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「コイヘルペスウイルス」の版間の差分

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2004年に[[東京海洋大学]]で行われた国際シンポジウム『KHV infection: Present Status and Future Prospects for Prevention;コイヘルペスウイルス感染症の現状と防疫対策』では、1996年に[[イギリス]]で発生した大量死の際に死んだコイからこのウイルスが検出されていることが報告されており<ref name="js632" />、今のところこれが最も古い確認例である。
2004年に[[東京海洋大学]]で行われた国際シンポジウム『KHV infection: Present Status and Future Prospects for Prevention;コイヘルペスウイルス感染症の現状と防疫対策』では、1996年に[[イギリス]]で発生した大量死の際に死んだコイからこのウイルスが検出されていることが報告されており<ref name="js632" />、今のところこれが最も古い確認例である。


しかし、このことをもってイギリスが発生源であるかどうかは分からない。イギリスの魚養殖業者であるAdrian Barnsは、2004年1月に行われた国際錦鯉サミットにおいて、1996年のKHVによるコイの大量死は、池の中にイスラエル原産の鯉を入れた後でいつも発生したことを発言している<ref>[http://web.archive.org/web/20040216061912/http://www.echigo.ne.jp/~koi/koi-ks32.htm Adrian Barns,2004,「イギリスにおけるKHV被害の実態と対応」『国際錦鯉サミット・セミナー』(訳 大面 富士雄)](2004年2月16日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。一方、ヘブライ大学のHerve Bercovierは、必ずしもイスラエルがKHVの初発地あるいは感染源ではないことを主張している<ref>{{Cite press release |title=KHV infection: Present Status and Future Prospects for Prevention;コイヘルペスウイルス感染症の現状と防疫対策 シンポジウム概要 |url=http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr16/161227/khv2.htm|publisher=独立行政法人[[水産総合研究センター]] |date=2004-12-27}}</ref>。
しかし、このことをもってイギリスが発生源であるかどうかは分からない。イギリスの魚養殖業者であるAdrian Barnsは、2004年1月に行われた国際錦鯉サミットにおいて、1996年のKHVによるコイの大量死は、池の中にイスラエル原産の鯉を入れた後でいつも発生したことを発言している<ref>[http://web.archive.org/web/20040216061912/http://www.echigo.ne.jp/~koi/koi-ks32.htm Adrian Barns,2004,「イギリスにおけるKHV被害の実態と対応」『国際錦鯉サミット・セミナー』(訳 大面 富士雄)](2004年2月16日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。一方、ヘブライ大学のHerve Bercovierは、必ずしもイスラエルがKHVの初発地あるいは感染源ではないことを主張している<ref>{{Cite press release |title=KHV infection: Present Status and Future Prospects for Prevention;コイヘルペスウイルス感染症の現状と防疫対策 シンポジウム概要 |url=http://www.fra.affrc.go.jp/pressrelease/pr16/161227/khv2.htm|publisher=独立行政法人[[水産総合研究センター]] |date=2004-12-27}}</ref>。


その後、[[1997年]]に[[ドイツ]]で確認され<ref>{{Cite journal |author=Matsui K|coauthors=Honjo M, Kohmatsu Y, Uchii K, Yonekura R, Kawabata Z |year=2008 |title=Detection and significance of koi herpesvirus (KHV) in freshwater environments. |journal=Freshwater Biol. |volume=53 |issue=6 |pages=1262-1272 |publisher= |doi=10.1111/j.1365-2427.2007.01874.x|issn=1365-2427 }}</ref>、1998年には、イスラエルやアメリカ合衆国、アジアでは[[2002年]]、コイ養殖が盛んな[[インドネシア]]や[[台湾]]での流行が確認されている<ref name="maff20031219" />。特にインドネシアでは、政府の対策にもかかわらず、流通ルートによって[[ジャワ島]]東部を発端として[[スマトラ島]]にも感染が拡大している<ref name="maff20031219" />。
その後、[[1997年]]に[[ドイツ]]で確認され<ref>{{Cite journal |author=Matsui K|coauthors=Honjo M, Kohmatsu Y, Uchii K, Yonekura R, Kawabata Z |year=2008 |title=Detection and significance of koi herpesvirus (KHV) in freshwater environments. |journal=Freshwater Biol. |volume=53 |issue=6 |pages=1262-1272 |publisher= |doi=10.1111/j.1365-2427.2007.01874.x|issn=1365-2427 }}</ref>、1998年には、イスラエルやアメリカ合衆国、アジアでは[[2002年]]、コイ養殖が盛んな[[インドネシア]]や[[台湾]]での流行が確認されている<ref name="maff20031219" />。特にインドネシアでは、政府の対策にもかかわらず、流通ルートによって[[ジャワ島]]東部を発端として[[スマトラ島]]にも感染が拡大している<ref name="maff20031219" />。
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== 日本における流行と対策 ==
== 日本における流行と対策 ==
=== 流行の初確認 ===
=== 流行の初確認 ===
[[日本]]においては2003年10月、[[茨城県]][[霞ヶ浦]]で発生した大量死が有名であるが、それ以前の[[2003年]]5月に[[岡山県]]の[[吉井川]]水系にてコイの大量死が発生しており、後に死んだコイからこのウイルスが検出されている<ref>[http://web.archive.org/web/20031204033454/http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20031110press_4.htm 農林水産省消費・安全局報道発表(2003年11月10日)](2003年12月4日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。
[[日本]]においては2003年10月、[[茨城県]][[霞ヶ浦]]で発生した大量死が有名であるが、それ以前の[[2003年]]5月に[[岡山県]]の[[吉井川]]水系にてコイの大量死が発生しており、後に死んだコイからこのウイルスが検出されている<ref>[http://web.archive.org/web/20031204033454/http://www.maff.go.jp/www/press/cont/20031110press_4.htm 農林水産省消費・安全局報道発表(2003年11月10日)](2003年12月4日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。


一方、日本では、少なくとも2002年10月にはニシキゴイ関係者の間ではウイルス流行の危険性が認知されていたものの<ref>{{Cite journal|和書 |author=湯浅啓 |date=2002-10 |title=魚病「コイヘルペスウイルス病について」 |url=http://www.kinsai.jp/b200210.html |journal=月刊錦鯉 |volume= |issue= |pages= |publisher=錦彩出版 }}</ref>、法制度として対策がとられるのは、[[持続的養殖生産確保法]]施行規則が改正されて伝染性疾病として指定される2003年6月まで待たねばならない<ref>平成一五年六月三〇日農林水産省令第六六号による。[http://web.archive.org/web/20030728094627/http://www.jfa.maff.go.jp/release/15.05.16.2.1.html 施行規則の改正部分](2003年7月28日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。しかし、5月の岡山県吉井川の事案からも分かるように、このとき既にウイルスは日本国内に入った後であった。
一方、日本では、少なくとも2002年10月にはニシキゴイ関係者の間ではウイルス流行の危険性が認知されていたものの<ref>{{Cite journal|和書 |author=湯浅啓 |date=2002-10 |title=魚病「コイヘルペスウイルス病について」 |url=http://www.kinsai.jp/b200210.html |journal=月刊錦鯉 |volume= |issue= |pages= |publisher=錦彩出版 }}</ref>、法制度として対策がとられるのは、[[持続的養殖生産確保法]]施行規則が改正されて伝染性疾病として指定される2003年6月まで待たねばならない<ref>平成一五年六月三〇日農林水産省令第六六号による。[http://web.archive.org/web/20030728094627/http://www.jfa.maff.go.jp/release/15.05.16.2.1.html 施行規則の改正部分](2003年7月28日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。しかし、5月の岡山県吉井川の事案からも分かるように、このとき既にウイルスは日本国内に入った後であった。


=== 霞ヶ浦での大流行 ===
=== 霞ヶ浦での大流行 ===
2003年10月、霞ヶ浦において養殖鯉の大量死が発生。茨城県内水面水産試験場での検査結果を受け11月2日に農林水産省はコイヘルペスウイルスが大量死の原因であると公表し<ref>{{Cite press release |title=コイヘルペスウイルス病を疑うコイの確認について |url=http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/koi/pdf/press_031102.pdf|format=PDF |publisher=農林水産省 |date=2003-11-02日}}</ref>、これにより日本国内へのコイヘルペスの持込みが確認された。11月2日、茨城県は出荷自粛を指導し、11月12日には持続的養殖生産確保法にもとづいてコイの移動禁止命令を出した<ref>{{PDFlink|[http://web.archive.org/web/20031204031005/http://www.pref.ibaraki.jp/press/03press/p031128a.pdf 茨城県報道発表資料(2003年11月28日)]}}(2003年12月4日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。しかし、広大な湖に拡散したウイルス駆除は不可能であるため、養殖鯉業者が感染拡大を防ぐためにすべての養殖鯉を処分。全業者が事実上廃業状態となった<ref>{{Cite journal |和書 |year=2004 |title=コイヘルペス問題 |journal=2004夏の参院選 |publisher=常陽新聞 |url=http://www.joyo-net.com/rensai/04saninsen/1-04.html }}</ref>。[[2007年]]現在、養殖再開に向けてウイルス耐性を持った鯉の研究が進んでいる。
2003年10月、霞ヶ浦において養殖鯉の大量死が発生。茨城県内水面水産試験場での検査結果を受け11月2日に農林水産省はコイヘルペスウイルスが大量死の原因であると公表し<ref>{{Cite press release |title=コイヘルペスウイルス病を疑うコイの確認について |url=http://www.maff.go.jp/j/syouan/tikusui/koi/pdf/press_031102.pdf|format=PDF |publisher=農林水産省 |date=2003-11-02日}}</ref>、これにより日本国内へのコイヘルペスの持込みが確認された。11月2日、茨城県は出荷自粛を指導し、11月12日には持続的養殖生産確保法にもとづいてコイの移動禁止命令を出した<ref>{{PDFlink|[http://web.archive.org/web/20031204031005/http://www.pref.ibaraki.jp/press/03press/p031128a.pdf 茨城県報道発表資料(2003年11月28日)]}}(2003年12月4日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。しかし、広大な湖に拡散したウイルス駆除は不可能であるため、養殖鯉業者が感染拡大を防ぐためにすべての養殖鯉を処分。全業者が事実上廃業状態となった<ref>{{Cite journal |和書 |year=2004 |title=コイヘルペス問題 |journal=2004夏の参院選 |publisher=常陽新聞 |url=http://www.joyo-net.com/rensai/04saninsen/1-04.html }}</ref>。[[2007年]]現在、養殖再開に向けてウイルス耐性を持った鯉の研究が進んでいる。


=== 感染の拡大 ===
=== 感染の拡大 ===
霞ヶ浦での大量死以後、日本全国の[[河川]]や[[湖沼]]で感染が確認され、被害が拡大していることが判明した。なお、[[持続的養殖生産確保法]]の目的は[[伝染性疾病]]の蔓延の防止であるが、現実的には既に全国に蔓延していると考えられており法的効力が疑問視されている。これに対する[[農林水産省]]の見解は、感染が確認できたのは全国鯉養殖経営体の約7%、1級及び2級河川水域系の約3%であるから全水域に常在化したといえる状況にはない。というものである<ref>[http://web.archive.org/web/20090122220525/http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050809press_1b.html 持続的養殖生産確保法施行規則の一部を改正する省令案に対する御意見及びこれに対する見解(農林水産省・2005年8月9日)](2009年12月22日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。
霞ヶ浦での大量死以後、日本全国の[[河川]]や[[湖沼]]で感染が確認され、被害が拡大していることが判明した。なお、[[持続的養殖生産確保法]]の目的は[[伝染性疾病]]の蔓延の防止であるが、現実的には既に全国に蔓延していると考えられており法的効力が疑問視されている。これに対する[[農林水産省]]の見解は、感染が確認できたのは全国鯉養殖経営体の約7%、1級及び2級河川水域系の約3%であるから全水域に常在化したといえる状況にはない。というものである<ref>[http://web.archive.org/web/20090122220525/http://www.maff.go.jp/www/press/cont2/20050809press_1b.html 持続的養殖生産確保法施行規則の一部を改正する省令案に対する御意見及びこれに対する見解(農林水産省・2005年8月9日)](2009年12月22日時点の[[インターネットアーカイブ|アーカイブ]])</ref>。
上記の感染の拡大を防ぐべく三重大学では鯉ヘルペス経口ワクチンの開発に成功し実用化へ進みだしている。
上記の感染の拡大を防ぐべく三重大学では鯉ヘルペス経口ワクチンの開発に成功し実用化へ進みだしている。



2017年9月4日 (月) 23:38時点における版

コイヘルペスウイルス
分類
: 第1群 (Group I) - 2本鎖DNA
: ヘルペスウイルス目
Herpesvirales
: アロヘルペスウイルス科
Alloherpesviridae
: Cyprinivirus
: コイヘルペスウイルス
学名
Cyprinid herpesvirus 3
英名
koi herpes virus

コイヘルペスウイルス(koi herpes virus、KHV)は、(マゴイ、ニシキゴイ)に特有のコイヘルペスウイルス病の原因となる二本鎖DNAウイルス

概要

Hedrickらが、1998年イスラエルアメリカ合衆国で発生したコイ(ニシキゴイ)の病気は原因がウイルスであると発表し、その存在が知られるようになった[1]。「koi」と名前がつけられていることから、当初はニシキゴイに感染するウイルスとして認識されていたが、その後、ニシキゴイ以外のコイの被害が発生することがわかった。また、金魚には感染せず、コイに特異的なウイルスであることが報告されている[1]

30℃で不活化する為にへは感染しない。ウイルスに感染しただけでは容姿からの外的判断は困難であるため、現在ウイルスの検出にはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)法という、目的のDNA配列だけを増幅する方法が主に用いられている。

なお、当初、ウイルスによって引き起こされる病気の形態や増殖形式から「ヘルペスウイルス」として分類されてきたが、哺乳類におけるヘルペスウイルスと比べるとゲノムが非常に大きく、内容も異なっていることから異論があった。しかし、現在では研究の進展によって「ヘルペスウイルス」として分類されることで落ち着いている。

コイヘルペスウイルス病

コイヘルペスウイルスが原因となる。発症すると斃死率が高く、非耐性鯉は発症率自体が高い。発症したコイは

  • がただれる。(鰓腐れ)
  • がくぼむ
  • 頭部に凹凸が出る。

などの外的特徴がみられる。発病した場合の致死率は100%である。これは、一度感染してしまうと、高い水温でコイを飼育する「昇温治療」ではウイルスを根絶することができないと判明しているためで[2]、現在も有効な治療法は開発されておらず、一旦発病したが最後、必ずそのコイは死ぬ事が確認されている。水温23℃〜29℃で発症率が高く他の魚病とも併発が見られる。過剰給飼や過密度が発症の一因と考えられているが発病のプロセスは解明されていない。このため、実用に耐えうるワクチンも未開発である[3]

なお、コイヘルペスウイルス病はコイヘルペスウイルスに感染しただけでは発症せず、コイヘルペスウイルス病とコイヘルペスウイルスは同義では無い。コイヘルペスウイルスに感染したとしても発病せず、キャリア(非発病魚)となる可能性も考慮に入れなければならない。インドネシアでは、条件付で移動禁止措置が解除された後に親魚の移動から感染が拡大したと推定されている事例があり[4]、このようなキャリアとなっているコイの検査に対する有効な検査法の開発が必要とされている。

一方で、オーストラリアではコイヘルペスウイルスを用いて外来種であるコイを根絶させる計画がある[5]

感染拡大のルート

このウイルスがどこで発生し、どういうルートで感染が拡大したのかは、いまだに確定されていない。

2004年に東京海洋大学で行われた国際シンポジウム『KHV infection: Present Status and Future Prospects for Prevention;コイヘルペスウイルス感染症の現状と防疫対策』では、1996年にイギリスで発生した大量死の際に死んだコイからこのウイルスが検出されていることが報告されており[1]、今のところこれが最も古い確認例である。

しかし、このことをもってイギリスが発生源であるかどうかは分からない。イギリスの魚養殖業者であるAdrian Barnsは、2004年1月に行われた国際錦鯉サミットにおいて、1996年のKHVによるコイの大量死は、池の中にイスラエル原産の鯉を入れた後でいつも発生したことを発言している[6]。一方、ヘブライ大学のHerve Bercovierは、必ずしもイスラエルがKHVの初発地あるいは感染源ではないことを主張している[7]

その後、1997年ドイツで確認され[8]、1998年には、イスラエルやアメリカ合衆国、アジアでは2002年、コイ養殖が盛んなインドネシア台湾での流行が確認されている[4]。特にインドネシアでは、政府の対策にもかかわらず、流通ルートによってジャワ島東部を発端としてスマトラ島にも感染が拡大している[4]

なお、中国においてインドネシアと同時期に大流行したのではないかと言う説[9]があるが、中国当局は2003年12月時点での日本政府からの照会に対し、ウイルスの感染は発生していないと回答している[4]

ニシキゴイの品評会が開催された土地で品評会後に感染が確認された事例が多い事から、感染拡大の一因として関連性が疑われているが立証されていない。

日本における流行と対策

流行の初確認

日本においては2003年10月、茨城県霞ヶ浦で発生した大量死が有名であるが、それ以前の2003年5月に岡山県吉井川水系にてコイの大量死が発生しており、後に死んだコイからこのウイルスが検出されている[10]

一方、日本では、少なくとも2002年10月にはニシキゴイ関係者の間ではウイルス流行の危険性が認知されていたものの[11]、法制度として対策がとられるのは、持続的養殖生産確保法施行規則が改正されて伝染性疾病として指定される2003年6月まで待たねばならない[12]。しかし、5月の岡山県吉井川の事案からも分かるように、このとき既にウイルスは日本国内に入った後であった。

霞ヶ浦での大流行

2003年10月、霞ヶ浦において養殖鯉の大量死が発生。茨城県内水面水産試験場での検査結果を受け11月2日に農林水産省はコイヘルペスウイルスが大量死の原因であると公表し[13]、これにより日本国内へのコイヘルペスの持込みが確認された。11月2日、茨城県は出荷自粛を指導し、11月12日には持続的養殖生産確保法にもとづいてコイの移動禁止命令を出した[14]。しかし、広大な湖に拡散したウイルス駆除は不可能であるため、養殖鯉業者が感染拡大を防ぐためにすべての養殖鯉を処分。全業者が事実上廃業状態となった[15]2007年現在、養殖再開に向けてウイルス耐性を持った鯉の研究が進んでいる。

感染の拡大

霞ヶ浦での大量死以後、日本全国の河川湖沼で感染が確認され、被害が拡大していることが判明した。なお、持続的養殖生産確保法の目的は伝染性疾病の蔓延の防止であるが、現実的には既に全国に蔓延していると考えられており法的効力が疑問視されている。これに対する農林水産省の見解は、感染が確認できたのは全国鯉養殖経営体の約7%、1級及び2級河川水域系の約3%であるから全水域に常在化したといえる状況にはない。というものである[16]。 上記の感染の拡大を防ぐべく三重大学では鯉ヘルペス経口ワクチンの開発に成功し実用化へ進みだしている。

参考文献

脚注

  1. ^ a b c 飯田貴次「コイヘルペスウイルス病」『日本水産学会誌』第71巻第4号、公益社団法人日本水産学会、2005年7月15日、632-635頁、doi:10.2331/suisan.71.632NAID 110003169442 
  2. ^ 錦鯉養殖業者及び流通業者の皆様へ”. 農林水産省. 2013年6月30日閲覧。
  3. ^ 実験的には成功している例もあるとされるが、大量生産が難しいことなどから実用化には至っていない。(岡克典 2007)を参照。
  4. ^ a b c d "第3回コイヘルペスウイルス病に関する技術検討会の概要について" (PDF) (Press release). 農林水産省消費・安全局. 19 December 2003.
  5. ^ 豪州、外来種のコイに宣戦布告 ウイルス使って壊滅も”. 2017年4月7日閲覧。
  6. ^ Adrian Barns,2004,「イギリスにおけるKHV被害の実態と対応」『国際錦鯉サミット・セミナー』(訳 大面 富士雄)(2004年2月16日時点のアーカイブ
  7. ^ "KHV infection: Present Status and Future Prospects for Prevention;コイヘルペスウイルス感染症の現状と防疫対策 シンポジウム概要" (Press release). 独立行政法人水産総合研究センター. 27 December 2004.
  8. ^ Matsui K; Honjo M, Kohmatsu Y, Uchii K, Yonekura R, Kawabata Z (2008). “Detection and significance of koi herpesvirus (KHV) in freshwater environments.”. Freshwater Biol. 53 (6): 1262-1272. doi:10.1111/j.1365-2427.2007.01874.x. ISSN 1365-2427. 
  9. ^ Mark Crane; Motohiko; Sano Cedric Komar (2004). “Infection with koi herpesvirus (KHV) - Disease card” (PDF). Network of Aquaculture Centres in Asia-Pacific. http://library.enaca.org/Health/DiseaseLibrary/Infection_with_koi_herpes_virus_Disease_Card.pdf.  において2002年に中国で流行した旨の記載がある。
  10. ^ 農林水産省消費・安全局報道発表(2003年11月10日)(2003年12月4日時点のアーカイブ
  11. ^ 湯浅啓「魚病「コイヘルペスウイルス病について」」『月刊錦鯉』、錦彩出版、2002年10月。 
  12. ^ 平成一五年六月三〇日農林水産省令第六六号による。施行規則の改正部分(2003年7月28日時点のアーカイブ
  13. ^ "コイヘルペスウイルス病を疑うコイの確認について" (PDF) (Press release). 農林水産省. 2003-11-02日. {{cite press release2}}: |date=の日付が不正です。 (説明)
  14. ^ 茨城県報道発表資料(2003年11月28日) (PDF) (2003年12月4日時点のアーカイブ
  15. ^ コイヘルペス問題」『2004夏の参院選』、常陽新聞、2004年。 
  16. ^ 持続的養殖生産確保法施行規則の一部を改正する省令案に対する御意見及びこれに対する見解(農林水産省・2005年8月9日)(2009年12月22日時点のアーカイブ

外部リンク