「対物ライフル」の版間の差分
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また、対戦車ライフルと同様の大口径・強装薬な[[弾薬]]を用いる[[重機関銃]]や[[機関砲]]は、その弾薬の強大な反動を本体の多大な重量が相殺してしまうため、優れた威力と射程と命中精度を持ち、単射での超長距離狙撃にも有効であった。このことは経験的に知られており、[[独ソ戦]]や[[ベトナム戦争]]において、現場[[兵士]]の即興で対人・対物狙撃用として使用した例が見られた。 |
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[[フォークランド紛争]]においてロングドン山を防衛していた[[アルゼンチンの軍事|アルゼンチン軍]]B中隊は、狙撃兵による狙撃のほか[[ブローニングM2重機関銃]]による長距離掃射を行い<ref name="Nicholas van der Bijl">{{Cite book|洋書|author=Nicholas van der Bijl|title=Nine Battles to Stanley |page=172-173|publisher=Pen & Sword Military|year=2014|asin=B00WQ4QSRW}}</ref>、[[イギリス軍]]は同じように機関銃で応射したり、[[ミラン (ミサイル)|ミラン]][[対戦車ミサイル]]を撃ち込んで陣地ごと排除したり<ref name="Pegler">{{Cite book|author=Martin Pegler |title=Sniper Rifles: From the 19th to the 21st Century |publisher=[[:en: Osprey Publishing|Osprey Publishing]] |year=2010 |isbn=9781849083980 |page=62}}([https://books.google.co.jp/books?id=vDi3CwAAQBAJ&pg=PA62&q=falklands%20remingtons%20milan#v=onepage&q=falklands%20remingtons%20milan&f=false オンライン版]、Google Books)</ref><ref name="Dougherty">{{Cite book|author=Martin J Dougherty |title=Sniper: SAS and Elite Forces Guide: Sniping skills from the world's elite forces |year=2012 |isbn=9780762782840 |publisher=[[:en:Lyons Press|Lyons Press]] |page=70}} ([https://books.google.co.jp/books?id=j1Dm6EnU7mkC&pg=PT70&dq=falklands+sniper+milan&hl=ja&sa=X#v=onepage オンライン版]、Google Books)</ref><ref name="ブルックスミス">{{Cite book|和書|title=狙撃手(スナイパー) |author1=[[:en:Peter Brookesmith|ピーター・ブルックスミス]](著) |author2=森真人(訳) |year=2000 |isbn=978-4562033621|pages=15-18}}</ref>、手りゅう弾による肉薄攻撃という対抗策を採り、多大な犠牲を払いながら作戦を遂行した<ref name="Nicholas van der Bijl" />。 |
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また、[[ミュンヘンオリンピック事件]]における[[警察]]側の作戦上の失敗などから、1キロメートル超の距離からの狙撃能力や、[[強化ガラス]]や[[航空機]]の[[キャノピー]]を貫通できる弾頭威力のある火器が必要とされることが認識され、対[[テロリズム|テロ]][[特殊部隊]]における大口径ライフルの需要が発生した。これらの理由が複合的に検討された結果、再び.50口径(12.7mm)級のライフルが開発されるようになる。 |
また、[[ミュンヘンオリンピック事件]]における[[警察]]側の作戦上の失敗などから、1キロメートル超の距離からの狙撃能力や、[[強化ガラス]]や[[航空機]]の[[キャノピー]]を貫通できる弾頭威力のある火器が必要とされることが認識され、対[[テロリズム|テロ]][[特殊部隊]]における大口径ライフルの需要が発生した。これらの理由が複合的に検討された結果、再び.50口径(12.7mm)級のライフルが開発されるようになる。 |
2020年8月2日 (日) 01:51時点における版
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対物ライフル(たいぶつライフル、英: anti-materiel rifle[1])は、かつての対戦車ライフルに相当する、主に狙撃に使われる、大口径の弾薬を使用する銃の総称、もしくは通称である。
概要
対物ライフルは、重機関銃や機関砲などに使用される大口径弾を使用する銃である。重い大口径弾の優れた弾道直進性を活かして、一般の小銃弾を使用する狙撃銃をはるかに上回る距離で狙撃を行える。
使用弾種にも依るが土嚢や壁などの障害物に隠れる敵や、軽車両に対して損傷を与える事も可能である。
対物ライフルは通常のライフルよりも遥かに大型で反動も強いため、土嚢や二脚などに設置して構えたり、射手が腹這いになり安定させる伏射で使用される。
歴史
第一次世界大戦に、ドイツは戦車を狙撃して装甲板を貫通し、内部の乗員を殺傷することが目的の火器として、歩兵用の小銃を拡大した大口径ボルトアクション式ライフルである「マウザー M1918」を開発した。M1918は単純に小銃を拡大して大口径化しただけの設計であり、その反動の大きさ等から実用面での問題も大きかったが、“戦車の装甲を貫通して内部に被害を及ぼす銃”としての威力はあり、「対戦車ライフル」という兵器の元祖となった。
以後、対戦車ライフルは各国で各種口径の製品が多種多様に開発されたが、後に戦車の装甲技術の向上などで対戦車兵器としては陳腐化し、戦車に対する効果は視察装置や無限軌道(履帯)・ハッチといった弱点に限られるようになった。それでもなお大口径・長射程の利点を活かし、遠距離での対人狙撃や、大型の弾頭(通常の小銃弾に比べ、炸薬を内蔵することができるので、小口径ながら「榴弾」として使用できる)を用いて陣地攻撃に使うといった転用が行われた。
また、対戦車ライフルと同様の大口径・強装薬な弾薬を用いる重機関銃や機関砲は、その弾薬の強大な反動を本体の多大な重量が相殺してしまうため、優れた威力と射程と命中精度を持ち、単射での超長距離狙撃にも有効であった。このことは経験的に知られており、独ソ戦やベトナム戦争において、現場兵士の即興で対人・対物狙撃用として使用した例が見られた。
フォークランド紛争においてロングドン山を防衛していたアルゼンチン軍B中隊は、狙撃兵による狙撃のほかブローニングM2重機関銃による長距離掃射を行い[2]、イギリス軍は同じように機関銃で応射したり、ミラン対戦車ミサイルを撃ち込んで陣地ごと排除したり[3][4][5]、手りゅう弾による肉薄攻撃という対抗策を採り、多大な犠牲を払いながら作戦を遂行した[2]。
なおこのフォークランド紛争での重機関銃による射撃を、単なる射撃ではなく「単発狙撃」であったとする記述が一部の和文文献で見受けられる(例えば[6][7][8])。しかしフォークランド紛争、狙撃銃、狙撃手などに関する英文の文献やその和訳書(例えば[2][3][4][5][9])では、「重機関銃による単発狙撃」についての言及は見当たらない。また「フォークランド紛争での戦訓がきっかけとなって対物ライフルが開発された」とする説も、一部の和書(例えば[6]や[8])にのみ見受けられるが、これも英文文献やその和訳書(例えば[2][3][4][5][9][10])では言及されていない。
また、ミュンヘンオリンピック事件における警察側の作戦上の失敗などから、1キロメートル超の距離からの狙撃能力や、強化ガラスや航空機のキャノピーを貫通できる弾頭威力のある火器が必要とされることが認識され、対テロ特殊部隊における大口径ライフルの需要が発生した。これらの理由が複合的に検討された結果、再び.50口径(12.7mm)級のライフルが開発されるようになる。
この種類の火器として最も実績を挙げたバレットM82が、スウェーデン軍に地雷・IED除去の目的で「対物銃」として最初納入されたため、それ以後は同クラスの弾薬を用いるライフルもそのように呼ばれるようになっていった。湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争など開けた場所が多い戦場で、アメリカ陸軍やアメリカ海兵隊がバレットM82などによる遠距離狙撃で戦果を挙げた。
戦時の対物ライフルによる対人狙撃は、ハーグ陸戦条約で禁止されている「不必要な苦痛を与える兵器」に該当している説が出ることもあるが、明示的にこれも含めて諸条約に該当している部分はない[11][12]。一部の12.7mm弾などが人体への発射を経て体内で炸裂する場合、炸裂弾を禁止したサンクトペテルブルク宣言に抵触するとされるものの、対物攻撃の場合と区別できず、規制には至っていない[13][14]。
2017年6月23日、カナダ軍特殊部隊は、狙撃兵が3540メートル離れた距離から、マクミランのライフル銃「TAC-50」を使用し、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIL)」の戦闘員を狙撃することに成功したと発表した。狙撃成功は世界最長記録となる[15]。
主な対物ライフル
その他
脚注・出典
- ^ 英語をそのままカタカナ表記/発音した「アンチマテリアルライフル」とも呼ばれる。なお、この“マテリアル”とは厳密には軍事用語のマテリエル(Materi"e"l:「軍用資材」の意で(英語版)、“マテリエル”はフランス語に基づくアメリカ英語式発音である)であり、一般的にいうところの「素材」を意味するマテリアル(materi"a"l)とは異なるものである。
- ^ a b c d Nicholas van der Bijl (2014). Nine Battles to Stanley. Pen & Sword Military. p. 172-173. ASIN B00WQ4QSRW
- ^ a b c Martin Pegler (2010). Sniper Rifles: From the 19th to the 21st Century. Osprey Publishing. p. 62. ISBN 9781849083980(オンライン版、Google Books)
- ^ a b c Martin J Dougherty (2012). Sniper: SAS and Elite Forces Guide: Sniping skills from the world's elite forces. Lyons Press. p. 70. ISBN 9780762782840 (オンライン版、Google Books)
- ^ a b c ピーター・ブルックスミス(著)、森真人(訳)『狙撃手(スナイパー)』2000年、15-18頁。ISBN 978-4562033621。
- ^ a b 床井雅美『アンダーグラウンド・ウェポン 非公然兵器のすべて』日本出版社、1993年、135頁。ISBN 4-89048-320-9。
- ^ あかぎひろゆき『40文字でわかる 銃の常識・非常識: 映画の主人公の銃の撃ち方は本当に正しい?(Kindle版)』Panda Publishing、2015年。ASIN B00TG26T6C。(オンライン版、Google Books)
- ^ a b 大波篤司、福地貴子「No.037 コンクリートの壁をも撃ち抜く狙撃銃とは?」『図解 スナイパー』新紀元社、2016年、83頁。ISBN 978-4775314333。(オンライン版、Google Books)
- ^ a b パット・ファレイ、マーク・スパイサー(著)、大槻敦子(訳)「フォークランド戦争の狙撃手」『図説 狙撃手大全』原書房、2011年、262-271頁。ISBN 978-4562046737。
- ^ Chris McNab (2016). The Barrett Rifle: Sniping and anti-materiel rifles in the War on Terror. Osprey Publishing. ISBN 978-1472811011
- ^ Maj W. Hays Parks (1988年). “Killing A Myth”. Marine Corps Association. 2016年8月7日閲覧。
- ^ (English) Guns of Special Forces 2001 – 2015. Casemate Publishers. (2016). p. P188. ISBN 9781473881013
- ^ ICRC. “Rule 78. Exploding Bullets,Customary IHL”. 2016年8月7日閲覧。
- ^ ICRC. “Practice Relating to Rule 78. Exploding Bullets,Customary IHL”. 2016年8月7日閲覧。
- ^ カナダ兵、3.5キロ先のISIS戦闘員狙撃CNN news(2017年6月23日), 2017年6月23日閲覧。
- ^ a b これらは厳密にはグレネード弾を使用する自動擲弾発射機であるが、狙撃を前提として使用され用途も似通っているため対物ライフルとして記載する。