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'''学生自治会'''(がくせいじちかい)は、[[高等教育]]である[[大学]]、[[短期大学]]などで組織される[[学生]]による自発的、自治的な組織である。似たような組織として、[[小学校]]では[[児童会]]、[[中学校]]や[[高等学校]]などでは[[生徒会]]がある。'''学友会'''、'''[[学生会]]'''、単に'''[[自治会]]'''と呼ぶこともある。 |
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'''[[自治会 (高等教育)|自治会]]'''と呼ぶこともあるが、自治会は、学生が学校に関連した政治的活動を行う組織として、学友会と一線を画す場合がある。このような学友会と自治会の性質の違いを受けて、両者をまとめて'''[[学生会]]'''と呼んだりすることもある。 |
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主に[[学生]]によって組織されるが、[[教員]]や[[事務職員]]などのその他の学校関係者が加入している場合もある。事業は、主に学生の自発的な活動により、学校生活の充実や改善向上を図る活動、[[部活動]]などの[[課外活動]]への支援、行事への協力に関する活動、[[ボランティア]]活動などを行う。多くの場合、[[学校]]との協力関係にある。 |
主に[[学生]]によって組織されるが、[[教員]]や[[事務職員]]などのその他の学校関係者が加入している場合もある。事業は、主に学生の自発的な活動により、学校生活の充実や改善向上を図る活動、[[部活動]]などの[[課外活動]]への支援、行事への協力に関する活動、[[ボランティア]]活動などを行う。多くの場合、[[学校]]との協力関係にある。 |
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一時期、[[学生運動]]の高まりとともに学生自治会の活動が党派的になったこともあったが、現代においては、多くの学生自治会では、学校内の相互扶助、環境改善などの活動を行っている。 |
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==歴史== |
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課外活動などを推進するための学生による自主的な団体は、第2次世界大戦前から存在していたと考えられる。しかし、終戦後の[[学制改革]]によって新制大学が成立すると、学生団体は再編を余儀なくされ、現行の学生自治会が組織された。 |
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今日でもこれらの組織の名称が大きく学友会と自治会に分かれているのはこのためである。なお。現代においては、政治的な党派の指導によって設けられた組織でなくても'''自治会'''という呼称を用いる場合がある。 |
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[[全日本学生自治会総連合]](全学連)が組織され、全国的な[[学生運動]]が展開された時期もある。しかし、学生の政治離れなどにより学生運動は下火となり、次第に学生自治会の活動は、自然と課外活動に関するものが中心になっていった。そのため、全日本学生自治会総連合は、弱体化、分裂し、現在では、全日本学生自治会総連合に加盟していない学生自治会が多い。なお、近年でも一部に学生運動や政治的な活動を中心としている学生自治会もあるが、全学生の総意とは言い難い活動を展開している。そのため、大学は、教育活動の保護、研究活動の保護、学生の人権擁護などのために、学生自治会のうち政治性を有するものを強制的に解散したり、構内の施設を一切借用させなかったりなどの処置を講じ、非民主的で問題を引き起こす学生自治会に対しては厳しい態度を取っている。 |
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学友会は課外活動の振興を、自治会は高等教育の環境改善を目的としていた。しかし、両者の活動には重なる部分が多く、学生の政治離れにより、政治的な自治会組織はほとんどなくなり、課外活動を中心とする学友会組織が主流となった。 |
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今日はさらに、課外活動についても学生離れが認められ、学 |
学生自治会の目的には、主に課外活動の振興と高等教育の環境改善があるが、歴史的には、高等教育の環境改善から課外活動の振興に移行してきた。今日はさらに、課外活動についても学生離れが認められ、学生自治会の組織力は低下する一方である。 |
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==組織== |
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多くの場合、いくつかの部門毎に[[自治権]]を有する組織が集結した[[連合型]]という組織形態をとる。構成員については、加盟する課外活動団体の構成員に限るものと学校に在学するすべての者とする2種類がある。 |
多くの場合、いくつかの部門毎に[[自治権]]を有する組織が集結した[[連合型]]という組織形態をとり多様な活動を保証するようにしている。なお、一部にはすべてを統括的に処理する自治会もある。構成員については、加盟する課外活動団体の構成員に限るものと学校に在学するすべての者とする2種類がある。 |
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学生による連合体を総括する機関としては、議事機関として「学 |
学生による連合体を総括する機関としては、議事機関として「学生総会」、「学生評議会(中央委員会など)」、執行機関としては「役員会(執行部など)」、監査機関としては「監査会(監査委員会など)」で成り立っている。また、[[学園祭]]、[[文化祭]]の企画、実施などをする組織として「学園祭実行委員会」を特別な機関として設置している場合が多い。 |
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自治権を持つ機関としては、課外活動に関する組織として、運動部を束ねる「体育会」、文化部を束ねる「文化会」が設置されているのが通例であるが、学校によってはこの分類によらないものも多い。また、教育研究組織と深いつながりを持つ「ゼミナール連合会」がおかれている場合もある。 |
自治権を持つ機関としては、課外活動に関する組織として、運動部を束ねる「体育会」、文化部を束ねる「文化会」が設置されているのが通例であるが、学校によってはこの分類によらないものも多い。また、教育研究組織と深いつながりを持つ「ゼミナール連合会」がおかれている場合もある。 |
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:多くは形骸化しており、構成員なら誰でも参加できるが、出席者の大半が執行機関から予算配分を受ける組織の構成員であることが多い。多くの学 |
:多くは形骸化しており、構成員なら誰でも参加できるが、出席者の大半が執行機関から予算配分を受ける組織の構成員であることが多い。多くの学生自治会は、定期的に総会を開く。重要案件について全校的な投票を行う制度は、構成員の意志を直接反映できる合理的な制度であるが、整備されている学校は少ない。 |
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*学生[[評議会]](中央委員会など) |
*学生[[評議会]](中央委員会など) |
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:学生総会に次ぐ実質的な議事機関として、学生総会に提出する議案の決定、[[予算]]・[[決算]]の議決、諸問題の解決、学園祭実行委員会、体育会、文化会などに対する連絡調整と予算の配分、その他種種の計画や実施の協議にあたる。 |
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:学生評議会の構成者は、各学校によって異なり、授業のクラスを単位として選出された評議員、課外活動の代表者などである。大きくは、選出に授業のクラスを重視する型と課外活動を重視する型に分かれる。末端組織の役員から順次欠員を補充する形態になっている場合が多い。 |
:学生評議会の構成者は、各学校によって異なり、授業のクラスを単位として選出された評議員、課外活動の代表者などである。大きくは、選出に授業のクラスを重視する型と課外活動を重視する型に分かれる。末端組織の役員から順次欠員を補充する形態になっている場合が多い。 |
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:学生自治会の全体に必要な事務を執行する。学校によって異なるが、おかれる役員としては、会長、副会長、会計、常任委員などがある。 |
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:役員の選び方については、構成員が直接選挙する場合と学生評議会などが選出する方法の2種類がある。 |
:役員の選び方については、構成員が直接選挙する場合と学生評議会などが選出する方法の2種類がある。 |
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:役員会の下に役員以外の人員を有する[[事務局]]がおかれる場合とおかれない場合がある。事務局があると何年にもわたって継続的に事務を行う人員が確保できるため、強力な学生自治会の運営が実施できるが、事務局経験者からしか役員が選出されなくなる場合もあり、運営の中立性の確保を考えると難しい面もある。 |
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*[[学園祭実行委員会]] |
*[[学園祭実行委員会]] |
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:学校における学園祭、文化祭の企画、実施を行う。多くの場合、課外活動の中で一番多くの資金を扱う。形態としては、学 |
:学校における学園祭、文化祭の企画、実施を行う。多くの場合、課外活動の中で一番多くの資金を扱う。形態としては、学生自治会から多額の補助金を受けて運営するものと学園祭事業のうち一部の業務を有償化することによって得た事業収入で運営するものの2種類がある。近年は、会計監査などの透明性の理由により、学生自治会から補助金を受ける形態や、会計が学生自治会の役員会に連結される形態が多い。学園祭実行委員会の役員は、委員会内で選出する場合と学生自治会の役員会または学生評議会などが直接指名する場合がある。 |
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*監査会(監査委員会など) |
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:学生自治会について各種の監査を行う。大きくは、[[会計監査]]業務と[[事務監査]]業務に区分され、会計監査業務は実施率が高い。しかし、日常的な活動を行うものは少なく、多くは、学生自治会の主要な人員が役員を兼ねない形で着任している場合が多い。 |
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==自治機関== |
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学生自治会から自治権を得ている組織としては、主に課外活動に関する団体が多い。課外活動団体は、運動系、文化系の「部活動」のみに分類する方法と、別に「サークル活動」という概念を設け体育会、文化会などの自治組織に非加入の団体を認める方法の2つがある。後者の場合は、体育会、文化会などと並んで「サークル会議」が設けられることがある。 |
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*[[体育会]] |
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==関連項目== |
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*[[全日本学生自治会総連合]] |
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*[[課外活動]] - [[部活動]] - [[体育会]] - [[文化会]] |
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*[[ゼミナール連合会]] |
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2004年6月19日 (土) 11:41時点における版
学生自治会(がくせいじちかい)は、高等教育である大学、短期大学などで組織される学生による自発的、自治的な組織である。似たような組織として、小学校では児童会、中学校や高等学校などでは生徒会がある。学友会、学生会、単に自治会と呼ぶこともある。
主に学生によって組織されるが、教員や事務職員などのその他の学校関係者が加入している場合もある。事業は、主に学生の自発的な活動により、学校生活の充実や改善向上を図る活動、部活動などの課外活動への支援、行事への協力に関する活動、ボランティア活動などを行う。多くの場合、学校との協力関係にある。
一時期、学生運動の高まりとともに学生自治会の活動が党派的になったこともあったが、現代においては、多くの学生自治会では、学校内の相互扶助、環境改善などの活動を行っている。
学生自治会の自発的、自治的な働きにより、学生の学校生活や学校環境を充実させる働きを学生自治という。これには、学校からの事務所や部室棟の借与、学生自治会の活動のための定期的な休講などが必要であり、学校の学生による自主活動の支援が必要である。
歴史
課外活動などを推進するための学生による自主的な団体は、第2次世界大戦前から存在していたと考えられる。しかし、終戦後の学制改革によって新制大学が成立すると、学生団体は再編を余儀なくされ、現行の学生自治会が組織された。
また終戦後は、小学校などに児童会、中学校、高等学校などに生徒会が設立されたのを受けて、大学ではそれに対応する組織として機能した。多くの国立大学では、大学非公認の組織として自治会が設けられ、各種の学生運動を行った。またそれとは別に課外活動を推進するために学校との強い連携関係の下に公認である学友会が設けられた。同一の大学内に2つの組織が混在した例も多いが、現代までにどちらかが主導的な立場になり、ほとんどは全学生を束ねる組織として1つに再編されていった。
全日本学生自治会総連合(全学連)が組織され、全国的な学生運動が展開された時期もある。しかし、学生の政治離れなどにより学生運動は下火となり、次第に学生自治会の活動は、自然と課外活動に関するものが中心になっていった。そのため、全日本学生自治会総連合は、弱体化、分裂し、現在では、全日本学生自治会総連合に加盟していない学生自治会が多い。なお、近年でも一部に学生運動や政治的な活動を中心としている学生自治会もあるが、全学生の総意とは言い難い活動を展開している。そのため、大学は、教育活動の保護、研究活動の保護、学生の人権擁護などのために、学生自治会のうち政治性を有するものを強制的に解散したり、構内の施設を一切借用させなかったりなどの処置を講じ、非民主的で問題を引き起こす学生自治会に対しては厳しい態度を取っている。
学生自治会の目的には、主に課外活動の振興と高等教育の環境改善があるが、歴史的には、高等教育の環境改善から課外活動の振興に移行してきた。今日はさらに、課外活動についても学生離れが認められ、学生自治会の組織力は低下する一方である。
組織
多くの場合、いくつかの部門毎に自治権を有する組織が集結した連合型という組織形態をとり多様な活動を保証するようにしている。なお、一部にはすべてを統括的に処理する自治会もある。構成員については、加盟する課外活動団体の構成員に限るものと学校に在学するすべての者とする2種類がある。
学生による連合体を総括する機関としては、議事機関として「学生総会」、「学生評議会(中央委員会など)」、執行機関としては「役員会(執行部など)」、監査機関としては「監査会(監査委員会など)」で成り立っている。また、学園祭、文化祭の企画、実施などをする組織として「学園祭実行委員会」を特別な機関として設置している場合が多い。
自治権を持つ機関としては、課外活動に関する組織として、運動部を束ねる「体育会」、文化部を束ねる「文化会」が設置されているのが通例であるが、学校によってはこの分類によらないものも多い。また、教育研究組織と深いつながりを持つ「ゼミナール連合会」がおかれている場合もある。
議事機関
- 学生総会
- 学生自治会の最高議決機関であり、基本的な事項の承認、規約の改廃などを行う。
- 多くは形骸化しており、構成員なら誰でも参加できるが、出席者の大半が執行機関から予算配分を受ける組織の構成員であることが多い。多くの学生自治会は、定期的に総会を開く。重要案件について全校的な投票を行う制度は、構成員の意志を直接反映できる合理的な制度であるが、整備されている学校は少ない。
- 学生評議会(中央委員会など)
- 学生総会に次ぐ実質的な議事機関として、学生総会に提出する議案の決定、予算・決算の議決、諸問題の解決、学園祭実行委員会、体育会、文化会などに対する連絡調整と予算の配分、その他種種の計画や実施の協議にあたる。
- 学生評議会の構成者は、各学校によって異なり、授業のクラスを単位として選出された評議員、課外活動の代表者などである。大きくは、選出に授業のクラスを重視する型と課外活動を重視する型に分かれる。末端組織の役員から順次欠員を補充する形態になっている場合が多い。
執行機関
- 役員会
- 学生自治会の全体に必要な事務を執行する。学校によって異なるが、おかれる役員としては、会長、副会長、会計、常任委員などがある。
- 役員の選び方については、構成員が直接選挙する場合と学生評議会などが選出する方法の2種類がある。
- 役員会の下に役員以外の人員を有する事務局がおかれる場合とおかれない場合がある。事務局があると何年にもわたって継続的に事務を行う人員が確保できるため、強力な学生自治会の運営が実施できるが、事務局経験者からしか役員が選出されなくなる場合もあり、運営の中立性の確保を考えると難しい面もある。
- 学校における学園祭、文化祭の企画、実施を行う。多くの場合、課外活動の中で一番多くの資金を扱う。形態としては、学生自治会から多額の補助金を受けて運営するものと学園祭事業のうち一部の業務を有償化することによって得た事業収入で運営するものの2種類がある。近年は、会計監査などの透明性の理由により、学生自治会から補助金を受ける形態や、会計が学生自治会の役員会に連結される形態が多い。学園祭実行委員会の役員は、委員会内で選出する場合と学生自治会の役員会または学生評議会などが直接指名する場合がある。
監査機関
- 監査会(監査委員会など)
- 学生自治会について各種の監査を行う。大きくは、会計監査業務と事務監査業務に区分され、会計監査業務は実施率が高い。しかし、日常的な活動を行うものは少なく、多くは、学生自治会の主要な人員が役員を兼ねない形で着任している場合が多い。
自治機関
学生自治会から自治権を得ている組織としては、主に課外活動に関する団体が多い。課外活動団体は、運動系、文化系の「部活動」のみに分類する方法と、別に「サークル活動」という概念を設け体育会、文化会などの自治組織に非加入の団体を認める方法の2つがある。後者の場合は、体育会、文化会などと並んで「サークル会議」が設けられることがある。
- 運動部によって組織され、内部機関として「総会」「部長会(主将会)」「事務局(本部)」などを持つ。多くの場合、部、同好会、愛好会などの階級制をとっている。学内施設の利用権の優先的獲得、試合運営などの相互協力、資金面での相互協力などを目的に活動する。また、新規加盟については、課外活動団体を設立すると無条件に行われる形態と実績などがなければ認められない形態がある。設置率は、文化会より高い。
- 文化部によって組織され、内部機関として「総会」「部長会」「事務局(本部)」などを持つ。部、同好会、愛好会などの階級制をとる場合ととらない場合がある。文化部の地位向上、学内施設の利用権の優先的獲得、資金面での相互協力などを目的に活動する。また、新規加盟については、課外活動団体を設立すると無条件に行われる形態と実績などがなければ認められない形態がある。設置率は、体育会より低い。
- 体育会、文化会などの自治組織に非加入の団体にもある程度の権限と責任を与えるために設けられる。内部機関を持たない場合が多く、その機能は一般的に低いことが多い。
- ゼミナールや卒業研究などの授業を基礎とした、学生集団によって構成される。目的は、学生による学術活動の推進、各ゼミナールの環境改善などである。学校によって組織形態は大きく異なり、設置されていない学校も多い。