「複利」の版間の差分
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2016年11月15日 (火) 14:50時点における版
複利(ふくり)とは、複利法によって計算された利子のこと。複利法とは、元金(がんきん)によって生じた利子を次期の元金に組み入れる方式であり、元金だけでなく利子にも次期の利子がつく。したがって、各期の利子が次第に増加していく。投資や借金などでは、雪だるま式に利子が増えていくことになる。重利(じゅうり)とも。
理論
1期末の元利合計(元金と利子を合わせた額)は、次式になる。
- 元利合計 = 元金+元金×利率 = 元金×(1+利率)
2期目には、上の元利合計を新しい元金として、同様に利子がつく。
- 2期末の元利合計 = 元利合計×(1+利率) = 元金×(1+利率)×(1+利率)
したがって、n 期末の元利合計は、次式になる。
- n 期末の元利合計 = 元金×(1+利率)n
解説
たとえば、10,000円を元金として、月利が10%(すなわち 0.1)である場合に、複利法で1か月後の元利合計は11,000円になる。
- 10000+1000=11000
2か月目は、この11,000円を元金として計算する。
- 11000+1100=12100 [1]
3か月目は、この12,100円を元金として計算する。
- 12100+1210=13310
つまり、3か月後には3,310円の利子がつく(1.1×1.1×1.1 = 1.13 = 1.331)。
- これに対して単利法では、3か月後の利子は3,000円であるから、複利法での利子は単利より310円だけ多い。
10か月後には、単利10,000円に対して、複利は15,937円になり、5,937円だけ多い(1.110≒2.5937)。
20か月後には、単利20,000円に対して、複利は57,275円になり、37,275円だけ多い(1.120≒6.7275)。
72の法則
72の法則は、複利のとき、預けた(または借りた)金額が何年(または何か月)で元の2倍になるかを概算する方法であり、72を利率(%)で割った値がほぼ正しい期数になる。また逆に、72を期数で割った値がほぼ正しくその期数で2倍になる利率になる。
例1. 年利3%の銀行に預けたとして、何年で2倍になるか。
- 72÷3=24 [年] となる。
- 実際には (1+0.03)24≒2.033 であって、24年後には2倍より少し多くなる。
例2. 8年で2倍になる利率はどれだけか。
- 72÷8=9 [%] となる。
- 実際には (1+0.09)8≒1.993 であって、9%では2倍より少しだけ足りない。
法律
貸金業法14条および出資法5条6項には、1年分に満たない利息を元本に組み入れる場合が規定されており、複利の約定自体が禁止されていないことは自明であるが、単利の場合と同様に利息制限法および出資法の上限利息の制限を受ける。
また、民法405条は、当事者の約定がなくても、1年以上の利払いの延滞および債権者による催告を要件として、利息を元本に組み入れることができると定めている(法定重利)。これを反対解釈すれば、当事者間に約定がなく、同条項の要件を満たさなければ、当然に利息を元本に組み入れることはできない、即ち、日本民法においては、単利が原則であり、複利とするには当事者間の合意が必要であることを意味している。
期日前の借換え
たとえ単利の借金であっても、期ごとに借換えをすると、実質上の複利返済になってしまう。単利の期末ごとに元利合計額を他から借金して返済することを繰り返せば、実質は複利法で借金したのと同額の利子になる。もし期日前に借換えをすれば、同じ利率であったとしても、利子は複利法よりも高くなる。
まして複利法による借金であって、期日前に借金の元利合計額を他社から借金して返済することを繰り返せば、利子は高くなる。 悪徳業者は借換えをすると利子が安くなると言って借換えを勧めるが、実質上は複利になっているので、借換え後の金利が 1% 程度安くなっても実質上の支払額は減っていないどころか増える場合すらある。 最悪の場合には毎月のように業者間で借換えのたらい回しにされ多重債務に陥る。
注
- ^ 1.1×1.1 = 1.12 = 1.21