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「フォアグラ」の版間の差分

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[[ファイル:Foie gras et sa gelée.jpg|right|250px|thumb|スライス後、皿に盛り付けられたフォアグラ(中央にある、クリーム色をした円盤状の料理)。]]
[[ファイル:Foie gras et sa gelée.jpg|right|250px|thumb|スライス後、皿に盛り付けられたフォアグラ(中央にある、クリーム色をした円盤状の料理)。]]
'''フォアグラ'''([[フランス語|仏]]: {{lang|fr|foie gras}} {{IPA-fr|fwa ɡʁɑ}}は、[[世界三大一覧#食|世界三大珍味]]として有名な[[食材]]。[[ガチョウ]]や[[]]などに必要以上に[[エサ]]を与えることにより、[[脂肪肝]]を[[人工]]的に作り出したものである。
'''フォアグラ'''([[フランス語|仏]]: {{lang|fr|foie gras}} {{IPA-fr|fwa ɡʁɑ}}は、[[世界三大一覧#食|世界三大珍味]]として有名な[[食材]]。[[ガチョウ]]や[[アヒル]]などに必要以上に[[エサ]]を与えることにより、[[脂肪肝]]を[[人工]]的に作り出したものである。


フランス語で「フォワ ({{lang|fr|foie}}) {{IPA-fr|fwa}}」は「肝臓」を、「グラ ({{lang|fr|gras}}) {{IPA-fr|ɡʁɑ}}」は「脂の多い、肥大した、太った」を意味する。即ち、「フォワ・グラ」は「脂肪肝」と訳せる。ただし、[[病気|疾患]]としての「脂肪肝」はフランス語では「{{lang|fr|stéatohépatite}}」である。
フランス語で「フォワ ({{lang|fr|foie}}) {{IPA-fr|fwa}}」は「肝臓」を、「グラ ({{lang|fr|gras}}) {{IPA-fr|ɡʁɑ}}」は「脂の多い、肥大した、太った」を意味する。即ち、「フォワ・グラ」は「脂肪肝」と訳せる。ただし、[[病気|疾患]]としての「脂肪肝」はフランス語では「{{lang|fr|stéatohépatite}}」である。


フォワグラの生産は[[強制給餌]](ガヴァージュ 仏: {{lang|fr|gavage}} / 英: {{interlang|en|force-feeding}})を伴うため、[[動物虐待]]に当たるとして生産や販売を禁止する動きが広がっている<ref name=" denmark">[http://www.afpbb.com/articles/-/3006746 フォアグラ販売、最後のスーパーが撤退 デンマーク] 国際ニュース:AFPBB News 2014年01月17日 22:57</ref>。 フォアグラ愛好家は、カモは[[渡り]]を行う場合、予め肝臓に脂肪を蓄えて、脂肪肝になる性質があるとして、フォアグラの存在やフォアグラ消費の習慣の正当性を主張している<ref name=" denmark"/>。
フォアグラは高級食材であり利益を得やすいため、20世紀後半から生産を開始する国や地域がある。一方、フォワグラの生産は[[強制給餌]](ガヴァージュ 仏: {{lang|fr|gavage}} / 英: {{interlang|en|force-feeding}})を伴うため、[[動物虐待]]に当たるとして生産や販売を禁止する動きもある<ref name=" denmark">[http://www.afpbb.com/articles/-/3006746 フォアグラ販売、最後のスーパーが撤退 デンマーク] 国際ニュース:AFPBB News 2014年01月17日 22:57</ref>。フォアグラ愛好家は、カモは[[渡り]]を行う場合、予め肝臓に脂肪を蓄えて、脂肪肝になる性質があるとして、フォアグラの存在やフォアグラ消費の習慣の正当性を主張している<ref name=" denmark"/>。


== 歴史 ==
== 歴史 ==
[[Image:Egyptiangeesefeeding.jpg|thumb|300px|紀元前2500年頃の[[古代エジプト]]で既にガチョウの肥育が行われていた。]]
[[古代ローマ]]人が、干し[[イチジク]]をガチョウに与えて飼育し、その肝臓を食べたのが始まりと言われる。[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス |大プリニウス]]の『[[博物誌]]』によると、古代ローマでは、[[ガリア]]からもたらされたガチョウに強制肥育を施して、食材としていたことが記録されている。これにある美食家がさらに工夫を加えて、イチジクで肥育させた上に、肥大した肝臓を[[蜂蜜]]入りの[[牛乳]]に浸して調理する技法を発案したと伝えられている。
[[古代ローマ]]人が、干し[[イチジク]]をガチョウに与えて飼育し、その肝臓を食べたのが始まりと言われる。[[ガイウス・プリニウス・セクンドゥス |大プリニウス]]の『[[博物誌]]』によると、古代ローマでは、[[ガリア]]からもたらされたガチョウに強制肥育を施して、食材としていたことが記録されている。これにある美食家がさらに工夫を加えて、イチジクで肥育させた上に、肥大した肝臓を[[蜂蜜]]入りの[[牛乳]]に浸して調理する技法を発案したと伝えられている。


[[ローマ帝国]]崩壊後にこれらの技法はいったん衰退したが、徐々に復活し、[[ルネサンス]]期にはフォアグラ生産業が定着して、食材として認知されるようになった。[[フランス革命]]前までは、フォアグラの製造にはガチョウだけではなく[[ニワトリ]]なども用いられたが、[[19世紀]]になると、ガチョウがフォアグラの素材の定番として定着した。ガチョウは[[牧草]]などの粗で大きく育つため、あまり地味の豊かでない土地で多く飼育され、またそうした地方は[[17世紀]]に[[新大陸]]から[[トウモロコシ]]が導入されて、農業生産がようやく向上した。後述ような今日のフランスの主要フォアグラ産地は、このような地理的、歴史的条件を背景とし、ガチョウ飼育農業とトウモロコシの出会いの上に成立したのである。
[[ローマ帝国]]崩壊後にこれらの技法はいったん衰退したが、徐々に復活し、[[ルネサンス]]期にはフォアグラ生産業が定着して、食材として認知されるようになった。[[フランス革命]]前までは、フォアグラの製造にはガチョウだけではなく[[ニワトリ]]なども用いられたが、[[19世紀]]になると、ガチョウがフォアグラの素材の定番として定着した。ガチョウは[[牧草]]などの粗飼料で大きく育つため、古くからあまり地味の豊かでない土地で多く飼育され、またそ地方は[[17世紀]]になると[[アメリカ州]]から[[トウモロコシ]]が導入されて、農業生産がようやく向上した。後述するような今日のフランスの主要フォアグラ産地は、このような地理的、歴史的条件を背景とし、ガチョウ飼育農業とトウモロコシの出会いの上に成立したのである。


今日ではガチョウ以外にのフォアグラも作られており、野生的な味がガチョウのものと異なるものとして評価されているが、火を通したときに溶けやすいこともあって、料理法の許容範囲はガチョウのものほど広くはない。なお、ここでいう「鴨」とは野生のマガモを[[家禽]]化した[[アヒル]]のことであが、フランス料理用語としては野生のカモと家禽のアヒルを訳し分けない慣行であるため、以後も「鴨」表記を用いる。
今日ではガチョウ以外にアヒルのフォアグラも作られており、野生的な味がガチョウのものと異なるものとして評価されているが、火を通したときに溶けやすいこともあって、料理法の許容範囲はガチョウのものほど広くはない。なお、日本におけるフランス料理用語は野生の[[カモ]]野生の[[マガモ]]を[[畜化]]したアヒルを訳し分けない慣行であるため、アヒルも「鴨」表記される。


== 製法 ==
== 産地と消費 ==
[[File:Foie Gras Geese (Normandie).jpg|thumb|250px|right|フォアグラ用に飼育されるガチョウ(フランス・ノルマンディー地方)]]
=== 伝統的な産地 ===
主な産地はフランス。世界のフォアグラの生産量は[[2000年]]で約1万8000トンだが、そのうちフランス産は1万5300トンにも及んだ。フランス国内では、南西部の[[ペリゴール]]地方(現[[ドルドーニュ県]])と[[ランド県]]が主産地で、ガチョウと鴨の両方のフォアグラが生産されている。南西部全体での生産量は、フランスの生産量の75%を占める。また、[[アルザス地域圏|アルザス地方]]の[[ストラスブール]]や[[ラングドック=ルシヨン地域圏|ラングドック地方]]の[[トゥールーズ]]も、産地としてよく知られている。また、ガチョウよりもアヒルの方が飼育が楽で、病気にも強いことから、今日では鴨のフォアグラの生産量は増加傾向である。


[[ハンガリー]]の[[ドナウ川]]西岸([[ドゥナーントゥール]]、{{interlang|hu|Dunántúl}})でも昔からフォアグラの生産が行われており、輸出も盛んである。
今日フランスでフォアグラ用にされるガチョウは「{{lang|fr|Oie de Toulouse}}(オワ・ド・トゥールーズ、[[トゥールーズ]]のガチョウの意)」などの大型品種で初夏に生まれた雛を野外の囲い地で牧草を餌十分運動させて育て、基礎体力を付けさせる。夏を越して秋になると狭い場所に閉じ込めて運動できいよう、[[消化]]がよいように柔らかくなるまで蒸したトウモロコシを、[[漏斗]](ガヴール)で強制的に[[胃]]に詰め込む強制給餌(ガヴァージュ)を1日に3回繰り返す。これ1ヶ月続けると、脂肪肝になった肝臓は2kgに達するほどに肥大し、頭部と胴体を水平にする姿勢しかれなくなるにる。この段階のガチョウをして肝臓を取り出し、余分な[[脂肪]]、[[血管]]、[[神経]]などを丁寧に除いてから、冷水に浸して身を締めたものがフォアグラである。


欧州にいる[[ユダヤ人]]の一部は、古くから、フォアグラ生産に携わり、伝統を伝えた<ref>[http://www.artisanfarmers.org/historyoffoiegras.html Artisan Farmers Alliance, Foie Gras Farmers of America]</ref>。
鴨の場合、ガチョウにはない[[素嚢]](そのう)と呼ばれる食道にある袋のような器官に餌が多量に入っていると、消化の速度が上がるという特性を持っている。そのため、人の手によるガヴァージュを行う前に10日間ほど好きなだけ餌を食べさせるプレガヴァージュを行い、効率よくガヴァージュを進める。給餌は一日2回で、期間は3週間である。また、近年では機械化された飼育場ですりつぶしたトウモロコシを自動的に与え、2週間ほどでガヴァージュを終わらせる速成法もあるが、素嚢でトウモロコシが[[発酵]]してしまうため、フォアグラの質は劣る。


=== 新しい産地 ===
フォアグラを取り出した残りの部分は、肥育によって多量の脂肪が蓄積されている。産地ではこのことを利用して、ガチョウ自身の脂肪で残った肉を油煮にして保存食料の[[コンフィ]]を作る。フランスの地方料理は多用する油脂の種類で特徴付けられ、例えば[[ノルマンディー]]や[[ブルターニュ]]地方は[[バター]]文化圏、[[イル・ド・フランス]]地方は[[ラード]]文化圏であるが、フォアグラの主要な産地のひとつである[[ラングドック]]地方はガチョウ脂肪[[文化圏]]に属している。
近年、生産を開始した国には、ヨーロッパでは[[ベルギー]]、[[スペイン]]、[[ギリシャ]]。その他[[マダガスカル]]、[[インド]]、[[グアテマラ]]、[[キューバ]]、[[チュニジア]]、[[タイ王国|タイ]]、[[中華人民共和国|中国]]が含まれる<ref>[http://www.lecanarddore.co.jp/story/storyfoie7.htm 世界のフォアグラ生産地]</ref>。


中国では、新たなフォアグラ生産者に対して欧州の投資家が投資を行い畜産場を作ったり、或いはノウハウを教え生産させてフランスに輸出をする動きもある<ref>[http://www.dailymail.co.uk/news/article-2215489/Foie-gras-factory-project-China-scrapped-Roger-Moores-campaign-torture-tin.html Foie gras factory project in China scrapped after Roger Moore's campaign against 'torture in a tin' | Mail Online]By Graham Smith, PUBLISHED: 08:56 GMT, 10 October 2012 | UPDATED: 10:51 GMT, 10 October 2012</ref><ref>[http://www.independent.co.uk/life-style/food-and-drink/china-goes-gourmet-with-foie-gras-1906067.html China goes gourmet with foie gras - Food & Drink - Life & Style - The Independent]Sunday 21 February 2010 </ref><ref name=jetro2011>[https://www.jetro.go.jp/world/europe/fr/foods/trends/1102001.html 報道等にみられる食に関する消費動向・トレンド - 市場・トレンド情報 - 食品・農林水産物 - フランス - 欧州 - 国・地域別情報 - ジェトロ]2011年2月</ref>。
== 産地 ==
主な産地はフランス。世界のフォアグラの生産量は西暦2000年で約1万8000トンだが、そのうちフランス産は1万5300トンにも及んだ。フランス国内では、南西部の[[ペリゴール]]地方(現[[ドルドーニュ県]])と[[ランド県]]が主産地で、ガチョウと鴨の両方のフォアグラが生産されている。南西部全体での生産量は、フランスの生産量の75%を占める。また、[[アルザス地域圏|アルザス地方]]の[[ストラスブール]]や[[ラングドック=ルシヨン地域圏|ラングドック地方]]の[[トゥールーズ]]も、産地としてよく知られている。不足分はオーストリアなどからの輸入品でまかなわれている。</br>ガチョウよりもの方が飼育が楽で、病気にも強いことから、今日では鴨のフォアグラの生産量は増加傾向である。

[[ハンガリー]]の[[ドナウ川]]西岸([[ドゥナーントゥール]]、{{interlang|hu|Dunántúl}})でも昔からフォアグラの生産が行われており、輸出も盛んである。


=== 世界の生産量 ===
=== 世界の生産量 ===
[[ファイル:Foie gras DSC00180.jpg|thumb|250px|調理前のフォアグラ。]]
[[ファイル:Foie gras DSC00180.jpg|thumb|250px|調理前のフォアグラ。]]
2004年のフォアグラ総生産量は23,670トンであった。{{要出典|date=2013年6月}}
2005年のフォアグラ総生産量は23,500トンであった。


* 以下、2004年のデータ
* 以下、2005年のデータ
*{{FRA}} : 18,000トン
*{{FRA}} : 18,450トン
*{{HUN}} : 2,600トン
*{{HUN}} : 1,920トン
*{{BUL}} : 2,000トン
*{{BUL}} : 1,500トン
*{{USA}} : 340トン
*{{ISR}} : 500トン (2005年以降生産は禁止されている)
*{{ESP}} : 500トン
*{{CAN}} : 200トン
*その他 : 570トン
*{{CHN}} : 150トン
*その他 : 940トン
2011年、ブルガリアがハンガリーを抜いて、欧州2位のフォアグラ生産国となった。ブルガリアではフォアグラ生産が1万人の雇用を支えているという<ref>[http://news.nna.jp.edgesuite.net/free_eu/news/20111209bgl250A.html 【ブルガリア】ブルガリア、欧州2位のフォアグラ生産国に[社会]/NNA.EU]2011-12-9</ref>。


2013年現在、フォアグラの主要産出国であるフランスは、欧州向け以外に、中国やロシア、ブラジル、韓国、台湾などの経済発展国への輸出を行う<ref name=reuter2013>[http://jp.reuters.com/article/idJPTYE92R01J20130328 仏産フォアグラにも欧州債務危機の影、輸出落ち込む | Reuters]2013年 03月 28日 11:47 JST</ref>。
== 調理法 ==

2013年現在、日本への輸入は、全てハンガリー産とフランス産で占められている<ref>[http://zasshi.news.yahoo.co.jp/article?a=20140117-00010000-takaraj-life ファミレス、居酒屋、コンビニのお菓子にまで…。日本にあふれかえる「フォアグラ」の奇怪 (宝島) - Yahoo!ニュース]宝島 2014年1月17日(金)17時41分配信</ref>。ガチョウのフォアグラの最大の輸入先はハンガリーで、鴨のフォアグラの最大の輸入先はフランスである。また、イスラエル又はユダヤ人が生産するフォアグラは質が高いため、かつてはイスラエル産も日本に輸入されていた<ref>[http://www.chefpride.co.jp/foiegras.htm フォアグラ特集]シェフプライド</ref>。

=== 消費 ===
フランスは世界最大のフォアグラの消費国であり、全世界で生産されるフォアグラのおよそ75%がフランス国内で消費される<ref name=sankei20131014/>。関連事業の労働者は約10万人といわれる<ref name=sankei20131014>[http://sankei.jp.msn.com/west/west_economy/news/131014/wec13101412010003-n4.htm 【岡田敏一のエンタメよもやま話】「街の本屋」守るため?仏議会がアマゾン「割引&無料宅配」を法律で禁じた“真の理由”とは…(4/5ページ) - MSN産経west]2013.10.14 12:00</ref>。また、フランス国内には、東欧(ハンガリー、ブルガリア)などからの安価な輸入品が流入しており<ref name=reuter2013/><ref>[http://www.afpbb.com/articles/-/3005523 変革迫られるフランスのフォアグラ産業(1) 国際ニュース:AFPBB News]2013年12月23日 13:54 発信地:オーシュ/フランス</ref>、近年は中国産も台頭する<ref name=jetro2011/>。

==== フランス ====
[[ファイル:Foiegras 20070824.jpg|thumb|250px|フォアグラのソテー。]]
[[ファイル:Foiegras 20070824.jpg|thumb|250px|フォアグラのソテー。]]
[[パテ (料理)|パテ]]に加工し甘めの柔らかい[[パン]]に塗って食べるか、[[ソテー]]して食べるのが一般的だが、[[セイヨウショウロ|トリュフ]]入りのパイ包み焼きのような、[[パイ]]料理の素材としてもよく使われる。フォアグラと[[セイヨウショウロ|トリュフ]]を乗せて焼いた[[ステーキ]]は、[[ジョアキーノ・ロッシーニ|ロッシーニ]]風トゥルヌドステーキと呼ばれる。フランスでは、伝統的に[[ソーテルヌ_(ワイン)|ソーテルヌ]]など甘口の[[ワイン]]と合わせる。
[[パテ (料理)|パテ]]に加工し甘めの柔らかい[[パン]]に塗って食べるか、[[ソテー]]して食べるのが一般的だが、[[セイヨウショウロ|トリュフ]]入りのパイ包み焼きのような、[[パイ]]料理の素材としてもよく使われる。フォアグラと[[セイヨウショウロ|トリュフ]]を乗せて焼いた[[ヒレ]]肉の[[ステーキ]]は、[[ジョアキーノ・ロッシーニ|ロッシーニ]]風トゥルヌドステーキ({{interlang|en|Tournedos Rossini}})と呼ばれる。フランスでは、伝統的に[[ソーテルヌ_(ワイン)|ソーテルヌ]]など甘口の[[ワイン]]と合わせる。


フランス人の多くにとっては[[クリスマス]]や[[正月|新年]]前夜の晩餐(レヴェヨン、{{interlang|en|réveillon}})などでしか口にすることのない珍味であるが、近年になって生産量が増加したため珍しさは薄れてきている。中には一年中フォアグラを賞味する地域もある。
フランス人の多くにとっては[[クリスマス]]や{{仮リンク|レヴェヨン|en|Réveillon}}という[[正月|新年]]前夜の晩餐などでしか口にすることのない珍味であるが、近年になって生産量が増加したため珍しさは薄れてきている。中には一年中フォアグラを賞味する地域もある。


== 動物虐待論 ==
==== 日本 ====
日本では、定番の[[ソテー]]以外に、フォアグラの[[とんかつ]]、[[丼]]、[[鍋]]、[[寿司]]などに調理する店もある<ref>[http://sankei.jp.msn.com/west/west_affairs/news/121231/waf12123118000009-n3.htm 【大阪から世界を読む】米「フォアグラ禁止法」に仏反発、中国も参戦で“世界大戦”(3/3ページ) - MSN産経west]2012.12.31 18:00</ref><ref>[http://www.nhk.or.jp/osaka/program/eetoko/past/20130830.html こてこてグルメ街の噂の真相 -大阪・生野区 アン ミカ&大木こだま-]NHK 大阪放送局 『えぇトコ』</ref>。また、[[スナック菓子]]にも用いる例もある<ref name=nike20131112/>。
上記のように、ガチョウ(鴨)に飼料を大量に無理矢理食べさせて[[脂肪肝]]を発症するまで肥大させることで製造することから、古くから不自然な食材としてこれを否定的にみる議論も見られた。例えば、昆虫学者の[[ジャン・アンリ・ファーブル|ファーブル]]も、嫌って食べなかったことが伝えられている。


2013年、[[日経トレンディ]]は、日本でフォアグラが目につく機会が増えたことを報じた<ref name=nike20131112/>。フォアグラは2012年頃には日本の[[ファミリーレストラン]]のメニューにも載った<ref name=nike20131112/>。これについて、消費者が[[アベノミクス]]の効果で“プチ贅沢”を楽しみたいという気分が盛り上がったからだという者もいる<ref name=nike20131112/>。また、フォアグラが安い価格帯で提供可能となったのは大量仕入れとフォアグラに採算を求めないことにあると解説する者もある<ref name=nike20131112>なぜ今「フォアグラ大放出」!? ファミレス、居酒屋、食べ放題… - “分かりやすさ”が魅力、女性客獲得の切り札にも!? 日経トレンディネット 2013年11月12日 [http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/]、[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/?ST=life&P=2]、[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/?ST=life&P=3]、[http://trendy.nikkeibp.co.jp/article/pickup/20131106/1053346/?ST=life&P=4]</ref>。
今日では[[アニマルライツ]](動物の権利)論の高まりなどもあり、[[動物の倫理的扱いを求める人々の会|PETA]]などの[[動物愛護団体]]は動物[[虐待]]であるとして反発している。


=== 各国の法規制の動き ===
==== 調理 ====
[[File:Foie gras caviar de vénus1.jpg|right|250px|thumb|フォアグラのキャビア添え]]
フォアグラは、他の高級素材[[キャビア]]や[[トリュフ]]よりも料理のバリエーションが豊富で、温かい料理でも冷たい料理でも使え、ほかの料理の調味料のような使い方も可能であり、アレンジの幅が広いと説明する料理店もある<ref name=nike20131112/>。
脂肪含有量が60%以上といわれ、常温で放置すると柔らかくなるため、切る時や、焼く時は冷蔵庫から出してすぐに行い、[[テリーヌ]]などの下処理をする時は、柔らかくして用いるとよいとされる<ref>[http://www.hyoei.ac.jp/library/nadeshiko/116.html 世界の高級食材<3>フォアグラ Fois gras]兵庫栄養調理製菓専門学校</ref>。
デリケートな調理が必要とされ、強火で調理すると脂分が溶け出したり、生の状態で放置しても脂分が部分的に溶けてしまったりする<ref name=nike20131112/>。
また、品質の低いフォアグラはフォアグラ独特の香りではなく[[レバー]]のような香りしかしなかったり、何を食べているか分からない食感になったりする場合もある<ref name=nike20131112/>。

===== 真空調理法 =====
真空低温調理法ともいう。フォアグラは脂肪分が多いため、そのままテリーヌなどの加熱調理を行うと、脂分が溶け出し、4割も目減りしてしまうという<ref>[https://www.jstage.jst.go.jp/article/cookeryscience1995/30/3/30_285/_pdf 外食産業の新しい調理システム]久保 修、日本調理科学会誌、Vol. 30 (1997) No. 3、公開日: 2013年04月26日 </ref>。真空調理法は、この課題の解決のために、[[1974年]]にジョルジュ・プラリュにより考え出された調理法で、フォアグラをプラスチックフィルムで真空パックし、パックしたまま低温で加熱調理を行う。この方法で脂分の目減りが5パーセント程度に少なくなった。<ref>[http://www.tokyo-chefs.jp/information/2012020311084668.html 新調理システム機器を理解し使いこなすために(1)]公益社団法人:全日本司厨士協会 東京地方本部</ref>{{seealso|真空調理法}}

== 法 ==
[[ファイル:Foie gras - gavage in Rocamadour, France.jpg|thumb|200px|フランスにおけるガチョウのガヴァージュ。近代的な機械による給餌。]]
=== 伝統的な生産と近代化 ===
フォアグラ生産用には、[[ノバリケン]]を家畜化したバリケン種(バルバリー種)と、マガモを家畜化したアヒル(ペキンアヒルが好まれる)を交雑した[[雑種第一代|一代雑種]]が好まれる。{{仮リンク|ムラード|en|Mulard}}と呼ばれるこの雑種アヒルは、バリケン種のように大型でマガモ系アヒルのように成長が速く、しかも丈夫でおとなしいためフォアグラ生産に向いている<ref>{{cite book |title=The Foie Gras Wars |last=Caro |first=Mark |year=2009 |publisher=Simon & Schuster |isbn=978-1-4165-5668-8 }}</ref>。

今日フランスなどでフォアグラ用に飼育されるガチョウは「オワ・ド・トゥールーズ {{lang|fr|Oie de Toulouse}}」などの大型品種である。初夏に生まれた雛を野外の囲い地で放し飼いにし、牧草を餌とし十分運動させて育て、肥育に耐えられる基礎体力を付けさせる<ref name=2003gravure/>。夏を越して秋になるとな飼育小屋に入れ、[[消化]]がよいように柔らかくなるまで蒸したトウモロコシを、[[漏斗]](ガヴール)で[[胃]]に詰め込む強制給餌(ガヴァージュ)と呼ばれる“肥育”を1日に3回繰り返す。職人技の手作業にだわる農場では、餌のトウモロコシは250グラムから始め、最後に倍になるよう少しずつ増やしていく<ref name=afpbb20131223-2>[http://www.afpbb.com/articles/-/3005523?pid=0&page=2 変革迫らるフランスのフォアグラ産業(2) 国際ニュース:AFPBB News]2013年12月23日 13:54 発信地:オーシュ/フランス</ref>。1ヶ月の肥育で、脂肪肝になった肝臓は2kgに達するほどに肥大し、頭部と胴体を水平にする姿勢とるようる。この段階のガチョウを屠殺して肝臓を取り出し、余分な[[脂肪]]、[[血管]]、[[神経]]などを丁寧に除いてから、冷水に浸して身を締めたものがフォアグラである(食味をよくするために、調理の前処理でも血管や神経を除く)

アヒルは、ガチョウにはない[[素嚢]](そのう)と呼ばれる食道にある袋のような器官に餌が多量に入っていると、消化の速度が上がるという特性を持っている。そのため、人の手によるガヴァージュを行う前に10日間ほど好きなだけ餌を食べさせるプレガヴァージュを行い、効率よくガヴァージュを進める。給餌は一日2回で、期間は3週間である。また、近年では機械化された飼育場ですりつぶしたトウモロコシを自動的に与え、2週間ほどでガヴァージュを終わらせる速成法もあるが、素嚢でトウモロコシが[[発酵]]してしまうため、フォアグラの質は劣る。

フォアグラ生産で最も大切な点は、ガチョウやカモにできるだけストレスを与えないことだという<ref name=2003gravure/>。農場は自然豊かな場所に、広い運動場を設けたりする。また、毎日、同じ人が餌を与えると、ガヴァージュのストレスを軽減させるという<ref name=2003gravure>[http://lin.alic.go.jp/alic/month/fore/2003/mar/gravure.htm ベルギーのフォアグラ生産 ブラッセル駐在員事務所]畜産の情報-グラビア-2003年3月 月報海外編</ref>。

フォアグラを取り出した残りの部分は、肥育によって多量の脂肪が蓄積されている。産地ではこのことを利用して、ガチョウ自身の脂肪で残った肉を油煮にして保存食料の[[コンフィ]]を作る。フランスの地方料理は多用する油脂の種類で特徴付けられ、例えば[[ノルマンディー]]や[[ブルターニュ]]地方は[[バター]]文化圏、[[イル・ド・フランス]]地方は[[ラード]]文化圏であるが、フォアグラの主要な産地のひとつである[[ラングドック]]地方はガチョウ脂肪[[文化圏]]に属している。

また、飼育期間の長いピレネー地方のムーラー種は良質の羽毛が取れるという<ref>[http://miuse.mie-u.ac.jp/bitstream/10076/11468/1/61J14438.pdf 羽毛品質の改善に関する検討 53頁](PDF) 三重大学社会連携研究センター研究報告. 2010, 18, p. 51-56.</ref>。

== 飼育法に対する世界の反応 ==
ガチョウやアヒルを運動させず、飼料を大量に無理矢理食べさせて[[脂肪肝]]を発症するまで肥大させることで製造することから、古くから不自然な食材としてこれを否定的にみる議論も見られた。[[昆虫学]]者の[[ジャン・アンリ・ファーブル|ファーブル]]も、嫌って食べなかったことが伝えられている。

主な批判は、上記のような伝統的な職人技の農場ではなく、工場化した大規模農場に集中している<ref name=afpbb20131223-2/>。ある大きな生産農場では数千のカモが強制肥育され、3羽ひとまとめで狭いケージで飼育する<ref name=afpbb20131223-2/>。ケージは給餌作業がしやすいよう作業者の身長に合わせて設置され、床には糞尿と食べ残しが放置される<ref name=afpbb20131223-2/>。飼育数が多いため、一羽一羽の状態にまで手が回らない<ref name=afpbb20131223-2/>。

今日では[[動物愛護]]や[[アニマルライツ]](動物の権利)論の高まりなどもあり、風当たりが強い。

=== 各地の動き ===
==== 欧州 ====
==== 欧州 ====
[[欧州評議会]]の「農業目的で保持される動物の保護に関する欧州条約」加盟国35カ国では、フォアグラの生産は「すでに定着している場合を除き」、1999年に禁止された。
[[欧州評議会]]の「農業目的で保持される動物の保護に関する欧州条約」加盟国35カ国では、フォアグラの生産は「すでに定着している場合を除き」、1999年に禁止された。


[[イタリア]]、[[オーストリア]]の6州、[[チェコ]]、[[デンマーク]]、[[ドイツ]]、[[ノルウェー]]、[[フィンランド]]、[[ポーランド]]、[[ルクセンブルク]]の各国では、「動物の強制給餌」自体が禁止されたことにより、フォアグラの生産は事実上、違法となった。ただし、外国産フォアグラの販売は必ずしも禁止されていない。また、[[アイルランド]]、[[イギリス]]、[[スウェーデン]]、[[オランダ]]、[[スイス]]でも、動物保護法の解釈上、フォアグラの生産は違法とされている。デンマークでは議論を受けてすべての[[スーパーマーケット]]・チェーンがフォアグラ販売からも撤退している<ref name=" denmark"/>。
[[イタリア]]、[[オーストリア]]の6州、[[チェコ]]、[[デンマーク]]、[[ドイツ]]、[[ノルウェー]]、[[フィンランド]]、[[ポーランド]]、[[ルクセンブルク]]の各国では、「動物の強制給餌」自体が禁止されたことにより、フォアグラの生産は事実上、違法となった。ただし、外国産フォアグラの販売は必ずしも禁止されていない。また、[[アイルランド]]、[[イギリス]]、[[スウェーデン]]、[[オランダ]]、[[スイス]]でも、動物保護法の解釈上、フォアグラの生産は違法とされている。デンマークでは議論を受けてすべての[[スーパーマーケット]]・チェーンがフォアグラ販売からも撤退している<ref name=" denmark"/>。


2000年度の世界生産量18,000トンの内、15,300トンがフランスで生産され、現在はほぼフランス一国で生産している状況である。2005年10月、[[フランス]]の[[国民議会 (フランス)|国民議会]]が農業政策に関する包括法の一部として、フォアグラは仏[[文化]]の遺産であるとした法案を全会一致で可決した。その際、フランスが世界でフォアグラの80%以上を生産していることを指摘し、保護すべき仏文化、料理の貴重な遺産であると宣言。カモやガチョウの強制肥育についても、他に方法はなく止むを得ないとして、擁護する姿勢を鮮明にした。
2000年度の世界生産量18,000トンの内、15,300トンがフランスで生産され、現在はほぼフランス一国で生産している状況である。2005年10月、[[フランス]]の[[国民議会 (フランス)|国民議会]]が農業政策に関する包括法の一部として、フォアグラは仏[[文化]]の遺産であるとした法案を全会一致で可決した。その際、フランスが世界でフォアグラの80%以上を生産していることを指摘し、保護すべき仏文化、料理の貴重な遺産であると宣言。ガチョウやアヒルの強制肥育についても、他に方法はなく止むを得ないとして、擁護する姿勢を鮮明にした。


==== アメリカ合衆国 ====
==== アメリカ合衆国 ====
* 2004年9月29日、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[カリフォルニア州]]は、州内で「肝臓肥大を目的とした鳥類の強制給餌」と「強制給餌によって作られた製品の販売」を[[2012年]]以降禁止する法律を成立させ、2012年7月1日から飲食店やスーパーでの提供が禁止となり、違反すれば1日当たり1000ドルの罰金が科されることとなった<ref>[http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012063000088 1日からフォアグラ禁止=駆け込み消費、反発の声も-米加州] - 時事ドットコム、2012年6月30日。</ref>。
2004年9月29日、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]・[[カリフォルニア州]]は、州内で「肝臓肥大を目的とした鳥類の強制給餌」と「強制給餌によって作られた製品の販売」を[[2012年]]以降禁止する法律を成立させ、2012年7月1日から飲食店やスーパーでの提供が禁止となり、違反すれば1日当たり1000ドルの罰金が科されることとなった<ref>[http://www.jiji.com/jc/c?g=int_30&k=2012063000088 1日からフォアグラ禁止=駆け込み消費、反発の声も-米加州] - 時事ドットコム、2012年6月30日。</ref>。このためか、お隣の[[ネバダ州]]でフォアグラの消費が増加した。カリフォルニアから買いくるからだという話がある<ref>[http://media.yucasee.jp/posts/index/12634 隣の州までフォアグラを買いに行く加州セレブ | YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア) | 最上級を刺激する総合情報サイト | 1]最終更新:2012年12月19日 12時15分</ref>。
* 2006年4月には、[[イリノイ州]][[シカゴ]]に於いフォアグラの販売が、市議会の決議によって全面的に禁止された。しかしこの条例制定後、すぐに地元レストランのシェフらから猛反発を受け、訴訟にまで発展した。さらに[[リチャード・M・デイリー]]市長も「シカゴ市を国中の物笑いの種にするようなもの」などとこき下ろし、撤廃を訴えていた。そして当時48対1の圧倒的多数で可決した同条例は、2008年5月、市議会で何の審議も行われず37対6で廃止が決まり、制定後わずか2年でお払い箱となった。


2006年4月には、[[イリノイ州]][[シカゴ]]で、市議会の決議よってフォアグラの販売が全面的に禁止された。しかしこの条例制定後、すぐに地元レストランのシェフらから猛反発を受け、訴訟にまで発展した。さらに{{仮リンク|リチャード・M・デイリー|en|Richard M. Daley}}市長も「シカゴ市を国中の物笑いの種にするようなもの」などと批判し、撤廃を訴えた。当時48対1の圧倒的多数で可決した同条例は、2008年5月、市議会で何の審議も行われず37対6で廃止が決まり、制定後わずか2年で失効した。
==== その他 ====

==== その他の国 ====
* [[アルゼンチン]]では、フォアグラの生産は動物虐待に当たるとして、禁止されている。
* [[アルゼンチン]]では、フォアグラの生産は動物虐待に当たるとして、禁止されている。
* [[イスラエル]]では、2003年8月に最高裁が農林水産省に対しガチョウの強制給餌を禁止するよう指示し、2006年2月以降禁止された。
* [[イスラエル]]では、2003年8月に最高裁が農林水産省に対しガチョウの強制給餌を禁止するよう指示し、2006年2月以降禁止された。


=== その他の動き ===
==== その他の動き ====
* 機内食からフォアグラを排除した主要航空会社の例としては以下が挙げられる。
* 機内食からフォアグラを排除した主要航空会社の例としては、[[スカンジナビア航空]]、[[KLMオランダ航空]]、[[エア・カナダ]]、[[デルタ航空]]、[[ユナイテッド航空]]、[[アメリカン航空]]、[[ニュージーランド航空]]が挙げられる。
** [[スカンジナビア航空]]
** [[KLMオランダ航空]]
** [[エア・カナダ]]
** [[デルタ航空]]
** [[ユナイテッド航空]]
** [[アメリカン航空]]
** [[ニュージーランド航空]]
* 2007年3月、アカデミー賞公式シェフの[[ウルフギャング・パック]]は、動物愛護の観点上、自身の経営するレストランチェーンやカフェに於いてフォアグラを使用した料理は提供しないことを宣言した。
* 2007年3月、アカデミー賞公式シェフの[[ウルフギャング・パック]]は、動物愛護の観点上、自身の経営するレストランチェーンやカフェに於いてフォアグラを使用した料理は提供しないことを宣言した。
* [[コンビニエンスストア]][[チェーンストア|チェーン]]の[[ファミリーマート]]は、2014年1月28日からフォアグラ添えの[[ハンバーグ]]弁当の発売を予定していたが、「フォアグラの飼育方法が残酷である」との意見が寄せられ、発売を見合わせることとなった<ref>[http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140124/biz14012417490018-n1.htm ファミマに「フォアグラの飼育は残酷」と抗議 やむなく特製弁当の販売を中止] 産経新聞 2014年1月24日</ref>。
* 日本の[[コンビニエンスストア]][[チェーンストア|チェーン]]の[[ファミリーマート]]は、2014年1月28日からフォアグラを使用した弁当た「ファミマプレミアム[[黒毛和種|黒毛和牛]]入り [[ハンバーグ]]弁当~フォアグラパテ添え」の発売を予定していたが、「フォアグラの飼育方法が残酷である」との意見が寄せられ、発売を見合わせることとなった<ref>{{PDFlink|[http://www.family.co.jp/company/news_releases/2014/140124_01.pdf 商品発売の見合わせに関するお知らせ]}} - ファミリーマート、2014年1月24日</ref><ref>[http://sankei.jp.msn.com/economy/news/140124/biz14012417490018-n1.htm ファミマに「フォアグラの飼育は残酷」と抗議 やむなく特製弁当の販売を中止] 産経新聞 2014年1月24日</ref>。

=== “倫理的なフォアグラ” ===
“倫理的なフォアグラ”と紹介されている方法は、強制給餌を用いない。スペインのある生産者(La Pateria de Sousa)は、ガチョウに自由に行動させ、渡りの時にエネルギー源を肝臓に蓄える野生の力を利用して、フォアグラを得ている。この農場から渡りに出てしまい出荷できなかったガチョウは全体の10パーセント程度に留まるという。この方法の課題は、温暖化のためか、収穫の時期(渡りの時期)が一定しないことだという。<ref>[http://punta.jp/archives/21718 強制給餌なしで育った「幸せなガチョウ」のフォアグラ | ニュースマガジン PUNTA - プンタ]2014年1月17日、Author:プラド夏樹</ref><ref>[http://www.meatinfo.co.uk/news/fullstory.php/aid/16463/Spanish_farmer_produces__91ethical_92_foie_gras.html Spanish farmer produces ‘ethical’ foie gras - MeatInfo]12 December, 2013, By Line Elise Svanevik</ref><ref>[http://www.huffingtonpost.com/daniel-klein/ethical-foie-gras_b_3380752.html Ethical Foie Gras]by Daniel Klein, Posted: 06/03/2013 5:37 pm, Part of AOL-HuffPost Food ※スペイン語動画付き</ref>
また、この生産者のフォアグラは、フランスのクードクールという美食コンテストで優勝したことで注目を得たと紹介するものもいる<ref>[http://recommend-ted.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html ダン・バーバー「驚くべきフォアグラ物語」]</ref>。

== フォアグラからの派生 ==
日本では一部の[[魚介類]]の“きも”を珍重する習慣があるが、[[アンコウ]]の肝臓である“あん肝”(あんきも)が[[珍味]]と考えられており、“海のフォアグラ”と呼ばれることがある<ref>[http://www.oarai-info.jp/eat/08.htm 鮟鱇(あんこう) 常陸路冬の風物詩(大洗観光協会 よかっぺ大洗)]一般社団法人大洗観光協会</ref>。
[[トラフグ]]などには[[テトロドトキシン|猛毒]]が含まれるが、その[[フグ]]の肝臓(きも)は美味と評価されていて商品価値があるため、無毒化する研究が日本で行われ、フグの肝のおいしさや食品としての機能をフォアグラと比較する研究者もいる<ref>[http://thcu.ac.jp/school/2010/12/20/docs/kiyou2010_2.pdf フグ肝加工品の栄養成分と機能性成分](PDF) 東京医療保健大学</ref><ref>[http://www2.shikoku-u.ac.jp/people/xanthid/toxin/mtkn.25.pdf マリントキシン研究会ニュース No. 25 1](PDF) 四国大学情報処理教育センター</ref>。
また、養殖魚の[[ウマヅラハギ]]の[[肝臓]](きも)の部分を通常の2倍ほどに大きくする養殖技術を確立し、これを“フォアグラハギ”と名付けて2013年から出荷している<ref>[http://www.yomiuri.co.jp/gourmet/news/business/20131117-OYT8T00335.htm 「フォアグラハギ」出荷…広島・尾道 : ニュース : グルメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)]2013年11月17日</ref>。


== 出典・脚注 ==
== 出典・脚注 ==
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== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{Commonscat|Foie gras}}
{{Commonscat|Foie gras}}
* {{仮リンク|フォアグラ論争|en|Foie gras controversy}}
* [[ガチョウ]]
* [[ガチョウ]]
* [[キャビア]]
* [[キャビア]]
* [[セイヨウショウロ|トリュフ]]
* [[セイヨウショウロ|トリュフ]]
* [[北京ダック]]
* [[北京ダック]]

== 外部リンク ==
* {{youtube|fCt1ak8LhXY|変革迫られるフランスのフォアグラ産業}} - afpbbnews, 2013-12-27[http://www.afpbb.com/articles/-/3005523 記事]
* [http://www.ted.com/talks/lang/ja/dan_barber_s_surprising_foie_gras_parable.html ダン・バーバー: 驚くべきフォアグラ物語 - Video on TED.com](2008年、日本語字幕付き動画、[https://www.youtube.com/watch?v=gvrgD0mAFoU Youtube][http://recommend-ted.blogspot.jp/2013/05/blog-post.html 解説]):スペインの“倫理的なフォアグラ”飼育農場について。


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2014年1月28日 (火) 04:59時点における版

スライス後、皿に盛り付けられたフォアグラ(中央にある、クリーム色をした円盤状の料理)。

フォアグラ: foie gras フランス語発音: [fwa ɡʁɑ]は、世界三大珍味として有名な食材ガチョウアヒルなどに必要以上にエサを与えることにより、脂肪肝人工的に作り出したものである。

フランス語で「フォワ (foie) フランス語発音: [fwa]」は「肝臓」を、「グラ (gras) フランス語発音: [ɡʁɑ]」は「脂の多い、肥大した、太った」を意味する。即ち、「フォワ・グラ」は「脂肪肝」と訳せる。ただし、疾患としての「脂肪肝」はフランス語では「stéatohépatite」である。

フォアグラは高級食材であり利益を得やすいため、20世紀後半から生産を開始する国や地域がある。一方、フォワグラの生産は強制給餌(ガヴァージュ 仏: gavage / 英: force-feeding)を伴うため、動物虐待に当たるとして生産や販売を禁止する動きもある[1]。フォアグラ愛好家は、カモは渡りを行う場合、予め肝臓に脂肪を蓄えて、脂肪肝になる性質があるとして、フォアグラの存在やフォアグラ消費の習慣の正当性を主張している[1]

歴史

紀元前2500年頃の古代エジプトで既にガチョウの肥育が行われていた。

古代ローマ人が、干しイチジクをガチョウに与えて飼育し、その肝臓を食べたのが始まりと言われる。大プリニウスの『博物誌』によると、古代ローマでは、ガリアからもたらされたガチョウに強制肥育を施して、食材としていたことが記録されている。これにある美食家がさらに工夫を加えて、イチジクで肥育させた上に、肥大した肝臓を蜂蜜入りの牛乳に浸して調理する技法を発案したと伝えられている。

ローマ帝国崩壊後にこれらの技法はいったん衰退したが、徐々に復活し、ルネサンス期にはフォアグラ生産業が定着して、食材として認知されるようになった。フランス革命前までは、フォアグラの製造にはガチョウだけではなくニワトリなども用いられたが、19世紀になると、ガチョウがフォアグラの素材の定番として定着した。ガチョウは牧草などの粗飼料で大きく育つため、古くからあまり地味の豊かでない土地で多く飼育され、またその地方では17世紀になるとアメリカ州からトウモロコシが導入されて、農業生産がようやく向上した。後述するような今日のフランスの主要フォアグラ産地は、このような地理的、歴史的条件を背景とし、ガチョウ飼育農業とトウモロコシの出会いの上に成立したのである。

今日ではガチョウ以外にアヒルのフォアグラも作られており、野生的な味がガチョウのものと異なるものとして評価されているが、火を通したときに溶けやすいこともあって、料理法の許容範囲はガチョウのものほど広くはない。なお、日本におけるフランス料理用語では野生のカモと野生のマガモ家畜化したアヒルを訳し分けない慣行であるため、アヒルも「鴨」と表記される。

産地と消費

フォアグラ用に飼育されるガチョウ(フランス・ノルマンディー地方)

伝統的な産地

主な産地はフランス。世界のフォアグラの生産量は2000年で約1万8000トンだが、そのうちフランス産は1万5300トンにも及んだ。フランス国内では、南西部のペリゴール地方(現ドルドーニュ県)とランド県が主産地で、ガチョウと鴨の両方のフォアグラが生産されている。南西部全体での生産量は、フランスの生産量の75%を占める。また、アルザス地方ストラスブールラングドック地方トゥールーズも、産地としてよく知られている。また、ガチョウよりもアヒルの方が飼育が楽で、病気にも強いことから、今日では鴨のフォアグラの生産量は増加傾向である。

ハンガリードナウ川西岸(ドゥナーントゥールDunántúl)でも昔からフォアグラの生産が行われており、輸出も盛んである。

欧州にいるユダヤ人の一部は、古くから、フォアグラ生産に携わり、伝統を伝えた[2]

新しい産地

近年、生産を開始した国には、ヨーロッパではベルギースペインギリシャ。その他マダガスカルインドグアテマラキューバチュニジアタイ中国が含まれる[3]

中国では、新たなフォアグラ生産者に対して欧州の投資家が投資を行い畜産場を作ったり、或いはノウハウを教え生産させてフランスに輸出をする動きもある[4][5][6]

世界の生産量

調理前のフォアグラ。

2005年のフォアグラ総生産量は23,500トンであった。

2011年、ブルガリアがハンガリーを抜いて、欧州2位のフォアグラ生産国となった。ブルガリアではフォアグラ生産が1万人の雇用を支えているという[7]

2013年現在、フォアグラの主要産出国であるフランスは、欧州向け以外に、中国やロシア、ブラジル、韓国、台湾などの経済発展国への輸出を行う[8]

2013年現在、日本への輸入は、全てハンガリー産とフランス産で占められている[9]。ガチョウのフォアグラの最大の輸入先はハンガリーで、鴨のフォアグラの最大の輸入先はフランスである。また、イスラエル又はユダヤ人が生産するフォアグラは質が高いため、かつてはイスラエル産も日本に輸入されていた[10]

消費

フランスは世界最大のフォアグラの消費国であり、全世界で生産されるフォアグラのおよそ75%がフランス国内で消費される[11]。関連事業の労働者は約10万人といわれる[11]。また、フランス国内には、東欧(ハンガリー、ブルガリア)などからの安価な輸入品が流入しており[8][12]、近年は中国産も台頭する[6]

フランス

フォアグラのソテー。

パテに加工し甘めの柔らかいパンに塗って食べるか、ソテーして食べるのが一般的だが、トリュフ入りのパイ包み焼きのような、パイ料理の素材としてもよく使われる。フォアグラとトリュフを乗せて焼いたヒレ肉のステーキは、ロッシーニ風トゥルヌドステーキ(Tournedos Rossini)と呼ばれる。フランスでは、伝統的にソーテルヌなど甘口のワインと合わせる。

フランス人の多くにとってはクリスマスレヴェヨン英語版という新年前夜の晩餐などでしか口にすることのない珍味であるが、近年になって生産量が増加したため珍しさは薄れてきている。中には一年中フォアグラを賞味する地域もある。

日本

日本では、定番のソテー以外に、フォアグラのとんかつ寿司などに調理する店もある[13][14]。また、スナック菓子にも用いる例もある[15]

2013年、日経トレンディは、日本でフォアグラが目につく機会が増えたことを報じた[15]。フォアグラは2012年頃には日本のファミリーレストランのメニューにも載った[15]。これについて、消費者がアベノミクスの効果で“プチ贅沢”を楽しみたいという気分が盛り上がったからだという者もいる[15]。また、フォアグラが安い価格帯で提供可能となったのは大量仕入れとフォアグラに採算を求めないことにあると解説する者もある[15]

調理

フォアグラのキャビア添え

フォアグラは、他の高級素材キャビアトリュフよりも料理のバリエーションが豊富で、温かい料理でも冷たい料理でも使え、ほかの料理の調味料のような使い方も可能であり、アレンジの幅が広いと説明する料理店もある[15]。 脂肪含有量が60%以上といわれ、常温で放置すると柔らかくなるため、切る時や、焼く時は冷蔵庫から出してすぐに行い、テリーヌなどの下処理をする時は、柔らかくして用いるとよいとされる[16]。 デリケートな調理が必要とされ、強火で調理すると脂分が溶け出したり、生の状態で放置しても脂分が部分的に溶けてしまったりする[15]。 また、品質の低いフォアグラはフォアグラ独特の香りではなくレバーのような香りしかしなかったり、何を食べているか分からない食感になったりする場合もある[15]

真空調理法

真空低温調理法ともいう。フォアグラは脂肪分が多いため、そのままテリーヌなどの加熱調理を行うと、脂分が溶け出し、4割も目減りしてしまうという[17]。真空調理法は、この課題の解決のために、1974年にジョルジュ・プラリュにより考え出された調理法で、フォアグラをプラスチックフィルムで真空パックし、パックしたまま低温で加熱調理を行う。この方法で脂分の目減りが5パーセント程度に少なくなった。[18]

製法

フランスにおけるガチョウのガヴァージュ。近代的な機械による給餌。

伝統的な生産と近代化

フォアグラ生産用には、ノバリケンを家畜化したバリケン種(バルバリー種)と、マガモを家畜化したアヒル(ペキンアヒルが好まれる)を交雑した一代雑種が好まれる。ムラードと呼ばれるこの雑種アヒルは、バリケン種のように大型でマガモ系アヒルのように成長が速く、しかも丈夫でおとなしいためフォアグラ生産に向いている[19]

今日フランスなどでフォアグラ用に飼育されるガチョウは「オワ・ド・トゥールーズ Oie de Toulouse」などの大型品種である。初夏に生まれた雛を野外の囲い地で放し飼いにし、牧草を餌とし十分運動させて育て、肥育に耐えられる基礎体力を付けさせる[20]。夏を越して秋になるとなどに飼育小屋に入れ、消化がよいように柔らかくなるまで蒸したトウモロコシを、漏斗(ガヴール)でに詰め込む強制給餌(ガヴァージュ)と呼ばれる“肥育”を1日に3回繰り返す。職人技の手作業にこだわる農場では、餌のトウモロコシは250グラムから始め、最後に倍になるよう少しずつ増やしていく[21]。1ヶ月の肥育で、脂肪肝になった肝臓は2kgに達するほどに肥大し、頭部と胴体を水平にする姿勢をとるようになる。この段階のガチョウを屠殺して肝臓を取り出し、余分な脂肪血管神経などを丁寧に除いてから、冷水に浸して身を締めたものがフォアグラである(食味をよくするために、調理の前処理でも血管や神経を除く)。

アヒルは、ガチョウにはない素嚢(そのう)と呼ばれる食道にある袋のような器官に餌が多量に入っていると、消化の速度が上がるという特性を持っている。そのため、人の手によるガヴァージュを行う前に10日間ほど好きなだけ餌を食べさせるプレガヴァージュを行い、効率よくガヴァージュを進める。給餌は一日2回で、期間は3週間である。また、近年では機械化された飼育場ですりつぶしたトウモロコシを自動的に与え、2週間ほどでガヴァージュを終わらせる速成法もあるが、素嚢でトウモロコシが発酵してしまうため、フォアグラの質は劣る。

フォアグラ生産で最も大切な点は、ガチョウやカモにできるだけストレスを与えないことだという[20]。農場は自然豊かな場所に、広い運動場を設けたりする。また、毎日、同じ人が餌を与えると、ガヴァージュのストレスを軽減させるという[20]

フォアグラを取り出した残りの部分には、肥育によって多量の脂肪が蓄積されている。産地ではこのことを利用して、ガチョウ自身の脂肪で残った肉を油煮にして保存食料のコンフィを作る。フランスの地方料理は多用する油脂の種類で特徴付けられ、例えばノルマンディーブルターニュ地方はバター文化圏、イル・ド・フランス地方はラード文化圏であるが、フォアグラの主要な産地のひとつであるラングドック地方はガチョウ脂肪文化圏に属している。

また、飼育期間の長いピレネー地方のムーラー種は良質の羽毛が取れるという[22]

飼育法に対する世界の反応

ガチョウやアヒルを運動させず、飼料を大量に無理矢理食べさせて脂肪肝を発症するまで肥大させることで製造することから、古くから不自然な食材としてこれを否定的にみる議論も見られた。昆虫学者のファーブルも、嫌って食べなかったことが伝えられている。

主な批判は、上記のような伝統的な職人技の農場ではなく、工場化した大規模農場に集中している[21]。ある大きな生産農場では数千のカモが強制肥育され、3羽ひとまとめで狭いケージで飼育する[21]。ケージは給餌作業がしやすいよう作業者の身長に合わせて設置され、床には糞尿と食べ残しが放置される[21]。飼育数が多いため、一羽一羽の状態にまで手が回らない[21]

今日では動物愛護アニマルライツ(動物の権利)論の高まりなどもあり、風当たりが強い。

各地の動き

欧州

欧州評議会の「農業目的で保持される動物の保護に関する欧州条約」加盟国35カ国では、フォアグラの生産は「すでに定着している場合を除き」、1999年に禁止された。

イタリアオーストリアの6州、チェコデンマークドイツノルウェーフィンランドポーランドルクセンブルクの各国では、「動物の強制給餌」自体が禁止されたことにより、フォアグラの生産は事実上、違法となった。ただし、外国産フォアグラの販売は必ずしも禁止されていない。また、アイルランドイギリススウェーデンオランダスイスでも、動物保護法の解釈上、フォアグラの生産は違法とされている。デンマークでは議論を受けてすべてのスーパーマーケット・チェーンがフォアグラ販売からも撤退している[1]

2000年度の世界生産量18,000トンの内、15,300トンがフランスで生産され、現在はほぼフランス一国で生産している状況である。2005年10月、フランス国民議会が農業政策に関する包括法の一部として、フォアグラは仏文化の遺産であるとした法案を全会一致で可決した。その際、フランスが世界でフォアグラの80%以上を生産していることを指摘し、保護すべき仏文化、料理の貴重な遺産であると宣言。ガチョウやアヒルの強制肥育についても、他に方法はなく止むを得ないとして、擁護する姿勢を鮮明にした。

アメリカ合衆国

2004年9月29日、アメリカカリフォルニア州では、州内で「肝臓肥大を目的とした鳥類の強制給餌」と「強制給餌によって作られた製品の販売」を2012年以降禁止する法律を成立させ、2012年7月1日から飲食店やスーパーでの提供が禁止となり、違反すれば1日当たり1000ドルの罰金が科されることとなった[23]。このためか、お隣のネバダ州でフォアグラの消費が増加した。カリフォルニアから買いくるからだという話がある[24]

2006年4月には、イリノイ州シカゴで、市議会の決議によってフォアグラの販売が全面的に禁止された。しかしこの条例制定後、すぐに地元レストランのシェフらから猛反発を受け、訴訟にまで発展した。さらにリチャード・M・デイリー英語版市長も「シカゴ市を国中の物笑いの種にするようなもの」などと批判し、撤廃を訴えた。当時48対1の圧倒的多数で可決した同条例は、2008年5月、市議会で何の審議も行われず37対6で廃止が決まり、制定後わずか2年で失効した。

その他の国

  • アルゼンチンでは、フォアグラの生産は動物虐待に当たるとして、禁止されている。
  • イスラエルでは、2003年8月に最高裁が農林水産省に対しガチョウの強制給餌を禁止するよう指示し、2006年2月以降禁止された。

その他の動き

“倫理的なフォアグラ”

“倫理的なフォアグラ”と紹介されている方法は、強制給餌を用いない。スペインのある生産者(La Pateria de Sousa)は、ガチョウに自由に行動させ、渡りの時にエネルギー源を肝臓に蓄える野生の力を利用して、フォアグラを得ている。この農場から渡りに出てしまい出荷できなかったガチョウは全体の10パーセント程度に留まるという。この方法の課題は、温暖化のためか、収穫の時期(渡りの時期)が一定しないことだという。[27][28][29] また、この生産者のフォアグラは、フランスのクードクールという美食コンテストで優勝したことで注目を得たと紹介するものもいる[30]

フォアグラからの派生

日本では一部の魚介類の“きも”を珍重する習慣があるが、アンコウの肝臓である“あん肝”(あんきも)が珍味と考えられており、“海のフォアグラ”と呼ばれることがある[31]トラフグなどには猛毒が含まれるが、そのフグの肝臓(きも)は美味と評価されていて商品価値があるため、無毒化する研究が日本で行われ、フグの肝のおいしさや食品としての機能をフォアグラと比較する研究者もいる[32][33]。 また、養殖魚のウマヅラハギ肝臓(きも)の部分を通常の2倍ほどに大きくする養殖技術を確立し、これを“フォアグラハギ”と名付けて2013年から出荷している[34]

出典・脚注

  1. ^ a b c フォアグラ販売、最後のスーパーが撤退 デンマーク 国際ニュース:AFPBB News 2014年01月17日 22:57
  2. ^ Artisan Farmers Alliance, Foie Gras Farmers of America
  3. ^ 世界のフォアグラ生産地
  4. ^ Foie gras factory project in China scrapped after Roger Moore's campaign against 'torture in a tin' | Mail OnlineBy Graham Smith, PUBLISHED: 08:56 GMT, 10 October 2012 | UPDATED: 10:51 GMT, 10 October 2012
  5. ^ China goes gourmet with foie gras - Food & Drink - Life & Style - The IndependentSunday 21 February 2010
  6. ^ a b 報道等にみられる食に関する消費動向・トレンド - 市場・トレンド情報 - 食品・農林水産物 - フランス - 欧州 - 国・地域別情報 - ジェトロ2011年2月
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  8. ^ a b 仏産フォアグラにも欧州債務危機の影、輸出落ち込む | Reuters2013年 03月 28日 11:47 JST
  9. ^ ファミレス、居酒屋、コンビニのお菓子にまで…。日本にあふれかえる「フォアグラ」の奇怪 (宝島) - Yahoo!ニュース宝島 2014年1月17日(金)17時41分配信
  10. ^ フォアグラ特集シェフプライド
  11. ^ a b 【岡田敏一のエンタメよもやま話】「街の本屋」守るため?仏議会がアマゾン「割引&無料宅配」を法律で禁じた“真の理由”とは…(4/5ページ) - MSN産経west2013.10.14 12:00
  12. ^ 変革迫られるフランスのフォアグラ産業(1) 国際ニュース:AFPBB News2013年12月23日 13:54 発信地:オーシュ/フランス
  13. ^ 【大阪から世界を読む】米「フォアグラ禁止法」に仏反発、中国も参戦で“世界大戦”(3/3ページ) - MSN産経west2012.12.31 18:00
  14. ^ こてこてグルメ街の噂の真相 -大阪・生野区 アン ミカ&大木こだま-NHK 大阪放送局 『えぇトコ』
  15. ^ a b c d e f g h なぜ今「フォアグラ大放出」!? ファミレス、居酒屋、食べ放題… - “分かりやすさ”が魅力、女性客獲得の切り札にも!? 日経トレンディネット 2013年11月12日 [1][2][3][4]
  16. ^ 世界の高級食材<3>フォアグラ Fois gras兵庫栄養調理製菓専門学校
  17. ^ 外食産業の新しい調理システム久保 修、日本調理科学会誌、Vol. 30 (1997) No. 3、公開日: 2013年04月26日
  18. ^ 新調理システム機器を理解し使いこなすために(1)公益社団法人:全日本司厨士協会 東京地方本部
  19. ^ Caro, Mark (2009). The Foie Gras Wars. Simon & Schuster. ISBN 978-1-4165-5668-8 
  20. ^ a b c ベルギーのフォアグラ生産 ブラッセル駐在員事務所畜産の情報-グラビア-2003年3月 月報海外編
  21. ^ a b c d e 変革迫られるフランスのフォアグラ産業(2) 国際ニュース:AFPBB News2013年12月23日 13:54 発信地:オーシュ/フランス
  22. ^ 羽毛品質の改善に関する検討 53頁(PDF) 三重大学社会連携研究センター研究報告. 2010, 18, p. 51-56.
  23. ^ 1日からフォアグラ禁止=駆け込み消費、反発の声も-米加州 - 時事ドットコム、2012年6月30日。
  24. ^ 隣の州までフォアグラを買いに行く加州セレブ | YUCASEE MEDIA(ゆかしメディア) | 最上級を刺激する総合情報サイト | 1最終更新:2012年12月19日 12時15分
  25. ^ 商品発売の見合わせに関するお知らせ (PDF) - ファミリーマート、2014年1月24日
  26. ^ ファミマに「フォアグラの飼育は残酷」と抗議 やむなく特製弁当の販売を中止 産経新聞 2014年1月24日
  27. ^ 強制給餌なしで育った「幸せなガチョウ」のフォアグラ | ニュースマガジン PUNTA - プンタ2014年1月17日、Author:プラド夏樹
  28. ^ Spanish farmer produces ‘ethical’ foie gras - MeatInfo12 December, 2013, By Line Elise Svanevik
  29. ^ Ethical Foie Grasby Daniel Klein, Posted: 06/03/2013 5:37 pm, Part of AOL-HuffPost Food ※スペイン語動画付き
  30. ^ ダン・バーバー「驚くべきフォアグラ物語」
  31. ^ 鮟鱇(あんこう) 常陸路冬の風物詩(大洗観光協会 よかっぺ大洗)一般社団法人大洗観光協会
  32. ^ フグ肝加工品の栄養成分と機能性成分(PDF) 東京医療保健大学
  33. ^ マリントキシン研究会ニュース No. 25 1(PDF) 四国大学情報処理教育センター
  34. ^ 「フォアグラハギ」出荷…広島・尾道 : ニュース : グルメ : YOMIURI ONLINE(読売新聞)2013年11月17日

参考文献

  • Lang, George. The Cuisine of Hungary. Bonanza, New York, 1990.

関連項目

外部リンク