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'''ハアブ'''(暦)は、[[マヤ文明]]において、365日を一周期とする暦である。20日が1ヶ月となる18の「月」と[[ウェヤブ]]と呼ばれる不吉な5日間で構成されている。 |
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[[ファイル:Mayan Zodiac Circle.jpg|thumb|18と1の月で構成されるハアブ暦の周期。]] |
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'''ハアブ'''(haab<ref group="†">[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 137頁で確認した綴り。</ref>) は、[[マヤ文明]]において、365日を一周期とする暦である。20日が1か月となる18の「月」と、名前を持たず不吉だとされる5日間で構成されている<ref name="ミラー&タウベp137">[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]], p. 137.</ref><ref>[[#コウ (2003)|コウ (2003)]], pp. 77-78.</ref>。'''ハアブ暦'''、'''おおよその1年'''とも<ref name="コウ2003p77">[[#コウ (2003)|コウ (2003)]], p. 77.</ref>。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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ハアブ暦は、18の「月」と0から19までの数字が順次組み合わさってできる暦になっている。便宜的に0とされている文字は「着座の文字」と呼ばれ、その月が支配の座につくことを表す。 |
ハアブ暦は、18の「月」と、0から19まで、または1から20までの数字が順次組み合わさってできる暦になっている<ref name="ミラー&タウベp137"/>。便宜的に0とされている文字は「着座の文字」と呼ばれ、その月が支配の座につくことを表す。 |
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マヤでは時はそれぞれの神に支配されていて、「日」の神、「月」の神、「年」の神がいると考えられてい |
マヤでは、時はそれぞれの神に支配されていて、「日」の神、「月」の神、「年」の神がいると考えられていた。その月が支配の座につくということは、その「月」の神が支配の座につくと同義である。20日たったら、次の「月」の神に支配の座を譲るという考えかたが暦に反映されている。 |
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18の「月」は以下のとおりである。 |
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18の「月」は、順に、[[ポプ]]、[[ウオ]]、[[シプ]]、[[ソッツ]]、[[セック]]、シュル、[[ヤシュキン]]、[[モル(ハアブ暦)|モル]]、[[チェン]]、[[ヤシュ]]、[[サック]]、ケフ、[[マック (ハアブ暦)|マック]]、カンキン、[[ムアン (ハアブ暦)|ムアン]]、[[パシュ]]、カヤブ、クムクという。これに、5日間のウェヤブが加わって365日となる。 |
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# '''ポプ'''<ref group="†">ポプは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。</ref> (Pop<ref group="†" name="綴り">[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した綴り。</ref>) |
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# '''ウオ'''<ref group="†">ウオは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称は'''ウォ'''。</ref> (Wo<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''シプ'''<ref group="†">シプは、[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。ほか、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)で確認した名称は'''シップ'''。</ref> (Sip<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''ソッツ'''<ref group="†">ソッツは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。ほか、[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]] 106頁で確認した名称は'''ソツ'''。</ref> (Sotz'<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''セック'''<ref group="†">セックは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称は'''セク'''、[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]] 106頁で確認した名称は'''ツェク'''。</ref> (Sek<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''シュル'''<ref group="†">シュルは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。</ref> (Xul<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''カンキン'''<ref group="†">カンキンは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。</ref> (K'ank'in<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''パシュ'''<ref group="†">パシュは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。</ref> (Pax<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''カヤブ'''<ref group="†">カヤブは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。</ref> (K'ayab<ref group="†" name="綴り"/>) |
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# '''クムク'''<ref group="†">クムクは、[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)および[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称。</ref> (Kumk'u<ref group="†" name="綴り"/>) |
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以上の360日間(20日×18か月)に、5日間の'''ワイェブ'''<ref group="†">[[#ミラー&タウベ (2000)|ミラー&タウベ (2000)]] 136頁(図版上)で確認した名称は'''ウアエブ'''、[[#コウ (2003)|コウ (2003)]] 77頁(図版19)で確認した名称は'''ワイェブ'''、[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]] 114頁で確認した名称は'''ウァイェブ'''。</ref> (Wayeb<ref group="†" name="綴り"/>) が加わって365日となる。ただし現代の暦にみられる[[閏年]]がなかったため、ハアブは太陽の運行や季節と次第にずれていった。しかし[[マヤ人]]たちはその事を理解した上で暦を使用していた<ref name="ミラー&タウベp137"/><ref name="コウ2003p77"/>。 |
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=== 月を表すマヤ文字 === |
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ファイル:Maya-Pop.jpg|最初の月:ポプ |
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ファイル:Maya-Dresden-wo.jpg|2番目の月:ウオ |
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ファイル:Maya-Dresden-sip.jpg|3番目の月:シプ |
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ファイル:Sotz.jpg|4番目の月:ソッツ |
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ファイル:Maya-Sek.png|5番目の月:セック |
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ファイル:Maya-Xul.png|6番目の月:シュル |
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ファイル:Maya-Yaxkin.png|7番目の月:ヤシュキン |
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ファイル:Maya-Mol.png|8番目の月:モル |
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ファイル:Maya-Dresden-Chen.jpg|9番目の月:チェン |
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ファイル:Maya-Dresden-Yax.jpg|10番目の月:ヤシュ |
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ファイル:Maya-Dresden-Sak.jpg|11番目の月:サック |
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ファイル:Maya-Dresden-Keh.jpg|12番目の月:ケフ |
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ファイル:Maya-Dresden-Mak.png|13番目の月:マック |
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ファイル:Maya-Dresden-Kankin.png|14番目の月:カンキン |
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ファイル:Muan.jpg|15番目の月:ムアン |
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ファイル:Maya-Dresden-pax.jpg|16番目の月:パシュ |
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ファイル:Maya-Dresden-Kayab.png|17番目の月:カヤブ |
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ファイル:Maya-Dresden-kumku.jpg|18番目の月:クムク |
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ファイル:Maya-Dresden-wayeb.jpg|19番目の月:ワイェブ(不吉な日。5日間しかない閏月) |
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*'''カヤブ'''は、ハアブ暦の17番目の月の名称。守護神は特定されず特別な儀式も行われなかった。新年の祭りに備えて肉体的にも精神的にも休養をとる必要があったからだが、新年に備えての断食などは行われた。 |
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一部の月について説明する。<!--ページの統合に伴い既存の説明のみ記載しています。追加はご自由にお願いします--> |
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* '''ポプ'''は、最初の月の名称。[[ジャガー]]が守護動物とされた。宴会や踊りも交えた新年の儀式が行われ、あらゆる階層の者たちが参加した。また全ての神々も、時を守るという名目で祭儀の場に集められた({{要出典範囲|[[ディエゴ・デ・ランダ|ランダ]]は、「偶像」と記している|date=2015年8月}})。人々は家財道具を全てこの日に新調し、ゴミや古道具類はゴミ捨て場に捨てた<ref>[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]], p. 105.</ref>。 |
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* '''ウオ'''は、2番目の月の名称。守護神は[[イツァムナー]]で、祭儀の合間には神官が鳥占いの結果と託宣を発表した。祭儀の後には、「月の踊り」(オコト・ウィル)という踊りが踊られることもあった。祭儀には、猟師、漁師、宗教的な医師でもある神官、巫女だけが参加したが、他の階級の人々も自分達の守護神に儀式を捧げたという<ref name="ロンゲーナ2002p108">[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]], p. 108.</ref>。 |
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* '''シプ'''は、3番目の月の名称。守護神は蛇に似せて描写される神であるが、該当する神は不明である<ref name="ロンゲーナ2002p108"/>。 |
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* '''ソッツ'''は、4番目の月の名称。[[コウモリ]]が守護動物とされたこと以外には詳細は不明である<ref name="ロンゲーナ2002p106">[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]], p. 106.</ref>。 |
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* '''セック'''は、5番目の月の名称。セックの祭りの日がやってくると、[[養蜂|養蜂者]]たちは、[[ハチ|蜂]]の神と4柱の[[バカブ]]神(とくにホブニル・バカブ)への儀式を催して今年の収穫を願った。祭りの最後には、蜂蜜をバルチェの木の樹皮と混ぜて作った発酵酒を飲んで、神を称えた<ref name="ロンゲーナ2002p106"/>。 |
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* '''カヤブ'''は、17番目の月の名称。守護神はまだ特定されていない。この月には特別な儀式もなく、人々は新年の祭りに備えて休養をとった<ref name="ロンゲーナ2002p114">[[#ロンゲーナ (2002)|ロンゲーナ (2002)]], p. 114.</ref>。 |
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== 脚注 == |
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=== 注釈 === |
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=== 出典 === |
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== 参考文献 == |
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* {{Cite book |和書 |last=コウ |first=マイケル・D. |authorlink=:en:Michael D. Coe |others=[[増田義郎]]監修、武井摩利・[[徳江佐和子]]訳 |title=マヤ文字解読 |publisher=[[創元社]] |origyear=1999 |date=2003-12 |isbn=978-4-422-20226-6 |ref=コウ (2003) }} |
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* {{Cite book |和書 |editor=[[:en:Mary Miller (art historian)|ミラー, メアリ]]、[[カール・タウベ|タウベ, カール]]編 |others=増田義郎監修、武井摩利訳 |title=図説 マヤ・アステカ神話宗教事典 |origyear=1993 |date=2000-09 |publisher=[[東洋書林]] |isbn=978-4-88721-421-7 |ref=ミラー&タウベ (2000) }} |
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* {{Cite book |和書 |last=ロンゲーナ |first=マリア |others=植田覚監修、月森左知訳 |title=〈図説〉マヤ文字事典 |publisher=創元社 |origyear=1998 |date=2002-09 |isbn=978-4-422-20232-7 |ref=ロンゲーナ (2002) }} |
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== 関連項目 == |
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{{Commonscat|Maya calendars|マヤ暦}} |
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* [[ツォルキン]] |
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2021年11月15日 (月) 10:37時点における最新版
ハアブ(haab[† 1]) は、マヤ文明において、365日を一周期とする暦である。20日が1か月となる18の「月」と、名前を持たず不吉だとされる5日間で構成されている[1][2]。ハアブ暦、おおよその1年とも[3]。
概要
[編集]ハアブ暦は、18の「月」と、0から19まで、または1から20までの数字が順次組み合わさってできる暦になっている[1]。便宜的に0とされている文字は「着座の文字」と呼ばれ、その月が支配の座につくことを表す。
マヤでは、時はそれぞれの神に支配されていて、「日」の神、「月」の神、「年」の神がいると考えられていた。その月が支配の座につくということは、その「月」の神が支配の座につくと同義である。20日たったら、次の「月」の神に支配の座を譲るという考えかたが暦に反映されている。
18の「月」は以下のとおりである。
- ポプ[† 2] (Pop[† 3])
- ウオ[† 4] (Wo[† 3])
- シプ[† 5] (Sip[† 3])
- ソッツ[† 6] (Sotz'[† 3])
- セック[† 7] (Sek[† 3])
- シュル[† 8] (Xul[† 3])
- ヤシュキン[† 9] (Yaxk'in[† 3])
- モル[† 10] (Mol[† 3])
- チェン[† 11] (Ch'en[† 3])
- ヤシュ[† 12] (Yax[† 3])
- サック[† 13] (Sak[† 3])
- ケフ[† 14] (Keh[† 3])
- マック[† 15] (Mak[† 3])
- カンキン[† 16] (K'ank'in[† 3])
- ムアン[† 17] (Muwan[† 3])
- パシュ[† 18] (Pax[† 3])
- カヤブ[† 19] (K'ayab[† 3])
- クムク[† 20] (Kumk'u[† 3])
以上の360日間(20日×18か月)に、5日間のワイェブ[† 21] (Wayeb[† 3]) が加わって365日となる。ただし現代の暦にみられる閏年がなかったため、ハアブは太陽の運行や季節と次第にずれていった。しかしマヤ人たちはその事を理解した上で暦を使用していた[1][3]。
この暦(ワイェブを除く)とツォルキン(暦)が組み合わされて約52年で1周期の暦となる。これをカレンダー・ラウンド[4](rueda calendárica)という。
月を表すマヤ文字
[編集]-
最初の月:ポプ
-
2番目の月:ウオ
-
3番目の月:シプ
-
4番目の月:ソッツ
-
5番目の月:セック
-
6番目の月:シュル
-
7番目の月:ヤシュキン
-
8番目の月:モル
-
9番目の月:チェン
-
10番目の月:ヤシュ
-
11番目の月:サック
-
12番目の月:ケフ
-
13番目の月:マック
-
14番目の月:カンキン
-
15番目の月:ムアン
-
16番目の月:パシュ
-
17番目の月:カヤブ
-
18番目の月:クムク
-
19番目の月:ワイェブ(不吉な日。5日間しかない閏月)
ハアブ暦の各月の儀式、特色等
[編集]一部の月について説明する。
- ポプは、最初の月の名称。ジャガーが守護動物とされた。宴会や踊りも交えた新年の儀式が行われ、あらゆる階層の者たちが参加した。また全ての神々も、時を守るという名目で祭儀の場に集められた(ランダは、「偶像」と記している[要出典])。人々は家財道具を全てこの日に新調し、ゴミや古道具類はゴミ捨て場に捨てた[5]。
- ウオは、2番目の月の名称。守護神はイツァムナーで、祭儀の合間には神官が鳥占いの結果と託宣を発表した。祭儀の後には、「月の踊り」(オコト・ウィル)という踊りが踊られることもあった。祭儀には、猟師、漁師、宗教的な医師でもある神官、巫女だけが参加したが、他の階級の人々も自分達の守護神に儀式を捧げたという[6]。
- シプは、3番目の月の名称。守護神は蛇に似せて描写される神であるが、該当する神は不明である[6]。
- セックは、5番目の月の名称。セックの祭りの日がやってくると、養蜂者たちは、蜂の神と4柱のバカブ神(とくにホブニル・バカブ)への儀式を催して今年の収穫を願った。祭りの最後には、蜂蜜をバルチェの木の樹皮と混ぜて作った発酵酒を飲んで、神を称えた[7]。
- シュルは、6番目の月の名称。守護神については、よくわかっていないが、この月の16日には全ての住民が参加する重要な祭りである「チック・カバン」(「道化の祝宴」)が行われた。この祭りは、ククルカンに捧げられていた[8]。
- ケフは、12番目の月の名称。「新しい火の祭り」という儀式が行われたということ以外詳しいことはわかっていない[9]。
- カンキンは、14番目の月の名称。この月に行われる儀式や祝宴、守護神については記録がないので不明である[10]。
- カヤブは、17番目の月の名称。守護神はまだ特定されていない。この月には特別な儀式もなく、人々は新年の祭りに備えて休養をとった[11]。
- クムクは、18番目の月の名称。守護神はまだ特定されていない。この月には特別な儀式もなく、人々は新年の祭りに備えて休養をとった[11]。
脚注
[編集]注釈
[編集]- ^ コウ (2003) 137頁で確認した綴り。
- ^ ポプは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ a b c d e f g h i j k l m n o p q r s コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した綴り。
- ^ ウオは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はウォ。
- ^ シプは、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。ほか、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称はシップ。
- ^ ソッツは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。ほか、ロンゲーナ (2002) 106頁で確認した名称はソツ。
- ^ セックは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はセク、ロンゲーナ (2002) 106頁で確認した名称はツェク。
- ^ シュルは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ ヤシュキンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ モルは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ チェンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ ヤシュは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ サックは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はサク。
- ^ ケフは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ マックは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はマク。
- ^ カンキンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ ムアンは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称。ほか、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はムワン。
- ^ パシュは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ カヤブは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ クムクは、ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)およびコウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称。
- ^ ミラー&タウベ (2000) 136頁(図版上)で確認した名称はウアエブ、コウ (2003) 77頁(図版19)で確認した名称はワイェブ、ロンゲーナ (2002) 114頁で確認した名称はウァイェブ。
出典
[編集]- ^ a b c ミラー&タウベ (2000), p. 137.
- ^ コウ (2003), pp. 77-78.
- ^ a b コウ (2003), p. 77.
- ^ コウ (2003), p. 78.
- ^ ロンゲーナ (2002), p. 105.
- ^ a b ロンゲーナ (2002), p. 108.
- ^ a b ロンゲーナ (2002), p. 106.
- ^ ロンゲーナ (2002), p. 110.
- ^ ロンゲーナ (2002), p. 109.
- ^ ロンゲーナ (2002), p. 113.
- ^ a b ロンゲーナ (2002), p. 114.
参考文献
[編集]- コウ, マイケル・D.『マヤ文字解読』増田義郎監修、武井摩利・徳江佐和子訳、創元社、2003年12月(原著1999年)。ISBN 978-4-422-20226-6。
- ミラー, メアリ、タウベ, カール編 編『図説 マヤ・アステカ神話宗教事典』増田義郎監修、武井摩利訳、東洋書林、2000年9月(原著1993年)。ISBN 978-4-88721-421-7。
- ロンゲーナ, マリア『〈図説〉マヤ文字事典』植田覚監修、月森左知訳、創元社、2002年9月(原著1998年)。ISBN 978-4-422-20232-7。