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「高階関数」の版間の差分

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以下に示す関数<code lang="scheme">apply_2_3</code>は、与えられた関数に引数2と3を渡して呼び出し、その返り値を返すものである。関数定義であるために、<code lang="scheme">f</code> は評価はされても、式は呼び出されず、<code lang="scheme">(apply_2_3 add)</code> や <code lang="scheme">(apply_2_3 mul)</code> のように関数そのものを引数として渡して呼び出すことで評価される。
以下に示す関数<code lang="scheme">apply_2_3</code>は、与えられた関数に引数2と3を渡して呼び出し、その返り値を返すものである。関数定義であるために、<code lang="scheme">f</code> は評価はされても、式は呼び出されず、<code lang="scheme">(apply_2_3 add)</code> や <code lang="scheme">(apply_2_3 mul)</code> のように関数そのものを引数として渡して呼び出すことで評価される。


<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(define (add x y) (+ x y))
(define (add x y) (+ x y))
(define (mul x y) (* x y))
(define (mul x y) (* x y))
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(apply_2_3 add) ; => (add 2 3) => 5
(apply_2_3 add) ; => (add 2 3) => 5
(apply_2_3 mul) ; => (mul 2 3) => 6
(apply_2_3 mul) ; => (mul 2 3) => 6
</syntaxhighlight>
</source>


=== カリー化 ===
=== カリー化 ===
{{Main|カリー化}}
{{Main|カリー化}}
複数の引数をとる関数を1変数関数に置き換えることをカリー化と呼ぶ。例えば二つの数を足し合わせる関数 <code lang="scheme">add</code> は以下のようになる。
複数の引数をとる関数を1変数関数に置き換えることをカリー化と呼ぶ。例えば二つの数を足し合わせる関数 <code lang="scheme">add</code> は以下のようになる。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
; 通常の定義,呼び出し
; 通常の定義,呼び出し
(define (add x y) (+ x y))
(define (add x y) (+ x y))
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(define (add x) (lambda (y) (+ x y)))
(define (add x) (lambda (y) (+ x y)))
((add 2) 3) ;=> 5
((add 2) 3) ;=> 5
</syntaxhighlight>
</source>


組み込みの関数が最初からカリー化されている言語がある。これは、関数呼び出しが常に1引数を取る関数を返すと定義するのと同じである(つまり n 引数関数を、n 個の引数の[[直積]]を取る関数とするのではなく、1 引数の高階関数を n 個並べたような型で定義する。)
組み込みの関数が最初からカリー化されている言語がある。これは、関数呼び出しが常に1引数を取る関数を返すと定義するのと同じである(つまり n 引数関数を、n 個の引数の[[直積]]を取る関数とするのではなく、1 引数の高階関数を n 個並べたような型で定義する。)


例えば {{lang|en|[[Haskell]]}} において、
例えば {{lang|en|[[Haskell]]}} において、
<source lang="haskell">
<syntaxhighlight lang="haskell">
(2 +)
(2 +)
</syntaxhighlight>
</source>
と記述すると、これは先ほどの <code lang="scheme">(add 2)</code> と同じく、2を足す関数になる。関数 <code lang="haskell">+</code> が既にカリー化されているため、1 引数を適用するだけで関数として機能する。以下は実行例。
と記述すると、これは先ほどの <code lang="scheme">(add 2)</code> と同じく、2を足す関数になる。関数 <code lang="haskell">+</code> が既にカリー化されているため、1 引数を適用するだけで関数として機能する。以下は実行例。
<source lang="haskell">
<syntaxhighlight lang="haskell">
Prelude> 2 + 3
Prelude> 2 + 3
5
5
Prelude> (2 +) 3
Prelude> (2 +) 3
5
5
</syntaxhighlight>
</source>


=== filter ===
=== filter ===
リスト中の各要素をおのおの引数として渡し、引数として渡された関数を呼び出し、その返り値が真なら返り値のリストに残し、偽なら排除される。排除したい要素に対して偽値を返す、述語のような役割の関数を与えて利用する。
リスト中の各要素をおのおの引数として渡し、引数として渡された関数を呼び出し、その返り値が真なら返り値のリストに残し、偽なら排除される。排除したい要素に対して偽値を返す、述語のような役割の関数を与えて利用する。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(filter func list1)
(filter func list1)
</syntaxhighlight>
</source>


例えば、リスト'(1 2 -3 -4 5)から、正の数のみを抽出するには以下のようにする<ref>http://www.shido.info/lisp/scheme8.html</ref>。
例えば、リスト'(1 2 -3 -4 5)から、正の数のみを抽出するには以下のようにする<ref>http://www.shido.info/lisp/scheme8.html</ref>。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(filter positive? '(1 2 -3 -4 5))
(filter positive? '(1 2 -3 -4 5))
;=> '(1 2 5)
;=> '(1 2 5)
</syntaxhighlight>
</source>


=== zip ===
=== zip ===
複数のリストからタプルを要素とする1つのリストを生成する。
複数のリストからタプルを要素とする1つのリストを生成する。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(zip list1 list2 ... listn)
(zip list1 list2 ... listn)
</syntaxhighlight>
</source>


例えば、'(1 2 3)と'(a b c)に対してzipを行うと以下のようになる。
例えば、'(1 2 3)と'(a b c)に対してzipを行うと以下のようになる。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(zip '(1 2 3) '(a b c))
(zip '(1 2 3) '(a b c))
;=> '((1 a) (2 b) (3 c))
;=> '((1 a) (2 b) (3 c))
</syntaxhighlight>
</source>


これは引数を再構成するのに便利だが、高階関数ではない。
これは引数を再構成するのに便利だが、高階関数ではない。
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=== unzip ===
=== unzip ===
zipの逆操作。タプルを要素とする1つのリストから複数のリストを生成する。
zipの逆操作。タプルを要素とする1つのリストから複数のリストを生成する。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(unzip list)
(unzip list)
</syntaxhighlight>
</source>


以下のように動作する:
以下のように動作する:
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(unzip '((1 a) (2 b) (3 c)))
(unzip '((1 a) (2 b) (3 c)))
;=> '(1 2 3) '(a b c)
;=> '(1 2 3) '(a b c)
</syntaxhighlight>
</source>


ただし、実際には単一の戻り値しか返せない処理系・言語の場合、この戻り値のタプルとして返すことがある。その場合は以下のようになる。
ただし、実際には単一の戻り値しか返せない処理系・言語の場合、この戻り値のタプルとして返すことがある。その場合は以下のようになる。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(unzip '((a b c) (s t u) (x y z) (1 2 3)))
(unzip '((a b c) (s t u) (x y z) (1 2 3)))
;=> ((a s x 1) (b t y 2) (c u z 3))
;=> ((a s x 1) (b t y 2) (c u z 3))
(unzip '((a s x 1) (b t y 2) (c u z 3)))
(unzip '((a s x 1) (b t y 2) (c u z 3)))
;=> ((a b c) (s t u) (x y z) (1 2 3))
;=> ((a b c) (s t u) (x y z) (1 2 3))
</syntaxhighlight>
</source>


これも引数の再構成に便利だが、高階関数ではない。
これも引数の再構成に便利だが、高階関数ではない。
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=== map ===
=== map ===
''map''関数はリスト構造の各要素に対して順々に与えられた関数を処理していくものである。[[関数プログラミング]]ではないパラダイムの言語でも実装されていることがある。
''map''関数はリスト構造の各要素に対して順々に与えられた関数を処理していくものである。[[関数プログラミング]]ではないパラダイムの言語でも実装されていることがある。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(map func list0 list1 ... listN)
(map func list0 list1 ... listN)
</syntaxhighlight>
</source>


例えば、リスト'(1 2 3)の各要素に対して1を足したリストを得たい場合は以下のようにすれば良い。
例えば、リスト'(1 2 3)の各要素に対して1を足したリストを得たい場合は以下のようにすれば良い。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(map (lambda (n) (+ 1 n)) '(1 2 3))
(map (lambda (n) (+ 1 n)) '(1 2 3))
;=> '(2 3 4)
;=> '(2 3 4)
</syntaxhighlight>
</source>


=== for-each ===
=== for-each ===
115行目: 115行目:
=== fold ===
=== fold ===
''fold'' 関数は{{仮リンク|重畳関数|label=重畳|preserve=1|en|Fold (higher-order function)}}、堆積、畳み込みや折り畳みなどと呼ばれ、英語では''reduce''、''inject''とも表現される。foldはリストの各要素に対して与えられた関数を適用する。
''fold'' 関数は{{仮リンク|重畳関数|label=重畳|preserve=1|en|Fold (higher-order function)}}、堆積、畳み込みや折り畳みなどと呼ばれ、英語では''reduce''、''inject''とも表現される。foldはリストの各要素に対して与えられた関数を適用する。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(fold func returns-first list)
(fold func returns-first list)
</syntaxhighlight>
</source>


例えば、リスト'(1 2 3)の各要素の総和を取るには以下のようにできる。
例えば、リスト'(1 2 3)の各要素の総和を取るには以下のようにできる。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(fold + 0 '(1 2 3))
(fold + 0 '(1 2 3))
;=> 4
;=> 4
</syntaxhighlight>
</source>


右方向の畳み込み(''foldr'')と左方向の畳み込み(''foldl'')があり、[[プログラミング言語|言語]]によっては最初から同様の機能が組み込まれていることがある(詳しくは[[:en:Fold (higher-order function)|foldの英語版記事]]の該当項目を参照)。
右方向の畳み込み(''foldr'')と左方向の畳み込み(''foldl'')があり、[[プログラミング言語|言語]]によっては最初から同様の機能が組み込まれていることがある(詳しくは[[:en:Fold (higher-order function)|foldの英語版記事]]の該当項目を参照)。
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{{col-2}}
{{col-2}}
[[Image:right-fold-transformation.png|frame]]
[[Image:right-fold-transformation.png|frame]]
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(fold-right + 0 '(1 2 3))
(fold-right + 0 '(1 2 3))
;=> 6
;=> 6
137行目: 137行目:
;=> '(1 2 3 0)
;=> '(1 2 3 0)
; (cons 1 (cons 2 (cons 3 '(0))))と同じ
; (cons 1 (cons 2 (cons 3 '(0))))と同じ
</syntaxhighlight>
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{{col-2}}
{{col-2}}
[[Image:left-fold-transformation.png|frame]]
[[Image:left-fold-transformation.png|frame]]
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(fold-left + 0 '(1 2 3))
(fold-left + 0 '(1 2 3))
;=> 6
;=> 6
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;=> '((((0) . 1) . 2) . 3)
;=> '((((0) . 1) . 2) . 3)
;(cons (cons (cons '(0) 1) 2 ) 3) と同じ
;(cons (cons (cons '(0) 1) 2 ) 3) と同じ
</syntaxhighlight>
</source>
{{col-end}}
{{col-end}}


=== unfold ===
=== unfold ===
foldの逆変換。すなわち初期値から何らかの動作を行なってリストを生成する関数である。例えるならば[[漸化式]]を[[数列]]に直す操作に相当する。
foldの逆変換。すなわち初期値から何らかの動作を行なってリストを生成する関数である。例えるならば[[漸化式]]を[[数列]]に直す操作に相当する。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(unfold condition func iterate-update seed)
(unfold condition func iterate-update seed)
</syntaxhighlight>
</source>
seedにfuncを適用しfuncの戻り値をリストへ格納し、seedをiterate-updateで更新してfuncを適用しfuncの戻り値をリストへ格納し、…といった操作をseedがconditionを真にするまで繰り返す。
seedにfuncを適用しfuncの戻り値をリストへ格納し、seedをiterate-updateで更新してfuncを適用しfuncの戻り値をリストへ格納し、…といった操作をseedがconditionを真にするまで繰り返す。


例えば、要素4からリスト'(3 2 1)を生成するには、以下のようにする。
例えば、要素4からリスト'(3 2 1)を生成するには、以下のようにする。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(unfold zero? (lambda(x)x) (lambda (n) (- n 1)) 3)
(unfold zero? (lambda(x)x) (lambda (n) (- n 1)) 3)
;=> '(3 2 1)
;=> '(3 2 1)
</syntaxhighlight>
</source>


=== 直積 ===
=== 直積 ===
169行目: 169行目:
=== prefix scan ===
=== prefix scan ===
{{仮リンク|prefix scan|en|prefix sum}}(あるいは単にscan)とは、リストの各要素に対して繰り返し演算を行い累積した計算結果のリストを返す高階関数である。schemeでの実装例は以下のようになる<ref>{{cite web|title=Functional Programming - Implementing Scan (Prefix Sum) using Fold|url=http://stackoverflow.com/questions/2243812/functional-programming-implementing-scan-prefix-sum-using-fold|accessdate=2014-9-14}}</ref>。
{{仮リンク|prefix scan|en|prefix sum}}(あるいは単にscan)とは、リストの各要素に対して繰り返し演算を行い累積した計算結果のリストを返す高階関数である。schemeでの実装例は以下のようになる<ref>{{cite web|title=Functional Programming - Implementing Scan (Prefix Sum) using Fold|url=http://stackoverflow.com/questions/2243812/functional-programming-implementing-scan-prefix-sum-using-fold|accessdate=2014-9-14}}</ref>。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(define scan
(define scan
(lambda (func seq)
(lambda (func seq)
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(list (car seq))
(list (car seq))
(cdr seq)))))
(cdr seq)))))
</syntaxhighlight>
</source>


prefix scanの中で、特に和の演算はprefix sum, cumulative sumとも呼ばれる。ここでは先ほど定義した<code>scan</code>を使用して'(1 2 3 4 5 6 7 8 9 10)のprefix sumを求める例を示す。
prefix scanの中で、特に和の演算はprefix sum, cumulative sumとも呼ばれる。ここでは先ほど定義した<code>scan</code>を使用して'(1 2 3 4 5 6 7 8 9 10)のprefix sumを求める例を示す。
<source lang="scheme">
<syntaxhighlight lang="scheme">
(scan + '(1 2 3 4 5 6 7 8 9 10))
(scan + '(1 2 3 4 5 6 7 8 9 10))
;=> '(1 3 6 10 15 21 28 36 45 55)
;=> '(1 3 6 10 15 21 28 36 45 55)
</syntaxhighlight>
</source>


prefix scanは[[並列アルゴリズム]]、[[GPGPU]]の分野で研究される。またprefix sumの特殊系として{{仮リンク|segmented scan|en|segmented scan}}もある。
prefix scanは[[並列アルゴリズム]]、[[GPGPU]]の分野で研究される。またprefix sumの特殊系として{{仮リンク|segmented scan|en|segmented scan}}もある。
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例えばCで関数を引数にとる関数を書くと次のようになる。
例えばCで関数を引数にとる関数を書くと次のようになる。
<source lang="c">
<syntaxhighlight lang="c">
typedef int (*Function) (int, int) ;
typedef int (*Function) (int, int) ;


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return 0;
return 0;
}
}
</syntaxhighlight>
</source>
一方、関数を戻り値とする関数を書くことは難しいため、[[クロージャ]]を高階関数に渡すことができず、便利に使えない。高階関数が別の引数も受け付けるようにすれば、環境を閉じ込めることは不可能でないが、汎用性が低くなってしまう。
一方、関数を戻り値とする関数を書くことは難しいため、[[クロージャ]]を高階関数に渡すことができず、便利に使えない。高階関数が別の引数も受け付けるようにすれば、環境を閉じ込めることは不可能でないが、汎用性が低くなってしまう。



2020年7月5日 (日) 22:45時点における版

高階関数(こうかいかんすう、: higher-order function)とは、第一級関数をサポートしているプログラミング言語において少なくとも以下のうち1つを満たす関数である。

  • 関数(手続き)を引数に取る
  • 関数を返す

概要

高階関数は厳密には第一級関数をサポートしているプログラミング言語において定義される。C言語Pascalでは、関数へのポインタを利用して高階関数を模倣することができるが、関数ポインタによって第一級関数をサポートしているとみなされてはいない。高階関数は主に関数型言語やその背景理論であるラムダ計算において多用される。

また、ある関数(手続き)の引数となる関数(手続き)のことを関数引数[1]手続き引数[2]と呼ぶこともある。

種類

ここでは処理系に実装されていることが多いものだけをあげているが、高階関数も普通の関数と同様に、プログラマが自由に定義して利用できるということを特記しておく。

関数を呼び出す関数

以下に示す関数apply_2_3は、与えられた関数に引数2と3を渡して呼び出し、その返り値を返すものである。関数定義であるために、f は評価はされても、式は呼び出されず、(apply_2_3 add)(apply_2_3 mul) のように関数そのものを引数として渡して呼び出すことで評価される。

(define (add x y) (+ x y))
(define (mul x y) (* x y))
(define (apply_2_3 f) (f 2 3))

(apply_2_3 add) ; => (add 2 3) => 5
(apply_2_3 mul) ; => (mul 2 3) => 6

カリー化

複数の引数をとる関数を1変数関数に置き換えることをカリー化と呼ぶ。例えば二つの数を足し合わせる関数 add は以下のようになる。

; 通常の定義,呼び出し
(define (add x y) (+ x y))
(add 2 3) ;=> 5
; カリー化を施した定義,呼び出し
(define (add x) (lambda (y) (+ x y)))
((add 2) 3) ;=> 5

組み込みの関数が最初からカリー化されている言語がある。これは、関数呼び出しが常に1引数を取る関数を返すと定義するのと同じである(つまり n 引数関数を、n 個の引数の直積を取る関数とするのではなく、1 引数の高階関数を n 個並べたような型で定義する。)

例えば Haskell において、

(2 +)

と記述すると、これは先ほどの (add 2) と同じく、2を足す関数になる。関数 + が既にカリー化されているため、1 引数を適用するだけで関数として機能する。以下は実行例。

Prelude> 2 + 3
5
Prelude> (2 +) 3
5

filter

リスト中の各要素をおのおの引数として渡し、引数として渡された関数を呼び出し、その返り値が真なら返り値のリストに残し、偽なら排除される。排除したい要素に対して偽値を返す、述語のような役割の関数を与えて利用する。

(filter func list1)

例えば、リスト'(1 2 -3 -4 5)から、正の数のみを抽出するには以下のようにする[3]

(filter  positive? '(1 2 -3 -4 5))
;=> '(1 2 5)

zip

複数のリストからタプルを要素とする1つのリストを生成する。

(zip list1 list2 ... listn)

例えば、'(1 2 3)と'(a b c)に対してzipを行うと以下のようになる。

(zip '(1 2 3) '(a b c))
;=> '((1 a) (2 b) (3 c))

これは引数を再構成するのに便利だが、高階関数ではない。

unzip

zipの逆操作。タプルを要素とする1つのリストから複数のリストを生成する。

(unzip list)

以下のように動作する:

(unzip '((1 a) (2 b) (3 c)))
;=> '(1 2 3) '(a b c)

ただし、実際には単一の戻り値しか返せない処理系・言語の場合、この戻り値のタプルとして返すことがある。その場合は以下のようになる。

(unzip '((a b c) (s t u) (x y z) (1 2 3)))
;=> ((a s x 1) (b t y 2) (c u z 3))
(unzip '((a s x 1) (b t y 2) (c u z 3)))
;=> ((a b c) (s t u) (x y z) (1 2 3))

これも引数の再構成に便利だが、高階関数ではない。

map

map関数はリスト構造の各要素に対して順々に与えられた関数を処理していくものである。関数プログラミングではないパラダイムの言語でも実装されていることがある。

(map func list0 list1 ... listN)

例えば、リスト'(1 2 3)の各要素に対して1を足したリストを得たい場合は以下のようにすれば良い。

(map (lambda (n) (+ 1 n)) '(1 2 3))
;=> '(2 3 4)

for-each

mapと同じように動くが、結果を返さない。つまり、出力など、副作用を期待して利用する。

fold

fold 関数は重畳英語版、堆積、畳み込みや折り畳みなどと呼ばれ、英語ではreduceinjectとも表現される。foldはリストの各要素に対して与えられた関数を適用する。

(fold func returns-first list)

例えば、リスト'(1 2 3)の各要素の総和を取るには以下のようにできる。

(fold + 0 '(1 2 3))
;=> 4

右方向の畳み込み(foldr)と左方向の畳み込み(foldl)があり、言語によっては最初から同様の機能が組み込まれていることがある(詳しくはfoldの英語版記事の該当項目を参照)。

unfold

foldの逆変換。すなわち初期値から何らかの動作を行なってリストを生成する関数である。例えるならば漸化式数列に直す操作に相当する。

(unfold condition func iterate-update seed)

seedにfuncを適用しfuncの戻り値をリストへ格納し、seedをiterate-updateで更新してfuncを適用しfuncの戻り値をリストへ格納し、…といった操作をseedがconditionを真にするまで繰り返す。

例えば、要素4からリスト'(3 2 1)を生成するには、以下のようにする。

(unfold zero? (lambda(x)x) (lambda (n) (- n 1)) 3)
;=> '(3 2 1)

直積

複数のリストそれぞれを要素とするタプルを返す関数と見た時、直積集合を求める演算も高階関数と考えられる。R言語のouter関数などで実装されている。

prefix scan

prefix scan英語版(あるいは単にscan)とは、リストの各要素に対して繰り返し演算を行い累積した計算結果のリストを返す高階関数である。schemeでの実装例は以下のようになる[4]

(define scan
  (lambda (func seq)
    (reverse 
      (fold-left 
       (lambda (l e) (cons (func e (car l)) l))
       (list (car seq))
       (cdr seq)))))

prefix scanの中で、特に和の演算はprefix sum, cumulative sumとも呼ばれる。ここでは先ほど定義したscanを使用して'(1 2 3 4 5 6 7 8 9 10)のprefix sumを求める例を示す。

(scan + '(1 2 3 4 5 6 7 8 9 10))
;=> '(1 3 6 10 15 21 28 36 45 55)

prefix scanは並列アルゴリズムGPGPUの分野で研究される。またprefix sumの特殊系としてsegmented scan英語版もある。

関数型言語以外の言語と高階関数

関数型言語ではなくても、高階関数のような処理を行える場合がある。CFortranにおける関数ポインタなどがその一例である。これらは言語にカリー化の機能やクロージャの機能がないという、制限はある。C#, C++, Tcl など、関数型言語でなくてもラムダ式がサポートされている言語は多い。

例えばCで関数を引数にとる関数を書くと次のようになる。

typedef int (*Function) (int, int) ;

int foldl (int values [], int values_length, Function f, int identityElement)
  {
  int folded = identityElement ;
  for (int i=0 ; i<values_length ; ++i)
    {folded = (*f) (folded, values [i]) ;} /* 左結合 */
  return folded ;
  }

int foldr (int values [], int values_length, Function f, int identityElement)
  {
  int folded = identityElement ;
  for (int i=values_length-1 ; 0<=i ; --i)
    {folded = (*f) (values [i], folded) ;} /* 右結合 */
  return folded ;
  }

/* 加算する関数 */
int add (int x, int y) {return x + y ;}

/* 乗算する関数 */
int mul (int x, int y) {return x * y ;}

/* 使用例 */
int main (void)
  {
  int values [5] = {31, 4, 159, 26, 53} ;
  int sum     = foldl (values, sizeof values/sizeof (int), add, 0) ;
  int product = foldl (values, sizeof values/sizeof (int), mul, 1) ;
  return 0;
  }

一方、関数を戻り値とする関数を書くことは難しいため、クロージャを高階関数に渡すことができず、便利に使えない。高階関数が別の引数も受け付けるようにすれば、環境を閉じ込めることは不可能でないが、汎用性が低くなってしまう。

脚注

出典

  1. ^ : functional argument/parameter
  2. ^ : procedural argument/parameter
  3. ^ http://www.shido.info/lisp/scheme8.html
  4. ^ Functional Programming - Implementing Scan (Prefix Sum) using Fold”. 2014年9月14日閲覧。

関連項目