」に従いアルザーノ魔術学院にあるマナ堰堤式を利用し、解呪によって発生する莫大なマナによってアセロ=イエロを呼び寄せるため、その障害に成りうるセリカを排除する。そして学院を襲撃し講師や教授を相手に圧倒的な力を見せるが、かろうじて逃げ延びていたセリカや負傷から回復したリィエルによって身動きを封じられ、その隙にその存在を侮って見逃していたグレンに術式の真意を理解されてしまい正しい起動をされてしまう。これにより本来得るはずだったマナが目減りしてしまったが、それでも大量のマナを吸収することに成功し手にした鍵を使い、《魔将星》アセロ=イエロとして生まれ変わる。
レイク=フォーエンハイム
声 - 瀧村直樹
第二団《地位》(アデプタス・オーダー)クラスの魔術師。アルザーノ帝国魔術学院を襲撃したテロリストの一人。通称《竜帝》。グレンからセリカクラスでもなければ太刀打ちするのは難しいと言わしめたほどの実力者。仲間とは言え不手際を働けば容赦なく処刑する冷酷さを持つ。
伝統的にドラゴンの研究を行い血筋に竜の血を入れることでその力を得るも、代償として人としての姿と理性を失う『竜化の呪い(ドラゴナイズド)』という精神に根ざした呪いを受け、それを【竜鎖封印式】で封印してきたというフォーエンハイム家最後の1人。3つある封印の一号を解放しただけの状態でも古き竜が使う「竜言語魔術」による大自然の猛威と莫大な魔力を行使でき、竜鱗の剣を強靱な肉体で振り回す。完全に封印が施された状態でも竜牙兵を無数に使役でき、3本の自動剣と2本の手動剣を操る近接戦闘を得意とする。召喚魔術についても卓越しており、遠隔連続召喚が可能。
魔術学院襲撃時にはジンと共に学園を占拠。その後、ジンがグレンに敗北したことを知るとスケルトンの大量召喚による物量攻撃でグレンを消耗させ、自らの手で葬ろうとする。この際、ジンは「自分勝手なことをした」としてスケルトンに処刑させた。続けてグレンを追い詰めるが戦線離脱したと思われていたシスティーナの介入で形勢逆転され、制御を奪われた剣で刺し貫かれ死亡した。
その後「Project: Revive Life」によって復活、急進派が暗躍するフェジテに向かう。前回の戦いで、魔術師としての技量がグレンに圧倒的に勝っているという理由で解呪をためらい死んだことを反省し、封印の一号を開放した状態でグレンに再戦を挑む。再び彼を追い詰めていったが、『竜化の呪い』の欠点を彼に見抜かれ、白魔【マインド・アップ】を付呪した弾の三連速射で呪いが弱まった瞬間に心臓を撃たれ敗北。最後までグレンに勝つことはできず、2度目の死を迎えた。
3度目の復活ではタウムの天空神殿にて【竜鎖封印式】を全解放した状態でグレンとルミアを迎え撃ち、拮抗した戦いを繰り広げる中で全身が崩壊、【愚者の一刺し】でとどめを刺される。
エレノア=シャーレット
声 - 日笠陽子
第二団《地位》クラスの死霊術師。黒髪黒眼の女性。正体を隠している時はあまり眼を開かず物静かで奥ゆかしい女性を演じている。本当の彼女は狂気に満ちた眼と病的な表情の持ち主であり、気だるげな言動で常時過ごしている。大導師からは同じ第二団で自身より地位の高い者よりも信頼されている。
アルザーノ帝国大学経済学部を首席で卒業、剣術・魔術も超一流の才媛ということで王室に女王付き侍女長兼秘書官として雇われた。女性をいたぶるような外道をひどく嫌っている。魔術競技祭の時にアリシアに呪いをかけたネックレスを渡し、暗殺に失敗するとアルベルトとリィエルを巻いて逃亡。その後はバークスらに協力するが、グレンとアルベルトに追いつめられる前に即座に撤退した。ルミア暗殺計画の際には現状肯定派寄りの構成員として厳重な警戒を潜り抜けグレンに接触、未だにグレン達がザイードの術中に嵌まっていることを示唆して作戦中で動けない彼を尻目にまんまと逃げおおせた。『銀竜祭』の裏でも暗躍し、殺害した《銀竜教団》の大長老を操り教団員の命を使って呪氷に閉じ込められていた白銀竜を復活させる。
イグナイト卿が引き起こした「炎の一刻半」の裏で、メルガリウスの祭壇に「供物」を捧げるために5万を超える死者の軍勢を操り、レザリア王国から東の国境を破りイグナイト領を経由、帝都防衛軍を突破して帝都オルランドを襲撃、一夜にして25万近い市民を殺害する。
記録上の位階は第四階梯。凄腕の死霊術師でもあり、女性ばかりの亡者を無数に召喚することができる。さらに自らにも魔術や薬物に依らない一種の不死性が宿っており、高速治癒が可能。戦い方も狂気を彷彿とさせるスタイルをとるが理性は保っており、相手を挑発しても決して侮らず不利と悟れば迷わず撤退を選択する。詳細は不明だが、本気で戦えば世界最高の魔術師であるセリカを排除できるほどの力を持つとされる。
ザイード=ヴァルトス
第二団《地位》クラスの魔術師で、急進派の一員。《魔の右手》の二つ名を持つ男。
代々、音楽に変換した魔術式で他人を掌握する古代魔術『魔曲』を伝える家系の出身。操った楽奏団が奏でる七つの『魔曲』を聞かせた人間の心と体を支配する固有魔術【呪われし夜の楽奏団(ペリオーデン・オーケストラ)】を使うことができる。この魔術は心に作用するため耳を塞いでも精神防御を行わなければ防げず、深層意識を掌握することで魔術の発動を封じることが可能となる。
ルミアの暗殺計画を企て、部下を引き連れて社交舞踏会を迎えたアルザーノ魔術学院に姿を現す。『魔曲』で洗脳した学生を囮に楽団の指揮者としてイヴの目をかいくぐって会場に潜入し、彼女を含めた舞踏会参加者のほとんどを傀儡と化す。そのまま学院内を逃走するルミア達を追っていたが、グレンとアルベルトとシスティーナの絶妙な連携の前に術の核となる指揮棒を破壊されてしまい、生きたまま拘束された。
ユアン=べリス
第二団《地位》クラスの魔術師で、フェジテ警邏庁に潜入しているスパイ。急進派の一員。警邏官僚組の若きエリートで、階級は警邏正。世界一の暗示魔術師を自認しており、警備官の半数以上を暗示の支配下に置いている。
隠行で慎重に姿を隠しながら「マナ活性供給式」の管理を行っていた。自身の権限と暗示を利用して市庁舎爆破犯とされたグレンを追跡させたが、自身の正体を掴ませないために暗示で指示をしていたことが仇となり、指揮のほころびからその存在をジャティスに察知されてしまう。その後はジャティスから拷問を受け、供給式の位置を話して命乞いしたが、邪悪を罪から救うという理論のもとあっさり殺害された。
ライネル=レイヤー
声 - 古川慎
第一団《門》(ポータルス・オーダー)クラスの錬金術師。
かつてはシオンと共に「Re=L計画」を進めていたが、彼が亡命しようとしていたことを知りイルシア共々殺害する。その後2年間姿を消していたが、計画を再実行するためバークスと手を組み、シオンに成り済ましてリィエルに自分が兄シオンであると信じ込ませ、ルミアを誘拐させた。リィエルが自身の秘密を知ると演技をやめ、新たに製造した3体のリィエル=レプリカでグレンたちを殺害しようとしたが彼女の「人間」としての成長を図り損ねた結果、レプリカはリィエルに、自身はグレンによって殴り飛ばされて敗北した。己の欲望のために他者を顧みない姿は『真の邪悪』に例えられた。
グレイシア=イシーズ
第一団《門》クラスの魔術師。急進派の一員。《冬の女王》の二つ名を持つ全身に魔導刻印を刻みつけた少女。
その刻印は『死の冬の刻印』と呼ばれる物で、魔力暴走を引き起こすことにより周囲50メトラを絶対零度の空間に変え全てを停止させることができる。その性質上拠点防衛戦に特化した能力となっている。
ルミア暗殺計画ではクリストフと対決、彼が得意とする結界を次々と凍結させ本人にも重度の凍傷を負わせたが、彼が自身の足止めに徹して能力の底を図っていたことが分かると一時撤退する。2度目の戦いでもクリストフと戦うことになり、ザイードの補助で戦況を有利に進めたが敗北が確定した時点で早々に逃走した。
ゼト=ルード
第一団《門》クラスの魔術師。急進派の一員。《咆哮》の二つ名を持つ30から40代の中年男性。
筋骨隆々の体格を持つ魔闘術の使い手。初戦では魔闘術の先達であるバーナードと交戦、彼が衰えたと思い勝利を確信していたが、道具を多用する戦法に翻弄され右腕を失い、不利を悟って撤退。その後金属の籠手を付けて復帰し、今度はリィエルと戦うもザイードの敗北を知るとグレイシアと共に逃走した。
ヴァイス=サーナス
第一団《門》クラスの悪魔召喚師の青年。急進派の一員。
ルミア暗殺計画に先んじて第三師団第八辺境警備隊を襲撃、約500人の魔導兵を皆殺しにしてその魂を悪魔の生贄にする。計画本番ではアルベルトと対峙、《狂騒伯爵》ナルキスを召喚し物理攻撃の通じない概念存在を操る優位から彼を追い詰めたと思っていたが、司祭の資格を持つアルベルトによりナルキスを強制的に退散させられてしまい、自分自身も【ライトニング・ピアス】で脳天を打ち抜かれて死亡した。
ジン=ガニス
声 - 関雄
アルザーノ帝国魔術学院を襲撃したテロリストの一人。ロリコンのチンピラ風の男。一流になることを捨て、三流に留まることで自己の快楽を優先するという選択をした下種。そのためプロ意識は低く、魔法の技量自体は優れているが油断して痛い目を見ることが多い。
【ライトニング・ピアス】を「ズドン」の一節で放ち[注 7]、さらにこれを10連射する技能も備えている。この技術と『疾風脚』による高速移動を併用することで、相手を攪乱しながら蜂の巣にするのが得意な戦法。
システィーナを強姦しようとしたが、魔術を封じられた状態でグレンによってタコなぐりにされ失神。最期は勝手な行動と失態を演じた咎によりレイクが操るスケルトンの手で惨殺された。その後「Project: Revive Life」で復活し、フェジテでグレンを援護していたシスティーナを襲撃、手を抜いて彼女をいたぶり続けたが自分の技術が見切られていたことに気づけず、至近距離で【シュレッド・テンペスト】を発動するという自滅ギリギリの攻撃にさらされ、相手を侮って魔術防御を施していなかったことが徒となり重傷を負う。満身創痍の状態でシスティーナを殺害しようとしたが、イヴによって全身を燃やし尽くされ2度目の死を迎えた。
3度目の復活ではタウムの天空神殿で再びシスティーナと1対1で交戦するが、急激に成長した彼女に圧倒され、一矢報いることもできずに心臓を射貫かれて死亡した。
キャレル=マルドス
声 - 土田玲央
アルザーノ帝国魔術学院を襲撃したテロリストの一人。酸と毒を同時に用いた致死性の高い魔術、錬金改【酸毒刺雨】という猟奇的な手段で人を殺すことを好む。出勤途中のグレンを単身襲撃したが、「愚者の世界」で魔術を封殺されたうえで叩きのめされ、挙句に全裸に剥かれて路上に放置される。
ヒューイ=ルイセン
声 - 遊佐浩二
アルザーノ帝国魔術学院襲撃の主犯格。魔術学院2年次生2組の元担当講師、つまりグレンの前任者であり、突如失踪したことでグレンが臨時講師に採用された。
実は研究会が要人暗殺のために長期にわたって学院に潜ませていたスパイ。元王女であるルミアの拉致を命じられたことで姿を消し、密かにレイクらの手引きを行い、任務達成と同時に学院を道連れに自爆しようとしていたが、グレンの決死の行動とルミアの能力により阻止される。実際のところは組織の言いなりになるのが正しいのかで苦悩しており、境遇的にはグレンと似通っている。そんなグレンからは「組織の言いなりになっていたお前が悪い。自分の行いまで組織のせいにするな」と言い捨てられた。敗北後は「生徒を殺さずに済んだ」と本心では安堵しつつグレンに殴り倒され、その後捕縛された。
戦闘能力はないものの、空間魔術に関してはセリカをして「天才的」と言わしめたほど。魔術学園を囲む結界は師団の力を以ってしてもすぐには解除できなかった。
アニメ版では、姓名が「ヒューイ=ロスターム」となっている。
バークス=ブラウモン
声 - 石塚運昇
帝国白金魔導研究所所長。40から50代の禿頭の男。外面は人格者だが、内面は傲慢な性格で自らの能力を信じて疑わない。
組織の思想に傾倒する参入志願者で、禁忌とされた「Project: Revive Life」の完成を条件に入会を約束されている。また、典型的な異能差別主義者であり、異能者を捕らえては非道な人体実験を繰り返し犠牲を積み上げていた。また、魔導士を戦争犬と呼んで侮蔑している。
ルミアに術式を組み込んだ後、自らの研究施設に侵入してきたアルベルトと、異能者の能力を利用できる魔薬を自らに投与した状態で交戦。再生能力を過信しアルベルトを追い詰めたつもりでいたが、微量の出血の繰り返しで血中の薬物濃度が低下していることに気づかず再生能力を失い、そのまま失血死した。その死は隠匿され、失踪という形で処理された。
シオン=レイフォード
声 - 江口拓也
「Project: Revive Life」を成功させた天才錬金術師。計画のために数多の犠牲を払ったことを悔い、自らの命の代わりにライネルとイルシアを帝国に亡命させるべくグレンと交渉を行っていたが、組織を抜けることよりも組織の中でのし上がることを選んでいたライネルの怒りを買い刺殺される。『原初の魂』が初めて“人間”へ派生した時の、『原初人類の霊魂』の複製を完成させていたことも明らかになっている。
研究関連の資料や記録の集成は『シオン・ライブラリー』の通称で呼ばれ、事件後に帝国軍が接収している。
イルシア=レイフォード
声 - 和多田美咲
シオンの実の妹で、リィエルの素体。容姿はリィエルと同じだが、髪の色は兄と同じく赤で感情表現もはっきりしている。【隠す爪】を習得していながら自我を保つことのできた希少な人材で、組織では始末屋として働いていたが、標的を始末する度に罪の意識に苛まれ続けていた。シオンが殺害されたのを見て動揺している間にライネルによって致命傷を負わされる。負傷した身でアジトから逃げ力尽きたところをグレンに発見され、リィエルのことを託して息絶えた。
セイン=ファランド
しがない中間管理職としてフェジテ行政庁に入り込んでいたスパイ。表向きは誠実で実直な人物を装っているが、内心では他人を見下している。法陣儀式魔術の達人。
市庁舎内に作っていた小部屋で「マナ活性供給式」のひとつを秘密裏に管理していたが、登庁早々にルミアの力を利用したジャティスによって解呪された法陣を目の当たりにし、動揺している間に彼が仕掛けておいた爆弾で市庁舎ごと吹き飛ばされ死亡した。
ミゲール=ブラッカー[12]
帝国軍の《千騎長》。多少生真面目過ぎるきらいはあるが、非常に有能で、周囲の人望も厚い。
実は天の智慧研究会の密偵。組織側の人間としてグレンを目障りに思い、死にかねない無茶な任務を裏回しして、彼を謀殺しようとした。しかし、ジャティスには本性を見抜かれて研究会の尻尾を掴むために泳がされており、ライモンド法医学研究所の一件の後、グレンへの借りを早めに返すことにした彼に始末される。その後、証拠がなかったことで失踪事件として処理され、行方不明のまま迷宮入りとなった。

魔王関連

ティトゥス=クルォー
人類の黎明期、外宇宙から来訪した「天空の双生児」の加護をうけ、世界で最初に“王”となった者。「賢王」と称されたが、その統治は栄華と絶望を同時に極めた暗黒時代であったことから旧古代中期には「魔王」とも呼ばれ、「メルガリウスの魔法使い」に登場する悪の魔王のモデルだとも言われている。
元々は科学が支配する世界[注 8]に生まれながら魔術を極めた人間で、その果てに外宇宙の邪神《天空の双生児》の主となるが、元いた世界がバカな人間によって滅んでしまい、次元樹を旅して魔術のない原始の別世界にやって来た。魔術の力を存分に振るい、乞われるままに魔術を教え、やがて大国の王となり、平和で理想的な世界を築いて賢王と称された。しかし数千年が経った頃に発狂し、次々に戦争を起こして周辺諸国を攻め滅ぼし、属国として支配下に置く。さらに、何らかの使命を果たすために“禁忌教典”を求め、そこへ至るための巨大魔術儀式施設として「メルガリウスの天空城」を建造。人知を超えた強大な力を持つ原生生物や魔獣が跋扈し、数多くの氏族、部族、蛮族が争う北セルフォード大陸を統一するための「力」を求め、《天空の双生児》から邪神眷属招来の術を貸し与えられ、配下の魔将星や「無垢なる闇の印」の巫女による外宇宙の邪神召喚術、数々の魔法遺産といった人智を超えた戦力を背景に全世界を侵略し、“禁忌教典”を手に入れるための【聖杯の儀式】の「供物」として夥しい民衆を魔都の祭壇に捧げたことから魔王とも呼ばれるようになる。
各地に散在する“正義の魔法使い”の伝承は、古代魔法文明に実在したひとりの魔術師が魔王に挑んだ戦いの記録だと考えられており、正義の魔法使いによって倒されたと言われている。その力は圧倒的で、自身の支配に抗い復讐を誓って《嘆きの塔》に攻め込んだ“正義の魔法使い”であるセリカを一度は撃退して異次元へと追放する。3日後に未来の世界から帰還したセリカに加え、彼女の弟子であるグレンやシスティーナを相手に戦い、アール=カーンとの戦いで魂に損傷を受けていたセリカを圧倒するも、命を消費する切り札の命天神秘を使ったセリカやナムルスとの契約で時天神秘を会得したグレン、ル=シルバの魔力による後押し、そして風天神秘を完成させたシスティーナによって押し切られ、【イクスティンクション・ノヴァ】が直撃して消滅する。だが実は《継魂法》を使うことで永遠者化しており、アリシア三世の夫のルーシャスをはじめ、アルザーノ帝国女王の歴代王配となっていた。

魔将星

《魔煌刃将》アール=カーン
「メルガリウスの天空城」に登場する魔王直属の配下「魔将星」の一人。己が真に忠誠を捧げるべき相手を求めて戦い続けるという変わり者。緋色のローブで全身を包み、邪神の試練を乗り越えて手にした13の命と、左手に持つ魔術を打ち消すことができる赤き魔刀「魔術師殺し(ウィ・ザイヤ)」・右手に持つ霊体そのものを傷つけられる黒き魔刀「魂喰らい(ソ・ルート)」を武器とする。魔刀の弱点は決まった手で振るわなければ性能を発揮できないということ。普段でも恐ろしいほどの強者であるが、その真価は追い詰められたときにこそ発揮される。他の魔将星と違って最後までその行動原理がよく分からず、ロランも扱いに困って童話では“真の主を求めて彷徨う武人”というキャラ付けを無理矢理したほどである。
彼の影である存在が学園地下迷宮地下89階で門番を務める。「星の回廊」を通って迷い込んだグレンたちに襲いかかり、隔絶した戦闘力で追い詰めていったが、すべての命を失ったことで消滅する。
聖暦前4000年にも《嘆きの塔》に侵入して来たセリカ達の前に立ち塞がるが、魔王に立ち向かおうとする彼ら意思の輝きに自身の主となる資格を見出し、戦うことなく消え去った。
《鉄騎剛将》アセロ=イエロ
「魔将星」の一人。頑健な漆黒の全身鎧の上から緋色のローブを纏い、その肉体は究極の魔法金属である神鉄(アダマンタイト)で出来ているため、あらゆる物理的・魔術的攻撃を無効化し、【メギドの火】でも破壊することは不可能。さらには複数の厄介な魔導機動兵器を所持し、《炎の船》と呼称される巨大な箱舟、一国の軍を全て轢き潰したこともあるという、4頭の黒馬に引かれ車輪から蒼い炎を吹き上げる巨大な魔術の戦車《黒の火車》《光の巨人》などを操る。「正義の魔法使い」との戦いでは彼を味方と分断して仲間を皆殺しにしたとされ、「正義の魔法使い」でも唯一倒すことができなかったと言われているが、何の伏線もなく突然登場する魔法使いの「弟子」が使った小さい棒で胸を突かれて死んだという。
「天の智慧研究会」のラザールがその「内なる声」に従い、アルザーノ魔術学院に設置されていたマナ堰堤式から奪ったマナの一部を吸収した鍵を使って魂を融合させ顕現する。圧倒的な力をグレンたちに見せつけ、魂融合が万全の状態になる2日後に【メギドの火】でフェジテごとルミアを抹殺することを宣言する。「銀の鍵」で特攻を図るルミアを拘束し心を折るが、大きな力を得たがゆえに「人間の心の強さ」を侮った結果、【メギドの火】は学院に結集された魔術師たちの抵抗で防がれ、自身はグレンの【愚者の一刺し】によって魂に大きなダメージを負う。維持できなくなった《炎の船》を放棄し密かに逃亡したものの、殺したはずのジャティスの待ち伏せに遭い、奪われた左手で真っ二つにされ消滅した。
未来から聖暦前4000年にやって来たグレン達が魔都の処刑場でセリカの弟子を名乗って暴れたのを知って襲撃。神鉄の身体と《黒の火車》によってグレンを苦しめるが、必死に戦うグレンに感化された愚者の民による魔術攻撃で注意が逸れた隙を突かれ、“正義の魔法使いの弟子”であるグレンが持つ「小さな棒(=魔銃【ペネトレイター】)」から放たれた【愚者の一刺し】を受けて死亡する、という童話通りの最期を遂げた。
《白銀竜将》ル=シルバ
スノリア地方の伝承で白銀竜と呼ばれ、『メルガリウスの魔法使い』第7章で魔王に敗北し、《竜の鍵》を刺されて魔将星へと堕した存在。銀の鱗と蒼眼が特徴の巨大な古き竜(エインシェント・ドラゴン)。超極低温で分子運動が停止することを利用して攻性系黒魔術を問答無用で打ち消す竜の咆哮【凍てつく吐息(バニシング・フォース)】、純然たる恐怖で身体を完全麻痺させ一時的に五感を失わせ失神あるいは白痴に陥らせる竜の咆哮【打ちのめす叫び(スタン・スローター)】などの強力な竜言語魔法を使いこなすだけでなく、縄張りの中で殺して捕らえた魂の亡霊達を氷の骸骨へと変えて眷属とすることが可能。
シルヴァスノ山脈第8峰アヴェスタにて、自らの『善き心』の化身と契約して竜の力を得た正義の魔法使いと対決し倒されたと伝えられている。セリカが取り戻した記憶によれば、かつては空(セリカ)とナムルスの3人で旅していたが、信頼していたセリカの裏切りで聖の側に属する存在から邪なる存在へと変えられてしまった。大導師によれば、大いなる智慧へ至る天の城の《門番》であるらしい。
少女の姿で『永久氷晶』という呪氷の中に閉じ込められていたが、《銀竜教団》の命を用いた儀式によって復活。ホワイトタウンを強襲し、かつて自身を魔に堕としたセリカへの恨みを晴らすために決闘を申し入れ、スノリア全土を史上類を見ない大寒波で包み、無数の氷の骸骨を街へと放つ。しかし自分のもとに現れたセリカが記憶を失っていることを知り、挑発されて激昂、グレンたちの援護を受けた彼女との戦いの末、古代魔術【クトガの牙】で心臓を貫かれ敗北。力を失った巨軀はマナの粒子と化して消滅し、鍵が折れたことで封印されていた当時の少女の姿へと戻る。戦いの後は死んだように眠り続けているため、再建されたアルフォネア邸でセリカから介抱されていたが、しばらくして目を覚まし、セリカと共にタウムの天空神殿に向かう。
セリカに敗れて鍵を取り除かれた後は殺されることなくセリカやナムルス(ラ=ティリカ)の仲間になり、魔王との決戦でも竜としての戦闘能力やグレンへの魔力供給によって活躍した。決戦後は魔術能力をほぼ失ったセリカに魔力を提供して天象儀装置の修復を成し遂げ、セリカから《世界石》を預かり、《叡智の門》を閉じるためにセリカの手で再び鍵を刺されて《白銀竜将》へと戻り、その状態で永久氷晶に封印され、現代まで眠り続けることになる。なお、復活時に暴れたのは魔王の邪悪な意思の影響で自我を失い記憶が混濁していたためである。
グレン達が過去から帰還すると、封印される前にセリカから託された《世界石》をグレンへ譲る。
《炎魔帝将》ヴィーア=ドォル
魔将星の一人。身体は超高熱の炎そのもので形作られた人形で、天まで焼き尽くさんと上がる膨大な炎と熱波を武器とする。身体は炎そのものなので、通常の魔術や武器は通用せず、銃弾程度は一瞬で燃え尽きる。「炎の剣(フレイ・ヴード)」という武器を操ったとされる。
ミラーノでのクーデター終盤、アゼル=ル=イグナイト卿が【大導師】から渡されていた“赤い鍵”を使って転生。対峙したグレンを丸焼きにして追い詰めるが、リディアを倒して駆けつけたイヴの【第七園】で炎になった肉体を支配されて思うように動かせなくなり、グレンの【愚者の一刺し】で致命的なダメージを負って力を放棄せざるを得なくなる。
《風皇翠将》シル=ヴィーサ
魔都メルガリウスを守る最後の魔将星達の一人。比類なき風と嵐の支配者とされ、純銀を溶かし流したような銀髪とやや吊り気味な翠玉色の瞳を持つ、妖精のように美しい女性。魔王に最も忠義厚き魔将星とされ、魔王のためならば、いかなる残虐非道もやってのけたという、冷酷無比なる無慈悲の魔人と伝えられている。
フィーベル家の遠い先祖であり、止める一族の声を振り払って、一族の安全と引き替えにイターカの神官として魔王に尽力していた。だが、内心ではお仕着せで管理するほど人は弱いのかという迷いを抱え、自身の行為が偽善と傲慢でしかないのではないかと思っていた。アセロ=イエロとグレンの戦いを支援するシスティーナな興味を持ち、《嘆きの塔》の中へと招き、未来から来たという彼女の話を聞いて自分の行いが間違いだと確信、子孫に力と意思を託すことが贖罪と考えてフィーベル家の秘宝である魔法遺物《風の外套》を渡す。そして魔王とセリカの2回目の決戦ではシスティーナと交戦、虚空から《風神イターカ》の一部を限定支配召喚して彼女を圧倒するが、風天神秘を完成させた彼女に敗北。最初から彼女に敗れるつもりであり、魔術契約によって魔王に直接敵対する行為が取れなかったため、あえて序盤は全力を出さずに戦っていた。
“緑色の鍵”に対応する魔将星としてフェロードはシスティーナに鍵を与えようとしていたが、本人に研究会への加入を拒否され失敗している。
《罪刑法将》ジャル=ジア
“灰色の鍵”に対応する魔将星。使用者にはジャティスが選ばれたが、封印の地での勧誘時に激しく拒絶されて失敗している。
《雷霆神将》ヴァル=ヴォール
魔将星の一人。魔法文明の時代にはヨト国の裏から手を引き、周辺諸国への奴隷狩りを国民総出で積極的に行わせていたが、セリカによって始末される。
“青い鍵”に対応する魔将星として鍵はアルベルトに与えられていたが、マレスでのグレンとの戦いで「仲間を信じる」選択をした際に鍵を破棄している。
《冥法死将》ハ=デッサ
死霊の支配者、冥府の大公。

外宇宙の邪神

ナムルス
「名無し」を意味する名を名乗り、「この世界でもっとも穢れた存在」を自称する少女。顔立ちはルミアに酷似しているが、白髪に暗く淀んだ赤珊瑚色の瞳を持ち、背には異形の翼が生えている。
本当のアイデンティティは《天空の双生児》の片割れである《時の天使》ラ=ティリカ。外宇宙にある根源的な存在本質は人間が理解したら正気が吹っ飛ぶものであるため、存在の一部を霊脈を通じてこちらの世界に飛ばし、それを対人インターフェイスに人類へ接触している。傍観者でしかないので、未来や過去が予測不能な状態となるのを避けるために情報を開示できないという制限があり、グレンには自分自身の力で“真実”に到達させようとしている。
時間を支配する権能を持ち、契約者であるセリカは全ての時間を自由自在に支配する世界結界を展開する時天神秘【OVER CHRONO ACCEL(オーバークロノアクセル)】により、攻撃の到達時間を無理やり刹那にすることで攻撃を必中させ、逆に効果時間をゼロにしたり到達時間を永遠にすることで攻撃を無効化できる。気が遠くなるほど遙か太古、外宇宙の邪神と戦い続けていた異世界の神殺しだけあって、本来の力を出せれば勝てる“人間”は世界にいないとのことだが、ルミアの精神体を乗っ取り「悪ミア」と化した際には《分解》《無音詠唱》を使えず、三節詠唱すらおぼつかないヘボ魔術師にまで弱体化する[62]。しかもかなり不器用で、ナイフを持たせれば指を詰めそうになり、料理をすれば暗黒物質が生成される[63]など、短編作品で登場する時は大抵醜態を晒す。
ルミアの能力の正体を知っているようで、彼女に対しては辛辣に接するが、それは彼女の自己犠牲の精神性への批判であり、彼女自身を嫌っているわけではない。グレンとの間には“とある強固な縁”があるとのことで、「私の主になる者」とも言っている。本人はストーキングしているのは「本当にたまに」だと語るが、実際は毎日様子を観察している[64]
地下迷宮でアール=カーンに襲われたグレンたちを救出、霊体を損傷し二度と魔術を使えなくなる危険性を理解してアール=カーンを倒したセリカに残された力を託した。アセロ=イエロの復活時にはフェジテに出現、彼への対策を練る面々に助言しルミアに魔法の《銀の鍵》を扱う力を1日限定で与えている。魔術祭典の代表選抜会がループに巻き込まれた時には、一度その中で死んだグレンに接触し、繰り返しが続けば時空間がねじ切れて“どこにも向かわない”まま隔離されてしまうことを忠告する。また、魔術祭典本戦1回戦後の夜、グレンが天使言語魔法【子守歌】に屈しかけた時には、魂に直接語りかけて覚醒を促した。グレンが「アリシア三世の手記」の罠に掛かった際には、彼を救うために精神世界まで駆けつけ、共に脱出の方法を探して奔走する。
かつてはティトスと契約し彼を主と仰いでいたが、発狂して魔王となった彼を見限って出奔すると、魔王を倒しうる誰かを探すようになり、処刑執行人に殴られ瀕死になっていた幼いセリカと契約、《永遠者》となった彼女を100年の時をかけて鍛え上げ、“白い鍵”を取り除いたル=シルバも仲間にして魔王の支配に抗った。だが、1回目の決戦でセリカは魔王の時空間追放魔術によって5400年以上先の未来へ飛ばされ、自身も力を殆ど失うダメージを負い、《黄金の鍵》の権能も殆ど行使できず、人の肉体らしきものを保つのが精一杯というほどに消耗していた。それから3日後、セリカと共に過去にやって来たグレンとシスティーナに期待をかけて、残された存在を削って《王者の法》の力を授ける。2回目の魔王との決戦で勝利したものの完全な霊体状態となってしまい、グレンと正式に契約を結んだ時点で活動限界に達し、強制的な休眠状態に入り各地の霊脈と同化して能力の回復を図ることになった。
ル=キル
《時の天使》ラ=ティリカの眷属。その中でも最も強い力を持ち、限定的な時間操作能力を持っていた。その名は“滅びをもたらす風の翼”を意味する。賢王ティトゥス=クルォーのために作り出されたが、王に逆らい、怒った王の手で魔導遺産《ル=キル時計》に貶められてしまう。時計は代々クライトス当主に受け継がれており、クリュトゥース地方(現クライトス伯爵領)に伝承が伝わっている。
背中に翼の生えた少女の姿をしているが、身体の半分が機械化され、全身を拷問拘束具で戒められた痛々しい有様になっている。すでに理性はなく、与えられた命令の延長線上でしか思考できない、ただの現象と化していて、時間の操作能力で決められた1週間の繰り返しを行う。
《ル=キル時計》には、竜頭に時間の巻き戻しとル=キルの制御が集約され、本体には記憶を継承する魔術的付呪効果がある。設定された「閉じられた時間」の番人(ルーラー)であり、竜頭を所有するゲイソンの命令を受け、“エレンに干渉して、目的を妨害する者の排除する”、“第三者がループ情報を入手したとき、第三者を排除する”といったルールを執行する。
翼で巻き起こす「滅びの風」は、時間が内包する滅びの“概念”を極微小の根源素粒子である第3虚数質量物質《時素(ルイン)》として翼で物質化し、風に乗せて飛ばすというもので、あらゆる防御系呪文を無効化する。しかし、時間を自在に操り近過去から不可避の攻撃を行う、つまり過去を攻撃して攻撃されたという現在を作るほどの凶悪な力は失われている。
ゲイソンが竜頭を使いすぎたことで封印から解放されたものの、暴走して理性を失い、エレンに取り憑いて1週間を機械的に繰り返すただの現象と化す。しかし最後のループで、システィーナがグレンと開発した周囲の風を完全支配する黒魔改弍【ストーム・グラスパー】で滅びの風を封じられ、グレンの【愚者の一刺し】によって存在本質を破壊されて消滅。そして無限の闇の中でナムルスに再会し、歓喜の涙を流しながら彼女の中へと還っていった。
《空の天使》レ=ファリア
《天空の双生児》の片割れで、ラ=ティリカの姉妹天使。《空の巫女》《夜天の乙女》の名で呼ばれ、聖エレサリス教では第1位:熾天使の位階に置かれる。《銀の鍵》によって空間を操り、支配する能力を持ち、契約者は全ての空間を自由自在に支配しする世界結界を展開する空天神秘【INFINITE ZERO DRIVE(インフィニットゼロドライヴ)】により、全ての距離を無限大にしたり効果範囲をゼロにすることで攻撃の無効化を行う。
ティトゥスが次元樹を超える前から彼を主として仕えており、数千年が経って彼が発狂して魔王となり、ラ=ティリカが袂を分かってからも彼を支え続けた。だが、魔王と正義の魔法使いの2回目の決戦で、グレンとセリカに圧倒されつつあった魔王を支援するために存在を崩し、魔王と共に【イクスティンクション・ノヴァ】を浴びて消滅する。
だが、万が一の保険としてセリカの妹を実験体として完成させていた【マグダリアの受胎儀式】により、アルザーノ王家を利用して修復が行われ、5800年を超える時を経てルミアの代で適合率が98%に達して復活を遂げる。その際に彼女の自我を塗りつぶそうとするも、ナムルスの抵抗でルミアの全存在を乗っ取ることには失敗する。
風神イターカ
風統べる女王と呼ばれる外宇宙の邪神の1柱。一陣の風と共に、あらゆる星間と次元を超えて渡り歩く、旧時代の支配者の1柱であり、時渡る狂気と暴威、風によりて永劫を引き裂きし者として、三千大千世界の終焉と終末を約束する。虚空の隙間から、爆発的な指向性を持った“空間の歪み”のような超威力の“黒い風”を放つ。
システィーナの実家のフィーベル家は、古代魔法文明の時代にイターカの神官だった一族の末裔である。
門の神
《天空の双生児》の親神と言われる“外宇宙の邪神”。時間と空間の法則を超越し、全ての時空と共に存在し、あらゆる次元樹に身を接し、「原初の魂」にも続いているという超規格外の存在。アリシア3世の研究では、《門の神》と交信するための施設として「メルガリウスの天空城」が建造されたとされる。
邪神兵
《無垢なる闇の巫女》達がその身に下ろして招来する《無垢なる闇》の眷属。古代の超兵器にして魔王の手足となって働く兵士のような存在で、伝承では「正義の魔法使い」の故郷を含め、魔王に逆らう国を幾つも滅ぼした。
最初に湧き出る増殖した《根》は不定形の怪物で、人を見かけ次第に喰らい付き、呑み込んでいく。植物のような概念を持つので炎熱系以外の物理・魔術以外の凡ゆる攻撃が効かず、燃やし尽くさない限りは細切れにされようとも寄り集まって元の姿に戻ろうとする。

その他の人物

ライツ=ニッヒ
「魔導探偵シャール=ロックの事件簿」「狂王の試練」など、多くの著作を残した幻想小説作家。故人。
子供の頃に書いた小説が世に出ることを恐れ、それが家族によって寄贈された学院の付属図書館に幽霊としてとどまり、小説に近づく者を驚かして撃退していた。しかし、システィーナの小説を読んで「下には下がいる」ことを実感すると、安心して成仏した。
ギリアム=ウォーラス
緑の国タリーシンの代表選手団のひとりである、樫の学舎のドルイド僧。大自然を操る緑の魔術の使い手。大会出場者最年少の14歳だが、ジャイルを上回る凄まじい威圧感の大男であり、歴戦の荒武者のような凄みを放つことから、グレンやイヴは監督だと勘違いした[65]
1回戦でガルツに敗れ、相手のメイン・ウィザードであるフレデリカのファンになる。
フレデリカ
工業国家ガルツの代表選手団で、メイン・ウィザードを務める小柄な少女。ガルツ魔導工専の生徒で、次世代の魔導士装備として研究される魔力駆動式外装鎧「ブルー・レクス」を装備して戦う[66]
1回戦ではタリーシンの緑の魔術をものともせずに勝利するが、2回戦のレザリア王国には法力の圧倒的火力の前に完敗し、魔力駆動式外装鎧も大破してしまう。
アルフレッド=セリタリー
セリア同盟の代表選手団でメイン・ウィザードを務める大魔術ギルドの学生。見た目は茶髪で軽薄そうなボンボンだが、目には聡い光と思慮深さが感じられる好人物。
1回戦で当たったレザリアとの戦力差を見抜いて勝負に見切りをつけ、仲間に護りのルーンを施して再起不能級の負傷を避けながら上手く負けた。その後は決勝でレザリアと戦うであろうアルザーノ帝国代表に、棄権も視野に入れるべきだと忠告している。
ステンナ=ルイセン
聖暦前4000年頃、タウムの天空神殿の巫女長を務めていた女性。空間系魔術に関しては史上稀に見る大天才であったとされ、魔王を裏切ってセリカ達の味方につき、魔王のいる《嘆きの塔》を突破するために天象儀装置と《星の回廊》を作り上げた。
イーヴァ=イグナイト
聖暦前4000年の世界の魔都メルガリウスで、冤罪で処刑されそうになっていたところをグレン達に助けられた10歳の愚者の民の少女。後のイグナイト家の先祖と考えられ、イヴと同じ炎のように赤い髪と紫炎色の瞳が特徴的。貧弱な愚者の牙でアセロ=イエロに立ち向かうグレンに感化され、他の民衆と共に魔人の注意をグレンから逸らして反撃の機会を作った。アセロ=イエロとの戦いの後、疲弊して気絶していたグレンを魔術で治療し、グレンが目覚めた後に民衆の決起を説明し感謝の言葉と共に彼のようになりたいという夢を語る。別れの時に自分の名前をグレンに名乗る。

用語

国家

アルザーノ帝国
北セルフォード大陸の北西端に位置する帝政国家。シルヴァスノ山脈以南は『海洋性温帯気候区』に分類され、過ごしやすい気候である。国土は南部のヨークシャー地方、帝都を抱える北部のイテリア地方、レザリア帝国に国境を接する東部カンターレ地方、北西部の湖水地方リリタニア、その他北東部のスノリア地方などの辺境小地方に分かれている。旧古代前から後期(聖暦前8000から4000年)前後に超魔法文明が存在していた場所だとされ、各地に遺跡や碑文が残されている。
魔導大国として知られ、領土はさほど広くないが、進んだ文明と優れた魔道技術・工業技術を国家の主幹とし、国全体が王家を中心に一致団結して高い政治力を持つ。最も規模・運営資金・生徒数が大きい、アルザーノ帝国魔術学院・聖リリィ魔術女学院・クライトス魔術学院の3つは帝国三大魔術学院と呼ばれ、その他にも小さな魔術学院や私塾、ギルドが存在する。一昔前までは後世のために絶対に血を残さなくてはならない魔術師には、重婚に対してわりと法律が寛容であったが、現在のアルザーノ帝国では禁止されている[67]
王家の始祖はレザリア王国王家の系譜に連なるため、レザリア王国との間で統治権をめぐる対立があり、帝国正教会によって統治正当性が保証されている。現女王と12名の会員による「円卓会」が事実上の最高決定機関として存在する。宗教国家レザリア王国の侵略併合行為や天の智慧研究会によるテロ行為に悩まされ続けているほか、帝国政府内でも国軍省や強硬派議員からなる「武断派」と魔道省や穏健派議員からなる「文治派」との諍いがあるなど多くの問題を抱えているが、それでも歴代の尽力によって強勢と繁栄を誇っている。
40年前の「奉神戦争」で経済が乱れ、多額の負債を抱えて領地経営を破綻させた貴族たちの多くは、王家の中央集権化政策に便乗して領地を奉還し、領地貴族から宮廷貴族へ、領主から代官へと鞍替えした。一方、建国以来王家に忠誠を尽くしてきた古参の大貴族のうち、卓越した領地経営手腕で財政難を克服し領地を守りきった者もまた多い。
貴族達による国家運営への干渉が激しく、特に治安部門は上層部と繋がりの深いイグナイト家によって牛耳られている。実は職員達の制服の徽章は全てイグナイト家によって魔術的な工作がされており、治安関係に関係する情報は全てイグナイト家に筒抜け状態になっている。混交玉石の情報も存在するが、これによって帝国を支える功績のほとんどはイグナイト家が独占する状況となってしまっている。
秘匿された真実として遥か昔に滅ぼされた《空の天使》レ=フィリアを【マグダリアの受胎儀式】で修復するため、魔王が初代国王タイタスとして作り出した儀式場であった。魔王の呪いによって王家はほぼ100%女児が生まれ、タイタスを除く歴代全ての王が女王で、しかも王配はタイタスと同じ「魂紋」を持つ存在、すなわち魔王の転生体で、「近魂相姦」を繰り返している。つまり、有史以来繰り返されてきた天の智恵研究会との闘争は盛大なマッチポンプでしかない。
フェジテ
帝国南部のヨクシャー地方に存在する、帝国魔術学院と共に発展した大陸有数の学究都市。現在では帝都に次ぐ帝国第二の繁栄を誇る。学院と学生寮などの学生街がある「北地区」、中産・労働者階級に属する一般市民が居を構え工業地区も含む「西地区」、資産家・貴族・魔術師といった上流階級が住む高級住宅街の「東地区」、商店街繁華街商館・倉庫街・ブラックマーケット街からなる経済の中心となる商業街の「南地区」、行政庁・警邏庁・労務庁・帝国銀行支部などの重要公的機関や聖カタリナ聖堂のある「中央区」の5つの区画で大まかに分かれている。
元は片田舎の小さな町でしかなく、時代の変遷とともに何度も区画整理と上下水道整備を行ってきたという経緯があるため、地図にも乗らない旧下水道が埋めきれずに残っていることがある。周辺は土地の霊脈の関係で鉄道を引くことができないので、到達には馬車が必須。
アルザーノ帝国魔術学院
およそ400年前に時の女王アリシア3世の手で創立された国営魔術師育成専門学校。古代魔法文明最大の遺跡である、地下迷宮こと《嘆きの塔》の真上に建造されている。国内に4つある魔術学院の中でも最高峰の魔術を学べるとして近隣諸国でも有名。年度課程は前学期と後学期の2つに分かれており、その間の長期休暇として1ヶ月の秋休みが差し挟まれている。4年制で、一般的に14、5歳で入学する。1クラス40名で1学年に10クラス。1853年度前期時点での生徒は全校で1624名で、修士生や博士生を含めると1800名ほどが在籍する。学生街に寮がある。
一昔前まではごく一部の上流階級の子女しか入学が叶わなかったが、政府の富国強兵政策と実力主義により、奨学金や特待生の制度などが整備され、現在では家格や階級問わずあらゆる層の生徒たちが混在している。選ばれたエリート気質の者が多いせいか、仲間意識と排他意識が特に強い。
行われる授業は受講料が授業料に含まれる必修授業と専門講座の2種があり、さらにもう1つ、高額の受講料を支払って学ぶ「特別講座」が自由開講される。中産・労働者階級は特別講座を受講するのが難しいという問題があったが、生徒会の働きで試験通過者に対して受講料半額を学院に確約させ、平等な機会が与えられるようになった。重要な試験や単位を落とした場合、追試監督役は必ず生徒とは別のクラスの担任教師が担当すると学則で定められている[68]
女生徒は男性とは異なり、その生来の外界マナに対する親和性の高さを伸ばすため、魔術の習熟初期段階では薄着で過ごすことを推奨されている。それ故、女子はへそが出ている制服を着用している(18巻では冬服が登場した)。しかし、普段着用している制服やローブには、身体回りの気温・湿度調節魔術ー黒魔【エア・コンディショニング】が永続付呪されている。そのため、見た目以上に夏は涼しく冬は暖かい、とても便利な代物になっている。
魔術競技祭
年に3度開催される学院生同士による技比べで、4年次生以外が同学年同士で対戦する。生徒の応用力を試すため、「決闘戦」やいくつかの例外を除き毎年競技を変える。優勝クラスの担当講師には特別賞与が与えられる。昨今では実力のある生徒のみが競技を掛け持ちする傾向にある。
遠征学修
学外の魔導研究施設を訪ねる2年次の必修単位の一つ。授業進行状況や受け入れ先との兼ね合いから各クラスごとに別々の時期・場所で行われる。
社交舞踏会
帝国魔術学院の伝統行事の一つ。在校生のみならず、他校生や卒業生、政府高官や地方貴族に女王陛下まで参加することがある大規模な催し。男女のカップル(厳密には同性のペアでの参加も可)で参加するダンス・コンペも行われ、優勝者には賞金の金一封と妖精が織り上げたという永遠の美しさを保つ『妖精の羽衣(ローベ・デ・ラ・フェ)』を着てフィナーレ・ダンスを踊る権利が与えられる。『妖精の羽衣』を勝ち取った男女は将来永遠に結ばれるというジンクスがあり、毎年のように恋人達は全力でコンペに挑む。
裏学院
アリシア3世が次元の壁を越えた異空間に作ったといわれる広大な区画。魔術学院の更なる発展を願って作られたものとされるが、アリシア3世の崩御と出入りに必要な『鍵』の喪失でアクセス不能となり、凍結・破棄された幻の校舎となっていた。のちにマキシムが24冊目の「アリシア3世の手記」を発見し、鍵として《開門》させられるようになった。『門』をくぐるとランダムワープで校舎内のどこかに配置される。
その正体は「Aの奥義書」を完成させるための邪悪にして巨大な儀式場。「Aの奥義書」の上位権限で「特異法則結界」という異界の内部を通常の世界法則とは異なるルールで支配する魔術により、内部で徘徊する本の頁でできた人型の「本の怪物」が触れた相手を本へと変えていく。更に「Aの奥義書」の極端な弱点である炎を封じるため、内部は火遊び厳禁(炎魔術による攻撃等)というルールが定められ、それを破ったものは無条件本化の後に裁断の刑にされ、復活できなくなる。
ブラックマーケット街
フェジテ南地区商店街のさらに奥の奥に広がる場所。雰囲気は雑然としていて、休日は多様な階級の老若男女がごった返している。政府の統制を外れた独自の市場経済原理で運営される完全に非合法市場だが、フェジテの労働者階級層の生活に密着している部分もあるので、魔導監察官でも潰すに潰せず、事実上の黙認状態にある。滅多に市場に出回らない貴重な魔術触媒や魔術品、絶版になった本が売られていることもあるため、掘り出し物を探しに来る者も多いが、「騙されるのが悪い」という暗黙の了解が存在するため偽物も横行している。なお、ルチアーノ家の自警団が警備しているため治安は悪くない。
メルガリウスの天空城
フェジテを象徴する空の城。超古代文明の残滓とも神の御座ともいわれ、伝説ではこの世界全ての叡智が眠るとされる。いつから浮かんでいるのかは不明で、5,000年前に描かれた壁画にもそれらしき記録が残っている。この城に執心する魔術師たちをメルガリアンと呼ぶ。
また、この城の謎に迫る者たちの中には失踪したり変死するものが不自然なほどに多い。
ロランによれば「禁忌教典」に至るために魔王ティトゥスが建造した巨大魔術儀式施設であり、後にアリシア3世の研究で《門の神》と交信することが目的であると判明している。
シーホーク
フェジテの南西にある、ヨクシャー地方の玄関口にあたる港町で重要な交易拠点。
サイネリア島
霊脈の関係で一年中温暖な気候の、帝国有数のビーチリゾート。本土とは植生が異なり、広葉樹が生育する。
帝国白金魔導研究所
サイネリア島内に建造された白金術の研究所。その特性上新鮮な生命マナが必要となるため、施設内は『水の神殿』のような形になっている。
帝都オルランド
アルザーノ帝国北部イテリア地方に存在する首都。フェジテ以上に発展した都市であり、観光地や学術機関も多い。人口は50万人ほど。さらに駅馬車による交通網に加え、北部の主要都市間は蒸気機関車の路線で結ばれている。
1853年グラムの月13日、《最後の鍵兵団》の死者の軍団によって壊滅、25万近い市民が犠牲になる。
業魔の塔
帝国宮廷魔導士団の本部としてオルランドの郊外に築かれた、天を衝くような5つの巨大な塔からなる建造物。施設の命名は、過ぎた力は身を滅ぼすと戒めた帝国宮廷魔導師団創設者兼初代団長の意を汲んだもの[41]。塔は1年勤めても迷うほど複雑な階層構造になっている。
刻隔ての間
《業魔の塔》内部に設営された魔導士の修練場の1つ。内部は特殊な異界空間となっていて、異界内で過ごす7日が外界での1日になるよう時間の流れ方が変わっており、肉体的な年齢も1日分しか取らない。内部はとても広く、修練や研究開発に必要な設備・道具も揃っており、短期間で己が力を高めるにはうってつけ。ただし、外界時間感覚で合計1年以上の時間を過ごせば、生じた時間の矛盾に、精神と霊魂が崩壊する危険性がある。
クライトス魔術学院
帝国西部クライトス伯爵領にある私立の魔術学院。設立は40年前の「奉神戦争」まで遡り、クライトス伯爵領の経営難を解消する起死回生の策として、アルザーノ帝国魔術学院で学んだ一流魔術師であった当時のクライトス家三男が、恵まれた特殊霊脈や先々代当主が保有していた大量の魔導書や魔法遺物を活用する形で運営を開始。帝国魔術学院にない独自性を持っていたことで国から助成金が降り、経営が黒字になった後も徐々に規模や業績を伸ばし、今や帝国内で第2位の魔術学院にまで登りつめた。
一方で、クライトス伯爵領を経営する本家と、魔術学院を創始した三男に連なる分家との対立が激しいという問題を抱えている。
聖リリィ魔術女学院
イテリア地方から北西へ進んだ湖水地方リリタニアにある私立の魔術学院。四方を山や森、湖に囲まれているという外界から隔絶された立地、そして男子禁制という制度が、変な虫を嫁入り前の娘につかせず、安心して預けることができる天然の箱庭として、上流階級の子女御用達の全寮制お嬢様学校。校内には帝都につながる鉄道列車の駅も存在する。
貴族や富豪などの上流階級層が援助する潤沢な資金を運用できることから、徐々に規模と業績を伸ばしている。しかし、閉鎖された環境下であること、実家からの圧力を強く受けていることなどから、学生間の派閥争いがあまりに激しく、授業にも影響を及ぼすほどに深刻化している。また、自分達が実家の道具に過ぎず、決められたレールの上を歩いているだけであることに強い不満と閉塞感を感じている者が非常に多い。
蒼天十字団の関係者である学院長マリアンヌが学生を洗脳し、自身の野望のためリィエルの拉致を企てた事件によりこれらの問題が取り沙汰されることとなり、新たな学院長が派遣され、校風の改善に動くことになる。事件後は二大派閥も融和ムードとなり、互いに切磋琢磨するための前向きで積極的な交流が図られるようになった。
白百合会
女学院最大派閥。規律と伝統を重視する、最も歴史の古い派閥。しかし授業中に朝のお茶会を開いたり、授業をサボり家庭教師によるお勉強会を単位として学院に認めさせ、それに従わないものを悪とするなど、秩序を重んじているとは思えない言動の方が多い。
黒百合会
白百合会の次に大きな派閥。自由を尊ぶ革新派の新興派閥。授業中にゲームに興じるなどの、自由を履き違える行為を取る。
スノリア
イリテアの北東、リリタニアの東にある、北方山岳地方とも呼ばれる辺境小地方の1つ。敷地の8割以上が永久雪山と呼ばれるシルヴァスノ山脈と盆地で占められる高山帯。北方に存在する、北海と呼ばれる広大な氷海と、『白の大氷原』と呼ばれる北の最果ての前人未踏領域から、霊脈の関係で押し寄せる極寒の気団を山脈が一身に受け止めているため、年中が雪と氷に覆われた『山岳性氷雪寒冷気候区』に属している。また、霊脈の関係で帝国内ではこの地方でしかオーロラを観測することはできない。
遥か大昔、地方一帯は白銀竜と呼ばれる竜の神様が加護してくれたおかげで、平和で豊かに暮らせていたという伝承があり、これが現在まで白銀竜信仰として根強く残っている。スノリアの守り神だった心優しき白銀竜は、悪しき魔王に敗れ心臓に『悪の鍵』を刺されて暴虐の限りを尽くしたが、本体から分かれた白銀竜の『善き心』の化身と契約した正義の魔法使いによって倒されたと言われている。
ほんの一昔前はとても観光どころじゃない閉鎖的な環境の閉鎖的な辺境の田舎町だったが、最近は鉄道を敷き、地方伝統の『銀竜祭』を中心に雪山景勝地巡りや雪像コンテスト、スキーやスケート場などの各種イベントや設備を整えて、近隣諸国でも話題に上る帝国でも有名な観光地となった。
ホワイトタウン
現在スノリアで最も発展した地方都市。四方を渓谷と山岳、氷湖に囲まれた盆地に存在する街であり、スノリアで唯一、鉄道列車駅が据えられたスノリアの中心地。鋭角的な三角屋根の煉瓦造りの建物が起伏に沿って並ぶ、上下に立体的な街。
銀竜祭
スノリア地方に伝わる伝統行事。スノリアに根強く残る白銀竜信仰に根ざしたものだったが、今では単なる観光事業の一環となっている。秋の時期に盛大に行われる。
祭りの開会式で供物を《竜の祠》に納める儀式は巫女がその身を賭して荒ぶる神竜を鎮めた人身御供の暗喩だと言われ、奉納舞踊『白銀竜と魔法使い』の伝承は『メルガリウスの魔法使い』の原典の1つで第7章のモデルであるともされている。
クリスタルレイク
ホワイトタウンを越えた盆地に位置する広大な湖。秋以降は完全な氷湖と化し、時間をかけて自然成長した限りなく純粋な氷柱が見る者を圧倒する神秘的なオブジェを作り出す。秋の一時期、氷の湖面は鏡面化現象によって銀天の星空を写しだし、この場所でしか見ることができない。この光景は『氷銀河』と呼ばれている。
封印の地
とある古代遺跡を利用して作られた、国民が触れてはいけない、手を出してはいけないあらゆるモノを、まとめて封印・管理しておく闇と混沌のゴミ溜め。国家を揺るがしかねない極秘情報、禁忌の秘術に魔導書、禁断の魔導器、禁呪に手を染めた外道魔術師、魔術犯罪者、人の手に負えない魔獣といった、忌避と禁忌の概念をより集め、煮詰めている。帝国最大の魔境にして魔窟であり、内部は一種の呪いと化して1つの異界を形成し、忌避の概念が自然に受肉して生まれた魔物や魔獣が跋扈しているため、並みの人間が踏み込めばただでは済まない。
王家の血と、国の真なる成り立ちに関する秘密が、王族にすら到達しえない深層領域の一つの真理の間に隠されており、本当に限られた人間だけがそこに迎え入れられる。
竜の背骨
アルザーノ帝国とレザリア王国を隔てる、山脈が連なる高標高地の通称。一帯は土壌が石灰質で、気候と霊脈の関係で緑が少なく、荒れた岩肌と岩山に、背の低いシダ植物が群生している。
マレス
東部カンターレ地方に広がる古代の遺跡都市。人里を遠く離れた“竜の背骨”の山間地域に位置しており、四方を絶壁のような山々に囲まれ、あまりに辺境すぎて人は誰も住まず都市機能も何一つない。“復活の神殿”の通称で呼ばれる台形型の巨大な石造りの神殿を中心に、塔や住居、石造りの建物達が無数に並び、路地は迷路のように複雑に入り組んでいて、地下水脈を利用した区画を区切る用水路だけは今も水の流れをたたえている。通常の古代遺跡とは異なり『霊素皮膜処理』が為されていないため、建物はどれも苔むして風化し、崩れかけている。都市内には土に還らず化石化した住民の白骨遺体が無数に散らばっている。
城塞都市ハノイ
レザリア王国に対する東の守りの要の1つ。周辺を険しい山岳と巨大な城壁に囲まれた、攻めるに堅く守るに容易い重要拠点で、帝国東部カンターレ方面軍第二師団・第三駐屯兵団が守る[69]。霊脈の中心地は、かつての領主の居城で今は観光用の廃城となっているシュトレイヌ城の下にある[70]
レザリア王国
アルザーノ帝国と北セルフォード大陸の覇権を争う国家。北セルフォード大陸の北部、アルザーノ帝国に対して“龍の背骨”を隔てて東側に位置する。
広大な国土を持ち、国土面積では帝国の3〜4倍で、セントヘレス、エノキア、アルフスタ、カラート、ハンベリー、ドラクロス、教会領イエリアルの7領からなり、北方は亜寒帯、南方は温帯の気候区に属する。広大な領土を利用した第一次産業を国家の主幹とする。
国教はエリサレス教カノン派(旧教)で、国民の冠婚葬祭に深く浸透し、強固な信仰基盤を作り上げている。国家の体裁は、王と地方領主の関係が、統治権の保護と主君への忠誠の関係で結ばれた伝統的封建制度を取っているが、宗教戦争で併合した様々な人種を聖エリサレス教によって統一した背景から、実態は旧教を統括する聖エリサレス教会教皇庁が強大な権力を持ち、王家や地方領主の政務を監督・代行する、事実上の中央集権的宗教国家である。
人口でも帝国の3倍に達する大国であるが、信仰を重視するあまり、無茶な鎖国、国交断絶、宗教浄化政策、戦争政策を長年取り続けたことで、国家としては最早完全に行き詰まりつつあるほどに疲弊しており、王家や領主達には権威も統治能力もなく、教会の権威にも限界が見えつつある。元々バラバラな国民から不満が噴出しつつあり、アルザーノ帝国を適度な敵と定めて味方を纏めようとしており、露骨に武力を背景とした外交戦略をとっていることから第二次奉神戦争の勃発が危惧されている。
“唯一概念神”への信仰を強要してきた裏で、軍事戦略的切り札として“外宇宙の邪神”を招来できるカーディス家を「信仰兵器」と称して密かに囲っている。この秘密は徹底的に隠されており、手を出したロランは火刑に処されている。
実はアルザーノ帝国の敵として魔王が作り出した国家であり、王家はアルザーノ帝国王家からの傍系派生である。
聖都フォルネリア
教会領イエリアルの首都。中央には世界最大級の教会堂建築にして、教皇庁の総本山である聖フィリポ大聖堂があり、礼拝議事堂では最高決定機関である枢機卿会の首脳会議などが行われる。
セリア同盟
北セルフォード大陸南東部に存在する自由都市国家連盟。自治権を持つ様々な文化・政治形態の都市国家がひしめき合い、1つの連合国家を形成している。
自由都市ミラーノ
セリア同盟の中で一際大きな力を持つ都市。アルザーノ帝国から南東、レザリア王国から南西に位置する、東西交易の主要中継点として栄えてきた歴史を持ち、帝国と王国を間接的に中継する政治的緩衝地帯であると同時に、旧教と新教が入り混じる宗教的緩衝地帯でもある。200年前の魔導大戦の最終決戦地となったという歴史的な背景から、伝統的に魔術祭典の開催会場となってきた。
文化交流点ということから世界有数の芸術都市になり、都市をあげて芸術家たちを保護・活動を奨励しているので、街並みは華やかに洗練されている。世界有数の遺跡都市としても知られ、数多くの古代遺跡が眠っている。そして、宗教的緩衝地ゆえに聖堂や寺院が非常に多い。
タリーシン
緑の国と呼ばれる自然と共に生きる平和主義国家。ドルイド僧が樫の学舎で学ぶ、大自然を操る緑の魔術が特色だが、本来は戦闘向きではない[65]
ガルツ
工業国家。ガルツ魔導工専では、世界最高峰の魔導工学の粋を尽くした魔導傀儡と絡繰兵器の製作技術が特色で、アルザーノ帝国では研究がお蔵入りになった魔力駆動式外装鎧が実用化されている[66]

組織

帝国宮廷魔導士団
帝国宮廷魔導士団特務分室
アルザーノ帝国国軍省管轄の、帝国宮廷魔導士団の中でも魔術がらみの案件を専門に対処する部署。最大人員は22名で、それぞれに大アルカナにちなんだコードネームが付けられる。室長は代々イグナイト公爵家の者が務めるのが慣例となっている。
完全に実力主義なので、過激な者や頭の壊れた者も時に入室する。様々な魔術絡みの案件を専門に扱う部署なので、“全てが高次元に優れている”スーパーオールラウンダーか、“何か一つが凄まじく尖っている”変化球でないと使い物にならず、“普通に優れている”程度の人材は必要とされない[41]
裏の最強部隊として憧れている士官も多いが、公には出来ないような汚れ仕事や裏仕事ばかりを担当する。その上、回ってくる仕事は全て危険な超難度なので、人員の損耗率が異常に高く欠員も頻繁に出るため、現在は特に空席が目立つ。
帝国宮廷魔導士団第一室
帝国軍の中でも精鋭中の精鋭として知られる表の最強の部隊。直接的な荒事・戦闘行為を行わせれば、右に出る部隊はないとまで言われている。
王室親衛隊(ロイヤルガード)
女王陛下と王室を直接守護する、帝国軍最大の“選ばれた”部隊。第一室と並んで最強部隊の一角とされる。
蒼天十字団(ヘヴンス・クロイツ)
アルザーノ帝国魔導省の特別裏予算枠である、極秘魔術研究機関。「Project:Revive Life」や「Project:Frame of megiddo」などの禁呪法を、女王陛下にすら極秘で今も研究開発し続けている帝国魔術界の最暗部で、一般には都市伝説レベルのものと考えられている。文治派の元、特務分室を擁する国軍省との政治抗争を有利に進めるために存在しており、帝国の一部署でありながら天の智慧研究会とは古くから協力関係にあるとされ、帝国が常に研究会に出し抜かれる一因となっているため、国家の病巣のような部署である。
後に運営者のアンドリュー公爵が逮捕時に死亡したことでイグナイト家に接収される。【英霊再臨の儀】に必要な「パラ・オリジンエーテル」の確保に成功した後で不良債権として切り捨てられ、一斉検挙により壊滅する。
魔導技術開発局
実働・戦闘任務を行う中央十室や特務分室と異なり、帝国宮廷魔道士団の軍用魔術や各種魔術装備の開発を行う後方支援部署の1つ。
帝国軍士官候補学校
将来の帝国軍の中核を担う優秀な魔導士官達を育成する、アルザーノ帝国の公的機関の1つ。過程は通常3年で、様々な訓練や任務に従事する。入学可能年齢は、特別過程は12歳から、一般過程は16歳から20歳まで。将来、軍関係者になることが決まっている魔導武門系貴族の子女は、幼少期から特別過程に入学することが多い。生徒の軍階は「従騎士」だが、卒業後は「正騎士」となる。卒業試験の一環として、帝国各地に駐屯する各種帝国軍師団や部隊に一定期間所属し、一兵卒として現場の軍務に従事する「遠征実習訓練」を行っている[71]
天の智慧研究会
政府と敵対するアルザーノ帝国最古の魔術結社。魔術を極めるためならば何でもするような外道の集まりで、組織に所属する優れた人間こそが世界を導くべきでそれ以外の人間は家畜にすぎないという考えを持つ。
組織の最高指導者であるフェロード=ベリフは【大導師(ヘヴン)】と呼ばれ、創設者にして最古参である彼と【神殿の首領】パウエル=フューネの2人のことを指すと言っても過言ではない[72]第三団《天位》(ヘヴンス・オーダー)第二団《地位》(アデプタス・オーダー)第一団《門》(ポータルス・オーダー)といった位階があり、第二団以上のものを内陣(インナー)と称する。また、外部からの入会希望者を参入志願者(プロベイショナー)と呼ぶ。さらに高速武器錬成術《隠す爪(ハイドゥン・クロウ)》を使う掃除屋(スイーパー)と呼ばれる暗殺部隊を擁しており、この危険な術を習得した弊害で組織の命令を忠実に実行するだけの廃人がほとんどを占めている。下っ端のチンピラ程度の構成員であっても大導師に対する忠義は非常に厚く、その異常なまでの忠誠心は洗脳の域にまで達している。『Project:Revive Life』成功と前後して、ルミアの「確保」を目的とする『現状肯定派』とルミアの「殺害」を目的とする『急進派』の2派閥に別れるようになる。
組織には謎が多く、第三団以上の存在は都市伝説のような扱いを受けている。特務分室の激しい追及にもかかわらずまるで尻尾を掴ませていないことから、帝国中枢部になんらかの強いつながりを持つのではないかと推測されている。
その正体は肉体を失った魔王ティトゥス=クルォーが《継魂法》を使って禁忌教典を再び手に掴むために創った組織で、アルザーノ帝国やレザリア王国の建国にも関与している。
禁忌教典(アカシックレコード)
研究会との抗争の中でたびたび現れる謎の言葉。全知全能の真理であるとされ、ジャティスによれば「世界の全ての理を支配する力」とのこと。
その正体は《原初の魂》であり、魔術師としてこれに触れる行為に幸福を感じない者はおらず、盲目的な従順か自我崩壊を引き起こす。
銀竜教団(S・D・K / シルヴァー・ドラゴンズ・クラン)
スノリア地方の土着地方宗教である白銀竜信仰の最右翼宗教系秘密結社。辺境特有の排他的性格を持つ。本部はシルヴァスノ山脈の山中にある銀竜神殿と呼ばれる古より伝えられる秘奥を実践する者たちの祭壇で、白銀竜将ル=シルバを封じた『永久氷晶』という呪氷を安置している。テロリスト集団ほど悪質ではなく、過激で迷惑なプロ市民団体という扱いで、都市の警邏隊が対処するような組織。幹部構成員のほとんどは年配で、若輩者が神聖な『銀竜祭』を商業利用することが許せず、祭りを中止するよう求める行動を取る。幹部は教団内の権威と地位を護ることばかりに執心し、人々に竜の教えを一方的に押しつけ、お布施を要求するばかりで寒村にパンの1つも配るようなことはしないため嫌われているが、最近では若者の中にも思想に同調する者がいる。
「天の智慧研究会」の支援を受け数千年来の野望を実現させようとしていたが、結局は研究会に使い潰され、白銀竜将ル=シルバの復活の儀式で教団員全員の命を搾り取られ壊滅する。
第十三聖伐実行隊(ラスト・クルセイダース)
聖エリサレス教会教皇庁聖堂騎士団が誇る、最強の処刑部隊。教会に仇為す異端者、悪魔、不死者を、片端から刈り尽くすという絶殺機関。隊員がたった2人でありながら、何百、何千騎からなる他の部隊を押しのけて最強最悪の切り札(ラスト・カード)と噂され、人を超えた圧倒的な武は、帝国宮廷魔導師団特務分室をも上回るという。“13”は神の子を裏切り処刑に追いやった第十三使徒ユーダの数字であることから、エリサレス教では究極の忌み数とされ、ゆえに邪悪な“13”を冠する部隊は公式には存在しないことになっている。実は聖堂騎士団に名を連ねながら、教皇の認可で司祭枢機卿が動かす独自の実行部隊という、全く性質の異なる部隊である。
聖キャロル修道院
非公式な武装修道院。異能者狩りを密かに行っている。
レオスに化けたジャティスがシスティーナへの脅しとして口に出した。

魔術

魔術
『原初の魂』が最初に発したという、「原初の音(オリジン・メロディ)」に近いとされる暗示特化専用言語であるルーン言語を用いて深層心理を変革することで世界法則に介入する技術。肉体と精神を扱う「白魔術」、運動とエネルギーを扱う「黒魔術」、元素と物質を扱う「錬金術」、使い魔などを呼び出し使役する「召喚魔術」がある。また、生命そのものを扱う白魔術と錬金術の複合術を「白金術」という。
魔術師には下から順に第一階梯(ウンデ)、第二階梯(デュオデ)、第三階梯(トレデ)、第四階梯(クアットルデ)、第五階梯(クインデ)、第六階梯(セーデ)、第七階梯(セプテンデ)の7段階の位階が存在し、第三階梯が学院卒業資格程度、第四階梯が平均的な魔術師が至る最高階位であり、第五階梯は天才、第六階梯は超天才、第七階梯は人外と評される。職業軍人としての魔術師は「魔導士」と呼ばれる。なお、遺跡調査などで人員を募集する場合第三階梯以上の者には賃金が発生するという規定がある。
文字通り汎用性の高い「汎用魔術」と、「魂の在り方(魔術特性)」を術式に組み込む個々の魔術師によるオンリーワンな「固有魔術(オリジナル)」の2つに分類される。固有魔術の方を重要視する風潮があるが、汎用魔術は幾多の優秀な研究者によって改良・洗練・最適化され続けた高品質な完成品であり、それを一人だけで何らかの形で乗り越えなければならないため時間と金の浪費になる可能性の方が高い。汎用魔術は本来3節ほどの呪文を詠唱することで発動できる。呪文の区切り方を変えることでその効果まで変化させることができ、それにはある一定の法則が存在している。腕のいい魔術師は略式の詠唱が可能だが、もともと3節詠唱で最も効率が良くなるように改良され続けた結果が教本通りの呪文であり、どのような形であれ呪文改変を行えば魔力変換の効率は低下してしまう。
魔術師は、呼吸や生命活動で外界マナを肉体へ内界マナとして蓄積し、内界マナを魔力操作によって魔力へと昇華させて魔術を行使する。肉体という器に対するマナの蓄積限界量を魔力容量(キャパシティ)、マナから練った魔力の濃度や質を魔力濃度(デンシティ)といい、魔力容量が大きいほど多くの魔術を使用でき、魔力濃度が高いほど呪文の威力が高くなる。一流魔術師の水準は、魔力容量が約3000で魔力濃度が約150、10代半ばの学生であれば、魔力容量が1300〜1400で魔力濃度が50〜60が平均。魔力容量には顕在魔力の他に、自分の意思では操作できないが容量上限としてはある潜在魔力が存在し、それが伸び代として顕在化することで一気に魔力容量が増大する例はある。一般的には、男性は内界マナを魔力に昇華させる魔力濃度に優れ、女性は外界マナを内界に取り込む魔力容量に優れているとされる。「魔術という蒸気機関を動かす質の良い燃料をどれだけ持っているか」とも例えられ、あくまで力の指標の1つであって実力に直結するわけではなく、超一流の魔術技巧の持ち主でも数値が平凡な者は何人もいる。
その恩恵は一般人に還元されないために、産業革命前ごろと同程度まで科学技術も進歩しており、蒸気機関などもすでに開発され普及し始めている。ただし、貴族が教養の1つとして学んでいることも多く、上流階級や比較的裕福な有産者も魔術という存在そのものには慣れている。
なお、古代人たちが行使していた謎の力は近代人にとっての「理解できない力」で、理論的な説明が不可能であるため、「近代魔術(モダン)」に対して「魔法」あるいは「古代魔術(エインシャント)」と称されている。
原初の魂
この世界であらゆる存在に先んじて発生した最初の「一」。魂の輪廻転生経路たる「摂理の輪」の回起点にして、人の全ての記憶が回帰する集合無意識第八世界(八次元世界)《意識の海》の最深中心点たる生命体の根源である。
また、アリシア3世の研究によれば、世界は多次元分枝宇宙で、「原初の魂」から発生した「次元樹」に生える枝の1本に過ぎない「分枝世界」であるという。なお、次元樹は無数の異世界を内包する七次元世界にあたり、人間が知覚できる三次元世界との間には、時間の頸木を超えた四次元世界、“可能性”を特異点として分岐した並行世界五次元世界、異なる進化を遂げた異世界である六次元世界がある。
次元樹の特異点理論
歴史は滅多なことでは変化せず、多少の枝葉の分枝は歴史が本来の流れへ容易に呑み込んでしまう。だが、後の歴史が大きく変動する分岐点(ターニングポイント)は存在し、とある行為や事件によって次元樹が大きく枝分かれし、ifの世界=並行世界線が生じるきっかけになる点を特異点と言う(例:魔王と正義の魔法使いの最終決戦)。特異点上においては、その先に分枝する未来は確定しておらず、どちらも等しく「存在しないし、存在する」という状態になり、その理論のことを特異点理論という。
魔術特性(パーソナリティー)
「一」から発生した全ての魂に生まれながらに与えられた「在り方」であり、魔術に多大な影響を与えるとされるもの。どんな概念から発生したのかを示す「α概念」とどんな方向性を持つのかを示す「ω属性」とを利用して、【「α概念」の「ω属性1」・「ω属性2」】という書式で表される(グレンであれば【変化の停滞・停止】、セリカであれば【万理の破壊・再生】)。
マナ
肉体に内包する魔力の源となるもの。その本質は生命力であるため、ごく短期間で魔術を使用しすぎると「マナ欠乏症」というショック症状を引き起こす。
マナは人の霊体に存在する10の霊域(セフィラ)に決まった経路で循環させることにより、魔力へと昇華されていく。この手順をひたすら繰り返し、マナを感じ、循環させ、より強い魔力を練り上げ、霊的感覚を少しずつ鍛えていく修行法を、魔力錬成という。
マナ・バイオリズム
人間の生体マナの状態を表す指標の概念。通常の状態を「ニュートラル状態」といい、精神集中や呼吸法によりマナが制御された「ロウ状態」にすることで魔術を行使できるようになる。魔術を行使するとマナが乱れた「カオス状態」に傾き、完全にこの状態になるとどんな魔術師でも魔術を使えなくなる。
枯渇症
「マナ欠乏症」になる寸前の魔力消費を長期間恒常的に繰り返すことで、魔力が溜まる霊的な器たるエーテル体に穴が空いたようにマナが抜けやすくなる体質になってしまうという魔術性疾患。滅多に発症しないが、発症すると何の前触れもなく身体からマナが急速に抜けて命に関わる重篤な疾患で、霊的な穴を心霊手術で塞ぎつつ大量の魔力を補充するという高度な大儀式を迅速に行わなければならない。
黒魔術
運動エネルギーを扱う魔術。取り扱う物理現象によって、「活性/流動系」「加速/加重系」「時間/空間系」「振動/波動系」「集束/拡散系」の5系統に分かれている。
基本三属
攻性呪文の基本となる、炎熱・冷気・電撃のこと。黒魔術の「活性/流動系」はこれを操作する分野である。この三属性は魔力を物理作用力(マテリアル・フォース)に変換する際の効率がほかの属性より高く、「ツァイザーの三属比」では10の魔力に対して炎熱:冷気:電撃=約8.5:7.9:8.2という理論的な極大値が得られる。
風の魔術
重力など様々なパラメータを操作する必要があるため攻性呪文としては基本三属に比べて威力的に劣る系統。一方でパラメータが多いということは呪文改変において無限大ともいえるバリエーションがあるという利点にもなるため、柔軟かつ自由度の高い魔術の行使が可能。
疾風脚(シュトロム)
黒魔【ラピッド・ストリーム】の連続起動による超高速三次元機動術の帝国軍における呼称。自分で発生させた爆風に自分も乗って吹っ飛ぶという技で、燃費は最悪、小回りが利かない、屋内では使用不可、制御を誤れば壁や地面に接触して即死する、など数多くの欠点を抱えるが、建物などの足場がある開けた場所では通常の身体能力強化を遥かに上回る性能を発揮できる。一人で使うだけでも超難度であるが、風の魔術の天才であったセラは味方の高速運搬までこなしていた。
軍用魔術
軍属魔導士が使用する戦争用の魔術。殺傷力が極めて高いため学生に習得させることは許されていない。天変地異クラスの威力を誇る戦術・戦略レベルの複数名で行う儀式による大魔術をA級とし、威力規格が下がるごとにB級、C級と名称が変わる。一般にB級の起動ができるかC級の一節詠唱ができるならば超一流とされる。
また、法医呪文や魔術薬精製術も「戦場で傷ついた兵士をいかに早く戦いに復帰させるか」という概念から始まった、軍用魔術の一種である。
連続呪文(ラピッド・ファイア)
呪文の連続起動。
時間差起動(ディレイ・ブート)
詠唱済み(スペル・ストック)の魔術を任意のタイミングで起動させる高等技法。
二反響唱(ダブル・キャスト)
一度の呪文詠唱で二度同じ魔術を起動する高等技法。セリカはこれをも上回る「三重唱(トリプル・スペル)」という絶技を、一言の呪文改変によって使用できる。
条件起動式
対象に初期設定した条件が達成された時に自動で術を起動する、古くから呪い(カース)や制約(ギアス)に使われる術式。自動で起動し相手にバレにくいという利点はあるが起動タイミングが相手の行動に依存するという欠点がある。
結界魔術
数多くの手順を踏んで構築・行使される儀式魔術の一つ。並みの黒魔術を凌駕するほどの防御性能と効果範囲を発揮できるが、その性質から近接魔術戦には不向き。ただしフラウル家が開発した「宝玉式結界」は精度・威力を落とさず近接戦闘でも使用可能。
人工精霊(タルパ
人工的に神や悪魔、精霊を生み出す禁呪に近い錬金術の奥義。「等価対応の原則」を逆手に取り、魔薬でトランス状態に陥ることで深層意識に暗示認識させ、疑似霊素粒子(パラ・エテリオン)をスクリーンに空想存在を現実世界に具現化させるという荒業。呪文詠唱による深層意識改変の産物ではないため、【愚者の世界】では封じることができない。
法医呪文(ヒーラー・スペル)
負傷や魔術性疾患を治療するための魔術。近代では基本的に「対象の自己治癒能力を増幅させて、傷を癒す」という方式が主流だが、人体に異常な生命活動を促進させるもので、被施術者の身体には多大なる負担がかかってしまい、欠損や骨折など、ただ闇雲に法医呪文をかけるだけでは後遺症が残ってしまうケースも多い。施術の際に、適切な前処理や、外科的処置、治療補助薬の選択や調合に長けた専門家である「法医師」がいれば、治癒効率は格段に増し、身体の負担は極限まで軽減される。
元々が軍用魔術の一種なので、様々な法的関係上、世の中の「施療院」には出回らず、一般の人が治療を受ける場合は個別に大金で雇った魔術師に頼る必要がある。数少ない例外はヘステイア家のように研究を進める過程で施術対象の患者を必要とする法医術研究の大家だけだが、それでも患者にいちいち守秘義務を守らせるための各種書類手続きや一般医の紹介文が必要で、それなりに高額の治療費がかかるなどハードルが高い。
治癒限界
ごく短期間内に法医呪文による過剰回復を繰り返すことが原因で、生体組織活動に深刻な障害を与えることによって起きる障害。とある施術回数から効果が極端に低下しさらには肉体の自壊に至る状態のことで、戦場では「癒し手の手を掴む死神」と恐れられている。
制約(ギアス)
被施術者に行動の制約を課す白魔術。非常に強い強制力があり、逆らうのは並大抵のことでは不可能で、基本的に呪った術者本人にしか解けない[73]
眷属秘呪(シークレット)
固有魔術の一種。血中マナ特性(=魔力特性)を術式に組み込む魔術で、一代限りの固有魔術とは違い、その血族が先祖代々受け継ぎ発展させることが可能。
魔闘術(ブラック・アーツ)
拳や脚に魔術を乗せ、インパクトの瞬間、相手の体内で直接その魔力を爆発させるという異色の近接戦闘術。魔力操作のセンスがなければ使えず遠距離火力という魔術の利点を捨てることになるが、使いこなせればその威力は絶大。
召喚術
使い魔や概念存在などを召喚する魔術。
遠隔連続召喚(リモート・シリアル・サモン)
遠隔地に複数の使い魔を呼び出す召喚魔術の超高等技法。
概念存在
神や悪魔など、『意識の帳』の向こう側に存在する偉大なもののこと。魔術的には人間の想像から生まれたと考えられており、この世界に最初から存在していたのではないとしている。召喚術により、この世界に受肉させて具現化、降臨させることで、その絶大な力を振るうことも可能だが、専用に人生を費やして訓練を積んだ数十、数百人規模の魔術師と、数日間の準備が必要な儀式魔術である。受肉の維持には莫大な魔力が必要で、基本的に人間1人では発動できない。単独で召喚する方法として、我が身に概念存在を降ろす憑依召喚(ポゼッション)があるが、矮小なる個が世界を背負うような行為であるため、【適合者(アダプター)】と呼ばれる一種の概念存在の媒体となる特殊な魔術特性を持つものでなければまず実現不可能。
悪魔
人の共通深層意識下で広く認知・共有された強大な概念存在の中でも、疫病・自然災害・負の感情といった人の様々な忌避禁忌恐怖が宗教や信仰と結びついて擬人化し概念を得たもの。人の『意識の帳』の向こう側にある『ここではない、どこでもない場所(ネバー・ランド)』『魔界』に住む。造形には多種多様な所説や解釈がある。人間の手では倒せない強大な存在として定義され、現世の理に依る物理的な攻撃や魔術はほぼ通じないという律法が存在するが、より上位の概念には逆らえないという律法もまた存在する。そのため、悪魔召喚術者は悪魔祓い対策として真名を隠すのが基本。強力な悪魔を召喚・維持するためには多くの人間の魂を生贄として捧げる必要があるが、感応する【適合者】の魂を使うことで生贄の数を減らすことができる。
《葬姫》アリシャール
六魔王の1柱にして第八圏の支配者。真紅の双眸、血のように赤黒く染まる長髪、頭の脇から生える2本の禍々しい角、黒き片翼が特徴。旧約神譚録にて語られる人と天使と悪魔たちの最終戦争「炎の七日間」において、紅と蒼の双魔槍を振るい、たった1騎で万の天使軍団を葬ったという、破壊と闘争を司る修羅の大悪魔。
《狂騒伯爵》ナルキス
三十六悪魔将の一翼にして、六魔王の1柱《黒剣の魔王》メイヴィスの黒剣死騎士団を率いる軍団長とされる上級悪魔。主君の命のもと、終末の戦場を首なし馬の戦車で駆けては狂騒のラッパを吹き、この世全てを屍山血河の戦闘地獄に塗り替える、戦いの狂奔を司る悪魔。肩幅も上背も人間の2、3倍、筋骨隆々で肌は漆黒、頭に捩じくれた角と背中に古竜のような翼を生やす。
《梃子》ハゲーネ
三十六悪魔将の1柱。青い炎の鼻息を吹き上げる拗じくれた牛のような怪物。
天使
世界中の人間の祈り信仰から生まれた概念。エリサレス聖書で語られる真名持ち(ネームド)の大天使達は、第一位:熾天使(セラフィス)第二位:主天使(キュリオテース)第三位:権天使(プリンシパル)の天上三階位に分かれる。原初の音により近い「天使言語(エンジェリッシュ)」を使い、人間の使える魔術より根本的に強力な「天使言語魔法(エンジェリック・オラクル)」を行使する。
《時の天使》ラ=ティリカ
第1位:熾天使の位階にある、純白の3対6翼と純銀の髪を持つ女性の天使。時計の文字盤を模した光輪を背に、自身を象徴する巨大な黄金の鍵と、それに繋がる黄金の鎖を身に纏う薄絹の衣の上に巻き付けている。
本来は異教である星辰信仰の最高神格である「天空の双生児」を、エリサレス教に取り込んだことで生まれたとも言われる。
《空の天使》レ=ファリア
第1位:熾天使の位階にあり、ラ=ティリカの姉妹天使。「空の巫女」「夜天の乙女」の名で呼ばれ、《銀の鍵》によって空間を操り、支配する能力を持つ。
《断罪の天使》アトス
第二位:主天使の位階にある、全身に光り輝く鎧を纏い、炎に燃える大鎌を構えた、3対6翼の天使。魔女や悪魔、堕天使等といった、神に背を向けた存在を滅ぼす権能を持つ。一方で、神話学によれば堕天使に近いとされている。
《戦天使》イシェル
エリサレス聖書の旧約神譚録にて語られる、人と天使と悪魔の最終戦争「炎の七日間」において、六魔王の《黒剣の魔王》メイヴェスや《葬姫》アリシャールらと戦った、最強の天使。
本来は“外宇宙の邪神”の1柱であり、《無垢なる闇》の敵対者であることから、《無垢なる闇》を退ける力と喚び寄せる力を持つ[74]
聖エリサレス教会では一度死んだ人間の魂を《戦天使》へ転生させる外法すれすれの法術儀式【天使転生】を有している。ネームドの天使であるがゆえに当代で1人のみしか選ばれず、転生の成功確率も極端に低いが、成功すれば一騎当万の最強戦士が降臨する。当代の《戦天使》はルナ=フレアーで、過去には《六英雄》の1人として200年前に戦ったイシェル=クロイスがいた。
マルアハ
術者の魂を映して顕現する魔術的従者。言わば自分自身の心の側面(ペルソナ)であるがゆえに、ダメージは本体にフィードバックするが、召喚のリスクやコストはほぼ0という利点がある。元々、ある種の悟りを得た賢者が、長い修行の果てに開眼するような術なので、若くして使える者は非常に稀。
数秘術
既存情報を組み合わせた結果、予想される未来を観測するという魔術学問。魔術学院の必須科目にもなっているが、その精度の低さから学会での定説は「数を使った占い」程度で、近代魔術師のほとんどは重要視していない。
詠唱割込(スペル・インターセプト)
敵が詠唱した呪文で、自分がその魔術を逆起動し、その術の全制御を掌握するという、超が3つくらい付く高等魔術技法。放出型魔術に介入できるぶん、相手の口の動きで使用される呪文を先んじて看破する必要があって難易度が高いが、決まれば威力は絶大。
術式介入(スペル・インタベンション)
場に展開された駐在型魔術の術式に介入し、その制御権を奪い取る高等な魔術技巧。詠唱割込に比べると難易度は低いが、魔術式への膨大な理解と知識、術式防御(プロテクト)を破る大量の魔力が必要。
エーテル乖離症
肉体ではなく霊魂に罹患する病で、“肉体と霊魂の結合が緩み、霊魂が肉体から乖離していく”という、長年、無理な魔術を行使し続け、魂に負担をかけ続けてきた魔術師が晩年にかかる魔術性疾患。進行すると肉体と霊魂にずれが生じて、ヒビの入った水差しのように身体から凄まじい勢いでマナが抜けていき、他の魔術的疾患も誘発する。治療法がなかった時代には“魔術師の寿命”とまで恐れられてきたが、今では治療法が確立し、心霊手術で充分治療可能となっている。
霊域図版(セフィラ・マップ)
エーテル構造を魔術的解析して作るデータのこと。『魂の形』は異相次元・虚数量で10の霊域(セフィラ)を形成しており、これをエーテル構造という。霊魂を弄る心霊手術系の白魔術儀式には必須。
弱体化(デバフ)
敵を弱体化させる魔術。直接触れて付呪(エンチャント)する“呪い(カース)”が基本で、類感魔術感染魔術などの遠隔付与は様々な手順と道具を要する。その効率の悪さから、実戦的には自己強化や攻性呪文で攻撃するのが魔術戦の常識。グレンの【愚者の世界】は広域の弱体化が可能な珍しい魔術。
魔法
魔術よりもっと旧い力。魔術が人の純粋な願いを叶えるだけだった頃の「原初の力」。魔術とは違い願いと本能で操るもの。
王者の法(アルス・マグナ
ルミアが持つ能力のひとつで、本来は《天空の双生児》が持つ能力。一時的に人間の限界を超えた桁外れの魔術演算処理能力を他人に与えることができ、それに合わせて霊絡(パス)が強引に開かれることで魔力が増幅される。近代魔術では理解の及ばない現象であるため、ただ“魔力が増幅された”としか知覚できず、傍目には類似する異能の「感応増幅」と誤認される。本来は「魔法」と呼ばれる真の力を人に与え扱えるようにするための能力。その性質上、際限なく強化する万能の力ではないので、魔術演算能力が達人に到達しているなら無意味なものとなる。
異能者
ごくまれに魔術に依らない奇跡の力を生まれながらに体現する特殊能力者の総称。アリシア三世が行った差別と弾圧の影響で帝国では悪魔の生まれ変わりとして迫害されるが、土着宗教などでは信仰の対象となることもある。「感応増幅」「生体発電能力」「発火能力」「冷凍能力」「再生能力」「耐熱能力」「耐冷能力」「耐電能力」などが存在する。基本的に魔術と組み合わせることはできないが、「感応増幅者」のように特殊な例外もある。
Project:Revive Life(プロジェクト リヴァイヴ ライフ)
通称Re=L(リィエル)計画。「ジーン・コード」をもとに肉体を練成、「アルター・エーテル」を代替霊魂として精神情報を「アストラル・コード」に変換することで疑似的な死者の蘇生を行う術式。しかし、ルーン言語では関数と式が構築できないという機能限界に加え、「アルター・エーテル」の作成に複数の他人の霊魂が必要となるという倫理的な問題から、帝国では禁忌として研究を凍結された。元々は魔王の再降臨に備え、戦力となる英雄クラスの魂を保存しておくためにアリシア三世が研究させていた禁断の魔術である。
バークスはこの計画を成功させるためにルミアに術式を組み込み、強制的に彼女の「王者の法」を行使させる(その間ルミアは、全身に魔力が駆け巡る激痛で苦しんだ)ことで劣化版の「僭主の法(パラ・アルスマグナ)」を抽出。これを利用することで、非常に高精度で成功させる手法が開発されているが、1ヶ月以内に肉体と魂と精神が拒絶反応を起こし、ばらばらに分離して死んでしまう。霊的拒絶反応を起こさない真の完成例であるリィエルには、「アルター・エーテル」として原初人類の霊魂を高精度で再現した「パラ・オリジンエーテル」が用いられており、【英霊再臨の儀】を行うにはこれが必要。
英霊再臨の儀
「Project:Revive Life」の最終形。かつて名を馳せていた英霊たちを蘇生し放題になるという魔術。詳細は不明だが、英霊の精神データで被験者の「アストラル・コード」に上書きする工程を用いる模様。
Project:Frame of Megiddo(プロジェクト フレイム オブ メギド)
正式名称で錬金【連鎖分裂核熱式(アトミック・フレア)】、通称メギドの火】と呼ばれる禁呪。原子崩壊の際に生じる質量欠損が膨大な破壊エネルギーを生み出し、全てを滅ぼすという禁断の錬金術。その威力は街一つを一瞬で焦土へ変えるほどとされ、A級攻性呪文を超えたS級、災厄の術式と例えられる。その発動には潤沢なマナが流れる霊脈を有する霊地において、土地の霊点に直接接続し霊脈に流れる外界マナを臨界点まで励起活性化し、術式「マナ活性供給式(ブーストサプライヤー)」によって臨界励起マナを「核熱点火式(イグニッション・プラグ)」へと送るという工程が必要となる。
魔王の再降臨した時に備えて、フェジテごと《嘆きの塔》を吹き飛ばすためにアリシア三世が研究させていた。未完成のまま研究が凍結されたとされていたが、フェジテではアリシア3世が作った「マナ堰堤式(ダム)」の解呪を行うことで発動するという設定になって密かに設置されていたため、天の智慧研究会によって悪用されることとなる。
本来は《炎の船》に搭載された主砲のことを指し、現代に存在しているのは霊地を選ばなければ発動できないという戦略兵器としての欠陥を抱えた近代魔術による劣化レプリカでしかない。
天使の塵(エンジェル・ダスト)
錬金術の悪夢ともいわれる最悪の魔薬。被投与者の思考と感情を完全に掌握し筋力の自己制限機能を外すことで、死霊術よりはるかに簡単に無敵の兵士を生み出すことが可能な薬だが、投与されれば確実に廃人となり、定期的な投与を行わなかった場合や末期状態では中毒症状により全身が崩壊して死に至るという重篤な副作用がある。その製法は非常に複雑で、ジャティスの記憶だけが頼りであるため彼以外は製造することすらできない。
魔獣
霊脈の関係で異常進化を遂げた動植物。
合成魔獣(キメラ
白金術によって複数の動植物を掛け合わせて産み出す生命体。兵器利用のための研究開発は禁止・凍結されている。
シャドウ・ウルフ
鋭い牙に爪、らんらんと光る目、影のように黒い毛並みを持つ型の魔獣。恐怖心の有無によって対象を襲撃するかを決める「恐怖察知」という能力を持ち、高い敏捷性を誇る。
魔導書喰らい(グリモア・イーター)
見た目は、ごく小さいスカラベのような無害な虫。貴重な魔導書に取り憑き、虫食いにして駄目にしてしまうという魔導書を餌にする能力を持つ。
ドラゴン
人知を越えた強大な力を持ち万物の頂点に立つ最強の魔獣。ただの成竜でも飛行能力と火炎放射能力を有するため非常に強力。加えて歳経た「古き竜(エインシェント・ドラゴン)」は大自然へ直接語り変える「竜言語魔術(ドラグイッシュ)」を操り、生息地一帯の自然現象と天変地異をも支配することが出来、この特性から自然界の王者として恐れられている。古代竜は人を超える知性を得るとされ、人間に化身することもあると伝えられる。しかしその身体構造上、逆鱗が唯一の弱点になる。
なお、その鱗は、真銀や日緋色金にも並ぶとされる優れた素材となる。
神鳳(フレズベルク
白鳥にも似た長い翼と首、煌びやかな飾り羽を持つ美しく巨大な鳥の魔獣。翼で風を操る能力を有する。
アルザーノ帝国空軍では戦闘騎鳥用に育成調教され、支配魔術で操られている。事実上世界最高の最大戦速を誇る神鳳騎兵は、全世界でも空の王者の名をほしいままにしており、空戦用の騎鳥から、兵士運搬用、物資輸送用など、飼い慣らした魔鳥を様々な用途で運用している。帝国軍でも希少で貴重な存在なので、その背に乗って飛ぶ機会はほとんどない。
リトルラックキャリー
3つの尻尾が生えたキツネの魔獣。テレパシーのような能力を持つレアな魔獣で、主と認識した者の元へ、その主が必要としているものを集める習性がある。
不死者
死を超越した存在のこと。浄銀弾が弱点。
リッチ
禁断の魔術の果てに不死者と化身し、強大な魔力を得た外道魔術師。他者から精気を吸って身体を維持し、偽りの永遠を生きる。精気を吸った人間をリッチ・ミニオンという忠実な下僕の生ける屍に変えることもできる。ただ、自分がリッチに生まれ変わった場所に縛られて遠くへは離れられないという制約があり、討伐体を送り込まれても逃げられないという弱点を持つため、精気を集める場合はミニオンを差し向けることが多い。
食屍鬼(グール
吸血鬼の“出来損ない”とされる下級も下級の不死者。知性は皆無で、不死の肉体を維持するには吸血では足りず、人の肉まで喰らうが、身体が朽ちる速度に再生が追いつかず、どこまでも醜く腐り果てていく哀れな存在。
吸血鬼(ヴァンパイア
不死者の中でも高貴とされる存在。“人を捕食する”という本能を持ち、生まれながらに人に仇為す、決して人と相容れない、誇り高き怪物であり、人間の限界を圧倒的に超えた身体能力、不死性、再生能力、吸血行為による眷属化、影を操り武器や魔獣の群れとする力、毒の力、変身能力、支配や魅了の魔眼、絶大なる闇の魔力、元素支配、といった警戒すべき規格外の能力を複数持っている。ただ、浄化や陽の光、炎を苦手としており、真祖になれば日光や浄化力にはかなり抵抗できるが、元素支配を超えるほど強力な炎は防げない。アルザーノ帝国の帝国法では、いかなる理由があろうと即刻処分しなければならないと定められている。
超魔法文明
聖暦前に存在していたとされる「古代魔術(エインシャント)」を使う古代人たちが築いた文明。その遺物には古代魔術による物理的・魔術的な破壊を無効化する「霊素皮膜処理(エテリオ・コーティング)」が施されており、数千年の時を経ても「遺跡」という形で現代まで残っている。
古代超魔法文明の古代魔術や魔法遺産に関する調査・研究は「魔導考古学」と呼ばれ、魔術の発展と真理の探究を志す魔術師達にとって欠かせない永遠のテーマの1つである。古代遺跡に潜るために必要な、地図作製、照明の確保、周囲の索敵、罠や仕掛けの探知、碑文の解読、戦闘といった探索における魔術師のあらゆる魔術技能・知識を全部ひっくるめた総合技術は「魔導探索術」という。
屋内には空間操作魔術を駆使した文様が刻まれていることもあり、内部の空間が歪められ見た目より広くなっている場合がある。罠や仕掛け、配備された守護者や魔獣、周辺環境から総合的に判断された「探索危険度」という等級があり、S・A・B・C・D・E・Fを細分化した21段階で評価される。例として、最高位のS++は第七階梯の魔術師でも単独踏破は不可能、B++はよく準備された調査団でもたまに死者が出るが最下位のFは学生実習にも使われないような雑魚というようなレベル。
原始の時代に次元樹を旅して別世界からやって来たティトゥス=クルォーによって魔術がもたらされ、科学の発展が遅れてちぐはぐになったところはあるが、魔術の力で発展を続け、生活水準が信じられないほど向上した。しかし、発狂したティトゥスが世界を支配すると、民の命を実験体や生贄として消費し続けたことで支配構造が変化、真なる魔術(=上位ルーンによる古代魔術)を行使できるごく一部の特権階級の“魔術師”達が、そうでない「愚者の牙」(下位ルーンによる紛い物の魔術)しか行使できない“愚者の民”を家畜か奴隷のように扱い支配する暗黒時代が到来した。聖暦前4000年当時の魔術師と愚者の民の人口比は1対999で、“愚者の民”に人権はなく、殺人が日常茶飯事という地獄のような治安の悪さで、魔王が“禁忌教典”を手にするために行っていた【聖杯の儀式】の影響で空は血で塗りつぶしたように赤く染まっていた。ただ、魔術師達は絶大な魔力に任せて遠距離から一方的に蹂躙することしか知らず、戦闘経験が乏しいので魔術の行使さえ封じてしまえば非常に弱い。
地下迷宮/ 《嘆きの塔》
アルザーノ帝国魔術学院地下にある探索危険度S++の「塔」のような構造の古代遺跡。賢王ティトゥスが建造したとされる超魔法文明における最大の遺跡で、古代文献では《嘆きの塔》と呼ばれており、四角錐状巨大構造物が地殻変動で地中深くに沈んだものだとされている。
帝国最高難度を誇る迷宮で、地下9階までの「覚醒への旅程」は学生実習にも使える程度の難易度だが、地下10階以降の難易度は桁違いで、49階までは「愚者の試練」と称され、内部の構造が定期的に変化しているためにテレポーターや地図が意味をなさず、ゼロマナ地帯とダンジョン再生成機能、当時最高峰の防衛機能が猛威を振るう。なお、9階まででも歴史考察において最上級重要参考度を誇る特級資料が大量に見つかっているが、《魔王遺物》の危険性を危惧したロランの進言により有益な発掘物はなかったと報告されている。地下50階から89階までの「門番の詰め所」は塔のような構造で、凶悪な罠も複雑な構造もないため「愚者の試練」部分より難易度が低いほどだが、地下89階には「メルガリウスの魔法使い」の登場人物である《魔煌刃将》アール=カーンの影が門番として《叡智の門》の守護に当たっている。地下90階の「地の民の都」はメルガリウスの天空城へ至るための最終防衛ラインで、重力法則から外れ天地が逆しまになった都のような構造物が広がっている。
タウムの天文神殿
アルザーノ帝国領内にある探索危険度F級の古代遺跡[注 9]。双子の天使が絡み合うような意匠の「天空の双生児(タウム)」が御神体とされる。有益な魔法遺産の出土もなく、霊脈も平凡、魔術的・歴史資料的に見ても価値の低く、街道を外れた辺鄙な場所にあるために観光名所にもならないという不遇の遺跡。レドルフ=フィーベルが生前に執筆した論文の推論が正しければ古代の時空間転移儀式場であるとされるが、現在に至るまでその証拠は確認できていなかった。
システィーナとルミアの思いつきによって、最深部にある大天象儀場にある操作モノリスで特殊な操作を行うことで地下迷宮地下89階に繋がる「星の回廊」が出現するということが偶然判明した。
ナイアールの祭祀場
ミラーノの地下にある古代遺跡。古代文明において外宇宙の邪神《無垢なる闇》の眷属である《邪神兵》招来が行われていた儀式場の一つ。広々としたドーム状の空間で、床や天井には天球図のような紋様が雄大に刻まれ、中心にはピラミッドのような四角錐形の祭壇と、その周囲に材質不明な黒いモノリスが並ぶ。決められた特定のルートを通らないとたどり着けないようになっており、道を間違えると迷路を永遠に彷徨うことになる。
真銀(ミスリル
世界最高峰の魔法金属の1つ。魔力遮断物質であり、この金属で作られた剣は物理的エネルギーを無効化する力場でさえも斬り裂くことが可能。ただし、その硬度ゆえに加工が難しい。
日緋色金オリハルコン
絶対的な硬度を誇る、世界最高峰の魔法金属の1つ。
神鉄(アダマンタイト
古代の超魔法文明で生み出された究極の魔法金属。闇の如き黒の光沢を持つ不滅の金属で、水銀のような流動性と竜の鱗以上の硬度という矛盾を内包する。真銀や日緋色金ですらこれを生み出すための過程で生じた副産物でしかないとされているが、どこの遺跡からも発見されたことはない幻の金属として古代ロマンの中で語られるだけのものだというのが常識である。
《炎の船》
《鉄騎剛将》アセロ=イエロが操る魔導兵器のひとつ。空飛ぶ真紅の箱舟とされ、主砲に戦略兵器である【メギドの火】を搭載、側面からも小規模な【メギドの火】による熱線攻撃が可能で、船内には空戦用の飛行型ゴーレムが無数に配備され、加えて空間歪曲が生じているため船内への侵入は困難。さらに船内の構造はアセロ=イエロの思うままに変化させられる。本来は魔術を使えない普通の人間の国々を制圧するための兵器なので対地戦力は主砲がほぼ全てであり、ゴーレムの質はそれほど高い物ではない。
作中ではアセロ=イエロのマナを利用して、同位相異次元空間に存在する船を同次元空間に物質化するという形でフェジテ上空に顕現した。アセロ=イエロ出現から2日かけて完全起動し街へと攻撃を開始したが、魔術学院の総力と特務分室の協力で時間を稼がれている間にマナの供給源であるアセロ=イエロが倒されたことで物質化を保てなくなり、船外に出ていたゴーレムと共に元の次元へと送還された。
《黒の火車》
《鉄騎剛将》アセロ=イエロが所持する魔導兵器のひとつ。絶大な魔力が漲る巨大な魔術の戦車で、車体には刃や槍など様々な武装が取り付けられ、車輪からは禍々しい蒼い炎が燃え上がっている。車輪を引く4頭の黒馬も主人と同じく神鉄でできているため、物理・魔術を問わず攻撃を無効化する。一国の軍を全て踏み潰したことがあるとされ、圧倒的な質量であらゆるものを粉砕、踏破し、超一流の魔術師程度なら魔術ごと轢殺できる。空高く飛び上がるなど、通常の戦車ではありえない動作も可能。
《風の外套》
かつてフィーベル家に秘宝として伝わっていた魔法遺物。白を基調とした古めかしい作りのマント。フィーベル家が遥か古より練り上げてきた秘奥と神秘の集大成であり、契約者の想像力を現実にするのに足りない物を補い、知りたい風の魔術に関する知識を教えてくれる。発動中はマントの表面に輝く光の古代ルーン文字の羅列がびっしりと浮かぶ。
Aの奥義書
アリシア3世の狂気の人格が作ろうとした、禁忌教典に限りなく近づくとされる本。参考文献として、人間を本化させ、「Aの奥義書」に取り込むことで完成する。アリシア3世の狂気の人格が宿っているため意志を持っており、彼女の姿になって対話出来る。
自らの断片を本の怪物とし、それに触れた者は本化され結界が解かれない限りは元の姿には戻れない。直接的な戦闘力は無いものの、「裏学院」のあらゆる本を操り、自身は物理的・魔術的攻撃に無敵になるよう設定されている代わりに代償で炎には極端に弱いが、「裏学院」での新たなルールを作り、敵の行動を抑制することが出来る。
かつて狂気に陥ったアリシア3世が「Aの奥義書」を完成させるために生徒達を犠牲にしようとした直前、正気の彼女がギリギリでそれを阻止し、正気の人格をベースに「アリシア3世の手記」を執筆した後、「Aの奥義書」を「裏学院」の最奥に押し込めて「裏学院」そのものを封印、完全に表学院から隔絶されることになったが、フェジテ最悪の3日間の時に表の学院が今までにない程に破壊されたことで生じた僅かな隙間を通じてマクシムに自身の断片を24冊目の「アリシア3世の手記」と偽り干渉、彼を利用して「裏学院」を開放した。その後「裏学院」に入った2年次生B組と「模範クラス」メンバーを襲いその面々を次々と本化、自分がいる最奥にたどり着いたグレン達を、大量の本の怪物で攻めつつ自身への攻撃は本を操って防ぎながら本をぶつけて攻撃するという物量戦で優位に立ち、更に「本をインクで汚した者を裁断の刑にする」という「裏学院」の新たなルールを作ることでグレン達の唯一の対抗手段を潰そうとしたが、イヴの捨て身の炎魔術で全ての本が焼失、激昂してイヴを裁断の刑に処したものの守りが完全に無くなったところをグレンによるインク弾を受け、完全に本としての体裁を失った。
アリシア3世の手記
アリシア3世が記したとされる手記。そのうち24冊目の手記は失われており、帝国大図書館が莫大な懸賞金をかけていたほどの稀覯本である。手記とは名ばかりでかなりの力を持った魔導書。その中には暗号で「メルガリウスの天空城」や禁忌教典に関する記述が残されている。
実際のメイベルというアリシア3世の人格と記憶を複製した一種の魔導書で、有事の際に少女時代の姿をとって事態を収拾できるよう定義(プログラム)されており、学院附属図書館の封印書庫の奥でひそかに保管されていたが、狂気の人格にも検閲されて行動原理が書き換えられ、「Aの奥義書」の行動を邪魔する行動を制限されるようになっていた。そこでマキシムの生徒「メイベル=クロイツェル」に成りすますことで行動を監視、「裏学院」に保管されていた失伝魔術による特殊な魔術インクで自身の記述を修復し、グレンたちに「Aの奥義書」の破棄を依頼する。事件解決後は「Aの奥義書」を回収したことでアリシア3世として『恩赦』の権能を行使、裁断の刑に処された者たちを蘇生させた。以降はグレンが手元に置いて解読を試み、古代語や古代文明に関する符号が暗号に組み込まれているため作業は遅々として進んでいなかったが、フォーゼルの指摘でエルトリア家に代々伝わる暗号が使われていることが判明する。
アリシア三世の夫ルーシャスの思念体による干渉を受けており、解読に成功したグレンが手記の罠によって精神世界に閉じこめた。その際に「メイベル」が自動検閲を受けながらも脱出のための方法を伝え、切り札となる火打ち石式拳銃《クイーンキラー》を託す。
魔術祭典
かつて、北セルフォード大陸の諸国間で定期的に行われていた、世界的な魔術競技大会。参加各国から、1名のメイン・ウィザードと9名のサブ・ウィザードの魔術師10名で構成された代表選手団を出場させ、いくつかの魔術的試練に挑むことで競い合う。国が保有する魔導技術は軍事や国防に関わる重要機密に等しいものだが、それゆえに恒久なる平穏と安寧を願う“平和の祭典”となる。
サブ・ウィザードは何人脱落してもOKだが、メイン・ウィザードだけは参加必須で、メイン・ウィザードが脱落した瞬間、自動的にチームは敗北になる。試合内容とルールは試合ごとにランダムで決められるため、対策はほぼ不可能で、過去行われた試合方式から傾向を予測するのが精々。
軍や研究所などに属するプロの魔術師は能力秘匿のため出場できず、手の内が割れても問題ない学生やアマチュアにのみ参加資格を与えるという協定があるため、代表選手は公的に運営する魔術教育機関に所属する青少年の魔術師に限定されている。
アルザーノ帝国とレザリア王国が冷戦状態になってから何十年も開催されていなかったが、両国の関係改善のため、首脳会談に合わせて開催されることになった。
無垢なる闇の印
魔王遺物のひとつで、外宇宙から邪神の眷属《邪神兵》を招来する巫女達の身体に刻まれていたという印。Zの字を一筆書きで何度も重ねたような紋様。
古代の文献によると、魔王に仕えた神官家の一族は“正義の魔法使い”によって滅ぼされたとされているが、ロランはレザリア王国に生き残りがいると推測していた。その生き残りこそがカーディス家で、聖エリサレスの「信仰兵器」として囲われている。

その他

メルガリウスの魔法使い
ロラン=エルトリアの最高傑作とされる童話。メルガリウスの天空城を舞台に正義の魔法使いが魔王をやっつけてお姫様を救うという内容の物語。
帝国各地に残った“魔法使い”や“魔王”が登場する伝説や神話、民間伝承が1つの物語群を形成していることに注目し、それらを集め、その特に共通する類似項、正義の魔法使いと魔王の戦いの逸話を主軸に、著者が独自の解釈の元、編纂した古代神話集大成。第7章はスノリア地方に伝わる『銀竜祭』が元になっているとされる。
原典では悲惨な結末の物語も多く、特に正義の魔法使いは魔王を倒したにも関わらず、姫を救うことはできず、使命を果たした後、愛する人も、友も、全てを失い、失意のうちに歴史の表舞台から姿を消し、一人孤独な死を迎えたという、あまりにも報われない悲劇的な結末を記した文献が散見される。だが、童話に編纂するときにそのほとんどがハッピーエンドへと変えられている。
著者の業績の集大成ともいうべきものであり、聖暦前古代史を紐解く参考文献ともなる名著。しかし聖エリサレス教会では禁書指定されており、著者も異端者として火刑に処された。
魔将星
「メルガリウスの魔法使い」に登場する魔王直属の配下。個々が一騎当千の絶大な戦力を誇ると言われている。大導師は適性のある魔術師に“鍵”を与えて魔人に生まれ変わらせている。
エリサレス教会
作中に登場する宗教。「主は一であり全、全であり一」という教義の元で全知全能の神を信仰する。
元々1つだったが2つの宗派に分裂している。一方はアルザーノ帝国で信仰される新教を「帝国正教会」といい、福音主義のバルディア派で、神と聖書さえ敬えばそれで良いというスタンスで、戒律も緩く他宗派との共存もできる。もう一方はレザリア王国で信仰される旧教を「聖エリサレス教会」といい、儀礼・礼拝に重きを置くカノン派で、神と聖書に絶対服従すべきだというスタンスで、他宗派であれば殺してでも排除に動こうとする。聖エリサレス教は帝国正教を異端認定している。
魔導大戦
200年前に外宇宙から侵略してきた邪神の眷属たちと人類の間で発生した戦い。通常であれば人類がなすすべもなく滅ぼされていたとされるが、『六英雄』と称される人間の規格を大きく外れて強い切り札が一つの時代に6人も揃ったという奇跡的な因果により人類は存続することができた。
六英雄
魔導大戦で活躍した人類側の英雄。《灰燼の魔女》セリカ=アルフォネア、《剣の姫》エリエーテ=ヘイヴン、《聖賢》ロイド=ホルスタイン、《戦天使》イシェル=クロイス、《銀狼》サラス=シルヴァース、《鋼の聖騎士》ラザール=アスティールの6名。邪神との激戦でセリカ以外は全員戦いの中で死んでいったとされるが、ラザールが生存し天の智慧研究会に参加していることが判明している。
奉神戦争
40年ほど前、アルザーノ帝国とレザリア王国との間で勃発し、和睦という形で終結した戦争。
帝国側では経済に混乱が生じ領地経営難により没落する貴族家が続出し、国の中央集権政策で宮廷貴族や代官となる者が増加することとなった。
“本物の神”
魔術理論的に、神、天使、悪魔は人類が生み出した概念存在であるというのが通説。だが、れっきとした一個たる実体を持った超越的な怪物もまた“神”と呼ばれ、これらは人類が滅んでも宇宙の中に永遠に在り続けると考えられる。フォーゼルは、「天空の双生児」や200年前の魔導大戦で外宇宙から侵略した邪神がその一種だと推測している。
天空の双生児(タウム)
古代文明の主要宗教であった星辰信仰における、最高神格の神性。双子の姉妹神。《王者の法》という“自身の力を他者に与える力”や、時間と空間を支配する権能を持つ。
一説には聖エリサレス教の第1位:熾天使である、《時の天使》ラ=ティリカと《空の天使》レ=ファリアの姉妹天使は、「天空の双生児」を布教の際に取り込んだものだが、異教の神格の方が人気があった証拠として隠匿されているという。
彼女たちは、“本物の神”の一種で、人類の黎明期に外宇宙から来訪し、古代に超魔法文明の礎を築き、この世界で最初に“王”となった「賢王ティトゥス=クルォー」を加護して、人外の力を貸し、“王”がこの世界を管理するために多くの眷属を作って与えた。
外宇宙
次元樹の外側のこと。荒ぶる紅蓮の獅子《炎王クトガ》、誇り高き輝く者《金色の雷帝》、風統べる女王《風神イターカ》、虚無に嗤う道化《無垢なる闇》、正体不明の謎の神性《神を斬獲せし者》、双子の姉妹神《天空の双生児(タウム)》といった“外宇宙の邪神”と呼べる怪物達が、永遠に近い時を覇権を争い続けている。

既刊一覧

小説

  • 羊太郎(著) 『ロクでなし魔術講師と禁忌教典』 KADOKAWA富士見ファンタジア文庫〉、既刊19巻(2021年6月18日現在)
    1. 2014年7月19日発売[75] ISBN 978-4-04-070231-5
    2. 2014年11月20日発売[75]ISBN 978-4-04-070232-2
    3. 2015年3月20日発売[75]ISBN 978-4-04-070515-6
    4. 2015年7月18日発売[75]ISBN 978-4-04-070516-3
    5. 2015年11月20日発売[75]ISBN 978-4-04-070517-0
    6. 2016年6月18日発売[75]ISBN 978-4-04-070974-1
    7. 2016年10月20日発売[75]ISBN 978-4-04-070975-8
    8. 2017年3月18日発売[75]ISBN 978-4-04-070976-5
    9. 2017年8月19日発売[75]ISBN 978-4-04-072377-8
    10. 2017年11月17日発売[75]ISBN 978-4-04-072419-5
    11. 2018年3月20日発売[75]ISBN 978-4-04-072420-1
    12. 2018年7月20日発売[75]ISBN 978-4-04-072722-6
    13. 2018年11月20日発売[75]ISBN 978-4-04-072723-3
    14. 2019年3月20日発売[75]ISBN 978-4-04-072724-0
    15. 2019年8月20日発売[75]ISBN 978-4-04-073272-5
    16. 2020年1月18日発売[75]ISBN 978-4-04-073273-2
    17. 2020年7月17日発売[75]ISBN 978-4-04-073736-2
    18. 2020年12月19日発売[75]ISBN 978-4-04-073737-9
    19. 2021年6月18日発売[75]ISBN 978-4-04-074147-5

短編集

漫画

月刊少年エース』2015年5月号より[1]2021年8月号まで連載[2]

画集

テレビアニメ

2017年4月より6月まで放送された[18]。エピソードは原作第1巻から第5巻まで。表現の都合上、黒板の文字が作中言語ではなく日本語になっているほか、ほとんどの固有名詞もルビではなく漢字を直読みしたものになっている。

スタッフ

主題歌

Blow out[77]
鈴木このみによるオープニングテーマ。作詞・作曲はヒゲドライバー、編曲はゆよゆっぺ
「Precious You☆」
システィーナ(藤田茜)、ルミア(宮本侑芽)、リィエル(小澤亜李)によるエンディングテーマ。作詞はhotaru、作曲は杉下トキヤ、編曲はRINZO。

各話リスト

話数サブタイトル[78]脚本絵コンテ演出作画監督総作画監督
Lecture Iやる気のないロクでなし 待田堂子和ト湊高藤聡
  • 藤澤俊幸
  • なまためやすひろ
木村智
Lecture IIほんのわずかなやる気 池田臨太郎吉岡忍
  • 中野良一
  • 今中俊輔
  • 小梶慎也
飯野まこと
Lecture III愚者と死神 戸田力良森川育郎
  • 大峰輝之
  • 内田信吾
  • 原修一
  • 山田潮美
木村智
Lecture IV魔術競技祭 佐藤裕櫻井親良
  • 石橋大輔
  • 山本晃宏
  • なまためやすひろ
  • 東美帆
飯野まこと
Lecture V女王と王女 樋口達人有冨興二
  • 池田志乃
  • 朝井聖子
  • 上野卓志
木村智
Lecture VI邪悪なる存在 高橋成世玉田博
  • 藤澤俊幸
  • 山村俊了
  • 原修一
  • 今中俊輔
  • 大峰輝之
  • 中野良一
  • 小梶慎也
  • 池田志乃
  • 阿部達也
  • 大原大
飯野まこと
Lecture VII星降る海 佐藤裕高本宣弘高藤聡
  • 川尻健太郎
  • 佐野陽子
  • 池田志乃
  • 東美帆
  • 植竹康彦
  • 小澤円
  • 阿部達也
木村智
Lecture VIII愚者と星 池田臨太郎吉田千尋石郷岡範和
  • 森悦史
  • 池田志乃
  • 阿部達也
  • なまためやすひろ
  • 古谷梨絵
  • 中野良一
  • 小梶慎也
  • 高井里沙
飯野まこと
Lecture IX生きる意味 待田堂子内田信吾
  • 原修一
  • 藤澤俊幸
  • 山村俊了
  • 山田潮美
  • 今中俊輔
  • 池田志乃
  • 阿部達也
  • 渡部裕子
  • 佐野陽子
  • 小澤円
  • なまためやすひろ
木村智
Lecture X逆玉!? 有冨興二
  • 和田佳純
  • 畠山佳苗
  • 山本晃宏
  • 石橋大輔
  • 池田志乃
  • 木村智
  • 飯野まこと
Lecture XI決戦!魔導兵団戦 樋口達人高本宣弘宮澤良太
  • 中野良一
  • 小梶慎也
  • 今中俊輔
  • 渡部裕子
  • 山本晃宏
  • 池田志乃
  • 阿部達也
  • 佐野陽子
  • 石橋大輔
  • なまためやすひろ
  • 高瀬さやか
  • 西真由子
飯野まこと
Lecture XII見つけた居場所 待田堂子櫻井親良
  • 大峰輝之
  • 櫻井親良
  • 内田信吾
  • 有冨興二
  • 池田志乃
  • なまためやすひろ
  • 藤澤俊幸
  • 原修一
  • 佐野陽子
  • 今中俊輔
  • 川尻健太郎
  • 山村俊了
  • 山本晃宏
  • 石橋大輔
  • 高瀬さやか
  • 森悦史
木村智

放送局

日本国内 テレビ / 放送期間および放送時間[79]
放送期間 放送時間 放送局 対象地域 [80] 備考
2017年4月4日 - 6月20日 火曜 20:30 - 21:00 AT-X 日本全域 製作委員会参加 / CS放送 / リピート放送あり
2017年4月5日 - 6月21日 水曜 0:30 - 1:00(火曜深夜) TOKYO MX 東京都
水曜 1:35 - 2:05(火曜深夜) テレビ愛知 愛知県
水曜 2:30 - 3:00(火曜深夜) 毎日放送 近畿広域圏 アニメ特区』第1部
2017年4月6日 - 6月22日 木曜 0:30 - 1:00(水曜深夜) BS11 日本全域 BS放送 / 『ANIME+』枠
日本国内 インターネット / 配信期間および配信時間[79]
配信開始日 配信時間 配信サイト
2017年4月5日 水曜 12:00 更新 dアニメストア
2017年4月9日 日曜 0:00 更新 ニコニコチャンネル
日曜 0:00 - 0:30 ニコニコ生放送
2017年4月11日 火曜 23:30 - 水曜 0:00 AbemaTV 新作TVアニメチャンネル
2017年4月12日 水曜 0:00(火曜深夜) 更新
水曜 10:00 更新 DMM.com
水曜 12:00 更新

BD / DVD

発売日[81] 収録話 規格品番
BD DVD
1 2017年6月28日 第1話 - 第2話 ZMXZ-11141 ZMBZ-11151
2 2017年7月26日 第3話 - 第4話 ZMXZ-11142 ZMBZ-11152
3 2017年8月23日 第5話 - 第6話 ZMXZ-11143 ZMBZ-11153
4 2017年9月27日 第7話 - 第8話 ZMXZ-11144 ZMBZ-11154
5 2017年10月25日 第9話 - 第10話 ZMXZ-11145 ZMBZ-11155
6 2017年11月29日 第11話 - 第12話 ZMXZ-11146 ZMBZ-11156

Webラジオ

システィ&ルミアの禁忌通信』は、2017年4月4日から6月27日まで音泉にて毎週火曜日に配信された番組[82]。パーソナリティはシスティーナ=フィーベル役の藤田茜とルミア=ティンジェル役の宮本侑芽

ゲーム

ファンタジア・リビルド
2020年12月17日より配信されているPC / iOS / Android用アプリゲーム。
ファンタジア文庫作品のクロスオーバーRPGであり、リリース時より本作のキャラクターが登場する。

脚注

注釈

  1. ^ 作中世界に存在する落葉広葉樹。若枝に限り樹液に糖分が含まれている。
  2. ^ 正式に契約が結ばれたのは現代に帰還する直前だが、この世界の因果とは切り離された外宇宙の神との契約は因果の前後関係は問題ではなく、世界線軸上に存在する自分の存在そのものに対して有効なので、未来から来た時点でもある程度は権能を使用できていた。
  3. ^ 加工が難しい真銀に掛けて「ミスリルのように扱いづらい」という意味。
  4. ^ 女王への反逆であることは理解しており、全てが終わったら責任をとって自害するつもりだった。
  5. ^ 赤いものを遠ざける、炎熱系魔術の使用を控えるなど。
  6. ^ アニメ放送時は正体不明のため「大導師」表記。
  7. ^ 一般的な一節詠唱は「貫け閃槍」など。
  8. ^ アインシュタインの「特殊相対性理論」を知っていたことから、元いた世界は我々が暮らす地球と同一のものであることが示唆されている。
  9. ^ ただし長期間放置されていたせいで無数の狂霊が沸いており、危険度が一段階上昇するだろうとされる

出典

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外部リンク