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この効果によって、ある実験{{要出典|date=2010年9月}}ではいくら電流を増やしても7km/sで頭打ちになった。400m/sでの銅レールの「表皮厚」は1mmであった。
この効果によって、ある実験{{要出典|date=2010年9月}}ではいくら電流を増やしても7km/sで頭打ちになった。400m/sでの銅レールの「表皮厚」は1mmであった。


速度表皮効果をコントロールする技術が開発されれば、レールガンの高性能化は容易であると考えられている<ref name = "ハイテク兵器の物理学">「ハイテク兵器の物理学」 防衛技術協会 ISBN4-526-05644-8</ref>。
速度表皮効果をコントロールする技術が開発されれば、レールガンの高性能化は容易であると考えられている<ref name = "ハイテク兵器の物理学">「ハイテク兵器の物理学」 防衛技術協会 ISBN 4-526-05644-8</ref>。
<!--独自研究として考察すれば、投射体が少しでもレールの間で傾けば、受ける力もそのまま斜めになるため、火薬を使う火砲よりは弾道の誤差が大きくなると考えられる。-->
<!--独自研究として考察すれば、投射体が少しでもレールの間で傾けば、受ける力もそのまま斜めになるため、火薬を使う火砲よりは弾道の誤差が大きくなると考えられる。-->



2016年11月15日 (火) 17:28時点における版

レールガンの模式図。

レールガン: railgun)は、物体を電磁誘導ローレンツ力)により加速して撃ち出す装置である。なお、電磁気を使う投射様式全般の呼称としては、電磁投射砲(でんじとうしゃほう)やEML[1]電磁加速砲[2]などがある。

原理的には古くから知られていることもあり、サイエンス・フィクション関連やゲームなどの作品に幅広く登場しているが、それらの作品では主に兵器として扱われていることが多い(→レールガンの登場するサイエンスフィクション一覧)。

なお、レールという言葉が含まれているが、いわゆる鉄道や列車砲とは無関係である。

概要

この装置は、電位差のある2本の電気伝導体製のレールの間に、電流を通す電気伝導体を弾体として挟み、この弾体上の電流とレールの電流に発生する磁場の相互作用によって、弾体を加速して発射するものである。

弾体を加速し発射する力は、アンペールの法則でわかるように、主にレールと移動をつづける弾体(電気伝導体)の接点付近に生じる。また、直線導体による弱い磁場であるから、非常に大きな電流を流し続ける必要があり、さらに十分な発射速度を得るためには、加速に十分な距離を取る必要がある。

一方、弾体を含め電気回路を形成するためには、レールに弾体(ないしそれに取り付けられた電気伝導体)の一部が接触している必要があり、この箇所に摩擦および移動に際しての摩擦熱が発生する。さらに摩擦が起きる電気接点において、わずかな電気抵抗でも生じれば、投入される大電流のために大きなジュール熱が発生し、この電気伝導体等の一部が蒸発プラズマ化する問題もある。弾体とレールの接点が蒸発して接点が取れなくなれば、電気回路としての装置に電流は流れず、弾体は発射装置内に取り残される。なお、流体としての性質を持つプラズマにも電気伝導体としてローレンツ力が働くが、このプラズマが飛散してしまえば、やはり弾丸は取り残される。このため、後述するように、電気伝導体としてのプラズマを逃がさないようにする工夫も見られ、プラズマを電気伝導体として扱うものでは、弾体自体は必ずしも電気伝導体である必要はなく、この弾体の進行方向から見て後方に薄い金属箔を貼り付ける様式もある[3]

このように実用化には問題が多いと考えられ、これらの装置は2012年現在においては、概念的な架空のものとしてや、実験段階のものや試験段階のものなど、実用化は進んでいないが、後述するように様々な利用も想定されている。実用化の一つとして、2016年に米軍が、電磁加速砲を洋上実験する計画が明らかになっている。

構造

レールガンの原理的な基本構造は、2本のレールと電源からなる。これに伝導体製の弾丸を挟み込んで直流の電力を入力し、還流させて電気回路を形成する。この場合、弾体には電流が流れる必要性から砲身であるレール電極に物理的に接触している必要があるが、電流さえ流れれば伝導体はプラズマでも構わない。なお、プラズマが弾体を押すためには、流体としての性質を持つプラズマが弾体を追い越さないための密封性を必要とし、このため弾体の通り道を残してレール間の隙間を塞いである(砲身として筒状をしている)が、このレールの隙間を塞いだ構造物は非伝導体(絶縁体)である。

弾体を砲身であるレールの間のみで加速するためには相応の電流を必要とするが、この電力供給が必要に見合えば、その形式は問われない。ただし、化学電池程度では、レールガンを動作させるのに見合うだけの電力を短時間で供給することには見合わず、それらで発生させた電力をキャパシターなど起電力を持たない蓄電装置に蓄えるなど工夫を必要とする。

以上がレールガンの構造における基本形態だが、実際に開発・利用されているレールガンでは、プラズマ化に伴う膨張力(→圧力)やなどに耐えられなければならず、またプラズマ化に伴う膨張圧も弾体の加速に利用する場合は、尾栓に相当する部品を必要とし、これは非伝導体である必要がある。なお、単純にプラズマ膨張圧のみを弾体加速に用いる形式は、サーマルガンと呼ばれる別形態の装置である。

利点と実現性

レールガンが打ち出す弾体の最大速度は、理論上はレールが長く加速が長時間維持できればあげることができるが,ローレンツ力と各種の摩擦や損失がつりあう速度が最大速度となる。 したがって、発射速度は入力した電流の量に正比例しない。摩擦や損失が無視できる間は、加速度は電流の大きさに比例する。

速度表皮効果(後述)によって投入エネルギーの多くがジュール熱として奪われ、不必要なプラズマの発生によるエネルギー・ロスが発生するために、ある程度以上の高速度運動では入力エネルギーに対する加速の効果に上限が生じる。 また、速度表皮効果による上限以前に、短時間に大電流を供給する電源が必要である他、加速する距離やレールの摩擦電気抵抗・耐熱限界などの物理的・技術的制約がある。

しかしながら、火薬を使用する火器では、燃焼による化学エネルギーの多くが熱の形で失われ、弾体の投射エネルギーに使われるのは少しであり、また弾体の発射速度は発生・過熱膨張されるガスの膨張速度を超えられず、最新の爆薬を使ってもせいぜい2km/s程度であるのと比べれば、現在ある技術や材料で作られた実験段階のレールガンでも充分な電流さえ入力されれば遥かに大きい発射速度が実現できている。

速度表皮効果

レールガンの速度表皮効果
投射体が高速移動すると磁界変化が間に合わず、電流路が狭い範囲に押し込められる。
1.ローレンツ力を受けて投射体が加速される
2.速度表皮効果によって電流の流れる範囲が狭くなり、やがてジュール熱によって「溶解」「プラズマ化」する
3.発生したプラズマが新たな電流の流れを作って投射体への加速が行なわれなくなる

[4]

電流が変化する場合には、同時に誘導された磁力も変化する。この磁力の変化がはじめの電流の変化を打ち消す方向に働く。これが自己インダクタンスと呼ばれる抵抗である。普通は電気回路は空間に対して固定されていたり、移動する場合でもそれほど高速ではないが、レールガンでは投射体の高速移動によって電流路とそれを取り巻く磁界が高速で空間を移動する。

一度発生した磁界はその中心に電流路を保持しようと働くため、移動する投射体に対しては電流路を後方に限定し、レール上の電流路は砲の先の抵抗値が上昇する。これは交流電流による表皮効果と同じように働き、移動が充分に高速であれば、まず過大な抵抗によるジュール熱によって伝導体の後端から溶解をはじめ、さらに高速であればプラズマ化してしまい、通常の砲のように密閉されていなければ、新たな電流路となったプラズマはローレンツ力と速度表皮効果の両方を受けて複雑な挙動をしながら、結局加速に関与しないで散逸する。

この効果によって、ある実験[要出典]ではいくら電流を増やしても7km/sで頭打ちになった。400m/sでの銅レールの「表皮厚」は1mmであった。

速度表皮効果をコントロールする技術が開発されれば、レールガンの高性能化は容易であると考えられている[4]

初速

1960年代には、550メガジュールを入力した長さ5mのレールガンで、オーストラリア国立大学に所属するリチャード・マーシャルらのグループが3gの弾丸を5.9km/s ( = 5,900m/s) で射出する事に成功した。なお21世紀初頭では、最大速度8km/s程度の物が開発されている。また、参考までに火薬を使う火器の弾丸の初速に関して述べると、拳銃では230 - 680m/s、ライフル銃では750 - 1,800m/s程度、戦車砲では120mm/L52の仏GIAT製滑腔砲にAPFSDSであるOFL120F1タングステン徹甲弾では1,790m/sである。また火薬と水素を使ったライトガスガンでは6 - 7km/sである。

混同されやすいその他の投射方式

リニアモーター
電磁誘導によって物体を加速する装置。電磁石そのものを弾体の推進装置とする。
コイルガン
コイル(ソレノイド)の中に弾を通過させる方法を利用したもの。構造上の問題からレールガンの様な高初速が得がたいという欠点と、消費電力が低いという利点がある。
サーマルガン
電磁誘導ではなく入力された電流のジュール熱にて弾体後方の導体をプラズマへ相変化させ、これに伴う急激な体積の増加を利用するもの。瞬間的なプラズマ化に伴う爆発を利用するため、比較的低いエネルギー量でも一定速度未満であれば高い初速が得易い代わりに、プラズマ膨張速度を超えた初速を得ることはできない。

想定される用途

現在、レールガンは様々な分野での利用を期待されている。比較的知られている分野では以下が挙げられる。

  • マスドライバー等の宇宙への輸送装置
  • 高速移動物体の衝突時に発生するエネルギーを研究するための設備
    • スペースデブリ(宇宙ゴミ)衝突を想定した宇宙開発における新素材や新構造の研究・開発
    • 被破壊実験等の物理学的な実験
  • 軍事兵器
    • 宇宙兵器(隕石衝突を回避するための防衛技術も想定されている)

この他、入力する電流の量により、発射速度を自由にコントロールできる事から、タイミングを計りやすい事もあり、レーザー核融合炉への燃料ペレット投入に対する利用が期待されている。

兵器としての実用化

Naval Surface Warfare Center Dahlgren Divisionでの試射(2008年1月)

アメリカ海軍ズムウォルト級ミサイル駆逐艦で採用が決定したAGS[5]と呼ばれるロケットアシスト砲の次の段階として、レールガンの技術開発に着手していることが2007年の米ネイビーリーグ(技術展示会)で発表された[6]米国海軍研究局英語版(ONR)でもこの事実は確認された[7]

ズムウォルト級駆逐艦の特色として統合電力システム (IPS) を採用しており、大型ガスタービンエンジン電力発電、これを船の電気系統はなおのこと推進器などの動力として使う計画であるが、これを更に進めてレールガンにもこの電力を供給し発射しようという計画である。同艦では2基のガスタービン発電機により、最大80メガワットの電力を発生させる。この電力は全速航行時には70MWまでもが推進に使われるが、常時最大戦速を出す訳ではないので、速度を落としている際に余る電力が利用されると考えられており、15~30MW程度をレールガン発射に回せれば、毎分6 - 12発の連続射撃が可能だという。

計画では揚陸作戦支援に重量15kgの砲弾を初速2.5km/sで発射、高度152kmまで打ち上げて370km以上先の攻撃目標に終速1.7km/s(マッハ5)で着弾させる、このためには砲口での砲弾運動エネルギーは64MJ(メガジュール入力する電力ではなく、砲弾のもつ運動エネルギーである)を必要としている。

同計画では2020 - 2025年頃を目処に実用機を艦船に搭載することを目標として、BAEシステムズ社とジェネラル・アトミックス社が32MJ砲の試作に入っており、2006年10月の時点で口径90mm・2.4kg砲弾を砲口での砲弾運動エネルギー800キロジュール(0.8MJ・初速830m/s)で発射に成功、2007年1月には3.2kg砲弾で初速2146m/s 砲弾運動エネルギー7.4MJを、2008年1月の試射では3.35kg砲弾で初速2520m/s 砲弾運動エネルギー10.64MJを記録している。[8][9]2010年12月10日には、約10.4kgの砲弾を音速の約8倍(約2.7km/s)、砲弾の運動エネルギーは約33MJでの発射に成功した。これは、目標である15kgの砲弾の2.5km/sに極めて近づきつつある結果である[10]

2014年4月7日、アメリカ海軍は、2016年会計年度中にレールガンの試作機を最新鋭の高速輸送艦ミリノケット[11][12]に据え付け、洋上での実証試験に入ると発表した[13]日本では、防衛省平成27年概算要求にて、「艦載電磁加速砲の基礎技術に関する研究」を記載している[2]

歴史

発射速度は入力された電流に正比例する事は先に述べた通りだが、原理自体は古くから知られており、1844年にはこれに基づいた兵器利用の実用化構想もあった程で、世界各国の軍部が事ある毎に研究してきた歴史がある。第一次/第二次世界大戦当時にもドイツ日本で兵器化への研究が行われていた。しかし弾体が砲身に接触している事から生じる摩擦の問題を解決できなかったり、実際に発射できるだけの電流を生み出す電源が無いといった理由から、当時の技術ではこの問題を解消できずに研究は放棄され、実用化に到らなかった(高射砲一門だけのために、専用発電所が二つ必要という試算さえあった)。

1960年代に、前出のリチャード・マーシャルらのグループが単極発電機[14]の発生させる電流を用いて、従来火器よりも遥かに速い速度で弾丸を射出する事に成功、次第にその威力が現実的な物として考えられるようになり、1980年代にはアメリカ合衆国スター・ウォーズ計画(SDI計画)により、多額の研究資金を得て、大きく発展した。

特に宇宙空間では空気抵抗が無いために、高速で運動する物体の破壊力(運動エネルギー)は発射から命中までの間、ほぼ無期限に保存される事、また電源として大気越しではない太陽光が利用できる事から、レーザーと並んで宇宙兵器の有力候補に挙げられている。

だが今日では、SDI計画自体が国際情勢の変化に合わせて計画縮小され、実用性においては実績のある既存の火薬を燃焼させて発射する兵器と比較し、巨大な電源装置を必要とする等の点で問題の多い上に、実績も無いレールガンの兵器化研究は進んでいない。

その一方で、1990年代頃から技術開発や研究方面での利用も進み、様々な分野で開発・利用されている。

日本では宇宙科学研究所で、デブリ衝突などの模擬実験用に研究と同時に実用に供されていた。

なおレールガン開発の歴史は、レールガン本体の改良よりも、むしろ電源開発の歴史と述べた方が適切とされており、SDI計画においても、単極発電機の小型化が最重要課題とされていた。今日各方面で利用されているレールガンにおいては、フライホイールに(運動エネルギーの形で)蓄電された物やコンデンサに蓄電した物が利用されるなどしている。

脚注

  1. ^ : electromagnetic launcher
  2. ^ a b 防衛省:我が国の防衛と予算-平成27年度概算要求の概要- - 防衛省(PDF)
  3. ^ 最新科学論シリーズ15『最新宇宙飛行論』(1991年)学研(P.153 - 155)
  4. ^ a b 「ハイテク兵器の物理学」 防衛技術協会 ISBN 4-526-05644-8
  5. ^ : advanced gun system
  6. ^ ジャパン・ミリタリー・レビュー『軍事研究』2007年7月号P.66参照
  7. ^ 米国海軍研究局 - Electromagnetic Railgun: An Innovative Naval Program
  8. ^ 米国海軍研究局 - 2008年01月31日発表報道資料- U.S. Navy Demonstrates World’s Most Powerful Electromagnetic Railgun at 10 MJ
  9. ^ Technobahn - 米海軍研究所、10メガジュールの本格的レールガン発射実験に成功
  10. ^ WIRED.COM - Navy’s Mach 8 Railgun Obliterates Record
  11. ^ : USNS Millinocket (JHSV-3)
  12. ^ “米海軍、レールガンを2016年に洋上テストへ 「これはSFではない」”. ITmedia. (2014年4月18日). http://www.itmedia.co.jp/news/articles/1404/08/news069.html 
  13. ^ 米国海軍 - 2014年04月07日報道資料 - Navy to Deploy Electromagnetic Railgun Aboard JHSV
  14. ^ : homopolar generator

参考文献

  • 最新科学論シリーズ15『最新宇宙飛行論』(1991年)学研(P.153-155)

関連項目

外部リンク