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「薬物乱用頭痛」の版間の差分

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急性期頭痛薬を乱用することで、痛みの症状が増悪するというのは様々な[[疼痛]]疾患の中でも稀である。[[関節リウマチ]]の治療では大量に鎮痛薬を使用するが新規の頭痛が問題になることは稀であり、片頭痛または緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛を起こす素因と考えられている。中枢性[[感作]]が関与するという意見もある<ref>Lancet Neurol. 2004 Aug;3(8):475-83. PMID 15261608</ref>。
急性期頭痛薬を乱用することで、痛みの症状が増悪するというのは様々な[[疼痛]]疾患の中でも稀である。[[関節リウマチ]]の治療では大量に鎮痛薬を使用するが新規の頭痛が問題になることは稀であり、片頭痛または緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛を起こす素因と考えられている。中枢性[[感作]]が関与するという意見もある<ref>Lancet Neurol. 2004 Aug;3(8):475-83. PMID 15261608</ref>。


[[カフェイン]]、<!--バルビツール酸と書いてあるが市販できない-->[[ブロムワレリル尿素]]、[[アリルイソプロピルアセチル尿素]]などが原因となる場合があり、その[[薬物依存症|依存]]や離脱症状が薬物乱用頭痛の発症に寄与する<ref name="内科学会2007">{{Cite journal |和書|author=柴田護、鈴木則宏|date=2007|title=III.薬物副作用による神経・筋障害 5.薬物乱用頭痛 |url=https://doi.org/10.2169/naika.96.1634|journal=日本内科学会雑誌|volume=96|issue=8|pages=1634-1640|doi=10.2169/naika.96.1634}}</ref>。
[[カフェイン]]、<!--バルビツール酸と書いてあるが市販できない-->[[ブロムワレリル尿素]]、[[アリルイソプロピルアセチル尿素]]などが原因となる場合があり、その[[薬物依存症|依存]]や離脱症状が薬物乱用頭痛の発症に寄与する<ref name="内科学会2007">{{Cite journal |和書|author=柴田護、鈴木則宏|date=2007|title=III.薬物副作用による神経・筋障害 5.薬物乱用頭痛 |url=https://www.jstage.jst.go.jp/article/naika/96/8/96_1634/_article/-char/ja/|format=pdf|journal=日本内科学会雑誌|volume=96|issue=8|pages=1634-1640|doi=10.2169/naika.96.1634}}</ref>。


== 症状 ==
== 症状 ==

2020年2月3日 (月) 14:08時点における版

薬物乱用頭痛
概要
診療科 神経学
分類および外部参照情報
ICD-10 G44.41, G44.83

薬物乱用頭痛 (やくぶつらんようずつう, 略称MOH:Medication overuse headaches)は片頭痛緊張型頭痛の患者が急性期頭痛薬を乱用することによって頭痛頻度や持続時間が増加して慢性的に頭痛を呈するようになった状態と定義される[1][2]薬物乱用が是正されない限り頭痛は持続する。原因薬物を中止すると頭痛は改善し、薬物乱用以前の頭痛に戻ると考えられている。薬物の乱用とは単一成分の鎮痛薬ならば月に15日以上の使用、それ以外の鎮痛薬ならば月に10回以上の使用である。

原因となる頭痛薬はアセトアミノフェンNSAIDsなどの鎮痛薬トリプタン (医薬品)、複合鎮痛薬(鎮痛薬とカフェインの合剤など)、エルゴタミン製剤、オピオイドバルビツール酸などがある[3]

疫学

一般人口における薬物乱用頭痛に有病率は疑い例を含めると約1~2%と推定されている[1]。3番目に多い頭痛である[2]。男女比は 1 : 3~4 である[1]。高齢者や児童青年では有病率は低下する[1]。地域差が見られ、米国では慢性頭痛患者の23%が日常的に薬物を使うが、一方でノルウェーでは9%である[1]

病態生理

急性期頭痛薬を乱用することで、痛みの症状が増悪するというのは様々な疼痛疾患の中でも稀である。関節リウマチの治療では大量に鎮痛薬を使用するが新規の頭痛が問題になることは稀であり、片頭痛または緊張型頭痛の病態そのものが薬物乱用頭痛を起こす素因と考えられている。中枢性感作が関与するという意見もある[4]

カフェインブロムワレリル尿素アリルイソプロピルアセチル尿素などが原因となる場合があり、その依存や離脱症状が薬物乱用頭痛の発症に寄与する[2]

症状

片頭痛緊張型頭痛の特徴をもつ頭痛がほぼ毎日認められる。殆どの症例では起床時からの頭痛に悩まされている。頭痛の性状、強度、部位は一定しないことが多く、わずかな精神活動あるいは身体活動によって増強されるため日常生活と社会的活動は大きな制限を受ける。起床時に頭痛がなくとも、これから頭痛が起こるであろうという余地不安から急性期頭痛薬を常用していることもある。

診断

薬物乱用頭痛はICHD(International Classification of Headache Disorders, 国際頭痛分類)上で診断基準が示されている。[3][1]

国際頭痛分類 (ICHD-IIIß) でのMOH診断基準は以下である[1]

  1. 月に15日以上頭痛がある
  2. 慢性・急性の頭痛治療薬を、3か月以上過剰摂取している。
  3. その頭痛は、治療薬の過剰摂取によって形成・悪化したものである。

英国国立医療技術評価機構(NICE)は、アセトアミノフェンアスピリンNSAIDの、単独または併用の服用が、月に15日以上ある状態が3ヶ月以上続く場合、薬物乱用性頭痛の可能性が疑われるとしている[5]

治療

最も重要なことは薬物乱用頭痛という疾患概念を患者に説明し、急性期頭痛治療薬が頭痛の状態を悪化させていることを認識させることである。その後の治療で重要なことは、起因薬物の中止、起因薬物投与中止後の反跳頭痛に対する治療、頭痛の予防薬投与の3点に集約できる。

起因薬物の中止

薬物乱用頭痛の疾患概念を説明して急性期頭痛治療薬の乱用が好ましくないことを本人に理解させる必要がある。理想的には起因薬物の即時中止であるが、急性期頭痛薬を使用しないと家事や仕事を続けるのが困難な場合があり段階的に中止することもある。

起因薬物中止後の反跳頭痛に対する治療

急性期頭痛治療薬乱用中止後には反跳頭痛(Rebound headache)が生じる。一般的には反跳頭痛は起因薬物中止後2日から10日間続く。トリプタン乱用による薬物乱用頭痛の反跳頭痛は比較的早く消退する。反跳頭痛は起因薬物以外を用いて症状緩和する。トリプタンの乱用の場合はNSAIDsで、それ以外の場合はトリプタンで症状緩和する。Truccuoらは薬物乱用頭痛の場合、入院させ、輸液デキサメタゾン8mg、メトクロプラミド50mgにジアゼパムのような鎮静薬を用いて良好な成績を示している[6]プレドニゾロンを使用することもある。

予防薬

三環系抗うつ薬であるアミトリプチリン(トリプタノール)の有効性は示されている。アミトリプチリンロメリジンプロプラノロールチザニジントピラマートガバペンチンなどが使用される。アミトリプチリンは抗コリン作用による副作用が問題になることがある。不整脈狭心症などの心疾患、喘息など呼吸器疾患、甲状腺機能亢進症のほか、高齢者では緑内障のと前立腺肥大症の有無を確認する必要がある。

アミトリプチリン(トリプタノール)10mg分1から開始し75mg分3まで増量可能
ロメリジン(テラナス、ミグシス)10-20mg分2
プロプラノロール(インデラル)30mg分3
チザニジン(テルネリン)3-6mg分3
トピラマート(トピナ)50-200mg分2
ガバペンチン(ガバペン)600-200mg 分3

予後

頭痛の起きる日が50%以上減少したことを成功と定義すれば治療の成功率は1~6ヶ月の期間で70%である。しかし薬物乱用頭痛はしばしば再発するため決して長期予後は良好ではない。

歴史

反跳性頭痛はDr. Lee Kudrowによって初めて報告された[7]

関連項目

慢性連日性頭痛

慢性連日性頭痛は毎日のように頭痛で悩まされるずつ疾患で患者のQOLを大きく障害する。Silbersteinらによって名付けられた疾患群である。その多くは片頭痛あるいは緊張型頭痛患者が薬物乱用頭痛におちいっているケースである。他の原因疾患には慢性片頭痛、慢性緊張型頭痛、持続性片頭痛、新規発症持続性連日性頭痛も含まれる。特に慢性片頭痛の病態がよく調べられている。慢性片頭痛は前兆のない片頭痛が慢性化して生じる。様々な要因が関与していると考えられており、侵害受容器の活性化、末梢性感作、感覚神経の興奮性亢進、三叉神経脊髄路核尾側亜核における中枢性感作、受容体イオンチャネルなどの機能修飾、下行性侵害受容抑制系の機能不全、細胞死やsproutingを介したシナプスの再構成などが複雑に関与していると考えられている。

脚注

  1. ^ a b c d e f g Kristoffersen ES, Lundqvist C (2014). “Medication-overuse headache: epidemiology, diagnosis and treatment”. Ther Adv Drug Saf 5 (2): 87–99. doi:10.1177/2042098614522683. PMC 4110872. PMID 25083264. https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4110872/. 
  2. ^ a b c 柴田護、鈴木則宏「III.薬物副作用による神経・筋障害 5.薬物乱用頭痛」(pdf)『日本内科学会雑誌』第96巻第8号、2007年、1634-1640頁、doi:10.2169/naika.96.1634 
  3. ^ a b The International Headache Classification”. http://ihs-classification.org/. International Headache Society. 28 June 2014閲覧。
  4. ^ Lancet Neurol. 2004 Aug;3(8):475-83. PMID 15261608
  5. ^ 英国医療技術評価機構 2012, Chapt.1.2.7.
  6. ^ Headache. 2010 Jun;50(6):989-97. PMID 20236349
  7. ^ Kudrow L (1982). “Paradoxical effects of frequent analgesic use”. Adv Neurol 33: 335?41. PMID 7055014. 

参考文献

  • 頭痛のすべて ISBN 9784521734385
  • Diener H-C, Limmroth V. Medication-overuse headache: a worldwide problem. Lancet Neurol 2004; 3:475-83. PMID 15261608
  • Katsarava Z, Limmroth V, Finke M, Diener HC, Fritsche G. Rates and predictors for relapse in medication overuse headache: a 1-year prospective study. Neurology 2003; 60: 1682-1683.
  • International Headache Society. The International Classification of Headache Disorders: 2nd Edition. Cephalalgia 2004; 24(suppl 1):9?160.
  • Olesen J, Bousser MG, Diener HC, et al. New appendix criteria open for a broader concept of chronic migraine. Cephalalgia 2006; 26: 742-6.
  • Sances G, Ghiotto N, Galli F, Guaschino E, Rezzani C, Guidetti V, Nappi G. Risk factors in medication-overuse headache: a 1-year follow-up study (care II protocol). Cephalalgia. 2009 Jul 13. [Epub ahead of print].
  • Silberstein S, Olesen J, Bousser MG, et al. The International Classification of Headache Disorders. 2nd ed. (ICHD-II). Revision of criteria for 8.2 medication-overuse headache. Cephalalgia 2005; 25:460?465.
  • 英国国立医療技術評価機構 (2012-09). Headaches (CG150) (Report). {{cite report}}: |date=の日付が不正です。 (説明); 引数|ref=harvは不正です。 (説明)

関連項目

外部リンク