「Web Server Gateway Interface」の版間の差分
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def application(environ, start_response): |
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start_response('200 OK', [('Content-Type', 'text/plain')]) |
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2020年7月5日 (日) 22:57時点における版
Web Server Gateway Interface (WSGI; ウィスキー[1][2]) は、プログラミング言語Pythonにおいて、WebサーバとWebアプリケーション(もしくはWebアプリケーションフレームワーク)を接続するための、標準化されたインタフェース定義である。また、WSGIから着想を得て、他の言語でも同様のインタフェースが作られた。
基本的な発想
過去において、Pythonに多種のWebアプリケーションフレームワークが存在することは、PythonでWebアプリケーションを開発しようとする者にとって問題になっていた。というのも、Webアプリケーションフレームワークを選択することによって、使用できるWebサーバが制限されてしまったり、その逆の制限が発生したりしたためである。Pythonで書かれたWebアプリケーションは、FastCGI, mod_python, CGI, さらにはWebサーバ独自のAPIを使ったものなど、様々な方法で実装されていた。
この問題を解決するためにWSGIが考案された。WSGIは、Pythonにおける、WebアプリケーションとWebサーバを接続する標準仕様を定めるものである。これによって、WSGIに対応したWebアプリケーション(やフレームワーク)は、WSGIに対応した任意のWebサーバ上で運用できるようになる。つまり、アプリケーション側がWSGIに対応していれば、アプリケーションのコードに修正を加えることなく、WSGI対応サーバを自由に選択することができ、高い可搬性(ポータビリティ)が得られる。
仕様の概要
WSGIには二つの側 — サーバ側とアプリケーション側が存在する。WSGIは、リクエスト情報・レスポンスヘッダ・レスポンス本文を、両者の間でどのようにやりとりするかをPythonのAPIとして定義している。
Webサーバにリクエストが来ると、次のような流れでやりとりが行なわれる:
- サーバ側が、クライアントからリクエストを受ける。
- サーバ側は、アプリケーション側がエントリポイントとして提供するcallableオブジェクト(関数やクラスインスタンスなど
__call__
が定義されたオブジェクト)を呼び出して、その引数として環境変数と1つのコールバック用callableオブジェクトを渡す。 - アプリケーション側は、このコールバック用callableオブジェクトを呼び出すことでステータスコードとレスポンスヘッダをサーバ側に伝え、さらに本文を生成するiterableオブジェクト(イテレータやリストなど)を戻り値として返す。
- サーバ側は、これらを用いてクライアントへのレスポンスを生成する。
WSGIはミドルウェアの考え方も提供できる。WSGIミドルウェアは、サーバ側とアプリケーション側のWSGIインタフェースを実装しているため、WSGIサーバとWSGIアプリケーションの"中間に"挿入できる。ミドルウェアはサーバーの視点からはアプリケーションとして振る舞い、アプリケーションの視点からはサーバーとして振る舞う。
"ミドルウェア"は、例えば以下のような機能を提供できる:
- 目標の URL にもとづき、環境変数を適宜変更し、リクエストを別のアプリケーションのオブジェクトに回送する
- 複数のアプリケーション(やフレームワーク)が同じプロセスの中に同居して動作できるようにする
- リクエストとレスポンスをネットワーク上で転送することによる負荷分散と遠隔処理
- コンテンツの後処理の実行 — XSLスタイルシートを適用するなど
WSGIアプリケーションの例
既存のWSGI対応フレームワークを使用する場合は意識する必要はないが、ゼロからWSGIアプリケーションを作る場合は以下の例(Hello Worldアプリケーション)のようにする:
def application(environ, start_response):
start_response('200 OK', [('Content-Type', 'text/plain')])
yield b'Hello World\n'
解説:
- WSGIアプリケーションは、callableオブジェクト (
__call__
が定義されたオブジェクト) として定義する(この例ではapplication
関数)。このオブジェクトが呼び出される際、引数environ
としてCGIと同様の環境変数が渡され、引数start_response
として、ステータスコードとレスポンスヘッダを受け取るcallableオブジェクトが渡される。 start_response
を呼び出して、ステータスコードとレスポンスヘッダを設定する。- WSGIアプリケーションの戻り値は、本文を生成するiteratableオブジェクトである必要がある。この例ではPythonのジェネレータ機能を使ってそれを実現している。
WSGI 互換のWebアプリケーションフレームワーク
WSGIをサポートするWebアプリケーションフレームワークは多数存在する。その一例を示す:
- BlueBream
- Bottle
- CherryPy
- Django
- Flask
- Google App Engine
- Pylons
- Pyramid
- Tornado (www.tornadoweb.org)
- Trac (trac.edgewall.org)
- TurboGears
- web.py [1]
- web2py
- Werkzeug
- Zope (バージョン3以降)
WSGI対応サーバ
WSGIサーバ(WSGIアプリケーションコンテナ)は、WSGIアプリケーションを常駐させ、HTTPクライアントからリクエストを受け取るごとに、WSGIアプリケーションのcallableオブジェクトを呼び出す。これによって、クライアントからのリクエストがアプリケーションに転送される。
WSGIアプリケーションコンテナの例としては、uWSGI, Gunicorn, Apacheモジュール (mod_wsgi, mod_pythonなど), Microsoft IIS(isapi-wsgi, PyISAPIe, ASPゲートウェイを使用)などがある。
さらに、WSGIアプリケーションをラップすることで、FastCGIやSCGI環境で動作させることもできるし、古典的なCGIとして動作させることもできる(例えば、Python標準ライブラリに含まれるwsgiref.handlers.CGIHandler
が利用できる)。
他のプログラミング言語への影響
WSGIから着想を得て、他のプログラミング言語にも同様のインターフェイスが作られた。以下はその一例である。
- PSGI (Perl Web Server Gateway Interface)
- Rack (Ruby Web Server Interface)
- SCGI
- Ring (Clojure)
- WAI (Haskell, Web Application Interface)
WSGIとPython 3
Python 3において文字列とバイト列が分離されたことはWSGIにとって問題となった。HTTPヘッダのデータはテキストとして扱われたりバイナリとして扱われたりするが、WSGIはヘッダデータを文字列として扱っている。Python 2ではテキストもバイナリも「文字列」として扱っていたためこれで問題がなかったが、Python 3ではバイナリはbytes型で扱うことになり、「文字列」とはUnicode文字列のことを表すようになった。この問題に対処した更新版のWSGI仕様は、PEP 3333として公開されている。
再考されたWSGI仕様として Web3 というものも提案されており、こちらはPEP 444 として公開されている。Web3は、互換性のないWSGIの派生であり、Python 2.6以降および3.1以降で動作するように設計されている。
脚注
- ^ “An Introduction to Web Programming with WSGI”. 2007年11月閲覧。
- ^ Edge, Jake (2019年9月). “Mucking about with microframeworks”. LWN .