「環形動物」の版間の差分
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'''環形動物'''(かんけいどうぶつ)とは、'''環形動物門'''([[学名]]: {{Sname|Annelida}})に属する[[動物]]の総称である。[[ |
'''環形動物'''(かんけいどうぶつ)とは、'''環形動物門'''([[学名]]: {{Sname|Annelida}})に属する[[動物]]の総称である。[[環帯類]]([[ミミズ|貧毛綱(=ミミズ)]]と[[ヒル (動物)|ヒル]][[ミミズ|綱]])、[[多毛類|多毛類(=ゴカイ)]]を含むほか、かつては独立した門だと思われていた[[シボグリヌム科|有髭動物]]、[[ユムシ動物]]、[[星口動物]]を含む事が分子系統解析から分かり<ref name=":8">系統樹は[[環形動物#日本動物学会2018|日本動物学会2018]] pp.70-71より。</ref>、多毛類が多系統である事もわかっている<ref name=":8" />。 |
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一般に細長い。左右対称で、多少とも腹背の区別があり、[[節足動物]]程には目立った[[附属肢]]はない。いわゆる[[蠕虫]]の典型と言ってよい。体には[[骨格]]等はなく、柔らかい。[[えら]]かまたは[[皮膚]]で[[呼吸]]する。 |
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体は環状の[[体節]]が[[直列]]に並んだ構造をしている([[体節制]])。体節の構造は基本的にはどれも同じで、頭部以外の体節には、それほど大きな差はない(同規体節制)。なお、節足動物とは異なり、環形動物の体節は、内部の[[体腔]]をも区分している。 |
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=== 外部形態 === |
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体は細長く、前端と後端以外の体節は、普通はほぼ同じ形である。前端には[[口前葉]]があり、ここに[[目]]や[[口触手]]などがある。ただし、ヒル類、ミミズ類では口前葉そのものが退化的で、判別できないこともある。多毛類では、[[イバラカンザシ]]のように固着性のものでは、眼などは退化し、逆に触手が非常に発達するなど、変形が著しい。 |
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体の先端にある口を含む体節を[[囲口節]]と言い、[[疣足]]を欠くなど、それに続く体節とはやや形が異なる。それ以降は、ほぼ同型の体節が並んでいるのが普通である。ただし、ミミズ類では体前方に[[環帯]]という複数体節がまとまった構造が見られる。逆にヒル類では、体節の表面が、さらに[[襞]]によって区切られるため、見かけでは実際の体節数より多くの区切りが見られる。 |
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多毛類では、各体節の側面からは疣足を生じる。疣足は、肉質の突出した構造で、関節等はないが、内部の[[筋肉]]で動かすことができる。表面からは[[触糸]]が突出し、また多数の[[剛毛]]が並ぶ。それらを使って、[[匍匐]]移動し、あるいは[[遊泳]]することができる。貧毛類では、疣足はないが、剛毛が決まった配置で並んでいる。ヒル類では、ごく一部のものが、剛毛を持つにすぎない。 |
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=== 内部構造 === |
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[[消化系]]は先端の口から後端の[[肛門]]までほぼ直線的。[[循環系]]は[[閉鎖血管系]]をもち、緑色[[色素]]の[[クロロクルオリン]]([[ケヤリムシ]]など)または、赤色色素の[[エリスロクルオリン]](ミミズ)、[[エリトロクルオリン]](ゴカイ)、[[ヘモグロビン]](ヒル)によって、体内の[[酸素]]運搬を行う。ただし、[[心臓]]はもたず、[[弁]]のある[[血管]]自体が収縮することで[[血液]]を循環させている。[[脳]]神経節と腹側神経索からなる、比較的良く発達した[[神経系]]をもつ([[はしご状神経系]])。 |
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== 生殖と発生 == |
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ミミズ、ヒル類は[[雌雄同体]]だが、他の環形動物は雌と雄の区別がある(雌雄異体)。多毛類では[[体外受精]]、他のものでは[[交尾]]による[[体内受精]]が行われる。 |
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発生は、多毛類では[[トロコフォア]]が見られ、その後半に体節が作られることで[[成体]]の形になる。貧毛類とヒル類では[[直接発生]]が行われる。 |
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== 生態 == |
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海産または淡水産、及び湿った[[土壌]]中に生息し、乾燥した陸上で生活するものは少ない。多毛類はほとんどが海産で、わずかに淡水産のものがある。多様性はこの類が最も大きい。底生の種が多いが、浮遊生のものもある。潜行性、匍匐生、巣穴を作って定着し、[[デトリタス]]を触手で集めるものなど、様々である。貧毛類とヒル類はむしろ淡水産の種が多く、陸生種もある。特に貧毛類では陸生の種が多く、陸上の生態系では土壌の形成に大きな役割を担っている。 |
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== 系統関係 == |
== 系統関係 == |
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以下の通りである<ref name=":8" />(「*」がついているものは多毛類に分類されていたもの): |
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いわゆる[[旧口動物]]である。[[体節制]]が発達していることから、[[節足動物]]と近縁性が、海洋性のいくつかの種にはトロコフォア[[幼生]]になるものがあることから[[軟体動物]]との近縁性が古くから主張された。しかし、このうちの節足動物との近縁性は近年否定される傾向がある。他方、軟体動物との近縁性は現在も認められている。軟体動物の一部に見かけ上の体節制的な特徴が見られることから、体節制を持つ祖先からこの2つ(あるいは節足動物を含めて3つ)が分かれたと考えられていたが、現在では軟体動物の体節制が疑問視されている。 |
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|label1=定在類|1=ケヤリムシ類*・フサゴカイ類*など、環帯類、'''[[有髭動物]]'''、'''[[ユムシ動物]]''' |
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|label2=遊在類|2=イソメ類、ウロコムシ類など* |
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|3=スイクチムシ類*(?) |
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|1=ウミケムシ類* |
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|2='''[[星口動物]]''' |
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|2=ツバサゴカイ科* |
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|1={{clade |
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|1=チマキゴカイ科* |
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|2=モロテゴカイ科* |
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}}|label1=環形動物}}<br /> |
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== 分類 == |
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古典的には、[[多毛類]]・[[貧毛類]](ミミズ類)・[[ヒル類]]の3つの群をみとめ、それぞれを[[綱 (分類学)|綱]]として立てることが行われてきた。ただし、現在は大きく見直しが行われている。 |
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このうちで、ミミズ類・ヒル類の2つの群を認めることについては現在もひとまずは継承されている。貧毛類とヒル類は、外見的には多毛類より単純であるが、内部構造では体節の分化も進んでいて、より発展的なものと考えられる。多毛類は他の2群を含めば単系統をなすが、それらを除くと側系統をなすものと考えられる。 |
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他に、[[吸口虫類]]が独立の群として、それに[[ムカシゴカイ]]などを[[原始環虫類]]としてそれぞれを独立した綱と認めて立てる場合があったが、現在ではこれらは多毛類の一つと見なされることが多くなった。 |
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他に、[[有鬚動物]]は特殊な体制の動物として有名であるが、近年ではこれも多毛類の1つとして[[シボグリヌム科]]とされる。そのほかに、[[ユムシ動物]]や、[[星口動物門]]も環形動物に入れる考えもある。 |
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以下に白山他(2000)で採用された体系を示す。これはやや古典よりのものである。 |
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*Annnelida 環形動物 |
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**Polychaeta 多毛綱(ゴカイの仲間・25目) |
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**Oligochaeta 貧毛綱(ミミズの仲間・4目) |
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**Hirudinoidea ヒル綱 |
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***Brachiobdellida ヒルミミズ亜綱(ザリガニに寄生:1科) |
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***Acanthobdellida ケビル亜綱 |
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***Hirudinea ヒル亜綱(一般のヒル・2目) |
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<!-- == 脚注 == |
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*{{Cite book|和書|title=動物学の百科事典|date=2018/9/28|year=|publisher=丸善出版|author=公益社団法人日本動物学会|isbn=978-4621303092|ref=日本動物学会2018}} |
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== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
2019年7月12日 (金) 09:13時点における版
環形動物門 | ||||||
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分類 | ||||||
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学名 | ||||||
Annelida Lamarck, 1809 | ||||||
和名 | ||||||
環形動物 | ||||||
英名 | ||||||
annelids segmented worms | ||||||
綱 | ||||||
環形動物(かんけいどうぶつ)とは、環形動物門(学名: Annelida)に属する動物の総称である。環帯類(貧毛綱(=ミミズ)とヒル綱)、多毛類(=ゴカイ)を含むほか、かつては独立した門だと思われていた有髭動物、ユムシ動物、星口動物を含む事が分子系統解析から分かり[1]、多毛類が多系統である事もわかっている[1]。
系統関係
以下の通りである[1](「*」がついているものは多毛類に分類されていたもの):
環形動物 |
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参考文献
- 白山義久編『無脊椎動物の多様性と系統 : 節足動物を除く』岩槻邦男・馬渡峻輔監修、裳華房〈バイオディバーシティ・シリーズ〉、2000年。ISBN 4-7853-5828-9。
- 公益社団法人日本動物学会『動物学の百科事典』丸善出版、2018年9月28日。ISBN 978-4621303092。
脚注
- ^ a b c 系統樹は日本動物学会2018 pp.70-71より。
関連項目
外部リンク
- "Annelida" (英語). Integrated Taxonomic Information System. 2011年11月16日閲覧。
- "Annelida". National Center for Biotechnology Information(NCBI) (英語).
- "Annelida" - Encyclopedia of Life