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「恋愛的指向」の版間の差分

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== 性的指向との関係 ==
== 性的指向との関係 ==
恋愛的指向と[[性的指向]]との区別については、完全には認識されておらず、いまだ充分な研究が進んでいない。また一般的には、性的指向を、性的対象と恋愛的対象の両方を含む概念として捉えることが多い<ref>性的指向であるホモセクシュアルやヘテロセクシュアルの訳語が「同性愛」「異性愛」とされていることからも、セクシュアリティと恋愛感情を区別しない見方が根強いことがわかる。</ref>。
恋愛的指向と[[性的指向]]との区別については、完全には認識されておらず、いまだ充分な研究が進んでいない。また一般的には、性的指向を、性的対象と恋愛的対象の両方を含む概念として捉えることが多い<ref>性的指向であるホモセクシュアルやヘテロセクシュアルの訳語が「同性愛」「異性愛」とされていることからも、セクシュアリティと恋愛感情を区別しない見方が根強いことがわかる。</ref>。

一方、性的指向と[[恋愛的指向|恋愛指向]]の混同に反対する当事者も存在する。2021年1月4日アセクシャルやアロマンティックを含む[[性的少数者|性・恋愛・ジェンダー少数者]]の当事者団体である日本SRGM連盟は「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である」とする声明を出した<ref name="SRGM">{{Cite web | url = https://acecommunitywestjapan.amebaownd.com/posts/12575478?categoryIds=3422558 | title = 【声明】性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である | publisher = 日本SRGM連盟 | accessdate = 2021-01-07 }}</ref><ref name="senpo">{{Cite web | url = https://www.sejp.net/archives/5530 | title = 「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害」性的少数者団体が声明 | publisher = [[選報日本]] | accessdate = 2021-01-07 }}</ref>。日本SRGM連盟は法務省が性的指向を「人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念」としていることについて「広義の性的少数者への人権侵害を助長しかねない」としている<ref name="senpo"/>。また、法務省が性的指向の具体例を異性愛・同性愛・両性愛に限定していることについて「Aceスペクトラムの人たちについては、その存在すら認めていない」と非難している<ref name="SRGM"/>。同様の声明は従来のLGBT団体からは出されていなかったという<ref name="senpo"/>。


== 使用例 ==
== 使用例 ==

2021年1月8日 (金) 10:41時点における版

恋愛的指向(英:Romantic orientation)、あるいはロマンティック・オリエンテーションは、いずれの性別に対して恋愛感情をいだくか、に関する傾向のことである[1]。「性的指向」という用語の替わりに使われることもあれば、並列的に使われることもある。

たとえば、性自認性的指向は必ずしも同調しているわけではない。例えば、性自認が男性だとしても性的指向がガイネセクシュアルとは限らないし、性自認が女性だとしても性的指向がアンドロセクシュアルとは限らない。それと同じく、性的指向(性愛的指向)と恋愛的指向も必ずしも一致しているわけではない。例えば、性愛の対象は男性(アンドロセクシュアル)であるけれども、恋愛の対象はジェンダーを問わない(パンロマンティック)、ということがありうる。「恋愛的指向」とは、このようなことを表現するための概念である。後述するように、特に無性愛者にとって、恋愛的指向は性的指向よりも有用な指標である場合が多い[2][3]。しかし無性愛者以外に対しても、この概念を用いることは可能である。

恋愛感情に関するアイデンティティ

エイロマンティックを示す旗

恋愛感情に関するアイデンティティを表す、当事者の間で用いられている用語として、例えば次のものが挙げられる[4][5][6]。なお、以下はあくまで不完全な列挙であり、恋愛的指向を表す語は他にも存在する。またそれを表現する適切な語が存在しない恋愛的指向も存在する。

  • エイロマンティック(Aromantic):誰に対しても恋愛感情をいだかないこと。日本ではアロマンティックと表記・発音されることもある。対義語はロマンティック(romantic)。
  • ヘテロロマンティック(Heteroromantic):異性に対して恋愛感情をいだくこと。
  • ホモロマンティック(Homoromantic):同性に対して恋愛感情をいだくこと。
  • ガイノ(ジノ)ロマンティック(Gynoromantic):女性に対してのみ恋愛感情をいだくこと。ガイネロマンティック(gyneromantic)とも。
  • アンドロロマンティック(Androromantic):男性に対してのみ恋愛感情をいだくこと。
  • バイロマンティック(Biromantic):両性に対して恋愛感情をいだくこと。
  • パンロマンティック(Panromantic):男性/女性の性の分類に適合しない人々も含め、あらゆる人々に恋愛感情をいだくこと。
  • グレーロマンティック(Grayromantic):エイロマンティックとロマンティックをスペクトラムと見做したとき、その中間にあることを意味する。恋愛感情は抱き得るが、その頻度ないし強度が高くないこと。
  • デミロマティック(Demiromantic):グレーロマンティックのうち、強く情緒的に結びついた相手に対してのみ恋愛感情をいだく指向性。
  • リスロマンティック(Lithromantic):恋愛感情は抱くが、相手から恋愛感情を向けられることを望まない(もしくは必要としない)こと。相手と相互的な関係になると恋愛感情が失われる人もいれば、相互的な関係になっても恋愛感情は失われない人もいる。アコイロマンティック(akoiromantic)やアプロマンティック(apromantic)とも。

これらの語を組み合わせることで、別のあるいはより詳細な恋愛的指向性を表現することができる。例えば、デミアンドロロマンティックは、強く情緒的に結びついた男性に対してのみ恋愛感情をいだく指向性を指す。また、グレーバイロマンティックは、両性に対して恋愛感情をいだくが、その程度や頻度が高くない指向性を指す。

性的指向と同様、主体や客体の「性」をどのように定義するかによって、恋愛的指向を表す言葉の意味は影響を受ける。上記の例では、エイ・パン・グレー・デミ・リスロマンティックは主客の「性」に依存しない概念であるが、その他の語は主客の「性」に依存した概念であるから「性」の定義によって言葉の意味が変わる。セクシュアル・バリエーションも参照。(なお、主客が一致した指向、すなわち自分自身に恋愛的惹かれを経験する指向は、オートロマンティック英語版と呼ばれる。)

性的指向との関係

恋愛的指向と性的指向との区別については、完全には認識されておらず、いまだ充分な研究が進んでいない。また一般的には、性的指向を、性的対象と恋愛的対象の両方を含む概念として捉えることが多い[7]

一方、性的指向と恋愛指向の混同に反対する当事者も存在する。2021年1月4日アセクシャルやアロマンティックを含む性・恋愛・ジェンダー少数者の当事者団体である日本SRGM連盟は「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である」とする声明を出した[8][9]。日本SRGM連盟は法務省が性的指向を「人の恋愛・性愛がどういう対象に向かうのかを示す概念」としていることについて「広義の性的少数者への人権侵害を助長しかねない」としている[9]。また、法務省が性的指向の具体例を異性愛・同性愛・両性愛に限定していることについて「Aceスペクトラムの人たちについては、その存在すら認めていない」と非難している[8]。同様の声明は従来のLGBT団体からは出されていなかったという[9]

使用例

無性愛(Asexuality)のなかにも、恋愛的に惹かれるという人はいる。このような人は「ロマンティック アセクシャル(romantic asexual)」と呼ぶ。恋愛感情をいだかない無性愛は「アロマンティック アセクシャル(aromantic asexual)」と呼ぶ。また、性的に惹かれることはあるが、恋愛的に惹かれることのない人もいる。この場合は「アロマンティック セクシャル(aromantic sexual)」と呼ぶ。また、性別を問わずあらゆる人に性的魅力を感じるが、恋愛的に惹かれるのは異性だけだという人は、「ヘテロロマンティック パンセクシュアル(Heteroromantic pansexual)」と呼ぶ。

このように、個人の恋愛的指向と性的指向とを併記することができる。なお上記はあくまで一例であり、性的指向と恋愛的指向との組み合わせは多様である。

恋愛的指向の流動性

恋愛的指向の流動性: romantic orientation fluidity)は文字通り恋愛的指向が流動的に変化する(しうる)こと、あるいはそのような流動性を示す恋愛的指向を意味する。エイロマンティックからロマンティックに変化したり、パンロマンティックからホモロマンティックに変化したりするとき、これらを前者の意味のフルイド(流動)と呼ぶ。ガイネロマンティックとアンドロロマンティックとの間で揺れ動くような恋愛的指向(これはしばしばバイロマンティックと同一視される)は後者の意味のフルイドの例である。性的流動性の項も参照。

関連項目

脚注

  1. ^ ただし、デミロマンティックやオートロマンティック、自閉的(autistic)な人々に恋愛的に惹かれる指向であるオーティロマンティック(autiromantic)のように、しばしば性別以外を客体の要件とする概念も恋愛的指向として扱われる。また、エイロマンティックやグレーロマンティックは、客体の性別ではなく、恋愛的惹かれの有無や強さ、頻度に関する概念である。さらに、リスロマンティックは、恋愛に関するより具体的な願望や選好の様態にまで踏み込んだ概念である。これらも恋愛的指向として扱われている。したがって、(広義の)恋愛的指向は必ずしも恋愛的惹かれの対象の性別に関する傾向性だけを意味するわけではない。
  2. ^ Richards, Christina; Barker, Meg (2013). Sexuality and Gender for Mental Health Professionals: A Practical Guide. SAGE. pp. 124–127. ISBN 1-4462-9313-0. Retrieved July 3, 2014.
  3. ^ Cerankowski, Karli June; Milks, Megan (2014). Asexualities: Feminist and Queer Perspectives. Routledge. pp. 89–93. ISBN 1-134-69253-6. Retrieved July 3, 2014.
  4. ^ AVENwiki”. The Asexual Visibility & Education Network. 2017年2月3日閲覧。
  5. ^ Aromantics Wiki”. 2017年2月3日閲覧。
  6. ^ Demisexuality Resource Center”. Demisexuality Resource Center. 2017年2月3日閲覧。
  7. ^ 性的指向であるホモセクシュアルやヘテロセクシュアルの訳語が「同性愛」「異性愛」とされていることからも、セクシュアリティと恋愛感情を区別しない見方が根強いことがわかる。
  8. ^ a b 【声明】性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害である”. 日本SRGM連盟. 2021年1月7日閲覧。
  9. ^ a b c 「性的指向と恋愛指向の混同は人権侵害」性的少数者団体が声明”. 選報日本. 2021年1月7日閲覧。