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2020年12月25日 (金) 08:40時点における版
政党政治 |
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Portal:政治学 |
二大政党制(にだいせいとうせい、英:two‐party system)とは、政党制の一つで、二つの主要な政党が最近の主な選挙で大きな得票や議席数を保っている状態や、それを前提とした政治体制である。
概説
二大政党制は通常、国家制度や政党制度としては複数政党制だが、二大政党が大半の集票・議席・影響力・政権担当実績などを保持している点で、多党制と対比される。しかし、どこからを二大政党制または多党制と呼ぶかは学者や時期や観点によっても異なり、明確な定義は存在しない。
二大政党制では、政権交代が比較的容易であり、多党制で多く見られる連立政権はまれにしか発生せず、発生した場合は大連立や挙国一致内閣などと呼ばれる。なお多党制も政党間のイデオロギーの差異によって穏健な多党制と分極的多党制とに分けられる。
ジョヴァンニ・サルトーリの指摘では、二大政党制はイギリスや、イギリスから独立したアメリカ合衆国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなどのアングロサクソン諸国で多く見られる。
二大政党制の背景には、主要な二大政党以外からは大量当選が困難な選挙制度である小選挙区制や、国民のイデオロギーや支持層が「保守と革新、リベラル」など2種類または2方向に大別できること、更に両政党が比較的穏健かつ民主的であり現実的な政権交代を相互に許容できること、などが挙げられる。
二大政党制の利点には、二大政党による政策論争が国民にわかりやすく、二大政党への参加や支持が容易で、現実的な政権交代が容易なため国民に実質的な選択の余地があり、長期政権に発生しがちな腐敗防止や、政権獲得時に国民の支持を背景にした大胆な政策転換を行いやすいこと、などが挙げられる。また、中間層の有権者の支持を得る為に二つの政党の政策が似たものとなる傾向があり、少数派の意見をくみ取る政党がなくなるという問題があるが、ジョヴァンニ・サルトーリの主張ではイデオロギーの差異が小さいことは良い政治であり、この点を利点とする立場もある。
二大政党制の欠点には、二大政党の思想や政策が離れている場合にはイデオロギー的あるいは感情的な対立になりやすく、政権交代の発生時には大幅な政策変更により政治の不安定化を招く場合があること、逆に二大政党の思想や政策が接近している場合には国民に選択の余地が狭く多様な意見や思想を反映しにくいこと、同じ政党・政策・支持勢力などが長期間存続しがちなため政党内の新陳代謝や政策転換が進みにくいこと、特に二大政党間で談合や汚職などが常態化した場合には致命的な政治不信を引き起こしやすいこと、あるいは二大政党制へ誘導するための小選挙区制では大量の死票が発生すること、などが挙げられる。アーレンド・レイプハルトの合意形成型民主主義の考え方に立てば、二大政党制を基盤とする多数決型民主主義においては多党制を基盤とする合意形成型民主主義より、少数意見の代表性が相対的に低いとされる[1]。
代表例
二大政党制と呼ばれる国と時期には以下があるが、その定義や範囲は学者によっても異なる。
ジョヴァンニ・サルトーリの指摘するアングロサクソン諸国
- アメリカ合衆国:典型的な二大政党体制。現代では共和党と民主党が二大政党である。合衆国議会および各州の議会の会派は「多数派」と「少数派」の二会派とされることが通例であり、それぞれ共和党、民主党いずれかの議員のみか、あるいはそれに若干の無所属または地域政党所属議員を加えて構成される。全国規模の少数政党も存在するが、二大政党の指名を受けない候補が大統領に当選した例は19世紀以降なく、議会の議員もほとんどが二大政党に属する。→詳細は「アメリカの政党」を参照
- イギリス:1800年代以降のトーリー党(後の保守党)とホイッグ党(後の自由党)。1920年代以降は保守党と労働党。第一次世界大戦、大恐慌を挟む戦間期、第二次世界大戦の際には大連立が行われた。1980年代以降は第3勢力の自由民主党や、スコットランドの地域政党であるスコットランド国民党などの得票率が拡大しているが、議席数は二大政党と大差がある。2010年代には連立政権や少数与党政権があったものの、政権首班と「女王陛下の野党」をそれぞれ保守党と労働党が担当する構図に変わりはなかった。
- カナダ:1993年まではカナダ進歩保守党とカナダ自由党の二大政党制。1993年の総選挙で進歩保守党が大敗したために二大政党制が崩れたが、その後カナダ保守党が政権に就いて自由党との二大政党制となった。2011年の総選挙ではそれまで第3党だった新民主党が第2党に浮上し、従来の保守・自由の二大政党制が崩れたが、2015年の総選挙では自由党が議会の第1党の座を奪回する一方、新民主党が第3党に後退したため再び自由・保守の二大政党制に回帰した。ほかにブロック・ケベコワなどが存在する。
- オーストラリア:保守連合と労働党。保守連合は自由党とオーストラリア国民党の連合だが、選挙協力と連立協定が長期化しているため、二大政党制とも呼ばれる。なお、2010年の総選挙で、労働党も保守連合も、過半数を取れなかったが、労働党が、オーストラリア緑の党などの閣外協力を得て、政権続行をした。
- ニュージーランド:ニュージーランド国民党と労働党。ただし 1993年の選挙制度の小選挙区比例代表併用制への変更後は多党化した。
その他
- ギリシャ:2012年までは新民主主義党と全ギリシャ社会主義運動による二大政党制が続いていた。2012年4月の総選挙で急進左派連合、独立ギリシャ人などが躍進し、多党化した。2015年1月ギリシャ議会総選挙では、急進左派連合が第一党となって独立ギリシャ人との連立政権を発足させた。
- ポルトガル:社会党と社会民主党。現在では二大政党制とはみなされない場合が多い。
- マルタ:国民党と労働党。
- コロンビア:コロンビア自由党とコロンビア保守党。
- 日本:戦前には立憲政友会と立憲民政党が憲政の常道に基づいて交互に政権を担当した時期がある。戦後は55年体制下では自由民主党と日本社会党が上位2党を占め続けたが、日本社会党中心の政権は成立せず野党の多党化が進み「一と二分の一政党制」とも言われていた。1994年から1997年まで新進党が日本社会党に代わる第二党となったが政権交代に至らず解党。1996年の総選挙から政権交代可能な二大政党制を目指して小選挙区比例代表並立制が導入された。この制度の下、1999年から自民党と公明党による自公連立政権が成立し、自民党に次ぐ第二党民主党が自公政権に相対する二大政党として台頭。2009年の総選挙に民主党が大勝し、戦後初めて選挙で野党が単独過半数を得たことでの政権交代が起きた[2]。民主党は2012年まで政権を担当したが、その後停滞、2016年に民進党に改称するも2017年に立憲民主党と希望の党に分裂、2018年には希望の党と参議院民進党を母体に国民民主党が結成された[3]。2020年には立憲民主党と国民民主党を母体に新・立憲民主党が結成された[4]。
- 韓国:当初は与党の政府党と韓国民主党およびその後継政党。1987年の民主化宣言以降は、平和民主党や新民主共和党などの新党結成や離合集散が続いた。2020年の総選挙以降は未来統合党から改称した中道右派の国民の力と中道左派である共に民主党による二大政党制が続いている。
- 中華民国(台湾):中国国民党と民主進歩党。2000年代には多党化の傾向を示したが、2008年より従来の中選挙区を小選挙区に改めたことで、再び二大政党への収斂傾向が強まった。→詳細は「台湾の政党」を参照
- タイ:タイ貢献党と民主党。
- スペイン:国民党とスペイン社会労働党。しかし、2015年スペイン議会総選挙は左翼の新党ポデモスや中道右派の新党シウダダノスも多くの議席を獲得し、多党化した。
脚注
- ^ また、派閥ではなく第三党を作ろうとした場合には、かえって自らの考えに近い二大政党に不利になってしまうという現象も存在する(2000年アメリカ合衆国大統領選挙のラルフ・ネーダーなど)。
- ^ 民主308議席を獲得、鳩山政権誕生へ(2009年8月31日朝日新聞)
- ^ 党首討論、活性化の道は 「1強多弱」野党の時間細切れ 首相「歴史的使命終わった」(2018年7月11日朝日新聞)
- ^ 新「立憲民主」が結党大会 枝野代表「国民に選択肢示す」(2020年9月15日産経新聞)
関連項目
- 複占(汎用的に「二人占め」)