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「むつ (原子力船)」の版間の差分

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[[1963年]]に観測船として建造計画が決まり、[[1968年]]に着工して[[1969年]][[6月12日]]に進水した。[[1972年]]に核燃料が装荷され、[[1974年]]に出力上昇試験が太平洋上で開始された。[[1969年]]の進水時には記念切手が発行されるなど、期待は大きかった。
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しかし、[[1974年]][[9月1日]]の航行中に、試験開始早々の低出力で設計不良<ref>[http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000615.html 失敗知識データベース 失敗事例 &gt; 原子力船むつ放射線漏れ]</ref>により[[放射能汚染|放射線漏れ]]が発生した。漏れた量は極微量<ref>単位時間当たり放射量0.002 (MS/時)は一般的なブラウン管型テレビの前にいて浴びる量の2倍にすぎない[大塚徳勝2012:25]</ref>であったが
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メディアによってセンセーショナルに報道された<ref>大塚徳勝2012「福島の原発災害と今後の課題 (特集 復興検証 : 震災後1年の取り組みと今後の課題) 」『Int'lecowk : 国際経済労働研究』67(3):21-7</ref>。この放射線漏れで帰港を余儀なくされるが、風評被害を恐れる地元[[むつ市]]の市民は放射線漏れを起こした本船の帰港を拒否したため、洋上に漂泊せざるを得なかった。[[長崎県]][[佐世保市]]、むつ市大湊港での母港化反対運動により帰る場所を失ったまま、長い話し合いの末に新母港としてむつ市関根浜港が決まった。


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== 安全設計 ==
== 安全設計 ==
設計の際にウエスチングハウス社へ確認を取り、高速中性子が遮蔽体の隙間から漏れ出るストリーミング現象が起こると指摘されていたが、反映されなかった<ref>[http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000615.html
設計の際にウエスチングハウス社へ確認を取り、高速中性子が遮蔽体の隙間から漏れ出るストリーミング現象が起こると指摘されていたが、反映されなかった<ref>[http://www.shippai.org/fkd/cf/CA0000615.html 失敗知識データベース 失敗事例 &gt; 原子力船むつ放射線漏れ]</ref>。
失敗知識データベース 失敗事例 &gt; 原子力船むつ放射線漏れ]</ref>。


むつは建造当時の大型タンカーがむつの船腹に全速力で衝突しても、タンカーの船首が原子炉にまで到しないほどの強度設計がなされていた。また、万一むつが沈没した場合は深海の圧力で原子炉格納容器が圧壊することがないよう、海水の圧力で早期に格納容器に海水を導入するよう設計されていた。
むつは建造当時の大型タンカーがむつの船腹に全速力で衝突しても、タンカーの船首が原子炉にまで到しないほどの強度設計がなされていた。また、万一むつが沈没した場合は深海の圧力で原子炉格納容器が圧壊することがないよう、海水の圧力で早期に格納容器に海水を導入するよう設計されていた。

2017年11月29日 (水) 00:05時点における版

むつ
基本情報
船種 実験船
船籍 日本の旗 日本
所有者 日本原子力船開発事業団
建造所 石川島播磨重工業東京第2工場
経歴
起工 1968年11月27日[1]
進水 1969年6月12日[1]
その後 1993年3月 原子炉を撤去
1996年8月21日 みらいとして進水
要目
総トン数 8‚242 トン
全長 130.46 m
全幅 19.0 m
深さ 13.2 m
喫水 6.9 m
ボイラー 1基
主機関 加圧軽水冷却型原子炉 1基
蒸気タービン 1基
出力 36‚000 kW
10‚000馬力
最大速力 17.7ノット
乗組員 80名
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原子力船むつ(げんしりょくせんむつ)は、1968年11月27日に着工した、日本初にして、現在のところ最後の原子力船である。

1974年9月1日青森県沖の太平洋上で行われた初の原子力航行試験中の極微量の放射線もれ[2]が、自然界レベルだとの事実を無視した不安を不当に煽る報道がされたことで風評被害を受けた[3][4]。そのため、母港である陸奥大湊港への帰港を反対されたために、16年に亘って日本の港を彷徨って改修を受け、4度の実験航海後、新設されたむつ市関根浜港へ回航され、原子炉撤去以降、日本原子力研究所においての改良型舶用炉MRX[5]、深海探査艇用原子炉DRX[6]研究開発を除き、日本は原子力船の計画、建造や購入をしていない。

概要

軍艦を別にすれば、原子炉を動力源とする船を建造した国は少なく、旧ソ連原子力砕氷船レーニン」(1959年-1966年改造後1970年-1989年)、アメリカの貨客船「サバンナ」(運航期間1965年-1970年)、当時の西ドイツ鉱石運搬船「オットー・ハーン」(運航期間1968年-1979年)に続く世界でも4番目の成果である。本船の名称は一般公募から選ばれ、進水時の母港である陸奥大湊港のある青森県むつ市にちなむ。

1963年に観測船として建造計画が決まり、1968年に着工して1969年6月12日に進水した。1972年に核燃料が装荷され、1974年に出力上昇試験が太平洋上で開始された。1969年の進水時には記念切手が発行されるなど、期待は大きかった。

しかし、1974年9月1日の航行中に、試験開始早々の低出力で設計不良[7]により放射線漏れが発生した。漏れた量は極微量[8]であったが メディアによってセンセーショナルに報道された[9]。この放射線漏れで帰港を余儀なくされるが、風評被害を恐れる地元むつ市の市民は放射線漏れを起こした本船の帰港を拒否したため、洋上に漂泊せざるを得なかった。長崎県佐世保市、むつ市大湊港での母港化反対運動により帰る場所を失ったまま、長い話し合いの末に新母港としてむつ市関根浜港が決まった。

1990年に、むつ市の関根浜港岸壁で低出力運転の試験を行い、その後4度の航海中に出力上昇試験と公試を行なった結果、1991年2月に船舶と原子炉について合格証を得た。その後、1992年1月にすべての航海を終了し、1993年に原子炉が撤去された。

現在は、ディーゼル機関に積み替えられた船体が独立行政法人海洋研究開発機構(JAMSTEC)の「みらい」として運航されている。

なお、原子力船むつの操舵室・制御室、撤去された原子炉室がむつ科学技術館(むつ市)で展示されている。


安全設計

設計の際にウエスチングハウス社へ確認を取り、高速中性子が遮蔽体の隙間から漏れ出るストリーミング現象が起こると指摘されていたが、反映されなかった[10]

むつは建造当時の大型タンカーがむつの船腹に全速力で衝突しても、タンカーの船首が原子炉にまで到しないほどの強度設計がなされていた。また、万一むつが沈没した場合は深海の圧力で原子炉格納容器が圧壊することがないよう、海水の圧力で早期に格納容器に海水を導入するよう設計されていた。

多くの商用原子炉では、安全のため緊急炉心停止の場合は、制御棒を駆動装置から切り離して炉心に落とし込む方法がとられているが、むつの原子炉ではバネの力で炉心へ押さえ込みたとえ転覆しても制御棒が外部に抜けない設計がなされていた。

主要目

略歴

脚注

  1. ^ a b 下川p32
  2. ^ 単位時間当たり放射量0.002 (MS/時)は一般的なブラウン管型テレビの前にいて浴びる量の2倍にすぎない[大塚徳勝2012:25]
  3. ^ 大塚徳勝2012「福島の原発災害と今後の課題 (特集 復興検証 : 震災後1年の取り組みと今後の課題) 」『Int'lecowk : 国際経済労働研究』67(3):21-7
  4. ^ 倉沢p195
  5. ^ 原子力百科事典ATOMICA 「我が国の原子力船設計研究」図2
  6. ^ 原子力百科事典ATOMICA 「我が国の原子力船設計研究」図3
  7. ^ 失敗知識データベース 失敗事例 > 原子力船むつ放射線漏れ
  8. ^ 単位時間当たり放射量0.002 (MS/時)は一般的なブラウン管型テレビの前にいて浴びる量の2倍にすぎない[大塚徳勝2012:25]
  9. ^ 大塚徳勝2012「福島の原発災害と今後の課題 (特集 復興検証 : 震災後1年の取り組みと今後の課題) 」『Int'lecowk : 国際経済労働研究』67(3):21-7
  10. ^ 失敗知識データベース 失敗事例 > 原子力船むつ放射線漏れ

参考文献

原子力船「むつ」を取り扱った作品

  • 西村京太郎『原子力船むつ消失事件』角川書店 1981年(1984年 角川文庫)
    • 修理を終え佐世保から下北半島に向っていた「むつ」が日本海の新潟県沖で失踪。やがて佐渡島沖に沈没している船体が発見され、海域が放射能汚染されていたことが判明する。この背後にある国際的陰謀をめぐるミステリー小説。
  • ブラック・ジャック
    • 第46話「死に神の化身」に原子力船ムツゴローが登場し、患者は原子炉の欠陥により被曝した船員。しかし、単行本での収録の際にタイトルは「恐怖菌」に改題された上、船も戦略物資輸送船「あしゅら丸」に変更されている上、患者も輸送していた細菌兵器で感染した船員に変更されている。
  • 沈黙の艦隊
    • 設定では本船の事故が原因で国産原子力潜水艦建造計画(5号計画)が中止になっているが、裏で日米共謀により極秘に「シーバット」が建造された事になっている。

関連項目

外部リンク