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: 外見は「光り輝くような美少女」だが、性格は単純かつ短気。素の顔を見せるのは家族や親友など一部の者に対してだけで、普段は猫をかぶって良家のお嬢様を完璧に演じている(彼女によればそちらも素の自分とのことで、「演じている」という自覚そのものがない)。
: 外見は「光り輝くような美少女」だが、性格は単純かつ短気。素の顔を見せるのは家族や親友など一部の者に対してだけで、普段は猫をかぶって良家のお嬢様を完璧に演じている(彼女によればそちらも素の自分とのことで、「演じている」という自覚そのものがない)。
: 頭が悪いわけではないが興味がないことには関わらない性格のため、術者としての一般常識に欠けていたり、力尽くで物事を解決しようとする傾向にある。
: 頭が悪いわけではないが興味がないことには関わらない性格のため、術者としての一般常識に欠けていたり、力尽くで物事を解決しようとする傾向にある。
: 炎術師としての才能は申し分なく、12歳の時に一族の宝剣・'''炎雷覇(えんらいは)'''を継承している。実力は現宗主である父・重悟、和麻の父・厳馬に次ぐナンバー3(ただし和麻いわく、厳馬は炎雷覇を持った綾乃の十倍強いとのこと。宗主はそれよりさらに強い)。未熟であり強敵と単独で戦うことはできないまでも、知られている術者としては世界最強クラスであり、戦局を変える一手となるだけの力を有している(弱く見えるがそれは和麻や相対した敵が強すぎるだけであり、流也との戦いでは相性の悪い和麻に代わってとどめの一撃を打ち込み、さらにラピス戦では和麻に日本一の陰陽師と称される霧香でさえ援護の手を入れられない、凄まじい戦いを繰り広げている)。
: 炎術師としての才能は申し分なく、12歳の時に一族の宝剣・'''炎雷覇(えんらいは)'''を継承している。実力は現宗主である父・重悟、和麻の父・厳馬に次ぐナンバー3(ただし和麻く、厳馬は炎雷覇を持った綾乃の十倍強く、宗主はに強い)。未熟であり強敵と単独で戦うことはできないまでも、知られている術者としては世界最強クラスであり、戦局を変える一手となるだけの力を有している(弱く見えるがそれは和麻や相対した敵が強すぎるだけであり、流也との戦いでは相性の悪い和麻に代わってとどめの一撃を打ち込み、さらにラピス戦では和麻に日本一の陰陽師と称される霧香でさえ援護の手を入れられない、凄まじい戦いを繰り広げている)。
: その能力の高さを表すものとして「'''神炎'''」(後述)たる朱金の炎、「'''紅炎'''([[プロミネンス]])」(和麻が密かに命名)を持つ。が、任意で発動できないため、正確にはまだ神炎使いとは言えない状態である<ref>最初に使ったのは、1巻の京都での風巻流也との戦いの中。なお、5巻で煉に指摘されるまで、自身が「神炎らしきもの」を使えることすら気づいていなかった。</ref>。
: その能力の高さを表すものとして「'''神炎'''」(後述)たる朱金の炎、「'''紅炎'''([[プロミネンス]])」(和麻が密かに命名)を持つ。が、任意で発動できないため、正確にはまだ神炎使いとは言えない状態である<ref>最初に使ったのは、1巻の京都での風巻流也との戦いの中。なお、5巻で煉に指摘されるまで、自身が「神炎らしきもの」を使えることすら気づいていなかった。</ref>。
: 幼い頃から絶大な才能と、炎雷覇という最強の呪法具を持っていたため、強敵と相対したことがないことに加え何事も力付くでの解決を図ることが多い。和麻に身内殺しの疑惑がかかった時も、深く考えもせず「討ちますか?」と重悟に問うていた。更には、風牙衆を弱い連中と見ており、反乱した理由を「神を復活させて力を得るため」と勘違いをしていた(実際の目的は神凪に対する復讐だった)。また、弱かった頃の和麻については、見下したり虐めたりするわけでもなく、ごく自然に無関心という状態だった。
: 幼い頃から絶大な才能と、炎雷覇という最強の呪法具を持っていたため、強敵と相対したことがないことに加え何事も力付くでの解決を図ることが多い。和麻に身内殺しの疑惑がかかった時も、深く考えもせず「討ちますか?」と重悟に問うていた。更には、風牙衆を弱い連中と見ており、反乱した理由を「神を復活させて力を得るため」と勘違いをしていた(実際の目的は神凪に対する復讐だった)。また、弱かった頃の和麻については、見下したり虐めたりするわけでもなく、ごく自然に無関心という状態だった。
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; 神凪 厳馬 (かんなぎ げんま)
; 神凪 厳馬 (かんなぎ げんま)
: 声 - [[小山力也]]
: 声 - [[小山力也]]
: 和麻と煉の父親にして、現役では神凪一族最強の術者。宗主・重悟とは従兄弟にあたる。厳馬の方が年上(一巻では厳馬は「従兄」と書かれている)。背丈も和麻より長身。神炎使いの一人であり、「'''蒼炎'''」と呼ばれる蒼い霊気で染められた炎を操る。その強さは和麻が「炎雷覇を持った綾乃の倍強い」と断言するほど。風術を下術と蔑み、戦闘力こそ全てと考える良くも悪しくも典型的な神凪家の人間(ただし、そのことは本人も自覚している)。自分にも他人にも常に厳しい態度で接する。煉を大切にしており、妻との仲もいいらしい。後述にもあるように「勝つためには手段を選ばない」という一面を持っているほか、周りにとっては大事でも興味がないことには「それは大変だな」の一言で済ます。和麻と似ている部分を知った綾乃から呆れられている。
: 和麻と煉の父親にして、現役では神凪一族最強の術者。宗主・重悟とは従兄弟にあたる。厳馬の方が年上(一巻では厳馬は「従兄」と書かれている)。背丈も和麻より長身。神炎使いの一人であり、「'''蒼炎'''」と呼ばれる蒼い霊気で染められた炎を操る。その強さは和麻が「炎雷覇を持った綾乃の倍強い」と断言するほど。風術を下術と蔑み、戦闘力こそ全てと考える良くも悪しくも典型的な神凪家の人間(ただし、そのことは本人も自覚している)。自分にも他人にも常に厳しい態度で接する。煉を大切にしており、妻との仲もいいらしい。後述にもあるように「勝つためには手段を選ばない」という一面を持っているほか、周りにとっては大事でも興味がないことには「それは大変だな」の一言で済ます。和麻と似ている部分を知った綾乃から呆れられている。
: 和麻に対しては父親としての愛情を持っていたが、神凪一族を第一に考える思考と自分にも他人にも厳しい性格から、炎術の才能を一向に見せない和麻に一日の休みも与えないで修行させ、弟の煉とも滅多に会わせないなど、厳しく接することしかできなかった。力も度量もないのに謀略とパワーバランスで宗主になった頼道のようにはさせたくなく、和麻を実力で宗主につかせようとしてのことだった。
: 和麻に対しては父親としての愛情を持っていたが、神凪一族を第一に考える思考と自分にも他人にも厳しい性格から、炎術の才能を一向に見せない和麻に一日の休みも与えないで修行させ、弟の煉とも滅多に会わせないなど、厳しく接することしかできなかった。力も度量もないのに謀略とパワーバランスで宗主になった頼道のようにはさせたくなく、和麻を実力で宗主につかせようとしてのことだった。
: そのため和麻からは誤解されていたが、融通の利かない不器用な性格から誤解を解くことができずにいた。和麻を勘当したのも、息子を神凪一族という枷から解き放とうとしたためであり、彼なりの愛情であった。その後、風術師として大成した和麻のことを不器用ながら誇らしげにし、彼に対して「気が済むのなら土下座でもなんでもする、だから自分の息子として神凪家に戻ってこい」と言ったこともある(和麻も厳格な父親のこの発言には驚き、感じるものがあったようである)。やり直しがきかないと考えた和麻は神凪に戻ることを拒むが、父子間では事実上和解しており、互いに「親父」「息子」と認める関係に戻っている。親子のように守る守られるではなく、互いに一人の男として肩を並べる対等の関係に。
: そのため和麻からは誤解されていたが、融通の利かない不器用な性格から誤解を解くことができずにいた。和麻を勘当したのも、息子を神凪一族という枷から解き放とうとしたためであり、彼なりの愛情であった。その後、風術師として大成した和麻のことを不器用ながら誇らしげにし、彼に対して「気が済むのなら土下座でもなんでもする、だから自分の息子として神凪家に戻ってこい」と言ったこともある(和麻も厳格な父親のこの発言には驚き、感じるものがあったようである)。やり直しがきかないと考えた和麻は神凪に戻ることを拒むが、父子間では事実上和解しており、互いに「親父」「息子」と認める関係に戻っている。親子のように守る守られるではなく、互いに一人の男として肩を並べる対等の関係に。
: 和麻との対決で受けた負傷が治った後、神凪邸でぱったりと出会った和麻と失言の応酬を行い、最終的に和麻から勝負を仕掛けられて再戦となった。術を一切用いない「親子喧嘩」の勝負を展開し、屋敷を先に殴り倒すような勢いの勝負となった。体力差で和麻に押し切られてしまい、息子が膝を突いた父親に手を差し伸べるというシチュエーションを見せて綾乃を感動させた。が、その直後、和麻は厳馬を本気で殺そうとし、さらに厳馬は和麻の隙をついて「炎の精霊を宿した蹴撃」を放った。親子そろって「勝つためには手段を選ばない性格」だったことが明らかになり、綾乃を呆れさせていた。
: 和麻との対決で受けた負傷が治った後、神凪邸でぱったりと出会った和麻と失言の応酬を行い、最終的に和麻から勝負を仕掛けられて再戦となった。術を一切用いない「親子喧嘩」の勝負を展開し、屋敷を先に殴り倒すような勢いの勝負となった。年齢による体力差で和麻に押し切られてしまい、息子が膝を突いた父親に手を差し伸べるというシチュエーションを見せて綾乃を感動させた。が、その直後、和麻は厳馬を本気で殺そうとし、さらに厳馬は和麻の隙をついて「炎の精霊を宿した蹴撃」を放った。親子そろって「勝つためには手段を選ばない性格」だったことが明らかになり、綾乃を呆れさせていた。
: 戦いは重悟の介入で引き分けに終わったが、その後親子そろって素直ではない相手の評価を重悟と綾乃に聞かせていた。
: 戦いは重悟の介入で引き分けに終わったが、その後親子そろって素直ではない相手の評価を重悟と綾乃に聞かせていた。
: 綾乃とは「伯父と姪」以上の関係ではなく、互いに干渉のない薄い間柄だった。しかし、5巻では暴走した和麻を止める役割を綾乃に任せ、最後に微笑を向けている。「宗主の娘」でしかなかった綾乃の成長を認めていることがうかがえる。
: 綾乃とは「伯父と姪」以上の関係ではなく、互いに干渉のない薄い間柄だった。しかし、5巻では暴走した和麻を止める役割を綾乃に任せ、最後に微笑を向けている。「宗主の娘」でしかなかった綾乃の成長を認めていることがうかがえる。

2015年8月21日 (金) 12:59時点における版

風の聖痕
ジャンル 伝奇
小説
著者 山門敬弘
イラスト 納都花丸
出版社 富士見書房
掲載誌 月刊ドラゴンマガジン
レーベル 富士見ファンタジア文庫
刊行期間 2002年1月 - 2010年3月(絶筆
巻数 本編6巻、短編集6巻
アニメ
監督 坂田純一
シリーズ構成 関島眞頼
脚本 関島眞頼、久保田雅史大久保智康
吉村清子浦畑達彦
キャラクターデザイン 新田靖成
アニメーション制作 GONZO
製作 風の聖痕製作委員会
放送局 放送局参照
放送期間 2007年4月12日 - 9月20日
話数 全24話
テンプレート - ノート
プロジェクト ライトノベルアニメ
ポータル 文学アニメ

風の聖痕』(かぜのスティグマ)は、山門敬弘による日本ライトノベル。イラストは納都花丸富士見ファンタジア文庫富士見書房)より、2002年1月から2010年3月までに既刊12冊(本編6冊、短編集6冊)が刊行されたが、2009年に作者が死去したため[1][2]当作品は絶筆となった。

概要

第13回ファンタジア長編小説大賞〈準入選〉受賞作。応募時タイトルは『風に祈りを』。 迫力のある戦闘描写には定評があり、それで受賞したとも言われている。特にロボットモノのアニメのネタや、中国関係の武術仙道が盛り込まれている。

2007年にはアニメ化漫画化、ゲーム(テーブルトークRPG)化などのメディアミックス展開が行われた。

作者の山門敬弘は執筆中、白血病との闘病中であることを明かしており[3]、一時は退院したことを発表するなど[4]その経過を本作の単行本あとがきに記していた。しかし2009年7月20日に山門が病没し[1][2]、本作は未完のまま絶筆となった。死因は病死であるとのみ発表され、闘病生活との関係は明かされていない[1][2]。山門の死後には月刊ドラゴンマガジン2009年11月号で本作の追悼特集が組まれたほか[1]、その後2010年3月に出版された短編集の最終巻には、長編第7巻として準備中であった未完成の遺稿が収録された[5]

解説

構成

三人称形式で書かれ、たびたび他の人物視点に移動したりいわゆる「神の視点」で描写されるが、基本的には主人公一人を主体とした視点で進行する。 しかし巻数が進むに連れてヒロイン視点がメインになることが多くなってきた。 当初は主人公・ヒロイン間の仲が悪く、恋愛ごとに幼稚な綾乃は和麻に対する思いを「嫌いじゃなくて大嫌いだから気になっている」と無理やり納得させていた(綾乃は嫌いなタイプは無視するため、それは間違っているのだが)。 しかし段々と和麻の苦しみや強さを知って行き、彼の相棒に相応しくあることを意識していくようになる。 和麻からのアプローチも多くなり、綾乃に対して「宗主の娘」から「俺の隣に立つことを選んだ女」と認識を改める。 ストーリー最終巻となる第六巻では、二人の信頼が特に強く描かれている。

作風・特徴

ライトノベルという枠内にしては、人の死に触れるシリアスな場面が多い。敵も主人公も復讐のために関係のない人間まで殺すこともある。「復讐」を肯定するストーリーや意見が多く、「敵にどんな正義や正当性があろうと、世界がその行いを肯定したとしても、復讐のためならば関係ない」と和麻は述べている。基本的に戦闘シーンが多く、あっさり倒せる雑魚キャラクターから手強い大ボスまで登場して戦う。その巻でのラストボスは主人公一人では勝つのが難しいくらい強く、ヒロイン綾乃と弟・煉の3人で協力して戦うことが多かった。戦闘では異能のみの戦いだけではなく肉弾戦も描かれるため、非常に動きの激しい攻防シーンとなっている。作者の趣味か中国の武術や道具まで登場することもあり、主人公の過去も中国が大きく関わっていた。また同じく、「ロボットアニメ」のネタが含まれることもある。特に和麻はロボットが飛ぶという話題に食いつくシーンや、ネタ台詞を言うところまでまである。敵の最後には、今まで自分がやってきたことが報いとして返って来る様が多く描写されている。

なお、作中における魔術などの解説はたびたび地の文にて詳細が語られるが、アニメ版では和麻が仲間に知らせる形で語る形式となっている。

ストーリー

一般人には知られていないが、この世界には魔術を操る魔術師が存在している。その中には自然の力を司る精霊の力を借りて妖魔を退治する人間「精霊術師」も含まれる。

主人公・八神和麻は、炎術師の名門・神凪家に生まれながら炎術の才をまったく持たなかったために一族から追放され、日本を離れた。4年の月日が流れ、風術師となって再び日本の地を踏んだ和麻は、タイミングよく起こった神凪の術者の殺害容疑をかけられてしまう。

登場人物

※声はアニメ版の声優

主要人物

八神 和麻 (やがみ かずま)
声 - 小野大輔 / 渡辺明乃(子供時代)
本作の主人公で、世界最強の風術師。6月16日生まれ。22歳。身長176cm(推定)。O型。服装は主に黒を基調としたシャツなどを着ており、寒い時はマフラーや手袋までつけるなど防寒に厳しい。
炎術師の名門・神凪宗家の生まれで、本名は神凪和麻。後に師からもらった名前「八神」を名乗る。
スポーツから勉学、そして他の術法の取得に優れた優秀な人間だったが唯一「炎術の才能」だけがなく、母親から親戚たちまで疎まれる人生を過ごしてきた。
アニメでは、原作での地の文に書かれている知識を彼が述べる機会が多い。
風の精霊王と契約した世界唯一の契約者(コントラクター)。瞳に精霊王との契約の証である聖痕スティグマ)を有し、契約者としての能力を開放した時には瞳が蒼穹の色に染まる(これが精霊王につけられた印である)。
基本方針は「敵対するもの老若男女平等に皆殺し」。たとえ操られていようと、悲しい事情があろうと、自分に歯向かうのならば容赦はしない。
皮肉屋・自己中心・軽薄・怠惰と絵に描いたような人柄で、自身の損得が絡まなければ他人のために行動を起こすことなどまずありえない。
普段の言動の非情さ、非常識さの陰に、彼なりの信念や誠実さが見え隠れすることもある。あえて良く言おうとするならば「不器用で素直になれない」性格。周囲に対して非常に冷めた見方をし、他人のことをほとんど気にかけない一方で、信頼する相手には妙な義理堅さを見せることもある。過去、自分の命を一度だけでも助けてくれた大神操に対しては、神凪を敵に回してでも迷わず助けることを考えていた。
常識や限界を鼻で笑って打ち砕くほどの術者でありながら、自分の力を誇ったり鼻にかけたりはしない。相手を侮ることがどれだけ危険なのか、過去の経験で理解しているからである。
真正面から戦って十分に勝てる相手に対しても、卑怯なだまし討ちをしたり、小細工で嵌めるような戦い方を好み、気が乗らなければ平気で敵前逃亡したりもする。それは彼が自己過信を危険視し、敵対する相手の力を過小評価しないためでもあるが、相手を騙してナンボの小細工を好むという理由もある。これに関してはポリシーを持っており、相手を騙してナンボの小技を必勝の策と勘違いする輩に対する評価は辛い。
著しく勤労意欲に欠けているため、普段は楽でおいしい仕事(重悟から任された綾乃の護衛)ばかりして稼いでいるが、一度契約した仕事についてはやり方はともあれきっちり果たそうとする。その姿勢が災いし、結局は頻繁に厄介事に巻き込まれて苦労を強いられている。
当初「宗主の娘」としてしか見ていなかった綾乃のことも、1巻で綾乃に成長の余地を見たのをきっかけに、自分を怒鳴りつけて活を入れてきたり、正気を取り戻させてくれたことで段々と自分のパートナーにふさわしい存在として認めつつあるが、それをストレートに示すことはまずなく、誉めるにしても一言多かったり、からかって遊んだりとひどい扱いである(それだけ素直になれないということ。言葉にはしないが嫌なことがあったときには綾乃をからかう、欲望を増幅させる妖魔にあてられて綾乃に触れるなど、愛情めいたものを感じているようである)。
非常に優秀で多くの才能に恵まれながら、ただ「炎術師の家系に生まれながら炎術の才能が全くなかった」だけで不遇の幼少期を過ごし、分家の人間からは炎術で身体を焼かれ、見下されて育ってきた。母親からも愛情を向けられず、父親からは休む暇も与えないほど厳しい修行をつまされており、父・厳馬を「恐怖の対象」としか見ていなかった(ただし宗主からは優しく接していてもらっていたらしく、もう一人の父親のように思い、綾乃に対しても「はとこ」の感情のほうが強いようである)。
そしてついに18歳の時に父に勘当され実家を追われた。きっかけとなったのは当時12歳だった綾乃との「継承の儀」。最強の呪法具である炎雷覇の所有権および次期宗主の座をめぐって対決するも、炎術を使えない和麻では歯が立たず敗北。実は厳馬に炎雷覇を継がせる意見のほうが主流だったが、厳馬が辞退し、和麻と綾乃の対決をゴリ押ししたためこうなった。
勘当された後は、逃げるようにして香港へ渡り、そこである事件に巻き込まれて風術師としての才能を開花させる。高校中退(ドロップアウト)しているが戸籍を改ざんしており、「八神和麻」は高校卒業を果たし、身よりもなく孤独に生きているとされている(それほど神凪家とのつながりを絶ちたかった心理の表れである)。
風術だけではなく体術に関しても超一流で、相手の力を利用したカウンター殺法や不自然なくらい自然すぎる動きで相手に警戒心を抱かせず動くことができ、厳馬との殴り合いでも微かに上回っていた。
綾乃以上の体術を誇りながら、戦法は風の刃による遠〜中距離での戦いを得意とする。そのため綾乃からは腹立たしく思われている。さらに一時期修行した仙術にも才能があるのだが、当人は力の制御法に、と学んでいただけだったので精霊魔術の下地として応用しているにすぎない。作中で仙術に対する知識を披露するシーンがあるが、和麻自身が仙術を使うことはない。
風の精霊と同調している時は、身体の方が呆然とした状態になるため周囲からは「気合が感じられない」と誤解されることが多い。実際は、トラックが突っ込んでこようと、ミサイルが打ち込まれようと動じない。
四年前、恋人であった翠鈴(後述)は彼にとって特別な存在であり、彼女を守れなかった自分への失望と復讐に捧げた暗い過去が彼に深い影を落としている。アルマゲストの刺客・ラピスの正体が、翠鈴の残留思念から創造されたと知った時は、彼女と、その造物主であるヴェルンハルトを抹殺しようと奮起していた。利用できるものは利用し、たとえ味方でも、一般人でも犠牲にすることはいとわず、正気を失った状態に陥っていた。しかし、綾乃を通じて「大切なものはひとつではないから、過去のために現実(いま)を切り捨てるわけにはいかない」と気づき、普段の自分を取り戻した。
主な戦法は、風の刃による先手必勝の一撃。不意打ちが通じない強敵相手には、風の刃の乱れ打ちや台風を万分の一に凝縮した一撃を放つ。ほか、高濃度に圧縮された空気の塊を放つ「大気の拳(エーテル・フィスト)」がある。殺傷能力は薄いが、喰らえば顔面を潰す威力がある。更に連射(ラッシュ)が可能なため複数の相手を殺したくないときには便利(喰らった人間は確実に病院送りになるが)。
また、ダウンバーストを発生させることで相手の目を晦ますということも可能。特に最強の風術師・風巻流也との戦いでは5本の竜巻を全て粉砕するほどの破壊力を生み出した。そのせいで山の景観が変化し、一面の荒野と化したため綾乃からふたりとも化物呼ばわりされた。
風を纏うことで長距離ジャンプ(飛翔)したり、光の屈折率を変えて自身を透明化させたりすることも可能。他にも空気の力で攻撃を遮断する「風の結界」が使える。神凪分家の術者数十人から一斉に放たれた炎を簡単に防いだり、綾乃の炎雷覇の一撃を何度もしのいだりしている。ただし、厳馬には小手調べの炎で簡単に破られている。
奥の手として契約者(コントラクター)の力を解放し、山ひとつ分の風の精霊を使役することが可能。ただし、この状態は五分以上(飽くまで推測)維持することができず、無理をすれば脳が焼ききれてしまうという欠点がある。本当に奥の手のため、流也や是怨など、本当の強敵相手にしか使用することはない。使用後は和麻自身戦闘不能になるほど負担がかかるので、基本的に一度の戦闘中に二度の使用はありえない。
本作においてどのような経緯で契約者としての力を得たのかは不明。また炎術師ではなく風術師としての才能があることについては深く考えず、「変り種」程度にしか考えていない。しかしこの力に目覚めたのは、「自分が殺されそうになった時」。「愛する者を助けようとした時」ではない。隠しようもない命の優先順位は今でも和麻の心に影を落としている。
神凪 綾乃 (かんなぎ あやの)
声 - 藤村歩
本作のヒロイン。神凪家宗主の一人娘で、次期宗主と期待されている女子高生。5月12日生まれ。16歳。身長162cm。B型。和麻のはとこに当たる(父親同士がいとこ)。
外見は「光り輝くような美少女」だが、性格は単純かつ短気。素の顔を見せるのは家族や親友など一部の者に対してだけで、普段は猫をかぶって良家のお嬢様を完璧に演じている(彼女によればそちらも素の自分とのことで、「演じている」という自覚そのものがない)。
頭が悪いわけではないが興味がないことには関わらない性格のため、術者としての一般常識に欠けていたり、力尽くで物事を解決しようとする傾向にある。
炎術師としての才能は申し分なく、12歳の時に一族の宝剣・炎雷覇(えんらいは)を継承している。実力は現宗主である父・重悟、和麻の父・厳馬に次ぐナンバー3(ただし和麻曰く、厳馬は炎雷覇を持った綾乃の十倍強く、宗主は更に強い)。未熟であり強敵と単独で戦うことはできないまでも、知られている術者としては世界最強クラスであり、戦局を変える一手となるだけの力を有している(弱く見えるがそれは和麻や相対した敵が強すぎるだけであり、流也との戦いでは相性の悪い和麻に代わってとどめの一撃を打ち込み、さらにラピス戦では和麻に日本一の陰陽師と称される霧香でさえ援護の手を入れられない、凄まじい戦いを繰り広げている)。
その能力の高さを表すものとして「神炎」(後述)たる朱金の炎、「紅炎プロミネンス)」(和麻が密かに命名)を持つ。が、任意で発動できないため、正確にはまだ神炎使いとは言えない状態である[6]
幼い頃から絶大な才能と、炎雷覇という最強の呪法具を持っていたため、強敵と相対したことがないことに加え何事も力付くでの解決を図ることが多い。和麻に身内殺しの疑惑がかかった時も、深く考えもせず「討ちますか?」と重悟に問うていた。更には、風牙衆を弱い連中と見ており、反乱した理由を「神を復活させて力を得るため」と勘違いをしていた(実際の目的は神凪に対する復讐だった)。また、弱かった頃の和麻については、見下したり虐めたりするわけでもなく、ごく自然に無関心という状態だった。
4年の時を経て和麻と再会するが、風牙衆の姦計によって和麻が「叔父を殺した」ように見せかけられたため、彼を非常に憎悪していた。疑いが解けた後もなにかにつけて彼に噛み付いている。ただしこれは「自分を歯牙にもかけていない」和麻の態度を見抜き、気を惹くための行為だったと自覚している。4年前は意識にすら上らせなかった相手が強大な存在感を持つ術者となって戻り、今度は自分が無関心を貫かれてしまっていた。
自分より弱い相手としか戦ったことがないため、敗北の恐怖で自分の戦い方を忘れたり、弱気になってしまったりという欠点がある。しかし、同格以上の相手との戦いを得て、精神的に成長を果たしている。弱気になると力が弱くなる反面、爆発力自体は物凄く高く、一度やる気になれば宗家に匹敵する耐火能力を持つ相手でも、その炎には抗えない。
和麻と組むようになってからは、それまでと桁違いの強さの相手と戦うことが多くなり、飛躍的な成長を遂げている。当初、和麻の勤労意欲の無さへの反発や彼との力の差への引け目から、彼を嫌っていたが、共に過ごす内に彼の想いに触れ、徐々に惹かれ始めている。が、未だ本人に自覚は無く、つっこまれては必死に否定している。
2巻のヴリトラ戦までは和麻に頼られることはなく、「守るべき対象」としか見られていなかった。重傷を負ってまで一人で戦おうとする和麻を泣きながら怒鳴りつけ、「守られるだけのお姫様」であることを否定。和麻が戦えるようになるまで回復する時間稼ぎをなんとかやり遂げ、以後は彼から「俺の隣に立つことを選んだ女(相棒)」として見られ、ないがしろにされることはなくなっている。さらに和麻を正気に戻す、強敵に対しては前衛(フォワード)としての役目を全うしさらに和麻を『一人にさせてやらない』など、少しずつ和麻にとってその存在は重きを増し、「手に入れる存在」としてツバをつけられ、彼の『現在』となりつつある。
和麻にからかわれるたびに(割と過激な)突っ込みを入れるなど半ば漫才のようなやりとりを繰り返している。今まで何度か和麻を相手に戦ったこともあるが、傷一つつけられていない(最強の技である「紅炎」でも受け流されて、和麻を衝撃波で吹き飛ばしただけだった)。ただし、勝利したことはある。
1巻の時点での最強の必殺技は、炎雷覇を地面に突き刺し、対象を炎の球体に閉じ込め焼き尽くす「覇炎降魔衝(はえんごうましょう)」(ただし、これは流也戦のみにしか使用しておらず、以後は和麻のアドバイスで炎雷覇による一撃重視の攻撃に切り替える)。
2巻では新たに技を習得し、炎の温度を上昇させることでプラズマ弾を発射することが可能(主に和麻への突っ込みで使用)。
最強の技として、自身の集中力が向上した時のみ無意識に放てる「紅炎(プロミネンス)」がある。重悟や厳馬も用いる神炎の一種であり、さすがの和麻もこの技の前では完全に破壊力を殺しきることができず、炎自体は凌いだが衝撃波によって吹き飛ばされ気絶してしまった。が、すぐに目を覚まし綾乃と対峙。風術を使わず体術だけで一瞬で綾乃を負かしている(5巻より。ただし「借りは返す」との言葉から『綾乃が勝った』ことは認めていたようである)。
5巻で和麻と戦った際には、厳馬と同じ戦い方で和麻の風の刃を破ったり、和麻以上の錬度と精度の精霊術で押し返したりなど大きく成長を果たしている。
アニメ版ではパンチラシーンが多く、お色気担当となっている。原作ではそういった露骨な描写は殆どない。
神凪 煉 (かんなぎ れん)
声 - 森永理科
和麻の実弟で、中学生(初登場時は小学生)ながらに浄化の炎の最高位・<黄金の炎>を操る炎術師。7月15日生まれ。12歳。身長155cm。O型。服装は学生服やダッフルコートなどを着込んでいる。
兄・和麻とは違って炎術の才能に恵まれており、両親からも可愛がられている。本人は和麻を尊敬しており、戦闘時の駆け引きなど、和麻を参考に行動することも。和麻の方も、弟に対しては嫌悪感情がなく、兄弟仲は非常に良好。
女の子に間違われることもある美少年で、和麻を「兄様」、綾乃を「姉様」と慕う弟属性バリバリの性格だが、中身はしっかり者。周りにレベルの高すぎる術者が多いため、自分には才能がないのではないかと悩んだときもあった。炎雷覇を持たないこともあって術の出力は及ばないが、微細なコントロールなどの技術に関しては綾乃より上で、3巻からは人間に憑依した妖魔だけを焼き尽くすことができるようになった。温和な性格と、内に秘める嚇怒によって順調に一流の炎術師への階段を上り始めている。クラスメイトの花音と達也によく振り回されている。なにより頭も良く、運動も出来て、しかも顔も良い。服装が男物でなければ、周囲からは可憐な少女だと勘違いされてしまうことがある。事実、柊太一郎にはボーイッシュな服装でも美少女と勘違いされてしまった。
当初は弟属性バリバリのか弱い少年として描かれることも多かったが、次第に精神的な成長を遂げ、芯の強さを手にしていく。いい意味でも悪い意味でも和麻に(というよりも、兄弟そろって父親に)似てきており、5巻の最後ではうっかり綾乃を怒らせた和麻に助けを求められても、「その場所だと家が焼けるから、塀のほうに移動してください。兄様なら大丈夫です、多分」と平然と見捨てたり、6巻で和麻がくだらないジョークを言った時は父親と同じ種類の冷たい眼差しで見据えたりしていた。
1巻、2巻では弟属性が強く出ているが3巻の終盤で激的な成長を果たし、「睨んでも幼児も泣かせられない眼差し」から「13歳の不良を失禁させる気迫」を放てるほどに成長した。
主な戦法は、黄金の炎を周囲に拡散、もしくは津波のように放つというもの。爆発による衝撃波だけを対象にぶつけ、殺さず戦闘不能にするという技も持つ。
ヴリトラ戦では和麻の風の刃を真似て、炎を光線のように凝縮して放っていた。
威力重視で戦う綾乃と比べ、煉の炎は多彩に変化を遂げる戦法を用いる。ただし、是怨戦では炎雷覇を持った綾乃をも凌駕する炎を放っていた。
戦闘の経験にかけることから、戦いの駆け引きには弱いという弱点があるが、知勇で克服して大きく成長していった。後に超一流の術者でなければできない「任意のもののみ燃やす」ことが可能となり、これがまだできない綾乃からは嫉妬されてしまう。

聖凌学園

皇居の堀から半ば近くに立てられた私立の学園。通っている人間の大半が金持ちか頭脳明晰な少年少女ばかり。裏口まがいの悪政は行われてはいない様子だが、 近年進む少子化故に金はいくらあっても足りないのが現状なため、よほど問題を起こさない限り大口の支援者の生徒は退学に処さない模様。 なお、理事長は魔術の世界のことを知っており、綾乃に依頼したこともあった。

高等部生徒

久遠 七瀬 (くどう ななせ)
声 - 伊藤静
綾乃と同じ学園に通う綾乃の親友。陸上部所属。身長167cm。癖のないショートカットで芯の強い、中性的な印象のあるスポーツ美少女。女子からの人気が高く、彼女にタオルひとつ渡すのも争奪戦になるほど。ヴァレンタインにはチョコをもらうタイプの少女。
原作では当初、由香里ともども綾乃の炎術について何も知らなかったが、アニメ版では最初から綾乃が術者であることを知っているという設定。
基本的にクールでやや男口調だが、気に入ったものには素直に興味を示す性格。服を試着したり、ラッパを「ぱふー」と何度か吹いたり。
常に冷めて諦観した立場を取っており、由香里に振り回される綾乃を遠くから身守っている。しかし、あまりにも行き過ぎた行為を由香里が行った時は内心で非難したりはする(それでもかかわろうとはしない)。
4巻では内海浩介の陰湿なセクハラに業を煮やし、彼を踏みつけたりカメラを蹴り飛ばして壊したりと制裁を与えた。その後、妖魔に寄生されて異能に目覚めた内海に逆恨みを受け、標的にされてしまうが(由香里から渡された違法改造の遠隔用)スタンガンで轟沈するという離れ業をやってのけた。しかし、さらにその後、より強力な異能を手にした内海によって拉致され、自我を持たない操り人形にされてしまう。ボンテージ風のエロティックな衣装で常に内海の側に立たされていた。が、後述にもあるように既に内海は性欲を持たなかったため手出しはされなかった。
短編では淫魔の亜種に憑依されてしまい、周囲の人間の願望を表出させる体質にされてしまう。男子生徒から熱烈すぎる愛の告白を受けたり、顧問教師から行き過ぎた熱血指導をされそうになったり、久米喜十朗に隔離された際には口移しで聖水を飲まされそうになったりなど、なかなかの不幸っぷりを披露していた。
作者曰く「お気に入り」とのことだが、なかなか活躍の場を与えられないことを悔やんでいた。
ピクシーたちにスカートをめくられた際は、ストライプ柄の下着をはいていた。
篠宮 由香里 (しのみや ゆかり)
声 - いのくちゆか(猪口有佳名義)
七瀬と同じく、綾乃の親友の一人。身長157cm。ホワッとした雰囲気のおっとり系美少女。お嬢様然とした外見と裏腹に、警察以上の情報収集能力(ネットワーク)と行動力を持っている。長編では綾乃のサポートとして、短編集ではトラブルメーカーとして活躍する。とにかく面白いことには首を突っ込んで場を引っ掻き回すため、綾乃からは親友関係を疑うほど呆れられたりもする。
何度か魔術関係の道具や違法改造されたスタンガンなどを調達したことがある。太一郎からも「何者なんだろう?」と疑問をもたれていたが、結局明かされることはなかった。
霧香とはすぐに仲がよくなり、「利用できるものは何でも利用する」という気のあった奇妙な師弟関係を築いていた。原作では内海に拉致された七瀬の行方を探すため資格者の集会場に単身で乗り込むも、内海に見咎められて拉致されてしまい、七瀬同様に洗脳されてしまう。その直前にヴェルンハルトと会話しており、大胆な行動力を評価されていた。
ピクシーたちにスカートをめくられた際は、外見からは想像もできない大人びた柄の下着をはいていた。
柊 太一郎 (ひいらぎ たいちろう)
綾乃の後輩で、入学早々綾乃に告白するも瞬時に玉砕。しかしその後もめげることなく綾乃に想いを寄せる。その一途さゆえに由香里におもちゃにされている不幸な少年。和麻をのことを綾乃をたぶらかすダメ男とみなして、常に反発している。これは由香里によって湾曲された真実を刷り込まれてしまったが故に生まれた先入観も原因となっている。本編には絡まないが、短編集で活躍する。
運命的な出会いを果たした煉を見て美少女と勘違いしてしまい、男気を発揮して彼と共に妖魔と戦うという度量を見せた。しかし、戦闘の終わりに煉が男だったと発覚し、真っ白になって燃え尽きてしまった(凄まじい勘違いに和麻も綾乃も爆笑していた)。なかなか恋心が報われないという性質である。
小柄で綾乃と殆ど変わらない身長だが、男子は強くなければならないという信条から空手を習っている。一対一のケンカでは、まず負けない実力を持っている。
最後の聖痕にて、由香里の助言を受けて綾乃との初デートにこぎつけたが、不運がたびたび重なって綿密に練ったデートプランは頓挫してしまった。しかし、事故で綾乃に殴られてしまったことで看病を受け、綾乃に抱きしめられる形となりささやかな幸せを感じていた。
楢橋 悠香(ならはし ゆうか)
「聖凌のパパラッチ」と呼ばれる新聞部員。学園のアイドルである綾乃の恋バナに目をつけ、和麻との関係を調べ上げ、記事にしようとしている。結果的に和麻と綾乃が普通の人間ではないことを知るが、そのせいで和麻に殺されそうになった。
綾乃のおかげで助かった後は、たまたま撮れた綾乃と和麻のツーショットを掲載し、号外として学園に配っていた(彼の顔はうつらないようになっていた)。
須藤 響子(すどう きょうこ)
最後の聖痕を飾る番外編のラストボス。『風の聖痕NOIR 炎の喚び声』に登場。
聖凌学園一年D組の女生徒。長い髪を二つのおさげにして腰まで轟かせ、眼鏡をかけた地味な女の子。
不良少年たちから暴行を受けた際に、炎術師として目覚め、不良たちを殺害。それからは自分を陵辱した連中と近い格好をした者を狙っては、人体発火を起こして殺害して周る。そして最後には自分自身も焼き尽くし、穢れた身体を浄化しようと考えていた。
実は、綾乃と同じくらいの才能を持った成り立ての炎術師だが、意志が弱く、術式を行使し切れていない。精霊に依存して力を振り回しているため、威力そのものは高いが制御能力はほとんどない。
殺人が露見し、逮捕に至ろうとした時は暴走を開始し、聖凌学園の校門を巨大な火柱で包み込んでしまった。咄嗟に綾乃が炎で押さえ込んだが、徐々に荒れ狂う力に押し返されていった。しかし、所詮は技術も制御もない荒々しい力に過ぎない。力に振り回されるだけの素人と、力を使いこなす玄人では勝負にならず、最終的には綾乃が押し切り、彼女との対話に成功する。
その説得を通じて綾乃に心を開き、初めて心から頼ることのできる先輩を見つけた彼女は、精霊に対する依存をやめてしまった。その結果、術式の制御力を失った響子は精霊によって、今まで殺してきた者たちと同じように灰も残らず焼き尽くされるという最後を辿った。
斉藤 洋子(さいとう ようこ)
綾乃のクラスメイト。ただ友人というわけではなく、飽くまでもクラスメイトというだけの関係。そのため余所行きの態度で接されたが、和麻の話をした際には不自然なほど不気味な笑顔で接されてしまった不幸な少女。
和麻(実際は偽物の白和麻)に祖母を暴走トラックから助けられ、そのお礼をしたいという話を綾乃にするが、彼女は「人違い」の一言でバッサリ切り捨ててしまう。
和麻のことを「レベルの高い男性」と賞賛しており、すっかりほの字になってしまった模様。
杉野 美恵(すぎの みえ)
4巻のみに登場。テニス部の二年生で、次期部長の女子生徒。七瀬とは仲がいい。
毎回のように部員を盗撮する内海に業を煮やしているが、彼は「芸術のため」と言い張ってただの盗撮を正当化してしまうため手が出せないでいた。七瀬によって逆襲のきっかけを与えられ、部員たちはこぞって内海を暴行。ただし、美恵は金属バット一発殴っただけで手出しをやめて、内海が「本当にヤバくならないか」見守って止める役に回っていた。しかし、後日、妖魔の力を得て呪術を身に着けた内海の呪いに罹り、高熱を出して寝込んでしまう。以後、登場しなくなる。
金属バットには名前がついており、「粉砕バット」と呼ばれ、代々の部長候補に継承される模様。
藤堂 薫(とうどう かおる)
神凪綾乃(自称)公認FCの会長。一途に神凪綾乃を思う少年だが、その見た目通りゴツくムサく、台詞も見た目を裏切らない番長的存在。
しかし、実際はかなりのやり手でもあり、あの手この手で会員を増やして勢力を拡大していっている。綾乃のストーカーを探しに情報収集していた太一郎と話をした際に、彼に目をつけて綾乃の写真などを見せ、あっさりと釣り上げて会員に引き込んでしまった。以後、登場しなくなる。
会員の大半はまともで純粋な綾乃ファンだが、一部はそうでもないらしく、綾乃からはその存在を呆れられている。
ちなみに挿絵によれば太一郎が手にしていた会員証のナンバーは「423」。つまり423人も会員がいるということになる。

中等部生徒

鈴原 花音 (すずはら かのん)
声 - 辻あゆみ
煉の同級生で煉にベタ惚れしている美少女。煉とは5ミリも身長が変わらないが、女の手管で煉を籠絡しようとするなど、精神は子供とは言えない。さらに、強力な格闘センスを持ち、恋のライバルである芹沢達也を圧倒する。経緯は原作とアニメ版で異なるが、煉の能力を目の当たりにして惚れ直す。主に短編集で活躍。
和麻の人間性を賞賛しており、「どんな時でも余裕を見せられる冷めた態度」を物凄く気に入っている。煉の兄だから、というわけではなく、純粋に彼の性格を好んでいる模様。「煉くんも将来、和麻さんみたいになるかもしれないじゃない」とまで言ってしまうほど。
朧の計らいで芹沢か花音か、どちらかしか助けられない状況で煉がどちらを助けるか。というので煉の愛を確かめようとした。結局、煉は花音を救ったが、それは「芹沢くんは体が大きいから、兄さまに任せて自分が花音を助けた方がいい」という恋愛感情とは無縁のものからだった。その後、煉から「大切な人がいる」と告げられるが、花音は「恋する乙女を舐めないで」と笑顔で一蹴し、「煉が自分を好きになってくれそうだから好きになったわけじゃない」と抱きしめ、煉の思いを受け入れた上で自分の思いを貫こうとする姿勢を見せた。
芹沢 達也 (せりざわ たつや)
声 - 福山潤
煉の同級生で、自称・親友。花音と煉の奪い合いを繰り広げる。弱冠12歳にして身長180cmを超え、それに見合った筋力を持つ少年。その体躯は、大人三人がかりでやっと持ち運べるほど。力も強く、同級生を片手で持ち上げたばかりか放り投げてしまった。
主に短編集で活躍。4巻では煉、花音と一緒に妖魔憑依実験の騒動に巻き込まれてしまう。
体育以外は問答無用の劣等性だったが、必死の勉強で煉と共に「聖凌学園」への入学をかなえた。一部では「愛の奇跡」と呼ばれている。
花音とは対照に、和麻のことを「軽薄で気合の感じられないナンパな兄ちゃん」と思っている。
当初は煉に対し、必要以上に反発していたが、それは思春期の男子が好きな女の子をいじめるようなもの。内心では煉と親友になりたいと願っていた。
吸血鬼の根城となっていたボロ屋敷に探検しに行った際、洗脳され操り人形とされてしまう。そして、芹沢を使って花音と煉を屋敷に招き入れる。その後、吸血鬼は討伐され、芹沢も正気に返る。煉を危険な目にあわせてしまったことを悔やむと同時に、自分の本心をさらけ出し、それをきっかけに煉と(自称)親友となる。同時に花音とは煉を取り合う宿敵という関係を築き上げた。
朧の宝貝を盗み出した楊によって洗脳され、朧を倒すための操り人形にされてしまう。宝貝の両刃の直刀を授けられ、接近戦で朧をひきつけるという囮役にされた。朧には叶わず、あっけなく入院確実のダメージを負わされて気絶してしまった。翌日にはほぼ完治しており、普通に動いていた(いわく、高位の地術師並みの自然回復力とのこと)。
高松 隆志(たかまつ たかし)
煉の同級生の少年。兄である清志と同じく、尊大でやや中二的な性格。変に格好つけたりしている。
美少女である花音に目を付け、なれなれしく「かのんー」と迫ったがまったく相手にされず、彼女から寵愛を受ける対象である煉に嫌味を言ってしまう。そのせいで花音からコキ下ろされて隆志は逆上。花音に殴りかかったため煉の怒りを買ってしまい、胸倉をつかみあげられた恐怖によってクラスメイトたちの前で失禁するという醜態をさらす。その後、超能力者(実際は妖魔に憑依されているに過ぎない)である兄・清志にすがり付いて復讐を開始。しかし、あっさりと兄は煉に敗北し、兄に見放され、結果的に兄弟揃って逃げ出してしまう。以後、登場しなくなる。

教職員

平井 柚葉(ひらい ゆずは)
和麻の高校時代の恋人だった女性。眼鏡をかけた理知的な美女で、教師を目指して母校である聖凌学園に教育実習生としてやってきた。しかし、妖魔を取り込んで強化させ、暴走させるという本人にはまったく役に立たない異能の持ち主。それで霧香に目を付けられ、執拗に勧誘を受けている。柚葉にはその気はなく、教職の道を歩みたいと思っている(だが霧香に目をつけられた以上、それが実現する可能性は限りなく低いと綾乃には見られている)。
当時、手当たり次第に異性と交友関係を結んでいた和麻に告白され、恋人同士となる。そんな男と付き合った理由としては、引っ込み思案で男と付き合ったことがなく口説かれて舞い上がってしまったからだと本人は語っている。つまりは男を見る目がなかった。
互いに同じような境遇にあったため、傷を舐め合うような関係だったと理解しているが、突然自分の前から姿を消した和麻を怨んでいる(失恋のショックで受験にも失敗した過去があるため)。
しかし、体質のせいで妖魔に取り付かれたのを和麻に救ってもらった際に、「あの時、互いの傷を舐めあう関係だったとして、その相手がお前でよかったと思っている」と告げられ、多少なりとも和麻への愛情を芽生えさせてしまった模様。今では綾乃に少なからず敵意を持っている。
綾乃を敵視していたが、それは当時の和麻を知る故の誤解だったことが後に明かされた(既に綾乃と和麻は肉体関係にあると勘違いしていた)。
山南 憲忠(やまなみ のりただ)
四十五歳。生活指導の担当をしている教師。一部の隙もない七三わけと銀縁眼鏡、笑った顔を誰も見たことがないという仏頂面の男性。異性を篭絡させる綾乃の笑顔を前にしてもまったく表情を変えなかった。
生徒の人気取りよりも、教師としての本文である「校則を守らせる」ことを重視しており、謹厳実直を絵に書いたような性格をしているため学園一の嫌われ者と囁かれている。なお、綾乃も彼を嫌っている。
過去、無差別に異性と交際していた和麻の不埒な現場に踏み込んだことがあり、更に高校中退していることから人一倍彼に目をつけている。しかし、実際は生徒を守るためなら我が身を賭しても行動する人物であり、和麻は私情にとらわれずそんな彼の性格を見抜いていた。逆に、綾乃からは「無制限の権力を持たせたらスカート丈が1センチでも短い奴は死刑」というような人間だと思われている。生徒に規律を守らせ、未来へ導く「大人」という人物。
中退したとはいえ元生徒である和麻の姓が変わったのを知って「結婚でもしたのか?」と問うが、戸籍を弄くっただけだと聞いて侮蔑を露にしていた。
桜井 雅司(さくらい まさし)
現国教師の男性。前述の山南とは対称に、親しみやすい人柄で生徒からの人気が高い。綾乃も彼に好意を持っていた。
しかし、実際は教師としての職務を放棄し、生徒の人気取りだけを考える人物であった。自己保身のためにかつての教え子だった和麻を罵って罪をかぶせようとする言動を取った。既に和麻にはその人柄を見抜かれており、「あいつ、まだいたんだな」と嫌われていた。
告白してきた女子生徒と付き合い始め、ホテルへ連れ込んだところを別の女子生徒たちに踏み込まれて不純異性交遊の証拠を写真に撮られてしまう。実は告白自体が彼を罠にかけるための餌であり、それからはテストの採点を書き換えることなどを要求され、挙句の果てには金銭までせびられてしまう。妖魔を宿したことで復讐を開始し、次々と女子生徒たちを昏睡状態に陥れていった(ただし、被害者たちは彼を陥れた女子たちなのかは不明)。綾乃に本性を見抜かれて、幻滅されると同時に浄化の炎で妖魔を焼き払われてしまった。その後は霧香たちに連行され、相応の償いをさせられる模様。
田島 昌久(たじま まさひさ)
化学教師であり、陸上部の顧問を務める男性。細面のとおり、スポーツマンより研究者といった方が正しい容姿をしている。運動能力は大きく下回っているが、その分スポーツ科学への造詣が深く、理論的な指導をしてくれるため部員からの信頼は厚い。
友情だの根性といった精神論は口にしないが、実際は熱血で強引な指導をしたいという願望を宿している。そのため七瀬に取り付いていた淫魔の影響を受けてそれを表出させてしまい、七瀬を無理やり指導しようとしたため綾乃に殴り倒されてしまった。
理事長
学園の怪奇現象関係の解決を綾乃に依頼する人物。名前も性別も不明のモブキャラ的な立場で登場した。
ある程度の地位を持つ人間なら、神凪などの術者の存在を知っている。その見本のような人物。

警視庁特殊資料整理室

警察によって妖魔に対抗するために結成された日本唯一の公営退魔組織。様々な異能を操る人間たちによって構成されているが、ほとんどが妖魔との戦闘に向かない能力のため、有名無実の見本として扱われている。わざわざ長々として役割がわかりにくいのは、退魔組織であることを隠すためでもある。「死霊」と「資料」をかけたものという噂もある。公的な立場としては刑事だが、刑事として訓練をしていないので尾行はあまり上手くない。2巻では様々な術を駆使して操の居場所を探したりしていた。メンバーの充填は、霧香や和泉のように術者から引き抜かれるケースもあれば(ちゃんと試験は受けて公務員の資格を得ている)、新人警察官から素質を見出して強制入隊させるケースがある。風牙衆滅亡後、神凪は情報収集を特殊資料整理室に頼っており、整理室も実績を作るため、何かあれば神凪宗家に退魔を依頼し情報提供している。そのため両者の関係は非常に良好と言える。

橘 霧香 (たちばな きりか)
声 - 大原さやか
「特殊資料整理室」の室長(二代目)。階級は警視。年齢不詳の20代半ばの美女。
陰陽道の名門・篁(たかむら)一族の分家・橘家の陰陽師。本家を凌ぐ実力の持ち主であったために疎まれ、更に他流の術を節操なく取り込んでいたため、宗家の老人達から反感を買っていた。結果、特殊資料整理室の室長に就任という名目で追い払われてしまった。
「利用できるものは何でも利用する」のが信条で、そのため流派のプライドを持たず、他流の技だろうと平気で利用する。それが霧香の強みともいえる。そこが由香里と共通するため、奇妙な師弟関係を築いていた。
黒のGT-Rを愛車として使用しているが、これは整理室の公用車である。しかし、誰にも決してステアリングを握らせず、実際には公費を乱用して好き勝手に改造しまくった公私混同の見本のような車だったりする。
基本的な戦い方は、呪符を媒介に術を発動させるというもの。人間に憑依した悪霊や微弱な妖魔を祓うことが可能だが、呪符がなければ術が発動できないのが難点。そのため人海戦術や長期戦に弱い。しかし術者としての力量は本物で、世界一の魔術師と謳われるヴェルンハルト・ローデスの張った大規模な結界を、不完全な状態だったとはいえ一角だけ破壊するという実力を見せた。和麻曰く「今の陰陽師で霧香より腕の立つ奴はいない」とのこと。
ほか、陰陽道では用いることのない「早九字」という呪法を習得している。右手で空を切るだけで素早く術を起動させられるだけではなく、片手の自由も利くという利点がある。
ロナルド・ウォレスによって死霊に取り付かれ、身体能力の増した人間を適当に捌いていたことから、体術もなかなかの腕前の模様。
研修時代の2年前ロンドンで和麻と出会っているが、当時の和麻は文字通り復讐の鬼であり、そのあまりの力と非情さに恐怖しか感じなかったという。現在の和麻とは仕事の関係もあって仲が良く、食事をしたりデートしたりする(和麻とは「休憩(深い意味はない)のためにホテルに入ったりする」間柄)。
当初は綾乃から「無能だったから閑職に左遷された女」と見られていたが、和麻から事実を聞かされ、また彼が術者として賞賛し、プライベートでもしばしば一緒に行動することから、嫉妬する綾乃からは対抗意識を向けられ、きつく当たられている。しかしヴェルンハルトの結界を破壊した際は、綾乃も素直に「おみごと」と評した。よく綾乃をなだめたり、時にはからかって余計な火種を撒いたりしている。
4巻のラピス戦では綾乃の援護には回れず、傍観しているしかできなかった。綾乃から「和麻なら援護をしてくれる」と叱責されそうになったが、彼女も人類に和麻のレベルを求めることの愚かさに気づいて撤回していた。霧香自身も綾乃の戦いに加われないことを恥じていない様子であった。
倉橋 和泉 (くらはし いずみ)
声 - 渡辺明乃
階級は巡査部長。きつい感じの美女。霧香の片腕と称されることが多いが、本人は「片腕」と呼ばれるのを嫌がっている。
霧香と同じく橘の分家出の陰陽師。霧香が「特殊資料整理室の室長に就任」した際、その巻き添えで整理室に飛ばされた。
セクハラへの反撃とはいえ前室長の頭目掛けて躊躇なく銃をぶっ放すなど、性格はかなりバイオレンスである。
術者としては一流で、霧香の信頼も篤く、仲が悪いわけではない。熊谷(後述)の能力が、彼女のとある封印によって管理されている関係で、彼とコンビを組まされることが多い。その熊谷にはまるで下僕でも扱うかのような態度で接するが、こちらとも決して仲が悪いわけではない
熊谷の封印を解くたびに「もう一人の人格を封印できる唯一の人文である自分は殺されるのではないか」と恐怖を感じていた。しかしそれを聞いた熊谷は「もう一人の自分もボクには変わりないから、絶対に貴方を傷つけることはありえません!」と言い返され赤面した。事実、崩壊する屋敷から和泉を守ったり、自分のPKが和泉に当たりそうになったときは無理やり捻じ曲げてかばったりしている。
作者曰く「最強のバカップル」。
熊谷 由貴 (くまがい ゆき)
階級は巡査。女性みたいな名前だが、2メートルに届こうかという長身で立派な体格の男性。
見かけに反し、性格はいたって温厚で弱気。和泉からはさんざん罵倒されている。
彼の能力は強力なPKで、スプーンを曲げるとかのレベルではなく、10メートル先の戦車の正面装甲を打ち抜くほど戦闘に特化した強力なもの。しかし、彼の穏やかな性格が災いし、その能力を使いこなすためには別人格を呼び出す必要がある。そちらの人格は「殺戮を己が存在意義とする、悪鬼羅刹の類」であり、その人格が生まれた際に、居合わせた和泉に封印される。以来、和泉の手により二重人格が解放されたり、房中術によってまた封印されたりを繰り返している。その和泉とは「二重人格だろうと、あれは僕だから、あなたを傷つけることなんて、絶対にありえません」という関係。戦闘能力はかなり高いが、しょせん物理法則を超えるものではないため、精霊魔術には敵わない。綾乃と一戦交えるが、物体である念動力は炎で燃やされてしまうため、敗北を喫した。
石動 大樹 (いするぎ だいき)
声 - 田坂秀樹
階級は巡査。23歳だが、あまりの童顔のためどう見ても警察官には見えない。
術者の家系の出ではなく、父と兄は普通のサラリーマン、母は専業主婦。「おまわりさん」に憧れ、そこそこの私立をそこそこの成績で卒業し、普通に採用試験を受けて警察官となった。しかし潜在的に異能を秘めていたため、霧香に目をつけられてしまった非常に不幸な新人。
実際、警官としては無能というほかなく、日常生活でもたいへん運が悪い。しかし、致死レベルの外的要因がふりかかるとその不幸のベクトルが完全に逆転し、異常な程の強運でそれを回避する「災厄へと至る奇跡(ミラクル・イン・ディザスター)」という能力を持ち、さらにその危険が確率操作で対処できる限界を超えると、その要因を問答無用で異次元の彼方に追いやってしまうという凄まじい能力「悪魔喰らい(デモン・イーター)」を発動する。しかし、自身で制御できず、死にかけるほどの危機に陥らないと発動しないため、死ににくい能力であるにもかかわらず死にかけることが多い。この凄まじさと死ににくさが相まって「危険があったらとりあえず大樹を放りこめ」という使い方をされる。
志門 勇人 (しもん ゆうと)
長身の美男子。
しかし性格はいい加減で、女好き。ストライクゾーンはかなり広い模様。なにかと仕事をさぼろうとしては後輩の大樹にまで文句を言われている。
彼の能力は「ジークフリート」と名付けられているが、詳細は不明。胸のど真ん中を水の槍で貫かれ大量出血していても平然としていた。本人曰く「必殺、死んだふり」。
久米 喜十郎(くめ きじゅうろう)
警視庁特殊資料整理室の初代室長。室長の座を霧香に譲っているため、既に警視庁特殊資料整理室の人間ではないのだが今でも我が物顔で居座っている。
非常に小柄で頭が丸く、禿頭の助平爺。日常的にセクハラ行為に及ぶため、和泉や霧香から突っ込みを受けている。特に和泉の突っ込みは容赦がなく、発砲にまで及んだ。初対面の綾乃に対し、天井からの不意打ちでスカートの中に顔を突っ込むという芸当をかました。
術者としては有能。炎に干渉して鎮火させたり(ただし本人曰く、神凪の炎には干渉できない)、4メートルほど浮遊したりできる。体中の関節を外して狭い穴などにももぐりこめる。また、空間をカーテンのように切り開いて瞬時に移動することが可能。これを以って綾乃に護衛されていた七瀬を拉致している。
妖魔に吸収された際には、強烈な性欲で逆に妖魔を操っていた。妖魔は精神的な存在のため、人間の精神力では絶対に勝てないとされているのを覆した。
淫魔の亜種によって内なる欲望を引き出され、取り付いていた七瀬に悪戯しそうになるが、それでも彼女を助けようとしてあらゆるツテでバチカンのエクソシストから聖水を譲り受ける。それを口移しで七瀬に飲ませようとするが、和麻に邪魔されて失敗。結果として聖水は七瀬の口に注がれ、妖魔を追い出すことに成功した。ただし、七瀬に口移しで飲ませようとしたのは妖魔の影響とは無関係で、しっかり正気だったことが露見して霧香に連行されてしまった。
刑事部長
霧香直属の上司。バーコード頭の中年男性で、常に出世を考えてライバルを叩き落してきたため、相手の欠点や汚点をネチネチと責める嫌味な性格をしている。
なかなかわかりやすい成果を見せない警視庁特殊資料整理室を疎んでおり、責任者である霧香を呼び出してはセクハラと嫌味の入り混じった説教をしていた。そのため、霧香からは物凄く嫌われている。
警視庁特殊資料整理室の倉庫を見物に訪れた際、妖魔が封印されていた壷を手にとって落としてしまった。霧香に責任転嫁しようとした際に妖魔に喰われてしまう。
三種の妖魔が入り混じった合成妖魔に喰われた刑事部長だが、彼は取り込まれてすらいない扱いであった。本人は妖魔と一体化して操っているつもりだが、実際は妖魔と精神の波長が一致して自分で動かしている気になっているに過ぎない。放って置けば完全に妖魔に喰われ、栄養として吸収されるだけだが、本人だけは気づいていなかった。更に言うと、霧香は彼を助ける気は微塵も感じさせていなかった(既に刑事部長がいなくなることを前提にして今後のことを考えていた)。
妖魔が倒されて解放されたが、精神に甚大なダメージを受けており、けひけひとうつろな笑いを浮かべていた。霧香によると、妖魔の封印を解いた責任で左遷させられるとのこと。
盾 隼人(たて はやと)
霧香たちに協力する自称・総合科学者(ネクシャリスト)の老人。科学だけではなく魔術に関しての知識も持ち合わせており、綾乃の所持する炎雷覇に物凄い執着を見せていた。いわゆるイ〇レ(マッド)た人間のため、それを嫌う和麻に足蹴にされて抹消されそうになった。能力的には優秀。

術師

炎術師:神凪一族・宗家

神凪 重悟 (かんなぎ じゅうご)
声 - てらそままさき
神凪一族宗主で綾乃の父親。神凪一族最強の術者だが、交通事故により片足を失ってから一線を退いている。そのため従兄の厳馬が現神凪最強といわれている。神炎「紫炎」の使い手で、神凪史上最強と評された。和麻も紅羽に対し「俺と綾乃と煉をまとめて倒せるのは、この辺りだと神凪重悟くらいだ」と語っており、綾乃からも「和麻、厳馬と一対一で戦っても負けない」と考えられている。
常に和服を着用し、厳しさを感じさせる雰囲気を纏っているが、娘には甘い。対等な存在として風牙衆に接したり、一族のお荷物として疎まれていたかつての和麻にも分け隔てなく接したりして、力に驕る一族の傲慢な態度を変えようと努力したが、結局実らなかった。和麻の追放を止められなかったことを悔やんでおり、現在でも彼の心情を察して尊重しているため、和麻もその器の大きさには敬服している。和麻の力を必要としてではなく純粋に神凪に戻ってほしいと願っており、綾乃との仲を取り持とうと画策しているが、今のところあまり成果は上がっていないように見える。だが、重悟の謀略とは無関係に確実に綾乃と和麻の距離は縮まっていっている。
綾乃を溺愛しており、娘に誇れるような父親でありたいと常々考えていた。そのため厳しくも優しい父親として綾乃に接していたが、実際はデレデレなのでその点においては神凪関係者から呆れられている。しかし、和麻の帰国と同時に綾乃の悪い部分(力でなんでも解決しようとする傾向)が目立ち始め、父親が部屋にいることも気づかず和麻を焼き殺そうと全力の攻撃をしたので激怒。綾乃を怒鳴りつけ、今後は本当に厳しい父親として接するようになった。
風牙衆が壊滅した後、その代わりを和麻に望んではいるが、それ以上に彼に「居場所」を作ってあげたいと考えていた。娘とくっ付けようとしているのはその度合いが強い。
片足を失ったことで既に一線を退いているため、重悟の戦闘描写はない。しかし、横暴な父親(頼道)の影響を受けず厳然な術者として育ち、かつては厳馬を破った神凪最強の術者の威厳は今も存在している。和麻でも咄嗟に防げなかったほどの威力を持つ綾乃の炎の精霊を奪い取り、攻撃を無力化したり、和麻と厳馬の同時攻撃を捌いたりなど力は健在。
作者の後書きでは、和麻と厳馬の同時攻撃を受け流せたのは「重悟が二人を合わせたより強い」というわけではない、と述べられている。
神凪 厳馬 (かんなぎ げんま)
声 - 小山力也
和麻と煉の父親にして、現役では神凪一族最強の術者。宗主・重悟とは従兄弟にあたる。厳馬の方が年上(一巻では厳馬は「従兄」と書かれている)。背丈も和麻より長身。神炎使いの一人であり、「蒼炎」と呼ばれる蒼い霊気で染められた炎を操る。その強さは和麻が「炎雷覇を持った綾乃の十倍強い」と断言するほど。風術を下術と蔑み、戦闘力こそ全てと考える良くも悪しくも典型的な神凪家の人間(ただし、そのことは本人も自覚している)。自分にも他人にも常に厳しい態度で接する。煉を大切にしており、妻との仲もいいらしい。後述にもあるように「勝つためには手段を選ばない」という一面を持っているほか、周りにとっては大事でも興味がないことには「それは大変だな」の一言で済ます。和麻と似ている部分を知った綾乃から呆れられている。
和麻に対しては父親としての愛情を持っていたが、神凪一族を第一に考える思考と自分にも他人にも厳しい性格から、炎術の才能を一向に見せない和麻に一日の休みも与えないで修行させ、弟の煉とも滅多に会わせないなど、厳しく接することしかできなかった。力も度量もないのに謀略とパワーバランスで宗主になった頼道のようにはさせたくなく、和麻を実力で宗主につかせようとしてのことだった。
そのため和麻からは誤解されていたが、融通の利かない不器用な性格から誤解を解くことができずにいた。和麻を勘当したのも、息子を神凪一族という枷から解き放とうとしたためであり、彼なりの愛情であった。その後、風術師として大成した和麻のことを不器用ながら誇らしげにし、彼に対して「気が済むのなら土下座でもなんでもする、だから自分の息子として神凪家に戻ってこい」と言ったこともある(和麻も厳格な父親のこの発言には驚き、感じるものがあったようである)。やり直しがきかないと考えた和麻は神凪に戻ることを拒むが、父子間では事実上和解しており、互いに「親父」「息子」と認める関係に戻っている。親子のように守る守られるではなく、互いに一人の男として肩を並べる対等の関係に。
和麻との対決で受けた負傷が治った後、神凪邸でぱったりと出会った和麻と失言の応酬を行い、最終的に和麻から勝負を仕掛けられて再戦となった。術を一切用いない「親子喧嘩」の勝負を展開し、屋敷を先に殴り倒すような勢いの勝負となった。年齢による体力差で和麻に押し切られてしまい、息子が膝を突いた父親に手を差し伸べるというシチュエーションを見せて綾乃を感動させた。が、その直後、和麻は厳馬を本気で殺そうとし、さらに厳馬は和麻の隙をついて「炎の精霊を宿した蹴撃」を放った。親子そろって「勝つためには手段を選ばない性格」だったことが明らかになり、綾乃を呆れさせていた。
戦いは重悟の介入で引き分けに終わったが、その後親子そろって素直ではない相手の評価を重悟と綾乃に聞かせていた。
綾乃とは「伯父と姪」以上の関係ではなく、互いに干渉のない薄い間柄だった。しかし、5巻では暴走した和麻を止める役割を綾乃に任せ、最後に微笑を向けている。「宗主の娘」でしかなかった綾乃の成長を認めていることがうかがえる。
6巻のガイアVS和麻においては、風喰を消滅させて上手い具合に息子の窮地を救っている。このことを和麻から冷やかされ、「いいタイミングだったけど狙っていたのか?」と言われており「馬鹿を言うな、お前ではあるまいし」と返している。
アニメ版での最終話ではパンデモニウム降臨の地に駆けつけており、ベリアルを撃退して疲弊した和麻たちの前に現れたヴェルンハルトを後方から睨みつけ、彼を撤退させた(原作では展開が異なり、ヴェルンハルトは「ベリアルを打ち負かした非常識な力を見て、今でも勝てる気がしない」と述べ撤退している)。
戦法は、黄金の火柱を山岐大蛇(やまたのおろち)のように操作して攻撃するというもの。これは小手調べにすぎないが、それでも和麻の風の結界を一瞬で破壊するほどの威力を持つ(綾乃の全力の一撃でも風の結界は壊せなかった。2巻より)。
必殺技は、「気」を極限まで練り上げることで炎を蒼く染める「蒼炎」を召喚すること。最高の威力を持つ「黄金(きん)」をも凌駕する絶対無敵の力「神炎」として行使する。しかし術の発動は風術のほうが早いため、無防備になった隙を突かれて和麻に敗北を喫した。
神凪 深雪 (かんなぎ みゆき)
声 - 佐藤しのぶ
厳馬の妻で、和麻と煉の母親。昔から性格に問題があったようで、温厚な重悟にすら「昔から自分勝手な女だった」と思われている。
厳馬とは違って、炎術の才能のない和麻には欠片の愛情もなく、逆に煉のことは溺愛している。
厳馬から絶縁を突きつけられた和麻が助けを求めに来た時は、悲しむどころか逆に一千万を渡して神凪家を出るよう促した(このことは厳馬も重悟も知らなかった。また、前述の二人が知った後も綾乃と煉には知られていない)。
この行動によって、和麻は「親子の縁を簡単に切り捨てられる両親が何よりも恐ろしい」と思うようになり、重悟にも相談せず国外へと逃げていった。なお、彼女から渡された一千万のキャッシュカードは和麻が翠鈴と出会って立ち直った後、へし折られてしまっている。
その際に親子の縁は完全に切れているようで、和麻から「あの女は俺を愛さなかったけど、俺も愛した覚えはない。お互い様さ」と厳馬に告げ、「自分を産んだ女」以上の感情は持ち合わせていないことを告げた。その証拠に恐怖の対象でしかなかった父のことは「親父」と呼んでいるが、母に対しては「あの女」としか呼んでいない。
和麻に対して敬語敬称で接しており、とても息子と会話しているようには見えず他人行儀(あるいは普段からこうなのかは不明)。彼が助けを求めてくるまで一度も自室に入れたことがなかった。しかし、和麻の徹底した冷酷さも母親譲りであるともいえる。
1巻の回想にしか登場せず、以後は名前しかでてこない。
神凪 頼通(かんなぎ よりみち)
先代宗主にして、現宗主・重悟の父親。だが、その性格が災いして息子と厳馬から毛嫌いされている。特に厳馬は「一族最強が炎雷覇を継ぐべし」と考えているため、大した実力もなかった頼道を特に嫌っている。お互いに嫌い合っていることを隠そうともしないため、特に仲が悪い。
アニメには登場していない。かなり我儘な性格で引退してからも先代宗主の立場を利用して好き放題しているため、一族から嫌われている。だが本人はまったく気付いていない。炎術師としての能力もあまり高くなかった様で、智謀と一族内のパワーバランスで宗主を継いでいた時には、神凪の力は三十数年史上最低にまで落ち込み、炎雷覇を扱うことすらできずに死蔵されているほどだった。そして最強の呪宝具を他者の手に渡らせる度量もなかった。
1巻のワンシーンにしか登場はせず、和麻が分家の連中を殺したと思い込んでおり、「和麻を抹殺しろ!」と叫び、更には「厳馬が煉に炎雷覇を継がせるために、和麻にやらせたのではないか」と邪推までしていた。重悟の命令で従者に両腕をつかまれて荷物のように扱われて退席させられてしまった。
 以後の消息は不明。
 厳馬は我が子を頼道のようにさせたくはなく、実力で和麻を宗主にしたいと考えていた。厳馬が和麻に厳しくなった元凶ともいえる。
周防(すおう)
重悟の側近の男性。脈絡もなく突然姿を消すという技法を持っており、和麻でもどうやって行ったのかまったく見破れず驚いていた。重悟から風牙衆を全員拘束するように命じられるなど、術者としての実力は高い。
煉から連絡を受けて迎えに着たりと、神凪宗家の執事的なポジションを取っている。出番自体はかなり少なく、大事の際の雑用くらいにしか登場しなかった。

炎術師:神凪一族・分家

作中では大神、結城、久我、四条の四家が分家として登場する。なお、四条の姓を持つ人物は登場していない。 攻撃能力の高さを誇る炎術を扱うが、宗家には遠く及ばず「下克上を考えることすら愚かしい」ほどの格差がある。

大神 雅行(おおがみ まさゆき)
声 - 城山堅
神凪の分家の一つである大神家当主、操、武哉、武志の父親である。炎術師。冷徹で、我が子に対して父親としての愛情が全くなく、大神家の道具といった感覚だった。自分では弟には及ばなかったため、その役割を子供たちが幼い頃から押し付けて、虐待にも等しい修行をさせていた。
弟の雅人は兄との確執を嫌い、チベットへ修行に出てしまった、しかし、素質と才能は完全に弟の方が上であり、兄としては「当主を譲ってもらった」という認識が強かった模様。武哉からそのことを指摘された時には、激昂して殴り飛ばしてしまった。
操に対しては、女であり戦士としての素質が見られなかったため無関心であった。だから操が妖魔化した際も「大神家の邪魔者」としか見ておらず、一切の情をかけることなく殺害しようとしていた。
娘である操が妖魔に成り下がり、大神家が存続の危機に立たされたために、汚名返上のため自ら部下を率いて操を滅殺しようとする。しかし、返り討ちに遭って死亡。切断された首を鞠のように扱われた後、生気を吸われてミイラ化し、粉々になって消滅してしまう。
弟の才能に嫉妬した雅行のように、綾乃も自分にはできない高等技術を持つ煉に対し、喜ばしくない感情を抱いていた。
大神 雅人(おおがみ まさと)
大神家当主・雅行の弟。兄を遥かに凌ぐ力を持ち分家では最強の術者だったが、当主の座を巡る争いを嫌ってチベットの奥地まで修行に行った過去がある。専ら綾乃のお守りを任じられており、綾乃からも「おじ様」と慕われていたが流也に殺された。(アニメ版ではすでに流也に殺されていて、綾乃とは原作と同じ関係性を持っていたかは不明。)
大神 操 (おおがみ みさお)
声 - 植田佳奈
大神家の娘で炎術師。20代前。普段から和服を着用し大和撫子をイメージさせる、本来とても大人しい少女。内気な性格のため、前線には立たず後方支援を担当している。
兄の仇として和麻を逆恨みしていたところを、ミハイルという謎の少年に利用され、倫理観を奪い取られて「復讐のためなら全てが許される」というゆがんだ心を植えつけられてしまう。妖魔と化し、スライムを操って数百人の一般人の生気を奪い取り、殺害。その力を持って和麻と対峙するが、歯が立たなかった。結局はミハイル・ハーレイに利用されたに過ぎず、操が集めた数百人分の生気はスライムの集合体「ヴリトラ」を操作するためのエネルギーでしかなかった。
父を含め自らの親族や多数の一般市民をその手にかけた重い罪を背負うが、和麻の励ましによって生きることを選び、出家して罪を償っていこうと決意。(和麻に続く、神凪家2人目の出家者。罪を償ったら、真っ先に助けてくれた和麻に恩義を返そうと考えている。)
妖魔になった際は、数百人分の生気を得て大幅にパワーアップしている。漆黒の業火を無数の火球にして出現させ、一斉に発射するという戦法を用いる。なかなかの威力だったため、大神の人間だけあって分家最強になれる炎術の才があったのではないかと綾乃たちに賞賛された(分家最強程度の力では和麻には遠く及ばなかったが)。また、漆黒の炎を巨大な火柱として出現させることも可能。この技で分家の術者4人の命を奪っている。
他にも、影を大口の怪物として顕現させ、飲み込んだ相手を異次元に放逐するという特技を持つ。綾乃との戦いではこれを使用して、彼女を退けている(飽くまで和麻殺害が目的のため、人質にもならなかった綾乃は無事解放されている)。
幼い頃に一度だけ、いじめられていた和麻を助けたことがあって、彼女も忘れていたそんな些細な出来事を和麻はずっと心の支えにしていた(その事実は、和麻から聞くまで忘れていた)。そのため和麻は神凪を敵に回すことになっても、迷うことなく操を助け、守ることを選んだ。
大神 武哉 (おおがみ たけや)
声 - 武虎
操の兄で大神家の長子。同じく分家の一つである久我家の娘・静との間に、双子の息子がいる。分家ではトップクラスの術者で、結城 慎吾(後述)とは正反対の性格なのに相性がよく、二人が組めば宗家以外に敵なしと言われたが、和麻の説得に失敗し敗北。気絶しているところを流也に攻撃され、胴体を切断されて殺されてしまう。
慎吾とは違い、和麻とはまず話し合って疑いが事実かどうかを確かめようとした(それでも、どこか犯人と決め付けているような態度ではあったが、父親ほど冷酷ではないため、話で解決できるならという穏便な部分を持つ)。神凪の血筋らしく風牙衆を見下してはいたが、本質は弟妹の事を気に掛けていた優しい性格であった。妹・操の心の支えとなっていたが、彼が死んだことで操の悲劇を生むこととなった。
大神 武志(おおがみ たけし)
大神家の炎術師で、武哉と操の弟。十歳の頃に父親から虐待に等しい修行を続けさせられ、いつも妹である操に心配されていた。叔父と共に流也に殺された(小説版では、雅人と共に綾乃の補佐を勤めていた)。アニメ版ではすでに流也に殺され、綾乃とは原作と同じ関係性を持っていたかは不明。
大神 静(おおがみ しずか)
大神武哉に嫁いだ女性。旧姓は久我。名前しか登場しない。上記の久我透との関係は同じ分家の人間ということ以外は不明。
双子の男子を出産し、このふたりが武哉の忘れ形見として世継ぎになる予定。
結城 慎一郎(ゆうき しんいちろう)
結城家の当主。息子ふたりが流也に殺されたことを逆恨みし、和麻に憎悪を向けている。一族内でもとりわけ彼に対する恨みは強い。
しかし、慎一郎という人間は和麻からすれば「そんな脇役その一みたいな奴、覚えてるわけないだろ」程度の存在でしかなかった。
実は一巻にも登場しており、和麻が神凪の屋敷を訪れて煉が拉致されたことを告げた際に「たわ言を! 慎治と慎吾を殺したのは貴様だろう!」と激昂していた。この時は名前設定がないため「結城家の当主」「結城」としか表記されていない。
結城 慎治 (ゆうき しんじ)
声 - 奥田啓人
神凪の分家の一つである結城家の末子。25歳。神凪一族の中で帰国した和麻に最初に出会ったのは彼で、その際目の前で行われた除霊の腕を見て、和麻の帰国とその力を一族に伝える。幼い頃、ほかの子供たちとともに炎術を使えない和麻を虐めていた。流也に殺された最初の犠牲者の一人で、抵抗する際には分家では唯一金の炎を発現するなどの努力を見せるが、火傷一つ負わせることができずあっさり殺されてしまった。
結城 慎吾 (ゆうき しんご)
声 - 西脇保
結城家の炎術師で、結城慎治の兄。分家ではトップクラスの術者で跡継ぎとなることが決まっていた。可愛がっていた弟の慎治を和麻に殺されたと思い込んで怒り狂い、初登場から常軌を逸した発言ばかりしていた。問答無用で和麻を殺そうとしたが返り討ちにあってあっさり敗れ、倒れているところを流也に殺されてしまう。
久我 透(くが とおる)
幼い頃から大柄で気性の荒い性格。当時、友人達と一緒に和麻を苛め抜き、炎術で身体を焼いたり靴底で頭を踏みにじったりしていた。歯向かってきた和麻に逆上して彼を殺害しようとしたが、操の乱入によって食い止められてしまう。

風術師:風牙衆

三百年前、風牙衆は強大な風を操る一族として君臨していた。金さえ積めば暗殺、誘拐、破壊工作を平気で行う残虐な組織だったため、幕府から神凪一族へ討伐命令が下された。そして、風牙の力の源である「神」を封印することで風牙衆を弱体化させ、神凪の下部組織として取り込まれた。

それ以来三百年に渡って神凪の手足となり、主に後方支援に回って働いていた。しかし、敵を倒せるかどうかという力の理論を振りかざす神凪にとって、最弱である風術を使う風牙衆は見下す対象でしかなかった(風術とは紙の刃のようなもので、皮膚を切ることはできても肉と骨を断てないと例えられている)。探索能力において最低である炎術師の一族・神凪をどう補佐しても賞賛されることは決してなかった。

現風牙衆の長・風巻兵衛は神凪に深い憎悪を抱き、反旗を翻す。中には神凪に忠誠を誓った風牙衆もいたが、兵衛に洗脳されてしまう。神凪に対抗するための力を貪欲に求めた兵衛は、息子流也に上級妖魔を憑依させる。そして、かつて自分たちの力の根源であった「神」の復活を目論む。

この世には存在しない純粋なる炎、触れたもの全てを焼き尽くす炎の結晶である「三昧真火(さんまいしんか)」のうちに「神」が封印されているため、解除にはその中を進むことができる神凪宗家の人間が必要だった。炎そのものが神を封じているため、炎を消せば神も姿を消す。決して風牙では解けないように工夫されていた。

封印を解いた場合、神が目にするのは自分を封じた一族の末裔であるため、実質封印を解く行為は生贄を捧げるに近い。しかしその直前で和麻によって阻まれ、洗脳されて襲い掛かってきた風牙衆たちは首を切られて殺され、妻を殺されて怒り狂った風牙の男もあっさりと殺された。操られていようと、悲しい事情があろうと、容赦なく殺める和麻に恐れをなし風牙衆たちは皆逃げ出し、取り残された兵衛は和麻の凶行を非難する。しかし和麻のしたことは、流也がしたことと何ら変わりのないこと。自分たちの行ったことがそのまま返ってきたに過ぎなかった。

なお、アニメ版では暴走した流也によって風牙衆は皆殺しにされるという末路となっており、兵衛との戦闘はない。

風巻 兵衛 (かざまき ひょうえ)
声 - 稲葉実
老練の風術師。神凪一族の下部組織である風牙衆の頭領。平素は神凪一族に対する忠心を装うが、腹の底では風牙衆一族の悲願である神凪への復讐の念を募らせており、風牙衆の力の源であり彼らが神と崇める存在(アニメ版ではゲホウと呼ばれる妖魔)を蘇らせようと企む。
原作では老人と描写されており、またしゃべり方もそれを裏切らないものだった。アニメ版では老人ではなく厳馬くらいの年頃の男性として描かれていた。
表立って堂々と風牙衆を見下していた分家はもとい、特に宗家の厳馬と重悟を深く憎んでいる。穏健で流也の容態を気にかけていた重悟まで憎む辺り、兵衛こそ「古き因習」に取り付かれている節があった。
復讐の前準備として、ひとり息子の流也に妖魔を憑依させ、その事実を「病床に就き療養中」ということで隠蔽していた(流也が本当に病を患っており、その後妖魔を憑依させられたのかは不明)。和麻が帰国したのを機に、流也の風術で神凪の術者を殺害させ、その罪を和麻になすりつけようとしていた。
息子を手駒としているだけではなく(それでも息子のことは流也と名前で呼んでおり)、自分自身をも妖魔化させている。更には歯向かう風牙衆も洗脳し、同じく駒としている。神凪への復讐のためには自己犠牲すらもいとわない。徹底して力に固執した考えを見せている。
神凪の炎を「浄化の炎」とたとえており、同じく風牙の風を「穢土の風」とたとえている。「俗世にまみれ、我欲を満たすが我らの正義!」と主張しており、そのためには息子のひとりふたり悪魔に売り渡すくらい惜しくないと豪語していた。後に自らも妖魔化していたことが明かされた。
煉を神の復活の生贄に捧げようと拉致。その後、煉との一騎打ちで敗北。煉に密着され、猛烈な業火で断末魔の叫びすらも焼き尽くされて消滅した。
アニメ版では暴走した息子の力に巻き込まれ、部下たちと共に死亡するという最期を遂げた。
老練の風術士で、姿を隠して相手を撹乱する戦法を得意としている。妖魔の力を持ったことで風術の威力が上昇しており、人体の肉程度なら容易く切断できる風の刃を放つ。また、煉が放った炎の雨を受けても耐え抜くほどの耐久力を持つ。妖魔化した時には浅黒いグロテスクな肌を持つ人型の怪物となる。
風巻 流也 (かざまき りゅうや)
声 - 松本大
風術師。兵衛の息子。十年ほど前から病に倒れて養生中ということにされていたが、実際には父によって妖魔を宿され、神凪に復讐する道具にされていた(無理やり妖魔にされたのか、協力したのかは不明)。兵衛との『契約』に従い彼に力を貸す。
小説ではまったくしゃべらなかったが、「ククク……」という嘲笑の思念が和麻に伝わったことがあった。
年齢は不詳だが十年前の写真には「少年」と描写されており、今の姿を見た綾乃と慎治も和麻と思い違えた。美形だが表情はなく、終始能面じみた無表情。全身を黒尽くめの衣装に身を包んでいるが、それ以上にまとう妖気は闇よりも黒い。決着直前では妖魔としての正体を現し、粘土を人型にこねたような不気味な姿となった。
アニメ版では和麻に近い容姿や服装をしており、肌は生気の失われた緑色で、顔には血管が浮き出ており不気味な嘲笑が刻まれている。また変身後の形態も大きく異なり、戦闘時には緑の体表と漆黒の双翼を持つ巨人として描かれている。
性格は冷酷にして残虐。命を壊すことに快感を覚えるらしく、既に死体となっている慎治らを細切れに切り刻んだり、ホテルを輪切りにして数百人をまとめて殺害。さらには仲間である風牙の術者も、武哉と慎吾ごと切断して殺害した(仲間を巻き込んだのではなく意図的に狙って殺害している)。また、和麻に罪を着せるという目的もどうでもいいらしく、何度も彼の不意をついて殺しにかかっていた。
和麻の帰国を機に、彼に罪を押し付けるために風術で神凪一族の炎術師を殺していた。既に流也の意識はどこにも残っておらず、肉体もプロレスラーが即死するほどの攻撃を受けてもものともしなくなっている。脳まで妖魔化しているらしく、脳震盪も起こさない。
和麻もさすがに今の流也には同情を禁じえなかったらしく、力を手に入れたと誇る兵衛に対し「あいつは何も手に入れていない。すべてを失っただけだ」と返している。
戦法は、10本の爪を伸ばして瞬時に剣へと変え、その膂力と切れ味を武器に接近戦を仕掛けてきたり、妖気で狂わされた風の精霊による、漆黒の風の刃で瞬く間に標的を切断すること。最強の風術師である和麻も、狂った風の精霊には干渉することができず苦戦を強いられた(狂ったものをどうやって操っているのかと言う綾乃の疑問に対し、和麻は「狂ったもの同士、気が合うんだろう」と答えている)。
爪の強度は炎雷覇でも切断できないほど。ただし、恐れを捨てた綾乃の斬撃には歯が立たず、10本全て切断されてしまった。
ほか、強力な自己再生能力を持つ。片腕を切断されても、神経と筋繊維が瞬く間に結合し、数秒で傷跡も消えてしまう。また、切断された腕を操作して奇襲攻撃にも使用できる。
必殺技は、自然の猛威を地上に顕現し5本の竜巻(の余波で)で周囲を破壊する。この技を前にした綾乃は愕然としたが、和麻の機転で放たれたダウンバーストによって破られてしまう。結果、山の形が大きく変わってしまうほどの災害が起こった。
最終決戦の地・京都。その山中にある神凪の聖地こと火之迦具土(ほのかぐつち)を祀る山にて、コントラクターの力を解放した和麻の援護によって力をそがれ、最後は綾乃の炎によって妖魔共々滅殺される。しかし一度は綾乃を余裕で破っており、彼女からは「最強最悪の風術師」として記憶に深く刻み込まれている。
神(かみ)
三百年前、風牙衆の力の源として君臨していた超越存在(オーバーロード)。今も封印されているため、過去の話でしか登場しない。ここでいう「神」とは、造物主などの創造神ではなく、人間を超えた存在を指す。
人間では倒すことができないからこそ神であり、逆に言えば、人に倒されるのは神ではない。当時の神凪宗主は、精霊王の力を借りることで「神」を封印したとされている。今の宗主である重悟は封印の手段を知らないため、神が復活すれば神凪は確実に滅ぶとされている。
神凪に復讐するための「力」を求める兵衛は、封印の地も解法も調べ、神の復活を目論んだ。しかし、綾乃、煉、和麻の三人に阻まれ、ついに復活することはなかった。

地術師:石蕗一族

石蕗 紅羽 (つわぶき くれは)
声 - 小菅真美
石蕗一族首座(石蕗巌)の長女。妖艶な美女だが、近づきがたい雰囲気を持つ。20代後半。女版の和麻としての境遇を持つといっても過言ではないキャラクター。
石蕗一族にあって、地術を扱えず代わりに重力を操るという異端者。それも能力は非常に強力だったため、父からは疎まれて娘として見てもらえず、一族からも腫れ物のように扱われてきた。それでも実の妹である真由美を姉として愛していたが、父にから一心に愛を受ける真由美に嫉妬し、次第に憎むようになる。
誰からも見てもらえず、守ってもらえず、実の父にさえ見捨てられた境遇だったため、誰にも頼らないで自分を守れる強大な力を欲するようになる。五年前、魔獣・是怨の存在に目を付け、真由美とそのクローン(亜由美)による二重の封印で極限にまで力を抑えつけ、魔獣の力を取り込もうと画策する。しかし、既に自分は魔獣によって人間ではなくなっていたこと、重力制御も魔獣の手駒のためとして与えられたものであり、全ては魔獣の意思によって行動させられていたにすぎなものだったと和麻から推測を聞かされ、絶望してしまう。全てを操っていたつもりが、操られていたにすぎなかった。その事実に悲嘆し、呆然と立ち尽くしていた。
最後は和麻の一撃で真っ二つにされ、微塵切りにされて死亡する。ただし、彼女に宿っていた魔獣の「気」は是怨の元へ返り、わずかに交じっていた紅羽の憎悪が宿ることになった。そのため、復活した是怨は和麻たちを真っ先に狙って襲い掛かってくることとなった。
原作では本人全部魔獣の一部に変化していて最後は取り込まれて死亡してしまう。アニメでは魔獣に力だけ取り戻されて、一時地術師の力を取り戻すが無謀な攻撃をして魔獣の攻撃で消し飛ばされてしまう。
戦法は、重力場を展開することで物体から魔術まで拳大にまで圧縮する。その力は綾乃の炎も平気で消滅させ、風術で飛行中の和麻を引き摺り下ろしたほど。和麻も「まともに戦ったら苦戦するほどには手ごわかった」と言い、憶測による精神攻撃で戦意を削ぐという手に出た。
石蕗 真由美 (つわぶき まゆみ)
声 - 宮島依里
石蕗一族首座(石蕗巌)の次女で紅羽の妹。16歳。亜由美のオリジナル。本来は彼女が魔獣を封印するための儀式で生贄になる予定だった。紅羽を「お姉さま」と呼び慕っていたが、魔獣の力を我が物にしようとしていること、実の父を殺めたこと、そして妹である自分さえも利用していたことを知り、決別。和麻たちと戦闘中の紅羽を殺そうと奇襲を仕掛けるが失敗に終わってしまう。その際、罵倒の言葉を姉に向けていたが、紅羽の狂気の理由を知ってからは同情の方を強く買っていた。
魔獣・是怨復活に「勝てるわけない!」と絶望していたが、亜由美に叱咤されたことで戦うことを決意。亜由美と共に是怨の力を抑えつけ、和麻たちに勝機をもたらした。
アニメ版では、儀式のところからずっと気を失ったまま戦いに参戦しない。すべてが終わった後に力を使い果たした亜由美の最後を見届ける。
全てが終わった後は愛する人間であり、自分の支えとなっていた勇士を補佐に加えて紅羽の後を次いで首座となる。
石蕗 巌 (つわぶき いわお)
声 - 荻野晴朗
富士山の封印を守る地術師の一族・石蕗家当主。真由美可愛さにクローンを作り、身代わりにする計画を立てた張本人。地術を使えず、落ちこぼれとして扱われている紅羽だが、変わりに重力操作という強力な能力を持っていることで、巌は実の娘を忌み嫌っている。そんな折、紅羽が魔獣の力を取り込もうとしているのを知り、理由も問いただそうとせず「始末する理由ができた」と笑っていた。
病に倒れたことになっていたが、実は、紅羽の真意を見抜いて彼女を殺そうとするも逆に敗れ、死ぬ寸前に岩と同化して身動きが取れなくなっていた。地術師として地についていれば重傷を負っても回復するが、最後は紅羽に地との接点を砕かれて死亡してしまう。
石蕗 勇士(つわぶき ゆうじ)
声 - 鳥海浩輔
石蕗一族の1人。宗家ではなく俸家の人物だが、石蕗の性を名乗ることを許されたほどの高位の地術師。真由美の側近であり、主である真由美を守るためなら死すら辞さない覚悟を持っている。真由美から無理やり接吻をされ、「今後も私の側を離れないで欲しい」と告白され、そして自身を支えて欲しいという意図を汲み取った。自身の力が和麻たちに及ばないことを悟り、紅羽から授けられた能力によって岩石の巨人となり、煉と死闘を繰り広げた。
最後は煉の捨て身の攻撃(和麻が防いでくれると信じていたため)によって妖魔の力を焼き払われ、元の人間に戻る。是怨が倒された後は、首座を継いだ真由美の側近として活動している。
人間時は岩石のつぶてを武器としていたが、煉の炎にはまったく及ばなかった。
妖魔の力を得た後は、煉の炎も突き破るほどの土砂の津波、岩石の拳を武器として戦うようになる。ほか、腕を切断されてもすぐに再生するほど治癒能力も強化されている。
アニメ版では原作とデザインが大きく変わっており、ポマードで髪を固め、見た目も固そうな人物になっている。なお、原作では美少年よりの優男。
石蕗 亜由美 (つわぶき あゆみ)
声 - 酒井香奈子
地術師・石蕗一族の娘・真由美の細胞を基に作り出されたクローン体。肉体年齢は12歳。妖精の卵を使い、わずか1ヵ月で無理矢理12歳まで成長させられたため非常に短命。真由美に代わり魔獣封印の儀式をするためだけに作られた。記憶は真由美のものがコピーされていたが、儀式の前に自分だけの思い出が欲しくて脱走し、煉と出会い、一緒に海を見に行った。その存在を失った今も、煉にとっては「たった一人の人」。
是怨との戦いでは絶望した真由美を叱咤する際に、彼女そっくりに振舞うことで見下し、戦意を取り戻させている。

陰陽師:土御門家

千年前に実在した陰陽師、阿倍晴明の直系。神凪とは友好関係にある。ただし術者の多くが「阿倍晴明の直系」を名乗るため、疑う者の方がはるかに多い模様。

土御門 貴明(つちみかど たかあき)
安倍晴明の直系に当たる土御門家の次男坊。二十歳を少し過ぎた青年で、優男然とした顔立ちながらも長身細身で、しっかりと肉のついた体格を持つ。霧香同様、札を媒介とした符術を用いる。
父である定信が過去に重悟と「神凪に娘が生まれたらこちらの次男坊と娶わせよう」と約束しており、綾乃と見合いをすることになった(重悟は冗談のつもりだったが、定信は結構本気だった模様)。
綾乃と見合いをして本気で彼女に惚れてしまった様子。基本的にクールで自分を落として、相手を持ち上げたりと礼儀正しく話術にも長ける。しかし、恋のライバルである和麻とは失言の応酬をする仲となっている。
香久夜の凶行を止めるために駆けつけ、説得。自分に近づく女性を無意味に攻撃する妹を厳しくしかりつけていると話したが、実際は妹に負けず劣らずのシスコン。しかる、怒るという表現とは無縁なほど甘ったるい声音で妹を説得していた。結局は彼が香久夜を「しかった」ことでことの一件は収束した。しかし、この態度の豹変には和麻も綾乃も度肝を抜かれ、どこか病んだ兄妹から逃げるように立ち去っていった。
これにはさすがの和麻も引き、綾乃も驚愕していた。だが、香久夜と比べるとまだマシなほうで、彼女を「理屈の通じるときがあるのか」と馬鹿にした時は怒りを抑え付けて何も言い返さなかった。
戦法は札を媒介とし、障壁を張って反作用で相手を弾き飛ばす。他の術も使えるようだが秘奥である後鬼以上の術は持ち合わせていないため、綾乃の役には立てなかった。
土御門 香久夜(つちみかど かぐや)
貴明の妹で、土御門の長女。外見こそは兄にも劣らぬ容姿を持つ二十前後の美女だが、実際は極度のブラコンである。
貴明の見合いを妨害するために和麻を雇う。見合いの席で綾乃に恥をかかせて、貴明を幻滅させようとするがことごとく失敗に終わる。それどころか、逆にふたりの距離が徐々に縮まっていった。
最終手段として、阿倍晴明が切り札として子孫に残した「二対の最強の鬼神」の片割れ、後鬼を解放。綾乃の抹殺を計ったが制御不能となっており、近くの物を手当たりしだい破壊するしかできなかった。
最終的には和麻によって後鬼は封印され、そのことで彼を逆恨み。後鬼を解放したことで謹慎の身となったが、しつこく綾乃と和麻を揃って殺害しようと土御門から脱走して付けねらう。
首を突っ込んできた由香里から綾乃に関する情報を聞き、それを曲解して「恋心を弄んで女王様気取りになっているふしだらな女」と受け取ってしまう。由香里を人質にし、今度は自らの手で紙縒(こより)を武器に綾乃と対決する。
そこへ和麻に呼び出された貴明が説得に現れ、一応の解決となった。
呪符を用いた戦法を得意としており、札を蛇に変えることができる。紙縒を一種の式神として使役し、亜音速(調子がいい時は音速)を超える速度で発射する。また、遁甲陣の応用として結界を張り、標的を自然に誘導、隔離してしまう術を用いる。和麻からは「さすがは腐っても土御門、なかなかやるな」と賞賛されていた。
山田(やまだ)
土御門に仕える術者。土御門 定信の命により、香久夜の依頼を取り消すために和麻と交渉する。これといって特徴のない中年男性でへこへことへりくだった態度を取るが、内心では和麻のことを「ヘッポコ風術師」と見下していた。交渉が決裂した際は本性を現し、和麻に襲い掛かった。
戦闘では護法童子という式神を用いる。仏法を守護すると伝えられる鬼神で、童子の姿をしている。
風の刃に対し、ケブラー繊維を編みこんだ呪符を用意したが「物理的法則を超える」特性を持つ、一流の術者に抗する策にはなりえなかった。勝ち誇っていたわりには、部下と共にあっさりと和麻に敗北し屈辱を味わった。
葛木(かつらぎ)
定信の部下。式神使いで土御門と神凪の見合いを護衛する任に就いていた。そこへ現れた太一郎を見咎め、不審者として詰問するが反撃を受けてしまう。自分を未熟な術者だと自覚していたため、力付くではなく最大の術で取り押さえようとした。ただ単に力尽くで取り押さえると言う選択肢がでないあたり、未熟と言うことらしい。
太一郎が持っていた術式を狂わせる手袋で呪符を握りつぶしてしまったため、不幸な事故が起きてしまう。太一郎は式神に取り付かれ、制御不能となって暴走してしまった。
後鬼(ごき)
阿倍晴明が子孫に残した最強の鬼神。綾乃でもひとりでは倒せなかったほどの力を持つ(実力的な問題よりも、場所が料亭だったため気を使わないといけなかったこと)。普段は短刀に封印されており、「子孫に七度力を貸せ」との命令を受けている(既に三度使用されていた)。ただし、その命令自体が狂ってしまうと制御する術を失うため暴走するという欠点を持つ。
土御門 定信(つちみかど さだのぶ)
土御門の当主。過去、重悟に「神凪に娘が生まれたら、こちらの次男坊と娶わせよう」と約束し、その履行を求める。作中では名前しか登場しない。
神凪との婚姻はそうとう乗り気だったらしく、娘が妨害を画策していることを知ると部下の山田たちを派遣して和麻に依頼の取り消しを行い、それが不可だった時は力尽くで阻止するように命じていた。
後鬼が破れ、香久夜を処罰のため軟禁した後は素直に和麻に違約金を払うなど娘思いの面を持つ。香久夜が処罰を受けた理由は綾乃を殺そうとしたことでも料亭を壊そうとしたことでもなく、後鬼の封印をといてしまったことにあった。

その他の術師

キャサリン・マクドナルド
声 - たかはし智秋
精霊獣(後述)の創造と使役に関して世界最高の技術を持つアメリカの炎術師の名家、マクドナルド家の娘。令嬢らしく「〜ですわ」というお嬢様口調でし、日本語にも長けている。普段はクールで自分勝手な美女だが、ハンバーガー屋と同じ苗字なのでそのことに触れられると途端に怒る。またかなり負けず嫌い。
天使型の精霊獣・守護精霊(ガーディアン)メタトロンを使役する。炎術師としてマクドナルド家が世界最強であることを証明しようと、来日して綾乃に挑戦、最強の証として炎雷覇を手に入れようとした。しかし、そんなことをすれば神凪厳馬が怒り狂って一族郎党焼き殺すと和麻に脅され、炎雷覇の奪取を諦めた。厳馬のことは「所詮は宗主になれなかった男」と考えていたが、和麻から彼の恐ろしさを教えられた。
初登場ではテロリストたちを残らず始末し、一般人まで巻き添えにしたが「正義が執行された事実こそが大事」と述べ、周囲への配慮はまったくせず敵を倒すことだけを第一に考えていた。
当初はメタトロンの戦闘能力で綾乃を圧していたが、和麻のアドバイスにより「術式によって変質した炎を正常に戻せばいい」ことに気づかれ、メタトロンは崩壊。術式によって縛られていた莫大な熱量が解放されたことでビルが爆破され、その場は引き分けとなった。少なくともキャサリン本人は引き分けを主張している。
綾乃との再戦のために雑魚妖魔の類を潰して回り、レベルアップを図っていた。あまりにも派手に暴れまわっているので和麻を連れた霧香から注意されてしまう。その際に和麻から「メタトロンでは絶対に綾乃に勝てないぞ」といわれ、コキおろされてしまった。一族の秘奥に侮辱を受けたキャサリンは和麻を「神凪綾乃に仕えたことで自分も強くなったと錯覚している非力な風術師」と見下し、一戦を申し込む。神凪綾乃のオマケ程度にしか和麻のことをみていなかったが、三度挑んで三度とも果物ナイフ一本でメタトロンを解体されて敗北する。
彼が神凪綾乃よりもはるかに強いことを知った後は、彼を雇って協力者にした。その際に手数で攻める方が綾乃との戦いに向いているといわれ、新たな精霊獣ウィスプを生み出した。辛くも引き分けに持ち込み、以後は和麻にほれ込んでしまい、彼を実家に連れていって両親に紹介しようとした。アニメ版では綾乃に敗れた後も、警視庁特殊資料整理室の一員なって再登場する。
アニメ版22話では暴走する和麻を止めようと戦いを挑むが、メタトロンは一瞬で破壊されその余波でキャサリンも吹き飛ばされ気絶した。
アニメでは巨乳ぶりが強調されており、よく揺れる。原作では「絶世の美女」と紹介されている。
使役する精霊獣は、小型のドラゴンのような姿をしたアザゼル。口からシャボン玉のように漂う火の玉を吐き出し、触れたものを炭化させる。ただし周囲にいる人まで巻き込んでしまう恐れがある。
球体状の精霊ウィスプ。自分の身体をちぎって投げるように火炎の球を吐き出し、やがて消滅する。構造が単純なだけに、消えてもすぐに召喚が可能。複数を一気に呼び出すことができる。
奥の手としてメタトロンの二重召喚を行使する。対象の前後をはさむことでほぼ回避不可能な攻撃だが、これはキャサリン自身にも負担が大きく、脳が焼ききれるような無茶だったりする。綾乃との再戦ではこの技で後一歩というところまで追い詰めたが、止めを刺す前にキャサリン本人が気絶したため失敗。綾乃自身もこれを勝利とは受け入れられず、キャサリンとの勝負は引き分けに終わった。
凰 小雷 (ファン シャオレイ)
6巻から登場。風術師の大家、凰(ファン)家の娘。14歳。向こう見ずな性格で激情的。反骨精神旺盛で、自分より強い綾乃や和麻によく反発する。
風の神器「虚空閃」を所有しているが、登場したばかりのときは正当な継承者ではなかった。それでも和麻を動揺させる程度には力を引き出していたが、「あの小僧自体は大したことない」という評価をされており、才能よりも虚空閃によって引き出された力のほうが厄介だと話していた。
クリスティアン・ローエングラムとガイアに家族を殺害され、復讐のために神凪を利用しようと日本に密入国した。まずは綾乃の力量を測るべく、正面から堂々と姿を現しての真っ向勝負を挑む。だが、苦戦を予感し綾乃は和麻に勝負を押し付けてしまう。小雷も和麻の態度と綾乃の挑発に業を煮やし、一方的に彼を敵視して襲い掛かってきた。父の直接の仇であるガイアを特に怨んでいる。
復讐のために女であることを捨て「小雷」という男の名を名乗っている。今では「俺」と自称しているが、過去の回想では「私」を用いている。本名は不明。
クリスティアンに胸を貫かれて瀕死の重傷を負うが、和麻によって虚空閃を継承させられ、一時的に増幅した生命力で一命を取り留める。目を覚ました後は、ガイアが倒されたこと、その背後にいるゴートの存在を聞き、「ゴートを倒すことは復讐よりも大事」と綾乃に話している。
以後は和麻の能力に目を付け、「俺のものになれ!」と告白。彼を夫として連れ帰り、政権を争う分家への牽制に利用しようとしている。いわゆる貧乳で、そのことに対してかなりのコンプレックスを持っている模様。激情的な性格だが、弄られ慣れていないため羞恥心にすぐ負けてしまい、言い返せず黙ってしまう。
基本的な戦法は、槍の長大な射程を利用し、相手を間合いに入らせないように攻め立てる。基本に忠実だが、それゆえに隙は少ない。しかし、相手を侮ってしまうこともあり、技を多く見せてしまうことからすぐに見抜かれてしまう。綾乃との二度目の対決では、術を用いない武器のみの決闘を行うが、あっさりと太刀筋を見切られてしまい敗北した。
他の技には虚空閃で強化された風を槍にして放つというものがある。刃という「面」ではなく、槍という「点」の力のため、貫通能力は相当に高く和麻の風の刃を破壊したほど。しかし、その威力を以ってしても父仇のガイアには殆ど通じなかった。
必殺技は、最大で九つの風の槍を一斉発射する「穿牙・九連(せんがきゅうれん)」。ただし、この技の名前は過去の回想でかたられたものであり、和麻との戦いで使用したものであるかは不明(和麻戦では九つの風の槍を発射したとだけ描写されており、技の名前は語られていない)。
和麻の風の刃を以ってしても、風の槍を打ち破るには5度の攻撃が必要であった。しかし、この技は螺旋状に放った風で削り取られ、攻撃力を持たないただの突風にされて和麻に破られてしまう。
李 朧月 (リ ロンユエ)
中国から来た道士の少年。通称、朧(ロン)。盗まれた宝貝(パオペイ)を取り戻すために来日し、煉と知り合う。後に留学生として煉の同級生になる。流星錘や体術と仙術を組み合わせて戦う、かなりの戦闘能力の持ち主。また、陰陽道など他系統の術も使用する。仙人や導士は基本的に自分の力を高めるため「個」を大事にする傾向がある。そのため力を借りるというような行為を好んでいない。朧も例外ではなく精霊術師を「所詮は精霊の奴隷」と考えている。
実は仙術における和麻の兄弟子で、外見は中学生だが、実年齢は百歳を超える。二人のこの関係は周囲には秘密らしい。修行時代、増長していた和麻を完膚なきまでに叩きのめしたことがあり、性格的にも和麻にとってはもっとも関わりたくない人物の一人。しかし煉によれば、二人とも性格や雰囲気がそっくり。現に利用できるものは何でも利用し、面倒ごとも平気で和麻に押し付ける。相手が降伏しても容赦なく殺すと宣言するなど和麻と似通った残酷さを持つが、相手を「弱者」と侮るため油断が生まれるのが欠点。弟弟子のことは「才能がある」と評価しており、老子の下できちんと鍛えたいという考えも持っている。一度は連れ戻そうとしたが成長した和麻を見て実力に納得し引き下がった。宝貝の精製なども行っており、風術に対する耐性をつけたコピーパペットを開発した。
煉のことは気に入っており正体を隠し、互いに友人として接している。そのため芹沢達也や花音から物凄い敵視されていたが、二人と煉の仲を深めるという作戦を(面白がって)提案したため一時休戦となった。花音には少なからず本性や正体に勘付かれており、人前で見せる笑顔が「目が笑っていない」ので怪しいと思われ、不思議な力を垣間見せたことから煉と同じ術者ではないかと見られている。
基本的な戦法は、流星錘を操作して対象を爆砕する一撃を放つというもの。ほか、空間系の仙術にも長けており、自分が楊の「奇門遁甲」に引きずり込まれた際、和麻と綾乃を「自壊因子(面倒を押し付けただけ)」として勝手に引きずり込ませた。また、吸血鬼の体内に形成された漆黒の空間を切り開いて脱出に一役買っている。実力は恐ろしく高く、和麻も「本気でやらないと勝てない」と評したほど。
霞 雷汎(シア レイファン)
風の精霊使いとして目覚め、重傷を負っていた和麻を救った男性。イラストでは無精ひげで総髪の男。その後、和麻からの申し出を受けて師匠となる。アーウィン・レスザールの儀式を止めようとした理由や、和麻を指導した理由など不明な点が多い。
日本生まれで姓は「八神」だったが、仙華した際に今の名前を名乗るようになる。和麻の去り際にかつての姓を授けた。和麻はこれを「もう二度と返ってくるな」という絶好の証と考えていたが、朧によれば「キミは何もわかっていない」とのこと。
博打を打ち、酒を飲み、女を抱く。一見俗っぽい性格だが、実際は一切の生物がいない孤独な空間に何千年閉じ込められてもビクともしない精神の持ち主と和麻は思っている。
仙人は自身を高め、人間の限界を超えようとする者。そのため、集団や他者を必要としなくなる傾向にある。そのため、精霊との調和を行い、力を借り受ける精霊術師を見下す傾向にある。朧月も精霊魔術そのものの力は認めているようだが、精霊術師は「精霊の奴隷」と和麻に語り、仙人を志すように説得していた。
ティアナ
声 - 真堂圭
風と繋がりの深い妖精。妖精という種族は、総じて享楽的で無思慮なため、人間をからかうことを生きがいとしている。彼女は、他人を転ばせたりとかいう無邪気なものではなく、事故を引き起こして生命の危機に晒すようなレベルの悪戯をするため和麻に灸をすえられてしまった。

その他の和麻の友人・知人

翠鈴 (ツォイリン)
声 - 牧野由依
香港の料理屋でウェイトレスとして働いている和麻の恋人。神凪を追われた和麻が流れ着いた香港で出会う最愛の人にして、癒えない心の傷。綾乃に負けず劣らず気の強い性格で、自分に抱きついてきた酔客を蹴り倒した和麻に対し、おぼんの縁でがつんと殴るという行為をとり、非難されたときは「いーのよ、和麻だから」の一言で済ます。こんな感じで和麻を尻に敷きながらも、彼を愛していた。
アーウィン・レスザールによって魔術儀式の生贄となり、魂の欠片も残さず消滅した(現状なぜそうなってしまったかは、不明)。
ヴェルンハルト・ローデスは儀式の場に残っていた彼女の残留思念からラピスを創造した。
どのような儀式だったのか不明であり、読者からは和麻が風の精霊使いとなった理由はこの儀式のせいではないかという見方もされている(和麻の回想では、自分がアーウィン・レスザールの使い魔に殺されそうになった際に風術師の能力が開花したとされており、翠鈴よりも自分の命の方が大事だったと卑小な己を呪っていた)。
藤野 沙希(ふじの さき)
「神凪和麻」の同級生。元気はつらつで自分に素直な性格。思ったことをすぐに口に出し、行動力も高い。
とある大学で友人の柚葉と一緒にいる時に和麻を呼び止め、その後一緒にいた綾乃から彼の境遇を聞かされた。さすがの彼女も神凪の行いには「厳しい一族なんだねぇ」と呆れと感心とどちらともつかない声音で答えていた。
和麻に「昔の柚葉は大人しい割りに、キレるとそれはもう凄いもんだった」と言われた際には「今はもっとグレードアップしているよ」と容赦のない返事をした。以後登場しない。
黄 影龍(ウォン インロン)
五巻の和麻の夢の回想にのみ登場。
九龍城(ガウロンシン)の商店街に軒を連ねる骨董屋「天水堂(ティンソイトン)」の主。見た目は好好爺然とした老人だが、実際は裏社会に身を置く名うての情報屋。それを知る者は少ない。
「神凪和麻」の職(何でも屋)を世話したりとあちこちに顔を繋いでもらっているため、和麻も頭が上がらない。日本語が不自由というのを言い訳に敬語を使わないでいる彼の心を見透かし、その幼稚な抵抗を笑って受け流している。
しかし、和麻の素性を知っており、危険に巻き込まれる彼に対し「のぼせ上がるな、若造。お前は選ばれた人間でも何でもない」と険しい眼差しで彼の行動を非難した。
それは和麻を危険に巻き込ませないように思ってのことであり、翠鈴から彼を離したくないという思いからだった。和麻もそれをわかっており、黄には感謝している。

アルマゲスト

本作の「敵」に位置する魔術結社。三百年以上前から存在しており、西欧を中心に活動する、近代魔術の最高峰とも謡われる権威ある組織である。 名前はプレイトマイオスの「大星表(アルマゲスト)」に由来する。その名のとおり元々は占星術を扱う者たちで構成されていたが、貪欲に様々な術者を募った結果、今の形に落ち着いた。 首領の仇である和麻を憎んでいる。和麻曰く、所属する魔術師たちは全員が最悪の愉快犯らしい。なお、魔術師だけが所属しているわけではなく、何も知らない一般人のみで構成されている支部も存在する。 ヴェルンハルト・ローデスを筆頭にする高位魔術師たちの会合――「評議会」が運営を行っている。 アーウィン・レスザールは存在そのものが疑わしく思われており(後述)、アルマゲストにおいて最高峰の魔術師はヴェルンハルト・ローデスであると見られている。

アーウィン・レスザール
声 - 小西克幸
魔術結社アルマゲストの首領。見た目20歳代、実年齢300歳以上の「絵に描いたような美男子」。術者であれば知らぬ者のない世界最高の魔術師であり、近代魔術の基礎を築き、失われた数々の術やその理論を復活させるなど多くの功績をあげた。ここ500年で最高の魔術師と評価する者もいる一方、その実在すら疑う向きもある。そのため「アーウィン・レスザール」という名は組織の長が襲名するもの、あるいは象徴的な存在としてみているのが一般の見解である。人前に姿を見せることがないのもそれに拍車をかけている。
首領については謎の部分が多く、大魔術師アグリッパの直弟子だとか、サン・ジェルマン伯爵その人だとか、魔術の世界において非常識な謎に包まれた人物である。
約四年前、和麻の目の前で、恋人・翠鈴(後述)の心臓を抜き取り悪魔に生け贄として捧げる儀式を行った。これは当時、まだ魔術を扱えなかった和麻にとって風術に目覚めるきっかけとなった。それから約二年後、復讐のために最強の風術師となった和麻に敗れる。その身体は100グラム以上の塊が無くなるまで徹底的に斬り刻まれた上、魂は契約していた悪魔に地獄に引きずり込まれ、奴隷としてコキ使われているか力に還元されて消滅したからしい。恋人を奪ったように彼自身も魂まで存在を抹消されてしまった。
ヴェルンハルト・ローデス
声 - 堀内賢雄
アルマゲストの実質的な運営機関である「評議会」の議長。首領アーウィン・レスザールは実在すら疑われているほどなので、一般からはヴェルンハルト・ローデスが世界最高の魔術師であると評されてきた。ヴェサリウスと名乗って、日本インターネットを使った妖魔憑依実験を行う。その本質は愉快犯で、何を考えて行動しているかよく分からない。特に演出に物凄くこだわっている。また、無意味に高性能なものを使いたがる。
首領の仇である和麻を苦しめることも目的のひとつ。
臆病だと思えるほどに慎重な性格だが、同時に自己保身にも長けており意外なほど大胆な行動を取る。拉致した煉と対峙した際は「炎術師と戦えば三秒で殺される」など、恥じることなく客観的に自分を見ることができる。
大勢の命を犠牲にしてベリアルの片腕を召喚し、その余波で一帯に甚大な被害が発生するはずだったが和麻たちに阻止された。殆ど戦う力もないほど疲弊しきった彼らの前に別れの挨拶のために姿を現した。ベリアルの召喚を行ったのも「挨拶のための理由のひとつ」と語っている。
疲弊しきった和麻たちを前にしても「勝てる気がしない。ベリアルの片腕を撃退する非常識さを見た後だと尚更」と言い、手を出すことなく撤退していった。なお、アニメ版では後方から厳馬が睨みを利かせていたため、撤退を余儀なくされた。
目的は実験だったらしいが、真意は不明。内海を見て「容姿に問題なければ素体の候補にしたい」と意味深なことを話していた。ラピスと揃って以後、登場しなくなったため目的は不明。
後述のミハイルと同じく、空間に干渉する魔術に長けている。ただし精密さはヴェルンハルトのほうが高く、空間に干渉して出口のない迷宮に閉じ込めたり、遠く離れた場所に通路を作り出入り口を形成したりすることが可能。警視庁特殊資料整理室によって魔術の類が封印された場所にも、平然と術式を展開して内海を助け出した。しかし、さすがのヴェルンハルトも迷宮を和麻に破られた時は驚愕を露わにしていた。
ラピス
声 - 牧野由依
翠鈴(後述)の残留思念からヴェルンハルト・ローデスが作りあげた人形。ゴシックロリータ調の黒いワンピースを着ている。巨大な水晶の剣を自在に操り、綾乃と互角以上に戦う。自ら考え、判断する知能は持っているが、そうではない「裡(うち)から湧き上がる感情」=「心」を欲している。唯一身近にいるヴェルンハルト・ローデスからろくでもない思想を吹き込まれ、人を陥れて喜ぶような、かなり問題のある「心」を手に入れつつある。去り際に和麻に大して翠鈴の思いをヒントとして語っており「私は貴方を殺したい」と言い遺した。
必殺技は、巨大な女神の幻像を創造し、虚影の剣を振るって絶大な威力を生み出す一撃。この技によって都庁は崩壊してしまった。
ミハイル・ハーレイ
声 - 喜多村英梨
操を利用した実験がてら、和麻を倒そうとした(見かけ上は)少年。金髪碧眼に小柄で華奢という容貌に見合った、幼い少年の口調で話す。だが、優位に立った際には傲岸不遜な本性を現し、追い詰められた時は手段を選ばない老醜な態度を見せていた。熟達の魔術師は全身に妖気を纏うことが可能とされており、ミハイルもまた妖気を細胞にまで染み込ませている。
アーウィン・レスザールの仇を討つよりも、それによって得られる栄光と名誉、地位の方を目的としていた節がある。
操には自らを「天使」と呼ばせ、正体を隠している。それを知った綾乃からは「変態」と言われた。
外見とは裏腹に、本質は邪悪。人間(の精神)を壊すことを享楽としており、当初は操を弄んで和麻に嫌がらせをしようとしていた。だが、数百の生気を取り込んでも壊れない強靭な精神に目を付け、本気で和麻を倒すための道具にしようと考え直す。
良心と倫理観を操から奪い取り、妖魔化させてスライムを使役させ、数百人にも及ぶ人間の生気を集めさせていた。生気を奪われた人間は死体も残さず溶解するか、干からびたミイラのような姿となって発見される末路をたどる。
切り札であるヴリトラが破壊され、逃げ場も封じられた時、恐慌寸前まで追い詰められた彼は操を人質に取った。だが、和麻の風によって手足を切断され、踵を叩きつけられて胃を破壊されてしまう。そのまま蹴り飛ばされて蒼炎で完全に焼き払われ、断末魔の叫びをあげる暇もなく完全に消滅した。
アニメ版ではヴリトラを破壊された後、そのまま和麻たちに恨み言を呟いて焼け死ぬという、原作と比べてライトな結末となっている。そのため操を人質にしたり、醜い本性を現すこともなかった。
術としては、転移(テレポート)が使用できる。この術を使って和麻の風の刃を避けるという芸当を見せた。ほか、操を核として結合させたスライムをドラゴンの形態に変異させることができる。これは操では使用できない。
ヴリトラ
ミハイルの配下であるスライムたちが操を中心に結合し、崇高な魔術回路を形成した状態。戦いやすいように白銀のドラゴンの形態を取り、頭部に入り込んだミハイルによって操作される。
必殺技は、自分を囲うように稲妻の檻を発生させ、数百発の雷球に変化させて発射する。ほか、漆黒の炎を吐き出す「竜の吐息(ドラゴンブレス)」を使用する。これは爪の先からも放つことが可能。何度ダメージを受けてもすぐに再生してしまう上に、操を核にしていることから炎に対して凄まじい耐火能力を持つ(神凪宗家並)。煉の黄金の炎を持ってしても深いダメージは負わせられなかったが、常態を取り戻した綾乃の炎には抗えなかった。最後は和麻の風と綾乃の炎の合体攻撃による「蒼炎」で操を傷つけないように、再生不可なほどにまで破壊された。
原作では合体攻撃のシーンは省略されているが、アニメ版では和麻の風によって炎雷覇の刀身に「蒼炎」を宿した綾乃の一刀両断によって滅された。

資格者(シード)

ヴェサリウスの妖魔憑依実験により、異能の力を手にした少年達。法の裁きを受けない上に、「自分は選ばれた特別な人間」と大半が思い込んでしまうため、好き勝手に暴れて他者を殺している。 能力が強くなればなるほど、内なる魔性に自我を喰われ、最後は完全に妖魔によって肉体を乗っ取られ、自我を失い、姿形も変化してしまう(まれに半分だけ人の形を維持するものもいる)。 憑依させられた妖魔は同一のもので、電子コピーとして複製されている。宿主と結合することで、その人間にあった能力を生み出すという特性がある(能力が同一でないのは、種となった妖魔が宿主と結びつくことで始めて開花するため、その宿主に合った能力になる。妖魔化後の形態も同じ理由で統一性がない)。 寄生された人間が力を渇望するたびに、契約として扱われ、魂だけではなく肉体まで妖魔と化していく。妖魔の正体は、魔界の大公爵「無価値」のベリアル(後述)。

内海 浩介(うつみ こうすけ)
綾乃と同じ聖凌学園に通う男子生徒。つぶれた蛙のような顔に肥満体形をしている。七瀬から「怪奇カエル男」と呼ばれた。一人称は「僕」で、常に他人の顔色を窺うような卑屈な性格をしている。しかし、妖魔を憑依されて資格者となり、法で裁けない「無敵の力」を手にしてから豹変。尊大で自己保身が強く、常に他者を見下す人間となった(ただし本質は変わっておらず、その精神は脆弱で惰弱)。
学力は非常に低いが、彼の親が総合病院を経営する資産家なので、学園への多額の寄付で落第を逃れたという噂がある(裏口入学したという噂もあるが、由香里によればデマとのこと)。
性格も外見通りで、写真部の取材という名目でテニス部女子のパンチラを狙って撮影したりなど、性欲に旺盛(特に七瀬を一番気に入っている)。それを七瀬に邪魔されたことを妬み、正当な仕返しとして女子の着替えを盗撮し、インターネットで流してそのアドレスを学園に広めようとしたが、これも失敗。逃走したところを七瀬に妨害され、更に女子たちから一斉に殴られリンチにかけられてしまった(入院するほどの重体ではない)。
その後、ヴェルンハルトの妖魔憑依実験により「資格者(シード)」となり、呪術を使用できるようになった。他、気合をためた一撃(作中ではか〇はめ波と書かれていた)を用いる。自分を嘲笑っていた女子生徒たちに呪術を使い、高熱を引き起こしたり、事故に合わせるなど災害に遭わせていた。更には脅迫して肉体関係を迫ってまでいた。
最後の獲物として七瀬を呼び出し、復讐しようとしたが不意打ちのスタンガンであっけなく撃沈。霧香たちに捕らえられ、能力を削除されそうになった。そこへヴェルンハルトの「メール」が届き、更なる力を望んだ彼は「YES」と答えてしまった。これにより、内海浩介は破滅への道を歩んでいくこととなる。
原作では挿絵にわずかに顔が映っているだけだったが、アニメではつり目で常に不機嫌そうな表情を見せるキャラクターとなっておりメガネをかけている。笑う際は人を見下すようないやらしい表情を浮かべる。
大魔術師(グラン・メイジ)
第四階位(フォースクラス)となり、本名と過去を捨てた内海浩介の姿。師匠とも言えるヴェルンハルトを殺害(したと思い込まされた)、以後は万魔殿の主を自称する。
能力として、相手を洗脳して命令を聞くだけの人形としたり、障壁を張って攻撃を弾き返すことができる。障壁に触れた者は反射により、重傷を負うような甚大なダメージを受けてしまう。また、魔法の杖を振ることで火の玉、電撃、氷のつぶてを放つことが可能。まさに性格が良く現れている能力であったが、和麻の風には遠く及ばず、バリアを紙のようにあっさりと破壊されて本来の臆病さを露わに泣き叫び、めちゃくちゃな攻撃を仕掛けていた。
その後、ラピスの口から、本物の「内海浩介」は妖魔によって精神を喰らい尽くされてベリアルの御許に捧げられていることが明かされた。自分はヴェルンハルトによって内海浩介の肉体に移植されただけの「精神コピー」でしかなく。そして、妖魔のコピーを移植されていただけの資格者とは違い、自分は原初の妖魔と融合を果たした唯一の存在だと思い込まされていたに過ぎなかった。本当の自分が死んでいることを知った彼は、精神の均衡が保てなくなり廃人と化した(耐えられるだけの精神力がないように設定されていたため)。最期は崩れ落ちる万魔殿と運命をともにし死亡した。
高松 清志(たかまつ きよし)
逆立たせた髪をオレンジ色に染め、派手なコートをまとった中二的な格好をした青年。自らを<炎の支配者>(ファイア・マスター)と呼称し、自分を「最強」や「王」と見ている。元々は発火者(イグナイター)と呼ばれるクラスで、クラスチェンジによって炎の支配者となった。
煉や花音の同級生である高松隆志の実兄で、それなりに弟思いの性格の模様。しかし、煉との対決に敗北した後は弟を見捨ててさっさと逃げ出してしまう。
ヴェルンハルトの妖魔憑依実験によって炎を顕現させる「魔法」を手にし、気に食わない人間や逆らう人間を焼き殺していた。弟の隆志の仇討ちとして、手下である不良たちを動員して煉、花音、芹沢を包囲。三人を焼き殺そうと攻撃を加えるが、炎術師である煉には遠く及ばず、数々の必殺技を披露した後に敗北する。妖魔を焼き尽くされて、ただの人間に成り果てた際には、煉という少年の存在に怯えていた。
必殺技を放つ際には大声で技の名前を叫ぶ癖がある。弟の隆志も芝居がかった台詞や態度を取ったりする。
ソフトボール大の火球をふたつ放つファイア・ブリット。翼長三メートルを超える炎の鳥をぶつけるフェニックス・ウィング。未使用だが、白光の竜巻を呼び出すシャイニング・トルネード。高熱を持った炎の渦を放つ究極奥義フレイム・ヴォルテックスを使用する。そのどれも煉には通用しなかった。
コウ
4巻、5巻に登場。容姿は乱雑に伸ばした茶髪と、黒い革ジャンに膝の抜けたブラックジーンズ。両手には、メリケンサックの代わりになりそうなゴツい指輪をいくつもつけている。足元は安全靴で固めている。と、いかにもヤンキーらいしなりをした少年。
ヴェルンハルトが行った妖魔憑依実験により、デジタル化した妖魔の力を受けた青年。地獄の猟犬(ヘルハウンド)と名乗り、異界よりガルムという魔獣を召喚して人間を狩っていた。警察官である石動大樹に対しても「ブッ殺して首を持っていけば上級クラスになれる」としか見ておらず、平然と彼を殺そうとしていた。
コウ自身はただの人間のため、魔術が破られた際はその反動が本人にモロに跳ね返る。その反動を受け流す術は持っていないが、「まがい物の力」のため、召喚した魔獣が死亡しても命までは共にすることはない(ただし、吐血するなど肉体的なダメージは受ける)。一度は大樹の異能に敗れ、逃げようとしたところを和麻に半殺しにされ捕縛された。しかし隙を突いて逃亡し5巻にて再登場を果たした。その際は名前設定がつき、容姿に「あちこちにブラ下げた銀のアクセサリー」と付け加えられた。
第二階位「悪魔召喚師(デビルサマナー)」となり、ガルムを超える魔獣を複数召喚できるようになる。
召喚する魔獣は、魔法反射能力を持つ鳩の姿をしたハルパス。巨大な狼のフェンリル。同じく巨大な鷲のフレスベルク。そして、もっと強力な魔獣であるファフニール、ムシュフシュ、ラクシャーサがいる。同じく第二階位であるシンと戦い、最初はハルパスの魔術無力化能力によって優位に立つが、「契約」の更新によってパワーアップしたことで形勢逆転される。フェリルはシンのジャベリンにより重傷を負い、フレスベルクは打ち抜かれて爆散していしまう。その最中現れた和麻にリベンジしようとするが、残りの魔獣はハルパスと共に風の刃によって瞬殺されてしまった。
地獄の猟犬と名乗っていた頃に使っていたガルムは火属性を有する魔獣で、体格も大きく口腔からサッカボール大の火球を放つ。口に銃弾をぶち込まれても平然としており、逆に弾丸を噛み潰して吐き出していた。
その後、コウは和麻の手袋によって無理やり記憶に干渉され、廃人になり果ててしまった(和麻曰く、強い心を持っていれば発狂するだけで済むらしい)。
シン
コウと対戦していた光の能力者。第二階位「閃輝(シャイニング)」。
ヴェルンハルトの妖魔憑依実験により、光をレーザーのようにして放つ力を手にした。コウとは違い、オカルトな知識を持っているため魔術が破られた際の反動についても知っており、それを「返りの風」と称している、
見た目は才知溢れる優男だが、自分の能力と存在を凄まじく過信しており、他者を見下す傾向を見せている。コウとの対戦中に追い詰められ、更なる力を望んだことで妖魔化が進行。金色の瞳と獰猛な牙という容貌に変化し、圧倒的に増強された視力によって簡易的な予知能力を手にした。
その最中、和麻が乱入してきたことで彼と対決。「風よりも速い光」を扱うため勝利を信じて疑わなかったが、和麻の「光よりも速い風」を目の当たりにして絶望する。片腕を切断され、抵抗もできなくされてからゴミ扱いしていたコウと同じ末路を辿る。
基本戦法は、現存する資格者(シード)の中でも最速と呼ばれる「光」を使うこと。
必殺技は「光槍(ジャベリン)」。右手を突き出すことでレーザー光線を発射する。物理的な力だが、その熱量と速度は相手に視認する暇も与えず貫く。この技(スキル)で風使いを二人倒しているため、和麻のことも格下としか見ていなかった。
烈牙(ファング)
ヴェルンハルトが放った刺客。能力を見せる前に倒されたので、どのような力を持っていたのかは不明。
和麻を倒せばさらなる力を与えるとの話を受け、公園に訪れた彼を始末するべく、仲間(あるいは手下)を連れて登場。和麻に何度も「死ね」と連呼し、人殺しになるのをためらう素振りを見せなかった。和麻の存在を「おれに経験値を寄越すためにだけ生まれた」と称し、「ボーナスキャラ」である彼を殺してクラスチェンジを果たそうとする。
一斉に和麻に襲い掛かるも、風圧で両足を折られてあっさり敗北。仲間(手下)共々半殺しにされ、記憶に干渉されコウたちと同様に廃人と化した。
ナンパ男
4巻の冒頭で和麻と一戦交えた資格者の青年。チンピラよろしく街中で綾乃をナンパしたが、ごく自然に無視された上に、和麻との痴話喧嘩を見せ付けられ激昂してしまう。その後、綾乃から「引き際をわきまえない馬鹿ってイヤよね」と言われ、激怒して和麻との戦いに突入した。
能力は「身体能力強化」。平均的な細身の青年から、極限まで鍛え上げたようなボディビルダーを思わせる異常な筋力を手にすることが可能。常軌を逸したパワーは、和麻の返し技を以ってしてもさばくことができなかった。筋肉の塊を思わせる姿でも、そのスピードは常人では捉えきれないほど早く、「突然消えた」と錯覚させるほど。
自然治癒や耐久力まで強化されており、本来なら意識を失うほどの攻撃を受けてもすぐに立ち上がり、ぼやけていた意識も即座に回復していった。生半可な攻撃では通用しないため、「強烈なひざかっくん」で膝の靭帯を切断され、苦痛に仰け反ったところを後頭部に肘打ちを入れられて再起不能となった。
力を使った反動でミイラ化してしまうが、命に別状はない模様。その後、連絡を受けた霧香たちに保護された。
身体能力が強化されても、彼自身は武術の達人でもない戦いの素人。そのため攻撃や動作には技術もなにもなく、勢いに任せてただ殴りかかってくるだけだった。そのため、人間をはるかに超えるパワーを手にしても、超一流の和麻には遠く及ばなかった。

精霊喰い

四属性の精霊と神器を用いた魔術儀式を行おうとしている者たち。目的のためには手段を選ばず、仲間になることを拒んだ小雷の家族を殺害し、更には神凪から炎雷覇を強奪しようとしていた。どのような魔術儀式なのか、四つの異なる属性の精霊をどのようにして調整するのか。神凪だけ敵に回すような態度を取っていたのはなぜかなど、色々謎が多い。

ゴート
そこにいるだけで世界を殺す存在であり、周囲の精霊を常に喰らっている黒髪の男。遥か昔に絶滅したと言われる精霊喰い。クリスとガイアの後ろにいた黒幕である。
パワー不足だったとは言え、綾乃と和麻の一撃を容易く喰らってしまった。
神凪1000年の歴史上でも精霊喰いについては触れられておらず、「出会ったら気をつけろ」などの注意もない。存在していたという噂があるだけの謎の存在。
クリスティアン・ローエングラム
白銀の髪、琥珀の瞳の美形の水術師。通称、クリス。四大神器を用いた大規模な魔術儀式を行うと称し、炎雷覇を奪いに来日した。鞭やレイピアの形態を取る水の神器「水霊(みずち)」を所有している。水術師としての腕は後述のガイア同様一流。典雅な立ち振る舞いを見せるが、その性はサディスティックで暴悪。勝つためにはどんな策をも用いて、それを卑怯だとはまったく思わず当然のことだと思っている(ただし、自分がされた時はまた別の意見が出る)。
綾乃との戦いに二度の敗北を喫し、顔の半分が無残にも焼け爛れ、右腕も付け根から失い、死以上の苦痛を味わうこととなった。怒り狂って綾乃を追って来たが、ゴートの出現で冷静さを取り戻し、彼とともに退却したため生存している。
必殺技は、巨大な水球を頭上から放つ一撃。圧倒的な質量ですべてを押しつぶしてしまう大技。また、小技として散弾のように水滴を飛ばして攻撃することが出来る。
綾乃と二度にわたって対決するが、全て敗北。常に典雅な振る舞いや言動を魅せるが、プライドを傷つけられると途端に地が出る。普段とは逆に、地は「調子に乗りやがって」のように乱暴な口調。
ガイア
ドワーフのような体型をした地術師。第六巻のラストボス。ゴートを除けば、本編で戦う最後の相手とも言える人物。筋骨隆々の肉体だが、背丈が低く低重心。だが、恵まれた体格は決して短躯とは呼べない。
小雷にとって「父親の仇」に当たる人物。
クリスティアンから某大作映画のキャラクターの名前で呼ばれてしまったことがある。だが、彼を「仲間」と言ったり、窮地を救うなどからしてコンビとしての間柄は問題ない模様。逃走する際も気絶したクリスを見捨てず連れて逃げている。
既存の精霊術師との考え方とは大きく異なっており、精霊を友人・肉親として扱わず「そんなもの」程度にしか見ていない。だから精霊を喰らう妖魔を平気で従えていたため、和麻の怒りをかっていた。
なお、風術師を劣弱と見下しており、「速さだけが取り柄で重さのない攻撃しかできないから、所詮は戦える階級(クラス)ではない」と見ていた。しかし、和麻との戦いでは圧倒的な力で遊ばれ、「重さのない攻撃でもなんとかなるもんだな」「ま、それ(速さ)だけが取り柄だしな」と嫌味を言われてしまった。
小規模、あるいは巨大な地割れを起こしたり、土砂の波を放って攻撃する(ただし、巨大な地割れはその場で前もって準備をしなければならないため、瞬時に出すことはできない)。また、地面に相手の足を埋めて動きを封じることも出来る。
和麻に重傷を負わせる際にはなった技は、岩盤を無数の水晶へと変形させミサイルのように発射するというもの。
クリスティアン・ローエングラムと共に炎雷覇を奪いに来日した。巨大な戦斧の形態を持つ地の神器「埜槌(のづち)」を所有。戦うことではなく勝つことが大好きな戦闘中毒者(バトルジャンキー)。和麻と戦うまでその自覚がなかったという性質の悪さ。クリスティアン同様勝つためには手段を選ばない。また、「死ぬともう戦えない」と考えているため、生き残るためなら死んだ振りでも下劣な取引でも行う。
和麻を好敵手と見出し、一対一で対決。妖魔・風喰(かぜばみ)を引きつれ、周囲の風の精霊を喰らうことで和麻の風術を封殺した。一瞬の隙を突き、前述の技で重傷を与え、後一歩というところで背後から飛んで来た風の刃に首を切断され、更に頭部と肉体を切り刻まれて完全に破壊されるという末路を辿る。

敵対関係

ロナルド・ウォレス
白髪、鷲鼻とおとぎ話に出てくる悪い魔法使いそのものの風体をした老人。死霊使い(ゴースト・テイマー)の異名を持つ死霊術師(ネクロマンサー)。漂う亡霊を捕らえ、死霊として手駒にする。
死霊使いの異名は、呪殺はせず、他者に死霊を憑依させ、操って標的を物理的に殺害すると言う手段から。そのことから呪的暗殺者とも言われる。
中でも有名な話は、三年前にたったひとりの人間(マフィアのボス)を殺害するために、120人の人間に爆弾を持って特攻させ、300人の死傷者を出させたこと。
霧香の殺害を目論んだが、綾乃の妨害に遭い、ふたりまとめて始末しようとする。水晶玉を通してふたりの様子を見ているところへ和麻が現れ、振り返ると同時に首を切断されて死亡した。しかし、死霊使いが死んでも操られた死霊が解放されることはなく、目的を達するまで行動し続ける。
楊 飛浪(ヤン フェイラン)
朧の蔵から宝貝(パオペイ)を盗み出した40代の中年道士。水晶玉を覗いた者を洗脳したり、罠を仕掛けたり、封印された妖魔を配下にするなど卑怯な手段を用い、決して自分では戦おうとしない。
実力自体はたいしたことはないが、性格は尊大で傲岸不遜。常に大物ぶった態度をとって他人を見下しており、綾乃を「精霊術士ごとき卑賤の輩」と馬鹿にしていた。和麻に「大物ぶった態度ははたからみると馬鹿丸出しだからやめとけ」と言われ、激昂した。
朧の蔵から宝貝を盗み出したため、命を狙われている(宝貝を取り返すことよりも、楊の殺害が優先されている)。占い師に扮装して洗脳した花音と芹沢に宝貝を与え、朧と煉の抹殺を計った。芹沢に両刃の直刀の宝貝による近接戦闘を仕掛けさせ、花音に渡した遠隔攻撃用宝貝・火竜鏢(かりゅうひょう)で三人を仕留めるという作戦を開始するが、花音は和麻に破れ、計画は失敗に終わる。
罠を仕掛けて朧たちを迎え撃とうとしたが、仕掛け終わるよりも早く居場所に乗り込まれたため、これも失敗。追い詰められた楊は、宝貝・大極図のレプリカを用いて戦う。が、これも効力に時間制限があったため、失敗。絶対的な死を覚悟した際に、最後の宝貝・紅葫蘆(べにころ)で朧との相討ちを狙うも和麻に妨害され、真っ二つにされて死亡した。
典型的な小物として描かれていたが、それでも死を覚悟した敵は侮れないという手本を見せていた。
戦法は、導士らしく空間に干渉した術を用いる。奇問遁甲(きもんとんこう)と呼ばれる術によって対象を迷路化した結界に取り込ませる。出口は八つあるが、正解を見つける方法は通る以外なく、外れを通った場合ロクでもない目に遭う。中でも「死門」と呼ばれる外れは通り抜けた瞬間に即死するという最悪なもの。ほか、水晶玉を覗いた人間の意識を奪い、傀儡とすることが可能(洗脳されている時もいくらか記憶に残る模様)。
更に大極図のレプリカと相性がよく、和麻の風の刃を無力化したり、手駒の妖魔が木っ端微塵に破壊されても一瞬で復活させられるほどの力を引き出した。
白和麻(ホワイトかずま)
朧が作った複製人形(コピーパペット)という宝貝。風術に対して強力な耐性があり、コピーした和麻の思考を読むことが出来る。また、縮地(しゅくち)という術を用いて空間に干渉し、距離を短縮して動くことが出来る。その技術を持って和麻から逃げ果せた。身体能力も和麻同様に高く、不良数人を一瞬で叩き伏せてしまった。
和麻と瓜二つの容姿だが、挿絵では全体的に若干白っぽく描かれている。性格はオリジナルとは逆に、誠実で心根の優しい青年であり、無償で人助けをすることが生きがいとなっている。というよりも、良心回路というものが組み込まれており絶対に人を見捨てられない「究極のお人よし」として生まれている。
和麻が物理的なショックを与えてしまったため、一部の機能が破損してしまい、自分自身を本物の和麻だと思い込んでしまっている。風術は使えないが、和麻の術の軌道上にいる綾乃を護るという思いにより、一瞬だけ和麻の風と拮抗するも、そのまま消滅した。
本物より誠実で優しい人間として描かれており、特に綾乃に対してはかなり優しく接しており、愛情が窺えた。
和麻の風の刃を躱すと綾乃に当たる、という状況に追い込まれてしまい、身を挺して綾乃を護ろうとした。しかし、和麻は「この程度で綾乃が死ぬはずがない」と見越しての行動だった。実際、白和麻が消滅した際に狙いが外れた風の刃が綾乃へと飛来したが、彼女はあっさりと炎で焼き尽くしてしまった。
佐伯竜二(さえきりゅうじ)
自分は特別「ツイている」と思い込んでいる男性。初めて犯した盗みが成功したため、味を占めて何度も引ったくりを犯して生活をしていた。
その所為で自分は幸運に恵まれていると思っていたが、警官に追われることとなり、逃げている最中に煉、綾乃、和麻を人質に取ろうとして、病院送りの重体にされてしまう。
煉に関節を決められて無理やり逃げたまではよかったが、綾乃を人質にとって膝の皿を砕かれ、執念で和麻に狙いを定めるがあっという間に蹴り飛ばされ、不運にも吹っ飛んだ先に綾乃がいたため「来るな!」とぶっ飛ばされ、更にとんだ先に和麻がいたため、という風に打撃の嵐でピンボールよろしく弾き飛ばされていた。
警官に保護される佐伯の姿を見た七瀬に「特別ついてない人間もいるんだな」とコメントされてしまった。
柴田(しばた)
髪を七三分けにし、銀縁眼鏡をかけた三十代前後の男性。岡島組の若頭を勤めているインテリヤクザ。組長の娘を誘拐した和麻(実際は意にそぐわない結婚をさせられそうになったため、娘が和麻に逃亡の手助けを依頼した)のマンションに子分を連れて現れ、先手を打って室内に手榴弾を投げ込むなど思慮に欠けた部分がある。
そのことを煉から指摘され、「家の中に娘さんがいたらどうするんですか」といわれたが、部下と一緒にその話題は無理矢理流してしまった。

一発キャラ

ただの一般人でありながら、超常の力を持つ綾乃たちにぶっ飛ばされるという、かわいそうな扱い。あるいは妖魔の被害者となってしまった人たちを記す。

坂本(さかもと)
山手の高級住宅街にトルコの後宮(ハーレム)のような屋敷を構える資産家。見た目は貧相な男だが、自己顕示欲が強く、その反面なかなかに用心深い性格。屋敷の至る所に監視カメラが設置されている。
屋敷の一室に取り付いた悪霊の除霊を和麻と結城慎治に五十万で依頼。ダブルブッキングとなったため、坂本は「悪霊の除霊に成功した方に残りの報酬は払う。どちらにも前金は返せとは言わない」と提案。元から勤労意欲の乏しかった和麻は下りてしまった。
しかし、実際には悪霊の背後には妖魔が隠れており、それに気づかず放った慎治の炎を取り込んで活性化。室内は火の海となったため坂本は全身に火傷(重傷と言えるほどではない)を負ってしまう。
結局は一千万と引き換えに和麻によって助けられることとなり、逆らうようなマネはしなかった。
花木 悟(はなき さとる)
綾乃のナンパに失敗した男ふたりが、報復のための助っ人としてつれてきた男性。力関係は花木の方が上の模様で、そのふたりからは敬語敬称で呼ばれていた。少林寺拳法を習っており、体格も格闘家として鍛えられたものとなっている。
勝ち誇って綾乃の顎を持ち上げようとした瞬間、「気」のこもった拳打を喰らって壁に吹っ飛ばされ、大怪我を負ってダウンしてしまう。子分のふたりも綾乃によってあっさりと気絶させられてしまう。
やられ役でありながら、フルネームの設定があったという贅沢な扱い。
高橋 修治(たかはし しゅうじ)
二十歳の大学生で、フェンシング部のレギュラー。屈強な肉体を持っていたため、操の生気集めの被害者となり、スライムに取り込まれてミイラにされてしまう。
彼だけではなく、操(を隠れ蓑にしていたミハイル)によって千人近くの人間の命が奪われた。
悠人(ゆうと)
遊園地で少女ふたりに対し、痴漢か誘拐犯のような態度で迫っていた四人組のひとり。仲間ふたりが激怒した綾乃に蹴り倒された後、敢然と「てめえ、コラ!」と迫ったがボコボコにされてしまう。勇ましい声から断末魔の叫びへと移り変わり、最後は何もしゃべれず意識を失っていった。
沢渡 唯(さわたり ゆい)
愛犬のブランカを追って廃墟と化した屋敷に入り込んでしまった幼女。彼女の命はその屋敷に巣食う吸血鬼によって奪われ、魂を一時的に操作されて侵入者を罠まで誘導する餌として操られていた。
煉と朧を地下室まで導いた後は、突き落とし、吸血鬼の体内に閉じ込めた。その後、朧の発言によれば「闇に還った」とのこと。

人外の者

風巻流也(に憑依していた名もなき妖魔)
風巻流也に憑依させられた上級妖魔。記念すべき第一巻のラストボス。アニメ版では“ゲホウ様”と呼ばれている。
普段は流也の肉体をベースに行動しているが、綾乃の術によって流也の肉体を焼き払われたため真の姿を現した。粘土を人型にこねたような不細工な造形で、指もなければ関節もない。正視するのも耐え難いおぞましい姿となった。
その妖気の強さは和麻曰く「中国の奥地で会った三千年生きた吸血鬼とタメを張る」らしい(この吸血鬼は和麻も尻尾を巻いて逃げ出したほどの強敵)。さらに、周囲の精霊を発狂させて操るため、和麻と綾乃の2人がかりでも苦戦した。その実力は綾乃に「最強の風術師」と認識させたほど(5巻の綾乃視点では、成長した和麻のほうが上となっている)。
スライム(ヴリトラ)
名前の通り、スライム状の妖魔。人間の精気や肉体を吸収し、それで得た熱量(エネルギー)を消費して活動する。単体では非常に弱いが、数が半端ではない上に、集団になるとそれらの間に魔術回路が形成されるという厄介な性質を持つ。妖魔となった操を核として活動しており、ミハイル・ハーレイの術式によって集合体となることでドラゴンの姿であるヴリトラとなる。
是怨(ゼノン)
三百年前から存在していた妖魔。第三巻のラストボス。
岩を削ったような体躯に、口腔からは凶暴な牙が生え揃っているのが特徴。尻尾まで含める体長は100メートルを超す。最初は不定形だったが、人間と戦っているうちに方向性を与えてしまい、巨大な亀に酷似した形態となった。どうやっても倒すことができなかったため、石蕗家によって封印され、これ以上力を与えないように存在を隠蔽されていた。
長らく富士山の火口に封印されていたが、石蕗宗家の長女・紅羽に分身を憑依させて洗脳し、復活させた。紅羽の憎悪がわずかに混じっており、和麻たちに対する敵対心は強い。
和麻でさえも知覚することのできない、長距離の瞬間移動能力を持つ。正確には「身体を気に還元して龍脈(風水における山脈)を移動し、再構成する」ことで長距離の移動能力を獲得している。ただし、再生するのに一瞬のタイムラグが発生するのが弱点。
ダメージを受けるたびに瞬間的に再生し、肉体を強化するという厄介な特性を持つ。和麻も「キリがねぇ」と弱音を吐くほど劣勢に追い詰められてしまったほど。再生能力を絶つには、地術士同様大地から切り離す必要がある。真由美と亜由美のふたりがかりでの術で動きを封じられ、和麻によって上空へ打ち上げられて地面から切り離され、煉と綾乃の合体攻撃で粉々に粉砕された。この時放った煉の炎は、綾乃を凌駕していたかもしれなかったほどの威力を持っていたという。最後は和麻の風によって散りひとつ残らず完全消滅させられた。
戦法は強力な地術と重力場を操ること。紅羽のものとは比べ物にならない、ブラックホールが発生しそうなほどの重力を生み出せる。また、全長二メートルはある岩の蛇を数十匹生み出し、防御、攻撃に使用することができる。蛇の口腔からは重力砲(グラヴィティ・ブラスト)が発射され、一瞬で屋敷も消滅させる破壊力を持つ(爆発も炎上もない「消滅」である)。
蛇の召喚は、キャサリン・マクドナルドが扱う精霊獣を彷彿させる。同様の術式であったのかは不明。
ベリアル
「無価値」を意味する名を持つ、極めて高位の大悪魔。第四巻-五巻をあわせた長編のラストボス。アニメ版では、最終話に登場。
その身に凄まじい瘴気を纏い、地上に君臨すれば世界を滅亡に導くほどの絶大な力を誇り、たとえ契約者であろうと、神炎使いであろうと人の身では抗することなどできない。あまりに強大な存在のため113人の魂を捧げても片腕を数秒間召喚することしかできなかったが、それでも東京一帯を壊滅させるほどの能力を持ち、和麻、綾乃、煉による全身全霊の合体攻撃で片腕の出現による瘴気をやっとのことで相殺した。召喚に使用された新宿中央公園は瘴気が浸み渡り、被爆地のように草木が育たない不毛な土地と化していたが、後に和麻によって浄化された。
精霊喰い
在るだけで世界を殺していく存在。精霊を貪り喰う為、精霊術師にとって天敵であるが、精霊を捕食する能力には限界があり、それを上回る精霊術で攻撃できれば倒すことが可能である。和麻はゴートを見た際にとっくの昔に絶滅したと思っていたと言っている。
風喰(かぜばみ)、焔凪(ほむらなぎ)
ゴートによってクリスとガイアに与えられた妖魔。妖魔そのものは貧弱だが特定の種類の精霊を喰らう為、術師は精霊を集められず強力な術を使うことが不可能になり、またこれらは喰らった精霊の種類の術を使用する。ただし、距離が離れすぎていれば、食い尽くされないほどの強力な攻撃で倒すことが可能。その距離は20メートル以上だという。
炎の属性の妖魔
一巻で初めて和麻が戦った妖魔。資産家である坂本の屋敷に巣食っており、悪霊の影に隠れ潜んでいた。歪んだ顔が張り付いた火の玉という形態を持つ。
炎の属性を有しており、神凪分家の一員である結城慎治の炎を喰らって活性化。一室を炎の海へと変えたが和麻の風術によって抵抗することもできないまま消滅させられた。
土蜘蛛(つちぐも)
節足動物である蜘蛛に酷似した形態を持つ妖魔。八本以上の足を持ち、全身を汚らわしい剛毛に包む。
壷の中に封印されていたが、それも弱まり始めたため、綾乃と雅人、武志の三人に討伐の依頼が入る。封印が敗れた直後に綾乃と一騎打ちを繰り広げた。霊気を遮る糸を武器に、時には防御に用いる。繭のように吐き出すことで綾乃の炎を防ぐという芸当を見せた(手加減したわけじゃない一撃を防がれ、綾乃のプライドに傷がついた)。今度はより強力な炎によって爆砕され、痕跡も残さず消滅させられてしまう。
その直後に、流也の襲撃によって雅人と武志の命は奪われることとなった。
夢魔(ナイトメア)
建築途中の状態で放置されたビルに巣食っていた妖魔。ビルの取り壊しをしようとする人間を襲い、5人を昏睡状態にした。目覚めたふたりは自殺し、残りの三人は目を覚まさないまま衰弱していった
綾乃を不意打ちで術中に捕らえ、続けて和麻と煉をも術中に納める。過去、未来、問わずその人間にとっての悪夢を見せると言う能力を持つ(煉は、まだ会っていないはずの、将来恋人関係になる少女から攻撃された)。偽物の和麻(綾乃にとても優しい性格)を生み出し、綾乃を騙していたが「煉を見捨てて綾乃を優先する」発言をしたため、すぐに見破られてしまう。偽物が綾乃を挑発したため、猛烈な勢いの炎が発せられてビルごと焼き払われ、夢魔は逃げる間もなく浄化された。
夢魔和麻(ナイトメアかずま)
綾乃にとって「和麻とのラブロマンス」が悪夢だったため、彼女の悪夢として夢魔が作り出した存在。態度や仕草は和麻とまったく同じだが、綾乃に優しく振舞っており、煉より綾乃を心配する言動をしたためすぐに正体を見破られてしまった。
「モテない女に夢を見させすぎたか」と挑発したため、ブチキレた綾乃の炎によって焼き尽くされた。
ケルベロス
冥界の門を守護する三つ頭の魔獣。亡者が現世に迷い込まないように門番をしている。
巨大な犬にも酷似した肉体をベースに、漆黒の体毛や凶悪な牙を持つ。綾乃の炎雷覇を牙で受け止めるなど、炎に対して強力な体勢があるだけではなく、牙自体の威力も凄まじいことがわかる。
子供が人間界に迷い込んでしまったため、海面を疾走して東京へ上陸。我がこのためならと、子供への愛情は綾乃と和麻も苦戦させるほどの力を見せた。負傷した傷口を炎で焼き払い、無理やり血止めするという荒業には綾乃も度肝を抜かれていた。
キャンディ
ケルベロスの子供。名前は由香里がつけた。
現世に迷い込んだところを由香里に拾われ、首輪をプレゼントされる。名前も付けられるほど可愛がられていたが、親が迎えに来たため引き離されることとなる。
由香里とケルベロスでキャンディの取り合いをしていたが、首輪がちぎれたことで「母親の方に帰るのがいい」と考えることとなった。
ボルバトラーV初号機
総合科学者(ネクシャリスト)を名乗る老人・盾隼人博士によって生み出されたゴーレム。全長五メートル。将来的には未知の大型魔獣の対策として用いられる予定(和麻からは欠点をことごとく指摘されていた)。
その装甲は対戦車ミサイルを打ち込まれても傷ひとつつかず、完全破壊されても二十五分で再生する。倒すには核を完全に破壊しなければならない。
暴走を始めてしまい、止めるために破壊衝動の人格である熊谷によって完全に破壊され、ただの瓦礫の山となった。しかし、再生して再び立ち上がる。今度は綾乃によって核も完全に破壊されたため、起動不能となった。
三種の複合妖魔
警視庁の地下室に安置された倉庫。そこの壷に封印してあった妖魔のうち三匹が融合した姿。熊のような肉体を持ち、頭部にはイソギンチャクを思わせる触手が生えている。更に全身に絡みつくように蔦が伸びており、攻撃にはこれを用いる。
攻撃戦法は、蔦を用いての中距離攻撃。つかず離れず戦うため、綾乃も次第に裁ききれなくなり、スカートを撫でられるという屈辱を味わう。
霧香直属の上司である刑事部長と、既に隠居済みの元整理室長・久米を取り込んでいる。だが、久米は「何もできず取り込まれた」ことを恥じ、妖魔の支配に抗おうと反逆を開始。精神体である妖魔は絶大な精神力を持つが、久米は猛烈な「性欲」によって妖魔の支配権を奪取。綾乃の尻や胸を触れるか触れないかというセクハラ攻撃に終始していた。
吸血鬼
肉体が闇によって構成されている存在。そのため光に弱いが、標的を体内に取り込んでしまえば「闇」しか存在しない世界に連れ去れるため、精霊術士の能力を封殺することが可能。廃墟となった屋敷を根城にしており、討伐に来た和麻と綾乃を体内に取り込むことに成功。しかし、煉のことを「護られるだけの無力な存在」だと思っていたため、精霊術士とは気づかず彼を従属にしようとした。そのため洗脳されたフリをした煉によって和麻たちは救い出され、体内から綾乃の炎で燃やされて消滅してしまう。
後に復活するが、半ばゾンビのようなもので以前の姿を形成できなくなっており、屋敷に入り込む者を手当たり次第喰らっていた。今度は煉と朧を体内に取り込むが、空間干渉に長けた朧によって脱出を許してしまい、煉の炎によって今度こそ完全に焼き払われた。
なお、一巻では三千年生きた吸血鬼の話が和麻から軽く語られている。和麻も尻尾を巻いて逃げ出したほどの相手だったという。
窮奇(きゅうき)
古代中国の西方で暴虐の限りを尽くしたと言われる、四凶(しきょう)と呼ばれる四体の魔獣、その一。巨大な虎の形態を持ち、前足の付け根辺りに猛禽の翼を生やしている。
楊によって封印の祠から解き放たれ、以後は彼の手駒として使役されていた。和麻と綾乃の前に立ちふさがるが、炎雷覇の黄金の炎によって跡形もなく消滅した。
楊は他にも十数匹の妖魔を手駒としており、それらは窮奇と同格以上と語っていた。
開明獣(かいめいじゅう)
前述の窮奇と同じく虎の形態を持つ妖魔。ただし、こちらは頭部が人間のものとなっている。楊によって封印から解き放たれ、手駒として朧たちに襲い掛かる。
烏天狗(からすてんぐ)
鷲の形態を持つ妖魔。手にした刀を武器に、大極図によって発生される「門」を通り、空間転移によって対象の背後に回りこんで攻撃する。しかし、大極図が効力をなくしたため、「門」を潜り抜ける瞬間に門自体が消滅。胴体を寸断されてしまい、最後は朧の流星錘によって頭部を粉砕された。
人狼の妖魔
漆黒の体毛を持つ、野卑な目付きの妖魔。強力な人狼は銀の美しい体毛を持つといわれているが、この妖魔はさほど位の高い相手ではなかった。煉の放った黄金の炎で一瞬にして消滅した。
モテない男の怨霊
生前、異性にもてはやされたいという願望を持ったまま死んだ男の怨念がカタチとなったモノ。根源となる思いが凄まじくくだらないが、ないように反して力自体はなかなか強い。そのことから死ぬまで女にモテたいと考えていたと見られている。真っ赤で巨大な男の顔という姿を持ち、血涙を流しながら「尻軽女どもめ! 誰でもいいならなぜ俺の所にこないのだああっ!」と叫ぶ。
そのため、モテる男にのろいをかけ、更には男にくっついていく女にまで呪いをかけていた。とある遊園地のお化け屋敷を拠点として活動している。
霧香からはそのイタさに呻かれ、綾乃は逆上して逃げられないように、そして時間をかけて炎で焼き払ってしまった。
サトリ
原人や猿人に近い容姿をした妖魔。相手の心を読むことができる。そうやって相手を怯えさせ、その感情を食事としている。自分でも弱点はわかっており、「無意識の行動じゃないと倒されない」と豪語している。ただし、身体能力は人間に毛が生えた程度。
倉橋と熊谷のコンビに討伐されそうになるも、上手く二人の心を読んで同士討ちを誘発させた。熊谷の念導弾を倉橋に当てるように動いたが、熊谷が無理をして軌道を曲げたため殺害には至らず。しかし、熊谷は無理がたたって戦闘不能となる。
その後、和麻と綾乃に討伐されかけ、敵わないとみたサトリは土下座して命乞い。和麻の提案で「二千キロほど離れた場所へ追放」となり、彼の風で空中へと弾道飛行をさせられた。だが、すぐに風の影響から放り出されてしまい、物凄い勢いで海面へと激突し、死亡。和麻はこうなることがわかっていて行ったが、「そんなことは当たり前だから考えもしなかった」ため、サトリに読むことができなかった。
黒妖犬(ブラックドッグ)
漆黒の体毛を持つ子牛並みの体躯の魔犬。主にイギリスあたりに出没する。綾乃クラスの術者ならてこずらないが、それでもレベルは高いほうの模様。
由香里の計略で魔法少女のコスプレをした綾乃と対峙し、その威圧に気圧されて縮こまったところを炎雷覇で何度も貫かれ、ホラー映画の殺戮シーンのような被害者となってしまった。
百足(むかで)
全長1メートルにも及ぶ巨大な百足。妖魔や魔獣というよりも、虫に近い存在らしい。普段は隠れているが、得物が来ると一斉に姿を現し、百匹以上の包囲網を張って襲い掛かってくる。単体では弱いが、その分人海戦術で攻めてくるという厄介な相手。
太一郎の援護と煉の黄金の炎のコンビネーションで全て焼き払われた。
淫魔の亜種
七瀬に取り付いていた妖魔。情欲を刺激するのではなく、その人間の内なる願望、欲望を無理やり表出させると言う特性を持つ。効果も用途も限定されている分、強制力はかなり強い。しかも、並大抵の術者でも影響を受けたことに気づけない。和麻もすぐには気づけず、綾乃を優しく抱きしめると言う行動を取らされてしまった。
しかし、久米には見破られており、七瀬を助けるためにバチカンのエクソシストから購入した聖水を飲まされ追い出されてしまう。直後、綾乃の炎で焼き払われてしまった。
ただし、久米は妖魔の影響を受けていないのに口移しで聖水を七瀬に飲ませようとしたため、御用となった。
最後の聖痕に登場した、実質最後の妖魔(その後の話で妖魔が登場しているが、モブキャラのようなものでどの容姿かも描写されず綾乃に一瞬で消滅させられている)。

用語

精霊術師
四大精霊たちの力を借りて、自らの意志を現実に顕現させることのできる能力者。より強き意志で精霊に働きかけるほど大きい力を発揮でき、強力な能力者になれば単なる物理現象を越えた事象を引き起こすことができる。一般に精霊術師と精霊との関係は対等で、精霊から力を貸して貰っているという考え方である。日本では地術の石蕗家、炎術の神凪家(風術の風巻家)。外国にも風術の凰家、炎術のマクドナルド家など、それぞれに歴史ある超一流の大家が存在する。詠唱などのプロセスが必要ないため、戦闘において魔術の中でもトップクラスの能力を持っているが、精霊の存在しない場所では力を一切行使できないという欠点もある。
炎術
炎の精霊の力を借りる術。炎が桁外れのエネルギーを持つために攻撃力は最高だが、通常環境においては炎に属するものが少ないため探査・索敵が不得意。予想外の事態への対応は不得手で、神炎使いの重悟ですら交通事故で片足を失っている。光に属する力でもある。神器は神凪家の炎雷覇。
風術
風の精霊の力を借りる術。風は質量が軽いために戦闘には向かないが、地球上のほぼ全域に存在する大気を扱うために探査・索敵に最も秀でており、術の速度も最速。神器は凰家の虚空閃。術の威力の低さから他属性の精霊術師からは見下される傾向にある。風術師が戦闘において他の属性の精霊術師に対抗するには、相手より術師としての腕が数段勝っていなければならない(すなわち、契約者の能力を封印した状態でも神凪一族と互角以上にわたりあう和麻は、彼らより術師としての能力が数段上である)。
地術
土の精霊の力を借りる術。土は質量が高いために最も防御力が高く、地上にあるものは大抵土の属性を持つため、探査・索敵・攻撃もそつなくこなす。また、大地の気を体内に取り込むことで驚異的な回復力を誇り、毒すら効かなくなる。ただし、地面から離れると術やその回復力がほとんど行使できなくなる。
水術
水の精霊の力を借りる術。水剋火――水は火に打ち勝つという相性から、炎術に対して比較的有利とされる。巨大な質量を持った水術に対し、炎術で対抗すると水蒸気爆発が発生するため炎術師は不利であるが、超一流の炎術師なら水蒸気爆発そのものを焼き尽くすため無力化されてしまう。あくまで「火に勝ちやすい」というだけで、「絶対に勝てる」というわけではない。
精霊獣
精霊式とも。一群の精霊を仮想人格に統御させることで一個の生物に見立て、それを使い魔として使役する、精霊魔術と儀式魔術の融合によって生み出された「魔術武器」。仮想人格に精霊の制御を分担させることで、術者の本来の力量以上の数の精霊を制御することが可能になるほか、能力を特化させることもできる。ただし、精霊を術者が直接統御するのではないため、術者が命令を下してからその命令が実際に行使されるまでにわずかなタイムラグが生じ、さらに細かい指示ができない、などといったデメリットもある。日本には神凪や石蕗など精霊術師としてトップクラスの一族が多く、多才であることを誇りとする彼らは、自ら能力を制限してしまう精霊獣の使い手を見下す傾向にあるため、日本であえて精霊獣を使おうとする術者はまずいない。神凪の浄化の炎は自然ならざるものを焼き払うため、精霊獣を使役する術者にとっては天敵である。
神凪一族
炎の精霊王と契約を交わした初代宗主によって打ち立てられた、日本における炎術の名門一族。神凪の炎には破邪の力が備わっており、炎術師として神凪一族が最強を誇る理由の一つとされている。宗家である神凪家の他、結城、大神、久我、四条といった分家を持ち、風牙衆を除いてもその総数は実に50余名を数える。神器・炎雷覇を保持しており、代々の宗主に継承されるならわしとなっているが、必ずしも最高の実力者に受け継がれるわけではない。実際、先代宗主・頼道は炎雷覇を制御できない術師であり、他者に譲る度量も無かったので、一代前の神凪家は力が史上最低まで落ち込んだ。戦闘力こそ全てという価値観を持つ。宗家と分家の間の絶対的な身分差も両者の間の絶対的な力量差に由来するものであり、炎術の才能を持たなかった和麻は宗家の嫡子でありながら、分家からも見下されていた。精霊王に祝福された一族の一員であることを誇り、選民思想に近い考え方で他者を見下す者も少なくない。
風牙衆
風巻家を長とした20人前後の風術師集団。神凪一族の下部組織として主に探査・戦闘補助を行っていた。表向きは神凪と祖を同じくするものとされているが、本来全く別の系統である。江戸時代、風を使う強大な一族として栄えた彼らだったが、金さえ積まれれば何でも請け負うというその無法さやあまりの残虐さゆえに、幕府の命を受けた神凪に討伐され、力の源である彼らの神(風の精霊王ではない)を封印された。以後、神凪は彼らの持つ索敵能力を都合よく利用して道具のように扱うとともに、経緯を記録から抹消した。300年間虐げ続けられた彼らは、一族の宿願である神凪への復讐を試みるが、神の封印を解くために煉を生贄にしようとしたことが和麻の逆鱗に触れ壊滅させられた。『風の聖痕RPG』のリプレイでは原作で風牙衆の再興を重悟が口にしていたことを受けて、この反乱に直接関与せずに神凪一族に帰順した者たちがいることになっている。
石蕗一族
大地の精霊王と契約し、富士山の魔獣を封印した地術師の名門。30年に一度、弱まった魔獣の封印を強化するため、一族の能力者を使って封印の大祭を行っている。封印を行う能力者は力を使い果たして確実に死亡するため、生贄と揶揄される。
コントラクター(契約者)
神や精霊王など、人間には決して対抗できない力を持つ超越的存在と契約を交わし、その力を借り受けることを許された者のこと。しかし、力が莫大すぎるために、人の身ではその全能力を長時間行使し続けることなどできない。そのため和麻は普段契約者としての能力を封印しているが、その状態でも風の精霊は無条件で彼に従う(神器を用いる、精霊を発狂させる等の特殊な方法を使われた場合を除く)。和麻は現在確認されている中では歴史上唯一のコントラクターだが、過去には神凪の初代宗主が炎の精霊王と契約したという伝承があり、その際賜ったのが神器・炎雷覇であるとされている(実際に風の精霊王と邂逅したであろう和麻が、それを事実だと匂わせる発言をしている)。
神炎
神凪の炎術師として極めて高い能力の者にだけ発現する能力。通常、神凪家の浄化の炎の最高位は黄金色であるが、能力を極限まで研ぎ澄ませる事に成功したとき、操る炎に自分の霊気の色が宿る。霊気に染まった炎は最高位の黄金も容易く凌駕する威力を誇る。作中で確認されている神炎は、重悟の「紫炎」、厳馬の「蒼炎」、綾乃の「紅炎」(ただし、綾乃はまだ任意で発動させることができない。使用したのは流也と和麻との戦いのみ。和麻が言うには「神炎みたいなもの」)の3つ。1000年を数える神凪の歴史上でも12人しかおらず、一つの時代にこれだけの神炎使いが存在するのはきわめて異例である。
神炎使い
上述の神炎を用いる術者の総称。
浄化の風
和麻が使用する蒼い風。作中で使用したのは和麻のみで、彼自身の霊気の色に染め上げられている。綾乃曰く、神凪家の浄化の炎のようなもの。
綾乃の炎と結合して蒼い炎と化し、強靭な耐火能力を持つミハイルのヴリトラを一瞬で再生不能にまで破壊した。
独覚
本来は仏教用語で、正当な師に就かず独学で商業して真理に到達した者のことを指す。魔術の世界においては、誰の教えも受けずに力の発言に至ってしまった者を称する。
こうした人間は比較対象が周りにいないため、自分を「選ばれた人間」「新人類」などと称し、宗教を興して教祖になったり、「旧人類」の駆逐を行ったりする危険な思想を持つ。
前述の「シード」たちの大半がこれに当てはまる。異能を得た少年たちの暴走により、公園で暮らすホームレスたちが「掃除」されてしまった。
特殊資料整理室
警視庁に所属する、国内唯一の公営退魔組織。陰陽寮の解散から百年余り、霊的守護をもっぱら民間が担うという嘆かわしい現状を打破する目的で設立された。しかし、設立から10年足らずの新設部署であり、妖魔との戦闘能力のある術者がおらず、未だほとんど実績をあげていない。ただし、探査・索敵能力の要だった風牙衆を失った神凪一族から頼りにされるだけの見者はそろっている。なお、特殊資料整理室という名称は、「資料」と「死霊」をかけた駄洒落であるとともに、堂々と妖魔退治を標榜することができないために、いかにも「閑職」という感じの名称を付けたといわれている。
神器
精霊王から下賜される宝具。神器として確認されているのは炎雷覇と虚空閃の2つのみである。所持する者は力が増幅され、契約者に匹敵する精霊を制御する権限をも得る。より強き術者に従い、それより力量の低い術者に継承させる場合には大掛かりな儀式が必要となる。正式に継承すれば体内に納められるようになる。
炎雷覇
神凪の初代宗主が炎の精霊王と契約した際に下賜された剣の神器。代々神凪の宗主に受け継がれてきており、現在は次期宗主の綾乃が継承している。先代宗主の神凪頼道は炎雷覇に見合うだけの力量を持ち合わせていなかったため、使用する事さえできなかった。
虚空閃
凰一族が代々所有する、風の精霊王から下賜されたと伝わる槍の神器。一族の他の者たちが皆殺しにされてしまったため、小雷が所有している。当初は正式に継承していなかったが、後に和麻の力を借りて正式に継承する。
エリクサー
錬金術の粋を集めた奇跡の霊薬。別名「生命の水」。製法はおろか、実在さえ確認されていない伝説級の秘薬。死者さえも蘇えらせるとされる。綾乃が妖魔に敗れ死にかけた時、和麻に口移しでこれを飲まされて一命を取り留めたが、和麻はタダで手に入れたとはいえ貴重なエリクサーを使う原因を作った綾乃にイラつき八つ当たりした。

既刊一覧

長編
短編(風の聖痕 Ignition)

T-RPG

※詳細は風の聖痕RPGの項目を参照。

テレビアニメ

2007年4月より9月まで、アニメスピリッツ[7]にて放送。題名は“風のスティグマ”としている(ロゴには“聖痕”の文字も併記)。全24話。同枠では唯一の2クール作品である。

スタッフ

主題歌

オープニングテーマ「blast of wind」
作詞 - 石川智晶 / 作曲 - 三留一純 / 編曲 - 佐々木聡作 / 歌 - 木氏沙織
エンディングテーマA「ひとりきりの空」
作詞 - 小室みつ子 / 作曲 - 新居昭乃 / 編曲 - 土屋昌巳 / 歌 - 木氏沙織
エンディングテーマB「瞬きのキヲク」
作詞 - 修 / 作曲・編曲 - 高橋浩一郎 / 歌 - 藤村歩(神凪綾乃)、猪口有佳(篠宮由香里)、伊藤静(久遠七瀬)
第9話挿入歌&第12話エンディングテーマ「月華の祈り」
作詞 - 美咲ひいろ / 作曲・編曲 - 田川一人 / 歌 - 酒井香奈子(石蕗亜由美)

エンディングテーマは、エンディング映像の背景の違いで使い分けている(12話除く)。背景が昼で寝転がっているのが綾乃なら「瞬きのキヲク」、夜で寝転がっているのが和麻なら「ひとりきりの空」といった具合である。また、昼と夜とでは途中に挿入される絵も異なる。なお、12話では夜のバージョンが使われたほか、寝転がっているのが煉になっている(最後に手を差し出すのは昼は和麻、夜はいずれも綾乃である)。

各話リスト

話数 サブタイトル 脚本 絵コンテ 演出 作画監督 原作収録巻
1 風の帰還 関島眞頼 坂田純一 山川宏治 第01巻
2 過去との対決 久保田雅史 こでらかつゆき 加藤顕 海老原雅夫
3 神凪宗家 大久保智康 祝浩司 PARK HONG-KEUN
4 契約者(コントラクター) 吉村清子 大森英敏 赤尾良太郎
5 迷いを捨てた者 浦畑達彦 大原実 黒田やすひろ 深澤謙二 第02巻
「魂の値段」
6 力の代償 トダマイ 奥野浩行 LEE BOO-HEE
7 魂の値段 西澤きぬこ 吉沢俊一 田中誠輝
鈴木雄大
8 綾乃ちゃんの災難 吉村清子 大原実 加藤顕 海老原雅夫 ignition 第01巻内
同名タイトル
9 月下の出会い 関島眞頼 祝浩司 PARK HONG-KEUN 第03巻
「月下の告白」
10 護るべき人 久保田雅史 こでらかつゆき 奥野浩行
11 それぞれの決意 大久保智康 大原実 藤本ジ朗 堀越久美子
12 月下の告白 久保田雅史 寺岡巌 黒田やすひろ 宮崎修治
田中誠輝
13 遊園地にいこう! 浦畑達彦 石倉賢一 吉沢俊一 SEO KYUNG ROCK ignition 第01巻内
同名タイトル
14 綾乃ちゃんの更なる災難 吉村清子 こでらかつゆき 加藤顕 海老原雅夫
15 キャサリン・リターンズ 大久保智康 長村伸治 赤尾良太郎
田中誠輝
ignition 第04巻内
「リターン・マッチ」
16 父と子と 久保田雅史 祝浩司 奥野浩行 ignition 第02巻
17 魔法使いの倒し方 関島眞頼 祝浩司 LEE BOO-HEE 第04巻
「瑠璃色の残影」
18 東京RPG 吉村清子 大森英敏 いまざきいつき
19 万魔殿(パンデモニウム) こでらかつゆき 黒田やすひろ SEO KYUNG ROCK
20 翠色(すいしょく)の残影 大久保智康 大原実 加藤顕 海老原雅夫
21 狂乱の風術師 浦畑達彦 大森英敏 宮崎修治 第05巻
「緋色の誓約」
22 決意と逡巡と 大久保智康 祝浩司 KIM YU-CHEON
SEO KYUNG ROCK
23 紅炎 久保田雅史 大森英敏 奥野浩行
24 風の護りしもの 関島眞頼 金﨑貴臣 黒田やすひろ 山川宏治

放送局

放送地域 放送局 放送期間 放送日時 放送系列
福岡県 TVQ九州放送 2007年4月11日 - 9月19日 水曜 27:38 - 28:08 テレビ東京系列
福井県 福井テレビ 2007年4月12日 - 10月4日 木曜 25:20 - 25:50 フジテレビ系列
埼玉県 テレ玉 2007年4月12日 - 9月20日 木曜 25:30 - 26:00 独立UHF局
北海道 テレビ北海道 木曜 26:30 - 27:00 テレビ東京系列
千葉県 チバテレビ 独立UHF局
東京都 TOKYO MX
京都府 KBS京都 2007年4月13日 - 9月21日 金曜 26:00 - 26:30
神奈川県 tvk 2007年4月14日 - 9月22日 土曜 27:30 - 28:00
奈良県 奈良テレビ 2007年4月19日 - 9月27日 木曜 25:30 - 26:00
群馬県 群馬テレビ 2007年4月22日 - 9月30日 日曜 25:30 - 26:00
長野県 信越放送 2007年4月27日 - 10月5日 金曜 27:00 - 27:30 TBS系列
日本全国 BS朝日 2007年4月30日 - 10月29日 月曜 26:00 - 26:30 BS放送
熊本県 熊本放送 2007年5月14日 - 10月22日 月曜 26:20 - 26:50 TBS系列

CD

  • 『blast of wind/ひとりきりの空』 (FCCM-0185、2007年5月30日発売)
  • 『風のスティグマ Song Collection CD』 (FCCM-0192、2007年8月18日発売)
  • 『風のスティグマ Soundtrack』 (FCCM-0216、2007年11月21日発売)

DVD

発売は角川書店、販売は角川エンタテインメント(レンタル版のみクロックワークス)。

  • 『風のスティグマ 第1章』 (2007年8月24日発売)
    • KABA-2901(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど1「風の“ヨ”カン」
    • KABA-3001(通常版)
  • 『風のスティグマ 第2章』 (2007年9月28日発売)
    • KABA-2902(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど2「霧香のいちばん長い日」
    • KABA-3002(通常版)
  • 『風のスティグマ 第3章』 (2007年10月26日発売)
    • KABA-2903(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど3「一体あいつは何処なのよ!」
    • KABA-3003(通常版)
  • 『風のスティグマ 第4章』 (2007年11月22日発売)
    • KABA-2904(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど4「綾乃ちゃんの災難・その後」
    • KABA-3004(通常版)
  • 『風のスティグマ 第5章』 (2007年12月21日発売)
    • KABA-2905(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど5「ティアナちゃんも災難」
    • KABA-3005(通常版)
  • 『風のスティグマ 第6章』 (2008年1月25日発売)
    • KABA-2906(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど6「爆裂綾乃ちゃん」
    • KABA-3006(通常版)
  • 『風のスティグマ 第7章』 (2008年2月22日発売)
    • KABA-2907(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど7「Always 遊園地の夕日」
    • KABA-3007(通常版)
  • 『風のスティグマ 第8章』 (2008年3月28日発売)
    • KABA-2908(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど8「炎術師は見た!丸投げ温泉ほろ酔い旅情/女警視が三〇〇〇〇人」
    • KABA-3008(通常版)
  • 『風のスティグマ 第9章』 (2008年4月25日発売)
    • KABA-2909(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど9「キャサリンV〜怒りの警視庁〜」
    • KABA-3009(通常版)
  • 『風のスティグマ 第10章』 (2008年5月23日発売)
    • KABA-2910(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど10「和麻と翠鈴――ある街角の物語」
    • KABA-3010(通常版)
  • 『風のスティグマ 第11章』 (2008年6月27日発売)
    • KABA-2911(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど11「ピグマリオン日記」
    • KABA-3011(通常版)
  • 『風のスティグマ 第12章』 (2008年7月25日発売)
    • KABA-2912(S・エディション)【特典】ドラマCD すてぃぐま・おんでまんど12特別編「美少女戦隊エレメンタルムーン」
    • KABA-3012(通常版)

ラジオ

炎のツンデレ女子高生 綾乃の放課後ケーキバイキング!(インターネットテレビ)
web NewTypeにて配信された。
パーソナリティ:藤村歩(神凪綾乃役)、猪口有佳(篠宮由香里役)、伊藤静(久遠七瀬役)
配信期間:2007年3月9日 - 2007年11月9日

漫画

著:猫都夏椅/作:山門敬弘/案:納都花丸 出版:角川グループパブリッシング 綾乃視点で物語が展開し、和麻との妖魔退治からミハイル・ハーレイとの対決までが描かれている。

脚注・出典

  1. ^ a b c d 作家・山門敬弘氏 訃報”. 富士見書房 (2009年8月19日). 2010年4月18日閲覧。
  2. ^ a b c “ライトノベル作家の山門敬弘氏が死去 「風の聖痕(スティグマ)」作者”. J-CASTニュース (ジェイ・キャスト). (2009年8月20日). http://www.j-cast.com/2009/08/20047821.html 2009年8月23日閲覧。 
  3. ^ 短編3巻あとがきより。
  4. ^ 短編5巻あとがきより。
  5. ^ 風の聖痕公式サイト”. 富士見書房. 2010年4月18日閲覧。
  6. ^ 最初に使ったのは、1巻の京都での風巻流也との戦いの中。なお、5巻で煉に指摘されるまで、自身が「神炎らしきもの」を使えることすら気づいていなかった。
  7. ^ 本作より従来の「アニメ魂」から枠名を変更。なお本作品より「アニメスピリッツ」枠のレギュラーネット局が4局追加され(テレ玉・チバテレビ・TVQ九州放送・テレビ北海道)、首都圏では1都3県フルカバーを達成した。

外部リンク

アニメスピリッツ(アニメ魂)
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風のスティグマ(聖痕)