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「摩擦発光」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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'''摩擦発光'''({{lang-en-short|Triboluminescence}})は、[[光学現象]]の一種であり、引き離す、剥がされる、引掻かれる、砕かれる、擦られるなどによって物質中の[[化学結合]]が破壊された際に光が放出される現象を指す。この現象には未解明な部分が残されているが、電荷の分離、再結合によって発生すると考えられている。triboluminescenceは[[ギリシア語]]の[[wiktionary:τρίβω|τρίβειν]](''摩擦すること'' [[トライボロジー]]を参照)と[[ラテン語]]の''lumen''(光)が語源となっている。[[砂糖]]の結晶を砕いたり、[[粘着テープ]]を剥がすことで摩擦発光を観察することができる。
'''摩擦発光'''({{lang-en-short|Triboluminescence}})は、[[光学現象]]の一種であり、引き離す、剥がされる、引掻かれる、砕かれる、擦られるなどによって物質中の[[化学結合]]が破壊された際に光が放出される現象を指す。この現象には未解明な部分が残されているが、電荷の分離、再結合によって発生すると考えられている。triboluminescenceは[[ギリシア語]]の[[wiktionary:τρίβω|τρίβειν]](''摩擦すること'' [[トライボロジー]]を参照)と[[ラテン語]]の''lumen''(光)が語源となっている。[[砂糖]]の結晶を砕いたり、[[粘着テープ]]を剥がすことで摩擦発光を観察することができる。


英語では、''triboluminescence''はよく''fractoluminescence''の義語として用いられる。(fractoluminescenceは結晶体が破壊された際の光の放射だけについて示したい場合に使われることがある。){{仮リンク|ピエゾルミネセンス|en|Piezoluminescence}}<!-- 漢字にするとすれば圧力発光か感圧発光よいと思います -->の場合は変形した際に光が放たれるのに対し、破壊発光<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はtriboluminescenceとなっていますが、fractoluminescenceの意味と判断しました。 -->は破壊された際に光が放たれるという点で異なる。これらの発光は{{仮リンク|応力発光|en|Mechanoluminescence}}の代表例である。(応力発光は[[固体]]に力学的作用が働いた際に起こる[[発光]]現象である。)
英語では、''triboluminescence''は''fractoluminescence''の義語として用いられることがある。(fractoluminescenceは結晶体が破壊された際の光の放射だけについて示したい場合に使われることがある<ref name=Changing_Colours_now_you_see_them_now_you_dont /><ref>{{cite web | url=https://scienceprojectideasforkids.com/2016/types-luminescence/ | title=How Things Luminescence; Types of Luminescence | last=Cleave | first=Janice Van | date=2016-12-08 | work=VanCleave's Science Fun | publisher=Cleave, Janice Van | accessdate=2018-10-27}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref>。){{仮リンク|ピエゾルミネセンス|en|Piezoluminescence}}<!-- 圧力よって発生するルミネセンスいう意味になりますが、あまり一般的な翻訳語は見つからなかったためカタカナにしています。別ページに分けずにこのページで解説すべき? -->の場合は変形した際に光が放たれるのに対し、破壊発光<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版と参考文献はtriboluminescenceとなっていますが、どちらかというとfractoluminescenceの意味として使われていると考えました。 -->は破壊された際に光が放たれるという点で区分されことがある<ref name=Piezoluminescence_phenomenon>{{cite journal | last=Atari | first=N.A. | date=1982-06-21 | title=Piezoluminescence phenomenon | journal=Physics Letters A | publisher=Elsevier B.V. | volume=90 | issue=1-2 | pages=93-96 | doi=10.1016/0375-9601(82)90060-3 | issn=0375-9601 | accessdate=2018-10-26}}</ref><ref name=Lanthanide_mechanoluminescence>{{cite journal | last=Bünzli | first=Jean-Claude G. | last2=Wong | first2=Ka-Leung | title=Lanthanide mechanoluminescence | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S1002072117301072 | journal=Journal of Rare Earths | publisher=Elsevier B.V. | volume=36 | issue=1 | pages=1-41 | doi=10.1016/j.jre.2017.09.005 | issn=1002-0721 | accessdate=2018-10-27}}</ref>。これらの発光は{{仮リンク|応力発光|en|Mechanoluminescence}}の代表例である。(応力発光は<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は固体に限定していますが、Mechanoluminescenceは液体に対しても使われます。 -->力学的作用が働いた際に起こる[[発光]]現象である。)<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの段落に参考文献はありません -->


== 歴史 ==
== 歴史 ==
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=== アンコンパーグル・ユト・インディアン ===
=== アンコンパーグル・ユト・インディアン ===
記録が残されているなかでは、中央[[コロラド州|コロラド]]を居留地とした{{仮リンク|アンコンパーグル・ユト|en|Uncompahgre Ute}}・[[インディアン]]が、最初に{{仮リンク|応力発光|en|Mechanoluminescence}}によって[[石英]]の結晶を光源として用いたことのある民族の1つである<ref>{{cite web | url=http://www.bbc.co.uk/bang/handson/sugar_glow.shtml | title=BBC - Bang Goes the Theory - Hands-on science: Sugar Glow | publisher=BBC | accessdate=2012-03-06}}</ref><ref>{{cite journal | last=Dawson | first=Timothy | title=Changing colors: now you see them, now you don't | journal=Coloration Technology | year=2010 | doi=10.1111/j.1478-4408.2010.00247.x}}</ref>。[[バッファロー]]の生皮にコロラドや[[ユタ州|ユタ]]の山から集めた透明な石英の結晶を詰めることで、特別な祭具を作り上げた。夜中の儀式中にその祭具を振ることによって、半透明のバッファローの生皮の包みを通して、石英の結晶にかかった摩擦応力と力学的な負荷によって発生した閃光が観察できる
記録が残されているなかでは、中央[[コロラド州|コロラド]]を居留地とした{{仮リンク|アンコンパーグル・ユト|en|Uncompahgre Ute}}・[[インディアン]]が、最初に{{仮リンク|応力発光|en|Mechanoluminescence}}によって[[石英]]の結晶を光源として用いたことのある民族の1つである。[[バッファロー]]の生皮にコロラドや[[ユタ州|ユタ]]の山から集めた透明な石英の結晶を詰めることで、特別な祭具を作り上げた。夜中の儀式中にその祭具を振ることによって、半透明のバッファローの生皮の包みを通して、石英の結晶にかかった摩擦応力と力学的な負荷によって発生した閃光が観察できる<ref>{{cite book | last=Eglsh | first=Ron | date=2011-12 | chapter=Nanotechnology and Traditional Knowledge Systems | editor1-last=Maclurcan | editor1-first=Donald | editor2-last=Radywyl | editor2-first=Natalia | title=Nanotechnology and Global Sustainability | url=https://books.google.com/books?id=TklVCsdh6v8C&pg=PA51 | edition=1 | publisher=CBS Press | pages=51-52 | isbn=978-1439855768 | accessdate=2018-11-04}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref><ref>{{cite web | url=http://www.bbc.co.uk/bang/handson/sugar_glow.shtml | title=BBC - Bang Goes the Theory - Hands-on science: Sugar Glow | publisher=BBC | accessdate=2012-03-06}}</ref><ref name=Changing_Colours_now_you_see_them_now_you_dont>{{cite journal | last=Dawson | first=Timothy L. | date=2010-07-13 | title=Changing colours: now you see them, now you don't | url=https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/j.1478-4408.2010.00247.x | journal=Coloration Technology | publisher=John Wiley & Sons, Inc. | volume=126 | issue=4 | pages=177-188 | doi=10.1111/j.1478-4408.2010.00247.x | issn=1478-4408 | accessdate=2018-11-06}}</ref>。


=== 後の時代 ===
=== 後の時代 ===
イングランドの学者である[[フランシス・ベーコン]]による1620年の著作である『[[ノヴム・オルガヌム]]』にまで観測記録は遡ることができ、その中では次のように述べられている。「どのような[[砂糖]]でも固まっているかどうかに関係なく十分に硬ければ、暗闇の中で割ったり砕いたりすると光ることはよく知られている。」<ref>{{cite book | last=Bacon | first=Francis | date=1620 | title="Novum Organum" | url=https://archive.org/details/cu31924029009920 | location=New York | publisher=P. F. Collier | publication-date=1902 | page=129 | accessdate=2018-09-20 | quote=It is well known that all [[砂糖|sugar]], whether candied or plain, if it be hard, will sparkle when broken or scraped in the dark.}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版と参照先は異なります --></ref>科学者である[[ロバート・ボイル]]もまた1663年に摩擦発光の研究に関する報告を出している。1790年代後半には精製された[[砂糖]]が生産されるようになった。こうした砂糖は輸送、販売目的のために大きな棒砂糖として成形された。棒砂糖は{{仮リンク|シュガーニップス|en|sugar nips}}という道具を使って使いやすい大きさに砕かなければならなかった。そして、暗い中で砂糖を「挟んで砕く」と小さな火花が見えることに気づく人が出始めた。


イングランドの学者である[[フランシス・ベーコン]]による1605年の著作である『{{仮リンク|The Advancement of Learning|en|The Advancement of Learning}}』<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は最初の観測記録としてノヴム・オルガヌムについて述べていますが、こちらのほうが古いです。 -->にまで観測記録はさかのぼることができ<ref name=Lanthanide_mechanoluminescence /><ref name=Triboluminescence_spectroscopy_of_common_candies /><ref name=Advances_in_X-Ray_Chemical_Analysis>{{cite journal | 和書 | author=横井 健 | author2=松岡駿介 | author3=今宿 晋 | author4=河合 潤 | date=2014-03-21 | title=氷砂糖とイオン結晶の破壊におけるX線と可視光の発生 | url=http://www.process.mtl.kyoto-u.ac.jp/pdf/shinnpo45_p227_p232_yokoi.pdf | format=PDF | journal=X線分析の進歩 | publisher=株式会社 アグネ技術センター | volume=45 | pages=227-232 | isbn=978-4-901496-73-5 | issn=0911-7806 | accessdate=2018-10-26}}</ref>、その中では次のように述べられている。「また、火、その燃焼物と、[[ホタル]](部屋全体を照らすほどの光を放つ)や、一部の動物が持つ暗闇の中で光る目、削ったり砕いたりしているときの棒砂糖、乗馬で酷使した馬の汗など、これらに見られる共通点は何なのだろうか<ref>{{cite book | last=Bacon | first=Francis | date=1605 | title=Advancement of learning | url=https://archive.org/details/advancementoflea00bacouoft | location=New York | publisher=P. F. Collier | publication-date=1902 | page=209 | accessdate=2018-11-06 | quote=And, indeed, it should be inquired what affinity flame and ignited bodies have with glow-worms, the Luciola, the Indian fly, which casts a light over a whole room; the eyes of certain creatures in the dark; loaf-sugar in scraping or breaking; the sweat of a horse hard ridden, etc.}}</ref>。」また、1620年の著作である『[[ノヴム・オルガヌム]]』にも観測記録は確認でき、その中では次のように述べられている。「どのような[[砂糖]]でも固まっているかどうかに関係なく十分に硬ければ、暗闇の中で割ったり砕いたりすると光ることはよく知られている<ref>{{cite book | last=Bacon | first=Francis | year=1620 | title=Novum Organum | url=https://archive.org/details/cu31924029009920 | location=New York | publisher=P. F. Collier | publication-date=1902 | page=129 | accessdate=2018-09-20 | quote=It is well known that all [[砂糖|sugar]], whether candied or plain, if it be hard, will sparkle when broken or scraped in the dark.}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの段落にこれ以外の参考文献はありません。また、参照先は異なります。 --></ref>。」科学者である[[ロバート・ボイル]]もまた1663年<!-- 本の出版年は1664年ですが、報告の日付は1663年になっています -->に摩擦発光の研究に関する報告を出している<ref>{{cite book | last=Boyle | first=Robert | year=1664 | title=Experiments and Considerations Touching Colours | url=https://www.gutenberg.org/files/14504/14504-h/14504-h.htm | publisher=[[Project Gutenberg]] | publication-date=2004-12-28 | pages=413-421 | accessdate=2018-11-05 }}</ref><ref>{{cite journal | last=Virk | first=Hardev Sing | date=2015-01 | title=History of Luminescence from Ancient to Modern Times | url=https://www.researchgate.net/publication/259713568_History_of_Luminescence_from_Ancient_to_Modern_Times | journal=Defect and Diffusion Forum | publisher=Trans Tech Publications, Inc. | volume=361 | pages=1-13 | doi=10.4028/www.scientific.net/DDF.361.1 | issn=1662-9507 | accessdate=2018-11-05}}</ref>。また、棒砂糖は使う前に砕く必要があり、砕く際に光る様子が観察できる<ref name=Changing_Colours_now_you_see_them_now_you_dont /><ref name=Lanthanide_mechanoluminescence /><!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は表現があまりよくないため表現を変えています。 -->。
1675年に[[パリ]]で発生した摩擦発光現象は歴史的に重要なものであった。天文学者である[[ジャン・ピカール]]は[[気圧計]]を運んでいる際に暗闇の中で気圧計が光っていることに気が付いた。その気圧計内のガラス管内には[[水銀]]が完全には中を満たさない程度に入っていた。ガラス管を水銀が滑り落ちるたびに上部の何もない空間が光った。この発光現象を研究している際に、研究者によって低気圧下では静電気によって空気が光る場合があることが発見された。この発見によって[[電灯]]の可能性が示された<ref>[[:en:Barometric light]]を参照</ref><ref>{{cite web | author=J. J. O'Connor | author2=E. F. Robertson | url=http://www-groups.dcs.st-and.ac.uk/history/Biographies/Picard_Jean.html | title=Jean Picard | website=MacTutor History of Mathematics | publisher=University of St Andrews | location=Scotland | date=2008-12 | accessdate=2018-09-20}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref>。

1675年に[[パリ]]で発生した摩擦発光現象は歴史的に重要なものであった。天文学者である[[ジャン・ピカール]]は[[気圧計]]を運んでいる際に暗闇の中で気圧計が光っていることに気が付いた。その気圧計内のガラス管内には[[水銀]]が完全には中を満たさない程度に入っていた。ガラス管を水銀が滑り落ちるたびに上部の何もない空間が光った。この発光現象を研究している際に、研究者によって低気圧下では静電気によって空気が光る場合があることが発見された。この発見によって[[電灯]]の可能性が示された<ref>[[:en:Barometric light]]を参照</ref><ref>{{cite web | last=O'Connor | first=J. J. | last2=Robertson | first2=E. F. | url=http://www-groups.dcs.st-and.ac.uk/history/Biographies/Picard_Jean.html | title=Jean Picard | website=MacTutor History of Mathematics | publisher=University of St Andrews | location=Scotland | date=2008-12 | accessdate=2018-09-20}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref>。


== 反応原理 ==
== 反応原理 ==
[[材料科学]]においては、この現象には未だ不明な点が残っているものの、[[結晶学]]、[[分光法]]、その他実験的証拠に基づいた現在の理論によると、異方的な媒質が破壊される際に電荷分離が発生する。そして電荷再結合が発生すると、周りの空気が放電によって[[イオン化]]され閃光が見られる。さらに研究によると、摩擦発光が見られる結晶は等方的ではなく (そのため異方性によって電荷分離が発生する)、 また導電性が低い必要がある、ということが示されている。しかしながら、ヘキサキス(アンチピリン)テルビウムヨウ化物のように、この法則からは外れて非異方性を持ちつつも摩擦発光が見られる物質が存在する<ref>{{cite journal|author=W. Clegg, G. Bourhill and I. Sage|title=Hexakis(antipyrine-O)terbium(III) triiodide at 160 K: confirmation of a centrosymmetric structure for a brilliantly triboluminescent complex|journal=Acta Crystallographica Section E| date=April 2002 |volume=58|issue=4|url=http://scripts.iucr.org/cgi-bin/paper?S1600536802005093|accessdate=21 September 2013}}</ref>。原料に含まれている不純物がそうした物質に異方性をもたらしていると考えられている。


<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は表現があまりよくないため表現を変えています。 -->
摩擦発光が生物現象として発生するには、力学的な衝撃を受けて[[遊離基]]が{{仮リンク|ラジカル不均化|en|Radical disproportionation|label=再結合}}することが必要となる<ref>{{citation | journal= Bioluminescence and chemiluminescence| pages= 239–244| first= V.E. | last= Orel | first2= S.B. | last2= Alekseyev | first3= Yu.A. | last3= Grinevich| year=1992 | title=Mechanoluminescence: an assay for lymphocyte analysis in neoplasis |url=http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bio.1170070403/abstract;jsessionid=23CFE9580A9A134C77F852C2C2786A5A.f02t03 | doi=10.1002/bio.1170070403 | volume=7}}</ref>。
[[材料科学]]においては、この現象には未だ不明な点が残っているものの、[[結晶学]]、[[分光法]]、その他実験的証拠に基づいた現在の理論によると、異方的な媒質が破壊される際に電荷分離が発生する。そして電荷再結合が発生すると、周りの空気中の窒素が放電によって[[イオン化]]され閃光が見られる<ref>{{cite journal | 和書 | author=三浦 崇 | author2=塩田 忠 | author3=中山 景次 | date=2001-05-20 | title=誘電体間の摩擦に伴う放電発光と帯電電位差 | url=https://repository.kulib.kyoto-u.ac.jp/dspace/handle/2433/97007 | journal=物性研究 | publisher=物性研究刊行会 | volume=76 | issue=2 | pages=168-173}}</ref><ref>{{cite news | date=2002-07-30 | title=摩擦によるマイクロプラズマを発見 | url=https://www.aist.go.jp/aist_j/press_release/pr2002/pr20020730/pr20020730.html | publisher=国立研究開発法人 [[産業技術総合研究所]] | accessdate=2018-11-02}}</ref><ref>{{cite journal | 和書 | author=中山 景次 | year=2006 | title=摩擦空間のマイクロプラズマ | journal=真空 | publisher=一般社団法人 日本真空学会 | volume=49 | issue=10 | pages=618-623 | doi=10.3131/jvsj.49.618 | issn=1880-9413 | accessdate=2018-11-02}}</ref>。さらに研究によると、摩擦発光が見られる結晶は等方的ではない (そのため異方性によって電荷分離が発生する<!-- 圧電効果 -->)ことが摩擦発光の発生に関係している、と考えられている<ref>{{cite journal | 和書 | author=久保園 紘士 | author2=山田 浩志 | author3=徐 超男 | author4=鄭 旭光 | date=2006-06 | title=新奇物性解明のための精密構造解析III : 結晶構造解析から見た応力発光のメカニズム | url=http://portal.dl.saga-u.ac.jp/handle/123456789/47405 | journal=佐賀大学理工学部集報 | publisher=[[佐賀大学]] | volume=35 | issue=1 pages=23-27 | accessdate=2018-10-31}}</ref>。しかしながら、ヘキサキス(アンチピリン)テルビウムヨウ化物のように、この法則からは外れて非異方性を持ちつつも摩擦発光が見られる物質が存在する<ref>{{cite journal|author=W. Clegg, G. Bourhill and I. Sage|title=Hexakis(antipyrine-O)terbium(III) triiodide at 160 K: confirmation of a centrosymmetric structure for a brilliantly triboluminescent complex|journal=Acta Crystallographica Section E| date=April 2002 |volume=58|issue=4|url=http://scripts.iucr.org/cgi-bin/paper?S1600536802005093|accessdate=21 September 2013}}</ref><!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの段落にこれ以外の参考文献はありません -->。材料中に存在する格子欠陥がそうした物質に部分的な異方性をもたらしていると考えられている<ref name=Lanthanide_mechanoluminescence /><ref>{{cite journal | last=Chen | first=Xio-Feng | last2=Duan | first2=Chun-Yin | last3=Zhu | first3=Xu-Hui | last4=You | first4=Xiao-Zeng | last5=Shanmuga Sundara Raj | first5=S. | last6=Fun | first6=Hoong-Kun | last7=Jun | first7=Wu | date=2001-08 | title=Triboluminescence and crystal structures of europium(III) complexes | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0254058401002991 | journal=Materials Chemistry and Physics | publisher=Elsevier B.V. | volume=72 | issue=1 | pages=11-15 | doi=10.1016/S0254-0584(01)00299-1 | issn=0254-0584 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite journal | last=Sweeting | first=Linda M. | date=2001-02-16 | title=Triboluminescence with and without air | url=https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/cm0006087 | journal=Chemistry of Materials | publisher=ACS Publications | volume=13 | issue=3 | pages=854-870 | doi=10.1021/cm0006087 | issn=1520-5002 | accessdate=2018-11-06}}</ref>。


<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版からこの箇所の段落はなくしました。参考文献に書いていないことが書かれていることと、あまり何も説明をできていない文のため。 -->
== 実例 ==
== 実例 ==
[[File:Tribo.ogv|thumb|石英での摩擦発光]]
[[File:Tribo.ogv|thumb|石英での摩擦発光]]


[[ダイヤモンド]]は摩擦されている間に青色や緑色に発光することがある<ref>{{cite journal | 和書 | author=梶原 翔太 | author2=柏木 啓伸 | author3=阿南 悟 | author4=横井 裕之 | author5=渡邉 純二 | author6=黒田 規敬 | date=2008-01-22 | title=石英とダイヤモンド間の摩擦によるトライボルミネッセンス | url=http://dl.ndl.go.jp/info:ndljp/pid/9592220/77 | journal=熊本県産学官技術交流会講演論文集 | pubisher=熊本県産業技術センター | volume=22 | pages=238-239 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite journal | 和書 | author=三浦 崇 | author2=荒川 一郎 | year=2002 | title=ダイヤモンド-水晶表面間のすべり摩擦に起因する雰囲気気体放電発光の観測 | journal=真空 | publisher=一般社団法人 日本真空学会 | volume=45 | issue=5 | pages=428-432 | doi=10.3131/jvsj.45.428 | issn=1880-9413 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite journal | 和書 | author=三浦 崇 | author2=橋本 麻衣 | author3=和泉 奈穂子 | author4=荒川 一郎 | year=2005 | title=低真空 (10~10<sup>3</sup> Pa) 雰囲気でのダイヤモンドと水晶の摩擦に伴う発光 | journal=真空 | publisher=一般社団法人 日本真空学会 | volume=48 | issue=5 | pages=346-349 | doi=10.3131/jvsj.48.346 | issn=1880-9413 | accessdate=2018-10-31}}</ref>。石英を用いてダイヤモンドを{{仮リンク|ダイヤモンドカッティング|en|diamond cutting|label=研磨}}していると、この現象が見られることがある<ref>{{cite journal | 和書 | author=辰巳 夏生 | year=2018 | title=高品質単結晶ダイヤモンドのデバイス対応低欠陥密度化に関する研究 | url=http://hdl.handle.net/11094/69586 | publisher=[[大阪大学]] | doi=10.18910/69586 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite journal | author=辰巳 夏生 | author2=原野 佳津子 | author3=伊藤 利通 | author4=角谷 均 | date=2018-03 | title=The luminescence emitted from the type Ib and IIa diamonds under the SiO<sub>2</sub> polishing process | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0925963517307513 | journal=Diamond and related Materials | publisher=Elsevier B.V. | volume=83 | pages=104-108 | doi=10.1016/j.diamond.2018.01.018 | issn=0925-9635 | accessdate=2018-10-31}}</ref>。摩擦発光の性質を持つ鉱物としてはほかにも[[石英]]などがあり、こすり合わせることで発光させられる<ref name=BBC_Ten_crystals_with_weird_properties_that_look_like_magic>{{cite web | url=http://www.bbc.com/earth/story/20150623-ten-crystals-with-magic-powers | title=Ten crystals with weird properties that look like magic | last=Perkins | first=Ceri | date=2015-06-22 | publisher=BBC | accessdate=2018-11-02}}</ref><ref>{{cite journal | last=Aman | first=Sergej | last2=Tomas | first2=Jürgen | date=2004-08-30 | title=Mechanoluminescence of quartz particles during grinding in a stirred media mill | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0032591004003250 | journal=Powder Technology | publisher=Elsevier B.V. | volume=146 | issue=1-2 | pages=147-153 | doi=10.1016/j.powtec.2004.08.005 | issn=0032-5910}}</ref><ref>{{cite web|url=http://www.rockhoundingar.com/experiments.php |title=Rockhounding Arkansas: Experiments with Quartz |publisher=Rockhoundingar.com |date= |accessdate=2012-10-09}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの段落にこれ以外の参考文献はありません。原文から表現などを変えています。 --></ref>。
[[ダイヤモンド]]は摩擦されている間に光り始めることがある。{{仮リンク|ダイヤモンドカッティング|en|diamond cutting}}の最中にダイヤモンドの切子面を研磨していたりダイヤモンドを切断している際に、この現象が見られることがある。ダイヤモンドは青や赤の蛍光を放つことがある。摩擦発光の性質を持つ鉱物としてはほかにも[[石英]]などがあり、こすり合わせることで発光させられる<ref>{{cite web|url=http://www.rockhoundingar.com/experiments.php |title=Rockhounding Arkansas: Experiments with Quartz |publisher=Rockhoundingar.com |date= |accessdate=2012-10-09}}</ref>。


一般的な{{仮リンク|感圧接着テープ|en|Pressure-sensitive tape}}(''[[スコッチテープ]]'')の場合は、巻いてあるテープからテープの端を引っ張って剥がすと線状に光って見える<ref>{{cite news | last=Sanderson | first=Katharine | date=2008-10-22 | title=Sticky tape generates X-rays | url=http://www.nature.com/news/2008/081022/full/news.2008.1185.html | work=Nature News | publisher=Springer Nature | doi=10.1038/news.2008.1185 | accessdate=2008-12-18}}</ref>。巻いてあるテープを真空中で剥がすとX線が発生することが、1953年にソビエトの科学者によって初めて観察された<ref>{{cite journal | last1 = Karasev | first1 = V. V. | last2 = Krotova | first2 = N. A. | last3 = Deryagin | first3 = B. W. | year = 1953 | title = ''Study of electronic emission during the stripping of a layer of high polymer from glass in a vacuum| url = | journal = Doklady Akademii Nauk SSSR (Proceedings of the USSR Academy of Sciences) | volume = 88 | issue = | pages = 777–780 }}</ref>。2008年にはX線が発生する原理についての研究がより進んだ<ref>{{cite journal | last1 = Camara | first1 = C. G. | last2 = Escobar | first2 = J. V. | last3 = Hird | first3 = J. R. | last4 = Putterman | first4 = S. J. | year = 2008 | title = Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick-slip friction in peeling tape | url = | journal = Nature | volume = 455 | issue = | pages = 1089–1092 | doi=10.1038/nature07378|bibcode = 2008Natur.455.1089C }}</ref><ref>{{cite news | last=Chang | first=Kenneth | date=2008-10-28 | title=Scotch Tape Unleashes X-Ray Power | url=https://www.nytimes.com/2008/10/28/science/28xray.html | work=The New York Times | publisher=The New York Times Company | accessdate=2009-01-19}}</ref><ref>{{cite web|author=Katherine Bourzac |url=http://www.technologyreview.com/blog/editors/22157/ |title=X-Rays Made with Scotch Tape |publisher=Technology Review |date=2008-10-23 |accessdate=2012-10-09}}</ref>。また、金属でもこれに似たX線放射が観察されている<ref>{{Cite journal|last=Neeraj Krishna|first=G.|date=2014|title=X-Ray Emission during Rubbing of Metals|url=https://www.researchgate.net/publication/288742235_X-Ray_Emission_during_Rubbing_of_Metals|journal=Tribology in Industry|volume=36|pages=229–235|via=}}</ref>。
一般的な{{仮リンク|感圧接着テープ|en|Pressure-sensitive tape}}(''[[スコッチテープ]]'')の場合は、巻いてあるテープからテープの端を引っ張って剥がすと線状に光って見える<ref>{{cite news | last=Sanderson | first=Katharine | date=2008-10-22 | title=Sticky tape generates X-rays | url=http://www.nature.com/news/2008/081022/full/news.2008.1185.html | work=Nature News | publisher=Springer Nature | doi=10.1038/news.2008.1185 | accessdate=2008-12-18}}</ref><ref>{{cite web | url=https://www.britannica.com/science/luminescence | title=Luminescence {{!}} physics | last=Gundermann | first=Karl-Dietrich | date=2011-01-25 | work=Encyclopedia Britannica | publisher=Encyclopædia Britannica, inc. | accessdate=2018-11-06}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの参考文献はありません --></ref>。巻いてあるテープを真空中で剥がすとX線が発生することが、1953年にソビエトの科学者によって初めて観察された<ref>{{cite journal | last1 = Karasev | first1 = V. V. | last2 = Krotova | first2 = N. A. | last3 = Deryagin | first3 = B. W. | year = 1953 | title = ''Study of electronic emission during the stripping of a layer of high polymer from glass in a vacuum| url = | journal = Doklady Akademii Nauk SSSR (Proceedings of the USSR Academy of Sciences) | volume = 88 | issue = | pages = 777–780 }}</ref>。2008年にはX線が発生する原理についての研究がより進んだ<ref name=Correlation_between_nanosecond_X-ray_flashes_and_stick-slip_friction_in_peeling_tape /><ref>{{cite news | last=Chang | first=Kenneth | date=2008-10-28 | title=Scotch Tape Unleashes X-Ray Power | url=https://www.nytimes.com/2008/10/28/science/28xray.html | work=The New York Times | publisher=The New York Times Company | accessdate=2009-01-19}}</ref><ref name=X-Rays_Made_with_Scotch_Tape>{{cite news | last=Bourzac | first=Katherine | date=2008-10-23 | title=X-Rays Made with Scotch Tape | url=https://www.technologyreview.com/s/411085/x-rays-made-with-scotch-tape/ | work=MIT Technology Review | accessdate=2018-11-02}}</ref>。また、金属でもこれに似たX線放射が観察されている<ref>{{cite journal | last=Krishna | first=G.N. | last2=Roy Chowdhury | first2=S.K. | last3=Biswas | first3=A. | year=2014 | title=X-Ray Emission during Rubbing of Metals | url=http://www.tribology.rs/journals/2014/2014-3/1.pdf | format=PDF | journal=Tribology in Industry | publisher=Faculty of Engineering, University of Kragujevac | volume=36 | issue=3 | pages=229–235 | issn=2217-7965 | accessdate=2018-11-06}}</ref>。


それ以外にも、砂糖の結晶を砕くことによって小さな電場が形成され、正の電荷と負の電荷に分かれてから再結合しようとする際に{{仮リンク|電気スパーク|en|electric spark|label=スパーク}}が発生する。特にLife Savers Wint-O-Greenというキャンディは、[[蛍光物質]]である{{仮リンク|ウィンターグリーン (植物)|en|Wintergreen|label=冬緑油}}([[サリチル酸メチル]])が[[紫外線]]を[[可視光|青色光]]に変換するため、こうしたスパーク発生させやすい<ref>{{cite news | last=Chang | first=Kenneth | date=2007-06-19 | title=Sweet Spark May Hold Clue to How Things Break | url=https://www.nytimes.com/2007/06/19/science/19winto.html | work=The New York Times | publisher=The New York Times Company | accessdate=2018-09-20}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません。個人サイトを参考文献にしていたため、ニュースの記事を参考文献にしました。 --></ref><ref>{{cite news | last=Wu | first=C. | date=1997-05-17 | title=Impurities give crystals that special glow | url=http://www.sciencenews.org/sn_arc97/5_17_97/fob2.htm | work=Science News | volume=151 | issue=20 | publisher=Science Service | archiveurl=https://web.archive.org/web/19970626080535/http://www.sciencenews.org/sn_arc97/5_17_97/fob2.htm | archivedate=1997-06-26 | accessdate=2009-09-08}}</ref>。
それ以外にも、砂糖の結晶を砕くことによって小さな電場が形成され、正の電荷と負の電荷に分かれてから再結合しようとする際に{{仮リンク|電気スパーク|en|electric spark|label=スパーク}}が発生する<ref name=Advances_in_X-Ray_Chemical_Analysis /><ref name=BBC_Ten_crystals_with_weird_properties_that_look_like_magic /><ref>{{cite journal | last=Dickinson | first=J. T. | last2=Brix | first2=L. B. | last3=Jensen | first3=L.C. | date=1984-04 | title=Electron and positive ion emission accompanying fracture of Wint-o-green Lifesavers and single-crystal sucrose | url=https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/j150653a007 | journal=The Journal of Physical Chemistry | publisher=ACS Publications | volume=88 | issue=9 | pages=1698-1701 | doi=10.1021/j150653a007 | accessdate=2018-11-02}}</ref>。特にLife Savers Wint-O-Greenというキャンディは、[[蛍光物質]]である{{仮リンク|ウィンターグリーン (植物)|en|Wintergreen|label=冬緑油}}([[サリチル酸メチル]])が[[紫外線]]を[[可視光|青色光]]に変換するため<!-- フォトルミネセンス -->、この現象観察しやすい<ref name=Triboluminescence_spectroscopy_of_common_candies>{{cite journal | last=Zink | first=Jeffrey I. | last2=Angelos | first2=Rebecca | last3=Hardy | first3=Gordon E. | date=1979-06 | title=Triboluminescence spectroscopy of common candies | url=https://pubs.acs.org/doi/abs/10.1021/ed056p413 | journal=Journal of Chemical Education | publisher=ACS Publications | volume=56 | issue=6 | pages=413-414 | doi=10.1021/ed056p413 | issn=1938-1328 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite news | last=Chang | first=Kenneth | date=2007-06-19 | title=Sweet Spark May Hold Clue to How Things Break | url=https://www.nytimes.com/2007/06/19/science/19winto.html | work=The New York Times | publisher=The New York Times Company | accessdate=2018-09-20}}</ref><ref name=Impurities_give_crystals_that_special_glow>{{cite news | last=Wu | first=C. | date=1997-05-17 | title=Impurities give crystals that special glow | url=http://www.sciencenews.org/sn_arc97/5_17_97/fob2.htm | work=Science News | volume=151 | issue=20 | publisher=Science Service | archiveurl=https://web.archive.org/web/19970626080535/http://www.sciencenews.org/sn_arc97/5_17_97/fob2.htm | archivedate=1997-06-26 | accessdate=2009-09-08}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの段落にこれ以外の参考文献はありません。個人サイトを参考文献にしていたため、ニューヨーク・タイムズの記事を参考文献にしました。また表現があまりよくないため表現を変えています。 --></ref>。


また摩擦発光は骨軟組織を覆う[[表皮]]に[[変形]]や[[摩擦帯電]]が発生した際や、食べ物の咀嚼時や脊椎関節がこすれた時、性行為中、また[[循環器|血液の循環]]中に生物現象としても観察される<ref>{{citation | journal=Book: Proceedings of the First International School Biological Luminescence|pages= 131–147 | first= V.E. | last= Orel | year=1989 | title=Triboluminescence as a biological phenomenon and methods for its investigation |url=https://www.researchgate.net/publication/261550609_Triboluminescence_as_a_biological_phenomen_and_methods_for_its_investigation_Ksiaz_Castle_WroclawPoland }}</ref><ref>{{citation | journal= Bioluminescence and chemiluminescence| pages= 239–244| first1= V.E. | last1= Orel| first2=S.B. | last2= Alekseyev| first3=Yu.A.| last3=Grinevich| year=1992 | title=Mechanoluminescence: an assay for lymphocyte analysis in neoplasis |url=http://onlinelibrary.wiley.com/doi/10.1002/bio.1170070403/abstract;jsessionid=23CFE9580A9A134C77F852C2C2786A5A.f02t03 | doi=10.1002/bio.1170070403 | volume=7}}</ref>。
また摩擦発光は、食べ物の咀嚼時や脊椎関節がこすれた時、性行為中、また[[循環器|血液の循環]]中に、骨軟組織を覆う[[表皮]]に[[変形]]や[[摩擦帯電]]が発生することによって、生物現象としても観察される<ref>{{citation | journal=Book: Proceedings of the First International School Biological Luminescence|pages= 131–147 | first= V.E. | last= Orel | year=1989 | title=Triboluminescence as a biological phenomenon and methods for its investigation |url=https://www.researchgate.net/publication/261550609_Triboluminescence_as_a_biological_phenomen_and_methods_for_its_investigation_Ksiaz_Castle_WroclawPoland }}</ref><ref>{{citation | journal= Bioluminescence and chemiluminescence| pages= 239–244| first1= V.E. | last1= Orel| first2=S.B. | last2= Alekseyev| first3=Yu.A.| last3=Grinevich| year=1992 | title=Mechanoluminescence: an assay for lymphocyte analysis in neoplasis |url=https://www.researchgate.net/publication/269808659_Mechanoluminescence_An_assay_for_lymphocyte_analysis_in_neoplasia | doi=10.1002/bio.1170070403 | volume=7 | accessdate=2018-11-02}}</ref>。


== 破壊発光 ==
== 破壊発光 ==
破壊発光({{lang-en-short|Fractoluminescence}})は[[結晶]]が(摩擦を受けるというより)[[破壊]]されることによって起こる発光であるが、しかしながら破壊は摩擦を受けて発生することが多い。英語では、''fractoluminescence''はよくtriboluminescenceの義語として用いられる<ref>{{cite web | url=http://goldbook.iupac.org/T06499.html |title=IUPAC Gold Book - triboluminescence |publisher=Goldbook.iupac.org |date=2012-08-19 |accessdate=2012-10-09}}</ref><!-- 訳注: 順番を入れ替え -->結晶の原子構造および[[分子]]構造によっては、結晶が破壊される際に片側は正の電荷、反対側は負の電荷というように電荷分離が発生することがある。破壊発光においても摩擦発光と同じように、十分な[[電位]]が電荷分離によって生じた場合、界面に挟まれた気体を通って[[放電]]が発生することがある。どの程度の電位でこの現象が発生するかは、容器内の気体の[[誘電体]]特性による<ref>: 部屋で、が急速な熱膨張で音を出して割れるような条件下で冷凍庫から氷を取り出ことで、この現象を再できる。周囲を十分に暗しておけば、氷にひびが入る際に白く瞬いているのを見ることができる</ref>。
破壊発光({{lang-en-short|Fractoluminescence}})は[[結晶]]が(摩擦を受けるというより)[[破壊]]されることによって起こる発光であるが、しかしながら破壊は摩擦を受けて発生することが多い。英語では、''fractoluminescence''はtriboluminescenceの義語として用いられることがある<ref name=Piezoluminescence_phenomenon /><ref>{{cite web | url=http://goldbook.iupac.org/T06499.html |title=IUPAC Gold Book - triboluminescence |publisher=Goldbook.iupac.org |date=2012-08-19 |accessdate=2012-10-09}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの段落にこれ以外の参考文献はありません。--></ref><ref>{{cite web | url=https://www.tf.uni-kiel.de/matwis/amat/admat_en/kap_5/advanced/t5_2_4.html | title=Type of Luminescence | last=Föll | first=Helmut | work=Advanced Materials B, Part 1: Overview of Electronic, Magnetic and Optical Properties of Materials | publisher=[[クリスティアン・アルブレヒト大学キール|Kiel University]] | accessdate=2018-11-03}}</ref>。<!-- 訳注: 順番を入れ替え -->結晶の原子構造および[[分子]]構造によっては、結晶が破壊される際に片側は正の電荷、反対側は負の電荷というように電荷分離が発生することがある。破壊発光においても摩擦発光と同じように、十分な[[電位]]が電荷分離によって生じた場合、界面に挟まれた気体を通って[[放電]]が発生することがある。どの程度の電位でこの現象が発生するかは、容器内の気体の[[誘電体]]特性による<ref>{{cite journal | last=Chandra | first=V.K. | last2=Chandra | first2=B.P. | last3=Jha | first3=Piyush | date=2013-06 | title=Models for intrinsic and extrinsic elastico and plastico-mechanoluminescence of solids | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022231313000410 | journal=Journal of Luminescence | publisher=Elsevier B.V. | volume=138 | pages=267-280 | doi=10.1016/j.jlumin.2013.01.024 | issn=0022-2313 | accessdate=2018-10-30}}</ref>。純水からつられた氷から、破壊発光は観察されている<ref>{{cite journal | last=Quickenden | first=Terence I. | last2=Selby | first2=Brendan J. | last3=Freeman | first3=Colin G. | date=1998-08-01 | title=Ice Triboluminescence | url=https://pubs.acs.org/doi/full/10.1021/jp981657y | journal=The Journal of Physical Chemistry A | publisher=ACS Publications | volume=102 | issue=34 | pages=6713-6715 | doi=10.1021/jp981657y | issn=1520-5215 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite journal | 和書 | author=水野 悠紀子 | year=2002 | title=が破壊る時発光現象 | journal=雪氷 | publisher=公益社団法人 日本雪氷学会 | volume=64 | issue=3 | pages=241-248 | doi=10.5331/seppyo.64.241 | issn=1883-6267 | accessdate=2018-10-31}}</ref><ref>{{cite journal | last=Fifolt | first=D.A. | last2=Petrenko | first2=V.F. | last3=Schulson | first3=E.M. | year=1993 | title=Preliminary study of electromagnetic emissions from cracks in ice | url=https://www.tandfonline.com/doi/abs/10.1080/13642819308220133 | journal=Philosophical Magazine B | publisher=Taylor & Francis Ltd. | volume=67 | issue=3 | pages=289-299 | doi=10.1080/13642819308220133 | issn=1463-6417 | accessdate=2018-11-06}}</ref><!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は表はあまりよため表現を変えています -->。


=== 破断発生時の電磁放射の伝播 ===
=== 破断発生時の電磁放射の伝播 ===
金属や岩石の[[塑性変形]]および[[破壊力学|亀裂伝播]]中の[[電磁放射]]について研究がされてきた。合金からの電磁放射についても分析、検証が行われている。転位によってこうした電磁放射が発生する原理はMolotskiiによって示された<ref>{{cite journal | journal=Journal of Materials Science|pages= 5634–5643| first=V.S.1 | last=Chauhan | year=2008 | title=Effects of strain rate and elevated temperature on electromagnetic radiation emission during plastic deformation and crack propagation in ASTM B 265 grade 2 titanium sheets| url=https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10853-008-2590-5#page-1| volume=43 | doi=10.1007/s10853-008-2590-5|bibcode = 2008JMatS..43.5634C }}</ref>。また、金属コーティングされた合金とされていない合金において塑性変形や亀裂伝播が発生した際に別の副次的な電磁放射現象が見られたことがSrilakshmiとMisraによって報告されている<ref>{{cite journal | last=Srilakshmi | first=B. | last2=Misra | first2=A. | date=2005-09 | title=Secondary electromagnetic radiation during plastic deformation and crack propagation in uncoated and tin coated plain-carbon steel | journal=Journal of Materials Science | volume=40 | issue=23 | doi=10.1007/s10853-005-1293-4}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref>。
金属や岩石の[[塑性変形]]および[[破壊力学|亀裂伝播]]中の[[電磁放射]]について研究がされてきた。合金からの電磁放射についても分析、検証が行われている。転位によってこうした電磁放射が発生する原理はMolotskiiによって示された<ref>{{cite journal | journal=Journal of Materials Science|pages= 5634–5643| first=V.S.1 | last=Chauhan | year=2008 | title=Effects of strain rate and elevated temperature on electromagnetic radiation emission during plastic deformation and crack propagation in ASTM B 265 grade 2 titanium sheets| url=https://link.springer.com/article/10.1007%2Fs10853-008-2590-5| volume=43 | doi=10.1007/s10853-008-2590-5|bibcode = 2008JMatS..43.5634C }}</ref><ref>{{cite journal | last=Misra | first=A. | last2=Ghosh | first2=S. | date=1980-12 | title=Electromagnetic radiation characteristics during fatigue crack propagation and failure | url=https://link.springer.com/article/10.1007/BF00903221 | journal=Applied Physics | publisher=Springer-Verlag | volume=23 | issue=4 | pages=387-390 | doi=10.1007/BF00903221 | issn=1432-0630 | accessdate-2018-10-29}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref>。また、金属コーティングされた合金とされていない合金において塑性変形や亀裂伝播が発生した際に別の副次的な電磁放射現象が見られたことがSrilakshmiとMisraによって報告されている<ref name=Secondary_EMR>{{cite journal | last=Srilakshmi | first=B. | last2=Misra | first2=A. | date=2005-09 | title=Secondary electromagnetic radiation during plastic deformation and crack propagation in uncoated and tin coated plain-carbon steel | journal=Journal of Materials Science | publisher=Kluwer Academic Publishers | volume=40 | issue=23 | doi=10.1007/s10853-005-1293-4 | issn=1573-4803 | accessdate-2018-10-27}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版にはこの参考文献はありません --></ref>。


==== 理論 ====
==== 理論 ====
<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの節の参考文献はありません -->
何種類かの合金では微小な塑性変形や亀裂伝播に伴って電磁放射が発生すること、また強磁性を持つ金属ではネッキングの発生に伴って[[磁場]]が一時的に発生していることが、1973年から1975年にかけてMisraによって報告されており、幾人かの研究者によって検証、調査が行われている。1980年にはTudikとValuevが光電子増倍管を用いることによって、鉄、アルミニウムの引張破断に伴う電磁放射線を10<sup>14</sup> [[ヘルツ|Ha]]の周波数の範囲内で測定することに成功している<!--[citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.510.8058&rep=rep1&type=pdf] によると可視光領域を測定しているので。-->。また、金属コーティングされた合金とされていない合金において別の副次的な電磁放射現象が見られたことが、2005年にSrilakshmiとMisraによって報告されている。固体物質が塑性変形や破断を起こすような大きな振幅負荷を受けると、熱放射や放射音、イオン放射、エキソ電子放射などが発生する。電磁放射現象や亀裂形成現象、破断現象のための測定器具の改良や新たな物質の発見に伴って、電磁放射現象は重要性を増している。
何種類かの合金では微小な塑性変形や亀裂伝播に伴って電磁放射が発生すること、また強磁性を持つ金属ではネッキングの発生に伴って[[磁場]]が一時的に発生していることが、1970年代から<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は1973年から1975年としていますが、それ以降にも論文が出されているため、この表現にしました。 -->Misraによって報告されており<ref>{{cite journal | last=Misra | first=Ashok | date=1975-03-13 | title=Electromagnetic effects at metallic fracture | url=https://www.nature.com/articles/254133a0 | journal=Nature | publisher=Nature Publishing Group | volume=254 | pages=133-134 | doi=10.1038/254133a0 | issn=1476-4687 | accessdate=2018-10-29}}</ref>、幾人かの研究者によって検証、調査が行われている<ref>{{cite journal | last=Jagasivamani | first=V. | date=1987-07-13 | title=Magnetic field emission during fracture of ferromagnetic materials | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0375960187907584 | journal=Physics Letters A | publisher=Elsevier B.V. | volume=123 | issue=1 | pages=37-38 | doi=10.1016/0375-9601(87)90758-4 | issn=0375-9601 | accessdate=2018-10-27}}</ref><ref>{{cite journal | last=Jagasivamani | first=V. | last2=Iyer | first2=K.J.L. | title=Electromagnetic emission during the fracture of heat-treated spring steel | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/0167577X88900432 | journal=Materials Letters | publisher=Elsevier B.V. | volume=6 | issue=11-12 | pages=418-422 | doi=10.1016/0167-577X(88)90043-2 | issn=0167-577X | accessdate=2018-10-27}}</ref><ref>{{cite journal | last=Sharma | first=Sumeet Kumar | last2=Kiran | first2=Raj | last3=Kumar | first4=Amit | last5=Chauhan | first5=Vishal S | last6=Kumar | first6=Rajeev | date=2018-03-29 | title=A theoretical model for the electromagnetic radiation emission from hydrated cylindrical cement paste under impact loading | url=http://stacks.iop.org/2399-6528/2/i=3/a=035047 | journal=Journal of Physics Communications | publisher=IOP Publishing Ltd. | volume=2 | issue=3 | doi=10.1088/2399-6528/aab7be | accessdate=2018-10-29}}</ref>。1980年にはTudikとValuevが光電子増倍管を用いることによって、鉄、アルミニウムの引張破断に伴う電磁放射線を10<sup>14</sup> [[ヘルツ|Hz]]の周波数の範囲内で測定することに成功している<!--[citeseerx.ist.psu.edu/viewdoc/download?doi=10.1.1.510.8058&rep=rep1&type=pdf] によると可視光領域を測定しているので。--><ref>{{cite journal | last=Misra | first=Ashok | last2=Kumar | first2=Arbind | date=2004-06 | title=Some basic aspects of electromagnetic radiation during crack propagation in metals | url=https://link.springer.com/article/10.1023%2FB%3AFRAC.0000037676.32062.cb | journal=International Journal of Fracture | publisher=Kluwer Academic Publishers | volume=127 | issue=4 | pages=387-501 | doi=10.1023/B:FRAC.0000037676.32062.cb | issn=1573-2673 | accessdate=2018-10-27}}</ref><ref>{{cite journal | last=Srilakshmi | first=B. | last2=Misra | first2=Ashok | date=2005-09-15 | title=Electromagnetic radiation during opening and shearing modes of fracture in commercially pure aluminium at elevated temperature | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0921509305005435 | journal=Materials Science and Engineering: A | publisher=Elsevier B.V. | volume=404 | issue=1-2 | pages=99-107 | doi=10.1016/j.msea.2005.05.100 | issn=0921-5093 | accessdate=2018-10-27}}</ref>。また、金属コーティングされた合金とされていない合金において別の副次的な電磁放射現象が見られたことが、2005年にSrilakshmiとMisraによって報告されている<ref name=Secondary_EMR /><ref>{{cite journal | last=Kumar | first=Rajeev | last2=Misra | first2=Ashok | date=2007-04-25 | title=Some basic aspects of electromagnetic radiation emission during plastic deformation and crack propagation in Cu–Zn alloys | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0921509306023446 | journal=Materials Science and Engineering: A | publisher=Elsevier B.V. | volume=454-455 | pages=203-210 | doi=10.1016/j.msea.2006.11.011 | issn=0921-5093 | accessdate=2018-10-27}}<!-- TudikとValuevの論文について述べてもいます --></ref>。固体物質が塑性変形や破断を起こすような大きな振幅負荷を受けると、熱放射や放射音、イオン放射、エキソ電子放射などが発生する。


==== X線の発生 ====
==== X線の発生 ====
適切な真空下でテープを剥がすことによって、人間の指のレントゲンを撮るのに十分なほどのX線が発生する<ref>{{citation | journal=Nature | last1=Camara | first1=Carlos G. | last2=Escobar | first2=Juan V. | first3=Jonathan R. | last3=Hird | first4=Seth J. |last4=Putterman | year=2008 | title=Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick–slip friction in peeling tape | url=https://www.nature.com/articles/nature07378 | doi=10.1038/nature07378 | volume=455 | pages=1089–1092 | bibcode=2008Natur.455.1089C}}</ref>。
適切な真空下でテープを剥がすことによって、人間の指のレントゲンを撮るのに十分なほどのX線が発生する<ref name=Correlation_between_nanosecond_X-ray_flashes_and_stick-slip_friction_in_peeling_tape>{{citation | journal=Nature | last1=Camara | first1=Carlos G. | last2=Escobar | first2=Juan V. | first3=Jonathan R. | last3=Hird | first4=Seth J. |last4=Putterman | year=2008 | title=Correlation between nanosecond X-ray flashes and stick-slip friction in peeling tape | url=https://www.nature.com/articles/nature07378 | doi=10.1038/nature07378 | volume=455 | pages=1089–1092 | bibcode=2008Natur.455.1089C}}</ref><ref>{{cite news | date=2008-10-23 | title=Tape measure: X-rays detected from Scotch Tape | url=https://www.cbc.ca/news/technology/tape-measure-x-rays-detected-from-scotch-tape-1.774157 | work=CBC News | publisher=[[カナダ放送協会|CBC]] | accessdate=2018-11-02}}</ref><ref>{{cite news | last=Madrigal | first=Alexis | date=2008-10-22 | title=Video: The Scoth-Tape X-Ray Machine | url=https://www.wired.com/2008/10/video-the-scotc/ | work=[[WIRED (雑誌)|WIRED]] | publisher=[[コンデナスト・パブリケーションズ|Condé Nast Publications]] | issn=1078-3148 | accessdate=2018-11-02}}</ref><!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版は後の2つの参考文献はありません -->。


==== 変形によって誘起される電磁放射 ====
==== 変形によって誘起される電磁放射 ====
変形に関する研究が新たな素材の開発には必要である。金属の変形具合は温度、与えられる負荷の種類、ひずみ速度、酸化、腐食次第である。変形により誘起される電磁放射現象は、イオン結晶、岩石(特に花崗岩)、金属(特に合金)の3つに分けることができる。材質の特性は向きによって異なるため、電磁放射線が放出されるかは各結晶粒子の方位次第である<ref>{{citation | journal=Journal of Zhejiang university science A| pages=1800–1809| first=Rajeev | last=KUMAR | year=2006 | title=Effect of processing parameters on the electromagnetic radiation emission during plastic deformation and crack propagation in copper-zinc alloys|url=https://link.springer.com/article/10.1631%2Fjzus.2006.A1800#page-1|volume=7|issue=1 | doi=10.1631/jzus.2006.a1800}}</ref>。クラックの成長は原子結合が破壊されることにより電磁放射を引き起こすため、クラックが成長するにつれて電磁放射線の振幅は大きくなる。またクラックの成長が止まると減衰し始める<ref>{{citation | journal=Journal of Applied Physics|pages= 1620–1628| first=V. | last=Frid | year=2006 | title=Fracture induced electromagnetic radiation|url=http://art-and-science.net/VFRIDFiles/frid_model.pdf|volume=36 | doi=10.1088/0022-3727/36/13/330|bibcode=2003JPhD...36.1620F}}</ref>。電磁放射線中には様々な周波数が含まれていることが実験による観察によって分かっている。
変形に関する研究が新たな素材の開発には必要である。金属の変形具合は温度、与えられる負荷の種類、ひずみ速度、酸化、腐食次第である。変形により誘起される電磁放射現象は、イオン結晶、岩石(特に花崗岩)、金属(特に合金)の3つに分けることができる。材質の特性は向きによって異なるため、電磁放射線が放出されるかは各結晶粒子の方位次第である<ref>{{citation | journal=Journal of Zhejiang university science A| pages=1800–1809| first=Rajeev | last=KUMAR | year=2006 | title=Effect of processing parameters on the electromagnetic radiation emission during plastic deformation and crack propagation in copper-zinc alloys|url=https://link.springer.com/article/10.1631%2Fjzus.2006.A1800#page-1|volume=7|issue=1 | doi=10.1631/jzus.2006.a1800}}</ref>。クラックの成長は原子結合が破壊されることにより電磁放射を引き起こすため、クラックが成長するにつれて電磁放射線の振幅は大きくなる。またクラックの成長が止まると減衰し始める<ref>{{citation | journal=Journal of Applied Physics|pages= 1620–1628| first=V. | last=Frid | year=2006 | title=Fracture induced electromagnetic radiation|url=http://art-and-science.net/VFRIDFiles/frid_model.pdf | format=PDF |volume=36 | doi=10.1088/0022-3727/36/13/330|bibcode=2003JPhD...36.1620F}}</ref>。電磁放射線中には様々な周波数が含まれていることが実験による観察によって分かっている。


==== 電磁放射線の計測における試験方法 ====
==== 電磁放射線の計測における試験方法 ====
材料の機械的性質を判断するのには引張試験が広く用いられている。引張試験の記録が完全であれば、弾性特性、塑性変形の性質や範囲、[[強度|降伏強度]]、引張強度、[[靭性]]に関する重要な情報が得られる。1つの試験でこれだけの情報が得られることを考えれば、材料工学の研究で引張試験が広く用いられていることは自然である。そのため電磁放射に関する研究は主には標本に対する引張試験に基づいている。実験によれば、せん断によるクラックの形成よりも引張によるクラックの形成のほうが、大きな単軸荷重がかかる際の弾性、強度ならびに負荷割合が高いため、誘起される電磁放射が強くなる。[[ポアソン比]]は三軸圧縮試験中に電磁放射の特性を識別するための重要な指標になる<ref>{{citation | journal=Journal of Applied Geophysics|pages= 5–13| first=V. | last=Frid | year=2000 | title=Electromagnetic radiation method water-infusion control in rockburst-prone strata|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0926985199000294|volume =43|issue =1 | doi=10.1016/S0926-9851(99)00029-4|bibcode = 2000JAG....43....5F }}</ref>。ポアソン比が小さいほど横ひずみ<!--transverse strain-->が起きにくい材質になり、そのため破断しやすくなる。動的条件下で部材を安全に取り扱うためには、塑性変形の原理はとても重要である。
材料の機械的性質を判断するのには引張試験が広く用いられている。引張試験の記録が完全であれば、弾性特性、塑性変形の性質や範囲、[[強度|降伏強度]]、引張強度、[[靭性]]に関する重要な情報が得られる<ref>{{cite journal | 和書 | author=小野 守章 | year=2008 | title=2-3 材料と溶接部の試験法 | journal=溶接学会誌 | publisher=一般社団法人 溶接学会 | volume=77 | issue=8 | pages=745-751 | doi=10.2207/jjws.77.745 | issn=0021-4787 | accessdate=2018-10-27}}<!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はこの参考文献はありません --></ref>。1つの試験でこれだけの情報が得られることを考えれば、材料工学の研究で引張試験が広く用いられていることは自然である。そのため電磁放射に関する研究は主には標本に対する引張試験に基づいている。実験によれば、せん断によるクラックの形成よりも引張によるクラックの形成のほうが、大きな単軸荷重がかかる際の弾性、強度ならびに負荷割合が高いため、誘起される電磁放射が強くなる。[[ポアソン比]]は三軸圧縮試験中に電磁放射の特性を識別するための重要な指標になる<ref>{{citation | journal=Journal of Applied Geophysics|pages= 5–13| first=V. | last=Frid | year=2000 | title=Electromagnetic radiation method water-infusion control in rockburst-prone strata|url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0926985199000294|volume =43|issue =1 | doi=10.1016/S0926-9851(99)00029-4|bibcode = 2000JAG....43....5F }}</ref>。ポアソン比が小さいほど横ひずみ<!--transverse strain-->が起きにくい材質になり、そのため破断しやすくなる。動的条件下で部材を安全に取り扱うためには、塑性変形の原理はとても重要である。


==== 利用・応用 ====
==== 利用・応用 ====
このような電磁放射はセンサ材料、知的材料の開発に利用できる。また、この技術は粉末冶金技術に組み入れることもできる。電磁放射は大きな変形に伴って発生する放射の1種である。最小限の力学的な刺激である成分の電磁放射反応が一番強くなることが分かれば、主原料に合わせることによって知的材料の開発に新たな流れをつくることができる。変形によって誘起される電磁放射は破損の検知、予防のための強力な手段として用いることができる。
このような電磁放射はセンサ材料、知的材料の開発に利用できる<ref>{{cite journal | last=Olawale | first=David O. | last2=Dickens | first2=Tarik | last3=Sullivan | first3=William G. | last4=Okoli | first4=Okenwa I. | last5=Sobanjo | first5=John O. | last6=Wang | first6=Ben | date=2011-07 | title=Progress in triboluminescence-based smart optical sensor system | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0022231311001232 | journal=Journal of Luminescence | publisher=Elsevier B.V. | volume=131 | issue=7 | pages=1407-1418 | doi=10.1016/j.jlumin.2011.03.015 | issn=0022-2313 | accessdate=2018-10-27}}</ref><ref>{{cite journal | last=Fontenot | first=Ross S. | last2=Bhat | first2=Kamala N. | last3=Hollerman | first3=William A. | last4=Aggarwal | first4=Mohan D. | date=2011-06 | title=Triboluminescent materials for smart sensors | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S136970211170147X | journal=Materials Today | publisher=Elsevier Ltd. | volume=14 | issue=6 | pages=292-293 | doi=10.1016/S1369-7021(11)70147-X | issn=1369-7021 | accessdate=2018-10-27}}</ref><!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はここの参考文献はありません -->。また、この技術は粉末冶金技術に組み入れることもできる。電磁放射は大きな変形に伴って発生する。最小限の力学的な刺激である成分の電磁放射反応が一番強くなることが分かれば、主原料に合わせることによって知的材料の開発に新たな流れをつくることができる。また、変形によって誘起される電磁放射は破損の検知、予防のための強力な手段として用いることができる<ref name=Lanthanide_mechanoluminescence /><ref>{{cite journal | 和書 | author=徐 超男 | year=2009 | title=応力発光体を用いたセンシング―「見えない」危険を可視化する技術 | journal=粉体および粉末冶金 | publisher=一般社団法人 粉体粉末冶金協会 | volume=56 | issue=10 | pages=627-634 | doi=10.2497/jjspm.56.627 | issn=0532-8799 | accessdate=2018-10-27}}</ref><ref>{{cite journal | last=Frid | first=V. | last2=Vozoff | first2=K. | date=2005-10-17 | title=Electromagnetic radiation induced by mining rock failure | url=https://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S0166516205000339 | journal=International Journal of Coal Geology | publisher=Elsevier B.V. | volume=64 | issue=1-2 | pages=57-65 | doi=10.1016/j.coal.2005.03.005 | issn=0166-5162 | accessdate=2018-10-27}}</ref><!-- 11:18, 4 September 2018‎ UTC の英語版はここの参考文献はありません -->


Orel V.E.によって[[診断|実験室診断]]による電磁放射を利用した[[全血]]や[[リンパ球]]の測定装置が発明された<ref>{{citation | journal= Medical Engineering Physics| pages= 365-3671| first1= V.E. | last1= Orel | first2=A.V. | last2=Romanov | first3=N.N. | last3=Dzyatkovskaya | first4= Yu.I.| last4= Mel’nik |year=2002| title=The device and algorithm for estimation of the mechanoemission chaos in blood of patients with gastric cancer |url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S135045330200022X | doi=10.1016/S1350-4533(02)00022-X | volume=24}}</ref><ref>{{cite web | url=https://www.researchgate.net/publication/280349023_Triboluminescent_Method_and_Apparatus_for_Determination_of_Material_._Patent_France_2_536_172_15121982 | title=Triboluminescent Method and Apparatus for Determination of Material . Patent France 2 536 172 15/12/1982 | author=Valerii Emmanuilovich Orel | date=1982-12-15 | publisher=ResearchGate | doi=10.13140/RG.2.1.4656.3689 | accessdate=2015-08-16}}<!-- フランスの特許 --></ref><ref>{{cite journal | journal= Biomedical Engineering| pages= 335–341| first1= V.E. | last1= Orel | first2=I.N. | last2=Kadiuk| first3=Yu.I. | last3=Mel`nik| year=1994| title=Physical and engineering principles in the study of mechanically-induced emission of blood |url=https://link.springer.com/article/10.1007%2FBF00559911 | doi=10.1007/BF00559911 | volume=28}}</ref>。
Orel V.E.によって[[診断|実験室診断]]による電磁放射を利用した[[全血]]や[[リンパ球]]の測定装置が発明された<ref>{{citation | journal= Medical Engineering Physics| pages= 365-3671| first1= V.E. | last1= Orel | first2=A.V. | last2=Romanov | first3=N.N. | last3=Dzyatkovskaya | first4= Yu.I.| last4= Mel’nik |year=2002| title=The device and algorithm for estimation of the mechanoemission chaos in blood of patients with gastric cancer |url=http://www.sciencedirect.com/science/article/pii/S135045330200022X | doi=10.1016/S1350-4533(02)00022-X | volume=24}}</ref><ref>{{cite web | url=https://www.researchgate.net/publication/280349023_Triboluminescent_Method_and_Apparatus_for_Determination_of_Material_._Patent_France_2_536_172_15121982 | title=Triboluminescent Method and Apparatus for Determination of Material . Patent France 2 536 172 15/12/1982 | author=Valerii Emmanuilovich Orel | date=1982-12-15 | publisher=ResearchGate | doi=10.13140/RG.2.1.4656.3689 | accessdate=2015-08-16}}<!-- フランスの特許 --></ref><ref>{{cite journal | journal= Biomedical Engineering| pages= 335–341| first1= V.E. | last1= Orel | first2=I.N. | last2=Kadiuk| first3=Yu.I. | last3=Mel`nik| year=1994| title=Physical and engineering principles in the study of mechanically-induced emission of blood |url=https://link.springer.com/article/10.1007%2FBF00559911 | doi=10.1007/BF00559911 | volume=28}}</ref>。
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2018年11月24日 (土) 10:43時点における版

サリチル酸-L-ニコチンでの摩擦発光

摩擦発光: Triboluminescence)は、光学現象の一種であり、引き離す、剥がされる、引掻かれる、砕かれる、擦られるなどによって物質中の化学結合が破壊された際に光が放出される現象を指す。この現象には未解明な部分が残されているが、電荷の分離、再結合によって発生すると考えられている。triboluminescenceはギリシア語τρίβειν摩擦すること トライボロジーを参照)とラテン語lumen(光)が語源となっている。砂糖の結晶を砕いたり、粘着テープを剥がすことで摩擦発光を観察することができる。

英語では、triboluminescencefractoluminescenceの同義語として用いられることがある。(fractoluminescenceは結晶体が破壊された際の光の放射だけについて示したい場合に使われることがある[1][2]。)ピエゾルミネセンス英語版の場合は変形した際に光が放たれるのに対し、破壊発光は破壊された際に光が放たれるという点で区分されることがある[3][4]。これらの発光は応力発光英語版の代表例である。(応力発光は力学的作用が働いた際に起こる発光現象である。)

歴史

アンコンパーグル・ユト・インディアン

記録が残されているなかでは、中央コロラドを居留地としたアンコンパーグル・ユト英語版インディアンが、最初に応力発光英語版によって石英の結晶を光源として用いたことのある民族の1つである。バッファローの生皮にコロラドやユタの山から集めた透明な石英の結晶を詰めることで、特別な祭具を作り上げた。夜中の儀式中にその祭具を振ることによって、半透明のバッファローの生皮の包みを通して、石英の結晶にかかった摩擦応力と力学的な負荷によって発生した閃光が観察できる[5][6][1]

後の時代

イングランドの学者であるフランシス・ベーコンによる1605年の著作である『The Advancement of Learning英語版』にまで観測記録はさかのぼることができ[4][7][8]、その中では次のように述べられている。「また、火、その燃焼物と、ホタル(部屋全体を照らすほどの光を放つ)や、一部の動物が持つ暗闇の中で光る目、削ったり砕いたりしているときの棒砂糖、乗馬で酷使した馬の汗など、これらに見られる共通点は何なのだろうか[9]。」また、1620年の著作である『ノヴム・オルガヌム』にも観測記録は確認でき、その中では次のように述べられている。「どのような砂糖でも固まっているかどうかに関係なく十分に硬ければ、暗闇の中で割ったり砕いたりすると光ることはよく知られている[10]。」科学者であるロバート・ボイルもまた1663年に摩擦発光の研究に関する報告を出している[11][12]。また、棒砂糖は使う前に砕く必要があり、砕く際に光る様子が観察できる[1][4]

1675年にパリで発生した摩擦発光現象は歴史的に重要なものであった。天文学者であるジャン・ピカール気圧計を運んでいる際に暗闇の中で気圧計が光っていることに気が付いた。その気圧計内のガラス管内には水銀が完全には中を満たさない程度に入っていた。ガラス管を水銀が滑り落ちるたびに上部の何もない空間が光った。この発光現象を研究している際に、研究者によって低気圧下では静電気によって空気が光る場合があることが発見された。この発見によって電灯の可能性が示された[13][14]

反応原理

材料科学においては、この現象には未だ不明な点が残っているものの、結晶学分光法、その他実験的証拠に基づいた現在の理論によると、異方的な媒質が破壊される際に電荷分離が発生する。そして電荷再結合が発生すると、周りの空気中の窒素が放電によってイオン化され閃光が見られる[15][16][17]。さらに研究によると、摩擦発光が見られる結晶は等方的ではない (そのため異方性によって電荷分離が発生する)ことが摩擦発光の発生に関係している、と考えられている[18]。しかしながら、ヘキサキス(アンチピリン)テルビウムヨウ化物のように、この法則からは外れて非異方性を持ちつつも摩擦発光が見られる物質が存在する[19]。材料中に存在する格子欠陥がそうした物質に部分的な異方性をもたらしていると考えられている[4][20][21]

実例

石英での摩擦発光

ダイヤモンドは摩擦されている間に青色や緑色に発光することがある[22][23][24]。石英を用いてダイヤモンドを研磨英語版していると、この現象が見られることがある[25][26]。摩擦発光の性質を持つ鉱物としてはほかにも石英などがあり、こすり合わせることで発光させられる[27][28][29]

一般的な感圧接着テープ英語版スコッチテープ)の場合は、巻いてあるテープからテープの端を引っ張って剥がすと線状に光って見える[30][31]。巻いてあるテープを真空中で剥がすとX線が発生することが、1953年にソビエトの科学者によって初めて観察された[32]。2008年にはX線が発生する原理についての研究がより進んだ[33][34][35]。また、金属でもこれに似たX線放射が観察されている[36]

それ以外にも、砂糖の結晶を砕くことによって小さな電場が形成され、正の電荷と負の電荷に分かれてから再結合しようとする際にスパーク英語版が発生する[8][27][37]。特にLife Savers Wint-O-Greenというキャンディは、蛍光物質である冬緑油英語版サリチル酸メチル)が紫外線青色光に変換するため、この現象を観察しやすい[7][38][39]

また摩擦発光は、食べ物の咀嚼時や脊椎関節がこすれた時、性行為中、また血液の循環中に、骨軟組織を覆う表皮変形摩擦帯電が発生することによって、生物現象としても観察される[40][41]

破壊発光

破壊発光(: Fractoluminescence)は結晶が(摩擦を受けるというより)破壊されることによって起こる発光であるが、しかしながら破壊は摩擦を受けて発生することが多い。英語では、fractoluminescenceはtriboluminescenceの同義語として用いられることがある[3][42][43]。結晶の原子構造および分子構造によっては、結晶が破壊される際に片側は正の電荷、反対側は負の電荷というように電荷分離が発生することがある。破壊発光においても摩擦発光と同じように、十分な電位が電荷分離によって生じた場合、界面に挟まれた気体を通って放電が発生することがある。どの程度の電位でこの現象が発生するかは、容器内の気体の誘電体特性による[44]。純水からつくられた氷から、破壊発光は観察されている[45][46][47]

破断発生時の電磁放射の伝播

金属や岩石の塑性変形および亀裂伝播中の電磁放射について研究がされてきた。合金からの電磁放射についても分析、検証が行われている。転位によってこうした電磁放射が発生する原理はMolotskiiによって示された[48][49]。また、金属コーティングされた合金とされていない合金において塑性変形や亀裂伝播が発生した際に別の副次的な電磁放射現象が見られたことがSrilakshmiとMisraによって報告されている[50]

理論

何種類かの合金では微小な塑性変形や亀裂伝播に伴って電磁放射が発生すること、また強磁性を持つ金属ではネッキングの発生に伴って磁場が一時的に発生していることが、1970年代からMisraによって報告されており[51]、幾人かの研究者によって検証、調査が行われている[52][53][54]。1980年にはTudikとValuevが光電子増倍管を用いることによって、鉄、アルミニウムの引張破断に伴う電磁放射線を1014 Hzの周波数の範囲内で測定することに成功している[55][56]。また、金属コーティングされた合金とされていない合金において別の副次的な電磁放射現象が見られたことが、2005年にSrilakshmiとMisraによって報告されている[50][57]。固体物質が塑性変形や破断を起こすような大きな振幅負荷を受けると、熱放射や放射音、イオン放射、エキソ電子放射などが発生する。

X線の発生

適切な真空下でテープを剥がすことによって、人間の指のレントゲンを撮るのに十分なほどのX線が発生する[33][58][59]

変形によって誘起される電磁放射

変形に関する研究が新たな素材の開発には必要である。金属の変形具合は温度、与えられる負荷の種類、ひずみ速度、酸化、腐食次第である。変形により誘起される電磁放射現象は、イオン結晶、岩石(特に花崗岩)、金属(特に合金)の3つに分けることができる。材質の特性は向きによって異なるため、電磁放射線が放出されるかは各結晶粒子の方位次第である[60]。クラックの成長は原子結合が破壊されることにより電磁放射を引き起こすため、クラックが成長するにつれて電磁放射線の振幅は大きくなる。またクラックの成長が止まると減衰し始める[61]。電磁放射線中には様々な周波数が含まれていることが実験による観察によって分かっている。

電磁放射線の計測における試験方法

材料の機械的性質を判断するのには引張試験が広く用いられている。引張試験の記録が完全であれば、弾性特性、塑性変形の性質や範囲、降伏強度、引張強度、靭性に関する重要な情報が得られる[62]。1つの試験でこれだけの情報が得られることを考えれば、材料工学の研究で引張試験が広く用いられていることは自然である。そのため電磁放射に関する研究は主には標本に対する引張試験に基づいている。実験によれば、せん断によるクラックの形成よりも引張によるクラックの形成のほうが、大きな単軸荷重がかかる際の弾性、強度ならびに負荷割合が高いため、誘起される電磁放射が強くなる。ポアソン比は三軸圧縮試験中に電磁放射の特性を識別するための重要な指標になる[63]。ポアソン比が小さいほど横ひずみが起きにくい材質になり、そのため破断しやすくなる。動的条件下で部材を安全に取り扱うためには、塑性変形の原理はとても重要である。

利用・応用

このような電磁放射はセンサ材料、知的材料の開発に利用できる[64][65]。また、この技術は粉末冶金技術に組み入れることもできる。電磁放射は大きな変形に伴って発生する。最小限の力学的な刺激である成分の電磁放射反応が一番強くなることが分かれば、主原料に合わせることによって知的材料の開発に新たな流れをつくることができる。また、変形によって誘起される電磁放射は破損の検知、予防のための強力な手段として用いることができる[4][66][67]

Orel V.E.によって実験室診断による電磁放射を利用した全血リンパ球の測定装置が発明された[68][69][70]

関連項目

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