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『古老たちの語らい』<ref>Stokes 編訳([[#一次資料]]を参照)</ref>では、名前(Dub, Ág, Ilar)こそ違うが、やはりイルアードより来た三人組が、不思議の犬'''フェルマク'''(?)({{lang-ga|Fermac}})を連れてきて、フィアナの仲間入りをする。ここでは犬がルーのものとはされていないが、ワインを口から出す能力が部分的に合致する。フェルマクは、多彩色で、口からワインのほかにも金銀を吐き出すことができた。また、昼間は巨大な犬なのが、夜は膝乗りの愛玩犬ほどのサイズに縮小した。夜になってからの彼らの様子を除いてはならないという警告を守らなかった二人の見張りは、この小犬の尻尾が巻き上げた魔法の風に飛ばされ、お互いの剣が刺さって死んだ。 |
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== 資料 == |
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2016年11月15日 (火) 13:36時点における版
ファリニシュ(愛: Failinis)は、アイルランド伝承文学に登場する犬の名前。トゥアハ・デ・ダナーン(ダーナ神族)の長腕のルーが所持した犬で、トゥレンの子らから賠償(エレク)に求めて得た物品のひとつ。
概要
トゥレンの子らが奪うまでは、それはイルアード(イルアーズ)(?) (≒ 北欧の不思議の国 アイルランド語: Ioruaidh(e)) の王の持ち物だった。「すべての野獣を平伏させ、炎たつ日輪よりもすばらしい」と形容される[1]。また、その毛皮に水を接触させるとワインを生じさせる能力をもっている[2]。フィアナ軍団が遭遇したイルアード出身の三人組も、もとルーの犬ファリニシュを、ワインを出す道具や番犬として連れ歩いていた。[3]。犬がフィアナ団の二人を殺したので、犬は殺されて宝の毛皮がはぎ取られたという。イルアード出身の三人組の犬は、別の作品ではフェルマク/フェリヴァク(?)(Fermac)と呼ばれ、よりはっきりとした描写で書かれている。
伝承文学
『トゥレンの子らの最期』
『トゥレンの子らの最期』の物語版は、現在18世紀以降の写本でしか伝わっていないが、この犬については、まったくが後世に成立した話ではない。ルーの賠償請求についての≪来寇の書≫の記述によれば、ルーはやはり「イルアーズの王付鍛冶師、ないし鍛冶師王(?)の仔犬」、("The whelp of the royal smith of Ioruath"; アイルランド語: Cuilen rīg goband na Hiruaidhe )を賠償品として請求しており、それは「昼は犬だが夜は羊」とされ、また、「その毛皮に触れた水池はすべてワインになる」と形容される[4]。ただしここでは仔犬の名は特定されていない。
十二世紀の古謡
だが、ルーの犬ファリニシュの名は、たしかに古写本にも記録されている。それは「奴らは三人組でやって来た..」(アイルランド語: "Dám Thrír Táncatair Ille)の一行に始まる、一篇の「十二世紀のオシアニックなバラッド」[5]に登場する。「オシアニック」とは要するにフィン・マックールの息子オシーン(オシアン)による回想詩という意味だが、内容は、前出のイルアードの国から上陸した三人組が、触れた水をミード(蜜酒)やワインに変えてしまうという不思議の犬ハリニシュ(アイルランド語: Ṡalinnis (Shalinnis), ≪レンスター書≫版[6])またはファリニシュ(アイルランド語: Failinis, ≪リズモア書≫版[7])を連れてやってくる。そしてその犬はかつて「マントのルー」(Lugh na Lenn; ルーの母称の誤記[8])の持ち物だった。しかし犬が団員ドゥヴァン(Dubán mac Bresail )を殺したため、三人組(Sela, Dorait, Domnán)は犬を賠償に差し出し、フィアナ軍団は宝の犬毛皮を剥いで外国遠征に出たという。
『古老たちの語らい』
『古老たちの語らい』[9]では、名前(Dub, Ág, Ilar)こそ違うが、やはりイルアードより来た三人組が、不思議の犬フェルマク(?)(アイルランド語: Fermac)を連れてきて、フィアナの仲間入りをする。ここでは犬がルーのものとはされていないが、ワインを口から出す能力が部分的に合致する。フェルマクは、多彩色で、口からワインのほかにも金銀を吐き出すことができた。また、昼間は巨大な犬なのが、夜は膝乗りの愛玩犬ほどのサイズに縮小した。夜になってからの彼らの様子を除いてはならないという警告を守らなかった二人の見張りは、この小犬の尻尾が巻き上げた魔法の風に飛ばされ、お互いの剣が刺さって死んだ。
資料
- ^ 『トゥレンの子らの最期』O'Curry, 編訳 p.162/3: "a whelp of the King of Ioruaidhe, and Failinis is her name; and all the wild beasts of the world that she should see, they would fall down out of their standing; she is more splendid that the sun in his fiery wheels."
- ^ ≪来寇の書≫、古謡。以下に詳述
- ^ 古謡「奴らは三人組でやって来た..」。一部抜粋:O'Curry, Atlantis IV, 396-7 "The whelp of the King of Iruaidhe..that had been with Lugh of the Mantles.. Mead or wine would grow of it, / Should she bathe in spring water."。(古謡全文について一次資料を参照)
- ^ ¶319。Macalister, R. A. S., 編訳 Lebor gabála Érenn : The book of the taking of Ireland" Part IV,IArchive。散文部分の"cach lind lathir ina croccenn is fīn"に対する英訳が大雑把で、「毛皮(croccenn)」の言及が抜けているが、挿入詩では訳出されている"wine would be every water, a foundation of pledges which is put upon its skin."。
- ^ #一次資料を参照
- ^ Stern 編
- ^ Stokes 編 ZCP 3, p.432
- ^ ;「エスリウの子ルー」"Lugh mac Ethlenn"の転訛だと編者シュテルン(Stern)が指摘
- ^ Stokes 編訳(#一次資料を参照)
事典など
- Mackillop, James, Dictionary of Celtic Mytholgy (1998)
一次資料
- 『アイルランド来寇の書』
- (編訳)Macalister, R.A.S. (1941), “Part VII: Invasion of the Tuatha De Danann”, Lebor gabála Érenn (¶319, Poem no. LXVI) 4
- 『トゥレンの子らの最期』
- (編訳)O'Curry, Eugene (1863), “[A]oidhe Chloinne Tuireann”, The Atlantis 4
- 古謡「奴らは三人組でやって来た..」("Dám Thrír Táncatair Ille")
- (抜粋-4詩節のみ. 編訳). O'Curry, Eugene (1862), “Three Sorrows of Storytelling”, The Atlantis (London) 3: 396-7(犬名は抜けている。写本葉番号"Lismore fol.194"は誤。)
- (≪レンスター書≫版 LL 207b. 編訳 ドイツ訳), Stern, L. Chr. (1900), “Eine ossianische Ballade aus dem XII. Jahrhundert” (google), Festschrift Whitley Stokes zum siebzigsten Geburtstage: pp. 7-12
- (≪リズモア書≫版 Book of Lismore, fo. 153 b. 編), Stokes, Whitley (1901), [books.google.com/books?id=_hLEikZQOWYC “Notice to Festchrift Whitley Stokes”] (google), Zeitschrift für Celtische Philologie 3: 432
- 『古老たちの語らい』
- (編訳) Stokes, Whitley (1901), The Story of the Oakgrove of Conspiracy, “Acallamh na Seanórach” (google), Irische Texte 3: pp. 237-(アイルランド原文のテキストは 6083-6141 行を参照)。