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「労働者派遣事業」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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(相違点なし)

2006年10月18日 (水) 13:56時点における版

派遣(はけん)とは、

  • 特定の仕事を与えて特定の場所へ赴かせること。例えば、大規模災害時に自衛隊を被災地に派遣するなど。⇒災害派遣
  • 人材派遣」又は「派遣社員」の略として用いる。本稿ではこの意味での用法について述べる。

法的定義

労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律(労働者派遣法)2条の定義によると、

1.労働者派遣

自己の雇用する労働者を、当該雇用関係の下に、かつ、他人の指揮命令を受けて、当該他人のために労働に従事させることをいい、当該他人に対し当該労働者を当該他人に雇用させることを約してするものを含まないものとする。

2.派遣労働者

事業主が雇用する労働者であつて、労働者派遣の対象となるものをいう。

解説

雇用形態について、通常は雇用するために契約を結ぶ場合、雇用者と労働者二面的契約関係となるが、労働者派遣法によって認められた形態では「派遣元(派遣会社=実際の雇用者)と労働者(派遣労働者)」、「派遣先と労働者」、「派遣元と派遣先」という三面的契約関係となる。

また、賃金の流れは、派遣元は労働者を雇用し賃金を支払い、労働者は派遣先の指揮監督を受け労務を提供し、派遣先は派遣元に派遣費用を支払う仕組みとなっている。
※労働者派遣法が出来る以前は、このような雇用形態を「間接雇用」として職業安定法により禁止していた。(労働者の労働契約に関して業として仲介をして利益を得る事の禁止。)

業種や職種としては、当初はコンピュータ(IT=情報技術)関係職種のように、専門性が強く、かつ一時的に人材が必要となる13の業種に限られていたが、次第に対象範囲が拡大し、1999年の改正により禁止業種以外は派遣が可能になる。

販売関係や一般業務の分野では、大手銀行製造業電気通信事業者などの主要企業が人材派遣会社を設立し、親会社へ人材派遣を行い業務をこなすケースがみられるようになった。製造業などでは業務請負として、一定の業務ごと派遣会社から人材を派遣してもらう場合も多い。

搾取としての派遣労働

上述の、労働者の労働契約に関して業として仲介をして利益を得る事が、日本に於いては近年なし崩し的に解禁され、派遣雇用の形態を取る労働者が大幅増加し、本来は短期的雇用が主要な形態であった筈の派遣労働が、長期的労働契約となる事により、正規雇用労働者の代わりとして扱われるような事象が表面化するにつれ、派遣労働の搾取としての側面が問題になって来ている。

企業に対して労働を提供し、その対価としての賃金を得るのはその労働者以外には、本来あってはならないはずである。

しかし、バブル崩壊後の雇用情勢の急速な悪化に伴い、雇用企業側も人件費の大幅削減に待ったなしの状況となり(事実、それでもなお倒産する企業も枚挙に暇が無い。逆に言うと、全社員・従業員に対して人件費の大幅削減と言う意味でのリストラが進行する企業は、末期症状を迎えているという事もできる。)、正規雇用の大幅削減、非正規雇用の大幅増加を余儀なくされた。

現代日本に於いては、派遣労働者やアルバイト雇用による企業の搾取により、「働く物は豊か、働かざる者は貧しい」と言う常識が通用せず、「働いても貧しい」ワーキングプアと言う貧困現象が定着しており、職務に対する責任意識・技術力継承などに大きな影を落としている。

種別

  • 特定労働者派遣
常時雇用される労働者(自社の社員)を派遣する形態。届出制。
  • 一般労働者派遣
臨時・日雇いの労働者を含み、特定労働者派遣以外の派遣。許可制。
  • 紹介予定派遣
派遣先企業への雇用(就職)を前提に、派遣形態で一定期間勤務し、期間内に派遣先企業と派遣労働者が合意すれば、派遣先企業で雇用される形態。派遣事業者は労働者派遣事業と職業紹介事業の双方の許可(届出)が必要。派遣期間は6ヶ月以内。

法的制限

  • 業種:建設業務、警備業務、港湾業務、および医療業務(2006年3月1日より、一部の業務については可能になる)に人材を派遣することはできない。
  • 再派遣の禁止:派遣社員を派遣先からさらに派遣させることはできない。(ヨドバシカメラ上野店での派遣社員に対する暴行事件で、ヨドバシと派遣会社が提訴された事から発覚した)
  • 事前面接の禁止:派遣を受けようとする会社は事前面接や履歴書の提出など派遣社員を「特定することを目的とする行為」をしてはならない。パソコンメーカーの「デル」がこれを行い、罰金刑を受けた。

歴史

  • 1986年7月1日:労働者派遣法施行
  • 1999年12月1日:労働者派遣法改正(派遣業種の拡大)
  • 2004年3月1日:労働者派遣法改正(物の製造業務の派遣解禁、紹介予定派遣の法制化など)
  • 2006年3月1日:労働者派遣法改正(派遣受入期間の延長、派遣労働者の衛生や労働保険等への配慮)

労働者派遣法制定に至るまで

労働者派遣法施行以前は職安法により間接雇用が禁止されていたものの、業務処理請負業として人材派遣会社が違法な労働者の派遣を行っていた。このようなヤミ労働業を放置するよりも法制化をし、労働大臣(現:厚生労働大臣)の許可と届け出を義務づけることにより労働者の保護を図る方が好ましいと判断した政府は、ドイツフランスの関連法をモデルとして同法を制定するに至った。

法案制定時、労働組合は「使用者責任を免罪化する」「派遣法の規制規定が不十分」だとして反対した。労働者の希望によって制定されたというよりも、企業側の希望である、人材の適時確保(必要な人数を、必要な時に、必要な期間だけ)を反映するかたちで制定された側面が強い。

モデルとしたドイツやフランスの関連法に比べて、派遣先・派遣元企業に対する規制が杜撰だったため、後々派遣労働者と派遣先・派遣元企業との間に問題を引き起こすこととなった。

仏では正非雇用間において、同額の時間給を支払わなければならないというルールがあり、非正規社員は雇用が不安定であることに対する保障として、さらに10%上乗せした給与を支払わうことが義務化されている。

派遣制度の利点と問題点

利点

  • 派遣先企業側に立った場合
    • 自社では雇用が難しい特殊な人材の利用が可能
    • 経営的側面からは、人件費を固定費としてではなく変動費(費用)として計上することが可能。(人件費の抑制)
    • 労働力を必要な時(業務繁忙期、年末調整など)にのみ、必要な分だけ、確保する事が容易。
    • 通常の給与とは異なり企業が派遣元へ支払う金銭は消費税法上「課税仕入れ」となる。その結果国などに納める消費税等を安く済ませることができる。
  • 派遣労働者側に立った場合
    • 勤務先(業種、職種、勤務地、禁煙環境、残業時間長短など)選定の自由度が大きい。
    • ある期間に限った労働が可能なため、短期のスケジュールを立てやすい。例えば、長期旅行をするための資金を稼ぐために派遣労働者として一定期間勤務し、期間終了後に長期旅行を楽しむなど。

また、紹介予定派遣制度を利用すれば

  • 派遣先企業としては、自社(派遣先)正社員採用リスクが減らせる。(採用できるかどうかがつかみやすくなる。)
  • 派遣労働者としては、転職(転籍)する前に勤務先の内部状況が分かるので、入社前と入社後の企業イメージの乖離が生じにくい。

問題点

  • 法的不備の問題
    • 派遣元責任者は講習を受けさせなければならないが、派遣先責任者は講習を受けなくてもなれる為、派遣先の法的理解が乏しい場合があり、一方に思慮を欠いた法制度である。
    • 派遣先(利用側)への教育が急務。派遣先責任者も講習を受けさせるなど、利用側に対する対応が必要。
    • 社員と非正社員の区別なく、同一職種賃金制度を導入すべき。
    • 受入れ先の企業に連れて行かれて面接を受けさせられる「事前面接」、複数の派遣会社から来る候補者と競争させられる「他社競合」など、労働者派遣法で禁じられている行為が、派遣労働の現場では当たり前になっている。
    • 20代後半以上の派遣社員の場合、長く働いて、ある程度時給の高くなった人が、派遣先の企業に契約更新してもらえず解約される例が増えている。
    • 派遣先企業の都合で配属先や勤務時間等が頻繁に変えられる例や、急に解雇される例などのトラブルも多発している。
    • 収入面でも時給制の場合が殆どの為に就業時間等によって極端な変動が生じる事も多く、一定の収入を希望する労働者側にとっては、生活設計に多大な影響を及ぼす。また、退職金制度が無い場合が殆どで、老後の人生設計も困難な状況になり所得格差が広がり、社会不安を加速させる虞が指摘されている。なお、一部の高度な技術者は、あえて派遣を選択することで、能力に見合った正社員よりも高額な報酬を得ているケースもあるが、非常に少数ではあるが存在する。(年収1000万円を超えているケースは0.1%以下。正社員は3%程度)
    • 社員より高度な仕事をしていても、賃金には反映されない上、身分的には新入社員より下に見られる。
    • 各種社会保険加入が徹底されていない例が少なくない。
    • 年次有給休暇を始めとする労働者としての権利は正社員同様に行使できるが、ほとんど守られていないのが現状である。
    • 仕事先の紹介を派遣企業に委託しているため、該当する仕事を探すことが比較的(自分で探す場合と比べ)容易な反面、派遣元企業のマージンが大きい場合には、派遣労働契約が長期化すると長い目で見て、派遣元企業から大きな搾取を受ける事になる。
  • 派遣先企業側に立った場合
    • 派遣業務がコア業務に及んでいる場合、コスト削減の見返りに業務継承の問題が発生する。
    • 派遣先正社員との業務的な一体化を取るのが難しい。
    • 派遣先正社員との待遇差があり、モチベーションを高めるのが難しい。
    • 正社員による、パワーハラスメントの横行。
    • 正社員でないため、業務に対する責任感が薄い場合がある。
    • 労働力の調達が容易な反面、派遣元企業のマージンが大きい場合には、派遣労働契約が長期化すると長い目で見て高コストになる。
など。
  • 派遣労働の現実
    • 有期契約および時給契約であるため、企業の暇忙により随時雇用と契約終了が実施される。このため雇用の維持には不安がある。
    • 端的に言うと派遣労働者側、派遣先企業側の双方にとって、短期の労働契約と考えた方が妥当である。派遣契約が長期化することは、派遣労働者側、派遣先企業側の双方にとってメリットは小さい。
    • 派遣先企業が支払う派遣費用に対して、派遣労働者に直接渡る賃金は少ないため、派遣先企業と派遣労働者との間で、提供する労働とその対価について、両者で認識のギャップが生じる。
    • 元から採用予定無しで、紹介予定制度と言う名で雇う事例が多発している。

主要人材派遣会社

  • 2004年度部門売上高
  1. スタッフサービス
  2. テンプスタッフ
  3. パソナ
  4. アデコ
  5. リクルートスタッフィング
  6. マンパワー・ジャパン
  7. フジスタッフ
  8. ヒューマンリソシア
  9. ピープルスタッフ
  10. アヴァンティスタッフ
  11. メイツ
  12. インテリジェンス
  13. キャプラン
  14. アシスト
  15. ダイヤモンド・スタッフサービス

関連項目