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== 生態 ==
== 生態 ==

2018年9月29日 (土) 00:07時点における版

タマゴタケ

Amanita hemibapha (Berk.&Br.) Sacc.

タマゴタケの成菌(福島県田村市・2018年8月)
分類
: 菌界 Fungus
: 担子菌門 Basidiomycota
: 真正担子菌綱 Homobasidiomycetes
: ハラタケ目 Agaricales
: テングタケ科 Amanitaceae
: テングタケ属 Amanita
亜属 : テングタケ亜属 Subgenus Amanita
: タマゴタケ節 Section Caesareae
: タマゴタケ A. caesareoides
学名
Amanita caesareoides Lyu. N. Vassilieva
和名
タマゴタケ

タマゴタケ卵茸Amanita caesareoides)は、ハラタケ目テングタケ科テングタケ属テングタケ亜属タマゴタケ節に分類されるキノコの一種。従来の学名はA. hemibapha (Berk.& Br.) Sacc.だったが、近年の遺伝子レベルでの研究により変更された[1]

形態

子実体は、初めは厚くて白色を呈する外被膜に完全に包み込まれ、白い楕円体状をなすが、後に頂部が裂開し、かさおよび柄が伸び始め、外被膜は深いコップ状のつぼとして柄の基部に残る。かさは釣鐘形から半球形を経てほぼ平らに開き、老成すれば浅い皿状に窪むことがあり、径4-15cm程度、湿時には粘性があり、深赤色ないし橙赤色を呈し、周縁部には明瞭な放射状の明瞭な条線を生じる。肉は薄くてもろく、淡黄色で傷つけても変色することなく、味・においともに温和である。ひだはやや密で柄に離生し、小ひだをまじえ、比較的幅広く、淡黄色を呈し、縁はいくぶん粉状をなす。柄は長さ6-18cm、径8-15mm程度、ほぼ上下同大、淡黄色〜淡橙黄色の地に帯褐赤色ないし帯赤橙色のだんだら模様をあらわし、中空で折れやすく、中ほどに大きなつばを備える(ただし、針葉樹林帯に生息するものの中にだんだら模様がほとんどない個体も見つかっており、別種の可能性がある)。つばは帯赤橙色を呈し、薄く柔らかい膜質で大きく垂れ下がり、上面には放射状に配列した微細な条溝を備えている。つぼは大きく深いコップ状を呈し、白色で厚い。

胞子紋は純白色を呈し、胞子は幅広い楕円形ないし類球形で無色・平滑、ヨウ素溶液によって灰色〜帯青灰色に呈色しない(非アミロイド性)。ひだの実質部の菌糸は淡い黄色の内容物を含み、ひんぱんにかすがい連結を有している。ひだの縁には、逆フラスコ形・太いこん棒形・円筒形などをなした無性細胞が多数存在する。かさの表皮層はややゼラチン化しつつ匍匐した、細い菌糸(淡橙色ないし淡赤色の内容物を含み、隔壁部にはしばしばかすがい連結を備える)で構成されている。つぼの組織は緊密に絡み合った無色の菌糸からなり、その構成細胞はしばしばソーセージ状あるいは卵状に膨れている。

外被膜に覆われた子実体
茨城県行方市・2017年8月
幼菌
神奈川県川崎市・2016年9月
老菌
八ヶ岳・2009年8月
成菌のヒダ
茨城県行方市・2017年8月


生態

夏から秋にかけて、広葉樹ブナ科カバノキ科)および針葉樹マツ科)の林内、あるいはこれらの混交林に孤生ないし点々と群生する。上記の樹木の細根の細胞間隙に菌糸を侵入させて外生菌根を形成し、一種の共生生活を営んでいると考えられる。南半球ではフタバガキ科の樹木に外生菌根を形成しているという。

分布

日本(ほぼ全土)・中国・セイロン・北アメリカなどから報告されており、インドおよびオセアニアにも分布するという[2]。 本種は旧ソビエト沿海州から新種記載された。

食・毒性

鮮美な色調を有することから、日本では有毒キノコのように誤解されがちだが、実は無毒であり優秀な食用キノコとして人気がある。 キノコ自体壊れやすいため、一般にはほとんど流通していない。茹でると煮汁に黄色い色素が出るため、色を楽しむには茹でずに焼いた方がいい。味は強いうま味があり、フライ炊き込みご飯オムレツなどによく合う。殻を破る前の幼菌は生食されることもある。

現在、信州大学で栽培に向けた研究が進められている。

放射性物質

福島第一原子力発電所事故以降の放射性物質検査で、宮城県群馬県山梨県から採取されたタマゴタケから規制値の100 Bq/kgに近い放射性セシウムが検出されている(2017年現在)[3]

類似種

セイヨウタマゴタケは、柄がより太く短くてだんだら模様をあらわさないものが多く、かさの周縁部の条溝はタマゴタケに比べて短い。また、胞子がタマゴタケのそれよりも細長い[4]。また、タマゴタケはつぼの内側が黄色を帯びている点でセイヨウタマゴタケと区別できる。キタマゴタケA. javanica)は、かさが帯橙黄色を呈し、胞子が僅かに小形である。チャタマゴタケA. similis)は、かさが橙黄色~黒色を呈し、頂部の色が濃い。またフチドリタマゴタケA. rubromarginata)はタマゴタケに非常によく似ているが、かさはやや褐色を帯びた橙黄色を呈し、つばも帯褐赤色であり、さらにひだが帯褐赤色の縁どりを有する点で異なっている[5]

なお、分子系統解析の結果からは、日本産のタマゴタケと Amanita jacksonii Pomerleau(北アメリカ産)およびセイヨウタマゴタケ(イタリア産)の間には、DNA塩基配列の一部に高い相似性があるとされ、これらを地理的亜種とみなす意見もある[6]

生長開始
生長開始
未成熟な子実体
未成熟な子実体
成熟した子実体
成熟した子実体
Amanita jacksonii Pomerlのさまざまな生長段階.
ベニテングタケ(タマゴタケによく似た毒キノコ)

タマゴタケに外観が似た有毒きのことしてベニテングタケがあり[7]、ことに激しい降雨の後などには、かさの表面に散在する白色のいぼ(外被膜の破片)が脱落することがあり、タマゴタケとの識別がいっそう困難になる。またタマゴタケモドキ (Amanita subjunquillea S. Imai)は、むしろキタマゴタケに類似しているが、ドクツルタケなどと同様の毒成分(環状ペプチド)を含有し、死亡例もいくつか報告されている。タマゴタケは全体的に鮮やかな色調であること、柄が黄色でイボがないため慣れればキノコ狩りの素人でも極めて容易に区別出来る。

関連項目

脚注

  1. ^ Endo N, Gisusi S, Fukuda M, Yamada A(2013)In vitro mycorrhization and acclimatization of Amanita caesareoides and its relatives on Pinus densiflora. Mycorrhiza 23: 303-315.
  2. ^ Vrinda, K. B., Pradeep, C. K., and S. S. Kumar, 2005. Occurrence of a lesser known edible Amanita in the western ghats of Kerala. Mushroom Research 14(1): 5–8.
  3. ^ タマゴタケの検査結果データ”. 2017年12月26日閲覧。
  4. ^ 今関六也・本郷次雄(編著)、1987. 原色日本新菌類図鑑(I). ISBN 4-586-30075-2
  5. ^ Takahashi, H. 2004. Two new species of Agaricales from southwestern islands of Japan. Mycoscience 45: 372-376.
  6. ^ Zhang, L., Yang, J., and Z. Yang, 2004. Molecular phylogeny of eastern Asian species of Amanita (Agaricales, Basidiomycota): taxonomic and biogeographic implications. Fungal Diversity 17: 219-238.
  7. ^ 大海淳、2006. いますぐ使えるきのこ採りナビ図鑑. 大泉書店. ISBN 978-4-278-04717-2

外部リンク