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「[[国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約]]」(ハーグ条約)に日本は2013年(平成25年)、批准を決定し、国会で加盟が承認された。[[ヨーロッパ]]諸国では批准している国家が多い。また[[アメリカ合衆国]]では特に、片方の親が独断で子供を連れ去ると「誘拐」の刑事罪に問われる。このことに関連して、[[世界]]で外国人と結婚した日本人が子供と共に日本へ帰国し、外国人の配偶者から「誘拐」で訴えられ、国際手配される事例が相次いでいる。ただし、[[国際刑事警察機構]]では、両国で犯罪として認められる行為のみ強制逮捕が行われるのと、アメリカ合衆国以外の[[国家]]で、親による子供の拉致を刑法で犯罪としている国家はほとんど存在しないので、国際刑事警察機構のデータベースには登録されるが、実際に[[国際手配]]されるわけではない。山下美加は著書『私が誘拐犯になるまで。』([[2010年]]、サンクチュアリパプリッシング)において、自身が[[誘拐]]犯として国際手配された体験を詳細に述べている。 |
「[[国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約]]」(ハーグ条約)に日本は2013年(平成25年)、批准を決定し、国会で加盟が承認された。[[ヨーロッパ]]諸国では批准している国家が多い。また[[アメリカ合衆国]]では特に、片方の親が独断で子供を連れ去ると「誘拐」の刑事罪に問われる。このことに関連して、[[世界]]で外国人と結婚した日本人が子供と共に日本へ帰国し、外国人の配偶者から「誘拐」で訴えられ、国際手配される事例が相次いでいる。ただし、[[国際刑事警察機構]]では、両国で犯罪として認められる行為のみ強制逮捕が行われるのと、アメリカ合衆国以外の[[国家]]で、親による子供の拉致を刑法で犯罪としている国家はほとんど存在しないので、国際刑事警察機構のデータベースには登録されるが、実際に[[国際手配]]されるわけではない。山下美加は著書『私が誘拐犯になるまで。』([[2010年]]、サンクチュアリパプリッシング)において、自身が[[誘拐]]犯として国際手配された体験を詳細に述べている。 |
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このため国内離婚・国際離婚に関わらず、離婚や別居の場合、親の一方が勝手に日本に連れ帰ると、もう一方はほとんどの場合 |
このため国内離婚・国際離婚に関わらず、離婚や別居の場合、親の一方が勝手に日本に連れ帰ると、もう一方はほとんどの場合、自分の子供と会えないという状態になる。面会交流調停、監護者指定審判、子の引渡し審判程度であるが、連れ去り親に優先権があり、その際には、複数の面会交流調停、再調停、無効確認請求事件(人事訴訟法)で争う他、法的手続きは残されていない。 |
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日本では夫婦の両方が親権を望む場合最初に子供を連れ去り別居すれば離婚調停でも優位に交渉ができる |
日本では夫婦の両方が親権を望む場合最初に子供を連れ去り別居すれば離婚調停でも優位に交渉ができる。監護者の決定要件の一つとして、「特別な理由のない限り、現実に子供を監護・養育している者を優先させる」とする「継続性の原則」が示され(東京高判昭和56.5.26)、踏襲されてきた。 |
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== 連れ去りが子供に与える影響 == |
== 連れ去りが子供に与える影響 == |
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子供は、片親を失うだけではない。片方の祖父母や親類を失い、玩具、ペット、親しい友人、先生、慣れ親しんだ遊び場、行きつけのお店などを失うのである。また、「日々の日課」や「安全の感覚」や「片親が所属する文化」も失う。最も会いたい片親に会わせてもらえないなど「同居親との信頼関係」も失う。子供は、連れ去りにより「安心の愛着」を維持することが困難になる。また、分離不安を持つことが多い。さらに、連れ去った親の[[不倫]]・不貞が絡んでいる場合は突然見ず知らずの他人の大人との同居生活を余儀なくされる事も多く、身体的・精神的虐待の引き金にもなりうる。 |
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子供は連れ去った同居親によって、一人の人間として尊重されるのではなく、交渉を有利にし、仕返し、恨みのような感覚で引き離しをするための一つの道具として扱われる。 |
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同居親は、逃走と隠匿により子供と非同居親との接触を妨げるだけでなく、たいていの場合、立場を利用して子供の精神をコントロールして、非同居親との関係を子供の精神から内的に消し去ったり、非同居親へのいわれのない憎悪や恨みや恐怖を植えつけようとする。こうして、連れ去りは子供の精神に悪影響を及ぼす(片親疎外•洗脳虐待/AC)<ref name="abuse1">{{PDFlink|[http://207.58.181.246/pdf_files/library/Huntington_1982.pdf Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse]}}</ref><ref name="abuse2">[http://www.prevent-abuse-now.com/unreport.htm Parental Child Abduction is Child Abuse ]</ref><ref name="abuse3">{{PDFlink|[http://fugitivedad.com/wp-content/uploads/2010/10/Patricia-Hoff-PDF.pdf Parental Kidnapping: Prevention and Remedies]}}(Hoff著、アメリカ弁護士協会、2000年)</ref><ref name="abuse4">[http://travel.state.gov/abduction/resources/resources_545.html 米国政府文書]</ref>。連れ去られたことによる精神的[[ダメージ]]は目には見えにくいが、たいていの場合、子供の心に、生涯消えない傷を残す。[[片親引き離し症候群|片親疎外]](PA)は[[児童虐待]]であり、同居親の[[モラル]]も問題である。<ref>{{PDFlink|[https://www.ncjrs.gov/pdffiles1/ojjdp/229933.pdf The Crime of Family Abduction]}}(米国法務省)</ref><ref name="abuse7">[http://ameblo.jp/lovelovesurfingg 「家族による拉致の罪」 訳:hiro]</ref> |
同居親は、逃走と隠匿により子供と非同居親との接触を妨げるだけでなく、たいていの場合、立場を利用して子供の精神をコントロールして、非同居親との関係を子供の精神から内的に消し去ったり、非同居親へのいわれのない憎悪や恨みや恐怖を植えつけようとする。こうして、連れ去りは子供の精神に悪影響を及ぼす(片親疎外•洗脳虐待/AC)<ref name="abuse1">{{PDFlink|[http://207.58.181.246/pdf_files/library/Huntington_1982.pdf Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse]}}</ref><ref name="abuse2">[http://www.prevent-abuse-now.com/unreport.htm Parental Child Abduction is Child Abuse ]</ref><ref name="abuse3">{{PDFlink|[http://fugitivedad.com/wp-content/uploads/2010/10/Patricia-Hoff-PDF.pdf Parental Kidnapping: Prevention and Remedies]}}(Hoff著、アメリカ弁護士協会、2000年)</ref><ref name="abuse4">[http://travel.state.gov/abduction/resources/resources_545.html 米国政府文書]</ref>。連れ去られたことによる精神的[[ダメージ]]は目には見えにくいが、たいていの場合、子供の心に、生涯消えない傷を残す。[[片親引き離し症候群|片親疎外]](PA)は[[児童虐待]]であり、同居親の[[モラル]]も問題である。<ref>{{PDFlink|[https://www.ncjrs.gov/pdffiles1/ojjdp/229933.pdf The Crime of Family Abduction]}}(米国法務省)</ref><ref name="abuse7">[http://ameblo.jp/lovelovesurfingg 「家族による拉致の罪」 訳:hiro]</ref> |
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連れ去った後で23%の親が、子供への[[身体的虐待]]をしていたという調査がある<ref>{{Cite book |author=Geoffrey L. Greif, Rebecca L. Hegar |title=When Parents Kidnap |publisher=Free Press |page={{要ページ番号|date=2017年6月}} |date=1992-11-09 |isbn=0029129753}}</ref>。 |
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子供を連れ去った後には子供への虐待が多く行われ、洗脳虐待(AC)もこれに含まれる。[[精神的虐待]]であるから、これもDVである。<ref name="Hawaii">[http://hawaii.gov/ag/mcch/main/publications/thekidiswithaparenthowbadcanitbe "The Kid is With A Parent, How Bad Can It Be?": The Crisis of Family Abduction] 「子供は、一人の親と一緒にいるではないか。子どもの福祉、利益に何が問題だと言うのか」:家族による誘拐という危機 (ハワイ州政府文書」</ref><ref name="abuse8">[http://ameblo.jp/lovelovesurfingg (アニーアレン著作) 訳:hiro]</ref> |
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連れ去った後で23%の親が、子供への[[身体的虐待]]をしていたという調査がある<ref>{{Cite book |author=Geoffrey L. Greif, Rebecca L. Hegar |title=When Parents Kidnap |publisher=Free Press |page={{要ページ番号|date=2017年6月}} |date=1992-11-09 |isbn=0029129753}}</ref>。連れ去った親にとって、子供が邪魔になることがある。また連れ去った親にできた新しいパートナーは、子供にとっては他人である。身体的虐待や[[性的虐待]]が行われることがある。動物では子殺しが起きる状況である。人間では子殺しが起きない反射として(虐待の末の子殺しはしばしば起こるが)、子供が自己の自由な意思を殺し、依って健康な心的発達が害されるのである。子の連れ去りにより、子供は誰の目も届かない状況に置かれる。連れ去られた子供の全てが、[[ストックホルム症候群]]のようになるとは限らない。 |
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== 連れ去りに対する刑事罰 == |
== 連れ去りに対する刑事罰 == |
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連れ去った親が、子供を他の親に会わせないのは、子供のことを考えるからではなく、怒りによる仕返しである場合が多い。「子供を連れ去り、子供と非監護親との接触を妨げ、子供の精神をコントロールして、子供の心から片親の存在を消し去ろうとする行為」は、最も悪質な児童虐待であると考えられている。<ref name="abuse1"/><ref name="abuse2"/><ref name="abuse3"/><ref name="abuse4"/>。これが処罰の対象となる理由である。 |
連れ去った親が、子供を他の親に会わせないのは、子供のことを考えるからではなく、怒りによる仕返しである場合が多い。「子供を連れ去り、子供と非監護親との接触を妨げ、子供の精神をコントロールして、子供の心から片親の存在を消し去ろうとする行為」は、最も悪質な児童虐待であると考えられている。<ref name="abuse1"/><ref name="abuse2"/><ref name="abuse3"/><ref name="abuse4"/>。これが処罰の対象となる理由である。 |
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日本では合法であるとの考え方は過った一般論であり、当然家庭裁判所の勧告、面会交流調停、審判と、謄本が出来上がっていくだけである。 |
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尚、面会交流調停は個人で2000円程度で申し立てることが可能で、特に回数制限がある訳ではない。 |
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片親疎外は明らかな児童虐待であり、家庭内暴力であるから、DVである。 |
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=== 米国における連れ去り有罪化の歴史 === |
=== 米国における連れ去り有罪化の歴史 === |
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法制度が州によって異なることに対処するために、1968年に「子どもの親権の扱いを統一する法律案(UCCJA)」が作成された。現在、ほとんどの州でUCCJAは成立している。連邦誘拐予防法(UKPA)は、1980年成立したが、UCCJAを国家全体で守るよう要求している。<ref>{{PDFlink|[https://www.ncjrs.gov/pdffiles1/ojjdp/189181.pdf The Uniform Child-Custody Jurisdiction and Enforcement Act]}}(米国法務省)</ref> |
法制度が州によって異なることに対処するために、1968年に「子どもの親権の扱いを統一する法律案(UCCJA)」が作成された。現在、ほとんどの州でUCCJAは成立している。連邦誘拐予防法(UKPA)は、1980年成立したが、UCCJAを国家全体で守るよう要求している。<ref>{{PDFlink|[https://www.ncjrs.gov/pdffiles1/ojjdp/189181.pdf The Uniform Child-Custody Jurisdiction and Enforcement Act]}}(米国法務省)</ref> |
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Huntington博士は次のように述べた。「我々は、長い間、親が子供をどのように扱っても、それは全く問題がないと考えていた。我々は、長い時間をかけて次第に、親として許される行為と、[[児童虐待]]や[[ネグレクト]]とを区別していった。子供に対する罪で親を告発することが可能なのかという議論を通じて、もし親が子供に対して犯罪を犯すのなら、児童虐待で告発することが可能である、いやしなければならないということを、我々は理解するに至ったのである。子供が持つすべての権利は、子供への非人間的な扱い、深刻な[[ネグレクト]]、身体的・性的虐待などの状況において評価されなければならない。'''<u>我々は、子供の連れ去りを、最も悪質な児童虐待であると評価しなければならない</u>'''」<ref name="New"/> |
Huntington博士は次のように述べた。「我々は、長い間、親が子供をどのように扱っても、それは全く問題がないと考えていた。我々は、長い時間をかけて次第に、親として許される行為と、[[児童虐待]]や[[ネグレクト]]とを区別していった。子供に対する罪で親を告発することが可能なのかという議論を通じて、もし親が子供に対して犯罪を犯すのなら、児童虐待で告発することが可能である、いやしなければならないということを、我々は理解するに至ったのである。子供が持つすべての権利は、子供への非人間的な扱い、深刻な[[ネグレクト]]、身体的・性的虐待などの状況において評価されなければならない。'''<u>我々は、子供の連れ去りを、最も悪質な児童虐待であると評価しなければならない</u>'''」<ref name="New"/> 。 |
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連れ去る親は、配偶者ないし元配偶者に対して、極めて強い敵意を持ち、相手を動揺させ、攻撃し、コントロールするために、子供を利用するのである。連れ去る親は、周囲の人を頼っている子供の信頼感を悪用して子供を支配する。これは、児童虐待の基本的な定義の一つそのものである。 |
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1974年に成立した「連邦、児童虐待の予防と治療の法律 (CAPTA)」は、子供への非人間的な扱いを、次のように定義している<ref>[http://www.acf.hhs.gov/programs/cb/laws_policies/cblaws/capta/ CAPTA] 米国政府文書</ref>。「子供の健康や福祉が障害されたり脅かされる環境の下で、子供の福祉に責任を負う人間が、18歳未満の子供に加える、身体的または精神的な傷害、性的虐待、ネグレクト、非人間的な扱い」。たいていの子供の連れ去りは、この定義にあてはまる<ref>[http://www.prevent-abuse-now.com/unreport.htm Parental Child Abduction is Child Abuse]</ref>。 |
1974年に成立した「連邦、児童虐待の予防と治療の法律 (CAPTA)」は、子供への非人間的な扱いを、次のように定義している<ref>[http://www.acf.hhs.gov/programs/cb/laws_policies/cblaws/capta/ CAPTA] 米国政府文書</ref>。「子供の健康や福祉が障害されたり脅かされる環境の下で、子供の福祉に責任を負う人間が、18歳未満の子供に加える、身体的または精神的な傷害、性的虐待、ネグレクト、非人間的な扱い」。たいていの子供の連れ去りは、この定義にあてはまる<ref>[http://www.prevent-abuse-now.com/unreport.htm Parental Child Abduction is Child Abuse]</ref>。 |
2018年4月15日 (日) 14:02時点における版
この記事は特に記述がない限り、日本国内の法令について解説しています。また最新の法令改正を反映していない場合があります。 |
親による子供の拉致(おやによるこどものらち)は、片方の親が子供を連れ去ること。「連れ去り」という表現に激しく反発する弁護士がいる[誰?]が、英語のtaking awayに対応する一般的な日本語である。別居、里帰り、家出と区別する必要は必ずしもなく、日本では子の面会忌避や面会拒否、引き離し,実子誘拐など様々な言葉で言い表わされるが、全て片親による拉致である。
債務不履行と判例で認められる場合もあるが、延々に片親の都合により子供の面会を拒否でき、別居親があきらめる場合が多い。離婚の前後を問わずいつでも起き、親が子供を自己の所有物とする瞬間である。また、法的、文化的には子供を盾にすると表現される場合あるが、ジュネーブ条約で禁止されたHuman Shield(人間の盾)では諸外国より誤解を受ける可能性があり、拉致(Abduction)が理解されやすい。
日本ではハーグ条約加入前においては、別居時に子どもを日本に連れて行くことは「拉致」とはされていなかった[1]。家庭裁判所は虐待の事実など養育上の不適格要素がない限り、親権者による拉致よりも現状維持の原則を優先する。家事事件は事前に調停を行うことが家事審判法18条によって定められているので、裁判を起こしたとしても拉致行為が遡って追及されることはない。従って、ハーグ条約の及ばない国内においては親権者による拉致行為はした者勝ちとなるのが実情であった。
概要
日本では刑法第224条の未成年者略取誘拐罪により犯罪とされる[† 1]。父親が強引に子供を連れ去った事件では略取にあたるとの最高裁判所の判決が出ている[2]。日本では最初に子供を養育現場から連れ去っても警察は誘拐として取り扱わないが、その後に連れ戻す(連れ返し)と誘拐として取り扱う。最初の連れ去りは問題なしという矛盾した態度で刑事司法が望むが、家庭裁判所がこれを極稀に違法と認定する場合もある。その判例の殆どが母親が被害者の場合である。
別居時に子の監護について話し合わないで子供を連れて別居して奪い合い、刑事事件、調停、審判、民事訴訟となるケースは増えている。
日本では面会交流は実際には間接強制としてしか強制されず、親権の侵害が刑事事件どころか民事としても裁判で完全に解決されることは稀である。但し、最高裁第二小法廷では、親による有形力を行使した子の連れ去りに関し、違法性の判断は微妙である。
「国際的な子の奪取の民事上の側面に関する条約」(ハーグ条約)に日本は2013年(平成25年)、批准を決定し、国会で加盟が承認された。ヨーロッパ諸国では批准している国家が多い。またアメリカ合衆国では特に、片方の親が独断で子供を連れ去ると「誘拐」の刑事罪に問われる。このことに関連して、世界で外国人と結婚した日本人が子供と共に日本へ帰国し、外国人の配偶者から「誘拐」で訴えられ、国際手配される事例が相次いでいる。ただし、国際刑事警察機構では、両国で犯罪として認められる行為のみ強制逮捕が行われるのと、アメリカ合衆国以外の国家で、親による子供の拉致を刑法で犯罪としている国家はほとんど存在しないので、国際刑事警察機構のデータベースには登録されるが、実際に国際手配されるわけではない。山下美加は著書『私が誘拐犯になるまで。』(2010年、サンクチュアリパプリッシング)において、自身が誘拐犯として国際手配された体験を詳細に述べている。
このため国内離婚・国際離婚に関わらず、離婚や別居の場合、親の一方が勝手に日本に連れ帰ると、もう一方はほとんどの場合、自分の子供と会えないという状態になる。面会交流調停、監護者指定審判、子の引渡し審判程度であるが、連れ去り親に優先権があり、その際には、複数の面会交流調停、再調停、無効確認請求事件(人事訴訟法)で争う他、法的手続きは残されていない。
日本では夫婦の両方が親権を望む場合最初に子供を連れ去り別居すれば離婚調停でも優位に交渉ができる。監護者の決定要件の一つとして、「特別な理由のない限り、現実に子供を監護・養育している者を優先させる」とする「継続性の原則」が示され(東京高判昭和56.5.26)、踏襲されてきた。
連れ去りが子供に与える影響
同居親は、逃走と隠匿により子供と非同居親との接触を妨げるだけでなく、たいていの場合、立場を利用して子供の精神をコントロールして、非同居親との関係を子供の精神から内的に消し去ったり、非同居親へのいわれのない憎悪や恨みや恐怖を植えつけようとする。こうして、連れ去りは子供の精神に悪影響を及ぼす(片親疎外•洗脳虐待/AC)[3][4][5][6]。連れ去られたことによる精神的ダメージは目には見えにくいが、たいていの場合、子供の心に、生涯消えない傷を残す。片親疎外(PA)は児童虐待であり、同居親のモラルも問題である。[7][8]
連れ去った後で23%の親が、子供への身体的虐待をしていたという調査がある[9]。
連れ去りに対する刑事罰
ハーグ条約では、国境を越えた連れ去りに対して、原則的に元の居住国に強制的に連れ戻す措置が取られる。南北アメリカ大陸諸国やヨーロッパ諸国では、親による子供の連れ去りを、felony(軽犯罪に当たらない犯罪)やserious climinal matter(重大な犯罪行為)であるとして、厳しい処罰の対象としている。ウイスコンシン州から子供を連れ去った日本人の母親のケースでは、25年の刑が求刑された[10]。このケースは現在では司法取引により刑の執行猶予の状態となっている。日本の在外大使館は、在外邦人に対して注意を呼びかけている[11][12][13][14][15][16][17]。
連れ去った親が、子供を他の親に会わせないのは、子供のことを考えるからではなく、怒りによる仕返しである場合が多い。「子供を連れ去り、子供と非監護親との接触を妨げ、子供の精神をコントロールして、子供の心から片親の存在を消し去ろうとする行為」は、最も悪質な児童虐待であると考えられている。[3][4][5][6]。これが処罰の対象となる理由である。
米国における連れ去り有罪化の歴史
1932年に制定された連邦誘拐法は、リンドバーク法と呼ばれたが、片方の親が、他方の親から子供を奪う行為は、誘拐とされていなかった[18]。
1970年代以前は、親による子供の誘拐は、多くの州で違法とされていなかった。その頃までは、親は、親権を持っていない州から子供を「合法的に」誘拐して、自分にとって望ましい親権を得ることができる別の州に移動することが可能であった[19]。
1968年以前には、別居や離婚に際して、子供を連れ去った親には、親権が与えられるチャンスが際立って大きくなった。[20]
法制度が州によって異なることに対処するために、1968年に「子どもの親権の扱いを統一する法律案(UCCJA)」が作成された。現在、ほとんどの州でUCCJAは成立している。連邦誘拐予防法(UKPA)は、1980年成立したが、UCCJAを国家全体で守るよう要求している。[21]
Huntington博士は次のように述べた。「我々は、長い間、親が子供をどのように扱っても、それは全く問題がないと考えていた。我々は、長い時間をかけて次第に、親として許される行為と、児童虐待やネグレクトとを区別していった。子供に対する罪で親を告発することが可能なのかという議論を通じて、もし親が子供に対して犯罪を犯すのなら、児童虐待で告発することが可能である、いやしなければならないということを、我々は理解するに至ったのである。子供が持つすべての権利は、子供への非人間的な扱い、深刻なネグレクト、身体的・性的虐待などの状況において評価されなければならない。我々は、子供の連れ去りを、最も悪質な児童虐待であると評価しなければならない」[19] 。
1974年に成立した「連邦、児童虐待の予防と治療の法律 (CAPTA)」は、子供への非人間的な扱いを、次のように定義している[22]。「子供の健康や福祉が障害されたり脅かされる環境の下で、子供の福祉に責任を負う人間が、18歳未満の子供に加える、身体的または精神的な傷害、性的虐待、ネグレクト、非人間的な扱い」。たいていの子供の連れ去りは、この定義にあてはまる[23]。
古代の連れ去り
- ギリシア神話において、父アポロは、母クレウサが見捨てた子イオンを、ヘルメスに頼んで連れ去ってもらい、巫女に神殿で育ててもらった[24]。
- ギリシア神話において、父アポロは、別の母キュレーネーが生きているのに、子アリスタイオスを地球に連れ去った[25]。
- ソロモン王は、子供を奪い合う2人の女に対して大岡裁きを行った[26][27]。
- モーツァルトの『魔笛』は、子供を誘拐された母の悲しみを描写している。魔笛とは、子供を取り返しに行く青年が携える道具である[28]。
- シェイクスピアの『リチャード三世』では、主人公リチャードが母后のもとから幼い新王とその弟を誘拐し、ロンドン塔に監禁した[29]。
脚注
注釈
- ^ 刑法第224条 未成年者を略取し、又は誘拐した者は、三月以上七年以下の懲役に処する。
出典
- ^ International_child_abduction_in_Japan
- ^ 最高裁判所第二小法廷平成16(あ)2199号「未成年者略取被告事件」平成17年12月06日決定、刑集 第59巻10号1901頁
- ^ a b Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse (PDF)
- ^ a b Parental Child Abduction is Child Abuse
- ^ a b Parental Kidnapping: Prevention and Remedies (PDF) (Hoff著、アメリカ弁護士協会、2000年)
- ^ a b 米国政府文書
- ^ The Crime of Family Abduction (PDF) (米国法務省)
- ^ 「家族による拉致の罪」 訳:hiro
- ^ Geoffrey L. Greif, Rebecca L. Hegar (1992-11-09). When Parents Kidnap. Free Press. p. [要ページ番号]. ISBN 0029129753
- ^ Stars and Stripes
- ^ 在アメリカ日本大使館
- ^ 在カナダ日本大使館
- ^ 在英日本大使館
- ^ 在ドイツ日本大使館
- ^ 在フランス日本大使館
- ^ 在ブラジル日本大使館
- ^ 在アルゼンチン日本大使館
- ^ Laws Covering Noncustodial Kidnapping eHow
- ^ a b Parental Kidnapping: A New Form of Child Abuse(親による誘拐:児童虐待の新しい形態) (PDF) (Dorothy S. Huntington、1982)
- ^ Parental Child Snatching: An Overview 米国政府文書
- ^ The Uniform Child-Custody Jurisdiction and Enforcement Act (PDF) (米国法務省)
- ^ CAPTA 米国政府文書
- ^ Parental Child Abduction is Child Abuse
- ^ クレウサ
- ^ Child snatching: A new epidemic of an ancient malady 児童誘拐:古代からの病弊の新しい再流行 The Journal of Pediatrics 103:151,1983
- ^ 賢王ソロモンの裁き
- ^ Geoffrey L. Greif, Rebecca L. Hegar (1992-11-09). When Parents Kidnap. Free Press. p. [要ページ番号]. ISBN 0029129753
- ^ 魔笛
- ^ リチャード三世 第3幕の場面1