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「エアバスA321」の版間の差分

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{{Infobox 航空機
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}}<br />[[ファイル:Onur A321 TC-ONJ.jpg|thumb|250px|Onur Air A321-100型機]]
'''エアバスA321'''('''Airbus A321''')は、[[エアバス|エアバス社]]が開発した、[[ナローボディ機|ナローボディ]]の[[ジェット機|ジェット]][[旅客機]]。[[エアバスA320]]のストレッチ型(長胴型で、A320ファミリーで最も大型の機である。
'''エアバスA321'''('''Airbus A321''')は、[[ヨーロッパ]]の[[エアバス]]が開発・製造ている[[ナローボディ機|ナローボディ]](単通路)双発[[ジェット機|ジェット]][[旅客機]]である。[[エアバスA320]]の長胴型で、A320ファミリーの中全長が最も長い。A321は、政府資金援助に依らずに開発された初のエアバス機であり、ドイツで最終組立された最初のエアバス機でもある。


A321は大きく2世代に分けることができ、第一世代はA321ceo、次世代型はA321neoと呼ばれる。A321ceoは、1989年に開発が決定し、1994年3月に[[ルフトハンザドイツ航空|ルフトハンザ航空]]と[[アリタリア-イタリア航空|アリタリア航空]]によって路線就航を開始した。[[航続距離]]延長型も開発され、北米大陸横断路線へも就航可能になった。2010年にA320ファミリーのエンジンを一新したA320neoファミリーの開発が決定し、同ファミリーの長胴型としてA321neoが開発された。A321neoは2016年2月に初飛行し、2017年5月に[[ヴァージン・アメリカ]]によって路線就航を開始した。A321neoの長距離型として、単通路機として世界最長の航続距離性能を持つA321LRが開発され、さらに航続力を強化したA321XLRの開発も決定している。
== 概要 ==
[[ファイル:Airbus A321-211 Finnair OH-LZC.jpg|thumb|right|250px|フィンエアー A321-200]]


A321の主翼は低翼配置の片持ち翼で、[[尾翼]]は通常配置、[[降着装置]]は前輪配置、左右の主翼下にパイロンを介して[[ターボファンエンジン]]を1発ずつ装備する。全長は44.51メートル、全高は11.76メートル、全幅は最大仕様で35.80メートルである。標準の巡航速度は[[マッハ数|マッハ]]0.78。標準座席数はA321ceoが170から210席、A321neoが180から236席である。飛行システムはA320ファミリーと共通化されており、操縦資格もファミリー機で共通である。
=== A321ceo ===
{{See also|エアバスA320#A321}}
エアバス社では、A320について開発当初からファミリー化を計画していた。[[1989年]]5月、最初の派生機種となるA321の計画を発表、同年11月に開発が正式決定した。胴体をA320より[[主翼]]の前後で合計6.94m延長し、[[非常口|緊急脱出口]]の大型化と再配置、機体および装置類の強化、[[ジェットエンジン|エンジン]]の推力増加などを行っている。1993年3月に初飛行、1994年2月に[[ルフトハンザドイツ航空]]へ初めて引き渡された。1995年には燃料タンクを追加して航続距離を延長するなどの改良をしたA321-200が開発されている。


2018年7月時点において、民間航空会社113社で1,687機のA321が運用されている。アジア太平洋地域、欧州、および南北アメリカで運用機数の大半を占め、これらの地域で概ね500機ないし600機ずつ運用されている。2019年8月現在、A321の機体損失に至った事故および事件は6件ある。このうち1件の事故および2件のテロ事件により計377人が死亡している。
[[フィンランド航空]]が、運航中の[[ボーイング757#757-200|ボーイング757-200]]の後継機として、[[2010年]]6月にA321-200を追加発注した<ref>{{cite web|url=https://newsclient.omxgroup.com/cdsPublic/viewDisclosure.action?disclosureId=522117&lang=en|title=Finnair makes green choice with new engine supplier IAE selected to equip Airbus A321 extended range aircraft joining fleet in 2013|accessdate=2014-03-29|date=2012-09-20|publisher=フィンランド航空}}</ref>。[[2013年]]9月より導入する機体には、主翼端に[[ウィングレット|シャークレット]](Sharklets)が装備され<ref>{{cite web|url=http://www.airliners.de/wirtschaft/bestellungenundauslieferungen/finnair-will-a321-mit-sharklets-bestellen/21363|title=Finnair will A321 mit Sharklets bestellen |accessdate=2014-03-29|date=2010-06-10|publisher=airliners.de}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.flightglobal.com/news/articles/finnair-to-launch-sharklet-equipped-a321-343108/|title=Finnair to launch sharklet-equipped A321|accessdate=2014-03-29|date=2010-06-10|publisher=Flightglobal}}</ref>、これが初めてのシャークレット装備A321となった<ref>{{cite web|url=http://www.airbus.com/presscentre/pressreleases/press-release-detail/detail/finnair-first-to-commit-to-a321s-with-sharklets/|title=Finnair first to commit to A321s with Sharklets|accessdate=2014-03-29|date=2010-06-10|publisher=エアバス}}</ref>。なお、シャークレットは後付けにも対応している<ref>{{cite web|url=http://flyteam.jp/news/article/29623|title=ターキッシュ エアラインズ、A321にシャークレット後付け作業を実施|accessdate=2014-03-28|date=2013-12-6|publisher=FlyTeam}}</ref>。<!-- この部分一旦非掲載としておきます。搭載エンジンは、[[インターナショナル・エアロ・エンジンズ]](IAE)社製[[V2500 (エンジン)|V2533-A5エンジン]]を選定した[https://newsclient.omxgroup.com/cdsPublic/viewDisclosure.action?disclosureId=522117&lang=en]。 -->


== 沿革 ==
A321neo(後述)が開発されたことにより、現行型のA321は'''A321ceo (current engine option) '''と呼ばれるようになった。
=== 開発の背景 ===
[[アメリカ合衆国|米国]]の航空機メーカーに対抗するため、[[ヨーロッパ|欧州]]の航空機メーカーは[[1970年]]12月に[[コンソーシアム|企業連合]]「エアバス・インダストリー」(以下、エアバス)を設立した{{sfn|青木|2010|p=123}}。エアバスは、世界初の双通路([[ワイドボディ機|ワイドボディ]])双発ジェット旅客機である[[エアバスA300|A300]]を開発し、発展型を開発しつつ販売を軌道に乗せた{{sfn|山崎|2009|pp=90–91}}。続いて製品ラインナップの拡充を目指し、単通路([[ナローボディ機|ナローボディ]])市場への進出を決めた{{sfn|山崎|2009|pp=90–91}}。


[[File:Airfrance.a320-200.f-glgm.arp.jpg|thumb|完全新規開発で単通路機市場に参入したエアバスA320。]]
=== A321neo ===
[[ボーイング]]や[[マクドネル・ダグラス]]のように既存の単通路機を持っていなかったエアバスは、完全な新規設計により単通路機[[エアバスA320|A320]]を開発し、当時の最新技術を積極的に取り入れた{{sfn|青木|2003b|pp=54–55}}。大型機も含めたエアバス機全体での操縦資格の共通化を目指し、操縦系統に全面的な[[フライ・バイ・ワイヤ]]技術を採用した{{sfn|青木|2003a|pp=48–49}}。同規模の旅客機の中で最も太い断面の胴体を持ち、大型の貨物室扉を備えたことで、航空貨物コンテナの搭載も可能となった{{sfn|青木|2003b|pp=57–58}}。検討を重ねた結果、A320の標準座席数は2クラス編成で150席となった{{sfn|青木|2010|pp=52–53}}。A320は1988年2月に[[型式証明]]を取得し、翌月に顧客引き渡しが始まった{{sfn|青木|2003b|p=58}}。
{{See also|エアバスA320neo}}
ベースとなるA320と同様に、エンジンを[[CFMインターナショナル]]社製[[CFMインターナショナル LEAP|LEAP-X]]エンジン、または[[プラット・アンド・ホイットニー]]社製[[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|PW1100G]]の高バイパスエンジンへ変更した燃費改良モデルの開発が発表され、2011年8月、[[インターナショナル・リース・ファイナンス]] (ILFC) が最初の顧客として25機を発注することを発表した<ref>{{cite web|url=http://www.airbus.com/newsevents/news-events-single/detail/ilfc-selects-100-a320neo-family-aircraft/|title=ILFC selects 100 A320neo Family aircraft|accessdate=2014-03-28|date=2011-03-08|publisher=エアバス}}</ref>。
シャークレットは標準装備とされ、非常口ドアの追加などで、最大客席数を220席から236席に増やせるオプションも提供される<ref>{{cite web|url=http://response.jp/article/2013/01/31/189996.html|title=エアバス、A321neoに客室スペースの効率化で座席数を増やせるオプションを追加|accessdate=2014-03-28|date=2013-01-31|publisher=レスポンス}}</ref>。2016年末から顧客への量産機の引き渡しが始まっている<ref>{{cite web|url=http://news.mynavi.jp/news/2016/02/17/238/|title=エアバス、最新旅客機「A321neo」の初飛行に成功 - 今年末に納入開始予定|accessdate=2016-05-28}}</ref>。
客室スペースを最適化し、出口制限に変更を加え、新しい客室ドアを設置することで旅客定員を240名まで増やした型を「A321neo ACF (Airbus Cabin Flex) 」とした<ref>[http://www.aviationwire.jp/archives/138509 エアバス、客室ゆったりのA321neo初号機ロールアウト オプション設定機]</ref>。


エアバスはA320の開発を進めつつ、1987年には派生型の検討に着手していた{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}。A320を基準として胴体延長型と短縮型が研究された{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=16}}。胴体延長型は、座席数が185席から200席程度と計画された{{r|FI-1989-1628}}。これは当時のエアバスの製品ラインナップにおいて、A320とワイドボディ機[[エアバスA310|A310]]との間に位置づけられるものだった{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。
=== A321LR ===
[[2015年]]1月には、A321neoをベースに最大離陸重量を97トンに引き上げ、航続距離を約7,400kmに延長。[[ボーイング757]]の更新需要に対応したA321neo LRの開発も発表されている<ref>{{cite web|url=http://flyteam.jp/news/article/45099|title=エアバス、A321LRをローンチ ALCから30機を受注|accessdate=2015-02-01|date=2015-01-13|publisher=フライチーム}}</ref>。2018年1月8日ロールアウト、同月31日初飛行。試験デモ飛行で同年2月13日にパリ郊外の[[ル・ブルジェ空港]]を出発し、8時間43分後にニューヨークの[[ジョン・F・ケネディ空港]]へ到着し大西洋横断。長距離デモ飛行で同年4月11日にセイシェルのマヘ島から仏トゥールーズまで、8,797km(4750海里)を11時間かけて飛行した。


まずこの長胴型の開発を進めることになり、1988年5月に正式な受注活動を開始した{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}{{r|FI-1989-1628}}。1989年6月に航空機リースを手がける[[インターナショナル・リース・ファイナンス]] (ILFC) が16機の発注を決め、これがA321の最初の受注となった{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=18}}。同年9月22日には、[[ルフトハンザドイツ航空]]が確定22機、オプションで20機を発注した{{r|Lufthansa}}。これらの発注を受けて11月24日に、長胴型をA321-100と命名して正式開発が決定した{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=18}}。
=== A321XLR ===
2019年6月17日に、A321neoをベースに最大離陸重量を110トンに引き上げ、航続距離を約8,704kmに延長したA321XLRをローンチした<ref>{{Cite web|title=エアバス、超長距離型「A321XLR」ローンチ 単通路で世界最長、23年納入へ|url=https://www.aviationwire.jp/archives/175852|website=Aviation Wire|accessdate=2019-06-24|language=ja-JP}}</ref>。エアバスによると、A321XLRは東京を起点とした場合、シドニーやデリー、アンカレッジなどへ飛行できる性能を持つ機体となる。


=== 型式一覧 ===
=== 設計の過程 ===
[[File:B-1663 Sichuan Airlines Airbus A321-231 (4).jpg|thumb|正面から見たA321。胴体断面の設計はA320と共通である。]]
{|class="wikitable sortable" style="text-align:center;font-size:80%;"
[[File:Aer lingus a321-200 ei-cpe arp.jpg|thumb|下方から見たA321。]]
!機種!!認定日!!エンジン<ref>[https://www.easa.europa.eu/sites/default/files/dfu/TCDS_EASA%20A%20064_%20Airbus_%20A318_A319_A320_A321_Iss_38.pdf EASA TYPE-CERTIFICATE DATA SHEET Airbus A318, A319, A320, A321 Single Aisle]</ref>
この当時エアバスは、本格的な長距離路線向けの新型ワイドボディ機として[[エアバスA340|A340]]と[[エアバスA330|A330]]の同時並行開発に着手していた{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}。このため、A320派生型の開発に従事するエンジニアは最小限とされた{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}。A320からの変更点を可能な限り最小にすることとされ、主翼の大半、尾部、胴体断面はA320と共通化された{{sfn|Moxon|1993|pp=36–40}}。

[[File:Airbus A321-..., Lufthansa AN0620267.jpg|thumb|フラップを下げたルフトハンザ航空のA321。主翼後縁のフラップに2本の隙間が見える。]]
A321の胴体は、ベース機のA320に対して主翼の前方で4.27メートル(8フレーム)、後方で2.67メートル(5フレーム)の合わせて6.94メートル(13フレーム)延長された{{sfn|青木|2018|p=119}}{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。これにより座席数が24%、床下貨物室の容積が40%拡大した{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。収容力の強化に合わせて、空調および与圧システムが強化された{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。非常口の配置も見直され、A320で主翼上にあったタイプIII扉を無くし、代わりに主翼の前方と後方に大型のタイプI扉が設置された{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。

胴体が延長されたことで、A320よりも小さい[[迎角]]での離着陸を可能にする必要が生じた{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–74}}。加えて、重量増加に対応して十分な[[揚力]]を得るために、主翼面積を大きくする必要があった{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–74}}。主翼を担当したイギリスの[[ブリティッシュ・エアロスペース|BAe]]社とフラップ([[高揚力装置]])を担当したドイツの[[ダイムラークライスラー・エアロスペース|DASA]]社が共同で設計変更にあたった{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。最小の変更で求める効果を得るために、主翼後縁のフラップを新規設計することになり、フラップをダブル・スロッテッド・フラップ(二重隙間フラップ)に置き換え、その分の翼弦長を延長することで翼面積を拡大した{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–74}}。A321の空力特性に合わせて飛行制御システムも小修正が加えられた{{sfn|Moxon|1993|p=40}}。

機体重量の増加に伴い、[[降着装置]]の支柱が強化されたほかタイヤが大型化されブレーキも強化された{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}{{sfn|Moxon|1993|p=40}}。A321のエンジンは、A320と同様に[[CFMインターナショナル]](以下、CFMI)社の[[CFMインターナショナル CFM56|CFM56]]と、[[インターナショナル・エアロ・エンジンズ]](以下、IAE)社の[[V2500 (エンジン)|V2500]]が設定された{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。機体重量の増加に対応してエンジンの推力が強化された{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。燃料系統は再設計され、部品点数の削減により保守性が改善された{{sfn|Moxon|1993|p=40}}。

A321は、政府の資金援助を受けずに開発された最初のエアバス機ともなった{{sfn|Moxon|1993|p=36}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=18}}。1991年6月にエアバスは[[ユーロ債]]を発行し、4億8千万ドルに上る開発資金の主要部分を調達した{{sfn|Moxon|1993|p=36}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=18}}。

=== 生産と試験 ===
A321のパーツやコンポーネントの生産は、これまでのエアバス機同様に国際分業体制により行われた{{sfn|Moxon|1993|pp=36–40}}。A321の生産からはイタリアのアレーニア社がリスク分担メンバーとしてエアバスに参画し、胴体の前方延長部の生産を担当した{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。胴体後方の延長部については、BAe社が生産を担当した{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。これまでのエアバス機で主翼を担当してきたBAe社は、A321で初めて胴体も分担することになった{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。BAe社の生産分には日本の[[川崎重工業]]が下請けに入っており、A321はエアバスの生産体制に日本企業が参画した最初の事例ともなった{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。

[[File:A321 final assembly (9351765668).jpg|thumb|ハンブルクの最終組立ラインで生産中のA321。]]
これまで全てのエアバス機の最終組立ては、フランスの[[トゥールーズ]]で行われていた{{r|FI-1990-0274}}。これに対してドイツ(当時は西ドイツ)は、自国でも最終組立てを行うことを要望してきた{{r|FI-1990-0274}}{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}。これに対してエアバス・コンソーシアム内で政治的な駆け引きが繰り広げられた結果、A321の最終組立はドイツで行うことに決まった{{r|FI-1990-0274}}{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}。[[ハンブルク]]にある[[ダイムラークライスラー・エアロスペース|DASA]]の工場敷地にA321の最終組立施設が新設され、この施設は[[オットー・リリエンタール]]・ハンガーと命名された{{sfn|Moxon|1993|p=35, 40}}{{sfn|山崎|2009|pp=93–94}}。

A321の初号機となったのはV2500エンジン装備型で、A320ファミリーの通算364号機であった{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。1993年3月3日、A321初号機の完成披露式典が執り行われ、当時のエアバス・インダストリー社長のジャン・ピアソンは「A321は[[第二次世界大戦]]後にドイツで組み立てられた最大の民間機であり、これはヨーロッパの団結によって実現した」という旨を述べた{{sfn|Moxon|1993|p=35, 40}}。その月の11日に初号機は初飛行に成功した{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。続いて5月25日には、CFM56エンジンを装備した2号機が初飛行した{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。

1993年12月17日、V2500装備仕様に対する[[型式証明]]が、欧州の合同航空当局 (Joint Aviation Authorities; JAA) から交付された{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。翌年2月15日には、CFM56装備仕様についてもJAAの型式証明が交付された{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。

=== 就航開始後 ===
[[File:Lufthansa.a321-100.d-aire.arp.jpg|thumb|ルフトハンザ航空によってA321-100は商業運航を開始した。]]
1994年1月27日、A321の初引き渡しがルフトハンザ航空に対して行われた{{r|FI-1994-0252}}{{r|Lufthansa}}。1994年3月21日にはILFCの発注機の初引き渡しが、リース先の[[アリタリア-イタリア航空|アリタリア航空]]に対して行われた{{r|FI-1994-0854}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=18}}。1994年3月中に、ルフトハンザ航空とアリタリア航空によってA321の商業運航が開始された{{r|WAD2003}}{{sfn|Kingsley-Jones et al.|1997|p=18}}。

1994年にはフランスの[[エールアンテール]]へ、その翌年には[[スイス航空]]への引き渡しも始まった{{r|WAC1994}}{{r|WAC1995}}。

開発進行中の1993年3月の時点で、A321の受注数は153機だった{{sfn|Moxon|1993|pp=36–37}}。この時点では、ルフトハンザやアリタリア、スイス航空をはじめとした欧州の航空会社からの受注が大半を占めた{{sfn|Moxon|1993|pp=36–37}}。欧州以外からの受注は、[[クウェート航空]]と[[アンセット・オーストラリア航空]]から合わせて10数機と、ILFC社や{{仮リンク|GATX|en|GATX}}社、{{仮リンク|ギネス・ピート・アビエーション|en|Guinness Peat Aviation}}といったリース会社からの41機であった{{sfn|Moxon|1993|pp=36–37}}。米国ではナローボディの競合機である[[ボーイング757]]が浸透しており、A321は米国の航空会社からの受注を得られていなかった{{sfn|Moxon|1993|pp=36–37}}。

=== 航続距離延長型の開発 ===
A321-100の当初仕様では[[最大離陸重量]]は82.2トンで標準航続距離が4,000ないし4,200キロメートルであったが、ほどなくして標準仕様の最大離陸重量が83トンに引き上げられ、航続距離も4,445キロメートルとなった{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。また、[[ペイロード (航空宇宙)|ペイロード]]の増加目的で最大離陸重量を85トンに引き上げるオプションも追加された{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。そして1995年4月には、更なる航続距離延長型としてA321-200の開発が決定した{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。

A321-200では燃料搭載量を増やすため「追加中央タンク」 (ACT) を装備して機体構造も強化された{{sfn|青木|2003b|p=61}}。ACTは貨物コンテナに準拠した形状を有し、床下貨物室内に搭載される{{sfn|青木|2018|p=119}}。ACTの容量は1個あたり2,900リットルで、A321-200では2個まで搭載できた{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。ACTを2個搭載して最大離陸重量を93.5トンまで引き上げた仕様の場合、航続距離は5,950キロメートルまで延びた{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}{{sfn|青木|2018|p=119}}。A321-200のエンジンにはCFM56とV2500の推力増強型が設定された{{sfn|EASA|2019|pp=85–86}}{{sfn|青木|2003b|p=61}}。A321-200の初号機はV2500エンジン仕様で1996年12月21日に初飛行した{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。

1997年3月20日、V2500エンジンとCFM56エンジンの両仕様のA321-200に対して型式証明が交付された{{sfn|EASA|2019|pp=56–57}}。A321-200の初引き渡しは1997年4月8日に行われ、イギリスのチャーター便航空会社である{{仮リンク|エアワールド (航空会社)|label=エアワールド|en|Airworld}}がILFCからのリースで導入した{{r|FI-1997-1000}}。そして同月11日に、エアワールドによりA321-200の商業運航が開始された{{r|FI-1997-1000}}。

A321-200の開発と並行して、双発機の長距離運航を可能にする[[ETOPS]]の認証作業も進められ、1996年5月29日にA321-100が120分のETOPS認証を取得していた{{sfn|EASA|2019|p=102}}。続いて1997年7月28日には、A321-200も120分のETOPS認証を取得した{{sfn|EASA|2019|p=102}}。

=== アメリカ進出とその後の改良 ===
納入開始から数年間、A321は毎年20機前後が引き渡しされ、1998年には運航機数が100機を超え、2000年には150機を超えた{{sfn|日本航空機開発協会|2019|pp=II-16–II-17}}。2000年頃のA321の主要運航者は、相変わらずルフトハンザやアリタリア、[[エールフランス]]{{efn|エールフランスは、1997年にエールアンテールを吸収合併した。}}といった欧州の航空会社だったが、日本の[[全日本空輸]]や台湾の[[トランスアジア航空]]などのアジアの航空会社による導入も進んだ{{r|WAC2000}}。また、数は少ないもののアフリカや中東、中米の航空会社による運航も見られるようになった{{r|WAC2000}}。しかしエアバス機の中でA321だけが、未だ北米の航空会社から受注を得られていなかった{{r|FI-2000-0090}}。

このような状況の中、航続距離が延長されたA321-200が開発されたことで、北米大陸を横断する直行路線にもA321は就航可能となった{{r|FI-2000-0090}}。2000年1月、[[USエアウェイズ]]が短胴型の[[エアバスA319|A319]]から発注を切り替える形でA321を導入することが報道された{{r|FI-2000-0090}}。2001年1月、同社への納入が開始されA321は北米進出を果たした<ref>{{Cite web |title=US Airways Takes Delivery Of First Airbus A321 |date=2001-01-22 |work=Aviation Week & Space Technology |url=https://aviationweek.com/awin/us-airways-takes-delivery-first-airbus-a321 |accessdate=2019-06-27 }}</ref>。そして2004年から2006年にかけて、A321は180分までのETOPSも認可された{{sfn|EASA|2019|p=102}}。

2000年代に入ると納入機数は毎年概ね30機を超えるようになった{{sfn|日本航空機開発協会|2019|p=8}}。2009年7月時点では、航空会社67社で517機が運用されている{{r|WAC2009}}。運用数の過半数は欧州の航空会社が占めていたが、この頃にはUSエアウェイズや[[中国南方航空]]が30機以上を導入しており、欧州以外でもまとまった機数を運航する航空会社が見られるようになった{{r|WAC2009}}。

[[File:Airbus A321 Blended Wingtip.jpg|thumb|A321のシャークレット拡大写真。[[ターキッシュ エアラインズ]]機の例。]]
エアバスはA320ファミリーに対して各種改良を加えており、2009年11月15日には、主翼のウイング・チップ・フェンスに代わる新しい翼端装置の採用が発表された{{sfn|青木|2018|pp=117–118}}。「シャークレット」と名付けられた新しい翼端は、上に折り曲げたような形状で2.4メートルの高さがある{{sfn|Gerzanics|2017}}。従来の鏃状のウイング・チップ・フェンスよりも燃費性能が向上することで、航続距離の延長が可能となる改良であった{{sfn|青木|2010|pp=56–57}}。シャークレットはまずA320で実用化され、A321についても2012年10月14日にシャークレット装備機の初飛行が行われた{{sfn|青木|2018|pp=117–118}}{{r|aw-10666}}。シャークレット仕様のA321は、2013年7月17日から順次型式証明を取得し{{sfn|EASA|2019|p=57}}、2013年9月10日にフィンエアーに対して初納入された{{r|aw-25795}}。

=== 次世代型A321neoの開発 ===
[[File:Airbus Industrie A321neo D-AVXA (1) (28912667624).jpg|thumb|試験飛行中のA321neoの初号機。]]
単通路機市場の発達とともに、航空会社はさらに長距離路線へ単通路機を投入することを望むようになった{{sfn|Gerzanics|2017}}。A320ファミリーの改良を続けつつ後継機の研究を行ってきたエアバスは、2010年12月1日、エンジンを一新した次世代A320neoファミリーの開発を発表した{{sfn|青木|2018|pp=117–118, 123}}。「neo」は「'''N'''ew '''E'''ngine '''O'''ption」の[[頭字語]]と「新しい」という意味の[[ギリシア語|ギリシャ語]]「neo」をかけたものである{{sfn|青木|2018|p=123}}。その名の通り新型エンジンを装備することで、燃費性能や航続力を向上させる機体である{{sfn|青木|2018|p=123}}{{r|JTB}}。A320ファミリーのうち、neoに移行されるのは、A321、A320、A319の3機種とされた{{sfn|青木|2018|p=123}}。最も短胴型のA318は、将来需要が見込めなかったことから、neoの開発は見送られた{{sfn|青木|2018|p=123}}。まずA320neo、続いてA321neoが開発されることとなった{{r|fg-20101201}}。neoの登場に伴い、既存のA320ファミリーはA320ceo('''C'''urrent '''E'''ngine '''O'''ption; 現行エンジン選択型の意)と呼ばれ区別されることとなった{{sfn|青木|2018|p=123}}。

[[File:Tc-lsa (42253295235).jpg|thumb|ターキッシュ エアラインズのA321neo。]]
A321neoは部品の95%がA321ceoと共通化されている{{sfn|Gerzanics|2017}}{{sfn|Wuerfel|2017}}。A320neoファミリーのエンジンは、CFMI社の[[CFMインターナショナル LEAP|LEAP-1A]]と、[[プラット・アンド・ホイットニー]](以下P&W)社の[[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|PW1100G-JM]]が選定された{{sfn|青木|2018|pp=123–124}}。A321neoのエンジンには両エンジンの推力増強型が採用された{{sfn|青木|2018|pp=123–126}}。A321ceoに対してエンジン推力が強化され、上昇性能も向上した{{sfn|Wuerfel|2017}}。エンジンの直径が拡大し、バイパス比{{r|bypass|group=注釈}}が約2倍になったことで、燃費や騒音、排ガスに関する性能が向上した{{sfn|Wuerfel|2017}}。燃費の向上により航続距離は500海里(約926キロメートル)延長された{{sfn|Wuerfel|2017}}。エンジン直径が大きくなるが、エアバスはエンジン最下面と地面との間隔は必要な距離が確保されるとして降着装置の脚長などは変更されていない{{sfn|青木|2018|p=124}}。

[[抗力]]を減らし燃費性能を向上させるため、neoの主翼端にはシャークレットが標準装備された{{sfn|Wuerfel|2017}}。主翼動翼の空力性能にも改善が加えられた{{sfn|Wuerfel|2017}}。これらの改良により、ceoに比べて巡航高度や上昇限度が引き上げられたほか、離陸性能も向上した{{sfn|Wuerfel|2017}}{{sfn|Gerzanics|2017}}。また、飛行制御システムも改良されている{{sfn|Gerzanics|2017}}。

[[File:JA132A (aircraft) Ukishima-cho Park.jpg|thumb|全日本空輸のA321neo。同社は1998年4月からA321ceoを運航していたが2008年2月に全機を退役させた。その後2016年11月にA321ceoを再導入し、2017年9月にA321neoを就航させた。同社のA321neoは、PW1100G-JM装備型の納入初号機でもあった<ref>{{Cite web|和書|title=各席に個人モニターや電源装備 写真特集・ANA A321neo初号機(機内編) |date=2017-09-10 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/128868 |accessdate=2019-06-30}}</ref>{{r|aw-129064}}。]]
A321neoの初号機はLEAP-1Aエンジン装備型で、2016年2月9日にハンブルクで初飛行に成功した{{r|aw-81975}}{{r|awst-20160216}}。初飛行からわずか約1週間後、A321neo初号機は試験飛行中に[[尻もち事故]]を起こした{{r|awst-20160216}}{{r|fg-20160216}}。事故機は修理を余儀なくされ、試験スケジュールが遅延した{{r|WAD2016}}{{r|awst-20160216}}。翌月9日には、PW1100G-JMエンジン装備のA321neoも初飛行に成功し、初号機と合わせて試験飛行に投入された{{r|WAD2016}}{{sfn|Wuerfel|2017}}。飛行回数130回以上、350時間以上の飛行試験を経て、2016年12月15日に、PW1100G-JM仕様のA321neoが[[欧州航空安全機関]] (EASA) と米国[[連邦航空局]] (FAA) から型式証明を取得した{{r|aw-107064}}。2017年3月1日には、LEAP-1Aエンジン仕様についてもEASAとFAAから型式証明が交付された{{r|aw-113348}}。

2017年1月末までに、A321neoは1,388機の発注を得ていた{{r|aw-113348}}。A321neoの初引き渡しが行われたのは2017年4月20日で、納入初号機はLEAP-1A装備型であった{{r|aw-118118}}。受領したのはリース機で導入した[[ヴァージン・アメリカ]]で、同社は5月31日にサンフランシスコ - ワシントン便でA321neoの商業運航を開始した{{r|aw-118118}}{{r|airwaysmag-20170605}}。PW1100G-JM装備型については、2017年9月5日に[[全日本空輸]]に対して初引き渡しされ、同月12日に日本国内線で路線就航を開始した{{r|fg-20170907}}{{r|aw-128591}}{{r|aw-129064}}。

A321neoについてもETOPS認証作業が進められ、各エンジン仕様について180分までのETOPSが2017年6月から順次認められている{{sfn|EASA|2019|p=103}}。

=== 米国生産の開始 ===
A320neoファミリーの開発と並行して、生産体制の強化も進んでいた{{r|aw-149470}}。2000年代の後半以降、A320ファミリー全体の納入数は概ね増加を続け、A321も納入ペースが加速して2013年には年間納入数が100機を超えた{{sfn|日本航空機開発協会|2019|p=II-8}}。エアバスは、ハンブルクの生産ライン強化に加えて欧州域外にもA320ファミリーの最終組立工場を建設し、2008年に中国の[[天津市|天津]]、2015年には米国・[[アラバマ州]][[モービル (アラバマ州)|モビール]]の工場が稼働を開始した{{r|aw-149470}}<ref>{{Cite web|和書|title=エアバス、天津工場開設10周年 380機以上納入 |date=2018-10-01 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/156900 |accessdate=2019-06-28}}</ref>{{r|aw-85167}}。このうちのハンブルクとモビールでA321の最終組立が行われており、2016年4月に米国製初号機となるA321が[[ジェットブルー]]に納入された<ref>{{Cite web |title=A320 FAMILY: The most successful aircraft family ever |date=2019-06 |work=Airbus |url=https://www.airbus.com/content/dam/corporate-topics/publications/backgrounders/Backgrounder-Airbus-Commercial-Aircraft-A320-Facts-and-Figures-EN.pdf |accessdate=2019-07-08}}</ref>{{r|aw-88235}}。

=== 長距離型A321LRの開発 ===
[[File:4X-AGK Independence Day 09-05-2019b.jpg|thumb|[[アルキア・イスラエル航空]]はA321LRの最初の受領者となった。コックピットの窓が[[エアバスA350 XWB|A350 XWB]]のように黒く縁取りされている。]]
A321は、ボーイングの単通路機である757の後継機市場にも進出した<ref name=awst-20150126>{{Cite web |last=Colvin |first=Bob. |title=Viewpoint: Airbus Should Build A Truly Long-Range 757 Replacement |date=2015-01-26 |work=Aviation Week & Space Technology |url=https://aviationweek.com/commercial-aviation/viewpoint-airbus-should-build-truly-long-range-757-replacement |accessdate=2019-06-15 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20181018011754/http://aviationweek.com/commercial-aviation/viewpoint-airbus-should-build-truly-long-range-757-replacement |archivedate=2018-10-18}}</ref>。しかし大西洋横断が可能な757に対抗するには、A321neoでもまだ航続力が不足していた{{r|fg-20141022}}。本格的に757の後継機需要を獲得するため、かねてよりエアバスは更なる長距離型の開発を検討していた{{r|fg-20141022}}。A321neoの開発進行中だった2015年1月13日、エアバスはA321neoの長距離型を開発することを発表した{{r|aw-53410}}。この長距離型は「Long Range」を意味するA321LRと名付けられた{{r|aw-175852}}。最大離陸重量を97トンに引き上げて床下貨物室に搭載貨物コンテナ数を減らしACT(Additional Center Tank:追加センタータンク)を3台設置にすることで燃料搭載量を増やし、航続距離を7,408キロメートル(4,000海里)に延長するとされた{{r|aw-53410}}。この航続距離は単通路機で最長となり、大西洋横断路線にも就航可能な性能である{{r|aw-53410}}。航空機リース会社の{{仮リンク|エアリース・コーポレーション|en|Air Lease Corporation}}が最初の発注者となった{{r|aw-53410}}。

2018年1月31日、ハンブルクにてA321LRの初飛行が行われた{{r|aw-140324}}。A321LRの初号機は、CFMI社のLEAP-1Aエンジンを装備していた{{r|aw-140324}}。その後の飛行試験では長距離飛行も行われ、2月には[[パリ]]から[[ニューヨーク]]へ初の大西洋横断を行なったほか、4月には[[セイシェル共和国]]・[[マヘ島]]からトゥールーズへ8,797キロメートルの無着陸飛行も行われた{{r|aw-141427}}{{r|aw-145500}}。

2018年10月2日、A321LRに対してEASAとFAAから型式証明が交付された{{r|aw-157022}}。同時に180分までのETOPS認証も取得している<ref>{{Cite web |title=A321neo certified for long-range modifications |date=2018-10-02 |work=Flightglobal |url=https://www.flightglobal.com/news/articles/a321neo-certified-for-long-range-modifications-452359/ |accessdate=2019-06-29}}</ref>。同年11月14日に[[アルキア・イスラエル航空]]に対してA321LRの初引き渡しが行われた{{r|aw-160244}}。A321LRはボーイング757の買い替え需要を取り込み始めている<ref>{{Cite web|和書|title=“797”就航時期、2025年で変わらず マレンバーグ会長 |date=2018-07-16 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/151318 |accessdate=2019-07-04}}</ref>。

=== 超長距離型A321XLRの開発 ===
2019年6月17日、[[パリ航空ショー]]の場で更なる航続力強化型のA321XLRの開発が発表された{{r|aw-175852}}。XLRは、'''X'''tra '''L'''ong '''R'''angeの頭字語で超長距離型とも呼ばれる{{r|aw-175852}}。A321XLRは、最大離陸重量が110トンに引き上げられ、後方貨物室にA321LRより容量の多いRCT(Rear Center Tank:リアセンタータンク)が固定設置され、オプションで前方貨物室にACT1台設置可能<ref>[https://www.aviationwire.jp/archives/253905 A321LRとXLR、航続距離差はタンクにあった 特集・世界最長距離飛べる単通路機の秘密]</ref>{{r|aw-175852}}。航続距離がA321LR比で15%延長され、4700海里(約8,704キロメートル)に達する見込みである{{r|aw-175852}}。パリ航空ショーの期間中に、[[アメリカン航空]]や[[カンタス航空]]、[[イベリア航空]]や[[エアリンガス]]を傘下に持つ[[インターナショナル・エアラインズ・グループ]]、投資会社の{{仮リンク|インディゴ・パートナーズ|en|Indigo Partners}}らから確定48機、コミットメント79機の計127機を受注した<ref>{{Cite web|和書|title=エアバス、パリ航空ショーで363機受注 A321XLRやA220好調 |date=2019-06-21 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/176183 |accessdate=2019-06-29}}</ref><ref>{{Cite web|和書|title=英IAG、A321XLRを14機発注 イベリア航空とエアリンガス向け |date=2019-06-25 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/176456 |accessdate=2019-06-29}}</ref>。2023年納入の計画で開発が進められる{{r|aw-175852}}。

2024年7月19日、エアバスはA321XLR(LEAP-1Aエンジン搭載型)がEASAから型式証明を取得したと発表した<ref>[https://www.aviationwire.jp/archives/304507 A321XLR、EASAから型式証明取得 イベリア航空が世界初就航へ] - AviationWire・2024年7月19日</ref>。10月31日、イベリア航空に初号機が引き渡され、11月14日よりマドリード - ボストン線に投入される<ref>[https://flyteam.jp/news/article/142072 ついにデリバリー !エアバス、A321XLR初号機をイベリア航空へ納入 11月より大西洋線で運航開始] - FlyTeam・2024年11月1日</ref>。

== 機体 ==
=== シリーズ構成 ===
A321シリーズは第一世代のA321ceoと、エンジンを換装した次世代型のA321neoに大きく分けられる。A321ceoとA321neoは、部品の95%が共通とされている{{sfn|Gerzanics|2017}}{{sfn|Wuerfel|2017}}。A321ceoは、基本型のA321-100と航続距離延長型のA321-200の2モデルがある。A321neoでも基本型に加えて長距離型のA321LRがあるほか、さらに航続力を強化した超長距離型のA321XLRの開発も発表されている。以下、特に断りがないものはA321シリーズ共通の仕様である。

=== 形状・構造 ===
[[File:Aeroflot Airbus A321, VP-BQX@GVA,24.02.2007-451cx - Flickr - Aero Icarus.jpg|thumb|ウイング・チップ・フェンス仕様のA321ceoを右側面から見る。]]
[[File:TC-JSO Airbus A321-231 A321 - THY (24795120832).jpg|thumb|シャークレット仕様のA321ceoを右側面から見る。]]
[[File:G-NEOR 23112018LHR (45354047254).jpg|thumb|右側面から見たA321neo。A321neoはシャークレットが標準装備である。]]
[[File:Airbus A321-131, Lufthansa AN0416596.jpg|thumb|A321ceoを真後ろから見た写真。]]
A321は片持ち翼の主翼を[[低翼機|低翼]]に配置した[[単葉機]]である{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-2-0}}。全長は44.51メートル、全高は11.76メートル、全幅はウイング・チップ・フェンス装備型が34.10メートルでシャークレット装備型が35.80メートルである{{sfn|EASA|2019|p=85}}{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-2-0}}。左右の主翼下にパイロンを介して1発ずつ[[ターボファンエンジン]]を備える{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-2-0}}{{sfn|Moxon|1993|p=40}}。[[尾翼]]は通常配置で、[[垂直尾翼]]と[[水平尾翼]]はともに胴体尾部に直接取り付けられている{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-2-0}}。[[降着装置]]は引き込み式の前輪式配置で機首部に前脚、左右の主翼の付け根に主脚がある{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-9-0}}。前脚および左右の主脚はそれぞれ2輪式である{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-9-0}}。

主翼は基本的にA320と共通としつつA321では構造が強化されたほか、後縁のフラップがA321専用の設計である{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。主翼は[[テーパー]]がついた後退翼で、25パーセント翼弦での後退角は25度、アスペクト比{{refnest|group="注釈"|name="aspect_ratio"|アスペクト比とは翼幅の2乗を面積で割った値で翼の細長比を示す値である<ref name=encyclopedia-314/>。}}は9.4である{{sfn|青木|2003b|p=56}}{{sfn|青木|2018|p=120}}。

主翼には[[高揚力装置]]として前縁にスラット、後縁にダブル・スロッテッド・フラップ(二重隙間フラップ)を備える{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–73, 81–82}}。スラットは片翼あたり5枚で、ほぼ全幅にわたり配置されている{{sfn|青木|2003b|p=56}}{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–73}}。フラップはパイロンの位置を境に内翼と外翼に2分割されており、その外側に[[エルロン|補助翼]]がある{{sfn|青木|2003b|p=56}}{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–73}}。主翼上面には片翼あたり5枚の[[スポイラー (航空機)|スポイラー]]がある{{sfn|青木|2003b|p=56}}{{sfn|Rudolph|1996|pp=72–73}}。スポイラーはロール操縦にも用いられる{{sfn|青木|2003b|p=56}}。

[[ウィングレット|翼端装置]]として[[抗力|誘導抵抗]]を減らす効果のあるウィング・チップ・フェンスまたはシャークレットを備える{{sfn|青木|2018|p=118}}{{sfn|青木|2003b|p=56}}。ウイング・チップ・フェンスは鏃状の整流板で、シャークレットはウイングレットのように翼端を上に曲げた形状を有する{{sfn|青木|2003b|p=56}}{{sfn|青木|2018|p=118}}。開発当初はウイング・チップ・フェンスが標準装備であったが、のちにシャークレット仕様が開発され、A321neoではシャークレットが標準装備となった<ref>{{Cite web|和書|title=エアバス、エバー航空にA321シャークレット初号機納入 |date=2013-10-25 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/27622 |accessdate=2019-06-29}}</ref>{{sfn|青木|2018|p=123}}。また、既存の機体にシャークレットを後付けすることも可能である<ref>{{Cite web|和書|title=エアバス、トルコ航空のA321既存機にシャークレット改修実施 |date=2013-12-08 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/29649 |accessdate=2019-06-29}}</ref>。

胴体断面はA320と同一で、幅は3.95メートル、高さが4.14メートルである{{sfn|Moxon|1993|p=36}}{{sfn|青木|2018|p=119}}{{sfn|全日本空輸整備本部技術部|1991|pp=15–16}}。胴体長は全長と同じ44.51メートルである{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-2-0}}。A320と比較すると、主翼の前方で4.27メートル、後方で2.67メートル、合わせて6.94メートル胴体が長い{{sfn|青木|2018|p=119}}{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。

尾翼もA320と共通設計であり、水平尾翼は水平安定板と[[昇降舵]]、垂直尾翼は垂直安定板と[[方向舵]]で構成される{{sfn|青木|2003b|p=56}}{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}。垂直尾翼と水平尾翼は複合材料製であり、[[炭素繊維強化プラスチック]] (CFRP) やガラス繊維強化プラスチック (GFRP) が用いられている{{sfn|Moxon|1993|pp=37, 40}}{{sfn|Airbus|2019|loc=§10-0-0}}。主翼の動翼や降着装置の扉などにも複合材料が使用されている{{sfn|Airbus|2019|loc=§10-0-0}}。

=== エンジン ===
[[File:TAP A321NEO just arrived at Lisbon airport (47555944971).jpg|thumb|[[TAPポルトガル航空]]のA321neo。]]
A321ceoのエンジンは、A320ceoと同様にCFMI社の[[CFMインターナショナル CFM56|CFM56]]と、IAE社の[[V2500 (エンジン)|V2500]]が設定されている{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。A320ceoに対して機体重量が増えているため、エンジンは推力増強型になっている{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。エンジンはパイロンを介して主翼に取り付けられる{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-12-0}}。機体への取り付け方法もA320と同一である{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。エンジンの制御には[[FADEC]] (Full Authority Digital Engine Control) が使用される{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}。

A321neoのエンジンは、A320neoファミリーと同様でCFMI社の[[CFMインターナショナル LEAP|LEAP-1A]]か、P&W社の[[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|PW1100G-JM]]の選択式である{{sfn|EASA|2019|pp=85–86}}。こちらもA321neo用に推力増強型が設定されている{{sfn|青木|2018|pp=123–126}}。A321ceoのエンジンと比べてバイパス比が大きくなり大径化されたことで、A321neoの外観は力強くバランスが取れているとも評される{{sfn|Wuerfel|2017}}。

=== 飛行システム ===
運航に必要な操縦士は[[機長]]と[[副操縦士]]の2名である{{sfn|EASA|2019|p=99}}。

[[File:Airbus A321-232, Turkish Airlines AN1519007.jpg|thumb|A321-200の操縦席。]]
[[旅客機のコックピット|コックピット]]はいわゆる[[グラスコックピット]]化されている{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。レイアウトはA320と共通で、左右の操縦席に各2枚、中央に2枚の計6枚のカラーディスプレイを備える{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。ディスプレイには当初は[[ブラウン管]]が用いられたが、技術革新にともない[[液晶ディスプレイ]]に置き換えられた{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。2014年からは[[ヘッドアップディスプレイ]] (HUD) の装備が追加され、新造機にはオプション設定されているほか、既存機への装着も可能である{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。[[操縦桿|操縦輪]]はなくサイドスティックで操縦を行う{{sfn|Moxon|1993|p=35}}{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。

操縦資格もA320ファミリーで共通化されている{{r|FAST}}。同時にエアバスの[[相互乗員資格]] (Cross Crew Qualification; CCQ) の対象でもあることから、CCQ対象となるエアバス機との間であれば、短時間の訓練で他機種の資格を取得することが可能である{{r|FAST}}。A320ceoファミリーの操縦資格を有する操縦士は、コンピュータを用いた半日の訓練によりA320neoシリーズを操縦できるようになる{{sfn|Wuerfel|2017}}。

操縦システムは[[フライ・バイ・ワイヤ]]技術が全面的に用いられており、コックピットと操縦翼面の間の通信は電気信号を介して行われる{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。制御用のコンピュータは複数搭載され、システムは[[冗長化]]されている{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。

=== 客室・貨物室 ===
[[File:Airbus A321-211, Austrian Airlines AN1886463.jpg|thumb|オーストリア航空のA321の内装。]]
[[File:Eva Air Airbus A321 Business Class (24240749510).jpg|thumb|エバー航空が運航するA321のビジネスクラスの内装。]]
[[File:Interior of Delta Air Lines Airbus A321.jpg|thumb|デルタ航空のA321の内装。]]
客室の全長は34.44メートルである{{sfn|青木|2010|pp=54–55}}。客室には中央に1本の通路があり、[[エコノミークラス]]の座席配置は通路を挟んで3-3席の6[[アブレスト]]、上級クラスでは2-2席の4アブレストである{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-5-0}}。座席数は、2クラス編成の標準仕様で185席、エコノミークラスのみであれば最大220席まで配置可能である{{sfn|青木|2018|pp=119–120}}。座席の頭上には、手荷物を収容するオーバーヘッド・ストウェッジが備わる{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-5-0}}。通常の内装よりも座席幅を詰めて通路幅を広げた内装案も用意されている{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-5-0}}。航空会社の独自仕様も見られる。例えばアメリカン航空では、北米大陸横断路線のA321を[[ファーストクラス]]、ビジネスクラス、エコノミークラスの3クラス仕様としている<ref>{{Cite web|和書|title=アメリカン航空、LA-ボストンにA321大陸横断仕様機 ファーストとビジネスはベッドに |date=2018-12-06 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/162036 |accessdate=2019-06-29}}</ref>ほか、フランスの航空会社[[ラ・コンパニー]]は、全席ビジネスクラスとしたA321を運航している<ref>{{Cite web |title=La Compagnie’s first A321neo makes inaugural transatlantic flight |date=2019-01-07 |work=Intelligent Aerospace |url=https://www.intelligent-aerospace.com/commercial/article/14034640/la-compagnies-first-a321neo-makes-inaugural-transatlantic-flight |accessdate=2019-07-01}}</ref>。

客室の扉配置は左右対称である{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-4-1}}。乗降用ドアおよびサービスドアが客室最前方と最後方に1組ずつある{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-4-1}}。A321ceoでは非常口として、扉下端が床面まである大型のタイプI扉を主翼の前後に備える{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}{{sfn|EASA|2019|p=79}}。A321neoの非常口配置には、A321ceoと同様の標準仕様のほかに、エアバス・キャビン・フレックス (ACF) と名付けられた仕様がある{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}<ref>{{Cite web|和書|title=エアバス、客室ゆったりのA321neo初号機ロールアウト オプション設定機 |date=2018-01-09 |work=Aviation Wire |url=https://www.aviationwire.jp/archives/138509?ssl=1 |accessdate=2019-06-29}}</ref><ref name=airbus-press>{{Cite press release |title=Airbus delivers the first A321neo in Cabin Flex configuration to Turkish Airlines |date=2018-07-13 |work=Airbus |url=https://www.airbus.com/newsroom/press-releases/en/2018/07/airbus-delivers-the-first-a321neo-in-cabin-flex-configuration-to.html |accessdate=2019-06-29}}</ref>。ACF仕様では、主翼前方の大型非常口を無くして代わりに主翼上に小型のタイプIII扉を2枚配置する{{sfn|EASA|2019|p=79}}{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}{{r|airbus-press}}。これにより、客席数を最大で240席設置することが可能である{{r|airbus-press}}。
また、ACF仕様では、客室前方の上級クラスの座席配置の柔軟性を高めるため、客室前方の非常口ドアを動作させないオプションも用意されている{{r|aw-14595}}。

床下の貨物室は主翼を挟んで前後に2区画に分かれている{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-6-0}}。両貨物室には、LD-3-46/-46W航空貨物コンテナを5個ずつ搭載可能である{{sfn|青木|2018|p=119}}{{sfn|青木|2003b|pp=60–61}}{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-6-0}}がLRやXLRは貨物積載容量を犠牲に燃料搭載量を増やすトレードオフしているため、ともに最大前方で1台、後方で2台搭載コンテナが減少する<ref>[https://www.airbus.com/sites/g/files/jlcbta136/files/2022-02/Airbus-techdata-AC_A321_0322.pdf]</ref>。LD-3-46/-46Wコンテナは、大型機用のLD-3コンテナと同じ幅で、単通路機用に高さを低くしたものであり、そのまま大型機へ搭載することも可能である{{sfn|青木|2003b|p=58}}。また、後部貨物室の最後尾には、ばら積み貨物のスペースが設けられている{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-6-0}}。

前方貨物室と後方貨物室の扉は各1か所で、貨物コンテナに対応した寸法を有する{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-6-0, §2-7-0}}。この扉は外開きで、開口部の高さが1.24メートル、幅が1.82メートルである{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}。
最後部には、ばら積み貨物用の扉が1か所ある{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}。ばら積み貨物用扉は内開きで、開口部の高さが最大で0.89メートル、幅が0.95メートルである{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}。これらの貨物扉はいずれも右舷にある{{sfn|Airbus|2019|loc=§2-7-0}}。

== 旅客転用改修貨物型(P2F型) ==
{{Anchors|旅客改修貨物型|旅客転用改修貨物|旅客転用改修貨物型}}
シンガポール大手MRO企業STエアロスペースとエアバスがA320とA321について旅客転用改修貨物('''p'''assenger-'''to'''-'''f'''reighter:'''P2F''')型の開発で合意、P2F型機の改修、販売、管理を行う企業をドイツのエアバス、STエアロスペース共同出資の航空宇宙メーカーエルベ・フルークツォイクヴェルケ(Elbe Flugzeugwerke:EFW)へ委託する<ref>[https://flyteam.jp/news/article/51504 エアバス、EFW、STエアロスペースとA320/A321貨物機改修で署名]</ref>、機体は従来の床下(ロアーデッキ)貨物室に追加して、メインデッキにA320で最大10個、A321で最大14個の[[航空コンテナ]]を積みこめるよう前部胴体左舷側一部を大型カーゴドアに交換、メインデッキ床下補強等の改修をし、最大積載可能量をA320が21.9t、A321で27.9t<ref>[https://www.elbeflugzeugwerke.com/fileadmin/pdfs/efw-druck-brochure-A320-02-Screen.pdf A320/A321 P2F Download Product Brochure]</ref>にする。2020年2月25日、ヨーロッパ航空安全庁(EASA)から追加型式証明(STC)を取得し<ref>[https://flyteam.jp/news/article/121870 A321の貨物機改修プログラム、EASAから追加型式証明を取得]</ref>、[[ボーイング757]]貨物機などの入れ替え需要やCOVID-19によるeコマースなどの成長を取り込む見通しを立てて<ref>[https://www.edb.gov.sg/ja/industries-case-studies/case-studies-library/201807-news07.html STエアロスペース、A321旅客機10機の改造契約を獲得]</ref>{{仮リンク|カンタス・フレート|en|Qantas Freight}}<ref>[https://flyteam.jp/news/article/128957 カンタス航空、世界初の貨物専用機A321 P2F 運航開始]</ref>や[[ルフトハンザ・カーゴ]]<ref>[https://flyteam.jp/news/article/133459 ルフトハンザ・カーゴ、A321旅客機を貨物機へ2機改修]</ref>などが運用している。日本では[[ヤマトホールディングス]]が同機材をリース導入し、2024年4月から長距離トラック運転手の年間残業時間規制が厳しくなるのを機に首都圏と北海道、九州、沖縄地域への国内航空貨物事業に参入する。運航は[[日本航空]](JAL)と協力し、JALグループのうちA320シリーズを運用している[[ジェットスタージャパン]]に委託する予定であったが<ref>{{Cite web|和書|title=持続的な物流ネットワークの構築に向けて フレイターの運航を2024年4月から開始 |url=https://www.yamato-hd.co.jp/news/2021/newsrelease_20220121_5.html |website=ヤマトホールディングス株式会社 |access-date=2022-12-20 |language=ja}}</ref>、[[ボーイング737]]のみ運用している[[スプリング・ジャパン]]に変更された<ref>{{Cite web|和書|title=2024年4月から運航を開始する貨物専用機の運航路線・運航便数を決定 |url=https://www.yamato-hd.co.jp/news/2022/newsrelease_20221122_1.html |website=ヤマトホールディングス株式会社 |access-date=2022-12-20 |language=ja}}</ref>。

== 運用 ==
[[File:Dragonair Airbus A321 (Hong Kong).jpg|thumb|タラップが接続されたA321。]]
[[File:Lufthansa Airbus A321-231; D-AISO@MUC;02.07.2010 578al (4780768675).jpg|thumb|[[ボーディングブリッジ]]が接続されたA321。]]
2018年末の時点で、A321の受注数は4,079機で、納入済みが1,837機、受注残が2,242機である{{sfn|日本航空機開発協会|2019|pp=II-4, II-8, II-12}}。同時点において1,751機が運航中で、そのうちの1,637機がA321ceo、114機がA321neoである{{sfn|日本航空機開発協会|2019|p=II-17}}。1994年の納入開始以来、運航機数は一貫して増加している{{sfn|日本航空機開発協会|2019|pp=II-16–II-17}}。特に2000年代後半からは納入数が伸びており、年間納入数は2013年には100機を超え、2016年には200機を超えた{{sfn|日本航空機開発協会|2019|p=8}}。

2018年7月時点の統計によると、民間航空会社113社で1,687機が運用されている{{r|WAC2018}}。地域別で見ると、アジア・太平洋地域の32社で600機、欧州の51社で524機、南北アメリカの18社で511機、中東・アフリカ地域の12社で52機が運用されている{{r|WAC2018}}。

同じ統計によると、最も多くのA321を運用している航空会社は、アメリカン航空でその数は219機、次いで中国南方航空で107機である{{r|WAC2018}}。3位以下を地域別にみると、アジアでは[[中国東方航空]]が67機、[[中国国際航空]]が61機、[[ベトナム航空]]が57機である{{r|WAC2018}}。欧州では、[[ターキッシュ エアラインズ]]が68機、ルフトハンザ航空が63機を運用している{{r|WAC2018}}。北米では、[[デルタ航空]]とジェットブルーが各58機、南米では[[LATAM ブラジル|LATAMブラジル]]が31機を運用している{{r|WAC2018}}。

日本におけるA321旅客型ではANAで26機(22機がA321neoで残る4機はA321ceo)、[[Peach Aviation|ピーチアビエーション]]でA321LRを3機、[[ジェットスター・ジャパン]]で3機のA321LRを保有しており、[[日本航空|JAL]]も2028年度から国内線用[[ボーイング767]]の後継として、11機のA321neo導入を決めている<ref>[https://www.aviationwire.jp/archives/296931 JAL、エアバスとボーイングから42機導入 国際線にA350-900と787-9、国内線A321neo]</ref>{{efn|旧[[日本エアシステム|JAS]]からするとA300、[[エアバスA350|A350]]に次いで3機種目、JALとしてはA300を除くと2機種目のエアバス機となり、単通路機では初。また、日本の大手航空2社(ANA、JAL)でエアバスの機種が揃うのもA321neoが初となる。なお、仕様ではANAがA321ceoと同じ標準仕様なのに対し、JALは最大240席まで増やせるACF仕様が採用される予定。}}。

航空会社以外での利用例もあり、ドイツ政府が要人輸送機としてA321を導入した<ref name=fg-20180921>{{Cite web |title=PICTURE: Ex-Lufthansa A321 joins Luftwaffe |date=2018-09-21 |work=Flightglobal |url=https://www.flightglobal.com/news/articles/picture-ex-lufthansa-a321-joins-luftwaffe-452090/ |accessdate=2019-06-25}}</ref>。ルフトハンザ航空から購入した中古機を改造したもので、要人輸送用の装備のほか[[航空救急]]用途のための医療設備も備える{{r|fg-20180921}}。この機体は[[ドイツ空軍]]が運用している{{r|fg-20180921}}。

近年は貨物専用機への改修も実施されており、日本では[[ヤマトホールディングス]]が3機をリース導入、[[スプリング・ジャパン]]が受託運航し、2024年4月より首都圏と北海道、九州、沖縄地域間の輸送で昼間は[[成田空港]]から[[新千歳空港]]と[[北九州空港]]、[[那覇空港]]、夜間は[[東京国際空港|羽田空港]]から3地点に運航され、塗装は[[ヤマト運輸]]の新カラーリングをベースにクロネコも描かれる予定<ref>[https://www.aviationwire.jp/archives/243255 ヤマトとJAL、貨物機を24年4月から運航 クロネコ描いたA321P2F導入]</ref><ref>[https://mainichi.jp/articles/20220121/k00/00m/020/260000c ヤマトが貨物専用機運航 24年4月、北九州など国内5拠点結ぶ] 2022/1/21 20:02 毎日新聞</ref>。

{| class="wikitable" style="text-align:center; background:#fbf8db;"
|+2024年4月現在<ref name="Airbus_O_D">{{Cite web |date=31 March 2024 |title=Airbus Orders&Deliveries |url=https://www.airbus.com/en/products-services/commercial-aircraft/market/orders-and-deliveries |access-date= 18 April 2024 |publisher=[[Airbus|Airbus S.A.S.]]}}</ref>
|- style="color:black; font-weight:bold; background:#ccddff;"
| ||受注||納入
||残
|-
|-
| A321ceo||1,784||1,784
| A321-111 || 1995年5月27日 || CFM International CFM56|CFM56-5B1 または 5B1/P または 5B1/2P
||–
|-
|-
| A321neo ||6,331||1,339
| A321-112 || 1995年2月15日 || CFM International CFM56|CFM56-5B2 または 5B2/P
||4,947
|-
|-
| '''合計''' ||'''8,115'''||'''3,123'''
| A321-131 || 1993年12月17日 || International Aero Engines V2500|IAE Model V2530-A5
||'''4,992'''
|}


{| class="wikitable" style="text-align:center; background:#fbf8db;"
|- style="color:black; font-weight:bold; background:#ccddff;"
| colspan="2" | ||2024
|'''合計'''
|-
|-
| rowspan="4" |'''引渡数'''
| A321-211 || 1997年5月20日 || CFM International CFM56|CFM56-5B3 または 5B3/P または 5B3/2P
|A321ceo
|–
|'''1,784'''
|-
|-
|A321neo
| A321-212 || 2001年8月31日 || CFM International CFM56|CFM56-5B1 または 5B1/P または 5B1/2P
|91
|'''1,339'''
|-
|-
|'''合計'''
| A321-213 || 2001年8月31日 || CFM International CFM56|CFM56-5B2 または 5B2/P
|'''62'''
|'''3,123'''
|}

{| class="wikitable" style="text-align:center; background:#fbf8db;"
|- style="color:black; font-weight:bold; background:#ccddff;"
| colspan="2" | ||2014||2015||2016||2017||2018||2019||2020||2021||2022||2023
|-
|-
| rowspan="4" |'''引渡数'''
| A321-231 || 1997年5月20日 || International Aero Engines V2500|IAE Model V2533-A5
|A321ceo
|150||184||222||183||99||38||9||22||–||–
|-
|-
|A321neo
| A321-232 || 2001年8月31日 || International Aero Engines V2500|IAE Model V2530-A5
|–|||–||–||20||102||168||178||199||264||317
|-
|-
|'''合計'''
| A321-251N || 2016年5月31日 || CFM International LEAP|LEAP-1A32
|'''150'''||'''184'''||'''222'''||'''203'''||'''201'''||'''206'''||'''187'''||'''221'''||'''264'''||'''317'''
|}

{| class="wikitable" style="text-align:center; background:#fbf8db;"
|- style="color:black; font-weight:bold; background:#ccddff;"
| colspan="2" |
||2004||2005||2006||2007||2008||2009||2010||2011||2012||2013
|-
|-
| rowspan="4" |'''引渡数'''
| A321-251NX || 2018年3月22日 || CFM International LEAP|LEAP-1A32
|A321ceo
|35||17||30||51||66||87||51||66||83||102
|-
|-
|A321neo
| A321-252N || 2017年12月18日 || CFM International LEAP|LEAP-1A30
|–|||–||–||–||–||–||–||–||–||–
|-
|-
|'''合計'''
| A321-252NX || 2018年3月22日 || CFM International LEAP|LEAP-1A30
|'''35'''||'''17'''||'''30'''||'''51'''||'''66'''||'''87'''||'''51'''||'''66'''||'''83'''||'''102'''
|-
|}
| A321-253N || 2017年3月3日 || CFM International LEAP|LEAP-1A33/35A

{| class="wikitable" style="text-align:center; background:#fbf8db;"
|- style="color:black; font-weight:bold; background:#ccddff;"
| colspan="2" | ||1994||1995||1996||1997||1998||1999||2000||2001||2002||2003
|-
|-
| rowspan="4" |'''引渡数'''
| A321-253NX || 2018年3月22日 || CFM International LEAP|LEAP-1A33
|A321ceo
|16||22||16||22||35||33||28||49||35||33
|-
|-
|A321neo
| A321-271N || 2016年12月15日 || Pratt & Whitney PW1100G|PW1133G/GA
|–|||–||–||–||–||–||–||–||–||–
|-
| A321-271NX || 2018年3月22日 || Pratt & Whitney PW1100G|PW1133G/GA
|-
| A321-272N || 2017年5月23日 || Pratt & Whitney PW1100G|PW1130G
|-
| A321-272NX || 2018年3月22日 || Pratt & Whitney PW1100G|PW1130G
|-
|-
|'''合計'''
|'''16'''||'''22'''||'''16'''||'''22'''||'''35'''||'''33'''||'''28'''||'''49'''||'''35'''||'''33'''
|}
|}


== 運航状況 ==
== 事故・事件 ==
2019年8月現在の統計によると、A321の機体損失に至った事故および事件は6件ある{{r|asn-statistics}}。
世界各国で使われており、一般的なフルサービスキャリアから[[格安航空会社]]までさまざまである。アジアの航空会社を中心に、日本路線にA321を投入しているところもある。また[[アメリカン航空]]では、[[ファーストクラス]]および[[ビジネスクラス]]にフルフラットシートを装備した、世界唯一となる3クラス制のA321を[[ジョン・F・ケネディ国際空港|ニューヨーク]]と[[サンフランシスコ国際空港|サンフランシスコ]]・[[ロサンゼルス国際空港|ロサンゼルス]]を結ぶ路線に投入している<ref>{{cite web|url=http://www.americanairlines.jp/intl/jp/aboutUs/newPlanes.jsp|title=最新機材の導入により、さらなる発展を 全てのクラスで体験できる、最新の機内サービス|accessdate=2014-03-28|publisher=アメリカン航空}}</ref>。


A321による死亡事故は、2010年7月28日に発生した[[エアブルー202便墜落事故]]の1件のみである{{r|asn-statistics}}{{r|asn-20100728-0}}。[[パキスタン]]・[[カラチ]]の[[ジンナー国際空港]]発[[ベナジル・ブット国際空港]](旧イスラマバード国際空港)行きのエアブルー202便が、悪天候の中ベナジル・ブット国際空港への着陸を試みたところ、空港近くの丘陵地帯に墜落し、乗員乗客152人全員が死亡した{{r|asn-20100728-0}}。事故調査の結果、悪天候下で着陸を強行しようとして乗員が規定や手順を逸脱して危機的な低空飛行を行ったことが原因と結論づけられた{{r|asn-20100728-0}}。
=== 日本国内での運用状況 ===
[[ファイル:NH A321-131 JA102A.jpg|thumb|250px|ANA「A321-100 日本の風景」特別塗装機]]
[[ファイル:ANA A321-200 (JA111A).jpg|thumb|250px|ANA籍のA321-200 (JA111A)]]
日本では[[全日本空輸]] (ANA) により1998年3月から導入が開始され、同年4月11日より運航開始<ref name="ANAA321運航開始">{{cite web|url=http://www.ana.co.jp/pr/980406-J/980409_1.html|title=全日空、エアバスA321の運航を開始 〜4月11日に日本の空へデビューします〜|accessdate=2014-04-05|date=1998-04-09|publisher=全日本空輸}}</ref>。2000年6月にかけて最大で7機がリースで導入され<ref name="ANAA321neo導入">{{cite web|url=http://flyteam.jp/news/article/33458|title=ANA、2008年以来のA321を導入へ エンジン換装型A321neoを32機|accessdate=2014-03-29|date=2012-03-28|publisher=フライチーム}}</ref>、運航されていた。すでに導入していた[[A320]]と異なり、客席上部に日本の航空会社の中小型機材としては初めて、客室内に[[液晶ディスプレイ|液晶モニター]]を設置。8席の[[スーパーシート]]を含む191席配置であった。最初の2機は同社の設立45周年(1997年)を記念した特別塗装機「日本の風景」(ANA・[[エアーニッポン]]就航地22か所の風景写真を[[リバーサルフィルム|ポジフィルム]]風に掲載<ref>{{cite web|url=http://www.ana.co.jp/pr/971012-J/971204.html|title="A321" と "B777-300"を特別塗装で導入 〜 全日空の新機種がカラフルにデビューします 〜|accessdate=2014-4-5|date=1997-12-4|publisher=全日本空輸}}</ref>)として登場するなど、当初は国内亜幹線の主力機として期待されていた。


事故以外に、A321はこれまでに2件のテロ事件に巻き込まれ、計225人が死亡している{{r|asn-statistics}}。
しかし、同社の方針が変更され、2000年にスーパーシートが廃止されてからは存在が中途半端となり(普通席195席仕様<ref name="ANAA321退役">{{cite web|url=http://www.ana.co.jp/pr/07-1012/07-148.html|title=ありがとう、エアバスA321型機 〜2月29日(金)エアバスA321が函館→羽田線を最後に退役いたします〜|accessdate=2014-04-05|date=2007-12-27|publisher=全日本空輸}}</ref>)、A320と[[ジェットエンジン|エンジン]]が異なり保守コストがかかること(A320は[[CFMインターナショナル_CFM56|CFM56]]、A321(1998年 - 2000年導入A321-100)は[[インターナショナル・エアロ・エンジンズ|IAE]] [[V2500_(エンジン)|V2500]])や胴体長が長く重心を取りづらいなど使い勝手が悪い中途半端な機材という理由で、[[ボーイング777#777-300.EF.BC.88773A.EF.BC.89|ボーイング777-300]]よりも後に就航したにもかかわらず全機を早期退役させることが決定、当初は2003年度末の予定とされた<ref>{{cite web|url=http://www.ana.co.jp/pr/01-0103/01-021.html|title=中期経営計画におけるグループ機材計画の修正ならびに人事・組織体制の刷新について|accessdate=2014-4-5|date=2001-03-28|publisher=全日本空輸}}</ref>。ANAロゴに変更されることなく、全機「全日空 All Nippon Airways」ロゴのまま退役となった。退役は計画より遅れたものの段階的に進み、2008年2月29日の863便(羽田→函館)・864便([[函館空港|函館]]19:00発→[[東京国際空港|羽田]]20:25着)を最後に営業運航を終了した<ref name="ANAA321退役"></ref>。なお、同日午前に[[鳥取空港|鳥取]]発→羽田行の294便(A320)が機材故障で運休となったため、863便の前に急遽羽田発→鳥取行の295便として運航し、294便の振替を兼ねて復路296便として運航した。羽田-鳥取線は初便の就航路線であった<ref name="ANAA321運航開始"></ref>。これにより全日本空輸におけるA321の運航は一旦終了した。


1件目は、2015年10月31日に発生した[[コガリムアビア航空9268便|メトロジェット9268便爆破事件]]である。[[エジプト]]の[[シャルム・エル・シェイク国際空港]]から[[ロシア]]の[[プルコヴォ空港]]へ向かっていたメトロジェット9268便が[[シナイ半島]]中部に墜落した{{r|asn-20151031-0}}。乗客乗員224人全員が死亡し、2019年6月現在において、A321に関する航空事故・事件の中で最大の死者数である{{r|asn-statistics}}。当初は事故と事件の双方の可能性が示唆されたが、ロシアの調査当局はテロリストが機内に持ち込んだ爆発物が原因と結論づけた<ref>{{Cite web|和書|title=9268便の墜落原因に様々な憶測 |date=2015-11-03 |work=ロシア・ビヨンド |url=https://jp.rbth.com/politics/2015/11/02/536375 |accessdate=2019-06-18 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20170314211606/http://jp.rbth.com/politics/2015/11/02/536375 |archivedate=?}}</ref><ref>{{Cite web |title=Metrojet Flight 9268: Russia confirms bomb destroyed plane in Egypt |date=2015-11-18 |work=CBC News |url=https://www.cbc.ca/news/world/russia-kremlin-metrojet-bomb-1.3322272 |accessdate=2019-06-18}}</ref>{{r|asn-20151031-0}}。
その後、2010年代になり、A320ファミリーはエンジンをさらなる高性能エンジンに変更し経済性をあげたneo型が開発され(以降、従来型はceo、改良型はneo表記)、ANAは先代A321-100引退から約6年が経過した2014年3月27日、2017年度からA321neoを23機導入すると発表した<ref>{{cite web|url=http://www.aviationwire.jp/archives/34148|title=ANA、777-9XとA321neoなど70機発注 過去最大の投資規模|accessdate=2014-03-28|date=2012-03-27|publisher=Aviation Wire}}</ref><ref>{{cite web|url=http://v4.eir-parts.net/v4Contents/View.aspx?cat=tdnet&sid=1135551|title=固定資産(航空機)の取得に関するお知らせ|accessdate=2015-01-30|date=2014-03-27|publisher=全日本空輸}}</ref>。さらに2015年1月30日にはA321ceoを4機、A321neoを3機追加発注することを発表し、2015年4月にはエアバスと正式契約を結んだ<ref>{{cite web|url=http://www.airbusjapan.com/single-jp/detail/anaa3217/|title=A320ファミリーの機体数が日本でさらに拡大|accessdate=2015-01-30|date=2015-01-30|publisher=エアバス}}</ref><ref>{{cite press release|url=http://www.anahd.co.jp/pr/201501/pdf-3/20150130-3-1.pdf|title=固定資産(航空機)の取得に関するお知らせ|format=PDF|accessdate=2015-01-30|date=2015-01-30|publisher=ANAホールディングス}}</ref>。これによりA321ceoは4機、A321neoは26機発注することとなった。2018年になってA321neo4機が同時期に発注されたA320neo4機へ変更されたことが確認された。


2件目は、2016年2月2日に発生した{{仮リンク|ダーロ航空159便爆発事件|en|Daallo Airlines Flight 159}}である。被害にあったのは[[ソマリア]]の[[アデン・アッデ国際空港]]発[[ジブチ国際空港]]行きだった[[ダーロ航空]]159便で、離陸から約15分後に機内で爆発が発生した{{r|asn-20160202-0}}。胴体に穴が空き、乗客1名が機外に吸い出されて死亡した{{r|asn-20160202-0}}。当該機はアデン・アッデ空港に引き返して着陸に成功し、残りの搭乗者は無事だった{{r|asn-20160202-0}}。
A321ceo(2016年度導入A321-200)は前回(1998年 - 2000年導入A321-100)と異なり、シャークレット装備で搭載され、エンジンはANA運用中のA320ceoと同一のCFM56である。座席数は8席の[[プレミアムクラス]]を含む194席でエアバスがA320ファミリー用の新しい客室レイアウトで提供している「スペース・フレックス」を国内初採用した機体<ref>[http://www.aviationwire.jp/archives/103538 ANA、A321ceo初号機が羽田到着 上級クラスに電動新シート]</ref>となる。A320neo・A321neoのエンジンは[[IHI]]、[[三菱重工業]]、[[川崎重工業]]なども開発に参画する[[プラット・アンド・ホイットニー|PW]][[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|1100G-JM]]を搭載<ref name="ANAA321neo導入"></ref>。ANAはA321ceo・[[A320neo]]は2016年度、A321neoは2017年度から就航となるため、neo納入後ceo同士・neo同士では同一のエンジンが導入されるがceoとneoでは違うエンジンのため、整備効率などが悪いが、ANAで購入後にリース会社へ一度売却の上リース契約を結ぶ「セール・アンド・リースバック」で導入していて、A321ceoはA321neo導入までのつなぎとして発注した機材のため、長期運用することを前提としていないが、リース機のため柔軟な運用が可能で[[2020年]]に開催される[[2020年夏季オリンピック|東京オリンピック]]に伴い予想される国内線旅客増加に対応することが可能となる<ref>{{cite web|url=http://www.aviationwire.jp/archives/54244|title=ANA、787-10など15機発注へ|accessdate=2015-01-31|date=2015-01-30|publisher=Aviation Wire}}</ref>。


直近の機体損失事故は2019年[[8月15日]]に発生した。[[モスクワ]]の[[ジュコーフスキー空港]]を離陸直後の[[ウラル航空178便不時着事故|ウラル航空178便]]が[[バードストライク]]を起こし、空港から1キロメートルほどのトウモロコシ畑に胴体着陸した<ref>{{Cite web |title=Moscow Passenger Plane Makes 'Miraculous' Crash-Landing in Cornfield |date=2019-08-15 |work=The Moscow Times |url=https://www.themoscowtimes.com/2019/08/15/moscow-passenger-plane-makes-miraculous-crash-landing-in-cornfield-a66855 |accessdate=2019-08-15}}</ref><ref name=47news>{{Cite web|和書|title=エンジン停止、トウモロコシ畑に胴体着陸も火災・死者なし ロシア、乗客ら拍手「機長は英雄」 |date=2019-08-15 |work=47NEWS |url=https://nordot.app/534645005109707873?c=39546741839462401 |accessdate=2019-08-15}}</ref>。子ども9人を含む23人がけがをしたものの死者はいなかった{{r|47news}}。
2016年10月31日未明、ANAはドイツ・ハンブルク工場製A321-200ceoを途中3カ所経由し羽田に到着受領、当初、11月15日から[[東京国際空港|羽田]]/[[広島空港|広島]]/羽田/[[高松空港|高松]]/羽田/[[鹿児島空港|鹿児島]]/羽田で運航予定だったが、11月12日に前日に発生したA320ceoトラブルにより、急遽代替機材として羽田/[[宮崎空港|宮崎]]/羽田/高松/羽田/[[関西国際空港|関空]]/羽田で就航開始した<ref>[http://flyteam.jp/airline/ana/news/article/71540 ANA、A321の「JA111A」を11月12日に定期便で運航開始 3路線に投入]</ref>。2017年9月8日、ANAはA321neoの最初の一機(JA131A)を途中2カ所経由で受領し<ref>[https://www.ana.co.jp/group/pr/201709 /20170907.html 国内線仕様機としてはANA初、全席シートモニター装着のA321neo導入](ANA NEWS 2017年9月7日)</ref>、12日の羽田-熊本線から国内線に就航させた。前年に投入されたA321ceoと違い、A321neoでは普通席にも個人用モニタを装備している<ref>[http://www.aviationwire.jp/archives/129064 ANA、A321neo国内初就航 電源と個人モニター装備]([[Aviation Wire]] 2017年9月12日)</ref>。


== 主要諸元 ==
2018年7月18日に[[Peach Aviation]]がエアバスと2016年11月に締結したA320neo10機の購入契約を8機へ変更し、新たに A321LRを2機をアジア初導入し、2020年度に進出する日本と北東アジアの中距離 LCC 事業用の機材として運用する計画を発表した<ref>[https://corporate.flypeach.com/cms/wp-content/uploads/2018/07/180718-Press-Release-J.pdf アジア初!エアバス A321LR を導入 ~北東アジアの中距離 LCC の歴史を築く第一歩~ ]</ref>。[[ジェットスター・ジャパン]]も同年11月27日に、A321LRを3機発注し、2020年の就航を予定していることを発表<ref>[https://www.jetstar.com/_/media/files/japan-and-korea/japan/news/2018/20181127.pdf?la=ja-jp&rev=85ebef92d79d4dbf9007d7a862503bfb ジェットスター・ジャパン 次なる成長フェーズにむけてエアバス A321LR の導入を決定]ジェットスター・ジャパンプレスリリース2018年11月27日</ref>。
{| class="wikitable" style="font-size:90%; text-align:center;"

|+ 各モデルの主要諸元
== 機体仕様 ==
!
(仕様による差異あり)<ref>[http://www.airbus.com/content/dam/corporate-topics/publications/backgrounders/techdata/aircraft_characteristics/Airbus-Commercial-Aircraft-AC-A321-May-2017.pdf Airport and Maintenance Planning AC A321 / A321neo May 2017]</ref>
!A321ceo<ref>https://aircraft.airbus.com/en/aircraft/a320-the-most-successful-aircraft-family-ever/a321ceo</ref>
<!--エアバス公式サイトのスペック集 http://www.airbus.com/aircraftfamilies/passengeraircraft/a320family/a321/specifications/ も参照しました-->
!A321neo<ref name="名前なし-20240628120631">https://aircraft.airbus.com/en/aircraft/a320-the-most-successful-aircraft-family-ever/a321neo</ref>

!A321LR<ref name="名前なし-20240628120631"/>
{| class="wikitable" style="text-align:center;font-size:80%;"
!A321XLR<ref name="名前なし-20240628120631"/><ref>https://aircraft.airbus.com/en/aircraft/a320/a321xlr</ref>
!!!A321ceo!!A321neo!!A321(NX)LR!!A321XLR
|-
|-
!運航乗務員数
!全幅
|colspan="4"|2名
|34.10 m<br>(シャークレット装備機は35.80m)
|-
| colspan="3" |35.80m
!標準座席数
| 170 - 210席
|colspan="3"|180 - 220席
|-
!最大座席数
| 220席
|colspan="3"|244席
|-
|-
!全長
!全長
| colspan="4" |44.51 m
|colspan="4"|44.51&nbsp;[[メートル|m]]
|-
!全幅
|colspan="4"|34.10&nbsp;m(シャークレット装備機は35.80&nbsp;m)
|-
|-
!全高
!全高
| colspan="4" |11.76 m
|colspan="4"|11.76&nbsp;m
|-
|-
!胴体幅
!胴体幅
| colspan="4" |外部3.96 m/ 内部 3.70 m
|colspan="4"|3.95&nbsp;m
|-
|-
!胴体高
!乗客座席定員
|colspan="4"|4.14&nbsp;m
|220 (1-class, 最大) <br/> 199 (1-class, 標準) <br/>185 (2-class, 標準)
|206 (2-class, 標準)
|colspan="2"|240 (1-class, 最大)
|-
|-
!最大離陸重量
![[最大離陸重量]] (MTOW)
| colspan="2"|93.5&nbsp;t
|78~93.5 t
| 97.0&nbsp;t
|80~93.5 t
| 101.0&nbsp;t
|97 t(計画値)
|110 t(計画値)
|-
|-
![[最大着陸重量]] (MLW)
!貨物 (コンテナ)
| 73.5 - 77.8&nbsp;t
|colspan="2"|LD-3-46/46Wx10
|colspan="3"|71.5 - 79.2&nbsp;t
|colspan="2"|LD-3-46/46Wx10(最大)<br>追加燃料タンク増設により減少
|-
|-
!最大無燃料重量 (MZFW)
!貨物 (バラ積み)
| 69.5 - 73.8&nbsp;t
|colspan="2"|51.73 [[立方メートル|m<sup>3</sup>]]
|colspan="2"|最大51.72 [[立方メートル|m<sup>3</sup>]]
|colspan="3"|67.0 - 75.6&nbsp;t
|-
|-
!貨物室有効容積
!エンジン
|colspan="2"|51.72&nbsp;[[立方メートル|m{{sup|3}}]]
|[[CFM56|CFM 56-5B]] <br/>[[V2500|IAE V2530]]
|59&nbsp;m{{sup|3}}
| colspan="3" |[[CFMインターナショナル LEAP|CFM LEAP-1A]]<br>[[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|PW1130G]]
|
|-
!エンジン (x2)
|[[CFMインターナショナル CFM56|CFM CFM56]]または[[V2500 (エンジン)|IAE V2500]]
|colspan="3"|[[CFMインターナショナル LEAP|CFM LEAP-1A]]または[[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|PW1100G-JM]]
|-
|-
!エンジン推力
!エンジン推力 (x2)
|{{convert|133|-|147|kN|abbr=on}}
|{{convert|133|-|142|kN|abbr=on}}
|{{convert|143.1|-|147.3|kN|abbr=on}}
|colspan="3"|{{convert|143|-|147|kN|abbr=on}}
|未発表
|未発表
|-
|-
!巡航速度
!巡航速度
| colspan="4" |Mach 0.82
|colspan="4"|[[マッハ数|マッハ]]0.78
|-
!最大巡航速度
|colspan="4"|マッハ0.82
|-
|-
!航続距離
!航続距離
| 5,950&nbsp;[[キロメートル|km]]*
|{{convert|3200|nmi|abbr=on}}
| 6,480&nbsp;[[キロメートル|km]]
|{{convert|3500|nmi|abbr=on}}
| 7,410&nbsp;[[キロメートル|km]]
|{{convert|4000|nmi|abbr=on}}<br>(計画値)
| 8,700&nbsp;[[キロメートル|km]]
|{{convert|4700|nmi|abbr=on}}<br>(計画値)
|}
<nowiki>*</nowiki>:シャークレット装備型

{| class="wikitable" style="font-size:90%; text-align:center;"
|+ 型式名と装備エンジンの一覧
<ref>{{Cite web |date=2024-03-20|url=https://www.easa.europa.eu/en/downloads/16507/en |title=TCDS_EASA_A_064__Airbus__A318_A319_A320_A321_Iss_53.pdf |format=pdf|publisher=EASA |accessdate=2024-04-23}}</ref>
|-
|-
! 機種 !! エンジン !! 型式証明取得
!離陸滑走距離
|1,650m
|1,988m
|試験中
|試験中
|-
|-
| A321-111 || [[CFMインターナショナル CFM56|CFMI CFM56-5B1<br>CFMI CFM56-5B1/P<br>CFMI CFM56-5B1/2P<br/>CFMI CFM56-5B1/3]] || 1994年5月27日
!着陸滑走距離
|-
|1,550m
| A321-112 || [[CFMインターナショナル CFM56|CFMI CFM56-5B2<br>CFMI CFM56-5B2/P<br>CFMI CFM56-5B2/3]] || 1994年2月15日
|
|-
|試験中
| A321-131 || [[V2500 (エンジン)|IAE V2530-A5]] || 1993年12月17日
|試験中
|-
| A321-211 || [[CFMインターナショナル CFM56|CFMI CFM56-5B3/P<br>CFMI CFM56-5B3/2P<br>CFMI CFM56-5B3/P1<br>CFMI CFM56-5B3/2P1<br>CFMI CFM56-5B3/3<br>CFMI CFM56-5B3/3B1]] || 1997年3月20日
|-
| A321-212 || [[CFMインターナショナル CFM56|CFMI CFM56-5B1<br>CFMI CFM56-5B1/P<br>CFMI CFM56-5B1/2P<br/>CFMI CFM56-5B1/3]] || 2001年8月31日
|-
| A321-213 || [[CFMインターナショナル CFM56|CFMI CFM56-5B2<br>CFMI CFM56-5B2/P<br>CFMI CFM56-5B2/3]] || 2001年8月31日
|-
| A321-231 || [[V2500 (エンジン)|IAE V2533-A5]] || 1997年3月20日
|-
| A321-232 || [[V2500 (エンジン)|IAE V2530-A5]] || 2001年8月31日
|-
| A321-251N || [[CFMインターナショナル LEAP|CFMI LEAP-1A32]] || 2017年3月1日
|-
| A321-252N || [[CFMインターナショナル LEAP|CFMI LEAP-1A30]] || 2017年12月18日
|-
| A321-253N || [[CFMインターナショナル LEAP|CFMI LEAP-1A33]] || 2017年3月3日
|-
| A321-271N || [[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|P&W PW1133G-JM<br>P&W PW1133GA-JM]] || 2017年3月6日
|-
| A321-272N || [[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|P&W PW1132G-JM]] || 2017年5月23日
|-
| A321-251NX || [[CFMインターナショナル LEAP|CFMI LEAP-1A32]] || 2018年3月22日
|-
| A321-252NX || [[CFMインターナショナル LEAP|CFMI LEAP-1A30]] || 2018年3月22日
|-
| A321-253NX || [[CFMインターナショナル LEAP|CFMI LEAP-1A33]] || 2018年3月22日
|-
| A321-271NX || [[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|P&W PW1133G-JM]] || 2018年3月22日
|-
| A321-272NX || [[プラット・アンド・ホイットニー PW1000G|P&W PW1132G-JM]] || 2018年3月22日
|}
|}

:A321-200
* 基本座席数:185席前後(2クラス制)、最大220席(1クラス制)
* 全長:44.51m
* 全幅:35.8m(シャークレット装備機)
* 全高:11.76m
* 胴体直径:3.95m
* 最大客室幅:3.70m
* [[最大離陸重量]]:89.0t
* 最大燃料容量:23,700l
* 基本空虚重量:47.7t
* エンジン:[[CFMインターナショナル|CFM]]56-5/[[IAE]] V2500
* エンジン推力:30,000 - 33,000lb
* 最大巡航速度:約[[マッハ]]0.82
* 航続距離:4,350km前後(最大5,600km/シャークレット装備機は最大5,950km)
* [[貨物]]:バルク(バラ積み)51.76[[立方メートル|m<sup>3</sup>]],コンテナLD-3-46/46Wx10

== 事故・事件 ==
* [[全日空391便函館空港着陸失敗事故]]
* [[エアブルー202便墜落事故]]
*[[コガリムアビア航空9268便|メトロジェット9268便爆破事件]]


== 脚注 ==
== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{Notelist|refs=
{{efn|name=bypass|ターボファンエンジンでは、吸引された空気は、コアを通り燃焼・噴出されるものと、コアを通らず排出される(バイパスされる)ものに分けられる{{r|encyclopedia-31}}。コアをバイパスする空気流量をコアを通る空気流量で割ったものがバイパス比であり、一般にこの値が大きいほど推進効率が高くなる{{r|encyclopedia-31}}{{r|PHAK-6-20}}。詳細は[[ターボファンエンジン]]を参照。}}
}}


=== 出典 ===
=== 出典 ===
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
* [[エアバスA320]] - 標準モデル
* [[ボーイングとエアバス]]
* [[旅客機の構造]]
* [[エアバスA319]] - 胴体短縮モデル
* [[旅客機のコックピット]]
* [[エアバスA318]] - A319の胴体をさらに短縮したモデル
* {{Portal-inline|航空}}


== 外部リンク ==
== 外部リンク ==
{{commons&cat|Airbus A321|Airbus A321}}
{{commons&cat|Airbus A321|Airbus A321}}
* [http://www.airbus.com/ エアバス社ホームページ(英語版)]
* [https://www.airbus.com/en エアバス社公式サイト] {{en icon}}
** [https://aircraft.airbus.com/en/aircraft/a320-the-most-successful-aircraft-family-ever/a321ceo A321ceo]
* [http://www.airbus.com/aircraftfamilies/passengeraircraft/a320family/a321/ A321紹介ページ(英語版)]
** [https://aircraft.airbus.com/en/aircraft/a320-the-most-successful-aircraft-family-ever/a321neo A321neo]
* [http://www.airbusjapan.com/aircraft-families-jp/passengeraircraftjp/a320jp/ エアバスジャパン・A320ファミリー]

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2024年11月10日 (日) 08:38時点における最新版

エアバスA321
Airbus A321

アメリカン航空のエアバスA321

アメリカン航空のエアバスA321

エアバスA321Airbus A321)は、ヨーロッパエアバス社が開発・製造しているナローボディ(単通路)の双発ジェット旅客機である。エアバスA320の長胴型で、A320ファミリーの中で全長が最も長い。A321は、政府の資金援助に依らずに開発された初のエアバス機であり、ドイツで最終組立された最初のエアバス機でもある。

A321は大きく2世代に分けることができ、第一世代はA321ceo、次世代型はA321neoと呼ばれる。A321ceoは、1989年に開発が決定し、1994年3月にルフトハンザ航空アリタリア航空によって路線就航を開始した。航続距離延長型も開発され、北米大陸横断路線へも就航可能になった。2010年にA320ファミリーのエンジンを一新したA320neoファミリーの開発が決定し、同ファミリーの長胴型としてA321neoが開発された。A321neoは2016年2月に初飛行し、2017年5月にヴァージン・アメリカによって路線就航を開始した。A321neoの長距離型として、単通路機として世界最長の航続距離性能を持つA321LRが開発され、さらに航続力を強化したA321XLRの開発も決定している。

A321の主翼は低翼配置の片持ち翼で、尾翼は通常配置、降着装置は前輪配置、左右の主翼下にパイロンを介してターボファンエンジンを1発ずつ装備する。全長は44.51メートル、全高は11.76メートル、全幅は最大仕様で35.80メートルである。標準の巡航速度はマッハ0.78。標準座席数はA321ceoが170から210席、A321neoが180から236席である。飛行システムはA320ファミリーと共通化されており、操縦資格もファミリー機で共通である。

2018年7月時点において、民間航空会社113社で1,687機のA321が運用されている。アジア太平洋地域、欧州、および南北アメリカで運用機数の大半を占め、これらの地域で概ね500機ないし600機ずつ運用されている。2019年8月現在、A321の機体損失に至った事故および事件は6件ある。このうち1件の事故および2件のテロ事件により計377人が死亡している。

沿革

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開発の背景

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米国の航空機メーカーに対抗するため、欧州の航空機メーカーは1970年12月に企業連合「エアバス・インダストリー」(以下、エアバス)を設立した[5]。エアバスは、世界初の双通路(ワイドボディ)双発ジェット旅客機であるA300を開発し、発展型を開発しつつ販売を軌道に乗せた[6]。続いて製品ラインナップの拡充を目指し、単通路(ナローボディ)市場への進出を決めた[6]

完全新規開発で単通路機市場に参入したエアバスA320。

ボーイングマクドネル・ダグラスのように既存の単通路機を持っていなかったエアバスは、完全な新規設計により単通路機A320を開発し、当時の最新技術を積極的に取り入れた[7]。大型機も含めたエアバス機全体での操縦資格の共通化を目指し、操縦系統に全面的なフライ・バイ・ワイヤ技術を採用した[8]。同規模の旅客機の中で最も太い断面の胴体を持ち、大型の貨物室扉を備えたことで、航空貨物コンテナの搭載も可能となった[9]。検討を重ねた結果、A320の標準座席数は2クラス編成で150席となった[10]。A320は1988年2月に型式証明を取得し、翌月に顧客引き渡しが始まった[11]

エアバスはA320の開発を進めつつ、1987年には派生型の検討に着手していた[12]。A320を基準として胴体延長型と短縮型が研究された[12][13]。胴体延長型は、座席数が185席から200席程度と計画された[14]。これは当時のエアバスの製品ラインナップにおいて、A320とワイドボディ機A310との間に位置づけられるものだった[15]

まずこの長胴型の開発を進めることになり、1988年5月に正式な受注活動を開始した[12][14]。1989年6月に航空機リースを手がけるインターナショナル・リース・ファイナンス (ILFC) が16機の発注を決め、これがA321の最初の受注となった[16]。同年9月22日には、ルフトハンザドイツ航空が確定22機、オプションで20機を発注した[17]。これらの発注を受けて11月24日に、長胴型をA321-100と命名して正式開発が決定した[1][16]

設計の過程

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正面から見たA321。胴体断面の設計はA320と共通である。
下方から見たA321。

この当時エアバスは、本格的な長距離路線向けの新型ワイドボディ機としてA340A330の同時並行開発に着手していた[12]。このため、A320派生型の開発に従事するエンジニアは最小限とされた[12]。A320からの変更点を可能な限り最小にすることとされ、主翼の大半、尾部、胴体断面はA320と共通化された[18]

フラップを下げたルフトハンザ航空のA321。主翼後縁のフラップに2本の隙間が見える。

A321の胴体は、ベース機のA320に対して主翼の前方で4.27メートル(8フレーム)、後方で2.67メートル(5フレーム)の合わせて6.94メートル(13フレーム)延長された[19][20]。これにより座席数が24%、床下貨物室の容積が40%拡大した[20]。収容力の強化に合わせて、空調および与圧システムが強化された[15]。非常口の配置も見直され、A320で主翼上にあったタイプIII扉を無くし、代わりに主翼の前方と後方に大型のタイプI扉が設置された[15]

胴体が延長されたことで、A320よりも小さい迎角での離着陸を可能にする必要が生じた[20][21]。加えて、重量増加に対応して十分な揚力を得るために、主翼面積を大きくする必要があった[20][21]。主翼を担当したイギリスのBAe社とフラップ(高揚力装置)を担当したドイツのDASA社が共同で設計変更にあたった[20]。最小の変更で求める効果を得るために、主翼後縁のフラップを新規設計することになり、フラップをダブル・スロッテッド・フラップ(二重隙間フラップ)に置き換え、その分の翼弦長を延長することで翼面積を拡大した[20][21]。A321の空力特性に合わせて飛行制御システムも小修正が加えられた[22]

機体重量の増加に伴い、降着装置の支柱が強化されたほかタイヤが大型化されブレーキも強化された[15][22]。A321のエンジンは、A320と同様にCFMインターナショナル(以下、CFMI)社のCFM56と、インターナショナル・エアロ・エンジンズ(以下、IAE)社のV2500が設定された[15]。機体重量の増加に対応してエンジンの推力が強化された[15]。燃料系統は再設計され、部品点数の削減により保守性が改善された[22]

A321は、政府の資金援助を受けずに開発された最初のエアバス機ともなった[23][16]。1991年6月にエアバスはユーロ債を発行し、4億8千万ドルに上る開発資金の主要部分を調達した[23][16]

生産と試験

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A321のパーツやコンポーネントの生産は、これまでのエアバス機同様に国際分業体制により行われた[18]。A321の生産からはイタリアのアレーニア社がリスク分担メンバーとしてエアバスに参画し、胴体の前方延長部の生産を担当した[12][20]。胴体後方の延長部については、BAe社が生産を担当した[20]。これまでのエアバス機で主翼を担当してきたBAe社は、A321で初めて胴体も分担することになった[20]。BAe社の生産分には日本の川崎重工業が下請けに入っており、A321はエアバスの生産体制に日本企業が参画した最初の事例ともなった[12][20]

ハンブルクの最終組立ラインで生産中のA321。

これまで全てのエアバス機の最終組立ては、フランスのトゥールーズで行われていた[24]。これに対してドイツ(当時は西ドイツ)は、自国でも最終組立てを行うことを要望してきた[24][12]。これに対してエアバス・コンソーシアム内で政治的な駆け引きが繰り広げられた結果、A321の最終組立はドイツで行うことに決まった[24][12]ハンブルクにあるDASAの工場敷地にA321の最終組立施設が新設され、この施設はオットー・リリエンタール・ハンガーと命名された[25][12]

A321の初号機となったのはV2500エンジン装備型で、A320ファミリーの通算364号機であった[1]。1993年3月3日、A321初号機の完成披露式典が執り行われ、当時のエアバス・インダストリー社長のジャン・ピアソンは「A321は第二次世界大戦後にドイツで組み立てられた最大の民間機であり、これはヨーロッパの団結によって実現した」という旨を述べた[25]。その月の11日に初号機は初飛行に成功した[1]。続いて5月25日には、CFM56エンジンを装備した2号機が初飛行した[1]

1993年12月17日、V2500装備仕様に対する型式証明が、欧州の合同航空当局 (Joint Aviation Authorities; JAA) から交付された[1]。翌年2月15日には、CFM56装備仕様についてもJAAの型式証明が交付された[1]

就航開始後

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ルフトハンザ航空によってA321-100は商業運航を開始した。

1994年1月27日、A321の初引き渡しがルフトハンザ航空に対して行われた[26][17]。1994年3月21日にはILFCの発注機の初引き渡しが、リース先のアリタリア航空に対して行われた[27][16]。1994年3月中に、ルフトハンザ航空とアリタリア航空によってA321の商業運航が開始された[28][16]

1994年にはフランスのエールアンテールへ、その翌年にはスイス航空への引き渡しも始まった[29][30]

開発進行中の1993年3月の時点で、A321の受注数は153機だった[31]。この時点では、ルフトハンザやアリタリア、スイス航空をはじめとした欧州の航空会社からの受注が大半を占めた[31]。欧州以外からの受注は、クウェート航空アンセット・オーストラリア航空から合わせて10数機と、ILFC社やGATX英語版社、ギネス・ピート・アビエーション英語版といったリース会社からの41機であった[31]。米国ではナローボディの競合機であるボーイング757が浸透しており、A321は米国の航空会社からの受注を得られていなかった[31]

航続距離延長型の開発

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A321-100の当初仕様では最大離陸重量は82.2トンで標準航続距離が4,000ないし4,200キロメートルであったが、ほどなくして標準仕様の最大離陸重量が83トンに引き上げられ、航続距離も4,445キロメートルとなった[1]。また、ペイロードの増加目的で最大離陸重量を85トンに引き上げるオプションも追加された[1]。そして1995年4月には、更なる航続距離延長型としてA321-200の開発が決定した[1]

A321-200では燃料搭載量を増やすため「追加中央タンク」 (ACT) を装備して機体構造も強化された[32]。ACTは貨物コンテナに準拠した形状を有し、床下貨物室内に搭載される[19]。ACTの容量は1個あたり2,900リットルで、A321-200では2個まで搭載できた[1]。ACTを2個搭載して最大離陸重量を93.5トンまで引き上げた仕様の場合、航続距離は5,950キロメートルまで延びた[1][19]。A321-200のエンジンにはCFM56とV2500の推力増強型が設定された[33][32]。A321-200の初号機はV2500エンジン仕様で1996年12月21日に初飛行した[1]

1997年3月20日、V2500エンジンとCFM56エンジンの両仕様のA321-200に対して型式証明が交付された[34]。A321-200の初引き渡しは1997年4月8日に行われ、イギリスのチャーター便航空会社であるエアワールド英語版がILFCからのリースで導入した[35]。そして同月11日に、エアワールドによりA321-200の商業運航が開始された[35]

A321-200の開発と並行して、双発機の長距離運航を可能にするETOPSの認証作業も進められ、1996年5月29日にA321-100が120分のETOPS認証を取得していた[36]。続いて1997年7月28日には、A321-200も120分のETOPS認証を取得した[36]

アメリカ進出とその後の改良

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納入開始から数年間、A321は毎年20機前後が引き渡しされ、1998年には運航機数が100機を超え、2000年には150機を超えた[37]。2000年頃のA321の主要運航者は、相変わらずルフトハンザやアリタリア、エールフランス[注釈 1]といった欧州の航空会社だったが、日本の全日本空輸や台湾のトランスアジア航空などのアジアの航空会社による導入も進んだ[38]。また、数は少ないもののアフリカや中東、中米の航空会社による運航も見られるようになった[38]。しかしエアバス機の中でA321だけが、未だ北米の航空会社から受注を得られていなかった[39]

このような状況の中、航続距離が延長されたA321-200が開発されたことで、北米大陸を横断する直行路線にもA321は就航可能となった[39]。2000年1月、USエアウェイズが短胴型のA319から発注を切り替える形でA321を導入することが報道された[39]。2001年1月、同社への納入が開始されA321は北米進出を果たした[40]。そして2004年から2006年にかけて、A321は180分までのETOPSも認可された[36]

2000年代に入ると納入機数は毎年概ね30機を超えるようになった[41]。2009年7月時点では、航空会社67社で517機が運用されている[42]。運用数の過半数は欧州の航空会社が占めていたが、この頃にはUSエアウェイズや中国南方航空が30機以上を導入しており、欧州以外でもまとまった機数を運航する航空会社が見られるようになった[42]

A321のシャークレット拡大写真。ターキッシュ エアラインズ機の例。

エアバスはA320ファミリーに対して各種改良を加えており、2009年11月15日には、主翼のウイング・チップ・フェンスに代わる新しい翼端装置の採用が発表された[43]。「シャークレット」と名付けられた新しい翼端は、上に折り曲げたような形状で2.4メートルの高さがある[44]。従来の鏃状のウイング・チップ・フェンスよりも燃費性能が向上することで、航続距離の延長が可能となる改良であった[45]。シャークレットはまずA320で実用化され、A321についても2012年10月14日にシャークレット装備機の初飛行が行われた[43][46]。シャークレット仕様のA321は、2013年7月17日から順次型式証明を取得し[47]、2013年9月10日にフィンエアーに対して初納入された[48]

次世代型A321neoの開発

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試験飛行中のA321neoの初号機。

単通路機市場の発達とともに、航空会社はさらに長距離路線へ単通路機を投入することを望むようになった[44]。A320ファミリーの改良を続けつつ後継機の研究を行ってきたエアバスは、2010年12月1日、エンジンを一新した次世代A320neoファミリーの開発を発表した[49]。「neo」は「New Engine Option」の頭字語と「新しい」という意味のギリシャ語「neo」をかけたものである[50]。その名の通り新型エンジンを装備することで、燃費性能や航続力を向上させる機体である[50][51]。A320ファミリーのうち、neoに移行されるのは、A321、A320、A319の3機種とされた[50]。最も短胴型のA318は、将来需要が見込めなかったことから、neoの開発は見送られた[50]。まずA320neo、続いてA321neoが開発されることとなった[52]。neoの登場に伴い、既存のA320ファミリーはA320ceo(Current Engine Option; 現行エンジン選択型の意)と呼ばれ区別されることとなった[50]

ターキッシュ エアラインズのA321neo。

A321neoは部品の95%がA321ceoと共通化されている[44][53]。A320neoファミリーのエンジンは、CFMI社のLEAP-1Aと、プラット・アンド・ホイットニー(以下P&W)社のPW1100G-JMが選定された[54]。A321neoのエンジンには両エンジンの推力増強型が採用された[55]。A321ceoに対してエンジン推力が強化され、上昇性能も向上した[53]。エンジンの直径が拡大し、バイパス比[注釈 2]が約2倍になったことで、燃費や騒音、排ガスに関する性能が向上した[53]。燃費の向上により航続距離は500海里(約926キロメートル)延長された[53]。エンジン直径が大きくなるが、エアバスはエンジン最下面と地面との間隔は必要な距離が確保されるとして降着装置の脚長などは変更されていない[56]

抗力を減らし燃費性能を向上させるため、neoの主翼端にはシャークレットが標準装備された[53]。主翼動翼の空力性能にも改善が加えられた[53]。これらの改良により、ceoに比べて巡航高度や上昇限度が引き上げられたほか、離陸性能も向上した[53][44]。また、飛行制御システムも改良されている[44]

全日本空輸のA321neo。同社は1998年4月からA321ceoを運航していたが2008年2月に全機を退役させた。その後2016年11月にA321ceoを再導入し、2017年9月にA321neoを就航させた。同社のA321neoは、PW1100G-JM装備型の納入初号機でもあった[57][58]

A321neoの初号機はLEAP-1Aエンジン装備型で、2016年2月9日にハンブルクで初飛行に成功した[2][3]。初飛行からわずか約1週間後、A321neo初号機は試験飛行中に尻もち事故を起こした[3][59]。事故機は修理を余儀なくされ、試験スケジュールが遅延した[60][3]。翌月9日には、PW1100G-JMエンジン装備のA321neoも初飛行に成功し、初号機と合わせて試験飛行に投入された[60][53]。飛行回数130回以上、350時間以上の飛行試験を経て、2016年12月15日に、PW1100G-JM仕様のA321neoが欧州航空安全機関 (EASA) と米国連邦航空局 (FAA) から型式証明を取得した[61]。2017年3月1日には、LEAP-1Aエンジン仕様についてもEASAとFAAから型式証明が交付された[62]

2017年1月末までに、A321neoは1,388機の発注を得ていた[62]。A321neoの初引き渡しが行われたのは2017年4月20日で、納入初号機はLEAP-1A装備型であった[63]。受領したのはリース機で導入したヴァージン・アメリカで、同社は5月31日にサンフランシスコ - ワシントン便でA321neoの商業運航を開始した[63][64]。PW1100G-JM装備型については、2017年9月5日に全日本空輸に対して初引き渡しされ、同月12日に日本国内線で路線就航を開始した[65][66][58]

A321neoについてもETOPS認証作業が進められ、各エンジン仕様について180分までのETOPSが2017年6月から順次認められている[67]

米国生産の開始

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A320neoファミリーの開発と並行して、生産体制の強化も進んでいた[68]。2000年代の後半以降、A320ファミリー全体の納入数は概ね増加を続け、A321も納入ペースが加速して2013年には年間納入数が100機を超えた[69]。エアバスは、ハンブルクの生産ライン強化に加えて欧州域外にもA320ファミリーの最終組立工場を建設し、2008年に中国の天津、2015年には米国・アラバマ州モビールの工場が稼働を開始した[68][70][71]。このうちのハンブルクとモビールでA321の最終組立が行われており、2016年4月に米国製初号機となるA321がジェットブルーに納入された[72][73]

長距離型A321LRの開発

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アルキア・イスラエル航空はA321LRの最初の受領者となった。コックピットの窓がA350 XWBのように黒く縁取りされている。

A321は、ボーイングの単通路機である757の後継機市場にも進出した[74]。しかし大西洋横断が可能な757に対抗するには、A321neoでもまだ航続力が不足していた[75]。本格的に757の後継機需要を獲得するため、かねてよりエアバスは更なる長距離型の開発を検討していた[75]。A321neoの開発進行中だった2015年1月13日、エアバスはA321neoの長距離型を開発することを発表した[76]。この長距離型は「Long Range」を意味するA321LRと名付けられた[77]。最大離陸重量を97トンに引き上げて床下貨物室に搭載貨物コンテナ数を減らしACT(Additional Center Tank:追加センタータンク)を3台設置にすることで燃料搭載量を増やし、航続距離を7,408キロメートル(4,000海里)に延長するとされた[76]。この航続距離は単通路機で最長となり、大西洋横断路線にも就航可能な性能である[76]。航空機リース会社のエアリース・コーポレーション英語版が最初の発注者となった[76]

2018年1月31日、ハンブルクにてA321LRの初飛行が行われた[78]。A321LRの初号機は、CFMI社のLEAP-1Aエンジンを装備していた[78]。その後の飛行試験では長距離飛行も行われ、2月にはパリからニューヨークへ初の大西洋横断を行なったほか、4月にはセイシェル共和国マヘ島からトゥールーズへ8,797キロメートルの無着陸飛行も行われた[79][80]

2018年10月2日、A321LRに対してEASAとFAAから型式証明が交付された[81]。同時に180分までのETOPS認証も取得している[82]。同年11月14日にアルキア・イスラエル航空に対してA321LRの初引き渡しが行われた[83]。A321LRはボーイング757の買い替え需要を取り込み始めている[84]

超長距離型A321XLRの開発

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2019年6月17日、パリ航空ショーの場で更なる航続力強化型のA321XLRの開発が発表された[77]。XLRは、Xtra Long Rangeの頭字語で超長距離型とも呼ばれる[77]。A321XLRは、最大離陸重量が110トンに引き上げられ、後方貨物室にA321LRより容量の多いRCT(Rear Center Tank:リアセンタータンク)が固定設置され、オプションで前方貨物室にACT1台設置可能[85][77]。航続距離がA321LR比で15%延長され、4700海里(約8,704キロメートル)に達する見込みである[77]。パリ航空ショーの期間中に、アメリカン航空カンタス航空イベリア航空エアリンガスを傘下に持つインターナショナル・エアラインズ・グループ、投資会社のインディゴ・パートナーズ英語版らから確定48機、コミットメント79機の計127機を受注した[86][87]。2023年納入の計画で開発が進められる[77]

2024年7月19日、エアバスはA321XLR(LEAP-1Aエンジン搭載型)がEASAから型式証明を取得したと発表した[88]。10月31日、イベリア航空に初号機が引き渡され、11月14日よりマドリード - ボストン線に投入される[89]

機体

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シリーズ構成

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A321シリーズは第一世代のA321ceoと、エンジンを換装した次世代型のA321neoに大きく分けられる。A321ceoとA321neoは、部品の95%が共通とされている[44][53]。A321ceoは、基本型のA321-100と航続距離延長型のA321-200の2モデルがある。A321neoでも基本型に加えて長距離型のA321LRがあるほか、さらに航続力を強化した超長距離型のA321XLRの開発も発表されている。以下、特に断りがないものはA321シリーズ共通の仕様である。

形状・構造

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ウイング・チップ・フェンス仕様のA321ceoを右側面から見る。
シャークレット仕様のA321ceoを右側面から見る。
右側面から見たA321neo。A321neoはシャークレットが標準装備である。
A321ceoを真後ろから見た写真。

A321は片持ち翼の主翼を低翼に配置した単葉機である[90]。全長は44.51メートル、全高は11.76メートル、全幅はウイング・チップ・フェンス装備型が34.10メートルでシャークレット装備型が35.80メートルである[91][90]。左右の主翼下にパイロンを介して1発ずつターボファンエンジンを備える[90][22]尾翼は通常配置で、垂直尾翼水平尾翼はともに胴体尾部に直接取り付けられている[90]降着装置は引き込み式の前輪式配置で機首部に前脚、左右の主翼の付け根に主脚がある[92]。前脚および左右の主脚はそれぞれ2輪式である[92]

主翼は基本的にA320と共通としつつA321では構造が強化されたほか、後縁のフラップがA321専用の設計である[15]。主翼はテーパーがついた後退翼で、25パーセント翼弦での後退角は25度、アスペクト比[注釈 3]は9.4である[94][95]

主翼には高揚力装置として前縁にスラット、後縁にダブル・スロッテッド・フラップ(二重隙間フラップ)を備える[96]。スラットは片翼あたり5枚で、ほぼ全幅にわたり配置されている[94][97]。フラップはパイロンの位置を境に内翼と外翼に2分割されており、その外側に補助翼がある[94][97]。主翼上面には片翼あたり5枚のスポイラーがある[94][97]。スポイラーはロール操縦にも用いられる[94]

翼端装置として誘導抵抗を減らす効果のあるウィング・チップ・フェンスまたはシャークレットを備える[98][94]。ウイング・チップ・フェンスは鏃状の整流板で、シャークレットはウイングレットのように翼端を上に曲げた形状を有する[94][98]。開発当初はウイング・チップ・フェンスが標準装備であったが、のちにシャークレット仕様が開発され、A321neoではシャークレットが標準装備となった[99][50]。また、既存の機体にシャークレットを後付けすることも可能である[100]

胴体断面はA320と同一で、幅は3.95メートル、高さが4.14メートルである[23][19][101]。胴体長は全長と同じ44.51メートルである[90]。A320と比較すると、主翼の前方で4.27メートル、後方で2.67メートル、合わせて6.94メートル胴体が長い[19][20]

尾翼もA320と共通設計であり、水平尾翼は水平安定板と昇降舵、垂直尾翼は垂直安定板と方向舵で構成される[94][20]。垂直尾翼と水平尾翼は複合材料製であり、炭素繊維強化プラスチック (CFRP) やガラス繊維強化プラスチック (GFRP) が用いられている[20][102]。主翼の動翼や降着装置の扉などにも複合材料が使用されている[102]

エンジン

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TAPポルトガル航空のA321neo。

A321ceoのエンジンは、A320ceoと同様にCFMI社のCFM56と、IAE社のV2500が設定されている[15]。A320ceoに対して機体重量が増えているため、エンジンは推力増強型になっている[15]。エンジンはパイロンを介して主翼に取り付けられる[103]。機体への取り付け方法もA320と同一である[15]。エンジンの制御にはFADEC (Full Authority Digital Engine Control) が使用される[15]

A321neoのエンジンは、A320neoファミリーと同様でCFMI社のLEAP-1Aか、P&W社のPW1100G-JMの選択式である[33]。こちらもA321neo用に推力増強型が設定されている[55]。A321ceoのエンジンと比べてバイパス比が大きくなり大径化されたことで、A321neoの外観は力強くバランスが取れているとも評される[53]

飛行システム

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運航に必要な操縦士は機長副操縦士の2名である[104]

A321-200の操縦席。

コックピットはいわゆるグラスコックピット化されている[105]。レイアウトはA320と共通で、左右の操縦席に各2枚、中央に2枚の計6枚のカラーディスプレイを備える[105]。ディスプレイには当初はブラウン管が用いられたが、技術革新にともない液晶ディスプレイに置き換えられた[105]。2014年からはヘッドアップディスプレイ (HUD) の装備が追加され、新造機にはオプション設定されているほか、既存機への装着も可能である[105]操縦輪はなくサイドスティックで操縦を行う[106][105]

操縦資格もA320ファミリーで共通化されている[107]。同時にエアバスの相互乗員資格 (Cross Crew Qualification; CCQ) の対象でもあることから、CCQ対象となるエアバス機との間であれば、短時間の訓練で他機種の資格を取得することが可能である[107]。A320ceoファミリーの操縦資格を有する操縦士は、コンピュータを用いた半日の訓練によりA320neoシリーズを操縦できるようになる[53]

操縦システムはフライ・バイ・ワイヤ技術が全面的に用いられており、コックピットと操縦翼面の間の通信は電気信号を介して行われる[105]。制御用のコンピュータは複数搭載され、システムは冗長化されている[105]

客室・貨物室

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オーストリア航空のA321の内装。
エバー航空が運航するA321のビジネスクラスの内装。
デルタ航空のA321の内装。

客室の全長は34.44メートルである[1]。客室には中央に1本の通路があり、エコノミークラスの座席配置は通路を挟んで3-3席の6アブレスト、上級クラスでは2-2席の4アブレストである[108]。座席数は、2クラス編成の標準仕様で185席、エコノミークラスのみであれば最大220席まで配置可能である[105]。座席の頭上には、手荷物を収容するオーバーヘッド・ストウェッジが備わる[108]。通常の内装よりも座席幅を詰めて通路幅を広げた内装案も用意されている[108]。航空会社の独自仕様も見られる。例えばアメリカン航空では、北米大陸横断路線のA321をファーストクラス、ビジネスクラス、エコノミークラスの3クラス仕様としている[109]ほか、フランスの航空会社ラ・コンパニーは、全席ビジネスクラスとしたA321を運航している[110]

客室の扉配置は左右対称である[111]。乗降用ドアおよびサービスドアが客室最前方と最後方に1組ずつある[111]。A321ceoでは非常口として、扉下端が床面まである大型のタイプI扉を主翼の前後に備える[112][113]。A321neoの非常口配置には、A321ceoと同様の標準仕様のほかに、エアバス・キャビン・フレックス (ACF) と名付けられた仕様がある[112][114][115]。ACF仕様では、主翼前方の大型非常口を無くして代わりに主翼上に小型のタイプIII扉を2枚配置する[113][112][115]。これにより、客席数を最大で240席設置することが可能である[115]。 また、ACF仕様では、客室前方の上級クラスの座席配置の柔軟性を高めるため、客室前方の非常口ドアを動作させないオプションも用意されている[116]

床下の貨物室は主翼を挟んで前後に2区画に分かれている[117]。両貨物室には、LD-3-46/-46W航空貨物コンテナを5個ずつ搭載可能である[19][15][117]がLRやXLRは貨物積載容量を犠牲に燃料搭載量を増やすトレードオフしているため、ともに最大前方で1台、後方で2台搭載コンテナが減少する[118]。LD-3-46/-46Wコンテナは、大型機用のLD-3コンテナと同じ幅で、単通路機用に高さを低くしたものであり、そのまま大型機へ搭載することも可能である[11]。また、後部貨物室の最後尾には、ばら積み貨物のスペースが設けられている[117]

前方貨物室と後方貨物室の扉は各1か所で、貨物コンテナに対応した寸法を有する[119]。この扉は外開きで、開口部の高さが1.24メートル、幅が1.82メートルである[112]。 最後部には、ばら積み貨物用の扉が1か所ある[112]。ばら積み貨物用扉は内開きで、開口部の高さが最大で0.89メートル、幅が0.95メートルである[112]。これらの貨物扉はいずれも右舷にある[112]

旅客転用改修貨物型(P2F型)

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シンガポール大手MRO企業STエアロスペースとエアバスがA320とA321について旅客転用改修貨物(passenger-to-freighter:P2F)型の開発で合意、P2F型機の改修、販売、管理を行う企業をドイツのエアバス、STエアロスペース共同出資の航空宇宙メーカーエルベ・フルークツォイクヴェルケ(Elbe Flugzeugwerke:EFW)へ委託する[120]、機体は従来の床下(ロアーデッキ)貨物室に追加して、メインデッキにA320で最大10個、A321で最大14個の航空コンテナを積みこめるよう前部胴体左舷側一部を大型カーゴドアに交換、メインデッキ床下補強等の改修をし、最大積載可能量をA320が21.9t、A321で27.9t[121]にする。2020年2月25日、ヨーロッパ航空安全庁(EASA)から追加型式証明(STC)を取得し[122]ボーイング757貨物機などの入れ替え需要やCOVID-19によるeコマースなどの成長を取り込む見通しを立てて[123]カンタス・フレート英語版[124]ルフトハンザ・カーゴ[125]などが運用している。日本ではヤマトホールディングスが同機材をリース導入し、2024年4月から長距離トラック運転手の年間残業時間規制が厳しくなるのを機に首都圏と北海道、九州、沖縄地域への国内航空貨物事業に参入する。運航は日本航空(JAL)と協力し、JALグループのうちA320シリーズを運用しているジェットスタージャパンに委託する予定であったが[126]ボーイング737のみ運用しているスプリング・ジャパンに変更された[127]

運用

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タラップが接続されたA321。
ボーディングブリッジが接続されたA321。

2018年末の時点で、A321の受注数は4,079機で、納入済みが1,837機、受注残が2,242機である[128]。同時点において1,751機が運航中で、そのうちの1,637機がA321ceo、114機がA321neoである[129]。1994年の納入開始以来、運航機数は一貫して増加している[37]。特に2000年代後半からは納入数が伸びており、年間納入数は2013年には100機を超え、2016年には200機を超えた[41]

2018年7月時点の統計によると、民間航空会社113社で1,687機が運用されている[130]。地域別で見ると、アジア・太平洋地域の32社で600機、欧州の51社で524機、南北アメリカの18社で511機、中東・アフリカ地域の12社で52機が運用されている[130]

同じ統計によると、最も多くのA321を運用している航空会社は、アメリカン航空でその数は219機、次いで中国南方航空で107機である[130]。3位以下を地域別にみると、アジアでは中国東方航空が67機、中国国際航空が61機、ベトナム航空が57機である[130]。欧州では、ターキッシュ エアラインズが68機、ルフトハンザ航空が63機を運用している[130]。北米では、デルタ航空とジェットブルーが各58機、南米ではLATAMブラジルが31機を運用している[130]

日本におけるA321旅客型ではANAで26機(22機がA321neoで残る4機はA321ceo)、ピーチアビエーションでA321LRを3機、ジェットスター・ジャパンで3機のA321LRを保有しており、JALも2028年度から国内線用ボーイング767の後継として、11機のA321neo導入を決めている[131][注釈 4]

航空会社以外での利用例もあり、ドイツ政府が要人輸送機としてA321を導入した[132]。ルフトハンザ航空から購入した中古機を改造したもので、要人輸送用の装備のほか航空救急用途のための医療設備も備える[132]。この機体はドイツ空軍が運用している[132]

近年は貨物専用機への改修も実施されており、日本ではヤマトホールディングスが3機をリース導入、スプリング・ジャパンが受託運航し、2024年4月より首都圏と北海道、九州、沖縄地域間の輸送で昼間は成田空港から新千歳空港北九州空港那覇空港、夜間は羽田空港から3地点に運航され、塗装はヤマト運輸の新カラーリングをベースにクロネコも描かれる予定[133][134]

2024年4月現在[4]
受注 納入
A321ceo 1,784 1,784
A321neo 6,331 1,339 4,947
合計 8,115 3,123 4,992


2024 合計
引渡数 A321ceo 1,784
A321neo 91 1,339
合計 62 3,123
2014 2015 2016 2017 2018 2019 2020 2021 2022 2023
引渡数 A321ceo 150 184 222 183 99 38 9 22
A321neo 20 102 168 178 199 264 317
合計 150 184 222 203 201 206 187 221 264 317
2004 2005 2006 2007 2008 2009 2010 2011 2012 2013
引渡数 A321ceo 35 17 30 51 66 87 51 66 83 102
A321neo
合計 35 17 30 51 66 87 51 66 83 102
1994 1995 1996 1997 1998 1999 2000 2001 2002 2003
引渡数 A321ceo 16 22 16 22 35 33 28 49 35 33
A321neo
合計 16 22 16 22 35 33 28 49 35 33

事故・事件

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2019年8月現在の統計によると、A321の機体損失に至った事故および事件は6件ある[135]

A321による死亡事故は、2010年7月28日に発生したエアブルー202便墜落事故の1件のみである[135][136]パキスタンカラチジンナー国際空港ベナジル・ブット国際空港(旧イスラマバード国際空港)行きのエアブルー202便が、悪天候の中ベナジル・ブット国際空港への着陸を試みたところ、空港近くの丘陵地帯に墜落し、乗員乗客152人全員が死亡した[136]。事故調査の結果、悪天候下で着陸を強行しようとして乗員が規定や手順を逸脱して危機的な低空飛行を行ったことが原因と結論づけられた[136]

事故以外に、A321はこれまでに2件のテロ事件に巻き込まれ、計225人が死亡している[135]

1件目は、2015年10月31日に発生したメトロジェット9268便爆破事件である。エジプトシャルム・エル・シェイク国際空港からロシアプルコヴォ空港へ向かっていたメトロジェット9268便がシナイ半島中部に墜落した[137]。乗客乗員224人全員が死亡し、2019年6月現在において、A321に関する航空事故・事件の中で最大の死者数である[135]。当初は事故と事件の双方の可能性が示唆されたが、ロシアの調査当局はテロリストが機内に持ち込んだ爆発物が原因と結論づけた[138][139][137]

2件目は、2016年2月2日に発生したダーロ航空159便爆発事件英語版である。被害にあったのはソマリアアデン・アッデ国際空港ジブチ国際空港行きだったダーロ航空159便で、離陸から約15分後に機内で爆発が発生した[140]。胴体に穴が空き、乗客1名が機外に吸い出されて死亡した[140]。当該機はアデン・アッデ空港に引き返して着陸に成功し、残りの搭乗者は無事だった[140]

直近の機体損失事故は2019年8月15日に発生した。モスクワジュコーフスキー空港を離陸直後のウラル航空178便バードストライクを起こし、空港から1キロメートルほどのトウモロコシ畑に胴体着陸した[141][142]。子ども9人を含む23人がけがをしたものの死者はいなかった[142]

主要諸元

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各モデルの主要諸元
A321ceo[143] A321neo[144] A321LR[144] A321XLR[144][145]
運航乗務員数 2名
標準座席数 170 - 210席 180 - 220席
最大座席数 220席 244席
全長 44.51 m
全幅 34.10 m(シャークレット装備機は35.80 m)
全高 11.76 m
胴体幅 3.95 m
胴体高 4.14 m
最大離陸重量 (MTOW) 93.5 t 97.0 t 101.0 t
最大着陸重量 (MLW) 73.5 - 77.8 t 71.5 - 79.2 t
最大無燃料重量 (MZFW) 69.5 - 73.8 t 67.0 - 75.6 t
貨物室有効容積 51.72 m3 59 m3
エンジン (x2) CFM CFM56またはIAE V2500 CFM LEAP-1AまたはPW1100G-JM
エンジン推力 (x2) 133–142 kN (30,000–32,000 lbf) 143–147 kN (32,000–33,000 lbf)
巡航速度 マッハ0.78
最大巡航速度 マッハ0.82
航続距離 5,950 km* 6,480 km 7,410 km 8,700 km

*:シャークレット装備型

型式名と装備エンジンの一覧 [146]
機種 エンジン 型式証明取得
A321-111 CFMI CFM56-5B1
CFMI CFM56-5B1/P
CFMI CFM56-5B1/2P
CFMI CFM56-5B1/3
1994年5月27日
A321-112 CFMI CFM56-5B2
CFMI CFM56-5B2/P
CFMI CFM56-5B2/3
1994年2月15日
A321-131 IAE V2530-A5 1993年12月17日
A321-211 CFMI CFM56-5B3/P
CFMI CFM56-5B3/2P
CFMI CFM56-5B3/P1
CFMI CFM56-5B3/2P1
CFMI CFM56-5B3/3
CFMI CFM56-5B3/3B1
1997年3月20日
A321-212 CFMI CFM56-5B1
CFMI CFM56-5B1/P
CFMI CFM56-5B1/2P
CFMI CFM56-5B1/3
2001年8月31日
A321-213 CFMI CFM56-5B2
CFMI CFM56-5B2/P
CFMI CFM56-5B2/3
2001年8月31日
A321-231 IAE V2533-A5 1997年3月20日
A321-232 IAE V2530-A5 2001年8月31日
A321-251N CFMI LEAP-1A32 2017年3月1日
A321-252N CFMI LEAP-1A30 2017年12月18日
A321-253N CFMI LEAP-1A33 2017年3月3日
A321-271N P&W PW1133G-JM
P&W PW1133GA-JM
2017年3月6日
A321-272N P&W PW1132G-JM 2017年5月23日
A321-251NX CFMI LEAP-1A32 2018年3月22日
A321-252NX CFMI LEAP-1A30 2018年3月22日
A321-253NX CFMI LEAP-1A33 2018年3月22日
A321-271NX P&W PW1133G-JM 2018年3月22日
A321-272NX P&W PW1132G-JM 2018年3月22日

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ エールフランスは、1997年にエールアンテールを吸収合併した。
  2. ^ ターボファンエンジンでは、吸引された空気は、コアを通り燃焼・噴出されるものと、コアを通らず排出される(バイパスされる)ものに分けられる[147]。コアをバイパスする空気流量をコアを通る空気流量で割ったものがバイパス比であり、一般にこの値が大きいほど推進効率が高くなる[147][148]。詳細はターボファンエンジンを参照。
  3. ^ アスペクト比とは翼幅の2乗を面積で割った値で翼の細長比を示す値である[93]
  4. ^ JASからするとA300、A350に次いで3機種目、JALとしてはA300を除くと2機種目のエアバス機となり、単通路機では初。また、日本の大手航空2社(ANA、JAL)でエアバスの機種が揃うのもA321neoが初となる。なお、仕様ではANAがA321ceoと同じ標準仕様なのに対し、JALは最大240席まで増やせるACF仕様が採用される予定。

出典

[編集]
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参考文献

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関連項目

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外部リンク

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