コンテンツにスキップ

英文维基 | 中文维基 | 日文维基 | 草榴社区

「内閣」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
削除された内容 追加された内容
編集の要約なし
タグ: 差し戻し済み
Cewbot (会話 | 投稿記録)
m 解消済み仮リンク閣僚内閣を内部リンクに置き換えます (今回のBot作業のうち35.7%が完了しました)
 
(39人の利用者による、間の70版が非表示)
1行目: 1行目:
'''内閣'''(ないかく)は、[[イギリス]]や[[日本]]などの[[議院内閣制]]の[[国家]]において、国の[[行政|行政権]]を担当する[[合議制|合議体]]の[[機関 (法)|執行機関]]である<ref name="yamakawa">『政治・経済用語集』(山川出版社)</ref>。なお、「内閣」は '''Cabinet''' の訳にあてられるが、行政権を担わない場合には大統領顧問団と訳される場合もある<ref name="cabinet">『[https://kotobank.jp/ejword/cabinet cabinet]』 - [[コトバンク]]</ref>。
'''内閣'''(ないかく、{{lang-en-short|Cabinet}})は、主に[[議院内閣制]]や[[半大統領制]]などの[[国家]]において、[[行政]]を担当する[[合議制|合議体]]の[[行政機関|執行機関]]である<ref name="yamakawa">『政治・経済用語集』(山川出版社)</ref>。[[力]]を担わない場合には、'''大統領顧問団'''(だいとうりょうこもんだん)などと訳される場合もある<ref name="cabinet">『[https://kotobank.jp/ejword/cabinet cabinet]』 - [[コトバンク]]</ref>。


== 概要 ==
== 概要 ==
内閣は議院内閣制を[[国家]]において行政権を担う合議体の執行機関である<ref name="yamakawa" />。[[英語]]の Cabinet は、[[小部屋]]で[[会合]]を開き[[協議]]したところから、「小部屋」を意味する Cabinet に由来する<ref name="内閣" >{{コトバンク|内閣}}</ref>。「内閣」という[[漢語]]は、 Cabinet に相当する言葉として、[[中国]]の[[明]][[清]]の時代、[[皇帝 (中国)|皇帝]]の諮問にあずかった[[内閣大学士]]制度から引用され、[[1877年]](明治10年)頃に日本で定着した<ref name="内閣" />。なお、 Cabinet の訳語として「内閣」以外に、例えば、行政権が[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]に専属する[[アメリカ合衆国]]の場合行政権を担っていない Cabinet は、「[[アメリカ合衆国内閣|大統領顧問団]]」と訳さる場合もある<ref name="cabinet" />。
主に[[議院内閣制]]採用する国家において、[[政権|行政権]]を担う合議体の機関のことを指す<ref name="yamakawa" />。[[英語]]の''Cabinet''という単語は、[[小部屋]]で[[会合]]を開き[[協議]]していたところから由来する<ref name="内閣" >{{コトバンク|内閣}}</ref>。「内閣」という[[漢語]]は、[[中華人民共和国|中国]]の[[明]][[清]]の時代、[[皇帝 (中国)|皇帝]]の[[諮問]]にあずかった[[内閣大学士]]制度から引用され、[[1877年]]([[明治]]10年)頃に日本で定着した<ref name="内閣" />。なお、行政権が[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]に専属する[[アメリカ合衆国]]などにおいて、権を担っていない''Cabinet''その訳語として、「大統領顧問団」と呼ばれる<ref name="cabinet" />。


内閣制度はイギリスの Cabinet がその元祖であるが、最初は[[国王]]に対して助言するだけの諮問機関に過ぎなかった。時代や国によって様々な位置づけがみられる。
内閣制度は元々[[イギリス]]がその元祖であるが、最初は[[国王]]に対して助言するだけの[[諮問機関]]に過ぎなかった。時代や国によって様々な位置づけがみられる。内閣制度は、'''合議制の原則'''、'''分担管理の原則'''、'''首相指導の原則'''を基本原則とする{{Sfn|西尾勝|2001|p=104}}

内閣制度は'''合議制の原則'''、'''分担管理の原則'''、'''首相指導の原則'''を基本原則とする{{Sfn|西尾勝|2001|p=104}}。


== 類型 ==
== 類型 ==
内閣立法府([[議会]])との関係という観点から、2つに類型化できる。
内閣は[[立法府]]([[議会]])との関係という観点から、大きく5つに類型化できる<ref name="introduction118">{{Cite book|和書|author1=砂原庸介|author2=稗田健志|author3=多湖淳|title=政治学の第一歩 |publisher=有斐閣|year=2015|page=118}}</ref>

; [[超然内閣制]]
; [[超然内閣制]]
: 内閣の存立に関して議会の信任を法的要件としないタイプ。例えば[[イタリア王国]]や[[プロイセン王国]]では国王のみに、[[大日本帝国]]では[[天皇]]のみに対して責任を負っていた。
: 内閣の存立に関して議会の信任を法的要件としないタイプ。例えば[[イタリア王国]]や[[プロイセン王国]]では[[国王]]のみに、[[大日本帝国]]では[[天皇]]のみに対して責任を負っていた<ref>{{Cite web|和書|author=笹口裕二|url=https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20140115165.pdf|title=議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―|publisher=参議院|accessdate=2021-07-11}}</ref>
: 閣僚の選出は民主的な手段によらない。例えば戦前の日本において、[[内閣総理大臣]]の人選は[[元老]]や[[重臣会議|重臣]]のような憲法外の機関・人物が行い、天皇が任命していた。
: [[国務大臣|閣僚]]の選出は民主的な手段によらない。例えば戦前の日本において、[[内閣総理大臣]]の人選は[[元老]]や[[重臣会議|重臣]]のような憲法外の機関・人物が行い、天皇が任命していた<ref>{{Cite web|和書|author=笹口裕二|url=https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20140115165.pdf|title=議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―|publisher=参議院|accessdate=2021-07-11}}</ref>。ただし、議会が可決した[[予算]]の枠内で[[政府]]を運営しなければならないことには変わりないため、間接的に議会のコントロール下に置かれる<ref>{{Cite web|和書|author=笹口裕二|url=https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20140115165.pdf|title=議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―|publisher=参議院|accessdate=2021-07-11}}</ref>
: 議会の協力が得られなかった場合は政権が立ち行かなくなったり、歪な政権運営を強いられたりするため、この制度のもとでも[[政党内閣制|政党内閣]]は成立しうる([[大正デモクラシー]]期の日本の[[憲政の常道]]など)。しかし、法的に担保されたものではないので超然内閣制下の政党内閣と議院内閣制とは違う概念である<ref>{{Cite web|和書|author=笹口裕二|url=https://www.sangiin.go.jp/japanese/annai/chousa/rippou_chousa/backnumber/2014pdf/20140115165.pdf|title=議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―|publisher=参議院|accessdate=2021-07-11}}</ref>
: ただし議会が可決した[[予算]]の枠内で政府を運営しなければならないことには変わりないため、間接的に議会のコントロール下に置かれる。
:議会の協力が得られなかった場合は政権が立ち行かなくなったり、歪な政権運営を強いられたりするため、この制度のもとでも[[政党内閣]]は成立しうる([[大正デモクラシー]]期の日本の[[憲政の常道]]など)、法的に担保されたものではないので超然内閣制下の政党内閣と議院内閣制とは違う概念である。
; [[議院内閣制]]
; [[議院内閣制]]
: 内閣が議会に対して責任を負い、議会の信任を内閣存立の条件とするタイプ。現在の日本やイギリスなど、多くの国で採用されている。日本の内閣はイギリスの内閣を模して作られた。議院内閣制の本質をめぐって内閣の対議会責任本質的要素とみ責任本質説内閣議会解散権をその要素に含める均衡本質説の対立があ
: 内閣が議会に対して責任を負い、議会の信任を内閣存立の条件とするタイプ。議院内閣制は議会に[[議席]]保持す[[政党]]を基礎に内閣を組織するこから[[政党内閣制]]とも呼ばれ、議会の信任に基づいて[[政]]運営す<ref>
{{Cite book|和書|author=橋本五郎 |author2=飯田政之 |author3=加藤秀治郎 |title=Q&A日本政治ハンドブック : 政治ニュースがよくわかる! |date=2006 |publisher=一藝社 |page=72 |isbn=4901253794 |ref=harv}}</ref>。政党内閣制は議会の多数党を基盤に成立するもので、閣僚のほとんどは多数党の所属議員によって構成される<ref name="gendai">{{Cite book|和書|title=現代社会用語集 |publisher=山川出版社|year=1995|page=139}}</ref>。ただし、単一政党では議会で安定多数を維持できない場合などには複数の政党が政策協定を締結して[[連立政権|連立内閣]]を組織することがある<ref name="gendai" />。
: 現在の[[日本]]や[[イギリス]]など、多くの国で採用されている。日本の内閣は[[ウェストミンスター・システム|イギリスの内閣]]を模して作られた。議院内閣制の本質をめぐっては内閣の対議会責任を本質的要素とみる責任本質説と、内閣の[[解散 (議会)|議会解散権]]をその要素に含める均衡本質説の対立がある。
; 自律内閣制
: 議会多数派から[[首相]]が選出されるが、任期期間中は解任できないタイプ。[[議会統治制]]とも呼ばれ、スイスで採用されている<ref name="introduction118" />。議会において各地域各言語圏を代表する政党から内閣の構成員を選出し、全体で等しく政策決定に責任を負う政治制度になっている<ref name="introduction118" />。
; [[首相公選制]]
: 有権者が直接的に首相を選出するが、議会多数派により解任されうる制度<ref name="introduction118" />。
; [[大統領制]]
: 有権者が直接的に大統領を選出するタイプで、大統領の任期は固定任期である<ref name="introduction118" />。大統領制の下での内閣の役割は国により大きな違いがあり、ドイツやイタリアのように大統領が形式的・象徴的存在にすぎず議会多数派から首相が選出される議院内閣制に近い形態の国と、韓国やアルゼンチンのように首相の選出や解任が大統領によって行われ大統領のスタッフとして機能している国がある<ref name="introduction118-119" />。行政権が[[アメリカ合衆国大統領|大統領]]に専属する[[アメリカ合衆国]]の場合、 Cabinet は「大統領顧問団」と訳されることがある<ref name="cabinet" />。


== 各国の内閣 ==
== 各国の内閣 ==
以下に各国の内閣または内閣に相当する組織を挙げる。国・地域によって仕組みや名称もそれぞれ異なっている各国の内閣については各項目参照
以下に各国の内閣または内閣に相当する組織を挙げる。国・地域によって仕組みや名称もそれぞれ異なっている各国の内閣については各項目参照。
* {{JPN}}:[[内閣 (日本)|内閣]]
* {{JPN}}:[[内閣 (日本)|内閣]]
* {{KOR}} : [[国務会議]] ([[韓国語|韓]] : 國務會議、국무회의) <ref>韓国は大統領制と議院内閣制を同時に施行する特異な国である</ref>
* {{ROK}}[[国務会議]]({{lang-ko-short|國務會議}}{{lang|ko|국무회의}})
* {{GBR}}:[[内閣 (イギリス)|内閣]]([[英語|英]]:{{lang|en|Cabinet}})
* {{DPRK}}:[[朝鮮民主主義人民共和国内閣|内閣]]({{lang-ko-short|내각}})
* {{AUS}}:[[内閣 (オートラリア)|内閣]]([[英語|英]]:{{lang|en|Cabinet}})
* {{GBR}}:[[内閣 (イギリス)|内閣]]({{lang-en-short|Cabinet}})
* {{CAN}}:[[内閣 (カナダ)|内閣]][[英語|英]]:{{lang|en|Cabinet}})
* {{AUS}}:{{仮リンク|内閣 (オーストラリア)|en|Cabinet of Australia|label=内閣}}({{lang-en-short|Cabinet}})
* {{DOM}}:[[内閣 (ドミニ共和国)|内閣]][[スペイン語|西]]:{{lang|es|Gabinete}})
* {{CAN}}:{{仮リンク|内閣 (カナダ)|en|Cabinet of Canada|label=内閣}}({{lang-en-short|Cabinet}}、{{lang-fr-short|Cabinet}})
* {{IDN}}:[[内閣 (インネシア)|内閣]][[インドネシア語|尼]]:{{lang|id|Kabinet}})
* {{DOM}}:{{仮リンク|内閣 (ドミニカ共和国)|en|Cabinet of the Dominican Republic|label=内閣}}({{lang-es-short|Gabinete}})
* {{UKR}}:[[内閣 (ウクラ)|内閣]][[ウクライナ語|烏]]:{{lang|uk|Кабінет}})
* {{IDN}}:{{仮リンク|内閣 (インドネシア)|en|Cabinet of Indonesia|label=内閣}}({{lang-id-short|Kabinet}})
* {{THA}}:[[内閣 (イ)|内閣]]([[タイ語|泰]]:{{lang|th|คณะรัฐมนตรีไทย}})
* {{UKR}}:[[政府 (ウクラ)|閣僚内閣]]({{lang-uk-short|Кабінет Міністрів}})
* {{DEU}}:[[連邦政府 ()|連邦政府]]([[ドイツ語|独]]:{{lang|de|Bundesregierung}})
* {{THA}}:[[内閣 (イ)|閣僚評議会]]({{lang-th-short|คณะรัฐมนตรีไทย}})
* {{NED}}:[[内閣 (オランダ)|内閣]]([[オランダ語|蘭]]:{{lang|nl|Kabinet}})
* {{DEU}}:[[連邦政府 (ドイツ)|連邦政府]]({{lang-de-short|Bundesregierung}})
* {{NED}}:{{仮リンク|内閣 (オランダ)|en|Cabinet of the Netherlands|label=内閣}}({{lang-nl-short|Kabinet}})
* {{ITA}}:{{仮リンク|内閣 (イタリア)|label=閣僚評議会|it|Consiglio dei Ministri}} ({{lang-it-short|Consiglio dei Ministri}})
* {{ITA}}:{{仮リンク|内閣 (イタリア)|label=閣僚評議会|it|Consiglio dei Ministri}} ({{lang-it-short|Consiglio dei Ministri}})
* {{SWE}}:[[政府 (スウェーデン)|政府]]([[スウェーデン語|瑞]]:{{lang|sv|Regeringen}})
* {{SWE}}:[[政府 (スウェーデン)|政府]]({{lang-sv-short|Regeringen}})
* {{CHN}} :[[中華人民共和国国務院|国務院]]([[中国語|中]]:{{lang|simp-zh|国务院}}、[[英語|英]]:{{lang|en|State Council}})
* {{PRC}}:[[中華人民共和国国務院|国務院]]({{lang-zh-short|国务院}}、{{lang-en-short|State Council}})
** {{HKG}}:[[行政会議 (香港)|行政会議]]([[中国語|中]]{{lang|trad-zh|行政會議}}、[[英語|英]]:{{lang|en|Executive Council}})
** {{HKG}}:[[行政会議 (香港)|行政会議]]([[中国語|中]]: {{lang|zh-HK|行政會議}}、{{lang-en-short|Executive Council}})
* {{TWN}} ([[中華民国]]):[[行政院]]([[中国語|中]]{{lang|trad-zh|行政院}}、[[英語|英]]:{{lang|en|Executive Yuan}})
* {{ROC}}[[行政院]]([[中国語|中]]: {{lang|zh-TW|行政院}}、{{lang-en-short|Executive Yuan}})
* {{USA}}:[[アメリカ合衆国内閣|内閣]]([[英語|英]]:{{lang|en|Cabinet}})
* {{USA}}:[[アメリカ合衆国内閣|内閣]]({{lang-en-short|Cabinet}})<ref name="introduction118-119">{{Cite book|和書|author1=砂原庸介|author2=稗田健志|author3=多湖淳|title=政治学の第一歩 |publisher=有斐閣|year=2015|pages=118-119}}</ref>、別名大統領顧問団({{lang-en-short|Cabinet Advisors}})
{{see also|閣僚評議会|en:List of national governments}}
{{see also|閣僚評議会|en:List of national governments}}


48行目: 55行目:
* [[内閣連帯責任]] {{small|([[:w:Cabinet collective responsibility|Cabinet collective responsibility]])}}
* [[内閣連帯責任]] {{small|([[:w:Cabinet collective responsibility|Cabinet collective responsibility]])}}
* [[個別大臣責任]] {{small|([[:w:Individual ministerial responsibility|Individual ministerial responsibility]])}}
* [[個別大臣責任]] {{small|([[:w:Individual ministerial responsibility|Individual ministerial responsibility]])}}
* [[政府]]
* [[首相]]
* [[首相]]
* [[内閣総理大臣]]、[[内閣総理大臣臨時代理]]
* [[内閣総理大臣]]、[[内閣総理大臣臨時代理]]
* [[内閣総理大臣指名選挙]]
* [[内閣総理大臣の一覧]]
* [[内閣総理大臣の一覧]]
* [[日本国歴代内閣]]
* [[日本国歴代内閣]]
64行目: 73行目:
* [[国務大臣]]
* [[国務大臣]]
* [[民間人閣僚]]
* [[民間人閣僚]]
* [[女性政治家#日本の女性閣僚の一覧|女性閣僚一覧]]
* [[女性政治家#日本の女性閣僚の一覧|女性閣僚一覧]]


{{権力分立}}
{{権力分立}}

2024年11月15日 (金) 21:11時点における最新版

内閣(ないかく、: Cabinet)は、主に議院内閣制半大統領制などの国家において、行政を担当する合議体執行機関である[1]権力を担わない場合には、大統領顧問団(だいとうりょうこもんだん)などと訳される場合もある[2]

概要

[編集]

主に議院内閣制を採用する国家において、行政権を担う合議体の機関のことを指す[1]英語Cabinetという単語は、小部屋会合を開き協議していたところから由来する[3]。「内閣」という漢語は、中国の時代に、皇帝諮問にあずかった内閣大学士制度から引用され、1877年明治10年)頃に日本で定着した[3]。なお、行政権が大統領に専属するアメリカ合衆国などにおいて、権力を担っていないCabinetはその訳語として、「大統領顧問団」と呼ばれる[2]

内閣制度は元々イギリスがその元祖であるが、最初は国王に対して助言するだけの諮問機関に過ぎなかった。時代や国によって、様々な位置づけがみられる。内閣制度は、合議制の原則分担管理の原則首相指導の原則を基本原則とする[4]

類型

[編集]

内閣は立法府議会)との関係という観点から、大きく5つに類型化できる[5]

超然内閣制
内閣の存立に関して議会の信任を法的要件としないタイプ。例えばイタリア王国プロイセン王国では国王のみに、大日本帝国では天皇のみに対して責任を負っていた[6]
閣僚の選出は民主的な手段によらない。例えば戦前の日本において、内閣総理大臣の人選は元老重臣のような憲法外の機関・人物が行い、天皇が任命していた[7]。ただし、議会が可決した予算の枠内で政府を運営しなければならないことには変わりないため、間接的に議会のコントロール下に置かれる[8]
議会の協力が得られなかった場合は政権が立ち行かなくなったり、歪な政権運営を強いられたりするため、この制度のもとでも政党内閣は成立しうる(大正デモクラシー期の日本の憲政の常道など)。しかし、法的に担保されたものではないので超然内閣制下の政党内閣と議院内閣制とは違う概念である[9]
議院内閣制
内閣が議会に対して責任を負い、議会の信任を内閣存立の条件とするタイプ。議院内閣制は、議会に議席を保持する政党を基礎に内閣を組織することから政党内閣制とも呼ばれ、議会の信任に基づいて政権を運営する[10]。政党内閣制は議会の多数党を基盤に成立するもので、閣僚のほとんどは多数党の所属議員によって構成される[11]。ただし、単一政党では議会で安定多数を維持できない場合などには複数の政党が政策協定を締結して連立内閣を組織することがある[11]
現在の日本イギリスなど、多くの国で採用されている。日本の内閣はイギリスの内閣を模して作られた。議院内閣制の本質をめぐっては内閣の対議会責任を本質的要素とみる責任本質説と、内閣の議会解散権をその要素に含める均衡本質説の対立がある。
自律内閣制
議会多数派から首相が選出されるが、任期期間中は解任できないタイプ。議会統治制とも呼ばれ、スイスで採用されている[5]。議会において各地域各言語圏を代表する政党から内閣の構成員を選出し、全体で等しく政策決定に責任を負う政治制度になっている[5]
首相公選制
有権者が直接的に首相を選出するが、議会多数派により解任されうる制度[5]
大統領制
有権者が直接的に大統領を選出するタイプで、大統領の任期は固定任期である[5]。大統領制の下での内閣の役割は国により大きな違いがあり、ドイツやイタリアのように大統領が形式的・象徴的存在にすぎず議会多数派から首相が選出される議院内閣制に近い形態の国と、韓国やアルゼンチンのように首相の選出や解任が大統領によって行われ大統領のスタッフとして機能している国がある[12]。行政権が大統領に専属するアメリカ合衆国の場合、 Cabinet は「大統領顧問団」と訳されることがある[2]

各国の内閣

[編集]

以下に各国の内閣または内閣に相当する組織を挙げる。国・地域によって、仕組みや名称もそれぞれ異なっている。各国の内閣については各項目を参照。

脚注

[編集]
  1. ^ a b 『政治・経済用語集』(山川出版社)
  2. ^ a b c cabinet』 - コトバンク
  3. ^ a b 内閣』 - コトバンク
  4. ^ 西尾勝 2001, p. 104.
  5. ^ a b c d e 砂原庸介、稗田健志、多湖淳『政治学の第一歩』有斐閣、2015年、118頁。 
  6. ^ 笹口裕二. “議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―”. 参議院. 2021年7月11日閲覧。
  7. ^ 笹口裕二. “議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―”. 参議院. 2021年7月11日閲覧。
  8. ^ 笹口裕二. “議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―”. 参議院. 2021年7月11日閲覧。
  9. ^ 笹口裕二. “議院内閣制における内閣の在り方― 我が国の統治機構の在り方を考える視座 ―”. 参議院. 2021年7月11日閲覧。
  10. ^ 橋本五郎、飯田政之、加藤秀治郎『Q&A日本政治ハンドブック : 政治ニュースがよくわかる!』一藝社、2006年、72頁。ISBN 4901253794 
  11. ^ a b 『現代社会用語集』山川出版社、1995年、139頁。 
  12. ^ a b 砂原庸介、稗田健志、多湖淳『政治学の第一歩』有斐閣、2015年、118-119頁。 

参考文献

[編集]

関連項目

[編集]