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「塩分濃度」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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m 「塩分濃度」を「塩分」とした。『「塩分濃度」は使われずに、塩分または塩濃度という――』を『「塩分濃度」という言葉は誤用である』とした。
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'''塩分濃度'''(えんぶんのうど、{{lang-en-short|salinity}})は、[[水]]に溶けている[[塩 (化学)|塩]]の量である。ここで言う「塩分」とは、[[塩化ナトリウム]](NaCl) だけでなく、[[硫酸マグネシウム]]({{chem|MgSO|4}}) や[[硫酸カルシウム]]({{chem|CaSO|4}})そして[[炭酸水素塩]]などの塩類を含める場合が多い。
'''塩分'''(えんぶん、{{lang-en-short|salinity}})は、[[水]]に溶けている[[塩 (化学)|塩]]の量である。ここで言う「塩分」とは、[[塩化ナトリウム]](NaCl) だけでなく、[[硫酸マグネシウム]]({{chem|MgSO|4}}) や[[硫酸カルシウム]]({{chem|CaSO|4}})そして[[炭酸水素塩]]などの塩類を含める場合が多い。


[[オーストラリア]]や[[北アメリカ]]では、この語が往々にして[[土壌]]に含まれる塩分を示唆し得る。
[[オーストラリア]]や[[北アメリカ]]では、この語が往々にして[[土壌]]に含まれる塩分を示唆し得る。
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===絶対塩分と実用塩分尺度===
===絶対塩分と実用塩分尺度===
[[海洋学]]では、塩分濃度は、'''絶対塩分'''と呼ばれる、質量に対する[[パーミル|千分率]](単位;‰またはppt<!--parts per thousand-->)<ref group="" name="ppt"/>が伝統的に用いられてきた。
[[海洋学]]では、塩分濃度は、'''絶対塩分'''と呼ばれる、質量に対する[[パーミル|千分率]](単位;‰またはppt<!--parts per thousand-->)<ref group="" name="ppt"/>が伝統的に用いられてきた。
これによって、水({{chem|H|2|O}})>は[[淡水]]・[[鹹水]]([[汽水]]・[[海水]])・[[塩水]]に区分される。なお、塩分の「分」の文字に「濃度」の意味が含まれていることから、「塩分濃度」は使われずに、'''塩分'''または'''塩濃度'''という単語が使われてい<ref group="" name="塩分"/>
これによって、水({{chem|H|2|O}})>は[[淡水]]・[[鹹水]]([[汽水]]・[[海水]])・[[塩水]]に区分される。なお、塩分の「分」の文字に「濃度」の意味が含まれていることから、「塩分濃度」という言葉は誤用である。


嘗ては、塩分濃度は[[硝酸銀(I)|硝酸銀]][[滴定]]や[[蒸発]][[残渣]]の[[量]]で求められることが多かったが、これはいずれも手間が掛かるうえに正確な測定も困難だった。1960年代以降は、[[液体]]用の[[電気伝導率]]の測定が発達したため、それは試料と'''標準海水'''({{lang-en-short|primary standard water<!--normal water-->}})の電気伝導率を検塩計で比較して求めることが多くなった。
嘗ては、塩分濃度は[[硝酸銀(I)|硝酸銀]][[滴定]]や[[蒸発]][[残渣]]の[[量]]で求められることが多かったが、これはいずれも手間が掛かるうえに正確な測定も困難だった。1960年代以降は、[[液体]]用の[[電気伝導率]]の測定が発達したため、それは試料と'''標準海水'''({{lang-en-short|primary standard water<!--normal water-->}})の電気伝導率を検塩計で比較して求めることが多くなった。

2019年11月11日 (月) 05:25時点における版

塩分(えんぶん、: salinity)は、に溶けているの量である。ここで言う「塩分」とは、塩化ナトリウム(NaCl) だけでなく、硫酸マグネシウム(MgSO4) や硫酸カルシウム(CaSO4)そして炭酸水素塩などの塩類を含める場合が多い。

オーストラリア北アメリカでは、この語が往々にして土壌に含まれる塩分を示唆し得る。

詳細

(H2O)中に溶けている陰イオンの中で最も濃度が高いハロゲン化合物(特に塩化物)の濃度が指標として着目される場合も多く、これはハリニティ(: halinity)と呼ばれる[1]

塩分濃度は、単位体積または単位質量に対して水(H2O)に溶解している塩分(正確には溶解している固形物質全て)の量である[2]。両者の値にそれほど大きな差は発生しない[3]が、正確な値が必要な場合にはその区別に注意する必要が有る。

塩分濃度は周りに住む生物にとって極めて重要である。

例えば、地表水溜りだけではなく地下水もまた陸上植物に影響を与える。塩分濃度が高い環境に適応している塩生植物極限環境微生物好塩菌にも塩分濃度は甚大な影響を持つ。なお、塩分濃度が大きく変化しても生きていける生物は好塩性英語版であると呼ばれる。

勿論ながら、人間にとっても塩分濃度の影響は重大である。水(H2O)を摂取する場合には、その塩分濃度が体内の塩分濃度よりも低くなければならない。しかし、塩分を除去するには非常に手間を要する手順が必要となる。

絶対塩分と実用塩分尺度

海洋学では、塩分濃度は、絶対塩分と呼ばれる、質量に対する千分率(単位;‰またはppt)[4]が伝統的に用いられてきた。 これによって、水(H2O)>は淡水鹹水(汽水海水)・塩水に区分される。なお、塩分の「分」の文字に「濃度」の意味が含まれていることから、「塩分濃度」という言葉は誤用である。

嘗ては、塩分濃度は硝酸銀滴定蒸発残渣で求められることが多かったが、これはいずれも手間が掛かるうえに正確な測定も困難だった。1960年代以降は、液体用の電気伝導率の測定が発達したため、それは試料と標準海水(: primary standard water)の電気伝導率を検塩計で比較して求めることが多くなった。 当初は、「海洋調査常用表」[5]の編纂者であるマルティン·クヌーセンらによって1900年に国際海洋探求会議オスロコペンハーゲンに造られた中央実験所で原標準海水「コペンハーゲン水」(: "Copenhagen water")と比較されて塩素量が検定されたもの[6]が、ガラスアンプル(直径約45mm・容量約230ml)に封入されて[7]、1902年から各国に標準海水として頒布された。なお、この原標準海水の塩分濃度は従来どおり硝酸銀滴定で求められていた[8]。(1975年以降においては、標準海水はイギリスの海洋研究所から頒布されている[7]。)この標準海水なくしては、海水の温度や塩分から密度や水平的流速分布に至るまでの正確な測定が不可能になることを意味する。

因みに、日本は、戦前輸入途絶という事態に絡んで、独自に「日本標準海水」の作成を試みた歴史[7]が有る。

その後の1978年に、海洋学者は、標準海水の替わりに、塩化カリウム(KCl) の標準液を作成して試料とそれとの電気伝導率の比率で塩分濃度を表す実用塩分尺度(PSS)(: Practical Salinity Scale)を提案した[9][10]。この単位は無次元であり、通常は千分率で表記される。時にPSU(実用塩分単位)(: Practical Salinity Unit)として表記される場合も在るが、これは正式なものではない[11]

絶対塩分による区分
分類 淡水(: fresh water) 鹹水(: salty water) 塩水(: briny water)
汽水(: brackish water) 海水(: marine water)
塩濃度 < 0.05 % 0.05 % - 3.5 % 3.5 % - 5% > 5 %

なお、他分野においては、例えば、物理化学では溶媒に対する千分率が用いられ、分析化学では溶液に対する比重量で塩分濃度が表されていた。

ヴェニス系

海水の塩分濃度は大体が約30‰から35‰までの間にあるが、内陸には海水よりも塩分濃度が濃い水や薄い水が在る。この塩分の濃淡を表す区分方法は様々に在るが、よく使われるものの一つが塩分量(: haline)である。

海水と同じ塩分濃度の水を基準の同塩海として、1959年に表[12][13]のようにヴェニス系と呼ばれる分類が定義され[14]、1972年に修正が加えられた[15]

ヴェニス系による区分
実用塩分尺度(‰) 分類
70 - 300 超塩層(: hyperhaline)
40 - 70 高塩層(: metahaline)
30 - 40 混合塩層(: mixoeuhaline)
18 - 30 多塩層(: polyhaline)
5 - 18 中間塩層(: mesohaline)
0.5 - 5 少塩層(: oligohaline)

塩分濃度が季節を通じて海水とほぼ同じ水は類似塩層(: homoiohaline)と呼ばれ、この種の湖は、海と常に繋がっている場合が殆どである。これに対して、塩分濃度が変化する水は乱鹹層(: poikilohaline)と呼ばれ、その塩分濃度は0.5‰から300‰超まで様々であるが、これが生物環境に与える影響は大きい[16]。この塩分の変化は様々な周期を持っている。

世界の海水の塩分濃度は、等塩分線(: isohale)状を示す[17]

なお、ヴェニス系関連用語の日本語定訳は現在のところは存在しない。本項目のおいては、訳に際して、接尾辞と接頭辞の医学的語根の一覧英語版の日本語訳[18]や「和英西仏語・海洋総合辞典」[19]が用いられている。

注釈

  1. ^ "halo"は「塩の」「海の」を表す接頭辞であり、塩分濃度と同じ意味で使われることも多い。
  2. ^ 磯辺篤彦. “2.海水の物性と水塊分布”. 九州大学. 2015年12月31日閲覧。
  3. ^ “Standard Seawater Comparisons updated” (PDF). Journal of Physical Oceanography英語版 (アメリカ気象学会) 17 (4): 543-548. (1987-4). doi:10.1175/1520-0485(1987)017<0543:SSCU>2.0.CO;2. ISSN 0022-3670. http://journals.ametsoc.org/doi/pdf/10.1175/1520-0485(1987)017%3C0543:SSCU%3E2.0.CO;2. 
  4. ^ 現在では、pptは1兆分の1の意味で使われることも多い。
  5. ^ Hydrographical tables. キッシンジャー出版英語版. (2010-10-10). ISBN 978-1-166-56584-8 
  6. ^ 日本標準海水のカルシウム成分について」(PDF)『海洋情報部研究報告』第12号、海上保安庁 海洋情報部、1977年3月。 
  7. ^ a b c わが国海洋観測史を彩る名測量艦,名観測船 (戦前,戦中編)」(PDF)『海事資料館年報』第15巻、神戸商船大学 海事資料館、1987年、27-36頁。 
  8. ^ “The practical salinity scale 1978 and its antecedents”. IEEE Journal of Oceanic Engineering (電気電子学会(IEEE)) 5 (1): 3-8. (1980-10). doi:10.1109/JOE.1980.1145448. ISSN 0364-9059. http://ieeexplore.ieee.org/xpls/abs_all.jsp?arnumber=1145448. 
  9. ^ “The practical salinity scale 1978 and the international equation of state of seawater”. Technical Papers in Marine Science (国際連合教育科学文化機関(UNESCO)) 36. (1981). 
  10. ^ “Background papers and supporting data on the Practical Salinity Scale 1978” (PDF). Technical Papers in Marine Science (国際連合教育科学文化機関(UNESCO)) 37. (1981). http://unesdoc.unesco.org/images/0004/000479/047932eb.pdf. 
  11. ^ 角皆静男. “海水の塩分の定義と単位”. 2016年7月1日閲覧。
  12. ^ The Venice System for the Classification of Marine Waters According to Salinity. 3. 先進陸水海洋学会. (1958). pp. 346-347. doi:10.4319/lo.1958.3.3.0346. http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.4319/lo.1958.3.3.0346/abstract. 
  13. ^ USGS Fact Sheet 2004-3108: Changing Salinity Patterns in Biscayne Bay, Florida”. アメリカ地質調査所(USGS). 2016年7月1日閲覧。
  14. ^ “The final resolution of the symposium on the classification of brackish waters”. Archo Oceanogr. Limnol (ヴェニス·システム) 11(supplement): 243-248. (1959). 
  15. ^ “Hydrobiological notes on the high-salinity waters of the Sinai Peninsula”. Marine Biology (シュプリンガー·フェラーク) 14 (2): 111-119. (1972-5). doi:10.1007/BF00373210. ISSN 0025-3162. http://link.springer.com/article/10.1007/BF00373210. 
  16. ^ “Ecological Salinity Boundaries in Poikilohaline Waters”. Oikos (Nordic Society Oikos英語版) 7 (1): 1-21. (1956). doi:10.2307/3564981. http://www.jstor.org/stable/3564981. 
  17. ^ Salinity”. 海洋大気庁(NOAA). 2016年7月1日閲覧。
  18. ^ Greek and Latin for Medicine”. 京都大学大学院 医学研究科 ゲノム医学センター 統計遺伝学分野. 2016年7月1日閲覧。
  19. ^ 中内清文. “和英西仏語・海洋総合辞典”. 2016年7月1日閲覧。

関連項目

外部リンク