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== 出自と経歴 ==
== 出自と経歴 ==

2019年6月28日 (金) 00:56時点における版

ジェニーン・ジョーンズ
Genene Jones
個人情報
生誕 (1950-07-13) 1950年7月13日
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国テキサス州
殺人
犠牲者数 立証されたのは2人、60人以上の可能性[1]
犯行期間 1977年–1982年
アメリカ合衆国の旗 アメリカ合衆国
テキサス州の旗 テキサス州
逮捕日 1983年[2]
司法上処分
刑罰 3件の罪に対し99年の禁錮刑
有罪判決 殺人罪
判決 3件の罪に対し99年の禁錮刑
テンプレートを表示

ジェニーン・アン・ジョーンズ: Genene Anne Jones1950年7月13日[3] - )は、1970年代から1980年代にかけて、自身が担当する60人余りの乳幼児を殺害した疑いがある准看護師英語版ヘルスケア・シリアルキラーである。ジョーンズは1984年に、小児ふたりの殺害・傷害(殺人未遂)の罪で有罪判決を受けた[4]。殺害にはジゴキシン強心薬)やヘパリン抗凝固薬)、後にはサクシニルコリン筋弛緩薬)が用いられたが、代理ミュンヒハウゼン症候群やヒーロー・コンプレックスを抱えていた可能性が指摘されている[5]。被害者の正確な数は分かっていないが、これは最初の有罪判決が下った後、以前の勤務先である病院が新たな起訴を阻止するために、ジョーンズが勤務していた時期の公式記録を破棄したのではないかと指摘されている[6][1][7][8]

出自と経歴

ジョーンズは1950年7月13日テキサス州サンアントニオで生まれ[3][9]ナイトクラブのオーナー夫妻に養子として引き取られた[10]。16歳の時には弟がパイプ爆弾自殺し、翌年養父も末期癌で死亡した[3][11]

彼女は高校時代の恋人と1968年に結婚し、子どもをひとり儲けた後、1974年に離婚した(その後1977年に復縁し、さらにもう1人が生まれている)[10]。起訴の直前、ジョーンズは19歳の看護助手と再婚したが、起訴後の1983年12月に相手側から離婚届が提出された[12]。最初の結婚の頃は美容師として働いていたが、1977年に資格取得のため看護学校へ入学した[12][13]。卒業後はサンアントニオのメソジスト病院、またある私立病院に勤務したが、出しゃばった判断を行うなどの理由で長続きしなかったという[14]

彼女はベア郡立病院(現ユニバーシティ・ヘルス・システム英語版)の小児集中治療室英語版准看護師英語版として働き始めたが、ジョーンズの勤務中には、彼女が看護した子どもたちが大勢亡くなっていた[15]。病院は訴訟を起こされることを恐れ、ジョーンズを含めた准看護師全員へ解雇に応じるよう求め、代わりに小児集中治療室のスタッフを正看護師のみに変更した[16]。解雇前、ジョーンズの勤務時間は「死のシフト」、また彼女自身も「死の看護師」と呼ばれていたほどだったが、ベア郡の検死医に異状死に関する報告は一切無かったという[16]。1984年にジョーンズが有罪判決を受けた後、ベア郡立病院は彼女が勤務していた時期の公式記録を破棄しており、正確な被害者数は分かっていない[6][1][7][8]

彼女はその後、サンアントニオに程近いテキサス州カーヴィル英語版に移り、小児科の開業病院に勤めることになった[9]。彼女はここで6人の子どもへ毒を盛ったとして罪に問われた。医師は自分とジョーンズしか入ることのできない薬品庫で、穿刺の痕が残るサクシニルコリン筋弛緩剤)の瓶を見つけた[17]。中身は満量に見えたが、後の調査で希釈されていたことが判明した[17][18]。この脱分極性筋弛緩薬は、投与すると全身の筋肉が弛緩して心停止・呼吸不全・窒息を引き起こすことになる[19]。ジョーンズは自身の働きについて、カーヴィルで小児集中治療室を設立する助けがしたかったのだと主張した[20][21]

刑事訴追

ジョーンズは1983年に逮捕され、カーヴィルの開業病院にて15ヶ月の女児をサクシニルコリンで殺した罪で、1984年2月に99年の禁錮刑を言い渡された[22][23]。また同じ年の10月には、ヘパリン抗凝固薬)による4ヶ月の男児殺人未遂で60年の禁錮刑判決を受けた[23]

2016年3月の段階で、ジョーンズはテキサス刑事司法部英語版レーン・マリー・ユニット英語版に収監されていた[4]。彼女は刑務所の過密を防ぐために作られた以前の州法により、2018年3月に満期釈放となることが決まっていた(この法律は、模範囚の刑期を実質的に3分の1にするものだった)[4][24][25]。これを防ぐため、ジョーンズは2017年3月25日に、致死量の抗てんかん薬を投与して11ヶ月の乳児を殺害した罪で起訴された[26][27][28]。ベア郡の地方検事英語版を務めるニコ・ラフッドは、他の子どもたちに対する殺人罪についても起訴される可能性を示唆した。1984年に言い渡された刑期が満了した後、彼女は州の拘置所に移され、新たな刑事訴追の手続開始を待つ状況である[29][30]

メディア

1991年のテレビ映画『デッドリー・メディスン英語版』(原題)では、スーザン・ラッタン英語版がジョーンズを演じたほか[31]、2002年のオリジナルビデオ映画『マス・マーダー』(原題、英: "Mass Murder")ではアリシア・バータが彼女を演じた[32]。またディスカバリーチャンネルドキュメンタリーシリーズ『フォレンジック・ファイルズ英語版』(原題)では、"Lethal Injection"(意味:致死量の注射)として彼女の事件が取り上げられたほか(シーズン5エピソード10)[33]、2016年にイギリスで制作されたドキュメンタリーシリーズ『ナーシズ・フー・キル』(原題、英: ""Nurses Who Kill"")のシーズン1エピソード3[34]インヴェスティゲーション・ディスカヴァリー英語版のシリーズ『デッドリー・ウィメン』(原題、英: ""Deadly Women"")のシーズン2エピソード4『ダーク・シークレッツ』(原題、英: ""Dark Secrets"")でも取り上げられた[35]。また、スティーヴン・キングの小説『ミザリー』に登場するアニー・ウィルクスの造型に影響を与えたと言われている[36][37]

関連項目

脚注

  1. ^ a b c Hauser, Christine (June 23, 2017). “Texas Nurse Suspected of Killing Up to 60 Children Is Charged With Murder” (英語). ニューヨーク・タイムズ. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/2017/06/23/us/texas-nurse-children.html June 23, 2017閲覧。 
  2. ^ ディ・マイオ & フランセル 2018, p. 184.
  3. ^ a b c ディ・マイオ & フランセル 2018, p. 176.
  4. ^ a b c TDCJ Offender Details”. offender.tdcj.texas.gov. テキサス刑事司法部英語版. 5 February 2017閲覧。 “SID Number: 03193016 TDCJ Number: 00380650 Name: JONES, GENENE”2016年5月25日段階のアーカイブ
  5. ^ ディ・マイオ & フランセル 2018, pp. 191–192.
  6. ^ a b Bever, Lindsey (26 May 2017). “‘Angel of Death’ nurse charged with killing another baby, suspected in up to 60 other deaths”. ワシントン・ポスト. https://www.washingtonpost.com/news/post-nation/wp/2017/05/26/angel-of-death-nurse-charged-with-killing-another-baby-suspected-in-up-to-60-other-slayings/ 2018年4月16日閲覧。 
  7. ^ a b King, Wayne (February 6, 1984). “Five Given Injections Quit Breathing, Doctor Says In Nurse's Trial” (英語). The New York Times. ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/1984/02/06/us/five-given-injections-quit-breathing-doctor-says-in-nurse-s-trial.html June 23, 2017閲覧。 
  8. ^ a b “Former Nurse Indicted in Texas Child Injury Case” (英語). The New York Times. (November 22, 1983). ISSN 0362-4331. https://www.nytimes.com/1983/11/22/us/former-nurse-indicted-in-texas-child-injury-case.html June 23, 2017閲覧。 
  9. ^ a b Elkind, Peter. “The Death Shift”. テキサス・マンスリー英語版 (August 1983). https://www.texasmonthly.com/articles/the-death-shift-2/ 2018年4月16日閲覧。. 
  10. ^ a b “Personality Spotlight;NEWLN:Nurse Genene: Convicted murderer”. United Press International. (February 15, 1984). http://www.upi.com/Archives/1984/02/15/Personality-SpotlightNEWLNNurse-Genene-Convicted-murderer/6881445669200/ March 27, 2016閲覧。 
  11. ^ Microsoft Word - Jones, Genene _fall, 2006_.doc - Jones, Genene _fall, 2006_.pdf” (PDF). ラドフォード大学. 2018年4月16日閲覧。
  12. ^ a b Anderson, Teresa (January 14, 1984). “Nurse Genene faces trial in children's hospital deaths”. United Press International. http://www.upi.com/Archives/1984/01/14/Nurse-Genene-faces-trial-in-childrens-hospital-deaths/9819442904400/ March 27, 2016閲覧。 
  13. ^ The Encyclopedia of Serial Killers. Infobase Publishing. (2006). pp. 138-139. ISBN 0816069875. https://books.google.com/books?id=DwNVbOcTncwC&pg=PA139&lpg=PA139 March 27, 2016閲覧。 
  14. ^ ディ・マイオ & フランセル 2018, p. 177.
  15. ^ Zielinski, Alex (26 May 2017). “Bexar County Prosecutors Re-Open "Angel of Death" Case” (英語). San Antonio Current. https://www.sacurrent.com/the-daily/archives/2017/05/26/district-attorneys-office-reopens-angel-of-death-case 21 October 2017閲覧. "In 1982, Jones was a young nurse working in the pediatric intensive care unit at Bexar County Hospital (now University Hospital)." 
  16. ^ a b ディ・マイオ & フランセル 2018, pp. 178–179.
  17. ^ a b ディ・マイオ & フランセル 2018, p. 181.
  18. ^ Genene Jones / Female Serial Killers”. Crime Library. 2018年4月16日閲覧。
  19. ^ “Explaining the Wicked Phenomenon of the Angels of Death | True Crime Magazine”. True Crime Magazine. (6 June 2017). http://www.thecrimemag.com/explaining-wicked-phenomenon-angels-death/ 21 October 2017閲覧。 
  20. ^ Hickey, Eric (2010). Serial Murderers and Their Victims (5th edition). Belmont, CA: Wadsworth. p. 182. ISBN 978-0-495-60081-7 
  21. ^ Holmes, Ronald; Holmes, Stephen (1998). Contemporary Perspectives on Serial Murder. Thousand Oaks, CA: Sage Publications英語版. p. 42. ISBN 978-0-7619-1421-1 
  22. ^ CNN Wire (2017年5月30日). “‘She is pure evil’: Former Nurse May Be Responsible for Deaths of Nearly 60 Children”. WNEP.com. 2018年4月16日閲覧。
  23. ^ a b Welsh, Stacey (2018年1月3日). “TIMELINE: The case against suspected serial killer Genene Jones”. KENS英語版. 2018年4月16日閲覧。
  24. ^ Schwartz, Carly (February 24, 2011). “Genene, serial baby killer, scheduled for early release in Texas”. The Huffington Post. April 30, 2013閲覧。
  25. ^ ディ・マイオ & フランセル 2018, pp. 193–194.
  26. ^ Elkind, Peter (25 May 2017). “Prosecutors Race to Keep Angel-of-Death Behind Bars”. Texas Monthly. Pro Publica. http://www.texasmonthly.com/articles/prosecutors-race-keep-angel-death-behind-bars/ 16 July 2017閲覧。 
  27. ^ 生田綾 (2017年5月27日). “乳児60人前後を殺害か "死の天使"と呼ばれた看護師、別事件で起訴”. ハフポスト日本版. 2018年4月16日閲覧。
  28. ^ 乳児殺した看護師を別事件で起訴、60人前後殺害の疑いも 米国”. フランス通信社 (2017年5月27日). 2018年4月16日閲覧。
  29. ^ Former Texas Nurse Accused of Killing Dozens of Kids in '80s”. Snopes (2017年5月26日). 2017年5月26日閲覧。
  30. ^ Ellis, Ralph; Kaye, Randi; Andone, Dakin (26 May 2017). “Texas nurse indicted in second child's death”. CNN (Turner Broadcasting System). http://www.cnn.com/2017/05/26/us/texas-nurse-baby-death-indictment/index.html 21 October 2017閲覧。 
  31. ^ Tucker, Ken (8 November 1991). “Deadly Medicine”. EW.com - Entertainment Weekly (Time Inc.). http://ew.com/article/1991/11/08/deadly-medicine/ 21 October 2017閲覧。 
  32. ^ Mass Murder”. imdb.com. StageDirect (2002年). 21 October 2017閲覧。
  33. ^ Forensic Files - Season 5, Ep 10: Nursery Crimes”. youtube.com. FilmRise (8 July 2016). 21 October 2017閲覧。
  34. ^ Nurses Who Kill”. www.netflix.com. DCD RIghts (2016年). 21 October 2017閲覧。
  35. ^ Dark Secrets | Deadly Women” (英語). www.investigationdiscovery.com (30 October 2008). 21 October 2017閲覧。
  36. ^ Shultz, Christopher (2013年8月15日). “Nurse That Inspired Stephen King's 'Misery' Set For Early Release”. litreactor.com. 2018年4月16日閲覧。
  37. ^ Kelley, Laura (2017年1月27日). “The Death Shift: This is Why Genene Jones is No Angel of Death”. REBEL CIRCUS. 2018年4月16日閲覧。

参考文献

外部リンク