「佞臣」の版間の差分
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2021年3月18日 (木) 10:37時点における版
佞臣(ねいしん)とは、常に仕える主君の側近に位置し、主君と他の家臣、庶民との間に介在して情報を操作する事によってその権力の根源を作り出している者。 主君の公けな支持によって、集団におけるその地位と権力を保障されている。主君の支持を後ろ盾とした力を失う事は、即、集団内での失脚を意味する。よって権力を維持する為に周囲に己を利する情報を発信し続けるが、その発言と現実との乖離を糊塗するのが常態化した結果、最終的に行為が目的化してしまうという矛盾に陥る。個人としての言動の矛盾、実態として言質と現実との矛盾の破綻をして佞臣の最後となる例が古今東西の歴史及び社会に散見される。
佞臣と奸臣の相違から見る特徴
佞臣と奸臣とはその意味において混同され易い。ともに権力の伸長期においては既存の政治機構を毀損しつつ、主君の領地における政治力、経済力を蚕食していくという同様の過程をたどる。しかし、佞臣は主君とその拠って立つ価値観、存立基盤、政治的、経済的土壌などの多くを同じくしているか共有している。奸臣は主君と異なる階層、存立基盤より興り、別個の価値観、行動原理による政治的行動をとる傾向が高い。また佞臣、奸臣は、君主、民、国家への忠誠以上に本質的に己が欲望と自身の存立を優先させるという点については同じでありつつも、佞臣は最後まで主君からの支持を権力の拠り所として担保し続け、主君の権力の規を越えてその外側に政治的影響力を及ぼさないのに対し、奸臣はどこに向けても積極的な権力の使用を躊躇せず、最終的に主君を排除し自身が主君の持つ権力と領地を乗っ取る可能性を有しているもその大きな違いである。佞臣は権勢の高まりと同時に驕慢にも主君の権威、権力と自己の権力を同一視しし始め、これが自身の独立した勢力形成につながらず、結果、佞臣が混乱を招いた主家、国家の政治機構の滅亡とともに自家を含めて運命を同じくしてしまう遠因となる。別の植物であるにもかかわらず、高みにあって同じ幹から養分を摂取し、宿主の枯死、倒壊とともに終わる宿り木に例えられる所以である。
歴史に見る佞臣と奸臣
例として、北条得宗家被官の長崎円喜は内管領として執権 北条高時に阿り、鎌倉幕府の政治をほしいままに権力を行使、壟断し、多くの御家人の憎悪の対象となった佞臣であるが、幕府の終焉に臨んでは高時とともに一族諸共滅んだ。美濃守護 土岐頼純、頼芸を暗殺もしくは追放し、その政治権力と領国をすべて奪い、国主として主君に取って代わった守護代 斉藤利政は佞臣ではなく奸臣と言える。
主な佞臣
- 栄夷公 - 主君は厲王
- 張易之 - 主君は武則天
- 虢石父 - 主君は幽王 (周)
- 十常侍 - 主君は霊帝 (漢)
- 侯覧、曹節、王甫 - 主君は霊帝 (漢)
- 審配#袁氏の佞臣
- 暗躍 - 主君は劉聡
- 易牙・豎刁・公子開方(三貴) - 主君は桓公 (斉)
- 尤渾や費仲 - 主君は帝辛
- 藤原頼長 - 主君は鳥羽法皇、崇徳上皇
- 藤原信頼 - 主君は二条天皇
- 長崎円喜 - 主君は北条高時
- 伊勢貞親、季瓊真蘂 - 主君は足利義政
- 穴山信君 - 主君は武田勝頼
- 趙高 - 主君は胡亥