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「経口避妊薬」の版間の差分

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== 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP) ==
== 低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP) ==
'''低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)'''は子宮内膜症、月経困難症向けに生理周期の安定、生理痛の軽減、経血量の減少など、月経に関する症状の治療目的で使用される。また、子宮内膜症の予防・病巣進行の停止、子宮体がん、卵巣癌のリスク軽減なども期待できる。副作用でもある抗アンドロゲン(抗男性ホルモン)作用を利用した[[尋常性痤瘡|ニキビ]]治療<ref name="ocgl"/>、体毛が薄くなることが報告されている<ref name="ocgl"/>。
'''低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)'''は子宮内膜症、月経困難症向けに生理周期の安定、生理痛の軽減、経血量の減少など、月経に関する症状の治療目的で使用される。また、子宮内膜症の予防・病巣進行の停止、子宮体がん、卵巣癌のリスク軽減なども期待できる。副作用でもある抗アンドロゲン(抗男性ホルモン)作用を利用した[[尋常性痤瘡|ニキビ]]治療<ref name="ocgl"/>、体毛が薄くなることが報告されている<ref name="ocgl"/>。

1999年6月に女性自身が妊娠をコントロールする低用量ピルが申請から9年の歳月を経て承認された。1965年以来、185以上の国連加盟国各国はピルを承認し、世界中で2000万人の女性が服用する中、日本はピルを承認する最後の先進国であった<ref>{{cite web|url=https://core.ac.uk/download/pdf/232680898.pdf|title=Potency and Pregnancy in Japan: Did Viagra Push the Pill |author=Patricia L. Martin |publisher=the university of tulsa|accessdate=2020-12-20}}</ref>。国連加盟国185か国で当時唯一の未承認国であった<ref>{{cite web|url=http://rhic.kenkyuukai.jp/special/index.asp?id=4380|title=国会からの報告|publisher=リプロ・ヘルツ情報センター|accessdate=2020-12-21}}</ref>。HIV感染拡大の懸念から薬事審議会が一時審議を凍結し、感染症問題を管轄する公衆衛生審議会に意見を求めるなど調整が難航し、承認時にもなお感染症対策をもっと詰めて承認を決めるべきだったとの意見(東京医科歯科大学大島博幸教授)があった<ref>読売新聞 第44227号 低用量ピル解禁 1999(平成11)年6月13日 1面31面 2020年12月20日閲覧</ref>。低用量ピルが長期審議から一転解禁となった背景には、男性用性的不能治療薬「バイアグラ」を個人輸入で大量に出回り死亡例が発生したことから安全に処方されるためとの理由で、申請からわずか半年で承認された。これにより男性本位との批判が起こったことが関係しているとの見解もある<ref>毎日新聞 記者の目 バイアグラのスピード承認 男性本位の「性」倫理 小川節子 1999年1月26日 2020年12月20日閲覧</ref>。厚労省はピル解禁を世の中の理解が進みピルを温かく見守る環境ができた(平井俊樹審査管理課長)との講和を発表した。ピルが承認されない一方でバイアグラが超特急で承認されたことに対しニューヨークタイムズ紙では世界的に安全性が確立された低用量ピルが認可されていないのみならず副作用ゆえに米国では88年以降販売されなくなった「危険な」高用量ピルのみが認可され,販売され続けていることも紹介し日本の薬事行政の奇妙さを紹介したと言われている<ref>{{cite news|url=https://www.nytimes.com/1999/04/27/science/japan-s-tale-of-two-pills-viagra-and-birth-control.html|title=Japan's Tale of Two Pills: Viagra and Birth Control|publisher=New york times|date=1999-04-27|accessdate=2020-12-20}}</ref><ref>{{cite web|url=https://www.igaku-shoin.co.jp/paper/archive/old/old_article/n2006dir/n2691dir/n2691_05.htm|title=〔連載〕続 アメリカ医療の光と影  第88回ピル(医療と性と政治)(19)「性の乱れ」を防ぐことに躍起となる権力者たちの習性|publisher=医学界新聞|author=李啓充 医師/作家(在ボストン)|accessdate=2020-12-20}}</ref>。


== モーニングアフターピル(EC) ==
== モーニングアフターピル(EC) ==

2020年12月29日 (火) 11:08時点における版

ピルの一例

経口避妊薬(けいこうひにんやく、英語: combined oral contraceptive pill (COCP)、oral contraceptive (OC))とは、常用することで性病(STD)は回避出来ないが避妊効果の得られる女性ホルモン剤。低用量経口避妊薬ピル[1]とも呼ばれる。男性がコンドーム着用、女性がOC服用するデュアルプロテクション(二重防御法)は、性病・妊娠の両者を回避する手段として国際的に評価されている[2][3][4]。成分混合量が異なり、避妊効果が完全に無い又は保証されていない月経困難症子宮内膜症向けの低用量エストロゲンプロゲスチン配合薬LEP)がある。OCとLEP両者とも低用量ピルと呼ばれ、休薬期間7日のある21日ごとのモノ、飲み忘れ防止の偽薬が7日分あることで休薬期間の無い28日間ごとに服用するモノがある[5]。また服用後に吐き気や嘔吐などの副作用が低用量経口避妊薬(OC)よりかなり強いが、膣内射精前に低用量経口避妊薬(OC)を常用していなくても事後早期に服用すればするほど避妊回避効果を発揮するピルは緊急避妊ピル(Emergency Contraceptive:EC)、アフターピル、モーニングアフターピルと呼ばれている[6]。  

概要

経口避妊薬(以下「ピル」)は、1960年代アメリカ合衆国で開発され、広く普及した[7]。世界で1億人の女性が服用するとされるが、使用状況は国ごとに大きく異なる。アメリカでは1200万人の女性が使用し[8]イギリスでは16 - 49歳の女性の3分の1が内服している[9][10]。生理開始日から、1日1錠を決まった時間に21日間服用し、その後の7日間服用を休む周期が基本となる。したがって、PTPパッケージも殆どが1シート21錠入りのもの(使いきった後の7日間は服用しない)か、28錠入りのもの(7日分には、有効成分が全く入っていない「デンプンの塊」)である。

成分にエストロゲンプロゲステロンが含まれ、これにより排卵を抑制する。避妊の機序は、

  1. 排卵の抑制
  2. 子宮頚管粘液の性状の変化(精子の子宮内侵入を抑制)
  3. 子宮内膜の変化(受精卵着床抑制)

である。正しく服用した場合の妊娠の確率は、パール指数(パールインデックス)はピルで0.3%、避妊手術で0.1 - 0.5%、薬剤添加IUDで0.1 - 0.6%である[11]。飲み忘れも含めた一般的な使用では、ピルで8%、避妊手術で0.15 - 0.5%、薬剤添加IUDで0.1 - 0.8%である[12]

避妊目的のOC以外にも、生理周期の変更や月経困難症の緩和、子宮内膜症の治療などに使われるLEPが存在している。国際的にも昔は高用量ピル・ホルモン量が低用量ピルの10倍程度の中用量ピルが用いられていたが、副作用の低減を目的として、低用量ピル・超低用量ピルが開発されて主流となっている。

日本では、以前からホルモン治療目的の、高用量ピル・中用量ピルが認可されていたが、1999年平成11年)に、避妊そのものを目的とした低用量経口避妊薬(oral contraceptive (OC))が認可され、2008年(平成20年)に月経困難症や子宮内膜症の治療薬として、LEPの低用量ピルも認可された。避妊用としては、低用量ピルが主流になっている。

黄体ホルモンのみを含むピルは「ミニピル (en)」と呼ばれ、低用量ピルに含まれる卵胞ホルモン摂取が禁忌である授乳中の産後女性にのみ処方されている。肥満女性や35歳以上、産後授乳中の避妊に使えるメリットがある一方、必ず連日同じ時間に内服をする必要性、飲み始めに不正出血が続くことがあるデメリットがある[13]

緊急避妊薬(EC)

緊急避妊薬(EC)を薬局で入手可能な国は86カ国で、極めて安全性が高いが、日本では処方箋が必要な処方箋医薬品で、診療報酬が適用されない自由診療である。薬局での販売を解禁する一般用医薬品に関しても、専門家や医療系学会からは「先にコンドームの着用することの常識化」「性病はピルでは回避出来ないことの周知など性教育を充実させてから解禁するべき」との意見から、2017年(平成29年)には議論の結果、薬局での販売が見送られた[14][15]

しかし、2020年(令和2年)10月に内閣総理大臣菅義偉が、2021年までに処方箋無しでの販売解禁する方針を打ち出している。アフターピルの薬局販売解禁を評価する声と共に「緊急避妊薬飲めばいいとかいうクズが増えないことを願う…」「女性は(アフター)ピルの重大さを分かっているけど、男性側が理解してないと意味がない」との上記のような意見も懸念も出ている[16][17]

服用禁忌対象

一般に下記の症状がある女性(以下:人)が服用することは禁忌となっており、医療機関から処方もされない。

また糖尿病患者や耐糖能異常の人、年齢が40歳以上の人、心疾患の患者、乳癌の家族歴又は乳房に結節のある人、血栓症の家族歴喫煙者肥満、心臓弁膜症患者、てんかんの患者などは、慎重な投与をすることが求められている。

副作用・禁煙

ピルの服用女性が喫煙をしていると心臓・循環器系への副作用が高まるため、若年層の約10%の女性が喫煙しているが、ピルを服用するなら禁煙すべきである。そもそも喫煙女性は卵子の発育や卵巣からのホルモンの分泌が不妊症、流産や早産、子宮外妊娠になりやすく、赤ちゃんの発育も悪くなる。さらに出産後も喫煙を続けた場合、子供の健康にまで悪影響を及ぼす[18]。主要な副作用として血栓症が挙げられるが、妊娠した場合の血栓症発症率はピル服用者の約2倍、産後12週目では約10倍で、非喫煙のピル服用女性より妊娠中や喫煙女性の方がはるかに血栓症のリスクが高い。医学的理由で服用禁止と診断されてなければ閉経まで飲み続けても問題ない[19]

片頭痛、吐き気嘔吐、イライラ、性欲減退、むくみ膣炎などがあげられる。また、よくピルの服用による体重の増加が挙げられるが、それは誤りである。しかし食欲が増す事はある。このほか稀な例ではあるが、血栓症、長期服用による発癌性などの可能性が指摘されている。子宮筋腫、糖尿病を悪化させる可能性があるとも言われている[20]肝斑のきっかけとなることがある[21]

日本ではバイエル薬品の超低用量ピル「ヤーズ」により、2013年6月に服用した20歳代の女性が頭蓋内静脈洞血栓症で死亡した。その女性は、婦人科で月経困難症の診断で超低用量ピル「ヤーズ」を毎日1錠内服するよう処方された。2日目に頭痛が起こり、6日目には頭痛、吐き気、動悸など体調不良がひどくなったため内科受診し、吐き気止めと胃腸薬を処方された。9日目に頭痛・嘔気・ 食欲不振が続くため、内科受診し精神安定剤を処方された。当初の婦人科も受診した所、ヤーズ内服を総内服量7錠の時点で中止し、脳外科受診を勧められた。嘔吐、歩行困難もあったが検査予約して帰宅。10日目体動困難となる 。11日目の朝ベッドの上で失禁状態で発見され、病院へ搬送された。意識レベル低下し痙攣もあり、CT所見より脳静脈洞血栓と診断された。抗凝固剤のヘパリン治療開始。12日目に呼吸不全となり気管挿管施行。13日目に死亡した[22]。その後2人目の死亡者が発生した。10代後半の女性であり、投与開始から526日目に肺動脈塞栓症で死亡したと推定されている。ヤーズは月経困難症と子宮内膜症の治療のために、ロキソプロフェンレバミピドとともに処方された。 初回投与から526日後に、患者が外出して下宿に帰宅した後に連絡が途絶え、その3日後に下宿内で死亡しているのが発見された。解剖の結果肺動脈の本幹に血栓があり、肺動脈塞栓症が死因と確定。初回投与の499日後に2シート(56錠)を最終処方しており、36錠残っていた[23]医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、処方時には患者に血栓塞栓症のリスクについて説明するとともに、新たに作成した「患者携帯カード」を渡すよう求める文書を掲載した。2013年10月には、日本産婦人科医会が女性ホルモン剤使用中患者の血栓症に対する注意喚起を行った。また、1例目の死者が出た時点で、87人が副作用で血栓塞栓症になったと報告された。その後、同年12月に肺と足の血栓症により40代女性が死亡した。

PMDAの集計などによると、2008 - 2013年上半期に日本で使用されたピルに関して、血栓の重症例が延べ361件副作用として報告されていた。副作用の報告は08年の33件、12年には105件だった。死亡は11件あり、10代1人、20代2人、30代4人、40代1人、50代2人、不明1人だった[24]

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)

低用量エストロゲン・プロゲスチン配合薬(LEP)は子宮内膜症、月経困難症向けに生理周期の安定、生理痛の軽減、経血量の減少など、月経に関する症状の治療目的で使用される。また、子宮内膜症の予防・病巣進行の停止、子宮体がん、卵巣癌のリスク軽減なども期待できる。副作用でもある抗アンドロゲン(抗男性ホルモン)作用を利用したニキビ治療[12]、体毛が薄くなることが報告されている[12]

1999年6月に女性自身が妊娠をコントロールする低用量ピルが申請から9年の歳月を経て承認された。1965年以来、185以上の国連加盟国各国はピルを承認し、世界中で2000万人の女性が服用する中、日本はピルを承認する最後の先進国であった[25]。国連加盟国185か国で当時唯一の未承認国であった[26]。HIV感染拡大の懸念から薬事審議会が一時審議を凍結し、感染症問題を管轄する公衆衛生審議会に意見を求めるなど調整が難航し、承認時にもなお感染症対策をもっと詰めて承認を決めるべきだったとの意見(東京医科歯科大学大島博幸教授)があった[27]。低用量ピルが長期審議から一転解禁となった背景には、男性用性的不能治療薬「バイアグラ」を個人輸入で大量に出回り死亡例が発生したことから安全に処方されるためとの理由で、申請からわずか半年で承認された。これにより男性本位との批判が起こったことが関係しているとの見解もある[28]。厚労省はピル解禁を世の中の理解が進みピルを温かく見守る環境ができた(平井俊樹審査管理課長)との講和を発表した。ピルが承認されない一方でバイアグラが超特急で承認されたことに対しニューヨークタイムズ紙では世界的に安全性が確立された低用量ピルが認可されていないのみならず副作用ゆえに米国では88年以降販売されなくなった「危険な」高用量ピルのみが認可され,販売され続けていることも紹介し日本の薬事行政の奇妙さを紹介したと言われている[29][30]

モーニングアフターピル(EC)

モーニングアフターピルは避妊措置に失敗、または避妊措置を講じなかった性行為後に緊急的に用いるものであり、通常のピルのように計画的に妊娠を回避するものではない。1970年代よりYuzpe(ヤッペ)法と呼ばれる中容量ピルを使った緊急避妊は欧米で実施されており、日本でも「医師の判断と責任」によって緊急避妊法としてホルモン配合剤あるいは銅付加子宮内避妊具が利用されてきた。1999年にレボノルゲストレル錠が "NorLevo®" としてフランスで正式に商品化された。WHOもレボノルゲストレルの導入を後押ししたが、ピルと同様に日本では導入が遅れ2011年2月23日に緊急避妊薬ノルレボ®として承認された(アジアで認可していないのは日本と北朝鮮だけであった)。

厚生労働省の医療用から要指導・一般用への転用に関する評価検討会議では、経口妊娠中絶薬の市販化について審議されたが、アメリカなどの緊急避妊ピルを常時使用している環境と比較した性教育の不十分さや薬剤師の知識不足による誤解などを懸念することを産婦人科医会医師などが反対理由として表明している[31]。アメリカでは大学区校内の自動販売機でこの薬が購入できる一方、日本において人工妊娠中絶は病気でなく自費診療で相場は15万円前後であるため、緊急避妊薬が容易に手に入るような環境が広まると、結果として産婦人科医の人工妊娠中絶の件数減少により収入が減る可能を医師が懸念する可能性を指摘する意見もあり[32]、中絶が「罪人に対する処罰」であり産婦人科医の「いい金づる」とも表現されている[33]。一方で、産婦人科医からは中絶薬を使用することで起こる不正出血を防ぐための入院もあり得るとして、開業医の収入は減らず女性自身の負担が増加する可能性を述べる者もいる[34]。海外で承認されている子宮内避妊システムの小さいものの利用、腕に入れるインプラント、皮膚に貼るシールの利用を含め「産む、産まない」の選択を女性自身が決める「リプロダクティブ・ヘルスアンドライツ」の権利が尊重される必要がある [35]。日本では女性の9人に1人が中絶を経験しているとの統計があり[36]、平成30年度件数は出生数92万[37]に対し人工中絶件数は16万を超える[38]2020年10月現在、市民団体が緊急避妊薬へのアクセス改善などを求めて厚生労働省に提出した署名が約8万8千人分に上った[39]が、その処方箋なしでの薬局販売は2017年の厚生労働省の「処方箋医薬品」から、「要指導・一般用医薬品」への転用に関する評価検討会議で、緊急避妊薬の市販化について審議の場において性教育そのものが、日本はまだヨーロッパアメリカからかなり遅れていることも理由として承認が否決されている[40]

ヤッペ法

ノルレボの発売まで緊急避妊法として日本で最も一般的に行われてきた方法が、1970年代に発表されたYuzpe(ヤッペ)法である。この方法は性交後72時間以内に0.5mgのdl‐ノルゲストレル(NGR)と0.05mgのエチニルエストラジオール(EE)を含有する「いわゆる」中用量ピルを2錠、さらにその12時間後に2錠を服用するというものである[41]。前述したように「医師の判断と責任」によってすでに緊急避妊以外の適用で承認されている薬剤であるプラノバール配合錠が転用されてきたのだが、中用量ピルであれば緊急避妊として使用できると誤解している婦人科医師がおり、ソフィアA(1錠中ノルエチステロン 1.00mg,メストラノール0.05mg)、ソフィアC(1錠中ノルエチステロン 2.00mg,メストラノール0.10mg)などをプラノバール配合錠(1錠中ノルゲストレル 0.5mg,エチニルエストラジオール 0.05mg)と同様の方法で処方されていることから、インターネットなどで情報を得ている女性の間でも不安が広がった[42]

レボノルゲストレル

ノルレボ®はレボノルゲストレル(LNG)0.75mg錠で、性交後72時間以内に(できる限り速やかに)確実に2錠服用する。72時間を過ぎたケースでは、IUDやミレーナの留置で対応される。

ノルレボ®による作用機序は十分には解明されていないが、その効果は主に着床の阻害よりも排卵の抑制あるいは排卵の遅延によるものと考えられている。卵胞期(排卵前)に使用することによって排卵過程を妨げることが明らかにされている。LHサージ前(卵胞サイズ15mm未満)に緊急避妊薬の投与がされると、約80%の女性でその後5日以内の排卵が阻害されるか、あるいは排卵障害(LHサージの消失、もしくは卵胞破裂後にLHサージが現れる)が起こる。したがって緊急避妊薬を排卵前に投与することによって、その後5~7日間排卵が抑制され、その期間に女性の性器内に進入しているすべての精子が受精能力を失うことになる。また排卵後の服用であった場合黄体期のLH濃度の低下と黄体期の短縮での避妊効果を発揮する根拠となる[43]

緊急避妊薬の禁忌は、本剤の成分に対する過敏症の既往がある場合、重篤な肝機能障害のある場合(代謝能の低下により肝臓への負担が増加し、症状が増悪する可能性があるため)、妊婦(成立した妊娠には効果がないため)[44]子宮外妊娠の既往がある場合、卵管炎の既往がある場合、あなた自身又は家族に血栓症(血液凝固)の既往がある場合、食物や薬の吸収を妨げる重度の消化管障害(疾患)を有する場合、又はクローン病のような重篤な吸収不良症候群を有する場合[要出典]である。その他肝障害のある場合、心疾患・腎疾患又はその既往歴のある場合(電解質代謝への影響によるナトリウムや体液の貯留により、症状が増悪する可能性があるため)にも慎重を要する[44]。また、重度の消化管障害あるいは消化管の吸収不良症候群がある場合,本剤の有効性が期待できないおそれがある[44]

副作用は、消退出血(46.2%)、不正子宮出血(13.8%)、頭痛(12.3%)、悪心(9.2%)、閨怠感(7.7%)などがあり、その他にめまい、腹痛、嘔吐、下痢、乳房の痛み、月経遅延、月経過多、疲労などがある[44]。妊娠回避効果は100%ではなく、排卵日付近の性交渉ではレボノルゲストレルを使っても81 - 84%である[44]また緊急避妊薬は受精卵の着床を阻止する作用もあるとして、命(受精卵)を強制的に殺すことであるといった生命倫理上の批判もある[要出典]。日本カトリック司教協議会はノルレボ錠の承認に反対意見を表明し、受精卵を着床しにくくしたり、着床が十分に完成する前に受精卵を流産させる極早期化学的中絶作用を持つとされているため、「その服用は積極的な中絶を目指しており、道徳的に認められない」と指摘している[45]

なお「受精卵の着床よりも先に子宮内膜を剥がして生理様の出血を起こし、妊娠成立を阻止する」ために性行為後に服用するホルモン剤のこと、あるいは、モーニングアフターピルは体内ホルモン濃度の急上昇急降下による落差で消退性出血を導く方法である説明をするサイトもあるが、ノルレボの添付文書においては

【薬効薬理】本剤の子宮内膜に及ぼす作用,脱落膜腫形成に及ぼす作用,受精卵着床に及ぼす作用,子宮頸機能に及ぼす作用及び排卵・受精に及ぼす作用に関する各種非臨床試験を行った結果,本剤は主として排卵抑制作用により避妊効果を示すことが示唆され,その他に受精阻害作用及び受精卵着床阻害作用も関与する可能性が考えられた.
あすか製薬、ノルレボ添付文書

という説明になっている。 またYuzpe法(後述)の作用機序についても

1.血中LHピークの前に投与した場合/血中LHピークの低下や遅延により,無排卵,遅延排卵,または黄体期の短縮を起こす.
2.血中LHピークの後に投与した場合/血中プロゲステロン濃度の低下や子宮内膜の発育異常などの黄体機能不全を起こす.
南山堂、Pill 経口避妊法のすべて

との文献が1989年時点である。

ノルレボは薬価未収載、プラノバールは収載品ではあるが、緊急避妊は医療保険が効かない自由診療となる。

脚注

  1. ^ 「ピル」は錠剤一般を示す英語であり、"the pill"と固有名詞で表現される場合は経口避妊薬(the contraceptive pill)を指す。
  2. ^ さまざまな選択肢、現代の避妊方法”. www.afpbb.com. 2020年10月8日閲覧。
  3. ^ 「避妊」は「防犯」と同じ…“性”のリスクと、どう付き合う?【漫画家いつまちゃんに聞く】 - Peachy”. ライブドアニュース. 2020年10月8日閲覧。
  4. ^ 第1回(平成16年度第1回)厚生科学審議会感染症分科会感染症部会 エイズ・性感染症ワーキンググループ議事録- 厚生労働省
  5. ^ “生理痛がひどい…産婦人科で処方される低用量ピルってどんな薬? 副作用はある?”. (2019年12月11日). https://www.koukouseishinbun.jp/articles/-/5897 2020年4月15日閲覧。 
  6. ^ アフターピル | ジャスミンレディースクリニック”. jlc.tokyo. 2020年10月8日閲覧。
  7. ^ UN Population Division (2006) (PDF). World Contraceptive Use 2005. New York: United Nations. ISBN 92-1-151418-5. http://www.un.org/esa/population/publications/contraceptive2005/2005_World_Contraceptive_files/WallChart_WCU2005.pdf  women aged 15–49 married or in consensual union
  8. ^ Mosher WD, Martinez GM, Chandra A, Abma JC, Willson SJ (2004). “Use of contraception and use of family planning services in the United States: 1982–2002” (PDF). Adv Data (350): 1–36. PMID 15633582. http://www.cdc.gov/nchs/data/ad/ad350.pdf.  all US women aged 15–44
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  11. ^ Hatcher R. A. et al. (2004). Contraceptive Technology: Eighteenth Revised Edition. New York: Ardent Media.
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  14. ^ 「緊急避妊薬 薬局で購入できるように」国に要望 -NHK
  15. ^ 女性活躍万年「ビリ」組も当然?「ピル」後進国ニッポン - 日経ビジネス
  16. ^ 緊急避妊薬、薬局で購入可能に 来年にも、望まない妊娠防ぐ - 共同通信
  17. ^ 舛添要一氏が緊急避妊薬の市販化方針を評価「世界と同じ流れになる」”. ライブドアニュース. 2020年10月8日閲覧。
  18. ^ 低用量ピルとタバコのお話 - 医療トピックス|中野区医師会”. www.nakano-med.or.jp. 2020年10月8日閲覧。
  19. ^ 低用量ピルとタバコのお話 - 医療トピックス|中野区医師会”. www.nakano-med.or.jp. 2020年10月8日閲覧。
  20. ^ ただし、子宮筋腫や糖尿病への影響が確認されたのは現在ではほとんど用いられない旧来の高用量ピルであり、避妊用の低用量ピルではほぼ無影響とされる。
  21. ^ Arun Achar, Sanjay K. Rathi (2011-7). “Melasma: a clinico-epidemiological study of 312 cases”. Indian journal of dermatology 56 (4): 380–382. doi:10.4103/0019-5154.84722. PMC 3178998. PMID 21965843. https://doi.org/10.4103/0019-5154.84722. 
  22. ^ 超低用量ピル「ヤーズ」で日本初の死者
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  42. ^ HORMONE FRONTIER IN GYNECOLOGY vol17 no,2 2010.6 プロゲスチンの臨床応用(5)緊急避妊とプロゲスチン/北村邦夫著より
  43. ^ 緊急避妊法の適正使用に関する指針(日本産科婦人科学会編)より
  44. ^ a b c d e ノルレボ錠の添付文書より([1]等)
  45. ^ 日本カトリック司教協議会、緊急避妊薬の承認に反対 2010年12月3日クリスチャントゥディ

関連項目

外部リンク