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|caption = 菱形の結晶をもつ鉱石(スイートホーム鉱山産) |
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'''菱マンガン鉱'''(りょうまんがんこう、{{Lang|en|rhodochrosite}}<ref name="学術用語集"/>)は、[[マンガン]]の[[炭酸塩鉱物]]である。マンガンを得るための主要な[[鉱石鉱物]]のひとつであるが、色味が美しいものは[[半貴石]]として宝飾用途や収集目的で取引され、珍重されている。特にアメリカの鉱物収集家のあいだでは3本指に入る人気があるとされる。<ref name="天然石の"/><ref name="mindat" /><ref name="不思議で"/><ref name="ネイチャーG"/> |
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'''菱マンガン鉱'''(りょうまんがんこう、{{Lang|en|rhodochrosite}}<ref>{{Cite book|和書 |
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|author = [[文部省]]編 |
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}}</ref>)は、[[鉱物]]([[炭酸塩鉱物]])の一種。[[化学組成]]は MnCO<sub>3</sub>([[炭酸マンガン(II)]])、[[結晶系]]は[[三方晶系]]。不透明なピンク色の[[方解石グループ]]の鉱物。[[1813年]]に発見された<ref name="mindat" />。 |
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[[化学組成]]は MnCO<sub>3</sub>([[炭酸マンガン(II)]])、[[結晶系]]は[[三方晶系]]。不純物のまじり具合によって灰色、黄灰色、褐色からピンク色、紅色、シナモン色を帯び、赤みのあるものが宝飾・収集の対象となる。バラ色であることから「'''ロードクロサイト'''(バラ色の石)」、南米を中心に産することから「'''インカローズ'''(インカの薔薇)」と呼ばれる。日本名の「菱マンガン鉱」は、結晶が菱型であることから。鉱山では「炭マン(炭酸マンガン)」と呼ばれる。<ref name="天然石の"/><ref name="mindat" /><ref name="秋田百科"/> |
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== 産出地 == |
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[[日本]]では、[[秋田県]]の[[尾去沢鉱山]]などに産する<ref>{{Cite book|和書 |
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[[中南米]]、アメリカ・[[コロラド州]]、[[南アフリカ]]、[[日本]]、[[ルーマニア]]などが主要な産地である。<ref name="秋田百科"/><ref name="天然石の"/> |
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|author = [[松原聰]] |
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|coauthors = [[宮脇律郎]] |
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|title = 日本産鉱物型録 |
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}}</ref>。 |
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[[変成]]を受けたマンガン鉱床で[[ばら輝石]]を初めとする様々なマンガン鉱物を伴って産する。その他、[[熱水鉱床]]では[[閃亜鉛鉱]]、[[方鉛鉱]]、[[黄鉄鉱]]、[[重晶石]]などを伴って産する。 |
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{{節stub}} |
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== 性質・特徴 == |
== 性質・特徴 == |
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{|style="float:left;font-size:0.8em;width:100px;margin-right:1em;" |
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[[方解石]](CaCO<sub>3</sub>)、[[菱鉄鉱]](FeCO<sub>3</sub>)との間では、[[固溶体]]を形成する。[[ピンク色]]から[[赤褐色]]で、[[透明]]から[[半透明]]。[[劈開]]は完全。[[比重]]は3.6。[[モース硬度]]は3.5 - 4。[[屈折率]]は、ω1.816、ε1.597。 |
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|- |
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|{{File clip | Rhodochrosite-22767.jpg | width = 100 | 0 | 0 | 0 | 0 | w = 399 | h = 600|牙状の結晶}} |
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|- |
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|{{File clip | Rhodochrosite-Quartz-41397.jpg | width = 100 | 0 | 40 | 0 | 30 | w = 600 | h = 292|ぶどう状鉱石}} |
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|} |
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[[方解石]](カルサイト)の一種である。[[方解石]](CaCO<sub>3</sub>)、[[菱鉄鉱]](FeCO<sub>3</sub>)との間では、[[固溶体]]を形成する。[[劈開]]は完全。[[比重]]は3.6。[[モース硬度]]は3.5 - 4。[[屈折率]]は、ω1.816、ε1.597。 |
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[[変成]]を受けたマンガン鉱床(接触変成鉱床)で[[ばら輝石]]を初めとする様々なマンガン鉱物を伴って産する。特に[[熱水鉱床]]では塊になって生成され、方解石の典型的な性質として菱型ないし平行四辺形の結晶体となるほか、偏三面体や犬牙状の結晶をつくったり、膜状・板状・層状や、粒状・団塊状・球状、さらに球状の塊が連続するぶどう状・鍾乳石状で産出する。また、熱水鉱床ではしばしば[[閃亜鉛鉱]]、[[方鉛鉱]]、[[黄鉄鉱]]、[[重晶石]]などを伴って産する。<ref name="天然石の"/><ref name="mindat"/><ref name="秋田百科"/>*<ref name="ときめく"/> |
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同じマンガン鉱床で産する[[ロードナイト]]と外観がよく似るが、極めて酸化しやすいという点が大きく違う。現在典型的な「菱マンガン鉱」と呼ばれる赤く光沢のある鉱石は空気や湿気によって酸化しやすく、屋外に置いたり、特に雨に打たれると、褐色の皮膜が形成されたり、黒色化しやすい。[[硬度]]が低く、脆く、壊れやすいのも特徴であり、この観点から宝飾用としても装身具には向かない。<ref name="天然石の"/><ref name="秋田百科"/><ref name="価値がわかる"/> |
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{{clear}} |
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;色 |
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{|style="float:left;font-size:0.8em;" |
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|- |
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|{{File clip | Rhodochrosite Sweet Home ROM.jpg | width = 100 | 0 | 0 | 0 | 0 | w = 800 | h = 536|アルマローズ}} |
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|{{File clip | Nenadkevichite-Rhodochrosite-Aegirine-177550.jpg | width = 100 | 50 | 0 | 5 | 0 | w = 278 | h = 400|シナモン色}} |
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|{{File clip | Pyrite-Rhodochrosite-238837.jpg | width = 100 | 25 | 20 | 33 | 30 | w = 400 | h = 307|不透明で白褐色}} |
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|{{File clip | Rhodocrosite (Pérou).JPG | width = 100 | 8 | 0 | 0 | 0 | w = 799 | h = 599|透明でピンク色}} |
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|{{File clip | Rhodocrosite sous UV (Pérou).JPG | width = 100 | 0 | 0 | 0 | 0 | w = 800 | h = 526|蛍光を発する}} |
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|- |
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|}{{clear}} |
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菱マンガン鉱は透明なものと不透明なものがある。ガラスのような光沢をもつ場合と、稀に真珠のような光沢をもつ場合がある。<ref name="秋田百科"/> |
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色は含有する不純物によってさまざまである。特に影響が大である不純物は鉄、マグネシウム、カルシウムで、これらが少ないと鮮やかなピンク色、紅色から暗赤色となる。不純物が多いものは白色、黄灰色、黄褐色、褐色をとる。日本の銀山では昔から、不純物が多く黄灰色から白褐色のものが産出し、「'''かつぶし鉱'''(鰹節鉱)」とも呼ばれていた。<ref name="ときめく"/><ref name="天然石の"/><ref name="mindat"/> |
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このほか、菱マンガン鉱の色味を表現するには、褐色、日焼け色、赤色、橙赤色、深赤色、濃桃色、ピンク、バラ色、ローズピンク、紅色、シナモン色、木いちご色などという。赤色の蛍光を帯びる場合もある。<ref name="ときめく"/><ref name="秋田百科"/><ref name="不思議で"/><ref name="天然石の"/><ref name="Alma"/><ref name="価値がわかる"/> |
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南米、とくにアルゼンチンやペルーで産するもので、鍾乳石状のものは紅色から白色の層を成しているものがある。宝石としてはこうした縞模様が入っているほうが珍重され、特に縞目が美しい物は「[[インカローズ]]」と呼ばれる。<ref name="天然石の"/> |
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== 主な産出地 == |
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[[ファイル:Alma Rose side.JPG|thumb|left|100px|「アルマ・ローズ」]] |
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菱マンガン鉱は銀鉱山や銅鉱山で副産物として産出するため、世界中でみられ、[[南米]]の[[インカ帝国]]時代(13世紀以降)の銀鉱山跡から大量に見つかっている。産地は中南米に広く分布しており、特にアルゼンチン、ペルー、メキシコが主要産地である。<ref name="天然石の"/><ref name="Gemstone"/><ref name="秋田百科"/> |
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なお、宝飾物としてのロードクロサイトは1813年にルーマニアで「発見」とされている。当時のルーマニアはハンガリー領で、ハンガリーのほかマケドニア、ドイツなどもロードクロサイトの産地として人気がある。<ref name="Gemstone"/><ref name="天然石の"/><ref name="秋田百科"/> |
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宝飾物・半貴石として人気に火がついたのは第二次世界大戦後のアメリカとされており、1940年代に中南米産の「インカローズ」が収集家の間で高値で取引されるようになった。アメリカではコロラド州のスイートホーム鉱山が特に有名で、そのほかカナダも代表的な産出の一つであるる。このほか南アフリカには大きなマンガン鉱山があり、有力な産地の一つである。<ref name="Gemstone"/><ref name="天然石の"/><ref name="秋田百科"/> |
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日本でも古くから銀山・銅山が各地にあるが、不純物の多い「かつぶし鉱」ではなく、宝飾物として価値のあるものとしては青森県の尾太鉱山、北海道の稲倉石鉱山、秋田県の尾去沢鉱山などが知られている。<ref name="不思議で"/> |
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{{clear}} |
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;スイートホーム鉱山 |
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{{File clip | Alma King rhodochrosite.jpg | width = 250 | 35 | 15 | 25 | 30 | w = 533 | h = 599 | 北米最大のロードクロサイト結晶「アルマ・キング」}} |
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アメリカの[[コロラド州]]アルマ([[:en:Alma, Colorado|Alma]])にあるスイートホーム鉱山([[:en:Sweet Home Mine|Sweet Home Mine]])は、宝石としてのロードクロサイトの産地として世界を代表する鉱山である。この鉱山では、閃亜鉛鉱、マンガン重石、石英などと共に産出する。スイートホーム鉱山のロードクロサイトは色が濃く鮮やかなのが特徴で、鉄、マグネシウム、カルシウムなどの不純物の含有量が少ないことから深紅色をしており、「アルマ・ローズ」とも呼ばれる。<ref name="秋田百科"/><ref name="Alma"/><ref name="Gemstone"/> |
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アルマ・ローズのなかでも、「アルマ・キング(Alma King)」と命名された結晶は、14cm×16.5cmの大きなサイズを誇り、北米最大のロードクロサイト結晶としてデンバー自然科学博物館([[:en:Denver Museum of Nature and Science|Denver Museum of Nature and Science]])に収蔵されている。<ref name="Alma"/> |
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コロラド州では、2002年にロードクロサイトを「コロラド州の石(Colorado State Mineral)」と定めた。<ref name="Alma"/> |
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;中南米のインカ・ローズ |
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{{File clip | Rhodochrosite (A.E. Seaman Mineral Museum).jpg | width = 250 | 0 | 0 | 0 | 0 | w = 800 | h = 600 | アルゼンチンのインカ・ローズ}} |
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[[中南米]]はロードクロサイトの主要産地である。なかでも[[アルゼンチン]]の[[サンルイス州]]はロードクロサイトの採掘が行われたものとしては世界最古とされる鉱山がある。13世紀頃から[[インカ帝国]]によって営まれていた銀・銅の鉱山で、層状のロードクロサイトが得られる。これを[[カボション・カット]]にして研磨するとバラ状の縞模様が現れることから、「インカの薔薇」「ロジンカ(Rosinca)」や「インカローズ(Inca Rose)」と呼ばれる。<ref name="天然石の"/><ref name="不思議で"/><ref name="Gemstone"/> |
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インカ帝国が滅んだ後、この鉱山は忘れ去れれていたが、1920-1930年代に「再発見」された。インカローズは縞模様があるほど美しく貴重とされる。おなじ[[アンデス山脈]]の[[カタマルカ州]]では鍾乳石状の「インカの薔薇」が有名である。特にカピリタス(Capillitas)鉱山産のものが知られている。<ref name="天然石の"/><ref name="秋田百科"/><ref name="不思議で"/> |
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このほか、[[ペルー]]・[[アンカシュ県]]のハーラポン(Huallapon)鉱山では、20cm角クラスの結晶を産する。また、[[メキシコ]]もロードクロサイトの代表的な産地である。メキシコ産のなかではピンク色の小さな結晶が塊になっているものが典型である。<ref name="秋田百科"/> |
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<gallery caption="中南米産の菱マンガン鉱" mode="packed-hover"> |
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ファイル:Rhodochrosite-145098.jpg|カピリタス鉱山の鍾乳石状のもの |
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ファイル:Rhodochrosite-23835.jpg|ハーラポン鉱山産の結晶 |
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ファイル:Rhodocrosite, chalcopyrite 1.jpg|ハーラポン鉱山の結晶 |
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File:Rhodochrosit - Patagonien, Argentinien.jpg|アルゼンチン・パタゴニア産の鉱石(ドイツの博物館の収蔵品) |
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ファイル:Quartz-Rhodochrosite-rhqtz-87a.jpg|メキシコ・[[サカテカス州]]産の鉱石 |
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ファイル:Rhodochrosite-261708.jpg|メキシコ・[[チワワ州]]産の鉱石 |
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</gallery>{{clear}} |
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;ルーマニア・ハンガリー |
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{{File clip | Quartz-Rhodochrosite-mun05-146a.jpg | width = 250 | 15 | 7 | 5 | 12 | w = 600 | h = 499 | ルーマニアのカヴニク([[:en:Cavnic]])鉱山産のピンク色の鉱石}} |
|||
[[ルーマニア]]は「ロードクロサイト」の名が付けられた地である。1813年のルーマニア<ref group="注">国家として見た場合、1813年時点のルーマニアは[[ハンガリー王国]]領である。</ref>でこの鉱石が「発見」され、バラ色であることから「バラ色」を意味するギリシア語「ῥοδόχρως」から、「ロードクロサイト(Rhodochrosite)」と命名された。<ref name="mindat"/><ref name="天然石の"/><ref name="Gemstone"/> |
|||
このほか、[[ハンガリー]]、[[マケドニア]]などもロードクロサイトの代表産地である。<ref name="天然石の"/> |
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{{clear}} |
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;南アフリカ |
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{{File clip | Rhodochrosite-164100.jpg | width = 250 | 5 | 0 | 5 | 0 | w = 800 | h = 556 | 南アフリカ・クルマン産の結晶}} |
|||
[[南アフリカ共和国|南アフリカ]]の[[北ケープ州]]にはカラハリ・マンガン地帯(Kalahari manganese field)と呼ばれるマンガンの大鉱床がある。この一帯にあるホタツェル([[:en:Hotazel|Hotazel]])鉱山の菱マンガン鉱は炭酸成分や不純物が少なく、透明で大きな犬牙状の結晶が出ることでよく知られている。ホタツェルに近いクルマン([[:en:Kuruman|Kuruman]])も同じような鉱石を産する。<ref name="Gemstone"/><ref name="天然石の"/><ref name="秋田百科"/><ref name="Mindat_Hotazel"/><ref name="広大_カラハリ"/>{{clear}} |
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;尾太鉱山 |
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{{File clip | Rhodochrosite-150445.jpg | width = 250 | 10 | 0 | 0 | 0 | w = 500 | h = 318 | [[尾太鉱山]]産のぶどう状鉱石}} |
|||
[[青森県]]の[[白神山地]]中にある[[尾太鉱山]]では、ぶどう状(腎臓状とも)の鉱石を産することで知られている。尾太鉱山は近世に銀や銅の採掘が行われ、昭和期には鉛や亜鉛の採掘で栄えた金属鉱山である。尾太鉱山は1979(昭和54)年に閉山したが、良質なロードクロサイトの産地として知られており、操業時代の産出品がいまも取引されている。<ref name="角川地名_尾太鉱山"/><ref name="不思議で"/> |
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;稲倉石鉱山 |
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== 用途・加工法 == |
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[[北海道]]の[[余市町]]にあった[[稲倉石鉱山]]は近代日本で最大のマンガン鉱山だった。ここでもぶどう状鉱石をはじめ、結晶鉱石などを産出し、日本における菱マンガン鉱の代表産地だった。<ref name="不思議で"/> |
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[[マンガン]]の[[鉱石鉱物]]。 |
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このほか、北海道の八雲鉱山、[[秋田県]]の[[尾去沢鉱山]]などが代表的な産地である。<ref name="日本産鉱物型録"/> |
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ピンク色が美しいことから[[宝飾]]に用いられることも多いが、[[硬度]]が低いため、厳密な意味では[[宝石]]にはならない([[半貴石]])。宝飾品としては[[ロードクロサイト]]、[[インカローズ]]という商品名で扱われる。 |
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==ギャラリー== |
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<gallery> |
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ファイル:Rhodochrosite-YakumoMine,Hokkaido,Japan.JPG|[[熱水鉱床]]中の[[硫化鉱物]]を伴う菱マンガン鉱([[北海道]][[八雲鉱山]]産) |
ファイル:Rhodochrosite-YakumoMine,Hokkaido,Japan.JPG|[[熱水鉱床]]中の[[硫化鉱物]]を伴う菱マンガン鉱([[北海道]][[八雲鉱山]]産) |
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File:Rhodochrosite - tumble polished stone.jpg|研磨されたインカローズ |
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File:Rhodochrosite-rlkg054b.JPG|カットされた結晶 |
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ファイル:Rhodochrosite 01.jpg|[[手芸]]用に丸く削られたもの |
ファイル:Rhodochrosite 01.jpg|[[手芸]]用に丸く削られたもの |
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ファイル:Rhodochrosite 02.jpg|さざれ石 |
ファイル:Rhodochrosite 02.jpg|さざれ石 |
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</gallery> |
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== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
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{{Reflist}} |
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== 参考文献 == <!-- {{Cite book}} --> <!-- {{Cite journal}} --> |
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==脚注== |
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===注釈=== |
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<references group="注"/> |
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===出典=== |
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{{Reflist|colwidth=30em |refs= |
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<!-- --> |
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*<ref name="日本産鉱物型録">『日本産鉱物型録』p108</ref> |
|||
*<ref name="学術用語集">『[[学術用語集]] 地学編』p114</ref> |
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*<ref name="理科年表H20">『[[理科年表]] 平成20年』p641</ref> |
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*<ref name="mindat">{{Mindat |
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|name = Rhodochrosite |
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|accessdate = 2011-11-06 |
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}} {{En icon}}</ref> |
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*<ref name="webmineral">{{WebMineral |
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|name = Rhodochrosite |
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|url = http://webmineral.com/data/Rhodochrosite.shtml |
|||
|accessdate = 2011-11-06 |
|||
}} {{En icon}}</ref> |
|||
*<ref name="ネイチャーG">ネイチャー・ガイドシリーズ『岩石と鉱物』p121</ref> |
|||
*<ref name="価値がわかる">『価値がわかる宝石図鑑』p177</ref> |
|||
*<ref name="Gemstone">『Gemstones』p103-104</ref> |
|||
*<ref name="不思議で">『不思議で美しい石の図鑑』p131</ref> |
|||
*<ref name="ときめく">『ときめく鉱物図鑑』p30</ref> |
|||
*<ref name="秋田百科">『鉱物資源百科事典』p357</ref> |
|||
*<ref name="天然石の">『天然石のエンサイクロペディア』p500-507</ref> |
|||
*<ref name="角川地名_尾太鉱山">『[[角川日本地名大辞典]]2 青森県』,[[角川書店]],1985,p.234「尾太鉱山」</ref> |
|||
*<ref name="Alma">大学宇宙研究協会(USRA,2006年1月20日付,[[:en:Universities Space Research Association]]),[[NASA]] 今日の地球科学の1枚 [http://epod.usra.edu/blog/2006/01/alma-king.html Alma King] ,2015年12月18日閲覧。</ref> |
|||
*<ref name="Mindat_Hotazel">Mindat,[http://www.mindat.org/loc-2413.html Hotazel Mine] ,2015年12月18日閲覧。</ref> |
|||
*<ref name="広大_カラハリ">広島大学陸域環境研究会,[http://home.hiroshima-u.ac.jp/er/Mn/RZ_KS_13.html 南アフリカのカラハリマンガン地帯における低品位マンガン鉱石の浅成富化のタイミング] ,2015年12月18日閲覧。</ref> |
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}} |
|||
===参考文献=== |
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<!-- {{Cite book}} --> |
|||
<!-- {{Cite journal}} --> |
|||
* {{Cite book|和書 |
|||
|author = [[松原聰]] |
|||
|coauthors = [[宮脇律郎]] |
|||
|title = 日本産鉱物型録 |
|||
|year = 2006 |
|||
|publisher = [[学校法人東海大学出版会|東海大学出版会]] |
|||
|series = [[国立科学博物館]]叢書 |
|||
|isbn = 978-4-486-03157-4 |
|||
|page = 108 |
|||
}} |
|||
*{{Cite book|和書 |
|||
|author = [[文部省]]編 |
|||
|title = [[学術用語集]] 地学編 |
|||
|url = http://sciterm.nii.ac.jp/cgi-bin/reference.cgi |
|||
|year = 1984 |
|||
|publisher = [[日本学術振興会]] |
|||
|isbn = 4-8181-8401-2 |
|||
|page = 114 |
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}} |
|||
* {{Cite book|和書 |
* {{Cite book|和書 |
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|author = [[松原聰]] |
|author = [[松原聰]] |
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|pages = 92-93 |
|pages = 92-93 |
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}} |
}} |
||
* {{Cite book|和書 |
* {{Cite book|和書 |
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|author = [[青木正博]] |
|author = [[青木正博]] |
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139行目: | 248行目: | ||
|page = 90 |
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}} |
}} |
||
*{{Cite book|和書 |
|||
|author = [[国立天文台]]編 |
|||
|title = [[理科年表]] 平成20年 |
|||
|year = 2007 |
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|publisher = [[丸善]] |
|||
|isbn = 978-4-621-07902-7 |
|||
|page = 641 |
|||
}} |
|||
*牧野和孝『鉱物資源百科事典』,[[日刊工業新聞|日刊工業新聞社]],1998,ISBN 4-526-04137-8 |
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*[[山と渓谷社]],『ときめく鉱物図鑑』,2012,ISBN 978-4-635-20221-3 |
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*山田英春,『不思議で美しい石の図鑑』,[[創元社]],2012,ISBN 978-4-422-44001-9 |
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*諏訪恭一,『価値がわかる宝石図鑑』,ナツメ社,2016,ISBN 978-4-8163-5947-7 |
|||
*ネイチャー・ガイドシリーズ『岩石と鉱物』,ジェフリー・E・ポスト博士・監,ロナルド・ルイス・ボネウィッツ・文,伊藤伸子・訳,[[化学同人]],2014,ISBN 978-4-7598-1552-8 |
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*飯田孝一,『天然石のエンサイクロペディア』,亥辰舎,2011,ISBN 978-4-904850-08-4 |
|||
*Arthur Thomas,『Gemstones』,Roli Books Pvt Ltd,2007,ISBN 1845376021 |
|||
== 関連項目 == |
== 関連項目 == |
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|accessdate = 2011-11-06 |
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}} |
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{{Mineral-stub}} |
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{{DEFAULTSORT:りようまんかんこう}} |
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[[Category:マンガンの化合物]] |
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2015年12月20日 (日) 10:54時点における版
菱マンガン鉱 | |
---|---|
菱形の結晶をもつ鉱石(スイートホーム鉱山産) | |
分類 | 炭酸塩鉱物 |
シュツルンツ分類 | 5.AB.05 |
Dana Classification | 14.1.1.4 |
化学式 | MnCO3 |
結晶系 | 三方晶系 |
単位格子 | a = 4.777Å、c = 15.67Å |
へき開 | 三方向に完全 |
断口 | 不規則 - 貝殻状 |
モース硬度 | 4 |
光沢 | ガラス光沢 |
色 | 灰色、紅色 |
条痕 | 白色 |
比重 | 3.7 |
光学性 | 一軸性負 |
屈折率 | nω = 1.814 - 1.816、nε = 1.596 - 1.598 |
複屈折 | δ = 0.218 |
文献 | [1][2][3] |
プロジェクト:鉱物/Portal:地球科学 |
菱マンガン鉱(りょうまんがんこう、rhodochrosite[4])は、マンガンの炭酸塩鉱物である。マンガンを得るための主要な鉱石鉱物のひとつであるが、色味が美しいものは半貴石として宝飾用途や収集目的で取引され、珍重されている。特にアメリカの鉱物収集家のあいだでは3本指に入る人気があるとされる。[5][2][6][7]
化学組成は MnCO3(炭酸マンガン(II))、結晶系は三方晶系。不純物のまじり具合によって灰色、黄灰色、褐色からピンク色、紅色、シナモン色を帯び、赤みのあるものが宝飾・収集の対象となる。バラ色であることから「ロードクロサイト(バラ色の石)」、南米を中心に産することから「インカローズ(インカの薔薇)」と呼ばれる。日本名の「菱マンガン鉱」は、結晶が菱型であることから。鉱山では「炭マン(炭酸マンガン)」と呼ばれる。[5][2][8]
中南米、アメリカ・コロラド州、南アフリカ、日本、ルーマニアなどが主要な産地である。[8][5]
性質・特徴
牙状の結晶
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ぶどう状鉱石
|
方解石(カルサイト)の一種である。方解石(CaCO3)、菱鉄鉱(FeCO3)との間では、固溶体を形成する。劈開は完全。比重は3.6。モース硬度は3.5 - 4。屈折率は、ω1.816、ε1.597。
変成を受けたマンガン鉱床(接触変成鉱床)でばら輝石を初めとする様々なマンガン鉱物を伴って産する。特に熱水鉱床では塊になって生成され、方解石の典型的な性質として菱型ないし平行四辺形の結晶体となるほか、偏三面体や犬牙状の結晶をつくったり、膜状・板状・層状や、粒状・団塊状・球状、さらに球状の塊が連続するぶどう状・鍾乳石状で産出する。また、熱水鉱床ではしばしば閃亜鉛鉱、方鉛鉱、黄鉄鉱、重晶石などを伴って産する。[5][2][8]*[9]
同じマンガン鉱床で産するロードナイトと外観がよく似るが、極めて酸化しやすいという点が大きく違う。現在典型的な「菱マンガン鉱」と呼ばれる赤く光沢のある鉱石は空気や湿気によって酸化しやすく、屋外に置いたり、特に雨に打たれると、褐色の皮膜が形成されたり、黒色化しやすい。硬度が低く、脆く、壊れやすいのも特徴であり、この観点から宝飾用としても装身具には向かない。[5][8][10]
- 色
アルマローズ
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シナモン色
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不透明で白褐色
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透明でピンク色
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蛍光を発する
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菱マンガン鉱は透明なものと不透明なものがある。ガラスのような光沢をもつ場合と、稀に真珠のような光沢をもつ場合がある。[8]
色は含有する不純物によってさまざまである。特に影響が大である不純物は鉄、マグネシウム、カルシウムで、これらが少ないと鮮やかなピンク色、紅色から暗赤色となる。不純物が多いものは白色、黄灰色、黄褐色、褐色をとる。日本の銀山では昔から、不純物が多く黄灰色から白褐色のものが産出し、「かつぶし鉱(鰹節鉱)」とも呼ばれていた。[9][5][2]
このほか、菱マンガン鉱の色味を表現するには、褐色、日焼け色、赤色、橙赤色、深赤色、濃桃色、ピンク、バラ色、ローズピンク、紅色、シナモン色、木いちご色などという。赤色の蛍光を帯びる場合もある。[9][8][6][5][11][10]
南米、とくにアルゼンチンやペルーで産するもので、鍾乳石状のものは紅色から白色の層を成しているものがある。宝石としてはこうした縞模様が入っているほうが珍重され、特に縞目が美しい物は「インカローズ」と呼ばれる。[5]
主な産出地
菱マンガン鉱は銀鉱山や銅鉱山で副産物として産出するため、世界中でみられ、南米のインカ帝国時代(13世紀以降)の銀鉱山跡から大量に見つかっている。産地は中南米に広く分布しており、特にアルゼンチン、ペルー、メキシコが主要産地である。[5][12][8]
なお、宝飾物としてのロードクロサイトは1813年にルーマニアで「発見」とされている。当時のルーマニアはハンガリー領で、ハンガリーのほかマケドニア、ドイツなどもロードクロサイトの産地として人気がある。[12][5][8]
宝飾物・半貴石として人気に火がついたのは第二次世界大戦後のアメリカとされており、1940年代に中南米産の「インカローズ」が収集家の間で高値で取引されるようになった。アメリカではコロラド州のスイートホーム鉱山が特に有名で、そのほかカナダも代表的な産出の一つであるる。このほか南アフリカには大きなマンガン鉱山があり、有力な産地の一つである。[12][5][8]
日本でも古くから銀山・銅山が各地にあるが、不純物の多い「かつぶし鉱」ではなく、宝飾物として価値のあるものとしては青森県の尾太鉱山、北海道の稲倉石鉱山、秋田県の尾去沢鉱山などが知られている。[6]
- スイートホーム鉱山
アメリカのコロラド州アルマ(Alma)にあるスイートホーム鉱山(Sweet Home Mine)は、宝石としてのロードクロサイトの産地として世界を代表する鉱山である。この鉱山では、閃亜鉛鉱、マンガン重石、石英などと共に産出する。スイートホーム鉱山のロードクロサイトは色が濃く鮮やかなのが特徴で、鉄、マグネシウム、カルシウムなどの不純物の含有量が少ないことから深紅色をしており、「アルマ・ローズ」とも呼ばれる。[8][11][12]
アルマ・ローズのなかでも、「アルマ・キング(Alma King)」と命名された結晶は、14cm×16.5cmの大きなサイズを誇り、北米最大のロードクロサイト結晶としてデンバー自然科学博物館(Denver Museum of Nature and Science)に収蔵されている。[11]
コロラド州では、2002年にロードクロサイトを「コロラド州の石(Colorado State Mineral)」と定めた。[11]
- 中南米のインカ・ローズ
中南米はロードクロサイトの主要産地である。なかでもアルゼンチンのサンルイス州はロードクロサイトの採掘が行われたものとしては世界最古とされる鉱山がある。13世紀頃からインカ帝国によって営まれていた銀・銅の鉱山で、層状のロードクロサイトが得られる。これをカボション・カットにして研磨するとバラ状の縞模様が現れることから、「インカの薔薇」「ロジンカ(Rosinca)」や「インカローズ(Inca Rose)」と呼ばれる。[5][6][12]
インカ帝国が滅んだ後、この鉱山は忘れ去れれていたが、1920-1930年代に「再発見」された。インカローズは縞模様があるほど美しく貴重とされる。おなじアンデス山脈のカタマルカ州では鍾乳石状の「インカの薔薇」が有名である。特にカピリタス(Capillitas)鉱山産のものが知られている。[5][8][6]
このほか、ペルー・アンカシュ県のハーラポン(Huallapon)鉱山では、20cm角クラスの結晶を産する。また、メキシコもロードクロサイトの代表的な産地である。メキシコ産のなかではピンク色の小さな結晶が塊になっているものが典型である。[8]
- ルーマニア・ハンガリー
ルーマニアは「ロードクロサイト」の名が付けられた地である。1813年のルーマニア[注 1]でこの鉱石が「発見」され、バラ色であることから「バラ色」を意味するギリシア語「ῥοδόχρως」から、「ロードクロサイト(Rhodochrosite)」と命名された。[2][5][12]
このほか、ハンガリー、マケドニアなどもロードクロサイトの代表産地である。[5]
- 南アフリカ
南アフリカの北ケープ州にはカラハリ・マンガン地帯(Kalahari manganese field)と呼ばれるマンガンの大鉱床がある。この一帯にあるホタツェル(Hotazel)鉱山の菱マンガン鉱は炭酸成分や不純物が少なく、透明で大きな犬牙状の結晶が出ることでよく知られている。ホタツェルに近いクルマン(Kuruman)も同じような鉱石を産する。[12][5][8][13][14]
- 尾太鉱山
青森県の白神山地中にある尾太鉱山では、ぶどう状(腎臓状とも)の鉱石を産することで知られている。尾太鉱山は近世に銀や銅の採掘が行われ、昭和期には鉛や亜鉛の採掘で栄えた金属鉱山である。尾太鉱山は1979(昭和54)年に閉山したが、良質なロードクロサイトの産地として知られており、操業時代の産出品がいまも取引されている。[15][6]
- 稲倉石鉱山
北海道の余市町にあった稲倉石鉱山は近代日本で最大のマンガン鉱山だった。ここでもぶどう状鉱石をはじめ、結晶鉱石などを産出し、日本における菱マンガン鉱の代表産地だった。[6]
このほか、北海道の八雲鉱山、秋田県の尾去沢鉱山などが代表的な産地である。[16]
ギャラリー
-
研磨されたインカローズ
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カットされた結晶
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手芸用に丸く削られたもの
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さざれ石
-
単結晶菱マンガン鉱
脚注
注釈
出典
- ^ 『理科年表 平成20年』p641
- ^ a b c d e f Rhodochrosite (英語), MinDat.org, 2011年11月6日閲覧。
- ^ Rhodochrosite (英語), WebMineral.com, 2011年11月6日閲覧。
- ^ 『学術用語集 地学編』p114
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p 『天然石のエンサイクロペディア』p500-507
- ^ a b c d e f g 『不思議で美しい石の図鑑』p131
- ^ ネイチャー・ガイドシリーズ『岩石と鉱物』p121
- ^ a b c d e f g h i j k l m 『鉱物資源百科事典』p357
- ^ a b c 『ときめく鉱物図鑑』p30
- ^ a b 『価値がわかる宝石図鑑』p177
- ^ a b c d 大学宇宙研究協会(USRA,2006年1月20日付,en:Universities Space Research Association),NASA 今日の地球科学の1枚 Alma King ,2015年12月18日閲覧。
- ^ a b c d e f g 『Gemstones』p103-104
- ^ Mindat,Hotazel Mine ,2015年12月18日閲覧。
- ^ 広島大学陸域環境研究会,南アフリカのカラハリマンガン地帯における低品位マンガン鉱石の浅成富化のタイミング ,2015年12月18日閲覧。
- ^ 『角川日本地名大辞典2 青森県』,角川書店,1985,p.234「尾太鉱山」
- ^ 『日本産鉱物型録』p108
参考文献
- 文部省編『学術用語集 地学編』日本学術振興会、1984年、114頁。ISBN 4-8181-8401-2 。
- 松原聰『日本の鉱物』学習研究社〈フィールドベスト図鑑〉、2003年、92-93頁。ISBN 4-05-402013-5。
- 青木正博『鉱物分類図鑑 : 見分けるポイントがわかる』誠文堂新光社、2011年、90頁。ISBN 978-4-416-21104-5。
- 国立天文台編『理科年表 平成20年』丸善、2007年、641頁。ISBN 978-4-621-07902-7。
- 牧野和孝『鉱物資源百科事典』,日刊工業新聞社,1998,ISBN 4-526-04137-8
- 山と渓谷社,『ときめく鉱物図鑑』,2012,ISBN 978-4-635-20221-3
- 山田英春,『不思議で美しい石の図鑑』,創元社,2012,ISBN 978-4-422-44001-9
- 諏訪恭一,『価値がわかる宝石図鑑』,ナツメ社,2016,ISBN 978-4-8163-5947-7
- ネイチャー・ガイドシリーズ『岩石と鉱物』,ジェフリー・E・ポスト博士・監,ロナルド・ルイス・ボネウィッツ・文,伊藤伸子・訳,化学同人,2014,ISBN 978-4-7598-1552-8
- 飯田孝一,『天然石のエンサイクロペディア』,亥辰舎,2011,ISBN 978-4-904850-08-4
- Arthur Thomas,『Gemstones』,Roli Books Pvt Ltd,2007,ISBN 1845376021
関連項目
外部リンク
- 福岡正人. “Calcite〔方解石〕グループ”. 地球資源論研究室. 広島大学大学院総合科学研究科. 2011年11月6日閲覧。
- “標本名索引-英名”. 地質標本館. 産業技術総合研究所地質調査総合センター. 2011年11月6日閲覧。