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「三冠 (野球)」の版間の差分

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2020年8月24日 (月) 22:37時点における版

野球における三冠(さんかん、英語:Triple Crown)とは、日本プロ野球(NPB)においては1シーズンに1人の選手首位打者最多本塁打最多打点の3つのタイトルを取得することであり[1]メジャーリーグベースボール(MLB)においては1シーズンに1人の選手が首位打者最多本塁打最多打点の3つのタイトルを取得すること[2]、もしくは、1シーズンに1人の選手が最多勝最優秀防御率最多奪三振の3つのタイトルを取得することである[3]。三冠を達成した選手を三冠王(さんかんおう)と呼ぶ。一般的には、打撃部門の三冠王の事を指している。投手部門の三冠王には、「投手三冠王」又は、「投手三冠」と区別して呼んでいる。

NPBおよびMLBにおける公式の定義は上記のものであるが、メディアなどでは野球におけるその他のタイトルやリーグトップの複数の記録の獲得、あるいは野球以外の競技における複数の最高記録の獲得を「○冠」と呼ぶ場合がある。

歴代三冠王

NPB

打者部門

年度 選手名 所属球団 打率 本塁打 打点 その他リーグ1位の項目
1938年 中島治康 東京巨人軍 .361 10 38 安打・長打率
1965年 野村克也 南海ホークス .320 42 110 得点・安打・塁打・敬遠
1973年 王貞治 読売ジャイアンツ .355 51 114 試合・得点・安打・塁打・四球・敬遠・出塁率・長打率
1974年 王貞治 読売ジャイアンツ .332 49 107 試合・得点・塁打・四球・敬遠・出塁率・長打率
1982年 落合博満 ロッテオリオンズ .325 32 99 安打・二塁打・塁打・出塁率・長打率
1984年 ブーマー・ウェルズ 阪急ブレーブス .355 37 130 安打・塁打
1985年 ランディ・バース 阪神タイガース .350 54 134 安打・塁打・出塁率・長打率
1985年 落合博満 ロッテオリオンズ .367 52 146 試合・得点・塁打・四球・出塁率・長打率
1986年 ランディ・バース 阪神タイガース .389 47 109 安打・塁打・四球・敬遠・出塁率・長打率
1986年 落合博満 ロッテオリオンズ .360 50 116 得点・四球・出塁率・長打率
2004年 松中信彦 福岡ダイエーホークス .358 44 120 得点・安打・塁打・出塁率・長打率

また、1995年にイチローが首位打者・打点王・盗塁王・最多安打・最高出塁率の打者五冠王に輝いている[4]。三冠王獲得者のうち、三部門の数字がすべて、他方のリーグのタイトル獲得者と比してもなおかつ1位であるのは、1973年の王貞治と1984年のブーマー・ウェルズのみである[5]。なお、平成の30年間(平成は1989年1月8日〜2019年4月30日。そのうちプロ野球のシーズンにあたるのは1989年4月〜2018年10月)で、三冠王を達成したのは上表の通り、2004年(平成16年)の松中だけであり、松中はこれにちなんで平成唯一の三冠王とも呼ばれる。

投手部門

年度 選手名 所属球団 勝利 防御率 奪三振 その他リーグ1位の項目
1937年春 沢村栄治 東京巨人軍 24 0.81 196* 勝率・完投数・完封数
1938年秋 ヴィクトル・スタルヒン 東京巨人軍 19 1.05 146* 勝率・完投数・完封数・無四球試合数・投球回数
1943年 藤本英雄 東京巨人軍 34 0.73 253* 勝率・登板数・先発数・完投数・完封数・投球回数
1948年 中尾碩志 読売ジャイアンツ 27 1.84 187*
1954年 杉下茂 中日ドラゴンズ 32 1.39 273* 勝率・登板数・完封数・投球回数
1954年 宅和本司 南海ホークス 26 1.58 275* 投球回数
1958年 金田正一 国鉄スワローズ 31 1.30 311* 完封数
1958年 稲尾和久 西鉄ライオンズ 33 1.42 334* 登板数
1959年 杉浦忠 南海ホークス 38 1.40 336* 勝率・先発数・完封数・無四球試合数
1961年 稲尾和久 西鉄ライオンズ 42 1.69 353* 勝率・登板数・投球回数
1961年 権藤博 中日ドラゴンズ 35 1.70 310* 登板数・完投数・完封数・投球回数
1978年 鈴木啓示 近鉄バファローズ 25 2.02 178* 先発数・完投数・完封数・無四球試合数・投球回数
1980年 木田勇 日本ハムファイターズ 22 2.28 225* 勝率・完投数・投球回数
1981年 江川卓 読売ジャイアンツ 20 2.29 221* 勝率・完投数・完封数
1985年 小松辰雄 中日ドラゴンズ 17 2.65 172*
1990年 野茂英雄 近鉄バファローズ 18 2.91 287 勝率・完投数・投球回数
1999年 上原浩治 読売ジャイアンツ 20 2.09 179 勝率・無四球試合数
2006年 斉藤和巳 福岡ソフトバンクホークス 18 1.75 205 勝率・完投数・完封数・投球回数
2010年 前田健太 広島東洋カープ 15 2.21 174 完投数・投球回数
2018年 菅野智之 読売ジャイアンツ 15 2.14 200 先発数・完投数・完封数・無四球試合数・投球回数
「*」は当時連盟表彰対象外の項目

投手○冠という場合の項目はマスコミ等でも統一されていないため、最高勝率タイトルを含めて四冠と呼ぶことがある[6]。さらに、スポーツライターで「記録の神様」と呼ばれる宇佐美徹也は、この四冠に最多完封を加えて投手五冠王とすることで、「打者の三冠王に匹敵する」と述べている[7]。この五冠王を達成したのは、1937年春の沢村栄治、1938年秋のヴィクトル・スタルヒン、1943年の藤本英雄、1954年の杉下茂、1959年の杉浦忠、1981年の江川卓、2006年の斉藤和巳の7人のみである[8]

メジャーリーグベースボール

パンチョ伊東のエッセイによると、打点がリーグの記録として公表されるようになったのは1907年からであり[注釈 1]、当時は打点の定義がリーグによって微妙に違いがあったため、それを統一して公式記録となったのは1920年からであるという[注釈 2]。さらに当時の本塁打の多くは「ランニング・ホームラン」であったので、ほとんど注目されておらず、本塁打は三塁打の延長程度に考えられていた[注釈 3]。従って、1910年代までの打撃の「三冠王」とは、打率・安打数・得点数の部門を制した選手を指していた[注釈 4][注釈 5]

打者部門

打撃6部門制覇は1909年にタイ・カッブが記録している。監督兼任での達成は1925年のロジャース・ホーンスビーが記録している。

名前が太字の選手は打率、本塁打、打点がMLB全体でもトップ(達成時に1リーグであった選手も太字とする)。チーム名の太字は選手兼任で達成。年齢は達成年度の年齢。リーグは達成した時に所属していたリーグ。NLはナショナルリーグ、AAはアメリカン・アソシエーション、ALはアメリカンリーグ。不明は記録不明。()はランニング本塁打の本数(判明している数のみ。走本0本の場合は未記載)、走本はランニング本塁打の意。守備位置は達成年に最も守ったポジション。外野手は右翼手など詳細が判明している場合は記載。盗塁の太字はリーグトップ。

年度 年齢 選手名 リーグ 所属球団 守備位置 打席 打率 本塁打(走本) 打点 盗塁 備考
1878年 23歳 ポール・ハインズ NL プロビデンス・グレイズ 外野 .358 4(1) 50 不明 メジャーリーグ初の三冠王
1887年 29歳 ティップ・オニール AA セントルイス・ブラウンズ 外野 .435 14(1) 123 30 本塁打数に加え、安打数、二塁打数、三塁打数も1位
1894年 27歳 ヒュー・ダフィー NL ボストン・ビーンイーターズ 外野 .440 18 145 48 三冠王、MLB歴代最高打率記録
1901年 26歳 ナップ・ラジョイ AL フィラデルフィア・アスレチックス 二塁 .426 14(4) 125 27 二塁手史上初の達成。近代野球初の三冠王、近代野球以降でのMLB歴代最高打率
1909年 22歳 タイ・カッブ AL デトロイト・タイガース 外野 .377 9(9) 115 76 三冠に加え盗塁数・安打数・出塁率もMLB全体で1位、三冠王唯一の全てランニング本塁打。打撃三冠王の史上最年少記録
1922年 26歳 ロジャース・ホーンスビー NL セントルイス・カージナルス 二塁 .401 42(4) 152 17 二人目の二塁手での達成
1925年 29歳 ロジャース・ホーンスビー NL セントルイス・カージナルス 二塁 .403 39(1) 143 5 史上初の二度目の三冠王。投手も含め唯一の監督兼任での達成。
1933年 25歳 ジミー・フォックス AL フィラデルフィア・アスレチックス 一塁 .356 48 163 2 一塁手史上初の達成、初の両リーグから打撃三冠王誕生
1933年 28歳 チャック・クライン NL フィラデルフィア・フィリーズ 右翼 .368 28(1) 120 15 二人目の盗塁王経験者の達成
1934年 31歳 ルー・ゲーリッグ AL ニューヨーク・ヤンキース 一塁 .363 49(1) 165 9 二人目の一塁手での達成。三冠王の最多打点記録
1937年 25歳 ジョー・メドウィック NL セントルイス・カージナルス 左翼 .374 31 154 4 最後のNL打撃三冠王
1942年 23歳 テッド・ウィリアムズ AL ボストン・レッドソックス 左翼 .356 36 137 3
1947年 28歳 テッド・ウィリアムズ AL ボストン・レッドソックス 左翼 .343 32 114 0 メジャー最多タイ記録の二度目の三冠王
1956年 24歳 ミッキー・マントル AL ニューヨーク・ヤンキース 中堅 .353 52 130 10 スイッチヒッター史上初の達成、現在でも史上唯一。三冠王の最多本塁打記録
1966年 30歳 フランク・ロビンソン AL ボルティモア・オリオールズ 右翼 .316 49 122 8 黒人選手として史上初、現在でも史上唯一の三冠王
1967年 27歳 カール・ヤストレムスキー AL ボストン・レッドソックス 左翼 .326 44 121 10
2012年 29歳 ミゲル・カブレラ AL デトロイト・タイガース 三塁 .330 44 139 4 三塁手史上初の達成、メジャーリーグ45年ぶり

参考記録 フレッド・ダンラップ 打率.412 本塁打13 打点不明

1884年にユニオン・アソシエーションでの記録。安打数 (185)、得点 (160)、本塁打 (13)、打率 (.412)、出塁率 (.448)、長打率 (.621)はいずれもリーグトップ。ユニオン・アソシエーションにおける個人の打点数は現在も判明していないが、他の部門の成績から見て、この年のユニオン・アソシエーションの「三冠王」になっていたと思われる。

投手部門

投手5部門制覇は1884年にチャールズ・ラドボーン、1930年にレフティ・グローブが記録している。

名前が太字の選手は勝利、防御率、奪三振がMLB全体でもトップ(達成時に1リーグであった選手も太字とする)。両リーグからの達成はUAAANLなどの3リーグ以上ある場合の2リーグから誕生も含む。セーブの太字はリーグトップ。

年度 年齢 選手名 リーグ 所属球団 投球 勝利 防御率 奪三振 セーブ 備考
1877年 21歳 トミー・ボンド NL ボストン・レッドキャップス 40 2.11 170 0 初の投手三冠王
1884年 28歳 ガイ・ヘッカー AA ルイビル・カーネルズ 52 1.80 385 0 初の両リーグ(3リーグ時に2リーグ)から投手三冠王誕生、投手三冠王で唯一の首位打者獲得経験者
1884年 29歳 チャールズ・ラドボーン NL プロビデンス・グレイズ 60 1.38 441 2 勝率、セーブ数も1位、投手三冠王、MLBの最多勝利記録、投手三冠王の最多奪三振記録
1888年 31歳 ティム・キーフ NL ニューヨーク・ジャイアンツ 35 1.74 335 0
1889年 27歳 ジョン・クラークソン NL ボストン・ビーンイーターズ 49 2.73 284 1
1894年 23歳 エイモス・ルーシー NL ニューヨーク・ジャイアンツ 36 2.78 195 1
1901年 34歳 サイ・ヤング AL ボストン・アメリカンズ 33 1.62 158 0 近代野球初の投手三冠王
1905年 24歳 クリスティ・マシューソン NL ニューヨーク・ジャイアンツ 31 1.28 206 3 両リーグから投手三冠王
1905年 28歳 ルーブ・ワッデル AL フィラデルフィア・アスレチックス 27 1.48 287 0
1908年 27歳 クリスティ・マシューソン NL ニューヨーク・ジャイアンツ 37 1.43 259 5 セーブ数も1位、初の二度目の投手三冠王
1913年 25歳 ウォルター・ジョンソン AL ワシントン・セネタース 36 1.14 243 2 投手三冠王の最高防御率記録
1915年 28歳 ピート・アレクサンダー NL フィラデルフィア・フィリーズ 31 1.22 241 3
1916年 29歳 ピート・アレクサンダー NL フィラデルフィア・フィリーズ 33 1.55 167 3 初の二年連続投手三冠王、完封数の三冠王、MLB歴代最多記録
1918年 30歳 ヒッポ・ボーン NL シカゴ・カブス 22 1.74 148 0 両リーグから投手三冠王
1918年 30歳 ウォルター・ジョンソン AL ワシントン・セネタース 23 1.27 162 3
1920年 33歳 ピート・アレクサンダー NL フィラデルフィア・フィリーズ 27 1.91 173 5 最多記録の三度目の投手三冠王
1924年 33歳 ダジー・ヴァンス NL ブルックリン・ドジャース 28 2.16 262 0 両リーグから投手三冠王
1924年 36歳 ウォルター・ジョンソン AL ワシントン・セネタース 23 2.72 158 0 最多タイ記録の三度目の投手三冠王
1930年 30歳 レフティ・グローブ AL フィラデルフィア・アスレチックス 28 2.54 209 9 勝率、セーブ数もMLB全体で1位
1931年 31歳 レフティ・グローブ AL フィラデルフィア・アスレチックス 31 2.06 175 5 最多タイの二年連続投手三冠王
1934年 25歳 レフティ・ゴメス AL ニューヨーク・ヤンキース 26 2.33 158 1
1937年 28歳 レフティ・ゴメス AL ニューヨーク・ヤンキース 21 2.33 194 0
1939年 30歳 バッキー・ウォルターズ NL シンシナティ・レッズ 27 2.29 137 0
1940年 21歳 ボブ・フェラー AL クリーブランド・インディアンズ 27 2.61 261 4
1945年 24歳 ハル・ニューハウザー AL デトロイト・タイガース 25 1.81 212 2
1963年 27歳 サンディー・コーファックス NL ロサンゼルス・ドジャース 25 1.88 306 0
1965年 29歳 サンディー・コーファックス NL ロサンゼルス・ドジャース 26 2.04 382 2
1966年 30歳 サンディー・コーファックス NL ロサンゼルス・ドジャース 27 1.73 317 0 42年ぶりの最多タイの三度目の投手三冠王、35年ぶり最多タイの二年連続投手三冠王
1972年 27歳 スティーブ・カールトン NL フィラデルフィア・フィリーズ 27 1.97 310 0
1985年 20歳 ドワイト・グッデン NL ニューヨーク・メッツ 24 1.53 268 0 投手三冠王の史上最年少記録
1997年 34歳 ロジャー・クレメンス AL トロント・ブルージェイズ 21 2.05 292 0
1998年 35歳 ロジャー・クレメンス AL トロント・ブルージェイズ 20 2.65 271 0 33年ぶりの二度目の投手三冠王、32年ぶりの最多タイの二年連続投手三冠王
1999年 27歳 ペドロ・マルチネス AL ボストン・レッドソックス 23 2.07 313 0
2002年 38歳 ランディ・ジョンソン NL アリゾナ・ダイヤモンドバックス 24 2.32 334 0
2006年 27歳 ヨハン・サンタナ AL ミネソタ・ツインズ 19 2.77 245 0
2007年 26歳 ジェイク・ピービー NL サンディエゴ・パドレス 19 2.54 240 0
2011年 28歳 ジャスティン・バーランダー AL デトロイト・タイガース 24 2.40 250 0 87年ぶりの両リーグから投手三冠王
2011年 23歳 クレイトン・カーショウ NL ロサンゼルス・ドジャース 21 2.28 248 0

また、メジャーリーグベースボールの三冠王一覧も参照

韓国プロ野球

打者部門

年度 選手名 所属球団 打率 本塁打 打点 備考
1984年 李萬洙 三星ライオンズ .340 23 80
2006年 李大浩 ロッテ・ジャイアンツ .336 26 88
2010年 李大浩 ロッテ・ジャイアンツ .364 44 133 最多記録となる2度目の打者三冠王

投手部門

年度 選手名 所属球団 勝利 防御率 奪三振 備考
1986年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 24 0.99 214
1989年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 21 1.17 198
1990年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 22 1.13 189
1991年 宣銅烈 ヘテ・タイガース 19 1.55 210 最多記録となる4度目の投手三冠王
2006年 柳賢振 ハンファ・イーグルス 18 2.23 204 新人王とMVPを同時受賞
2011年 尹錫珉 起亜タイガース 17 2.45 178

台湾プロ野球

打者部門

年度 選手名 所属球団 打率 本塁打 打点 備考
1998年 ジェイ・カークパトリック 興農ブルズ .387 31 101
2017年 王柏融 Lamigoモンキーズ .407 31 101

投手部門

年度 選手名 所属球団 勝利 防御率 奪三振 備考
1999年 渡辺久信 嘉南勇士 18 2.34 201 TMLで達成
2002年 宋肇基 中信ホエールズ 16 2.13 183
2006年 林恩宇 誠泰コブラズ 17 1.73 209
2015年 マイク・ローリー 義大ライノズ 16 3.26 144
2017年 マイク・ローリー 富邦ガーディアンズ 16 2.18 154

「三冠王」という訳語の成立

日本プロ野球においては、中島治康が1938年秋のシーズンで打撃3タイトルを独占した当時は、「打撃3部門の全てで1位となった」ことへの認識が薄く、話題にはならなかった[9]。後に1953年から1958年にかけて、西鉄ライオンズ中西太が、4度にわたって打撃3タイトルの独占を僅差(1打点差や打率数厘差)で逃すという出来事があった[9]。この時期の中西を巡る報道の中で、打撃3タイトルの独占が「トリプルクラウン」として取り上げられるようになり、「トリプル冠」「三重勝」といった表現の試行を経て、1958年頃から「三冠王」という訳語がマスコミで定着した[9]。1965年に野村克也が打撃3タイトルを独占した際には、「三冠王」として大きく報道されている[9]

この事実を紹介した日本経済新聞の記事では、先に存在していた競馬の「三冠馬」という言葉の影響を受けた可能性が強いとも指摘している[9]

脚注

注釈

  1. ^ 「球聖・タイ・カップ(当時の表記法)自伝」の冒頭に掲げられているタイ・カッブの通算成績でも、最初の2シーズン分(1905年・1906年)は加算されていない。
  2. ^ このため、伊東は「今日でいう『三冠王』を初めて達成したのは、1922年ロジャース・ホーンスビーとなる」と記している。
  3. ^ 伊東によると、三冠王となった1909年シーズンのタイ・カッブの本塁打はすべて「ランニング・ホームラン」であったという。
  4. ^ 実際に古いボックス・スコアに記載されている打撃成績は、打数・得点・安打・打率のみである。その他は注釈として、個々の長打や塁打数、盗塁などが別枠に書かれていた。
  5. ^ ただし、2001年発刊の『メジャーリーグ100年「記録の達人」』(ベースボール・マガジン社 ISBN 4-583-61167-6)でのタイ・カッブの項目には、『1909年に打率.377、本塁打9、打点107で三冠王になっても、その価値は認めなかったはずである。当時は三冠王と言えば、安打数、打点、打率が1位である選手を指し、カッブは07年、08年、09年、11年にその3部門でトップに立っている。安打数に代わって本塁打が三冠王の要素になったのは1910年代初頭……(省略)』と記されており、文献や資料によって意見が異なっている。カッブの自伝では「1900年代初期」の三冠王の定義は打率・打点・得点となっており、カッブ本人は生前に当時の三冠王について打率・安打・打点であったと述べている(カッブは現役が長かったため、具体的にいつの年かは不明)。また、「ベーブ・ルース1920年に54本塁打を放つ頃までは、本塁打はあまり重要視されていなかった」という点については、すべて共通している。

参照

  1. ^ 三冠王 - 日本野球機構
  2. ^ Triple Crown Winners: Batting - MLB.com(メジャーリーグベースボール公式サイト)
  3. ^ Triple Crown Winners: Pitching - MLB.com
  4. ^ 本塁打はトップに3本差であり、この年の本塁打王は小久保裕紀ダイエー)。
  5. ^ ただし、1984年のブーマーの本塁打数はセ・リーグ本塁打王掛布雅之宇野勝と同数。1973年のは三部門すべてが両リーグを通じて単独1位だった。
  6. ^ または、奪三振の代わりに勝率を用いて三冠と呼ぶ場合もある。
  7. ^ 『プロ野球データブック・最新版』(宇佐美徹也著、講談社文庫、1995年)p.756
  8. ^ 斉藤を除く6人の所属球団はすべてそのシーズンに優勝を果たしている。
  9. ^ a b c d e 中川淳一、「ことばオンライン 『三冠王』定着の陰に伝説の強打者 」- 日本経済新聞、2011年10月18日、2017年5月18日閲覧。

参考文献