「大日本国法華験記」の版間の差分
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== 関連資料 == |
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2019年12月23日 (月) 14:07時点における版
『大日本国法華験記』[1](だいにほんこくほっけげんき)は、平安時代中期に書かれた仏教説話集。通称『法華験記』。著者は比叡山の僧鎮源(伝不詳)。上・中・下の3巻からなる[1]。『本朝法華験記』(ほんちょうほっけげんき)[2]、『大日本国法華経験記』[3][4](だいにほんこくほけきょうげんき)[4]とも。
成立事情
序文によれば、本書は長久年間(1040年-1044年)に首楞厳院(比叡山の横川中堂)の鎮源が書いたもの[2][3]。鎮源は、宋の義寂(919年-987年)が書いた『法華験記』(現存せず)に触発され、その日本版として本書を著したという。
内容と構成
本書は法華経持経者らの伝記集。伝記の多くは法華経にまつわる霊験譚を含む。上、中、下3巻の計129の伝が、菩薩(聖徳太子と行基)、比丘(最澄、円仁をはじめとする僧)、在家沙弥(剃髪して沙弥戒を受けた在家者)、比丘尼(尼僧)、優婆塞(俗人の男性信者)、優婆夷(俗人の女性信者)、異類(蛇、猿など人間以外のもの)の順に並んでいる[2]。こうした構成は、先行する往生伝の『日本往生極楽記』とほぼ同じだが、異類の部が加わる点は本書の特色である。
伝記・説話の素材
本書は『日本往生極楽記』および『三宝絵』に依拠するところが大きい。本書の聖徳太子伝など10の伝記は『日本往生極楽記』から採られたことが明らかである。また、『日本霊異記』の説話と内容が一致するものが6例あり、「霊異記に見ゆ」といった注が付されているが、それらは注の記述も含め『三宝絵』から採られたことが明らかになっている。このほか、『叡山大師伝』や『慈覚大師伝』といった僧伝も用いられている。
一方、相応伝、性空伝、源信伝に関しては、先行する伝記が存在するにもかかわらず、それを素材とせず自己の見聞・知識によって書かれているとみられる。口伝や自己の体験を重んじている点は本書の特色といえる。なお、著者の創作と推定されているものもいくつかある。
刊行書
- 井上光貞・大曽根章介校注『往生伝 法華験記』(日本思想大系新装版 続・日本の仏教思想1)岩波書店、1995年。旧版(日本思想大系7)1974年。
- 山下民城訳 『法華験記』 国書刊行会、1993年3月。ISBN 978-4-336-03476-2。
脚注
- ^ a b 中尾 1983, p. 377.
- ^ a b c “ほんちょうほっけげんき【本朝法華験記】”. 世界大百科事典 第2版. コトバンク. 2016年12月15日閲覧。
- ^ a b 森正人. “本朝法華験記 ほんちょうほっけげんき”. 日本大百科全書(ニッポニカ). コトバンク. 2016年12月15日閲覧。
- ^ a b 仏教説話大系編集委員会・編著『日本の古典 2 中世編』鈴木出版〈仏教説話大系 37〉、1985年11月、p. 3頁。ISBN 978-4-7902-0037-6 。
参考文献
- 中尾正己「日蓮と『法華験記』」(PDF)『印度學佛教學研究』第32巻第1号、日本印度学仏教学会、1983年、pp. 377-380、doi:10.4259/ibk.32.377、NAID 130004024819、2016年12月15日閲覧。
関連資料
- 永藤靖 「『日本往生極楽記』と『大日本国法華験記』の世界 (特集・説話文学の魅力を探る - その黎明期から盛行期まで) - (大盛行期(平安後期)の説話集)」、『国文学 - 解釈と鑑賞』 第72巻第8号、至文堂、2007年8月、pp. 42-52、NAID 40015446831。
- 廣田哲通 「経文と説話 - 本朝法華験記を実例として」、『女子大文学 国文篇』 第33号、大阪女子大学国文学科、1982年3月30日、pp. 30-42。NAID 120002276575。大阪府立大学学術情報リポジトリ
- 岡田文弘 「鎮源『大日本国法華経験記』の異類功徳譚 - 第106話「伊賀国報恩善男」を中心に」、『インド哲学仏教学研究』 第21号、東京大学大学院人文社会系研究科・文学部インド哲学仏教学研究室、2014年3月、pp.105-117、NAID 120005526722。東京大学学術機関リポジトリ