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{{Infobox anatomy
'''房水'''(ぼうすい)は、[[眼球]]を充たす[[体液]]のこと。眼圧を保つと共に[[角膜]]・[[水晶体]]の栄養補給の役目を果たす。成分は[[血清]]に酷似する。房水は毛様体で作られ、主にシュレム管を通過し眼外に排出される。
| Name = 房水
| Latin = humor aquosus
| Image = Schematic diagram of the human eye ja.svg
| Caption = ヒトの[[眼球]]の断面図
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'''房水'''(ぼうすい、{{Lang-en|aqueous humor}})とは、[[角膜]]と[[水晶体]]の間([[前眼房]])と[[虹彩]]と水晶体の間({{仮リンク|後眼房|en|Posterior chamber of eyeball}})を満たす[[透明]]な[[液体]]である。'''眼房水'''(がんぼうすい)や'''目房水'''とも呼称され、[[眼圧]]や虹彩の位置の維持などの役割を持つ。[[毛様体]]や虹彩の血管から分泌され、[[瞳孔]]を経由して前眼房へ入り、[[隅角]]内の[[線維柱帯]]から{{仮リンク|シュレム管|en|Schlemm's canal}}を通じて眼球外の[[静脈]]へと排出される<ref name=":1">{{Cite Kotobank|word=房水|encyclopedia=[[デジタル大辞泉]]、栄養・生化学辞典|accessdate=2021-03-19}}</ref><ref name=":0">{{Cite Kotobank|word=眼房水|encyclopedia=[[ブリタニカ国際大百科事典]] 小項目事典、[[日本大百科全書]]|accessdate=2021-03-19}}</ref>。

== 組成 ==
房水の組成は[[血漿]]に類似しており、[[塩化ナトリウム]]を0.7 [[パーセント|%]]、[[タンパク質]]を0.02 %、[[グルコース]]を0.1 %含んでいる<ref name=":0" />。このタンパク質は血漿と同様の物が含有されている<ref name=":3">{{Cite web|和書|url=https://www.apha.jp/medicine_room/entry-3742.html|title=〔参考〕「眼球の構造」|accessdate=2021-03-20|publisher=[[愛知県薬剤師会]]}}</ref>。また、[[炭酸水素イオン]](HCO<sub>3</sub><sup>-</sup>)の濃度は種によって差があり、[[ヒト]]や[[サル]]、[[ウマ]]、[[ヤギ]]では濃度が低く、[[ウサギ]]や[[イヌ]]、[[モルモット]]では血漿より濃度が高いことが判明している<ref name=":2">{{Harvnb|斎藤|1983|p=67}}</ref>。

房水は一般的に[[アスコルビン酸]]や[[乳酸]]、[[ピルビン酸]]の濃度が高く、グルコースや[[尿素]]の濃度が低いことが判明している。また、前眼房の房水の組成は分泌直後の房水の組成と異なる。これは、瞳孔縁の弁作用により房水の逆流が防がれるうえ、周辺の組織と物質のやりとりを行うためである<ref name=":2" />。

房水は[[電解質]]であり、その[[水素イオン指数|pH]]は分泌直後の房水は8.05、前眼房の房水は7.60、後眼房の房水は7.55であると言われているが<ref name=":2" />、おおよそ7.1であるとする文献もある<ref>{{Cite journal|last=Veselovský|first=J|last2=Oláh|first2=Z|last3=Veselá|first3=A|last4=Gressnerová|first4=S|month=Sep|year=2001|title=[The pH reaction in aqueous humor to antiglaucoma agents of various concentrations and pH levels]|journal={{Lang|sk|Ceská a Slovenská oftalmologie}}|volume=57|issue=5|pages=291-297|language=sk|PMID=11764684}}</ref>。

== 役割 ==
房水の主な役割は眼圧の調整である。[[眼球]]の形は眼球壁の[[張力]]と、[[硝子体]]・房水とのバランスによって維持されている。しかし、硝子体の大きさはほぼ一定しているため、房水の増減によって眼圧が変化する<ref>{{Cite Kotobank|word=眼圧|accessdate=2021-03-20|encyclopedia=[[世界大百科事典]] 第2版}}</ref>。また、[[血管]]が存在しない角膜や虹彩、水晶体、硝子体に栄養分を運び、老廃物を体外へと運搬する役割を持つ他<ref name=":1" /><ref name=":0" />、[[抗酸化物質]]として作用するアスコルビン酸の運搬も行っている<ref>{{Cite journal|last=Umapathy|first=Ankita|last2=Donaldson|first2=Paul|last3=Lim|first3=Julie|month=Sep|year=2013|title=Antioxidant Delivery Pathways in the Anterior Eye|url=https://www.hindawi.com/journals/bmri/2013/207250/|journal=BioMed Research International|volume=2013|publisher=Hindawi|language=en|DOI=10.1155/2013/207250|PMID=24187660|PMC=3804153}}</ref>。さらに、房水は光の透過経路の一部を担っているため、一定の[[屈折率]]が必要であり<ref name=":4">{{Harvnb|斎藤|1983|p=66}}</ref>、一般的な房水の屈折率は1.336である<ref name=":0" /><ref name=":3" />。

== 生成と流出 ==
[[ファイル:Auge_Kammerwasser.jpg|thumb|房水の生成と流出(ドイツ語での表記)]]
房水は毛様体、特に毛様体上皮({{仮リンク|毛様体突起|en|Ciliary processes}})から分泌される<ref name=":4" /><ref name=":5">{{Harvnb|松村|2010|p=18}}</ref>。この房水の生成には、水晶体で合成される{{仮リンク|5α-ジヒドロコルチゾール|en|5α-Dihydrocortisol}}が関与している可能性がある<ref>{{Cite journal|last=Azzouni|first=Faris|last2=Godoy|first2=Alejandro|last3=Li|first3=Yun|last4=Mohler|first4=James|month=Dec|year=2011|title=The 5 Alpha-Reductase Isozyme Family: A Review of Basic Biology and Their Role in Human Diseases|url=https://www.hindawi.com/journals/au/2012/530121/|journal=Advances in Urology|volume=2012|publisher=Hindawi|language=en|DOI=10.1155/2012/530121|PMID=22235201|PMC=3253436}}</ref>。房水の分泌量は6 μL/分であり<ref name=":2" />、流速は0.8-1.9 μL/分である<ref name=":3" />。分泌された房水は、硝子体腔から水晶体の周辺部分である赤道部と毛様体突起との間を経由して後眼房に流入する<ref name=":6">{{Cite journal|和書|last=芝|first=大介|month=4|year=2016|title=緑内障の手術|url=https://www.m-review.co.jp/files/tachiyomi_J0024_0051_0036-0043.pdf|journal=Frontiers in Glaucoma|issue=51|page=36|publisher=[[メディカルレビュー社]]|format=PDF|ISBN=978-4-7792-1682-4|ISSN=1345-854X}}</ref>。後眼房からは、瞳孔を経て前眼房に流入する<ref name=":1" /><ref name=":5" /><ref name=":6" />。

前眼房からの流出路は2種類ある。1つは'''経シュレム管流出路'''<ref name=":6" />(主流<ref name=":0" />、主流出路<ref name=":5" />、経シュレム氏管経路<ref name=":7">{{Harvnb|島崎|2006|p=250}}</ref>などとも呼称される)であり、隅角内の線維柱帯からシュレム管、集合管を経て強膜の静脈へと排出される<ref name=":0" /><ref name=":5" /><ref name=":6" />。もう1つは'''ブドウ膜強膜流出経路'''<ref name=":6" /><ref name=":7" /><ref name=":8">{{Harvnb|松村|2010|pp=18-19}}</ref>(副流<ref name=":0" />、副流出路<ref name=":8" />などとも呼称される)であり、虹彩根部から組織液流の形で毛様体の筋組織の間を経て上脈絡膜腔を通り、強膜を透過して眼外で吸収されるか、脈絡膜内の静脈に吸収されることで排出される<ref name=":0" /><ref name=":6" /><ref name=":8" />。特に経シュレム管流出路では、房水の流れに対し一定の抵抗があるため、一定量の房水が眼内に滞留し、眼内圧が発生する要因となっている<ref name=":7" />。また、[[ムスカリン]]の[[アゴニスト]]は[[ムスカリン受容体|ムスカリンM3受容体]]を介して線維柱帯からの流出を<ref>{{Cite journal|last=Mitchelson|first=Frederick|month=Nov|year=2011|title=Muscarinic Receptor Agonists and Antagonists: Effects on Ocular Function|url=https://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-3-642-23274-9_12|journal=Handbook of Experimental Pharmacology|volume=208|pages=263-298|language=en|DOI=10.1007/978-3-642-23274-9_12|PMID=22222703}}</ref>、[[プロスタグランジン]]のアゴニストはブドウ膜強膜流出経路からの流出を増大させる効果があることが判明している<ref>{{Cite journal|last=Weinreb|first=Robert N.|last2=Toris|first2=Carol B.|last3=Gabelt|first3=B'Ann T.|last4=Lindsey|first4=James D.|last5=Kaufman|first5=Paul L.|month=Aug|year=2002|title=Effects of prostaglandins on the aqueous humor outflow pathways|url=https://www.surveyophthalmol.com/article/S0039-6257(02)00306-5/fulltext|journal=Survey of Ophthalmology|volume=47|issue=Suppl 1|pages=S53-S64|language=en|DOI=10.1016/s0039-6257(02)00306-5|PMID=12204701}}</ref>。

== 緑内障との関係 ==
{{Main|緑内障}}
[[日本眼科学会]]による『緑内障診療ガイドライン』によると、[[緑内障]]は「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」であり<ref>{{Harvnb|日本眼科学会|2018|p=14}}</ref>、[[失明]]原因の上位を占める疾患である<ref>{{Harvnb|日本眼科学会|2018|p=7}}</ref>。緑内障は主に原因不明の「原発緑内障」、外傷や[[ステロイド剤]]等の副作用が原因である「続発性緑内障」、目の組織の発達不足が原因である「先天性緑内障」に分類される<ref name=":7" />。原発緑内障の中でも、隅角の形態によって「原発開放隅角緑内障」と「原発閉塞隅角緑内障」の2種類に大別される<ref>{{Harvnb|松村|2010|p=20}}</ref><ref>{{Harvnb|島崎|2006|pp=250-251}}</ref>。

原発開放隅角緑内障は、隅角の形は正常であるものの、線維柱帯の働きが悪いため、房水の排出量が少なくなるというものである。それにより眼圧が上昇し、結果として[[視神経]]障害が発生する。原発閉塞隅角緑内障は、隅角が狭い眼球に発生する。水晶体と虹彩が瞳孔縁に接しているため、房水が前眼房に流入できずに後眼房に滞留する。これにより、虹彩が前眼房側に持ち上げられることで、前眼房の容量が減り、眼圧が上昇するようになる。これが慢性的に発生することで緑内障性の視神経障害が発生する<ref>{{Harvnb|松村|2010|pp=20-21}}</ref>。

[[交感神経β受容体遮断薬]]やα2アゴニスト、{{仮リンク|炭酸脱水酵素阻害薬|en|Carbonic anhydrase inhibitor}}には房水の分泌を抑制する能力があるため、緑内障の治療に用いられる<ref>{{Cite journal|last=Sambhara|first=Deepak|last2=Aref|first2=Ahmad A.|month=Jan|year=2014|title=Glaucoma management: relative value and place in therapy of available drug treatments|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3871276/pdf/10.1177_2040622313511286.pdf|journal=Therapeutic Advances in Chronic Disease|volume=5|issue=1|pages=30-43|publisher=SAGE Publishing|language=en|format=PDF|DOI=10.1177/2040622313511286|PMID=24381726|PMC=3871276}}</ref>。

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{Reflist}}

== 参考文献 ==
* {{Cite journal|和書|last=斎藤|first=禎隆|url=https://doi.org/10.5360/membrane.8.66|title=毛様体上皮のイオン輸送|journal=膜|publisher=日本膜学会|year=1983|volume=8|issue=2|pages=66-74|naid=130001440379|ref=harv|doi=10.5360/membrane.8.66|issn=03851036}}
* {{Cite journal|和書|last=松村|first=美代|url=https://doi.org/10.5363/tits.15.7_18|title=緑内障の病態と治療|journal=学術の動向|publisher=[[日本学術協力財団]]|year=2010|volume=15|issue=7|pages=18-25|naid=130000450882|ref=harv|doi=10.5363/tits.15.7_18|issn=13423363}}
* {{Cite journal|和書|last=島崎|first=敦|url=https://doi.org/10.1254/fpj.128.250|title=緑内障治療薬の基礎|journal=日本薬理学雑誌|publisher=日本薬理学会|year=2006|month=oct|volume=128|issue=4|pages=250-254|naid=10018811486|ref=harv|doi=10.1254/fpj.128.250|issn=00155691}}
* {{Cite journal|和書|author=日本緑内障学会緑内障診療ガイドライン作成委員会|year=2018|title=緑内障診療ガイドライン(第4版)|url=https://www.ryokunaisho.jp/guidelines/data/guidelines_all.pdf|journal=日本眼科学会雑誌|volume=122|pages=5-53|publisher=[[日本眼科学会]]|format=PDF|ref={{SfnRef|日本眼科学会|2018}}|ISSN=0029-0203}}

==関連項目==
==関連項目==
*[[眼圧]]
* [[眼圧]]
*[[緑内障]]
* [[緑内障]]


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2023年11月22日 (水) 11:25時点における最新版

房水
ヒトの眼球の断面図
概要
表記・識別
ラテン語 humor aquosus
MeSH D001082
TA A15.2.06.002
FMA 58819
解剖学用語

房水(ぼうすい、英語: aqueous humor)とは、角膜水晶体の間(前眼房)と虹彩と水晶体の間(後眼房英語版)を満たす透明液体である。眼房水(がんぼうすい)や目房水とも呼称され、眼圧や虹彩の位置の維持などの役割を持つ。毛様体や虹彩の血管から分泌され、瞳孔を経由して前眼房へ入り、隅角内の線維柱帯からシュレム管英語版を通じて眼球外の静脈へと排出される[1][2]

組成

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房水の組成は血漿に類似しており、塩化ナトリウムを0.7 %タンパク質を0.02 %、グルコースを0.1 %含んでいる[2]。このタンパク質は血漿と同様の物が含有されている[3]。また、炭酸水素イオン(HCO3-)の濃度は種によって差があり、ヒトサルウマヤギでは濃度が低く、ウサギイヌモルモットでは血漿より濃度が高いことが判明している[4]

房水は一般的にアスコルビン酸乳酸ピルビン酸の濃度が高く、グルコースや尿素の濃度が低いことが判明している。また、前眼房の房水の組成は分泌直後の房水の組成と異なる。これは、瞳孔縁の弁作用により房水の逆流が防がれるうえ、周辺の組織と物質のやりとりを行うためである[4]

房水は電解質であり、そのpHは分泌直後の房水は8.05、前眼房の房水は7.60、後眼房の房水は7.55であると言われているが[4]、おおよそ7.1であるとする文献もある[5]

役割

[編集]

房水の主な役割は眼圧の調整である。眼球の形は眼球壁の張力と、硝子体・房水とのバランスによって維持されている。しかし、硝子体の大きさはほぼ一定しているため、房水の増減によって眼圧が変化する[6]。また、血管が存在しない角膜や虹彩、水晶体、硝子体に栄養分を運び、老廃物を体外へと運搬する役割を持つ他[1][2]抗酸化物質として作用するアスコルビン酸の運搬も行っている[7]。さらに、房水は光の透過経路の一部を担っているため、一定の屈折率が必要であり[8]、一般的な房水の屈折率は1.336である[2][3]

生成と流出

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房水の生成と流出(ドイツ語での表記)

房水は毛様体、特に毛様体上皮(毛様体突起英語版)から分泌される[8][9]。この房水の生成には、水晶体で合成される5α-ジヒドロコルチゾール英語版が関与している可能性がある[10]。房水の分泌量は6 μL/分であり[4]、流速は0.8-1.9 μL/分である[3]。分泌された房水は、硝子体腔から水晶体の周辺部分である赤道部と毛様体突起との間を経由して後眼房に流入する[11]。後眼房からは、瞳孔を経て前眼房に流入する[1][9][11]

前眼房からの流出路は2種類ある。1つは経シュレム管流出路[11](主流[2]、主流出路[9]、経シュレム氏管経路[12]などとも呼称される)であり、隅角内の線維柱帯からシュレム管、集合管を経て強膜の静脈へと排出される[2][9][11]。もう1つはブドウ膜強膜流出経路[11][12][13](副流[2]、副流出路[13]などとも呼称される)であり、虹彩根部から組織液流の形で毛様体の筋組織の間を経て上脈絡膜腔を通り、強膜を透過して眼外で吸収されるか、脈絡膜内の静脈に吸収されることで排出される[2][11][13]。特に経シュレム管流出路では、房水の流れに対し一定の抵抗があるため、一定量の房水が眼内に滞留し、眼内圧が発生する要因となっている[12]。また、ムスカリンアゴニストムスカリンM3受容体を介して線維柱帯からの流出を[14]プロスタグランジンのアゴニストはブドウ膜強膜流出経路からの流出を増大させる効果があることが判明している[15]

緑内障との関係

[編集]

日本眼科学会による『緑内障診療ガイドライン』によると、緑内障は「視神経と視野に特徴的変化を有し、通常、眼圧を十分に下降させることにより視神経障害を改善もしくは抑制しうる眼の機能的構造的異常を特徴とする疾患」であり[16]失明原因の上位を占める疾患である[17]。緑内障は主に原因不明の「原発緑内障」、外傷やステロイド剤等の副作用が原因である「続発性緑内障」、目の組織の発達不足が原因である「先天性緑内障」に分類される[12]。原発緑内障の中でも、隅角の形態によって「原発開放隅角緑内障」と「原発閉塞隅角緑内障」の2種類に大別される[18][19]

原発開放隅角緑内障は、隅角の形は正常であるものの、線維柱帯の働きが悪いため、房水の排出量が少なくなるというものである。それにより眼圧が上昇し、結果として視神経障害が発生する。原発閉塞隅角緑内障は、隅角が狭い眼球に発生する。水晶体と虹彩が瞳孔縁に接しているため、房水が前眼房に流入できずに後眼房に滞留する。これにより、虹彩が前眼房側に持ち上げられることで、前眼房の容量が減り、眼圧が上昇するようになる。これが慢性的に発生することで緑内障性の視神経障害が発生する[20]

交感神経β受容体遮断薬やα2アゴニスト、炭酸脱水酵素阻害薬英語版には房水の分泌を抑制する能力があるため、緑内障の治療に用いられる[21]

脚注

[編集]
  1. ^ a b c 房水」『デジタル大辞泉、栄養・生化学辞典』https://kotobank.jp/word/%E6%88%BF%E6%B0%B4コトバンクより2021年3月19日閲覧 
  2. ^ a b c d e f g h 眼房水」『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典、日本大百科全書https://kotobank.jp/word/%E7%9C%BC%E6%88%BF%E6%B0%B4コトバンクより2021年3月19日閲覧 
  3. ^ a b c 〔参考〕「眼球の構造」”. 愛知県薬剤師会. 2021年3月20日閲覧。
  4. ^ a b c d 斎藤 1983, p. 67
  5. ^ Veselovský, J; Oláh, Z; Veselá, A; Gressnerová, S (Sep 2001). “[The pH reaction in aqueous humor to antiglaucoma agents of various concentrations and pH levels]” (スロバキア語). Ceská a Slovenská oftalmologie 57 (5): 291-297. PMID 11764684. 
  6. ^ 眼圧」『世界大百科事典 第2版』https://kotobank.jp/word/%E7%9C%BC%E5%9C%A7コトバンクより2021年3月20日閲覧 
  7. ^ Umapathy, Ankita; Donaldson, Paul; Lim, Julie (Sep 2013). “Antioxidant Delivery Pathways in the Anterior Eye” (英語). BioMed Research International (Hindawi) 2013. doi:10.1155/2013/207250. PMC 3804153. PMID 24187660. https://www.hindawi.com/journals/bmri/2013/207250/. 
  8. ^ a b 斎藤 1983, p. 66
  9. ^ a b c d 松村 2010, p. 18
  10. ^ Azzouni, Faris; Godoy, Alejandro; Li, Yun; Mohler, James (Dec 2011). “The 5 Alpha-Reductase Isozyme Family: A Review of Basic Biology and Their Role in Human Diseases” (英語). Advances in Urology (Hindawi) 2012. doi:10.1155/2012/530121. PMC 3253436. PMID 22235201. https://www.hindawi.com/journals/au/2012/530121/. 
  11. ^ a b c d e f 芝, 大介「緑内障の手術」(PDF)『Frontiers in Glaucoma』第51号、メディカルレビュー社、2016年4月、36頁、ISBN 978-4-7792-1682-4ISSN 1345-854X 
  12. ^ a b c d 島崎 2006, p. 250
  13. ^ a b c 松村 2010, pp. 18–19
  14. ^ Mitchelson, Frederick (Nov 2011). “Muscarinic Receptor Agonists and Antagonists: Effects on Ocular Function” (英語). Handbook of Experimental Pharmacology 208: 263-298. doi:10.1007/978-3-642-23274-9_12. PMID 22222703. https://link.springer.com/chapter/10.1007%2F978-3-642-23274-9_12. 
  15. ^ Weinreb, Robert N.; Toris, Carol B.; Gabelt, B'Ann T.; Lindsey, James D.; Kaufman, Paul L. (Aug 2002). “Effects of prostaglandins on the aqueous humor outflow pathways” (英語). Survey of Ophthalmology 47 (Suppl 1): S53-S64. doi:10.1016/s0039-6257(02)00306-5. PMID 12204701. https://www.surveyophthalmol.com/article/S0039-6257(02)00306-5/fulltext. 
  16. ^ 日本眼科学会 2018, p. 14
  17. ^ 日本眼科学会 2018, p. 7
  18. ^ 松村 2010, p. 20
  19. ^ 島崎 2006, pp. 250–251
  20. ^ 松村 2010, pp. 20–21
  21. ^ Sambhara, Deepak; Aref, Ahmad A. (Jan 2014). “Glaucoma management: relative value and place in therapy of available drug treatments” (英語) (PDF). Therapeutic Advances in Chronic Disease (SAGE Publishing) 5 (1): 30-43. doi:10.1177/2040622313511286. PMC 3871276. PMID 24381726. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3871276/pdf/10.1177_2040622313511286.pdf. 

参考文献

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関連項目

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