「アコーディオン」の版間の差分
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=== 基本形状 === |
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[[File:Concertina, piano accordion, accordion (26057775824).jpg |thumb|right|向かって右から、ボタン鍵盤式[[ダイアトニック]]アコーディオン(左右'''非'''相称。赤い服の男性)、ピアノ式アコーディオン(左右'''非'''相称。赤い服の女性)、[[コンサーティーナ#アングロ・コンサーティーナ|アングロ・コンサーティーナ]](左右相称。青い服の女性)]] |
[[File:Concertina, piano accordion, accordion (26057775824).jpg |thumb|right|向かって右から、ボタン鍵盤式[[ダイアトニック]]アコーディオン(左右'''非'''相称。赤い服の男性)、ピアノ式アコーディオン(左右'''非'''相称。赤い服の女性)、[[コンサーティーナ#アングロ・コンサーティーナ|アングロ・コンサーティーナ]](左右相称。青い服の女性)]] |
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蛇腹楽器(アコーディオン族)は、伸縮自在の蛇腹の左右にそれぞれ[[筐体]](きょうたい。器械を内蔵した箱)がついている。< |
蛇腹楽器(アコーディオン族)は、伸縮自在の蛇腹の左右にそれぞれ[[筐体]](きょうたい。器械を内蔵した箱)がついている。<br /> |
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アコーディオン(狭義)は左右の筐体の形が違う。演奏者は通常、右手側の筐体はバンドやベルトなどで胴体(腹部や胸部)に固着させる。蛇腹の伸縮動作は左手側の筐体を動かして行う(これに対して[[コンサーティーナ]]や[[バンドネオン]]は、左右の筐体の形はほぼ同じで、また筐体は演奏者の胴体に固着させない。[[蛇腹楽器#バンドの有無|蛇腹楽器のバンドの説明]]を参照)。< |
アコーディオン(狭義)は左右の筐体の形が違う。演奏者は通常、右手側の筐体はバンドやベルトなどで胴体(腹部や胸部)に固着させる。蛇腹の伸縮動作は左手側の筐体を動かして行う(これに対して[[コンサーティーナ]]や[[バンドネオン]]は、左右の筐体の形はほぼ同じで、また筐体は演奏者の胴体に固着させない。[[蛇腹楽器#バンドの有無|蛇腹楽器のバンドの説明]]を参照)。<br /> |
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右手側の筐体は主に主旋律を担当する。[[ピアノ]]と同様の「ピアノ式鍵盤」(以下「鍵盤」)もしくは「[[押しボタン|ボタン]]式鍵盤」(以下「ボタン」)が並んでいる。< |
右手側の筐体は主に主旋律を担当する。[[ピアノ]]と同様の「ピアノ式鍵盤」(以下「鍵盤」)もしくは「[[押しボタン|ボタン]]式鍵盤」(以下「ボタン」)が並んでいる。<br /> |
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左手側の筐体はさまざまで、[[バス (声域)|ベース音]]や[[和音]]を奏でるのに特化したボタンが配置されているタイプが多いが、左手側も旋律をピアノのように奏でられるフリーベース・アコーディオンや、日本の[[教育楽器]]でよく見られる「合奏用アコーディオン」のように左手側はボタン鍵盤を省略したタイプもある。< |
左手側の筐体はさまざまで、[[バス (声域)|ベース音]]や[[和音]]を奏でるのに特化したボタンが配置されているタイプが多いが、左手側も旋律をピアノのように奏でられるフリーベース・アコーディオンや、日本の[[教育楽器]]でよく見られる「合奏用アコーディオン」のように左手側はボタン鍵盤を省略したタイプもある。<br /> |
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一般的な「独奏用アコーディオン」の場合、右手側が8~50鍵ほど、左手側が18~120個ほどのボタンがある。筐体の内部構造は、ボタンと空気弁を繋げるためにシャフトが張り巡らされ、大変複雑である。重量は2~15[[キログラム]]程度。 |
一般的な「独奏用アコーディオン」の場合、右手側が8~50鍵ほど、左手側が18~120個ほどのボタンがある。筐体の内部構造は、ボタンと空気弁を繋げるためにシャフトが張り巡らされ、大変複雑である。重量は2~15[[キログラム]]程度。 |
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=== 音が鳴るしくみ === |
=== 音が鳴るしくみ === |
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両手で左右の筐体を保持する。それぞれの手で、筐体上の鍵盤やボタンを押すと、シャフトでつながった対応する空気弁が開くようになっている。蛇腹を伸縮することで送られた空気が開かれた弁を通り、[[リード (楽器)|リード]]を通り抜けるときにこれを振動させて音を鳴らす。リードはフリーリードと呼ばれるもので、薄い金属の板であり、共鳴管によらずリード自身の長さや厚さで音高が決定される。フリーリードの1枚のリードは一方からの通気でしか発音しないため、通常アコーディオンの場合は蛇腹を押した時にも引いた時にも発音するように一つのリード枠に表裏2枚のリードがセットされている。この発音原理は[[ハーモニウム]]や[[ハーモニカ]]によく似ている。< |
両手で左右の筐体を保持する。それぞれの手で、筐体上の鍵盤やボタンを押すと、シャフトでつながった対応する空気弁が開くようになっている。蛇腹を伸縮することで送られた空気が開かれた弁を通り、[[リード (楽器)|リード]]を通り抜けるときにこれを振動させて音を鳴らす。リードはフリーリードと呼ばれるもので、薄い金属の板であり、共鳴管によらずリード自身の長さや厚さで音高が決定される。フリーリードの1枚のリードは一方からの通気でしか発音しないため、通常アコーディオンの場合は蛇腹を押した時にも引いた時にも発音するように一つのリード枠に表裏2枚のリードがセットされている。この発音原理は[[ハーモニウム]]や[[ハーモニカ]]によく似ている。<br /> |
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押し引きで違うリードが発音するため、押し引きで同音の出る[[クロマティック]]タイプのアコーディオンと、押し引きで違う音の出る[[ダイアトニック]]タイプのアコーディオンがある。 |
押し引きで違うリードが発音するため、押し引きで同音の出る[[クロマティック]]タイプのアコーディオンと、押し引きで違う音の出る[[ダイアトニック]]タイプのアコーディオンがある。 |
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=== 世界への広がり === |
=== 世界への広がり === |
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[[File:The German Withdrawal To the Hindenburg Line, March-april 1917 Q4952.jpg|thumb|200px|第一次世界大戦の戦場でアコーディオンの立奏(中央)に聴き入る兵士たち。簡便で部品数も比較的少ない[[ダイアトニック]]アコーディオンは壊れにくく、小型軽量なのに音量は相当大きく、旅人や兵士などにも重宝された。1917年撮影]] |
[[File:The German Withdrawal To the Hindenburg Line, March-april 1917 Q4952.jpg|thumb|200px|第一次世界大戦の戦場でアコーディオンの立奏(中央)に聴き入る兵士たち。簡便で部品数も比較的少ない[[ダイアトニック]]アコーディオンは壊れにくく、小型軽量なのに音量は相当大きく、旅人や兵士などにも重宝された。1917年撮影]] |
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アコーディオンは一種の器械であり、デミアン以降も多くの楽器製作者が改良を重ね、自分が開発した新しいタイプのアコーディオンに関する技術を次々に特許登録した。19世紀のヨーロッパでは様々な物品や資料を集めて展示する[[博覧会]]がよく開催されたが、アコーディオンやコンサーティーナなど当時の技術を盛り込んだ蛇腹楽器も、国際的な博覧会に出品された。特許制度による知的財産保護と、博覧会の情報公開も追い風となり、アコーディオンの製作技術はヨーロッパ各地に広まった。< |
アコーディオンは一種の器械であり、デミアン以降も多くの楽器製作者が改良を重ね、自分が開発した新しいタイプのアコーディオンに関する技術を次々に特許登録した。19世紀のヨーロッパでは様々な物品や資料を集めて展示する[[博覧会]]がよく開催されたが、アコーディオンやコンサーティーナなど当時の技術を盛り込んだ蛇腹楽器も、国際的な博覧会に出品された。特許制度による知的財産保護と、博覧会の情報公開も追い風となり、アコーディオンの製作技術はヨーロッパ各地に広まった。<br /> |
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また、アコーディオンという楽器の設計思想も、この楽器の電波を後押しした。発明者のシリル・デミアンの特許申請書にもあるとおり、彼は、音楽の知識をもたない素人でも簡単に弾ける簡便な楽器としてアコーディオンを発明した<ref>シリル・デミアンが1929年に提出したアコーディオンの特許登録書類の第6項に「この楽器は'''旅人'''や、'''郊外へ遊びに行く個人の男女'''、もしくはそれらのグループの間で歓迎されるであろう。なぜならば、他人の助けを借りずして、'''手軽に演奏'''ができるからである。」とある(渡辺芳也『アコーディオンの本』p.75 ISBN 4-393-93422-9)。</ref>。デミアンが意図したとおり、プロの音楽家だけではなく、船乗りや行商人、軍人、移民など多くのアマチュアがアコーディオンを持参して各地を旅し、慰みに演奏し、この楽器を世界に広めた。< |
また、アコーディオンという楽器の設計思想も、この楽器の電波を後押しした。発明者のシリル・デミアンの特許申請書にもあるとおり、彼は、音楽の知識をもたない素人でも簡単に弾ける簡便な楽器としてアコーディオンを発明した<ref>シリル・デミアンが1929年に提出したアコーディオンの特許登録書類の第6項に「この楽器は'''旅人'''や、'''郊外へ遊びに行く個人の男女'''、もしくはそれらのグループの間で歓迎されるであろう。なぜならば、他人の助けを借りずして、'''手軽に演奏'''ができるからである。」とある(渡辺芳也『アコーディオンの本』p.75 ISBN 4-393-93422-9)。</ref>。デミアンが意図したとおり、プロの音楽家だけではなく、船乗りや行商人、軍人、移民など多くのアマチュアがアコーディオンを持参して各地を旅し、慰みに演奏し、この楽器を世界に広めた。<br /> |
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=== 変遷 === |
=== 変遷 === |
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[[File:Accordion-lirico.jpg|thumb|200px|20世紀前半のアール・デコ調のアコーディオン (Tombo No.100 Lirico)]] |
[[File:Accordion-lirico.jpg|thumb|200px|20世紀前半のアール・デコ調のアコーディオン (Tombo No.100 Lirico)]] |
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アコーディオンの外見は時代とともに変化しており、この楽器を見慣れた人なら、外形を見ただけでその楽器の製作年代をある程度推定することができる。< |
アコーディオンの外見は時代とともに変化しており、この楽器を見慣れた人なら、外形を見ただけでその楽器の製作年代をある程度推定することができる。<br /> |
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例えば、デミアンが製作した初期のアコーディオンは、左手でメロディーを弾き、右手で蛇腹の端をおさえて風を送り、現在のアコーディオンと左右の持ち方が逆転していた<ref>渡辺芳也『アコーディオンの本』p.75 ISBN 4-393-93422-9</ref>。また初期のアコーディオンは簡便な[[ダイアトニック|押し引き異音式]]だったが、演奏能力拡張型の[[クロマチック|押し引き同音式]]の機種も考案された。楽器の演奏能力向上の改良は今日に至るまで絶えず続いており、時代がくだるほど多種多様なタイプのアコーディオンが併存するようになった。< |
例えば、デミアンが製作した初期のアコーディオンは、左手でメロディーを弾き、右手で蛇腹の端をおさえて風を送り、現在のアコーディオンと左右の持ち方が逆転していた<ref>渡辺芳也『アコーディオンの本』p.75 ISBN 4-393-93422-9</ref>。また初期のアコーディオンは簡便な[[ダイアトニック|押し引き異音式]]だったが、演奏能力拡張型の[[クロマチック|押し引き同音式]]の機種も考案された。楽器の演奏能力向上の改良は今日に至るまで絶えず続いており、時代がくだるほど多種多様なタイプのアコーディオンが併存するようになった。<br /> |
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またアコーディオンの素材やデザインも、時代の流行がある。ピアノ式アコーディオンの場合、20世紀前半までは、鍵盤部の両脇が[[ライアー]]のようにふくらみ、ボディも角ばった[[アール・デコ]]調のデザインが好まれた。20世紀後半以降は、装飾を減らし、ボディの角に丸みを持たせたタイプが普及している。こうした外観の変化は、飛行機や自動車など機械のデザインの変遷と似ている面がある。今日でも、中古楽器市場や骨董市場では、古いデザインの[[ヴィンテージ]]・アコーディオンもかなり出回っている。< |
またアコーディオンの素材やデザインも、時代の流行がある。ピアノ式アコーディオンの場合、20世紀前半までは、鍵盤部の両脇が[[ライアー]]のようにふくらみ、ボディも角ばった[[アール・デコ]]調のデザインが好まれた。20世紀後半以降は、装飾を減らし、ボディの角に丸みを持たせたタイプが普及している。こうした外観の変化は、飛行機や自動車など機械のデザインの変遷と似ている面がある。今日でも、中古楽器市場や骨董市場では、古いデザインの[[ヴィンテージ]]・アコーディオンもかなり出回っている。<br /> |
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アコーディオンが使われる音楽シーンも変化した。< |
アコーディオンが使われる音楽シーンも変化した。<br /> |
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上述のとおり、初期のアコーディオンは、アマチュアも手軽に演奏を楽しめる安直な楽器だった。日本のアコーディオン普及協会会長をつとめた[[金子元孝]]も、[[レオ・フェレ]](Léo Ferré)の名曲のタイトル「貧乏人のピアノ」(Le piano du pauvre)がピアノではなくアコーディオンを指すこと、この歌のタイトルのとおり昔のアコーディオンは非常に安価で、誰でも手軽に弾ける易しい楽器であり、田舎も含めてどこの家庭にも小型のアコーディオンが普及していたことを指摘している<ref>金子元孝『アコーディオン愉し(増補改訂版)』「見失うな アコーディオンのルーツ」p.65</ref>。< |
上述のとおり、初期のアコーディオンは、アマチュアも手軽に演奏を楽しめる安直な楽器だった。日本のアコーディオン普及協会会長をつとめた[[金子元孝]]も、[[レオ・フェレ]](Léo Ferré)の名曲のタイトル「貧乏人のピアノ」(Le piano du pauvre)がピアノではなくアコーディオンを指すこと、この歌のタイトルのとおり昔のアコーディオンは非常に安価で、誰でも手軽に弾ける易しい楽器であり、田舎も含めてどこの家庭にも小型のアコーディオンが普及していたことを指摘している<ref>金子元孝『アコーディオン愉し(増補改訂版)』「見失うな アコーディオンのルーツ」p.65</ref>。<br /> |
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時代がくだると、高価で重くて習得が難しい演奏能力向上型の機種も次々と開発された。これらは素人にはオーバースペックだが、プロの音楽家がアコーディオンで芸術音楽を演奏することを可能とした。< |
時代がくだると、高価で重くて習得が難しい演奏能力向上型の機種も次々と開発された。これらは素人にはオーバースペックだが、プロの音楽家がアコーディオンで芸術音楽を演奏することを可能とした。<br /> |
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例えば、かつてオーケストラの中に入る鍵盤楽器といえば[[ピアノ]]、[[チェレスタ]]、[[オルガン]]、の他に[[ハーモニウム]]が使用されることがあったが、楽器の演奏能力と奏者の演奏技術が上がったことで、アコーディオンがハーモニウムよりも多用されるようになっている。[[武満徹]]、[[ベアート・フラー]]、[[ソフィア・グバイドゥーリナ|グバイドゥーリナ]]はオーケストラ曲でアコーディオンまたはバヤンを用い、高い音響効果をあげている。 |
例えば、かつてオーケストラの中に入る鍵盤楽器といえば[[ピアノ]]、[[チェレスタ]]、[[オルガン]]、の他に[[ハーモニウム]]が使用されることがあったが、楽器の演奏能力と奏者の演奏技術が上がったことで、アコーディオンがハーモニウムよりも多用されるようになっている。[[武満徹]]、[[ベアート・フラー]]、[[ソフィア・グバイドゥーリナ|グバイドゥーリナ]]はオーケストラ曲でアコーディオンまたはバヤンを用い、高い音響効果をあげている。 |
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=== 日本での歴史 === |
=== 日本での歴史 === |
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[[File:Kimono women play the harmonium,organetta, and accordion.jpg|thumb|right|200px|明治時代のアコーディオン(手風琴)の独習用教則本。右端の和服の女性はダイアトニック式アコーディオンを、中央と左の女性はそれぞれ[[紙腔琴]]とオルガンを合奏している。]] |
[[File:Kimono women play the harmonium,organetta, and accordion.jpg|thumb|right|200px|明治時代のアコーディオン(手風琴)の独習用教則本。右端の和服の女性はダイアトニック式アコーディオンを、中央と左の女性はそれぞれ[[紙腔琴]]とオルガンを合奏している。]] |
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日本へは江戸時代の末に伝来した。[[美保神社]]には、嘉永2年(1849)に奉納された「日本渡来最古のアコーディオン」(1841年頃、ウィーンで製作された小型の1列ボタンの[[ダイアトニック]]・アコーディオン)が現存している<ref>美保神社公式サイトの「[http://mihojinja.or.jp/yuisho/ ご祭神・ご由緒]」2018-9-27閲覧</ref>。五雲亭貞秀の幕末の錦絵にも、アコーディオン(現在と左右が逆の古いタイプ)を弾く米国女性が描かれている。[[西南戦争]]で最後まで西郷隆盛と行動を共にした[[村田新八]]がアコーディオンを好んで弾いたことは有名である。< |
日本へは江戸時代の末に伝来した。[[美保神社]]には、嘉永2年(1849)に奉納された「日本渡来最古のアコーディオン」(1841年頃、ウィーンで製作された小型の1列ボタンの[[ダイアトニック]]・アコーディオン)が現存している<ref>美保神社公式サイトの「[http://mihojinja.or.jp/yuisho/ ご祭神・ご由緒]」2018-9-27閲覧</ref>。五雲亭貞秀の幕末の錦絵にも、アコーディオン(現在と左右が逆の古いタイプ)を弾く米国女性が描かれている。[[西南戦争]]で最後まで西郷隆盛と行動を共にした[[村田新八]]がアコーディオンを好んで弾いたことは有名である。<br /> |
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その後、日本ではアコーディオンの流行期と衰退期が交互に繰り返した。金子元孝によると、明治30年代の関西での「手風琴」大流行、昭和10年代から20年代、1960年代(昭和35年から昭和44年)がアコーディオンの「わが国における三つの黄金時代」であった<ref>金子元孝『アコーディオン愉し(増補改訂版)』p.17</ref>。< |
その後、日本ではアコーディオンの流行期と衰退期が交互に繰り返した。金子元孝によると、明治30年代の関西での「手風琴」大流行、昭和10年代から20年代、1960年代(昭和35年から昭和44年)がアコーディオンの「わが国における三つの黄金時代」であった<ref>金子元孝『アコーディオン愉し(増補改訂版)』p.17</ref>。<br /> |
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2018年現在、かつての黄金時代とは比ぶべくもないものの、アコーディオンは今も一定の人気を保っている。JAPC(日本アコーディオン振興協議会)やJAA(日本アコーディオン協会)、AAA(全関西アコーディオン協会)、関東アコーディオン演奏交流会、CAC(中部アコーディオンクラブ)をはじめ数多くの関係団体が存在し、アコーディオンの普及と振興を図っている。 |
2018年現在、かつての黄金時代とは比ぶべくもないものの、アコーディオンは今も一定の人気を保っている。JAPC(日本アコーディオン振興協議会)やJAA(日本アコーディオン協会)、AAA(全関西アコーディオン協会)、関東アコーディオン演奏交流会、CAC(中部アコーディオンクラブ)をはじめ数多くの関係団体が存在し、アコーディオンの普及と振興を図っている。 |
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==== 教育楽器 ==== |
==== 教育楽器 ==== |
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[[日本]]では、昭和33年(1958)の第2次「学習指導要領」改訂ののち、[[小学校]]など一般的な[[音楽教育]]の現場でも[[教育楽器]]としてアコーディオンが採用され、馴染みは深い。< |
[[日本]]では、昭和33年(1958)の第2次「学習指導要領」改訂ののち、[[小学校]]など一般的な[[音楽教育]]の現場でも[[教育楽器]]としてアコーディオンが採用され、馴染みは深い。<br /> |
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日本の小学校などで用いられる「合奏用アコーディオン」は、左手のボタンを省略したピアノ式アコーディオンで、機種の音域ごとにアルト、ソプラノ、テナー、バスと分担化されており、器楽合奏や鼓笛パレードで組み合わせて用いられる場合が多い。< |
日本の小学校などで用いられる「合奏用アコーディオン」は、左手のボタンを省略したピアノ式アコーディオンで、機種の音域ごとにアルト、ソプラノ、テナー、バスと分担化されており、器楽合奏や鼓笛パレードで組み合わせて用いられる場合が多い。<br /> |
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== ギャラリー == |
== ギャラリー == |
2018年9月29日 (土) 00:08時点における版
アコーディオン | ||||||||||
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別称:手風琴 | ||||||||||
各言語での名称 | ||||||||||
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アコーディオン | ||||||||||
分類 | ||||||||||
音域 | ||||||||||
F3〜A6程度※機種によって異なる。 | ||||||||||
関連項目 | ||||||||||
アコーディオン (英: Accordion)は、蛇腹のふいごと鍵盤の操作によって演奏する可搬式のフリーリードによる気鳴楽器である。コンサーティーナやバンドネオンは近縁の楽器であり、広義にはアコーディオンに含められることがある。これらはあわせて蛇腹楽器と総称される。
アコーディオンの構造
基本形状
蛇腹楽器(アコーディオン族)は、伸縮自在の蛇腹の左右にそれぞれ筐体(きょうたい。器械を内蔵した箱)がついている。
アコーディオン(狭義)は左右の筐体の形が違う。演奏者は通常、右手側の筐体はバンドやベルトなどで胴体(腹部や胸部)に固着させる。蛇腹の伸縮動作は左手側の筐体を動かして行う(これに対してコンサーティーナやバンドネオンは、左右の筐体の形はほぼ同じで、また筐体は演奏者の胴体に固着させない。蛇腹楽器のバンドの説明を参照)。
右手側の筐体は主に主旋律を担当する。ピアノと同様の「ピアノ式鍵盤」(以下「鍵盤」)もしくは「ボタン式鍵盤」(以下「ボタン」)が並んでいる。
左手側の筐体はさまざまで、ベース音や和音を奏でるのに特化したボタンが配置されているタイプが多いが、左手側も旋律をピアノのように奏でられるフリーベース・アコーディオンや、日本の教育楽器でよく見られる「合奏用アコーディオン」のように左手側はボタン鍵盤を省略したタイプもある。
一般的な「独奏用アコーディオン」の場合、右手側が8~50鍵ほど、左手側が18~120個ほどのボタンがある。筐体の内部構造は、ボタンと空気弁を繋げるためにシャフトが張り巡らされ、大変複雑である。重量は2~15キログラム程度。
音が鳴るしくみ
両手で左右の筐体を保持する。それぞれの手で、筐体上の鍵盤やボタンを押すと、シャフトでつながった対応する空気弁が開くようになっている。蛇腹を伸縮することで送られた空気が開かれた弁を通り、リードを通り抜けるときにこれを振動させて音を鳴らす。リードはフリーリードと呼ばれるもので、薄い金属の板であり、共鳴管によらずリード自身の長さや厚さで音高が決定される。フリーリードの1枚のリードは一方からの通気でしか発音しないため、通常アコーディオンの場合は蛇腹を押した時にも引いた時にも発音するように一つのリード枠に表裏2枚のリードがセットされている。この発音原理はハーモニウムやハーモニカによく似ている。
押し引きで違うリードが発音するため、押し引きで同音の出るクロマティックタイプのアコーディオンと、押し引きで違う音の出るダイアトニックタイプのアコーディオンがある。
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20世紀初めのダイアトニック・アコーディオン
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その中身。フリーリードと、空気の逆流を防止する「サブタ皮」が並んでいる。
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ピアノ式鍵盤のアコーディオンの「音色(ねいろ)切り替えスイッチ」。中型以上のアコーディオンでは、鳴るリードの組み合わせを切り替えることで音色を変える機構を備えているものも多い。
特長
同時に複数の音を鳴らすのが容易であり、一台で主旋律と伴奏をこなすこともできる(合奏用アコーディオンを除く)。一人で持ち運べるサイズで取り扱いやすく、屋外での演奏にも適している。鍵盤ハーモニカのように息を必要としないので、弾き語りもできる。
ストラデラ・ベース・アコーディオンについて
ピアノ・アコーディオンの左手のボタン配置の方式は機種によって異なる。最も普及しているタイプは和音伴奏に便利な「ストラデラ・ベース・システム」(The Stradella Bass System)であり、これは「スタンダード・ベース」とも呼ばれる。これに対して、ピアノと同様に左手でも和音と旋律を自由に弾きこなせる「フリー・ベース・システム」を愛用する演奏者もいる。
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ストラデラ・ベース(6列、96ボタン)
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フリー・ベース(8列、クイント・システム=5度音階方式)
ストラデラ・ベース・システムの呼称は、楽器生産で有名なイタリアのストラデッラで開発されたことにちなむ。中型・大型のアコーディオンの場合、通常次の6列から構成される。2列目のボタンはファンダメンタル・ベース(the Fundamental Bass)と呼ばれ5度音階に従って並べられている。1列目のボタンはカウンター・ベース(the Counter Bass)と呼ばれ、2列目より長3度高い関係になっている。メジャーコードは3列目に配置され、4列目はマイナーコードで構成される。5列目はセブンスコードを格納し、最後の6列目はディミニッシュ・セブンスコードを持つ。
次はアスキーアートによるボタンの配置図である。
... C G D A E B F# C# G# D# A# F C ... ... Ab Eb Bb F C G D A E B F# C# G# ... ... AbM EbM BbM FM CM GM D AM EM BM F#M C#M G#M ... ... Abm Ebm Bbm Fm Cm Gm Dm Am Em Bm F#m C#m G#m ... ... Ab7 Eb7 Bb7 F7 C7 G7 D7 A7 E7 B7 F#7 C#7 G#7 ... ... Abdim7 Ebdim7 Bbdim7 Fdim7 Cdim7 Gdim7 Ddim7 Adim7 Edim7 Bdim7 F#dim7 C#dim7 G#dim7 ...
値段やサイズ、楽器の系統にも因るが、まったく無い列があったり、レイアウトが多少変更されていることがある。ほとんどのロシア式の配置は、ディミニッシュ・セブンス・コードの列はボタンひとつ分移動され、ディミニッシュ・セブンス・Cコードは図のディミニッシュ・セブンス・Fコードの位置にあり、人差し指が届きやすいようになっている。
ストラデラ・ベース式のアコーディオンは、ボタンの数と種類によって次のように分類される。
- 「12ベース」アコーディオン:FからDまでとかBbからGまでとかのファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコードを持つ。さらにここからマイナーコードを省略した8ベースもある。
- 「24ベース」はBbからAまでで、ファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコードを持つ。
- 「32ベース」はEbからEまでで、ファンダメンタル・ベース、メジャーコード、マイナーコード、セブンスコードを持つ。
- 「48ベース」はEbからEまでで、6つの列すべてを持つ。
- 「72ベース」はDbからF#までで、6つの列すべてを持つ。
- 「80ベース」はCbからG#までで、ディミニッシュ以外のすべてを持つ。
- 「96ベース」は80ベースと同様だが、6つすべての列を持つ。
- 「120ベース」はAbb(i.e. low G)からA#まで - 20行 - 6つすべての列を持つ。
アコーディオンの歴史
起源
世界最初のフリーリード楽器は中国の笙であるが、これは息で空気を送り込むようになっている。この笙のようなフリーリードによる発声の仕組みを、18世紀にヨーロッパの旅行者が中国から持ち帰ったものと思われる。
アコーディオンの発明者については、諸説がある。
- ブッシュマン説 - 1822年にドイツのフリードリッヒ・ブッシュマン (Friedrich Buschmann、1805年6月17日 - 1864年10月1日) が発明した簡素な蛇腹楽器「ハンド・エオリーネ」(Hand-Aeoline) を最初のアコーディオンと見なす説。
- デミアン説 - 1829年5月23日にオーストリアのシリル・デミアン(Cyrillus Damian)が特許を取得した「アコーディオン」を最初と見なす説。「アコーディオン」はデミアンによる命名で、「和音」を意味する語 accord に由来する。ディアトニック式で、全音階(メジャースケールの7音)を持ち、単一のキーのみで演奏された。
- ロシア人説 - ドイツやオーストリアで蛇腹楽器が発明される前に、すでにロシアで同様の楽器が考案されていたと主張する者もいるが、根拠は薄い。
「アコーディオン」という呼称を重視するならば、アコーディオンの発明者はデミアンである。1979年「アコーディオン150年祭」というイベントが日本でも行われた。
世界への広がり
アコーディオンは一種の器械であり、デミアン以降も多くの楽器製作者が改良を重ね、自分が開発した新しいタイプのアコーディオンに関する技術を次々に特許登録した。19世紀のヨーロッパでは様々な物品や資料を集めて展示する博覧会がよく開催されたが、アコーディオンやコンサーティーナなど当時の技術を盛り込んだ蛇腹楽器も、国際的な博覧会に出品された。特許制度による知的財産保護と、博覧会の情報公開も追い風となり、アコーディオンの製作技術はヨーロッパ各地に広まった。
また、アコーディオンという楽器の設計思想も、この楽器の電波を後押しした。発明者のシリル・デミアンの特許申請書にもあるとおり、彼は、音楽の知識をもたない素人でも簡単に弾ける簡便な楽器としてアコーディオンを発明した[1]。デミアンが意図したとおり、プロの音楽家だけではなく、船乗りや行商人、軍人、移民など多くのアマチュアがアコーディオンを持参して各地を旅し、慰みに演奏し、この楽器を世界に広めた。
変遷
アコーディオンの外見は時代とともに変化しており、この楽器を見慣れた人なら、外形を見ただけでその楽器の製作年代をある程度推定することができる。
例えば、デミアンが製作した初期のアコーディオンは、左手でメロディーを弾き、右手で蛇腹の端をおさえて風を送り、現在のアコーディオンと左右の持ち方が逆転していた[2]。また初期のアコーディオンは簡便な押し引き異音式だったが、演奏能力拡張型の押し引き同音式の機種も考案された。楽器の演奏能力向上の改良は今日に至るまで絶えず続いており、時代がくだるほど多種多様なタイプのアコーディオンが併存するようになった。
またアコーディオンの素材やデザインも、時代の流行がある。ピアノ式アコーディオンの場合、20世紀前半までは、鍵盤部の両脇がライアーのようにふくらみ、ボディも角ばったアール・デコ調のデザインが好まれた。20世紀後半以降は、装飾を減らし、ボディの角に丸みを持たせたタイプが普及している。こうした外観の変化は、飛行機や自動車など機械のデザインの変遷と似ている面がある。今日でも、中古楽器市場や骨董市場では、古いデザインのヴィンテージ・アコーディオンもかなり出回っている。
アコーディオンが使われる音楽シーンも変化した。
上述のとおり、初期のアコーディオンは、アマチュアも手軽に演奏を楽しめる安直な楽器だった。日本のアコーディオン普及協会会長をつとめた金子元孝も、レオ・フェレ(Léo Ferré)の名曲のタイトル「貧乏人のピアノ」(Le piano du pauvre)がピアノではなくアコーディオンを指すこと、この歌のタイトルのとおり昔のアコーディオンは非常に安価で、誰でも手軽に弾ける易しい楽器であり、田舎も含めてどこの家庭にも小型のアコーディオンが普及していたことを指摘している[3]。
時代がくだると、高価で重くて習得が難しい演奏能力向上型の機種も次々と開発された。これらは素人にはオーバースペックだが、プロの音楽家がアコーディオンで芸術音楽を演奏することを可能とした。
例えば、かつてオーケストラの中に入る鍵盤楽器といえばピアノ、チェレスタ、オルガン、の他にハーモニウムが使用されることがあったが、楽器の演奏能力と奏者の演奏技術が上がったことで、アコーディオンがハーモニウムよりも多用されるようになっている。武満徹、ベアート・フラー、グバイドゥーリナはオーケストラ曲でアコーディオンまたはバヤンを用い、高い音響効果をあげている。
日本での歴史
日本へは江戸時代の末に伝来した。美保神社には、嘉永2年(1849)に奉納された「日本渡来最古のアコーディオン」(1841年頃、ウィーンで製作された小型の1列ボタンのダイアトニック・アコーディオン)が現存している[4]。五雲亭貞秀の幕末の錦絵にも、アコーディオン(現在と左右が逆の古いタイプ)を弾く米国女性が描かれている。西南戦争で最後まで西郷隆盛と行動を共にした村田新八がアコーディオンを好んで弾いたことは有名である。
その後、日本ではアコーディオンの流行期と衰退期が交互に繰り返した。金子元孝によると、明治30年代の関西での「手風琴」大流行、昭和10年代から20年代、1960年代(昭和35年から昭和44年)がアコーディオンの「わが国における三つの黄金時代」であった[5]。
2018年現在、かつての黄金時代とは比ぶべくもないものの、アコーディオンは今も一定の人気を保っている。JAPC(日本アコーディオン振興協議会)やJAA(日本アコーディオン協会)、AAA(全関西アコーディオン協会)、関東アコーディオン演奏交流会、CAC(中部アコーディオンクラブ)をはじめ数多くの関係団体が存在し、アコーディオンの普及と振興を図っている。
教育楽器
日本では、昭和33年(1958)の第2次「学習指導要領」改訂ののち、小学校など一般的な音楽教育の現場でも教育楽器としてアコーディオンが採用され、馴染みは深い。
日本の小学校などで用いられる「合奏用アコーディオン」は、左手のボタンを省略したピアノ式アコーディオンで、機種の音域ごとにアルト、ソプラノ、テナー、バスと分担化されており、器楽合奏や鼓笛パレードで組み合わせて用いられる場合が多い。
ギャラリー
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アコーディオンを弾く米国の婦人。五雲亭貞秀「生写異国人物 亜墨利加女官翫板遂之図」万延元年(1860)。
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明治時代の本の「手風琴(アツコルジヲン)」の図。各ボタンの「押」「引」それぞれの音階を工尺譜で書いてある。
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キャンプで、ギターといっしょに、アコーディオンを弾きながら歌う男の絵。1885年、米国。
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戦艦の上でボタン式アコーディオンを立奏する水兵。ゲルダ・タロー撮影、1937年。
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ピアノ式アコーディオンを立奏する女性。マンザナー強制収容所、1942年。
アコーディオンの種類
ピアノ・アコーディオン
ピアノ・アコーディオン(「ピアノ鍵盤アコーディオン」もしくは単に「鍵盤アコーディオン」と呼ばれることもある)は19世紀にヨーロッパで開発されたタイプで、日本では最も一般的なタイプのアコーディオンである。右手部はピアノの鍵盤と同形状の「手鍵盤」になっており、ピアノよりは鍵盤のサイズは小さめであることが多いが、ピアノ奏者でも演奏することができる。左手のベース・ボタンは和音伴奏のためのもので、ボタン配列は標準的な「ストラデラ・ベース」や、旋律も自由に弾ける「フリー・ベース」など複数ある。鍵盤数は楽器のサイズによってまちまちだが、プロ奏者が使う大型のアコーディオンでは41鍵120ベース(右手の手鍵盤は41個、左手の和音伴奏用のベースボタンは120個)が標準であり、中型や小型の機種では鍵盤数はこれより少なくなる。
ボタン・アコーディオン
ダイアトニック・アコーディオン
ダイアトニック・アコーディオンはもっとも初期に開発されたシンプルなアコーディオンである。ダイアトニック(diatonic)とは「全音階」を意味し、単一のキーのみが演奏でき、ピアノの黒鍵にあたる半音は出せない(半音を出すためのアクシデンタル・キーを追加したタイプもある)。蛇腹(じゃばら)を伸ばすときと縮めるときで違う音がでる「押引異音式」になっている。ピアノ・アコーディオンなどに比べると構造が単純で軽量である。右手は主旋律を演奏し、左手は2~3のベース音とトニックとデミナントのシンプルな和音を演奏する。ダイアトニックの項目も参照。
メロディオン
一列のボタン鍵盤をもち、全音階のみを弾くタイプを、特に「メロディオン」(melodeon)と呼ぶことがある。日本では、鍵盤ハーモニカの商品名「メロディオン」(melodion)と混同されることがある。
ケイジャン・アコーディオン
ケイジャン音楽の伴奏に特化したメロディオン。
スタイリッシュ・ハーモニカ
シュタイリシェ・ハーモニカ(Steirische Harmonika=シュタイアーマルク式ハーモニカ)とも。オーストリア、ドイツ、スイス、スロベニア、南チロルなどのアルプス地域を中心に民族音楽やポピュラーミュージックの主力楽器の一つとして現在でも多く使われている、アコーディオンに似た蛇腹楽器で、多くがダイアトニック式のボタンタイプである(一部には鍵盤型の物も存在する)が、メロディが3~5列、ベース、コードが11個前後と比較的多めである(鍵盤型のものは更に多い)。
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ケイジャン・アコーディオン
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ダイアトニック・アコーディオン、3列ボタンの演奏能力拡張型
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スタイリッシュ・ハーモニカ
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クロマティック・アコーディオン
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ロシアのバヤン
クロマティック・アコーディオン
全音階でしか演奏できないダイアトニック・アコーディオンを改良したもので、ピアノなどと同様に半音階の音も出すことができる。ダイアトニック・アコーディオンが押引異音であるのに対し、クロマティック・アコーディオンは押引同音になっている。1850年ごろにウイーンのフランツ・ワルターによって作られた。クロマティックの項も参照。ボタン式のキー配列にはイタリア式とベルギー式の2種類があり、日本のボタンアコーディオンの演奏者の中で、桑山哲也以外はほとんどがイタリア式である[6]。詳しくはクロマティック・アコーディオンを参照。
バヤン
ロシアあるいはウクライナ音楽に特化したクロマティック・アコーディオン。本来は独自の鍵盤配列を持った民族楽器の一つで、1907年にピョートル・ステリゴフによって開発された。後に、イタリア式クロマティック・アコーディオンを参照して、西洋伝統音楽に耐える構造に徹底的に作り変えられ、レジスターや列数が強化された。バヤンは右手のボタン配列が通常のアコーディオンと若干異なる。音域は同一でも、音色はリード形状のせいで微妙なレヴェルで異なる。AKKO社[7]は右の8フィートのリードを二種から三種に増やし、重さは16.5kgを越え音栓数は31に及ぶモデルを生産している。これだけの重さに耐えなおかつ余裕で使いこなすロシア人の体力がよく解る楽器の歴史が見える。現在も、発祥時のピリオドモデルと改良されたモダンモデルどちらも生産されているものの、ロシア語圏で一般に広く出回っているのはすでに改良されたモダンモデルである。ロシアとウクライナでは路上やコンサートホールで頻繁に見かけることができる。詳しくはバヤンを参照。
電子アコーディオン
2004年に日本の電子楽器メーカーであるローランドがVアコーディオンを発表。ピアノ式とボタン式があり、世界中のアコーディオン・サウンド、オーケストラ音色、ドラム&パーカッション音色、バーチャルトーン・ホイール・オルガン音色など多彩な音色を内蔵している。
広義のアコーディオン属の楽器
コンサーティーナやバンドネオン等のコンサーティーナ族の楽器は、狭義の「アコーディオン属」(アコーディオン族)には含めず、アコーディオンとは別の楽器と見なされる。例えば、バンドネオン奏者は自分の楽器を「アコーディオン」と呼ばれることを嫌う[8]。これは、「ヴァイオリン属」の楽器であるヴィオラやチェロの演奏者が、自分の楽器を「ヴァイオリン」と呼ばないのと同様である。しかし歴史をさかのぼれば、バンドネオンの発明者であるバンド自身が自分の楽器を当初は「アコーディオン」と呼んだように、コンサーティーナ属も広義のアコーディオン属に含める場合があるため、ここでも簡単に解説しておく。詳しくは蛇腹楽器を参照。
コンサーティーナ
イギリスの物理学者、チャールズ・ホイートストンが発明した蛇腹楽器。詳しくは「コンサーティーナ」を参照。
バンドネオン
ドイツのハインリヒ・バンドが発明した蛇腹楽器。狭義のコンサーティーナとは別種の楽器であるが、コンサーティーナ属に含まれる。詳しくはバンドネオンを参照。
メロフォン
メロフォンの外見はギターに似る。右手で蛇腹につながったハンドルを操作して空気を送り、左手で(ギターで言うところの)ネックに備えられたボタンを操作して音高を変えて演奏する。
楽器以外に付けられたアコーディオン
アコーディオンの蛇腹の様な構造が含まれる機械類や、蛇腹の動きを連想させる事象もアコーディオン云々と呼ばれる事がある。ただし、アコーディオンという言葉には蛇腹やベローズという意味は無い。
- アコーディオンカーテン
- アコーディオンドア
- アコーディオン戦争(朝鮮戦争の異称。戦線がアコーディオンの蛇腹のように南北を往復したことから)
世界の代表的なアコーディオン奏者
Category:各国のアコーディオン奏者も参照のこと。
- リシャール・ガリアーノ
- イタロ・サリッツァート
- フランク・マロッコ
- バックウィート・ザディコ
- クリフトン・シェニエ
- スティーブ・ジョーダン(エステバン・ジョーダン)
- アミディ・アルドワン
- ロッキン・ドゥプシー
- ロッキン・シドニー
- C・J・シェニエ
- ボー・ジョック
- ロージー・レデット
- クリス・アルドワン
- ジノ・デラフォース
- シャロン・シャノン
- クセーニャ・シドロワ
日本の代表的なアコーディオン奏者
Category:日本のアコーディオン奏者も参照のこと。
- 青柳常夫
- 安西はぢめ
- かとうかなこ
- 金子元孝
- 吉備英志
- 桑山哲也
- coba
- 高島雄次郎
- 小春
- 清水信治
- 角谷精三
- 坪川拓史
- 都丸智栄
- 原田忠
- 藤野由佳
- Miyack
- 三浦みゆき
- 三上繁
- 柳原陽一郎
- 横森良造
世界のアコーディオンメーカー
- Cavagnolo (キャバニョロ)
- VICTORIA(ヴィクトリア)
- Hohner (ホーナー)
- Mengascini(メンガシーニ)
- Ballone Burini (バロン・ブリーニ)
- EXCELSIOR (エキセルシァー)
- GUERRINI(ゲリーニ)
- Dallape (ダラッペ)
- BUGARI(ブガリ)
- Castelfidardo(カステルフィダルド)
- Weltmeister(ベルトマイスター)
- Paolo Soprani (パオロ・ソプラーニ)
日本のアコーディオンメーカー
脚注
- ^ シリル・デミアンが1929年に提出したアコーディオンの特許登録書類の第6項に「この楽器は旅人や、郊外へ遊びに行く個人の男女、もしくはそれらのグループの間で歓迎されるであろう。なぜならば、他人の助けを借りずして、手軽に演奏ができるからである。」とある(渡辺芳也『アコーディオンの本』p.75 ISBN 4-393-93422-9)。
- ^ 渡辺芳也『アコーディオンの本』p.75 ISBN 4-393-93422-9
- ^ 金子元孝『アコーディオン愉し(増補改訂版)』「見失うな アコーディオンのルーツ」p.65
- ^ 美保神社公式サイトの「ご祭神・ご由緒」2018-9-27閲覧
- ^ 金子元孝『アコーディオン愉し(増補改訂版)』p.17
- ^ 2015年10月22日、指原カイワイズ(フジテレビ)にて桑山談。
- ^ 外部リンク
- ^ 「でも、バンドネオン奏者に「アコーディオン奏者の○○さん」と声をかける事はタブーです。/ バンドネオンとアコーディオンは、親戚のような関係にあるものの/ 全く異なる楽器です。」(早川純「バンドネオンはアコーディオンではぬぁい!!」2017-2-24閲覧)
参考文献
- 渡辺芳也「アコーディオンの本」ISBN 4-393-93422-9