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2017年7月29日 (土) 00:28時点における版
江凱型フリゲート | |
---|---|
「岳陽」(054A型) | |
基本情報 | |
艦種 | フリゲート |
建造期間 | 1999年〜現在 |
就役期間 | 2005年〜現在 |
前級 | 江衛II型フリゲート(053H3型) |
次級 | 最新 |
要目 | |
#諸元表を参照 |
江凱型フリゲート(じゃんかいがたフリゲート、英語: Jiangkai-class frigate)は、中国人民解放軍海軍のフリゲートの艦級に付与されたNATOコードネーム。中国人民解放軍海軍での名称は054型ミサイル・フリゲート(中: 054型导弹护卫舰)であり、概念実証モデルにあたる江凱I型(054型)と、その成果を反映した量産型である江凱II型(054A型)に分けられる[1][2][3][4]。なお自衛隊ではカタカナでジャンカイ級と表記している[5]。
概要
本型は、ステルス性を考慮した新設計の艦体に、西側諸国やロシアのテクノロジーを導入した兵装を搭載している。対空・対潜・対水上にバランスの取れた兵装を備えており、またそれらの武器とレーダーやソナーなどのセンサー類は、フランスのテクノロジーに基づく国産の戦術情報処理装置を中核として連結され、高度にシステム化されている。その武装のレベルは従来の中国海軍のフリゲートと比較してきわめて高く、とくに江凱II型(054A型)は、中国海軍のフリゲートとしてははじめて艦隊防空能力を有するまでに至っている。また、1世代前の江衛型フリゲートと比べて1,000トン以上大型化しており、航洋性も大きく向上した。
来歴
中国海軍は、1990年代初頭よりフリゲートの小規模な近代化に着手した[6]。まず053H2G型(江衛I型)が建造されたものの、国産の個艦防空ミサイルの成績が芳しくなかったことから2隻で打ち止めとなり、フランス製品の山寨版に変更した053H3型(江衛II型)に移行した。こちらは実用性が高いと評価され、10隻が建造された[7]。
しかしこの時期、中国海軍は外洋進出を志向しており、同型の航洋性能では不足があった。このことから、まず新設計の大型の船体に053H3型(江衛II型)と同様の兵装を組み合わせた概念実証モデルとして054型(江凱I型)が建造されて、2005年から2006年にかけて就役した[7]。続いて053H3型(江衛II型)と054型(江凱I型)の運用実績を踏まえて、艦対空ミサイルを強化した054A型(江凱II型)が就役を開始した。同型は用兵側の満足度も高く、ワークホースとして大量に建造されている[6]。
設計
054型シリーズ(江凱型)の設計は、輸出用として開発されたF-16U型フリゲートを発展させて行われた。これは2000年に公開されたもので、MEKO型フリゲートなどが既に制していた大型水上戦闘艦市場で競争力を確保するため、ステルス性の大幅導入など、それまでの中国製フリゲートの既成概念にとらわれない設計を行なっていた。結果としてF-16U型の輸出は失敗したが、その開発の経験からえられたものは大きかった[8]。この結果、本型は、中国海軍のフリゲートとして初のステルス艦となった[4]。
F-16U型は1,600トン級という比較的小型の艦であったが、上記の経緯より航洋性能の強化が要請されたことから、054型で3,800トン級と大型化した。また幅広の船型を採用しており、L/B比は、従来のフリゲートでは9.5〜9.2程度であったのに対し、054型では約8.8となった。船型は中央船楼型である。レーダー反射断面積(RCS)低減のため上部構造物外壁に傾斜を付すため、艦首から艦尾まで全通するナックル・ラインが設けられている。また艦首にはブルワークが付されている[9]。
CODADという主機方式は江衛型と同様だが、機種はフランス製のSEMT ピルスティク16PA6-V280-STC 高速V型16気筒ディーゼルエンジンに変更された。PA6シリーズは先行する江滬型フリゲートでも採用実績があったが[4]、本型ではフランス海軍のラファイエット級フリゲートと同構成となっており、主機の防振・防音に関する技術が導入されたといわれている。また上記のRCS低減策についても、ラファイエット級との類似性が指摘されている[9]。
装備
C4I
戦術情報処理装置としては、054型(江凱I型)ではZKJ-4B/6が搭載された[4]。これはフランスのトムソンCSF(Thomson-CSF)社(現 タレス社)のTAVITAC(旧称 Vega III)を元にした山寨版とされており、中国海軍では051G型(旅大III型)を皮切りに、1990年代に建造・改修された中国海軍の駆逐艦で標準的な装備となっていた[10]。
その後、量産型の054A型(江凱II型)では電子装備の改良強化が図られた[4]。初期建造艦の一部には054型(江凱I型)と同系列のZKJ-4シリーズが搭載されたが、新世代のZKJ-5の実用化とともに、こちらが搭載されるようになった[11]。これは 052B型駆逐艦(旅洋I型)で装備化された中国第3世代の戦術情報処理装置であり、分散システム化が図られている[10]。
また戦術データ・リンク装置としては、やはり中国海軍で標準的なHN-900を搭載している。これはイタリアのIPN-10の山寨版とされている[10]。
対空戦
054型(江凱I型)と054A型(江凱II型)の間の最大の差異は、対空戦システムにある。054型(江凱I型)では053H3型(江衛II型)をおおむね踏襲し、センサーとして360型対空・対水上捜索レーダー、火力としてHHQ-7個艦防空ミサイル・システムが配置されている。HHQ-7は、フランス製のクロタル・システムの山寨版と考えられており、カストールIIC CTMの山寨版である345型(MR35)レーダーによる射撃指揮を受ける[10]。
その後、15年にわたる053H3型と054型の運用実績を踏まえて、054A型(江凱II型)では新開発のHHQ-16艦対空ミサイル・システムが搭載された。これはロシアの9M38M2ミサイルの中国版と考えられており、Mk.41に酷似した国産のVLSを使用しているが、射撃指揮には、3K90と同様に3R90(フロント・ドーム)が使用される。射程も延伸されており、これにより本型は、中国海軍初の僚艦防空フリゲートとされた[12]。これにあわせて、レーダーも、より高性能なフレガートMAE-5の山寨版である382型3次元レーダーに変更された。
また、江凱I型(054型)と江凱II型(054A型)のいずれにおいても、マックに似た構造を採用した後部マスト上には、低空警戒用の364型レーダーがレドームに収容されて搭載されている[13][14]。
対潜戦
従来の中国海軍フリゲートは、対潜兵器として87式6連装対潜ロケット砲を標準的に搭載してきた。本型ではこれにかえて、西側の標準装備であるMk 32 短魚雷発射管の山寨版である3連装短魚雷発射管を搭載しており、ここから、Yu-7短魚雷を発射することができる。Yu-7はアメリカ合衆国製のMk.46およびイタリア製のA244/Sの山寨版とされている。なお、船体のステルス化設計に合わせて、短魚雷発射管は通常は艦内に収容されており、使用時のみ舷側を開口して魚雷を発射する。
本型は、ロシア製のMGK-335をバウ・ドームに収容して搭載していると言われている。MGK-335は、1世代前のロシア海軍の標準的なソナーであり、複数のバージョンが確認されている。ソリッドステート化されるとともに曳航ソナーを省いたMGK-335MS型は11351型国境警備艦(クリヴァークIII級フリゲート)にも搭載された。MGK-335MS型は中周波数(4.5 kHz、5.0 kHz、5.5 kHz)を使用し、パッシブ・モードでは3海里、アクティヴ・モードでは5海里の探知距離を有していると推測されているが、これはアメリカのAN/SQS-56にほぼ匹敵する[15]。また054A型では、AN/SQR-19 TACTASSに相当する曳航ソナーが搭載されているという説もある[16]。
対水上戦
対水上火力としては、江衛II型(053H3型)と同じくYJ-83(C-802)艦対艦ミサイルを4連装発射筒 2基に収容して搭載する。その射撃指揮には、054型では344型レーダーが用いられる[1]が、054A型ではロシア製のMR-331ミネラル(NATOコードネームはバンド・スタンド)を使用する。MR-331は、アクティブ・モードでは250km以内の50目標を同時に追尾、パッシブ・モードでは450kmまで探知可能とされており、大型のレドームに収容されて艦橋構造物上に搭載されている[10]。
砲熕兵器
江凱I型(054型)では、フランスのクルゾー・ロワール社製の100mmコンパクト砲をもとにした単装速射砲であるH/PJ-87 55口径100mm単装砲を主砲として1基搭載していた。射撃指揮装置としては、SSMと兼用で344型レーダーが用いられた[1]。
一方、量産型の江凱II型(054A型)では、これにかわって、新型の76mm単装速射砲が搭載された。これはロシア製のAK-176 60口径76.2mm単装砲の中国版であり、性能面では、西側で広く使われているオート・メラーラ 76 mm 砲におおむね匹敵する。射撃指揮装置としては、730型CIWSで用いられるのと同機種のTR47Cレーダーが前部マスト基部に配置されている[2]。
また近接防空火器(CIWS)としては、江衛型など1990年代の中国軍艦で広く採用されてきた37mmダルド・システムにかえて、30mm口径のガトリング砲によるシステムが採用されるようになっており、江凱I型(054型)ではAK-630[1]、江凱II型(054A型)ではさらに新型の730型30mmCIWSを搭載している[2]。江凱II型(054A型)の730型CIWSは、従来の37mmダルド・システムで用いられてきた347G型(EFR-1)レーダーを発展させたTR47Cによる射撃指揮を受ける[13][15]。
電子戦
本型の電子戦装置はニュートン・ベータ電波探知妨害装置の中国版を中核としている。これは、イタリアのエレトロニカ社のニュートン・シリーズの小型艦(250〜1,000トン)向けバージョンであり、ELT-211電波探知装置、ELT-318電波妨害装置(ノイズ・ジャミング用)、ELT-521電波妨害装置(欺瞞用)によって構成されている[17]。中国では、1985年に第723研究所(揚州船用電子儀器研究所)によってHZ-100として山寨化され[10]、中国海軍では053H2型 (江滬-III型)などに搭載されていた。またこれに加えて、922-1型レーダー警報受信機も併載されている[4]。なお、船体中部両舷に各1基が設置された726-4型18連装ロケット砲は、デコイの投射用にも用いられると考えられている[2]。
航空機
本型は、国産のZ-9C、またはロシア製のKa-28哨戒ヘリコプターを1機搭載する。
飛行甲板上には、フランスのDCN社が開発した着艦拘束装置が設置されている。これは、ハープーン・グリッド・システムと呼ばれるもので、蜂の巣上のステンレス板(「グリッド」)を飛行甲板中央に甲板と面一になるように埋め込み、ここにヘリコプター胴体下面に設置された伸縮式のハープーンをさしこんで、機体を拘束するという仕組みであり、フランス本国のほか、イギリスやドイツなど、アメリカとカナダをのぞくNATO諸国で広く採用されている[18]。
また、本型では、飛行甲板と格納庫との間でヘリコプターを移送するため、ロシア系の機体移送装置を装備していると言われている。
諸元表
江凱I型(054型) | 江凱II型(054A型) | |
---|---|---|
基準排水量 | 3,400トン | 3,450トン |
満載排水量 | 3,800トン | 4,050トン |
全長 | 132.0 m | 134.0 m |
全幅 | 15.0 m | |
吃水 | 5.0 m | |
機関 | CODAD方式 | |
SEMT ピルスティク16PA6 STC ディーゼルエンジン×4基 |
SEMT ピルスティク16PA6 V280 ディーゼルエンジン×4基 | |
スクリュープロペラ×2軸 | ||
出力 | 21,000馬力 | 28,200馬力 |
速力 | 27ノット(最大) | |
18ノット | ||
航続距離 | 3,800海里 (18kt巡航時) | |
乗員 | 190人 | |
兵装 | 55口径100mm単装速射砲 ×1基 | 60口径76mm単装速射砲 ×1基 |
AK-630 30mmCIWS ×4基 | 730型30mmCIWS × 2基 | |
HQ-7短SAM 8連装発射機 × 1基 (ミサイル16発) |
VLS× 1基(32セル) (HQ-16 SAMないしCY-3 SUM) | |
YJ-83 SSM 4連装発射筒 × 2基 | ||
3連装短魚雷発射管 × 2基 | ||
艦載機 | Z-9C / Ka-28 哨戒ヘリコプター ×1機 | |
C4I | ZKJ-4B/6戦術情報処理装置 | ZKJ-5戦術情報処理装置 |
HN-900戦術データ・リンク | ||
レーダー | 360型 対空・対水上用 × 1基 | 382型 3次元式 × 1基 |
364型 低空警戒用 × 1基 | ||
RM-1290 航海用 × 2基 | ||
ソナー | MG-335 艦首装備式 | |
- | H/SJG-206 曳航式 | |
FCS | 345型 短SAM用×1基 | MR-90 SAM用× 4基 |
344型 SSM/主砲用×1基 | MR-331 SSM用× 1基 | |
347G型 CIWS用×1基 | TR47C 主砲・CIWS用×3基 | |
電子戦 | HZ-100 電波探知妨害装置 | |
922-1型レーダー警報受信機 | ||
726-4型18連装ロケット砲×2基 |
同型艦
艦級 | # | 艦名 | 造船所 | 進水 | 就役 | 配備先 |
---|---|---|---|---|---|---|
江凱I型 (054型) |
525 | 馬鞍山 (Ma'anshan) |
滬東中華造船 | 2003年 9月11日 |
2005年 2月18日[19] |
東海艦隊 |
526 | 温州 (Wenzhou) |
広州中船黄埔造船 | 2003年 11月6日 |
2005年 9月26日[19] | ||
江凱II型 (054A型) |
530 | 徐州 (Xuzhou) |
広州中船黄埔造船 | 2006年 9月30日 |
2008年 1月27日[19] | |
529 | 舟山 (Zhoushan) |
滬東中華造船 | 2006年 12月21日 |
2008年 1月3日[19] | ||
570 | 黄山 (Huangshan) |
広州中船黄埔造船 | 2007年 3月18日 |
2008年 5月13日[19] |
南海艦隊 | |
568 | 衡陽 (Hengyang) |
滬東中華造船 | 2007年 5月23日 |
2008年 6月30日[19] | ||
571 | 運城 (Yuncheng) |
広州中船黄埔造船 | 2009年 2月8日 |
2010年 1月17日[19] | ||
569 | 玉林 (Yulin) |
滬東中華造船 | 2009年 4月28日 |
2010年 2月1日[19] | ||
548 | 益陽 (Yiyang) |
広州中船黄埔造船 | 2009年 11月17日 |
2010年 10月26日[19] |
東海艦隊 | |
549 | 常州 (Changzhou) |
滬東中華造船 | 2010年 5月18日 |
2011年 5月30日[19] | ||
538 | 煙台 (Yantai) |
広州中船黄埔造船 | 2010年 8月24日 |
2011年 6月9日[19] |
北海艦隊 | |
546 | 塩城 (Yancheng) |
滬東中華造船 | 2011年 4月27日 |
2012年 6月5日[19] | ||
572 | 衡水 (Hengshui) |
広州中船黄埔造船 | 2011年 5月21日 |
2012年 7月9日[19] |
南海艦隊 | |
573 | 柳州 (Liuzhou) |
滬東中華造船 | 2011年 12月10日 |
2012年 12月28日[19] | ||
547 | 臨沂 (Linyi) |
広州中船黄埔造船 | 2011年 12月13日 |
2012年 12月22日[19] |
北海艦隊 | |
575 | 岳陽 (Yueyang) |
2012年 5月9日 |
2013年 5月3日[19] |
南海艦隊 | ||
550 | 濰坊 (Weifang) |
滬東中華造船 | 2012年 7月9日 |
2013年 6月22日[19] |
北海艦隊 | |
574 | 三亜 (Sanya) |
2012年 11月30日 |
2013年 12月13日[19] |
南海艦隊 | ||
577 | 黄岡 (Huanggang) |
中船黄埔文沖船舶 (長洲廠区) |
2013年 4月28日 |
2015年 1月16日[19] |
東海艦隊 | |
576 | 大慶 (Daqing) |
2013年 9月28日 |
2015年 1月16日[19] |
北海艦隊 | ||
578 | 揚州 (Yangzhou) |
滬東中華造船 | 2013年 9月30日 |
2015年 9月21日[20] |
東海艦隊 | |
579 | 邯鄲 (Handan) |
中船黄埔文沖船舶 (長洲廠区) |
2014年 7月25日 |
2015年 8月19日[21] |
北海艦隊 | |
532 | 荊州 (Jingzhou) |
滬東中華造船 | 2015年 1月22日 |
2016年 1月5日[22] |
東海艦隊 | |
531 | 湘潭 (Xiangtan) |
中船黄埔文沖船舶 (長洲廠区) |
2015年 3月19日 |
2016年 2月24日[23] | ||
515 | 浜州 (Binzhou) |
滬東中華造船 | 2015年 12月13日 |
2016年 12月29日[24] | ||
536 | 許昌 (Xuchang) |
中船黄埔文沖船舶 (長洲廠区) |
2016年 5月30日[25] |
2017年 6月23日[25] |
南海艦隊 | |
539 | 蕪湖 (Wuhu) |
滬東中華造船 | 2016年 6月8日[26] |
2017年 6月29日[27] |
北海艦隊 | |
中船黄埔文沖船舶 (長洲廠区) |
2017年 4月1日[28] |
2018年 (予定) | ||||
滬東中華造船 | 2017年 4月3日[28] |
2018年 (予定) |
参考文献
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- 梅野和夫『世界の艦載兵器 砲熕兵器篇』光人社、2007年。
- 編集部「注目の中国新型艦艇 ② 水上戦闘艦」『世界の艦船』2008年2月号、88-93頁、海人社。
関連項目
- ウィキメディア・コモンズには、江凱型フリゲートに関するカテゴリがあります。
外部リンク
- The Type 054/054A Frigate Series - China SignPost