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「ツインターボ」の版間の差分

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ツインターボとシーケンシャルターボの明確化、構成の変更、他
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{{Otheruses|工学(主にエンジン)に関するツインターボ|[[競走馬]]のツインターボ|ツインターボ (競走馬)}}
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[[image:Nissan RB26DETT 001.JPG|thumb|240px|right|ツインターボ仕様のエンジン<br />([[RB26DETT]] '02 JGTC用 FR仕様)]]
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'''ツインターボ'''(Twin Turbo Charging)は、[[自動車]]の[[エンジン]][[ターボチャージャー]]を2機用いる[[過給機]]構成の呼称。
'''ツインターボ'''(Twin Turbo Charging)は、[[自動車]]の[[エンジン]]において低速トルクとターボラグ改善と出力向上を両立させる手段の一つとして、[[ターボチャージャー]]を2機用いる[[過給機]]構成の呼称であるなお、自動車技術会「自動車技術ハンドブック」においてシーケンシャルターボはツインターボに含まれていない<ref name="tb">{{Cite book|和書
|editor = 自動車技術ハンドブック編集委員会
|title = 自動車技術ハンドブック
|edition = 改訂版第2刷
|date = 2007-04-01
|publisher = 自動車技術会
|isbn = 4-915219-43-7
|page = 103
}}</ref>が、シーケンシャルツインターボとも呼ばれる<ref name="stb">{{Cite book|和書
|editor = GP企画センター
|year = 2003
|title = マツダ・ロータリーエンジンの歴史
|publisher = グランプリ出版
|page = 127
|isbn = 4-87687-242-2
}}</ref>ため本項で扱う。


== 概要 ==
== 概要 ==
低速トルクおよびターボラグ改善には小型のタービンが有効であるが、高回転域で背圧の上昇とバイパスする排気ガス量の増大によって、ポンピングロスの増加とタービン効率の低下が起こり、エンジン出力が低下してしまう<ref name="tb" />。これを改善するため、二つのターボチャージャーを分離して設置するアイデアが生まれた。
競技用エンジンで特性を決める際、過給機を複数設けたほうが都合の良い場合に採用される。ターボチャージャーを1機用いた場合よりも効率的に過給を得ることができ、出力が向上する。


レイアウトとしては、エンジンからの排気管を排気干渉が少なるなるよう二系統にまとめ、それぞれに小型のターボチャージャーを取り付ける<ref name="tb" />。これにより、排気ガス流量が少ない低回転域では排気干渉の減少からシリンダー内のガス掃気効率が向上する<ref name="tb" />。また、動圧過給を積極的に利用しタービン入力エネルギーを増大させられるのでタービン回転の立ち上がりが早くなる<ref name="tb" />。さらに、同一性能を発揮する1機のターボチャージャーに対し、小型のターボチャージャーを使用することで回転体の慣性モーメントを低減させるので、ターボラグが低減できる<ref name="tb" />。
市販車の場合は、[[V型エンジン|V型]]や[[水平対向エンジン|水平対向型]]など、両バンクの排気系が離れている場合に採用例が多い。[[ブガッティ・ヴェイロン]]のようにクアッドターボ(4機装着)の例もある。


前後3気筒ずつの排気を合流させると排気干渉が低減できる直列6気筒エンジン<ref name="tb" />や、[[V型エンジン|V型]]、[[水平対向エンジン|水平対向]]の6気筒エンジンのように片バンクの排気タイミングが等間隔で排気干渉が少なくなるレイアウトの場合に採用例が多い。W型16気筒の[[ブガッティ・ヴェイロン]]は4機のターボを搭載している(クアッドターボ)が、片バンク8気筒分の排気を前後4気筒ずつ分離してターボチャージャーへ導入しており<ref>[http://www.rsportscars.com/bugatti/2006-bugatti-veyron-164/pictures/2547 2006 Bugatti Veyron 16.4 Pictures] RSPORTSCARS.COM(2012年1月2日閲覧)</ref>、これも前述の効果を狙ったものである。
その他、商品性を高める目的で各社こぞって採用した時期もあったが、付加装備が多く、シングルターボ(ターボチャージャーを1機のみ用いる構成)に比べ、性能面での利点は少ない。また、[[燃費]]も[[自然吸気]]やシングルターボに比べて劣るため、現在では一部の車種が採用するに留まる。


なお、[[クロスプレーン]]タイプのクランクシャフトを使用するV8エンジンの場合、片バンクの排気をそのまままとめると排気が不等間隔でターボチャージャーに流入することになる。これを解消するには左右のバンクを跨いで排気系を取り回す必要があるが、排気管が複雑になるなどデメリットが大きくなってしまうため、やむなく片バンクずつ排気をまとめているものが多い。ところが、BMWはS63B44で排気ポートをバンク内側にするレイアウトとし、さらに特殊な排気系を用いることでそれぞれのターボチャージャーに等間隔で排気ガスが流入するようにしている。S63B44のベースで、バンクごとに排気をまとめているN63B44に対して、ツインスクロールターボの採用なども相まってトルクは約13%(600N・mから680N・mに)向上している<ref>「World Engine Databook 2011-2012」『Motor Fan illustrated 特別編集 ワールド・エンジン・データブック 2011-2012』、三栄書房、2011年、30-31頁。ISBN 978-4-7796-1336-4</ref>。
== 種類 ==
[[画像:ツインカムターボTOYOTAマークⅡ.jpg|thumbnail|240px|[[トヨタ・マークII]]のツインターボ]]
=== 常時ツインターボ ===
一般的なツインターボの形態。[[気筒]]の配列に応じて直列または並列配置される。直列エンジンの場合は直列、V型・水平対向型の場合は各バンクへ並列に配置されることが多い。
* エンジンルーム内での効率的なパイピングなどから、1機のターボチャージャーへ吸排気パイプを集約しにくい場合に採用される。
* 大径シングルターボではエンジン出力特性が急峻・唐突となりがちなため、ターボチャージャーへの要求能力を2機に分散し、それぞれのターボチャージャーを小型化することで、エンジン低回転での排気ガスでも十分作動する、穏やかで滑らかなエンジン出力特性を得るために用いられる。


== 採用例 ==
=== シーケンシャル・ツインターボ ===
日本車のガソリンエンジンにおいては、トヨタの1G-GTEU、日産のRB26DETTなどの直列6気筒エンジンや、日産のVQ30DETTや三菱の6A12、6A13などのV6エンジンに採用されていたが、2002年の排出ガス規制強化でガソリンターボエンジンが激減した際にツインターボ搭載機種は消滅した。その後、2007年に発売された[[日産・GT-R]]用のV6エンジン[[日産・VR38DETT|VR38DETT]]にてツインターボエンジンが復活した。
エンジンの回転数に応じ大小2つのターボチャージャーを使い分けることでターボラグの低減、低回転からの過給効果を目的としたシステムである。低回転では小容量のターボチャージャーを使用し低回転域のトルクの確保、ターボラグの回避、中高回転では大容量のターボチャージャーを用いて高出力を狙う。2機のターボを「順次駆動」するさまからシーケンシャルの名がある。シーケンシャル・ターボは自動車の様な負荷変動の多いエンジンに向いているが、2つのターボの制御は難しく上手に制御しなければ有効性は発揮されない。その為、排気ガスの量やエンジンの回転数、エンジンの状態等をモニタした上で2つのターボの動作を制御する必要からエンジン及びターボの電子制御が不可欠となる。


日本国外の自動車メーカーにおいては6気筒以上のエンジンにツインターボが組み合わされる例が多数ある<ref name="wed">「World Engine Databook 2011-2012」『Motor Fan illustrated 特別編集 ワールド・エンジン・データブック 2011-2012』、三栄書房、2011年。ISBN 978-4-7796-1336-4</ref>。
乗用車用ガソリンエンジンでは[[1987年]]の[[ポルシェ・959]]での採用が初であるとされる。日本車では[[1990年]]の[[マツダ・コスモ|ユーノス・コスモ]]が初である。後にトヨタやスバルも採用したが、シーケンシャルツインターボとは名乗らなかった。現在では、シングルターボでも応答性や低回転域のトルクを実現できる軽量タービンや[[ツインスクロールターボ|ツインスクロールタービン]]が登場し、採用している車種はほとんどない。
* BMWは直列6気筒のN54B30や、V8のN63B44、V12のN74B60に採用しており、特にX5MとX6Mに搭載されるS63B44は前述の通り2機のツインスクロールターボをVバンクの間に搭載する独特なレイアウトになっている。
* メルセデス・ベンツにおいてはV8のM278やV12のM275、M285に採用例がある。
* ポルシェでは水平対向6気筒エンジンのMA170S、M96/70Sにおいて、可変容量ターボの一種であるVGターボを左右バンクに1機ずつ搭載している。
* ジャガーではV6ディーゼルターボのAJD-V6(Gen.III)にVGツインターボが採用されている。
* フォードはV8からのダウンサイジングであるEcoBoostの3.5L V6エンジンにツインターボを採用している。
* VWグループでは前述のW16気筒エンジンWR16にてツインターボ×2のクアッドターボが採用されている。また、ディーゼルエンジンではV6、V8、V12の各TDIエンジンにて片バンクに1機ずつVGターボを配置しツインターボとしている。


== シーケンシャルターボ ==
デメリットとしては、低回転域と高回転域のタービンの仕事域が明確に分かれている為、低→高の切り変わり時点のブースト落ちがメーカーによっては顕著になる。また、タービンが2基必要で高価になり、制御機構が複雑でトラブルが多発するなどがある。
[[画像:ツインカムターボTOYOTAマークⅡ.jpg|thumbnail|240px|[[トヨタ・マークII]]のツインターボ(並列タイプのシーケンシャルターボ)]]
エンジンの作動状態によって二つのターボチャージャーを使い分けるのがシーケンシャルターボである<ref name="st">{{Cite book|和書
|editor = 自動車技術ハンドブック編集委員会
|title = 自動車技術ハンドブック
|edition = 改訂版第2刷
|date = 2007-04-01
|publisher = 自動車技術会
|isbn = 4-915219-43-7
|page = 104
}}</ref>。前述のツインターボと同様に2機のターボチャージャーを使用するため、シーケンシャルツインターボとも呼ばれる<ref name="stb" />。シーケンシャルターボは直列タイプと並列タイプの2種類に分けられる。


直列タイプでは小型のターボチャージャー(小型ターボ)と大型のターボチャージャー(大型ターボ)を直列につなげて使用する<ref name="st" />。
排気側はエンジン、小型ターボ、大型ターボの順に直列につながっており、小型ターボをバイパスする経路が設置される。吸気側のレイアウトは大型ターボ、小型ターボ、エンジンの順に直列につながり、排気側と同様に小型ターボをバイパスする経路がある<ref name="st" />。
エンジン回転数が低く排気ガス流量が少ない領域では、全排気ガスを小型ターボへ集中させて、ターボラグを少なく低速トルクを確保できる。エンジン回転数が上昇し、排気ガス量が増加してきたところで徐々にバイパスバルブを開き、小型ターボをバイパスさせて大型ターボへ排気ガスを導入する<ref name="st" />。バイパスバルブが開くに従い、小型ターボのタービン前後圧力差は小さくなるため、以降の過給は大型ターボのみが受け持つ<ref name="st" />。なお、このとき小型ターボのコンプレッサーが抵抗になるため、吸気側のバイパスバルブを開き小型ターボは吸気側でもバイパスされる。

並列タイプは一つ目のターボチャージャー(プライマリーターボ)と二つ目のターボチャージャー(セカンダリーターボ)が並列に設置される<ref name="st" />。排気側ではどちらか片方のターボにウェストゲートが設置され、セカンダリーターボ上流には排気ガス導入を制御する切換えバルブが設置される<ref name="st" /><ref>{{Cite book|和書
|editor = GP企画センター
|year = 2003
|title = マツダ・ロータリーエンジンの歴史
|publisher = グランプリ出版
|page = 128
|isbn = 4-87687-242-2
}}</ref>。吸気側ではセカンダリーターボに、コンプレッサーを通過した吸気を再循環させるリリーフバルブがあり、プライマリーターボ側の吸気管との接合前に切換えバルブが設置される<ref name="st" />。
エンジンの低回転領域では直列タイプと同様に全排気ガスをプライマリーターボに導き過給圧を立ち上げるが、中高速域では吸排気の切換えバルブを開きプライマリー、セカンダリーの二つのターボで過給を行う<ref name="st" />。

どちらのタイプもエンジンの作動状態に合わせて二つのターボチャージャーの作動状態を切り替える必要があるため、電子制御は必須になっている。また、切換え時にトルクの段差が生じやすいため、この制御が課題になっている<ref name="st" />。

=== シーケンシャルターボの採用例 ===
シーケンシャルターボの乗用車用ガソリンエンジンへの適用は[[1987年]]の[[ポルシェ・959]]が初であるとされる。日本車では[[1990年]]の[[マツダ・コスモ|ユーノス・コスモ]]用20B-REW、13B-REWが初である。後に[[トヨタ・マークII]]などの[[トヨタ・1JZ-GTE|1JZ-GTE]]、同・[[トヨタ・スープラ|スープラ]]などの[[トヨタ・JZエンジン#2JZ-GTE|2JZ-GTE]]や、2代目[[スバル・レガシィ]]の[[スバル・EJ20|EJ20]]でも採用された。なお、トヨタは単に「ツインターボ」、富士重工業は「2ステージターボ」<ref>[http://www.fhi.co.jp/news/98_4_6/06_17_a.html スバル レガシィ ワゴンシリーズをフルモデルチェンジ『新世紀レガシィ』を発売] 富士重工業ニュースリリース、1998年6月17日</ref>と呼んでいた。現在、ポルシェは[[ポルシェ・911|997型911]]から可変容量ターボの一種であるVGターボを片バンクに1機ずつ使用したツインターボで低速トルク・ターボラグの改善と出力向上を両立させている。日本車においては、2002年の排出ガス規制強化により、マツダはロータリーエンジンへのターボチャージャー搭載をやめ、トヨタは1JZ/2JZともに途中でシングルターボへと切り替えた。富士重工業は4代目レガシィから低回転時のトルクを向上できる[[ツインスクロールターボ]](ツインエントリーターボ)に切換え、ターボチャージャーの数は1機のみになっている。

ガソリンエンジンにおけるシーケンシャルターボの採用は少なくなっているが、ディーゼルエンジンでは、BMWがバリアブル・ツインターボと呼ぶ直列タイプをN47D20T0に採用し、メルセデスのOM651も直列タイプであるボルグワーナーのR2S(Regulated 2-Stage turbocharging)<ref>[http://www.3k-warner.de/products/r2s.aspx Regulated 2-stage turbocharging(R2S<sup>TM</sup>)] BorgWarner Turbo Systems (2012年1月3日閲覧)</ref>を採用、フィアットも1.9 Multijet Twinturboに直列タイプのTST(ツーステージターボ)を、ヒュンダイも直列4気筒のU2 1.7およびR 2.2に直列タイプの2 Stage-Turboを採用しており<ref name="wed" />、完全に廃れてしまったわけではない。

また、トラック用ディーゼルエンジンとして、[[いすゞ・エルフ]]の4JJ1や同・[[いすゞ・フォワード|フォワード]]、[[いすゞ・エルガミオ|エルガミオ]]の[[いすゞ・H系エンジン|4HK1]]には2ステージターボと呼称される直列タイプのシーケンシャルターボが採用されている。

=== シーケンシャルターボの動作 ===
シーケンシャルターボシステムの理解を深めるため、1990年に発売された[[マツダ・コスモ|ユーノスコスモ]]の20B-REW、13B-REWに搭載された並列タイプのシーケンシャルターボの動作を例として挙げる。このシステムの特徴は、セカンダリーターボの立ち上げをスムーズにする「予回転方式」が採用されたことである<ref name="mazda127">{{Cite book|和書
|editor = GP企画センター
|year = 2003
|title = マツダ・ロータリーエンジンの歴史
|publisher = グランプリ出版
|page = 127
|isbn = 4-87687-242-2
}}</ref>。また、プライマリーターボには低速レスポンス重視のインパクトタービンブレードを、セカンダリーターボには高流量時に通気抵抗の小さいハイフロー型を、それぞれ採用している<ref name="mazda127" />。

レイアウトはほぼ前述の並列タイプの通りで、セカンダリーターボへの排気導入部に設置される切換えバルブが大小二つになっており、それぞれマツダでは「ターボメインコントロールバルブ」、「ターボプリコントロールバルブ」と名付けられている<ref name="mazda129">{{Cite book|和書
|editor = GP企画センター
|year = 2003
|title = マツダ・ロータリーエンジンの歴史
|publisher = グランプリ出版
|page = 129
|isbn = 4-87687-242-2
}}</ref>。また同様に、セカンダリーターボ吸気側のリリーフバルブは「過給リリーフバルブ」、プライマリー、セカンダリーの吸気合流部の切換えバルブは「過給コントロールバルブ」と呼ばれている<ref name="mazda129" />。

まず、エンジン回転数が低い領域では全てのバルブが閉じられており、排気ガスはプライマリーターボに集中して流れ、エンジンの低速トルクを立ち上げる<ref name="mazda129" />。プライマリーターボが設定過給圧に到達した後、ターボプリコントロールバルブを開き、セカンダリーターボを約8万rpmに保つ<ref name="mazda129" />。このとき、過給コントロールバルブは閉じているためセカンダリーターボの過給圧はエンジンには送られない<ref name="mazda129" />。このままだとサージングによりコンプレッサーが破損してしまうため、過給リリーフバルブを開くことでコンプレッサ内に一定の流量を確保してサージングが起きないようにしている<ref name="mazda129" />。この状態ではプライマリーターボのみの作動から二つのターボでの並列過給に切換えるには回転数が足りないため、並列過給への移行直前に過給リリーフバルブを閉じて意図的にサージングを起こし、セカンダリーターボの回転を12万rpm程度まで加速させる<ref name="mazda130">{{Cite book|和書
|editor = GP企画センター
|year = 2003
|title = マツダ・ロータリーエンジンの歴史
|publisher = グランプリ出版
|page = 130
|isbn = 4-87687-242-2
}}</ref>。その後、ターボメインコントロールバルブと過給コントロールバルブを開き、プライマリーターボにセカンダリーターボの過給を加えた中高速域の過給モードにスムーズに移行する<ref name="mazda130" />。

なお直列タイプの場合、制御バルブは小型ターボの吸排気バイパスバルブの二つだけなので、制御は並列タイプよりも単純になる。

<!--下記は旧版に記載があった搭載車種です。過去にまでさかのぼり、全ての採用車種を列挙する必要はないと考えますので、いったんコメントアウトで残しておきます。
== 搭載される主な車種 ==
== 搭載される主な車種 ==
* [[ポルシェ・911#996型(1998年~2005年)|ポルシェ・911]](996型)
* [[ポルシェ・911#996型(1998年~2005年)|ポルシェ・911]](996型)
55行目: 135行目:
* [[スバル・レガシィ#2代目BD・BG型(1993年10月-1998年6月)|スバル・レガシィ]]
* [[スバル・レガシィ#2代目BD・BG型(1993年10月-1998年6月)|スバル・レガシィ]]
* [[マツダ・RX-7#3代目・FD3S型(1991-2002年)|マツダ・RX-7]]
* [[マツダ・RX-7#3代目・FD3S型(1991-2002年)|マツダ・RX-7]]
-->
* [[Hennessey Viper Venom 1000 Twin Turbo]] Hennessey Performance Engineeringによる改造車(コンプリートカー)
== 脚注・出典 ==

{{Reflist}}
== 脚注 ==
<div class="references-small"><references /></div>


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[[Category:自動車エンジン技術]]
[[Category:自動車エンジン技術]]

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[[en:Twin-turbo]]
[[en:Twin-turbo]]

2012年1月13日 (金) 17:48時点における版

ツインターボ仕様のエンジン
RB26DETT '02 JGTC用 FR仕様)

ツインターボ(Twin Turbo Charging)は、自動車エンジンにおいて低速トルクとターボラグ改善と出力向上を両立させる手段の一つとして、ターボチャージャーを2機用いる過給機構成の呼称である。なお、自動車技術会「自動車技術ハンドブック」においてシーケンシャルターボはツインターボに含まれていない[1]が、シーケンシャルツインターボとも呼ばれる[2]ため本項で扱う。

概要

低速トルクおよびターボラグ改善には小型のタービンが有効であるが、高回転域で背圧の上昇とバイパスする排気ガス量の増大によって、ポンピングロスの増加とタービン効率の低下が起こり、エンジン出力が低下してしまう[1]。これを改善するため、二つのターボチャージャーを分離して設置するアイデアが生まれた。

レイアウトとしては、エンジンからの排気管を排気干渉が少なるなるよう二系統にまとめ、それぞれに小型のターボチャージャーを取り付ける[1]。これにより、排気ガス流量が少ない低回転域では排気干渉の減少からシリンダー内のガス掃気効率が向上する[1]。また、動圧過給を積極的に利用しタービン入力エネルギーを増大させられるのでタービン回転の立ち上がりが早くなる[1]。さらに、同一性能を発揮する1機のターボチャージャーに対し、小型のターボチャージャーを使用することで回転体の慣性モーメントを低減させるので、ターボラグが低減できる[1]

前後3気筒ずつの排気を合流させると排気干渉が低減できる直列6気筒エンジン[1]や、V型水平対向の6気筒エンジンのように片バンクの排気タイミングが等間隔で排気干渉が少なくなるレイアウトの場合に採用例が多い。W型16気筒のブガッティ・ヴェイロンは4機のターボを搭載している(クアッドターボ)が、片バンク8気筒分の排気を前後4気筒ずつ分離してターボチャージャーへ導入しており[3]、これも前述の効果を狙ったものである。

なお、クロスプレーンタイプのクランクシャフトを使用するV8エンジンの場合、片バンクの排気をそのまままとめると排気が不等間隔でターボチャージャーに流入することになる。これを解消するには左右のバンクを跨いで排気系を取り回す必要があるが、排気管が複雑になるなどデメリットが大きくなってしまうため、やむなく片バンクずつ排気をまとめているものが多い。ところが、BMWはS63B44で排気ポートをバンク内側にするレイアウトとし、さらに特殊な排気系を用いることでそれぞれのターボチャージャーに等間隔で排気ガスが流入するようにしている。S63B44のベースで、バンクごとに排気をまとめているN63B44に対して、ツインスクロールターボの採用なども相まってトルクは約13%(600N・mから680N・mに)向上している[4]

採用例

日本車のガソリンエンジンにおいては、トヨタの1G-GTEU、日産のRB26DETTなどの直列6気筒エンジンや、日産のVQ30DETTや三菱の6A12、6A13などのV6エンジンに採用されていたが、2002年の排出ガス規制強化でガソリンターボエンジンが激減した際にツインターボ搭載機種は消滅した。その後、2007年に発売された日産・GT-R用のV6エンジンVR38DETTにてツインターボエンジンが復活した。

日本国外の自動車メーカーにおいては6気筒以上のエンジンにツインターボが組み合わされる例が多数ある[5]

  • BMWは直列6気筒のN54B30や、V8のN63B44、V12のN74B60に採用しており、特にX5MとX6Mに搭載されるS63B44は前述の通り2機のツインスクロールターボをVバンクの間に搭載する独特なレイアウトになっている。
  • メルセデス・ベンツにおいてはV8のM278やV12のM275、M285に採用例がある。
  • ポルシェでは水平対向6気筒エンジンのMA170S、M96/70Sにおいて、可変容量ターボの一種であるVGターボを左右バンクに1機ずつ搭載している。
  • ジャガーではV6ディーゼルターボのAJD-V6(Gen.III)にVGツインターボが採用されている。
  • フォードはV8からのダウンサイジングであるEcoBoostの3.5L V6エンジンにツインターボを採用している。
  • VWグループでは前述のW16気筒エンジンWR16にてツインターボ×2のクアッドターボが採用されている。また、ディーゼルエンジンではV6、V8、V12の各TDIエンジンにて片バンクに1機ずつVGターボを配置しツインターボとしている。

シーケンシャルターボ

トヨタ・マークIIのツインターボ(並列タイプのシーケンシャルターボ)

エンジンの作動状態によって二つのターボチャージャーを使い分けるのがシーケンシャルターボである[6]。前述のツインターボと同様に2機のターボチャージャーを使用するため、シーケンシャルツインターボとも呼ばれる[2]。シーケンシャルターボは直列タイプと並列タイプの2種類に分けられる。

直列タイプでは小型のターボチャージャー(小型ターボ)と大型のターボチャージャー(大型ターボ)を直列につなげて使用する[6]。 排気側はエンジン、小型ターボ、大型ターボの順に直列につながっており、小型ターボをバイパスする経路が設置される。吸気側のレイアウトは大型ターボ、小型ターボ、エンジンの順に直列につながり、排気側と同様に小型ターボをバイパスする経路がある[6]。 エンジン回転数が低く排気ガス流量が少ない領域では、全排気ガスを小型ターボへ集中させて、ターボラグを少なく低速トルクを確保できる。エンジン回転数が上昇し、排気ガス量が増加してきたところで徐々にバイパスバルブを開き、小型ターボをバイパスさせて大型ターボへ排気ガスを導入する[6]。バイパスバルブが開くに従い、小型ターボのタービン前後圧力差は小さくなるため、以降の過給は大型ターボのみが受け持つ[6]。なお、このとき小型ターボのコンプレッサーが抵抗になるため、吸気側のバイパスバルブを開き小型ターボは吸気側でもバイパスされる。

並列タイプは一つ目のターボチャージャー(プライマリーターボ)と二つ目のターボチャージャー(セカンダリーターボ)が並列に設置される[6]。排気側ではどちらか片方のターボにウェストゲートが設置され、セカンダリーターボ上流には排気ガス導入を制御する切換えバルブが設置される[6][7]。吸気側ではセカンダリーターボに、コンプレッサーを通過した吸気を再循環させるリリーフバルブがあり、プライマリーターボ側の吸気管との接合前に切換えバルブが設置される[6]。 エンジンの低回転領域では直列タイプと同様に全排気ガスをプライマリーターボに導き過給圧を立ち上げるが、中高速域では吸排気の切換えバルブを開きプライマリー、セカンダリーの二つのターボで過給を行う[6]

どちらのタイプもエンジンの作動状態に合わせて二つのターボチャージャーの作動状態を切り替える必要があるため、電子制御は必須になっている。また、切換え時にトルクの段差が生じやすいため、この制御が課題になっている[6]

シーケンシャルターボの採用例

シーケンシャルターボの乗用車用ガソリンエンジンへの適用は1987年ポルシェ・959が初であるとされる。日本車では1990年ユーノス・コスモ用20B-REW、13B-REWが初である。後にトヨタ・マークIIなどの1JZ-GTE、同・スープラなどの2JZ-GTEや、2代目スバル・レガシィEJ20でも採用された。なお、トヨタは単に「ツインターボ」、富士重工業は「2ステージターボ」[8]と呼んでいた。現在、ポルシェは997型911から可変容量ターボの一種であるVGターボを片バンクに1機ずつ使用したツインターボで低速トルク・ターボラグの改善と出力向上を両立させている。日本車においては、2002年の排出ガス規制強化により、マツダはロータリーエンジンへのターボチャージャー搭載をやめ、トヨタは1JZ/2JZともに途中でシングルターボへと切り替えた。富士重工業は4代目レガシィから低回転時のトルクを向上できるツインスクロールターボ(ツインエントリーターボ)に切換え、ターボチャージャーの数は1機のみになっている。

ガソリンエンジンにおけるシーケンシャルターボの採用は少なくなっているが、ディーゼルエンジンでは、BMWがバリアブル・ツインターボと呼ぶ直列タイプをN47D20T0に採用し、メルセデスのOM651も直列タイプであるボルグワーナーのR2S(Regulated 2-Stage turbocharging)[9]を採用、フィアットも1.9 Multijet Twinturboに直列タイプのTST(ツーステージターボ)を、ヒュンダイも直列4気筒のU2 1.7およびR 2.2に直列タイプの2 Stage-Turboを採用しており[5]、完全に廃れてしまったわけではない。

また、トラック用ディーゼルエンジンとして、いすゞ・エルフの4JJ1や同・フォワードエルガミオ4HK1には2ステージターボと呼称される直列タイプのシーケンシャルターボが採用されている。

シーケンシャルターボの動作

シーケンシャルターボシステムの理解を深めるため、1990年に発売されたユーノスコスモの20B-REW、13B-REWに搭載された並列タイプのシーケンシャルターボの動作を例として挙げる。このシステムの特徴は、セカンダリーターボの立ち上げをスムーズにする「予回転方式」が採用されたことである[10]。また、プライマリーターボには低速レスポンス重視のインパクトタービンブレードを、セカンダリーターボには高流量時に通気抵抗の小さいハイフロー型を、それぞれ採用している[10]

レイアウトはほぼ前述の並列タイプの通りで、セカンダリーターボへの排気導入部に設置される切換えバルブが大小二つになっており、それぞれマツダでは「ターボメインコントロールバルブ」、「ターボプリコントロールバルブ」と名付けられている[11]。また同様に、セカンダリーターボ吸気側のリリーフバルブは「過給リリーフバルブ」、プライマリー、セカンダリーの吸気合流部の切換えバルブは「過給コントロールバルブ」と呼ばれている[11]

まず、エンジン回転数が低い領域では全てのバルブが閉じられており、排気ガスはプライマリーターボに集中して流れ、エンジンの低速トルクを立ち上げる[11]。プライマリーターボが設定過給圧に到達した後、ターボプリコントロールバルブを開き、セカンダリーターボを約8万rpmに保つ[11]。このとき、過給コントロールバルブは閉じているためセカンダリーターボの過給圧はエンジンには送られない[11]。このままだとサージングによりコンプレッサーが破損してしまうため、過給リリーフバルブを開くことでコンプレッサ内に一定の流量を確保してサージングが起きないようにしている[11]。この状態ではプライマリーターボのみの作動から二つのターボでの並列過給に切換えるには回転数が足りないため、並列過給への移行直前に過給リリーフバルブを閉じて意図的にサージングを起こし、セカンダリーターボの回転を12万rpm程度まで加速させる[12]。その後、ターボメインコントロールバルブと過給コントロールバルブを開き、プライマリーターボにセカンダリーターボの過給を加えた中高速域の過給モードにスムーズに移行する[12]

なお直列タイプの場合、制御バルブは小型ターボの吸排気バイパスバルブの二つだけなので、制御は並列タイプよりも単純になる。

脚注・出典

  1. ^ a b c d e f g 自動車技術ハンドブック編集委員会 編『自動車技術ハンドブック』(改訂版第2刷)自動車技術会、2007年4月1日、103頁。ISBN 4-915219-43-7 
  2. ^ a b GP企画センター 編『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』グランプリ出版、2003年、127頁。ISBN 4-87687-242-2 
  3. ^ 2006 Bugatti Veyron 16.4 Pictures RSPORTSCARS.COM(2012年1月2日閲覧)
  4. ^ 「World Engine Databook 2011-2012」『Motor Fan illustrated 特別編集 ワールド・エンジン・データブック 2011-2012』、三栄書房、2011年、30-31頁。ISBN 978-4-7796-1336-4
  5. ^ a b 「World Engine Databook 2011-2012」『Motor Fan illustrated 特別編集 ワールド・エンジン・データブック 2011-2012』、三栄書房、2011年。ISBN 978-4-7796-1336-4
  6. ^ a b c d e f g h i j 自動車技術ハンドブック編集委員会 編『自動車技術ハンドブック』(改訂版第2刷)自動車技術会、2007年4月1日、104頁。ISBN 4-915219-43-7 
  7. ^ GP企画センター 編『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』グランプリ出版、2003年、128頁。ISBN 4-87687-242-2 
  8. ^ スバル レガシィ ワゴンシリーズをフルモデルチェンジ『新世紀レガシィ』を発売 富士重工業ニュースリリース、1998年6月17日
  9. ^ Regulated 2-stage turbocharging(R2STM) BorgWarner Turbo Systems (2012年1月3日閲覧)
  10. ^ a b GP企画センター 編『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』グランプリ出版、2003年、127頁。ISBN 4-87687-242-2 
  11. ^ a b c d e f GP企画センター 編『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』グランプリ出版、2003年、129頁。ISBN 4-87687-242-2 
  12. ^ a b GP企画センター 編『マツダ・ロータリーエンジンの歴史』グランプリ出版、2003年、130頁。ISBN 4-87687-242-2