「対物ライフル」の版間の差分
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また、対戦車ライフルと同様の大口径・強装薬な[[弾薬]]を用いる[[重機関銃]]や[[機関砲]]は、その弾薬の強大な反動を本体の多大な重量が相殺してしまうため、優れた威力と射程と命中精度を持ち、単射での超長距離狙撃にも有効であった。このことは経験的に知られており、[[独ソ戦]]や[[ベトナム戦争]]において、現場[[兵士]]の即興で対人・対物狙撃用として使用した例が見られた。 |
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正規軍が組織的に重機関銃弾を狙撃に使用したのは、[[フォークランド紛争]]における[[アルゼンチンの軍事|アルゼンチン軍]]であると言われる。[[ブローニングM2重機関銃]]に[[照準器|スコープ]]を取り付けて遠距離狙撃を行うアルゼンチン軍に対し、同口径の火器を退役させていて自動小銃しかなかった[[イギリス軍]][[歩兵]]は一方的な攻撃を受けたため、いちいち敵陣地に高価な[[ミラン (ミサイル)|ミラン]][[対戦車ミサイル]]を撃ち込んで射手ごと破壊するという戦法を採らざるを得なかった([[ブローニングM2重機関銃#狙撃銃としての使用例]])。その結果、簡便な大口径ライフルによる狙撃が見直されることになった。 |
{{要検証範囲|正規軍が組織的に重機関銃弾を狙撃に使用したのは、[[フォークランド紛争]]における[[アルゼンチンの軍事|アルゼンチン軍]]であると言われる。[[ブローニングM2重機関銃]]に[[照準器|スコープ]]を取り付けて遠距離狙撃を行うアルゼンチン軍に対し、同口径の火器を退役させていて自動小銃しかなかった[[イギリス軍]][[歩兵]]は一方的な攻撃を受けたため、いちいち敵陣地に高価な[[ミラン (ミサイル)|ミラン]][[対戦車ミサイル]]を撃ち込んで射手ごと破壊するという戦法を採らざるを得なかった([[ブローニングM2重機関銃#狙撃銃としての使用例]])。その結果、簡便な大口径ライフルによる狙撃が見直されることになった。|date=2019年12月|title=「ブローニングM2での狙撃」「フォークランド紛争をきっかけに大口径ライフルが見直された」などの話は、和文文献ではよく見かけるものの、英文文献では見当たらない。}} |
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また、[[ミュンヘンオリンピック事件]]における[[警察]]側の作戦上の失敗などから、1キロメートル超の距離からの狙撃能力や、[[強化ガラス]]や[[航空機]]の[[キャノピー]]を貫通できる弾頭威力のある火器が必要とされることが認識され、対[[テロリズム|テロ]][[特殊部隊]]における大口径ライフルの需要が発生した。これらの理由が複合的に検討された結果、再び.50口径(12.7mm)級のライフルが開発されるようになる。 |
2020年1月4日 (土) 15:13時点における版
対物ライフル(たいぶつライフル、英: anti-materiel rifle[1])は、かつての対戦車ライフルに相当する、主に狙撃に使われる、大口径の弾薬を使用する銃の総称、もしくは通称である。
概要
対物ライフルは、重機関銃や機関砲などに使用される大口径弾を使用する銃である。重い大口径弾の優れた弾道直進性を活かして、一般の小銃弾を使用する狙撃銃をはるかに上回る距離で狙撃を行える。
使用弾種にも依るが土嚢や壁などの障害物に隠れる敵や、軽車両に対して損傷を与える事も可能である。ただし、対物ライフルは通常のライフルよりも遥かに長く大きく重く、また反動も強力であり、設置による支持射撃状態(いわゆる伏射が主流)以外から、すなわち通常のライフルのように肩づけや腰だめで正確に射撃するのはほぼ不可能である。
歴史
第一次世界大戦に、ドイツは戦車を狙撃して装甲板を貫通し、内部の乗員を殺傷することが目的の火器として、歩兵用の小銃を拡大した大口径ボルトアクション式ライフルである「マウザー M1918」を開発した。M1918は単純に小銃を拡大して大口径化しただけの設計であり、その反動の大きさ等から実用面での問題も大きかったが、“戦車の装甲を貫通して内部に被害を及ぼす銃”としての威力はあり、「対戦車ライフル」という兵器の元祖となった。
以後、対戦車ライフルは各国で各種口径ものが多種多様に開発され、後に戦車の装甲技術の向上などで対戦車兵器としては陳腐化したこともあり、一時的に姿を消したものの、その大口径・長射程の利点を活かし、遠距離での対人狙撃や、大型の弾頭(通常の小銃弾に比べ、炸薬を内蔵することができるので、小口径ながら「榴弾」として使用できる)を用いて陣地攻撃に使うといった転用が行われた。
また、対戦車ライフルと同様の大口径・強装薬な弾薬を用いる重機関銃や機関砲は、その弾薬の強大な反動を本体の多大な重量が相殺してしまうため、優れた威力と射程と命中精度を持ち、単射での超長距離狙撃にも有効であった。このことは経験的に知られており、独ソ戦やベトナム戦争において、現場兵士の即興で対人・対物狙撃用として使用した例が見られた。
正規軍が組織的に重機関銃弾を狙撃に使用したのは、フォークランド紛争におけるアルゼンチン軍であると言われる。ブローニングM2重機関銃にスコープを取り付けて遠距離狙撃を行うアルゼンチン軍に対し、同口径の火器を退役させていて自動小銃しかなかったイギリス軍歩兵は一方的な攻撃を受けたため、いちいち敵陣地に高価なミラン対戦車ミサイルを撃ち込んで射手ごと破壊するという戦法を採らざるを得なかった(ブローニングM2重機関銃#狙撃銃としての使用例)。その結果、簡便な大口径ライフルによる狙撃が見直されることになった。[要検証 ]
また、ミュンヘンオリンピック事件における警察側の作戦上の失敗などから、1キロメートル超の距離からの狙撃能力や、強化ガラスや航空機のキャノピーを貫通できる弾頭威力のある火器が必要とされることが認識され、対テロ特殊部隊における大口径ライフルの需要が発生した。これらの理由が複合的に検討された結果、再び.50口径(12.7mm)級のライフルが開発されるようになる。
この種類の火器として最も実績を挙げたバレットM82が、スウェーデン軍に地雷・IED除去の目的で「対物銃」として最初納入されたため、それ以後は同クラスの弾薬を用いるライフルもそのように呼ばれるようになっていった。湾岸戦争、アフガニスタン紛争、イラク戦争など開けた場所が多い戦場で、アメリカ陸軍やアメリカ海兵隊がバレットM82などによる遠距離狙撃で戦果を挙げた。
戦時の対物ライフルによる対人狙撃は、ハーグ陸戦条約で禁止されている「不必要な苦痛を与える兵器」に該当している説が出ることもあるが、明示的にこれも含めて諸条約に該当している部分はない[2][3]。一部の12.7mm弾などが人体への発射を経て体内で炸裂する場合、炸裂弾を禁止したサンクトペテルブルク宣言に抵触するとされるものの、対物攻撃の場合と区別できず、規制には至っていない[4][5]。
2017年6月23日、カナダ軍特殊部隊は、狙撃兵が3540メートル離れた距離から、マクミランのライフル銃「TAC-50」を使用し、過激派組織「イラク・シリア・イスラム国(ISIL)」の戦闘員を狙撃することに成功したと発表した。狙撃成功は世界最長記録となる[6]。
主な対物ライフル
その他
脚注・出典
- ^ 英語をそのままカタカナ表記/発音した「アンチマテリアルライフル」とも呼ばれる。なお、この“マテリアル”とは厳密には軍事用語のマテリエル(Materi"e"l:「軍用資材」の意で(英語版)、“マテリエル”はフランス語に基づくアメリカ英語式発音である)であり、一般的にいうところの「素材」を意味するマテリアル(materi"a"l)とは異なるものである。
- ^ Maj W. Hays Parks (1988年). “Killing A Myth”. Marine Corps Association. 2016年8月7日閲覧。
- ^ (English) Guns of Special Forces 2001 – 2015. Casemate Publishers. (2016). p. P188. ISBN 9781473881013
- ^ ICRC. “Rule 78. Exploding Bullets,Customary IHL”. 2016年8月7日閲覧。
- ^ ICRC. “Practice Relating to Rule 78. Exploding Bullets,Customary IHL”. 2016年8月7日閲覧。
- ^ カナダ兵、3.5キロ先のISIS戦闘員狙撃CNN news(2017年6月23日), 2017年6月23日閲覧。
- ^ a b これらは厳密にはグレネード弾を使用する自動擲弾発射機であるが、狙撃を前提として使用され用途も似通っているため対物ライフルとして記載する。