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「ガイドウェイバス」の版間の差分

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[[ファイル:EVAG 4651 2.jpg|thumb|250px|ガイドウェイバス([[ドイツ]]・[[エッセン]]のEVAGで運用されている[[メルセデス・ベンツ・シターロ]])]]
{{右|
'''ガイドウェイバス'''とは、[[バス (交通機関)|バス]]を利用した輸送システムの一種である<ref name="5-65">[[#BR5|『バスラマ・インターナショナル』通巻5号 p.65]]</ref>。
[[ファイル:Nagoya Guideway Bus-G-13.jpg|thumb|none|240px|[[名古屋ガイドウェイバス]]]]
[[Image:Ipswich-UK-guided-busway2.jpg|thumb|none|240px|案内装置(イギリス)]]
[[Image:MB O 405 Mannheim 100 1727.jpg|thumb|none|240px|かつてドイツの[[マンハイム]]に存在した線路上を走るよう敷設された案内軌条]]
}}
'''ガイドウェイバス''' とは、[[バス (交通機関)|バス]]車両を利用した[[案内軌条式鉄道]]である。ガイドウェイバスの呼称は日本でのみ用いられ、海外ではGuided Busや、Guided Buswayの呼称が一般的である。交通システムとしては[[バス・ラピッド・トランジット|BRT]](Bus Rapid Transit)の一種であるが、日本では既存路線の形態から[[新交通システム]]として取り上げられることが多い(日本の法令では、無軌条電車に分類され、鉄道の一種として扱われる事も理由の一つに挙げられる)。


[[路面電車]]や[[ライトレール|ライト・レール・トランジット (LRT) ]]のごとくバスを利用するために開発されたシステム<ref name="466-87">[[#吉見466|『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.87]]</ref>で、バス専用走行路の両側に低い側壁(ガイドウェイ)を設置し、バスの走行を誘導する仕組みである<ref name="466-87"/>。[[英語]]では "Guided Bus" と呼ばれ<ref name="466-89">[[#吉見466|『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.89]]</ref>、また発祥の[[ドイツ]]では開発を担当した[[ダイムラー・ベンツ]]のシステム名称<ref name="466-87"/>である "O-Bahn" とも呼ばれている<ref name="466-89"/>。
== 概説 ==
[[道路]]上に設けられた[[専用軌道]](ガイドウェイ)を車両に取り付けられた案内輪が誘導して走行する。道路上であっても、一般の自動車交通とは専用軌道により物理的に分離される。


本項では以下、表記を[[日本]]における呼称である「ガイドウェイバス」に統一し、路面電車とLRTはあわせて「トラム」と表記する。
案内輪を収納すれば通常のバスとして道路を走行でき、バスの機動力や廉価性、軌道系交通機関の定時性といった特徴を併せ持つ輸送機関である。また、専用軌道を設けるため(通常は道路上)、用地の確保が必要となる。<!--ドイツでは、ガイドウェイバス用の案内軌道を一般鉄道の軌道上に敷設している事例が存在する(線路上を走るバスについては[[デュアル・モード・ビークル]]も参照)。 ドイツのどこか不明-->


== 歴史 ==
日本の既存路線の場合、専用軌道区間では[[軌道法]]、道路走行区間では[[道路運送法]]、[[道路交通法]]の適用を受ける。このため運転士は、専用軌道運転時は[[無軌条電車]]運転免許([[動力車操縦者|動力車操縦免許]])、道路運転時は[[自動車]]の大型二種[[運転免許]]と2種類の運転免許が必要となる。かつては大型二種運転免許の保持者に対して、無軌条電車運転免許の試験が全て免除される規定が設けられていた。しかし、<!--同免許保持者の鉄道に対する技能が不十分な事に起因する重大事故が発生したため、←何の事故か全く不明-->[[2009年]]10月に行われた省令の改正で技能試験に関しては免除の対象外となっている。
[[ファイル:Duobus at Frillendorferplatz, Essen - geo.hlipp.de - 3825.jpg|thumb|世界初のガイドウェイバス(1986年・[[エッセン]])]]
側壁の案内軌条により車両を誘導する仕組み自体は、[[1856年]]に[[馬車]]による特許が[[イギリス]]において取得されており<ref name="466-87"/>、[[1859年]]には実際に[[リヴァプール]]で「ガイドウェイ馬車」が運行されている<ref name="466-87"/>。


この「ガイドウェイ馬車」は普及に至らなかった<ref name="466-87"/>が、1970年代後半になり、[[ドイツ研究技術省]] ([[:de:Bundesministerium für Bildung und Forschung|Bundesministerium für Forschung und Technologie]], BMFT) は[[エッセン]]の市内交通を担当する[[エッセン交通会社]] ([[:de:Essener Verkehrs-AG|Essener Verkehrs-AG]]、EVAG) に対してガイドウェイバスの研究を行うように要請した<ref name="27-15">[[#和田27|『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.15]]</ref>。ドイツにはトラムが多く存在し、トラムは高架や地下を走る鉄道と比較して運行経費面では優位であった<ref name="466-87"/>が、それでも車両の価格自体は決して安価なものとはいえない<ref name="466-87"/>ことから、車両費用の低いバス車両を使用し案内軌条によりバスの誘導を行うシステムとして、ガイドウェイバスが検討された<ref name="466-87"/>。
=== 特徴 ===
路線バスとの比較
* 長所
** 専用軌道を走行するため定時運行が可能となる。
** 専用軌道を走行するため<!--自動操舵運転ができるので←交通事故と関係があるのか不明-->交通事故の危険が少ない。
* 短所
** 専用軌道の敷設用地、インフラが必要。


[[1979年]]にはエッセンのエアバッハ地区において実用化が決定<ref name="27-15"/>、[[1980年]]から世界初のガイドウェイバスが運行を開始した<ref name="27-14">[[#和田27|『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.14]]</ref>。[[1984年]]にはイギリスの[[バーミンガム]]で試験的な導入が行われ<ref name="466-88">[[#吉見466|『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.88]]</ref>、[[1986年]]には[[オーストラリア]]の[[アデレード]]において導入された<ref name="350-117">[[#森村350|『鉄道ジャーナル』通巻350号 p.117]]</ref>。また、[[1989年]]には日本においても[[アジア太平洋博覧会]]の会場内交通機関として導入された<ref name="65-13">[[#BR65|『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.13]]</ref>。
[[ゴムタイヤトラム]]との比較
* 長所
** 一般道路で通常のバスとしての走行が可能。
** 架線を必要とせず、路線の敷設や維持コスト、景観面で優位。
** 専用軌道を走行するため<!--自動操舵運転ができるので←交通事故と関係があるのか不明-->交通事故の危険が少ない。
* 短所
** 内燃機関で走行するため排気ガスや騒音が発生する。
<!--** 専用軌道が必要なため敷地の確保や高架化への費用がかかる。←長所と矛盾-->
** 輸送力が小さい。


== 導入 ==
== 特徴 ==
{{Double image aside|right|Fastway (like O-Bahn).jpg|180|Ipswich-UK-guided-busway3.jpg|180|ガイドウェイバスの車両の例([[イギリス]]・クローリー)。赤丸で囲まれた部分が案内輪|ガイドウェイバス専用走行路の例(イギリス・[[イプスウィッチ]])。枠状のものが一般車両の進入を防ぐためのもので、左右の車輪がこれより広く、車体底部がこれより高い車両でないと通行できないようにしている}}
[[ドイツ]]の[[エッセン]]や[[オーストラリア]]の[[アデレード]]での導入事例があり、近年では[[イギリス|英国]]で多数のガイドウェイバス路線の開業が相次いでいる。日本では、[[1989年]]に[[福岡市]]で開催された[[アジア太平洋博覧会]](愛称:よかトピア)開催期間中に限り、会場内の輸送機関として初めて導入された。12年後の[[2001年]][[3月23日]]、初の一般営業路線として[[名古屋ガイドウェイバス]][[名古屋ガイドウェイバスガイドウェイバス志段味線|志段味線]](ゆとりーとライン)が開業した。
ガイドウェイバスに使用されるバスでは、通常のバスの車輪の近くに「案内輪」と呼ばれる小型で水平の車輪が設置されている<ref name="466-87"/>。この案内輪が、専用走行路の両脇に設置された、高さ180mm程度の側壁面(ガイドウェイ)をたどることで、ハンドル操作の必要なくバスが誘導される仕組みである<ref name="466-87"/>。車両側では、案内輪とそれに付随する機構以外には特別な装備は必要ない<ref name="2001-77">[[#鈴木2001|『路線バスの現在・未来 PART2』p.77]]</ref>ため、専用走行路以外の道路では通常のバスとして運用が可能である<ref name="466-87"/>。案内輪は、一般道路でも収納しない方式(固定式)と、一般道路走行時には収納される方式(収納式)があり、世界的には固定式が一般的である<ref name="466-90">[[#吉見466|『鉄道ジャーナル』通巻466号 p.90]]</ref>。こうした構造は、ほぼ全てのガイドウェイバスがダイムラー・ベンツが開発した方法に拠っている<ref name="466-87"/>。


専用走行路については、バスのタイヤの接地面が一定の場所に限られるという特徴があり<ref name="466-87"/>、これを利用して物理的に一般車両の進入を排除することが可能である<ref name="466-87"/>。このことは、バス専用の走行区分を設ける方式([[バスレーン]])や[[バス専用道路]]と比較して、ガイドウェイバスが有利な点とされる<ref name="466-87"/>。具体的には、バスのタイヤが接地する部分だけを舗装し、その間に段差を設けたり、走行妨害のための障害を設けることが可能である<ref name="466-87"/>。また、案内軌条以外には機械的装置や電気的装置はほとんど必要がないため、安価で保守が容易である<ref name="2001-77"/>。
日本ではガイドウェイバス志段味線(ゆとりーとライン)でのみ運行されており、[[大曽根駅]]から[[小幡緑地駅]]までは専用軌道を、小幡緑地駅より先は道路上を[[路線バス]]として運行している。なお志段味線は[[新交通システム]]への発展性を意図して開発が進められた経緯もあり、高架上に専用軌道が設けられている。


整備費用はバスレーンやバス専用道路と比較すると高くつく<ref name="466-87"/>が、歴史の節で述べたように車両そのものにかかる費用はトラムよりも安くなる。1kmあたりの整備費用は、トラムが10億円から20億円であるのに対して、ガイドウェイバスは5億円から10億円程度である<ref name="466-90"/>。このため、トラムの整備が費用的に過重であったり、もとからバスが市内交通の主力である都市には、トラムと同様の定時性や速達性をより安価に確保することが可能である<ref name="466-90"/>。また必要なところにだけに整備を行うことで、さらに整備費用を低減させることも可能である<ref name="466-90"/><ref group="注釈">鉄道車両を使用する場合、運行する全区間において軌道の整備が必要である。</ref>。
道路走行区間においては、渋滞対策や定時運行確保のために、道路拡張、専用走行レーンの設置、[[公共車両優先システム]] (PTPS)、[[バスロケーションシステム]]の導入など対策がとられている。

日本においては[[新交通システム]]による輸送が必要なほどの乗客数は見込めず、路線バスが渋滞等により輸送力やサービス低下を招いているような区域を対象に開発されている<ref name="5-65"/>。専用路の全幅が2,900mm前後で、構造上も新交通システムとほぼ同様である<ref name="2001-78-79">[[#鈴木2001|『路線バスの現在・未来 PART2』pp.78-79]]</ref>ことから、まずガイドウェイバスとして開業し、輸送力増強が必要になった時点で新交通システムに切り替えることも企図されていた<ref name="5-66">[[#BR5|『バスラマ・インターナショナル』通巻5号 p.66]]</ref>。

== 導入事例 ==
=== <!--AU-->オーストラリア ===
{{main|アデレード・オーバーン}}
{{Double image aside|right|O bahn adelaide sst.jpg|200|Paradise Interchange, O-Bahn Busway, Adelaide.jpg|200|公園地区内を走るオーバーン|途中停留所では通常のバスも乗り入れ可能(パラダイス)}}
アデレードの北東部に新興住宅地が開発され、この地区と都市部を結ぶ公共交通機関の整備にあたり、当初は市の南部で運行しているトラムの延伸導入も検討されていた<ref name="466-88"/>。しかし、既存のバス路線網との連携が図れる<ref name="466-88"/>上に整備費も安価である<ref name="466-88"/>ことから、ドイツで既に導入されていたシステムをそのまま採用することとなった<ref name="466-88"/>。1986年3月に都市部からパラダイスまでの6kmが開業し<ref name="350-117"/>、1989年にはモドバリーまで延伸され、全長約12kmの専用路が完成した<ref name="350-117"/>。整備された当初は「バスウェイ」と称していた<ref name="350-117"/>が、「オーバーン (O-Bahn) 」と俗称されていた<ref name="350-117"/>ことから、1995年には正式名称も「オーバーン (O-Bahn) 」に変更された<ref name="350-117"/>。

専用路はアデレードの都市部外周にある公園地区内に整備され<ref name="466-88"/>、全て地平に設置されている<ref name="2001-78">[[#鈴木2001|『路線バスの現在・未来 PART2』p.78]]</ref>。用地取得費用が不要だったことから建設費は1kmあたり6億円に低減された<ref name="466-88"/>。専用路での最高速度は100km/hで、2005年時点では世界最速のガイドウェイバスである<ref name="466-88"/>。専用路区間の途中停留所ではガイドウェイは設置されておらず、乗り継ぎの便を図るために通常のバスも乗り入れが可能になっている<ref name="350-117"/>。

2005年時点では単一路線としては世界最長距離のガイドウェイバスである<ref name="466-88"/>。それまで通常のバスで30分から40分程度かかっていた所要時間がわずか6分から7分程度に短縮され<ref name="2001-78"/>、1日15,000人程度の利用者数となっている<ref name="2001-78"/>。しかし、1989年の延伸は経営上から必ずしも成功ではなかったとみられ<ref name="466-88"/>、以後の延伸計画はない<ref name="466-88"/>。

=== <!--DE-->ドイツ ===
{{Double image aside|right|Spurbus Essen1.jpg|100|Essen Tramways - Duobus on Route 145 - geo.hlipp.de - 4068.jpg|210|アウトバーン中央分離帯に設けられた専用路を走るバス|トラム乗り入れに対応し、左側にも乗降用扉を有する「デュオバス」}}
1980年9月にエッセン郊外のエアバッハ地区で開業した、世界で初めて実用化されたガイドウェイバスである<ref name="27-14"/>。当初の距離は1.3kmであった<ref name="466-87"/>が、数次に分けて4路線に対して整備され<ref name="2001-78"/>、専用路の区間は2005年時点で合計8.9kmに達している<ref name="466-87"/>。1kmあたりの整備費は3900万円<ref name="27-16">[[#和田27|『バスラマ・インターナショナル』通巻27号 p.16]]</ref><ref group="注釈">文献では「1mあたりの建設費は600DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。</ref>で、トラムの整備費とほぼ同額であるとされている<ref name="27-16"/>が、1kmあたりの運行経費はトラムが27.3円<ref group="注釈">文献では「1kmあたり0.42DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。</ref>であるのに対し<ref name="27-16"/>、バスでは3.9円<ref group="注釈">文献では「1kmあたり0.06DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。</ref>とされている<ref name="27-16"/>。

当初は廃止されたトラムの軌道敷跡を利用したものであった<ref name="466-87"/>が、その後の延伸区間においては道路([[アウトバーン]])の中央分離帯部分が専用路に充てられている<ref name="340-142">[[#大滝340|『鉄道ジャーナル』通巻340号 p.142]]</ref>。専用路区間での速度は60km/h程度であるが、直線区間であれば80km/h程度でも走行は可能<ref name="27-16"/>。専用路は全て地平に設置されている<ref name="2001-79">[[#鈴木2001|『路線バスの現在・未来 PART2』p.79]]</ref>。

1988年9月24日からは、都心部でトラム地下区間への乗り入れが開始された<ref name="27-15"/>。この区間では軌道敷の両側にガイドウェイを敷設し<ref name="340-143">[[#大滝340|『鉄道ジャーナル』通巻340号 p.143]]</ref>、地下区間では排出ガスの影響を考慮してトロリーポールによって集電を行なう仕組みにした<ref name="27-15"/>。これに対応して、両側側面に乗降用の扉を設置し<ref name="27-14"/>、内燃動力であるディーゼルバスと電気動力である[[トロリーバス]]の双方の機能を有するデュアルモード[[連節バス]](通称「デュオバス」)が導入された<ref name="340-142"/>。都心部では地下のトラムと同じホームから発着し<ref name="340-142"/>、地上に出た後もトラムの併用軌道区間をトロリーバスとしてそのまま運行<ref name="340-142"/>、さらにガイドウェイ区間はディーゼルバスとして運行し<ref name="340-142"/>、一般道路区間では必要に応じてディーゼルバスかトロリーバスのどちらかのシステムで走行する。利用者の少ない時期などはトラムを運休し、代わりに「デュオバス」を運行することもあった<ref name="27-15"/>。

{{Double image aside|right|Rubber tyres in the tram subway - geo.hlipp.de - 4517.jpg|210|MB O 405 Mannheim 100 1727.jpg|180|トラム地下駅に乗り入れた「デュオバス」|マンハイムの軌道併用ガイドウェイバス}}
バスの機動性と軌道の確実性を併せ持つシステムとして注目された<ref name="2001-79"/>が、トラムの信号システムが稠密な運行に対応していなかった<ref name="466-88"/>上、軌道脇に設置されたバス用の走行面(木製)の磨耗が早く<ref name="466-88"/>、水がたまることでスリップが多発するようになった<ref name="466-88"/>。2005年までにトラムへのバス乗り入れは廃止された<ref name="466-88"/>。

これとは別に、[[マンハイム]]では渋滞のひどい交差点を回避するため<ref name="466-88"/>、1992年にトラム軌道の両脇にガイドウェイを整備し、バスの乗り入れを開始した<ref name="466-88"/>。都心へ向かう方向のみの設定で、距離も0.8kmと短い距離である<ref name="466-88"/>。ガイドウェイバスでは世界で初めて[[低床バス]]を導入した<ref name="466-88"/>。

この2都市の事例以後、ドイツではガイドウェイバスの延伸計画はない<ref name="466-88"/>。

=== <!--JP-->日本 ===
1985年に[[建設省]](当時)を主体としてガイドウェイバスの開発が開始され<ref name="65-13"/>、1989年にアジア太平洋博覧会の会場内輸送機関として0.9kmのガイドウェイバスが運行されたのが始まりである<ref name="65-13"/>。1990年には[[名古屋市]]において事業化が決定し<ref name="65-13"/>、1994年には主体となる事業者が設立され<ref name="65-13"/>、2001年3月23日に[[大曽根駅]]と[[小幡緑地駅]]を結ぶ6.5kmの区間において、[[名古屋ガイドウェイバス]]によって「[[名古屋ガイドウェイバスガイドウェイバス志段味線|ゆとりーとライン]]」として本格的な営業運行が開始された<ref name="65-12">[[#BR65|『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.12]]</ref>。

{{Double image aside|right|Nagoya Guideway Bus-G-13.jpg|200|Yutoreet-Line-Ozone-Sta.jpg|190|高架の専用路を走行する「[[名古屋ガイドウェイバスガイドウェイバス志段味線|ゆとりーとライン]]」|停車場もバス用としては大規模な構造物となっている(大曽根駅)}}
日本で導入されたガイドウェイバスは、他のガイドウェイバス導入国と異なる特徴をいくつか有する<ref name="466-90"/>。

日本のガイドウェイバスの最大の特徴は、他の導入国では専用路区間であってもバスとして扱われているのに対し<ref name="466-90"/>、日本においては[[トロリーバス|無軌条電車(トロリーバス)]]、つまり軌道法の適用を受ける鉄道の一種として扱われていることである<ref name="65-15">[[#BR65|『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.15]]</ref>。このため、福岡では路面電車の運転免許(乙種電気動力車運転免許)とバスを運転するための免許(大型自動車[[第二種運転免許|第二種免許]])を両方とも保持する乗務員が運行を担当した<ref name="65-15"/>。名古屋でも無軌条電車の運転免許(乙種電気動力車運転免許)を取得したバス乗務員が運行を担当する<ref name="65-15"/>。専用路区間での最高速度は60km/hで、これも無軌条電車の法規が由来である<ref name="65-15"/>。

また、専用路区間は他の導入国が地平に設けているのに対し、全線高架で整備されている<ref name="466-90"/>。このため、1kmあたりの整備費は54億円に達し<ref name="466-90"/>、他の導入国と比較すると異常なほど高額の整備費である<ref name="466-90"/>。バスの乗降施設についても、モノレールの駅に匹敵する大掛かりな規模となっており<ref name="2001-80">[[#鈴木2001|『路線バスの現在・未来 PART2』p.80]]</ref>、通常のバスのように路上から乗れる気軽さはない<ref name="2001-80"/>。さらに、運行規定では1駅間の走行台数は1台以下と決められており<ref name="65-15"/>、通常のバスのような続行運転は出来ない<ref name="466-90"/>。このような事情から、日本のガイドウェイバスに対しては「バスの機動性を十分に生かせていない」<ref name="466-90"/>、「整備費用の低減というメリットも実現できていないのでは」<ref name="2001-80"/>という意見もある。

運行車両については、全車両とも[[ツーステップバス]]が採用されている<ref name="65-17">[[#BR65|『バスラマ・インターナショナル』通巻65号 p.17]]</ref>。2001年の開業時点では既に[[ワンステップバス]]や[[ノンステップバス]]は普及が進んでいた<ref name="65-17"/>が、その時点で案内輪をはじめとするシステムの開発が既に終了しており<ref name="65-17"/>、低床バスのために新たに開発する時間的余裕がなかったためである<ref name="65-17"/>。案内輪は一般道路区間では収納される<ref name="65-17"/>が、これも日本独特の仕様である<ref name="466-90"/>。

=== <!--UK-->イギリス ===
1984年にバーミンガムで650mの区間に "TRACLINE 65" として導入されたのが始まりである<ref name="466-89"/>が、これは実験的な要素が強く、2年ほどで廃止されている<ref name="466-89"/>。

{{Double image aside|right|Manchester Road guided busway - geograph.org.uk - 37262.jpg|200|Kesgrave guided busway.JPG|200|片方向だけ整備された専用路(マンチェスター)|ダブルデッカーのガイドウェイバス(イプスウィッチ)}}
その後、バス事業の自由化に伴い、[[1995年]]に[[イプスウィッチ]]郊外にて "Superoute 66" として200mの区間に導入された<ref name="466-89"/>。この区間は一般道路では大きく迂回しなければならない区間をガイドウェイバスによって短絡することによって、自家用車からバスへの転移を促したもので<ref name="466-89"/>、専用路区間には[[スーパーマーケット]]と[[保健所]]が存在する<ref name="466-89"/>。同じ年には[[リーズ]]で幹線道路の一部を専用路に転用したガイドウェイバス "Superbus" の運行が開始された<ref name="466-89"/>。リーズの導入事例では、片方向のみの整備区間が多いこと<ref name="466-89"/>や、バスレーンの整備もあわせて行われていることが特徴である<ref name="466-89"/>。リーズでは、ガイドウェイバスを将来のLRT計画の補完として位置づけている<ref name="466-89"/>。その後、2001年に[[ブラッドフォード (イングランド)|ブラッドフォード]]でリーズと同様のガイドウェイバス "Quality Bus" が運行されているが、こちらはバスを都市交通の主体と位置づけている<ref name="466-89"/>。その後2003年には[[ロンドン]]郊外のクローリーで "Sussex Fastway" として、2004年には[[エジンバラ]]でも "Fastlink" として導入が行なわれた<ref name="466-89"/>。

これらイギリスのガイドウェイバスの特徴として、[[2階建車両|ダブルデッカー]]の運行が行なわれている点が挙げられる<ref name="466-88-89">[[#吉見466|『鉄道ジャーナル』通巻466号 pp.88-89]]</ref>。2005年時点では6箇所にガイドウェイバスの整備計画が存在する<ref name="466-89"/>。このうち[[ケンブリッジ]]では延長27.4kmで、完成すれば世界最長のガイドウェイバスとなる<ref name="466-89"/>。

== 類似システム ==
同様にバス車両をベースとしたシステムを列挙する。詳細は各記事を参照。
; 中央案内軌条式 : [[フランス]]の[[ナンシー]]などで実用化されている「[[ゴムタイヤトラム#TVR|TVR]]」など、道路上に埋め込まれた案内軌条により車両の誘導を行うシステム<ref name="466-90"/>。
; [[電波]][[磁性|磁気]]誘導式:[[オランダ]]で実用化されている「フィリアス」や日本で実用化された「[[IMTS]]」など、道路上に埋め込まれた磁気マーカーを読み取って車両の誘導を行うシステム。
; 光学式:[[アメリカ合衆国]]の[[ラスベガス]]などで実用化されている「[[ゴムタイヤトラム#CiViS|CiViS]]」など、道路上に描かれた案内線を光学的に読み取って車両の誘導を行うシステム<ref name="466-90"/>。
<gallery>
File:Stan-Bus-Bahn-Nancy.jpg|TVR(フランス・ナンシー)
File:Hermes 1210 Eindhoven Noord Brabantlaan 14-07-2006.JPG|フィリアス(オランダ・アイントホーフェン)
File:EXPO 2005 of Three IMTS(s) organization.jpg|IMTS(日本・愛知県)
</gallery>

== 脚注 ==
{{脚注ヘルプ}}

=== 注釈 ===
{{Reflist|group="注釈"}}

=== 出典 ===
{{Reflist|2}}

== 参考文献 ==
=== 書籍 ===
* {{Cite book|和書|author = [[鈴木文彦]]|authorlink = |coauthors = |year = 2001|title = 路線バスの現在・未来 PART2 |publisher = グランプリ出版|ref = 鈴木2001|id = |isbn = 4876872279}}

=== 雑誌記事 ===
* {{Cite journal|和書|author=大滝裕之 |year=1995 |month=2 |title=ライン・ルール地方の都市交通 |journal=[[鉄道ジャーナル]] |issue=340 |pages=139-143 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = 大滝340}}
* {{Cite journal|和書|author=森村譲 |year=1995 |month=12 |title=オーストラリア アデレードの近郊輸送網 |journal=鉄道ジャーナル |issue=350 |pages=115-117 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = 森村350}}
* {{Cite journal|和書|author=吉見宏 |year=2005 |month=8 |title=世界のガイドウェイバス |journal=鉄道ジャーナル |issue=466 |pages=86-90 |publisher=鉄道ジャーナル社 |ref = 吉見466}}
* {{Cite journal|和書|author=和田由貴夫 |year=1995 |month=1 |title=『ヨーロッパのバスを訪ねるバスラマの旅』から |journal=[[バスラマ・インターナショナル]] |issue=27 |pages=9-18 |publisher=ぽると出版 |ref = 和田27}}
* {{Cite journal|和書|author= |year=1991 |month=5 |title=今最先端の”バス技術”集合! |journal=バスラマ・インターナショナル |issue=5 |pages=57-71 |publisher=ぽると出版 |ref = BR5}}
* {{Cite journal|和書|author= |year=2001 |month=5 |title=名古屋ガイドウェイバスが運行開始 |journal=バスラマ・インターナショナル |issue=65 |pages=12-18 |publisher=ぽると出版 |ref = BR65}}


== 関連項目 ==
== 関連項目 ==
{{commons|Guided bus}}
{{commons|Guided bus}}
* [[バス・ラピッド・トランジット]]

* [[IMTS]]
* [[IMTS]]
* [[アデレード・オーバーン]]
* [[トロリーバス]]
* [[トロリーバス]]
* [[ゴムタイヤトラム]]
* [[ゴムタイヤトラム]]
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2011年12月27日 (火) 00:44時点における版

ガイドウェイバス(ドイツエッセンのEVAGで運用されているメルセデス・ベンツ・シターロ

ガイドウェイバスとは、バスを利用した輸送システムの一種である[1]

路面電車ライト・レール・トランジット (LRT) のごとくバスを利用するために開発されたシステム[2]で、バス専用走行路の両側に低い側壁(ガイドウェイ)を設置し、バスの走行を誘導する仕組みである[2]英語では "Guided Bus" と呼ばれ[3]、また発祥のドイツでは開発を担当したダイムラー・ベンツのシステム名称[2]である "O-Bahn" とも呼ばれている[3]

本項では以下、表記を日本における呼称である「ガイドウェイバス」に統一し、路面電車とLRTはあわせて「トラム」と表記する。

歴史

世界初のガイドウェイバス(1986年・エッセン

側壁の案内軌条により車両を誘導する仕組み自体は、1856年馬車による特許がイギリスにおいて取得されており[2]1859年には実際にリヴァプールで「ガイドウェイ馬車」が運行されている[2]

この「ガイドウェイ馬車」は普及に至らなかった[2]が、1970年代後半になり、ドイツ研究技術省 (Bundesministerium für Forschung und Technologie, BMFT) はエッセンの市内交通を担当するエッセン交通会社 (Essener Verkehrs-AG、EVAG) に対してガイドウェイバスの研究を行うように要請した[4]。ドイツにはトラムが多く存在し、トラムは高架や地下を走る鉄道と比較して運行経費面では優位であった[2]が、それでも車両の価格自体は決して安価なものとはいえない[2]ことから、車両費用の低いバス車両を使用し案内軌条によりバスの誘導を行うシステムとして、ガイドウェイバスが検討された[2]

1979年にはエッセンのエアバッハ地区において実用化が決定[4]1980年から世界初のガイドウェイバスが運行を開始した[5]1984年にはイギリスのバーミンガムで試験的な導入が行われ[6]1986年にはオーストラリアアデレードにおいて導入された[7]。また、1989年には日本においてもアジア太平洋博覧会の会場内交通機関として導入された[8]

特徴

ガイドウェイバスの車両の例(イギリス・クローリー)。赤丸で囲まれた部分が案内輪 ガイドウェイバス専用走行路の例(イギリス・イプスウィッチ)。枠状のものが一般車両の進入を防ぐためのもので、左右の車輪がこれより広く、車体底部がこれより高い車両でないと通行できないようにしている
ガイドウェイバスの車両の例(イギリス・クローリー)。赤丸で囲まれた部分が案内輪
ガイドウェイバス専用走行路の例(イギリス・イプスウィッチ)。枠状のものが一般車両の進入を防ぐためのもので、左右の車輪がこれより広く、車体底部がこれより高い車両でないと通行できないようにしている

ガイドウェイバスに使用されるバスでは、通常のバスの車輪の近くに「案内輪」と呼ばれる小型で水平の車輪が設置されている[2]。この案内輪が、専用走行路の両脇に設置された、高さ180mm程度の側壁面(ガイドウェイ)をたどることで、ハンドル操作の必要なくバスが誘導される仕組みである[2]。車両側では、案内輪とそれに付随する機構以外には特別な装備は必要ない[9]ため、専用走行路以外の道路では通常のバスとして運用が可能である[2]。案内輪は、一般道路でも収納しない方式(固定式)と、一般道路走行時には収納される方式(収納式)があり、世界的には固定式が一般的である[10]。こうした構造は、ほぼ全てのガイドウェイバスがダイムラー・ベンツが開発した方法に拠っている[2]

専用走行路については、バスのタイヤの接地面が一定の場所に限られるという特徴があり[2]、これを利用して物理的に一般車両の進入を排除することが可能である[2]。このことは、バス専用の走行区分を設ける方式(バスレーン)やバス専用道路と比較して、ガイドウェイバスが有利な点とされる[2]。具体的には、バスのタイヤが接地する部分だけを舗装し、その間に段差を設けたり、走行妨害のための障害を設けることが可能である[2]。また、案内軌条以外には機械的装置や電気的装置はほとんど必要がないため、安価で保守が容易である[9]

整備費用はバスレーンやバス専用道路と比較すると高くつく[2]が、歴史の節で述べたように車両そのものにかかる費用はトラムよりも安くなる。1kmあたりの整備費用は、トラムが10億円から20億円であるのに対して、ガイドウェイバスは5億円から10億円程度である[10]。このため、トラムの整備が費用的に過重であったり、もとからバスが市内交通の主力である都市には、トラムと同様の定時性や速達性をより安価に確保することが可能である[10]。また必要なところにだけに整備を行うことで、さらに整備費用を低減させることも可能である[10][注釈 1]

日本においては新交通システムによる輸送が必要なほどの乗客数は見込めず、路線バスが渋滞等により輸送力やサービス低下を招いているような区域を対象に開発されている[1]。専用路の全幅が2,900mm前後で、構造上も新交通システムとほぼ同様である[11]ことから、まずガイドウェイバスとして開業し、輸送力増強が必要になった時点で新交通システムに切り替えることも企図されていた[12]

導入事例

オーストラリア

公園地区内を走るオーバーン 途中停留所では通常のバスも乗り入れ可能(パラダイス)
公園地区内を走るオーバーン
途中停留所では通常のバスも乗り入れ可能(パラダイス)

アデレードの北東部に新興住宅地が開発され、この地区と都市部を結ぶ公共交通機関の整備にあたり、当初は市の南部で運行しているトラムの延伸導入も検討されていた[6]。しかし、既存のバス路線網との連携が図れる[6]上に整備費も安価である[6]ことから、ドイツで既に導入されていたシステムをそのまま採用することとなった[6]。1986年3月に都市部からパラダイスまでの6kmが開業し[7]、1989年にはモドバリーまで延伸され、全長約12kmの専用路が完成した[7]。整備された当初は「バスウェイ」と称していた[7]が、「オーバーン (O-Bahn) 」と俗称されていた[7]ことから、1995年には正式名称も「オーバーン (O-Bahn) 」に変更された[7]

専用路はアデレードの都市部外周にある公園地区内に整備され[6]、全て地平に設置されている[13]。用地取得費用が不要だったことから建設費は1kmあたり6億円に低減された[6]。専用路での最高速度は100km/hで、2005年時点では世界最速のガイドウェイバスである[6]。専用路区間の途中停留所ではガイドウェイは設置されておらず、乗り継ぎの便を図るために通常のバスも乗り入れが可能になっている[7]

2005年時点では単一路線としては世界最長距離のガイドウェイバスである[6]。それまで通常のバスで30分から40分程度かかっていた所要時間がわずか6分から7分程度に短縮され[13]、1日15,000人程度の利用者数となっている[13]。しかし、1989年の延伸は経営上から必ずしも成功ではなかったとみられ[6]、以後の延伸計画はない[6]

ドイツ

アウトバーン中央分離帯に設けられた専用路を走るバス トラム乗り入れに対応し、左側にも乗降用扉を有する「デュオバス」
アウトバーン中央分離帯に設けられた専用路を走るバス
トラム乗り入れに対応し、左側にも乗降用扉を有する「デュオバス」

1980年9月にエッセン郊外のエアバッハ地区で開業した、世界で初めて実用化されたガイドウェイバスである[5]。当初の距離は1.3kmであった[2]が、数次に分けて4路線に対して整備され[13]、専用路の区間は2005年時点で合計8.9kmに達している[2]。1kmあたりの整備費は3900万円[14][注釈 2]で、トラムの整備費とほぼ同額であるとされている[14]が、1kmあたりの運行経費はトラムが27.3円[注釈 3]であるのに対し[14]、バスでは3.9円[注釈 4]とされている[14]

当初は廃止されたトラムの軌道敷跡を利用したものであった[2]が、その後の延伸区間においては道路(アウトバーン)の中央分離帯部分が専用路に充てられている[15]。専用路区間での速度は60km/h程度であるが、直線区間であれば80km/h程度でも走行は可能[14]。専用路は全て地平に設置されている[16]

1988年9月24日からは、都心部でトラム地下区間への乗り入れが開始された[4]。この区間では軌道敷の両側にガイドウェイを敷設し[17]、地下区間では排出ガスの影響を考慮してトロリーポールによって集電を行なう仕組みにした[4]。これに対応して、両側側面に乗降用の扉を設置し[5]、内燃動力であるディーゼルバスと電気動力であるトロリーバスの双方の機能を有するデュアルモード連節バス(通称「デュオバス」)が導入された[15]。都心部では地下のトラムと同じホームから発着し[15]、地上に出た後もトラムの併用軌道区間をトロリーバスとしてそのまま運行[15]、さらにガイドウェイ区間はディーゼルバスとして運行し[15]、一般道路区間では必要に応じてディーゼルバスかトロリーバスのどちらかのシステムで走行する。利用者の少ない時期などはトラムを運休し、代わりに「デュオバス」を運行することもあった[4]

トラム地下駅に乗り入れた「デュオバス」 マンハイムの軌道併用ガイドウェイバス
トラム地下駅に乗り入れた「デュオバス」
マンハイムの軌道併用ガイドウェイバス

バスの機動性と軌道の確実性を併せ持つシステムとして注目された[16]が、トラムの信号システムが稠密な運行に対応していなかった[6]上、軌道脇に設置されたバス用の走行面(木製)の磨耗が早く[6]、水がたまることでスリップが多発するようになった[6]。2005年までにトラムへのバス乗り入れは廃止された[6]

これとは別に、マンハイムでは渋滞のひどい交差点を回避するため[6]、1992年にトラム軌道の両脇にガイドウェイを整備し、バスの乗り入れを開始した[6]。都心へ向かう方向のみの設定で、距離も0.8kmと短い距離である[6]。ガイドウェイバスでは世界で初めて低床バスを導入した[6]

この2都市の事例以後、ドイツではガイドウェイバスの延伸計画はない[6]

日本

1985年に建設省(当時)を主体としてガイドウェイバスの開発が開始され[8]、1989年にアジア太平洋博覧会の会場内輸送機関として0.9kmのガイドウェイバスが運行されたのが始まりである[8]。1990年には名古屋市において事業化が決定し[8]、1994年には主体となる事業者が設立され[8]、2001年3月23日に大曽根駅小幡緑地駅を結ぶ6.5kmの区間において、名古屋ガイドウェイバスによって「ゆとりーとライン」として本格的な営業運行が開始された[18]

高架の専用路を走行する「ゆとりーとライン」 停車場もバス用としては大規模な構造物となっている(大曽根駅)
高架の専用路を走行する「ゆとりーとライン
停車場もバス用としては大規模な構造物となっている(大曽根駅)

日本で導入されたガイドウェイバスは、他のガイドウェイバス導入国と異なる特徴をいくつか有する[10]

日本のガイドウェイバスの最大の特徴は、他の導入国では専用路区間であってもバスとして扱われているのに対し[10]、日本においては無軌条電車(トロリーバス)、つまり軌道法の適用を受ける鉄道の一種として扱われていることである[19]。このため、福岡では路面電車の運転免許(乙種電気動力車運転免許)とバスを運転するための免許(大型自動車第二種免許)を両方とも保持する乗務員が運行を担当した[19]。名古屋でも無軌条電車の運転免許(乙種電気動力車運転免許)を取得したバス乗務員が運行を担当する[19]。専用路区間での最高速度は60km/hで、これも無軌条電車の法規が由来である[19]

また、専用路区間は他の導入国が地平に設けているのに対し、全線高架で整備されている[10]。このため、1kmあたりの整備費は54億円に達し[10]、他の導入国と比較すると異常なほど高額の整備費である[10]。バスの乗降施設についても、モノレールの駅に匹敵する大掛かりな規模となっており[20]、通常のバスのように路上から乗れる気軽さはない[20]。さらに、運行規定では1駅間の走行台数は1台以下と決められており[19]、通常のバスのような続行運転は出来ない[10]。このような事情から、日本のガイドウェイバスに対しては「バスの機動性を十分に生かせていない」[10]、「整備費用の低減というメリットも実現できていないのでは」[20]という意見もある。

運行車両については、全車両ともツーステップバスが採用されている[21]。2001年の開業時点では既にワンステップバスノンステップバスは普及が進んでいた[21]が、その時点で案内輪をはじめとするシステムの開発が既に終了しており[21]、低床バスのために新たに開発する時間的余裕がなかったためである[21]。案内輪は一般道路区間では収納される[21]が、これも日本独特の仕様である[10]

イギリス

1984年にバーミンガムで650mの区間に "TRACLINE 65" として導入されたのが始まりである[3]が、これは実験的な要素が強く、2年ほどで廃止されている[3]

片方向だけ整備された専用路(マンチェスター) ダブルデッカーのガイドウェイバス(イプスウィッチ)
片方向だけ整備された専用路(マンチェスター)
ダブルデッカーのガイドウェイバス(イプスウィッチ)

その後、バス事業の自由化に伴い、1995年イプスウィッチ郊外にて "Superoute 66" として200mの区間に導入された[3]。この区間は一般道路では大きく迂回しなければならない区間をガイドウェイバスによって短絡することによって、自家用車からバスへの転移を促したもので[3]、専用路区間にはスーパーマーケット保健所が存在する[3]。同じ年にはリーズで幹線道路の一部を専用路に転用したガイドウェイバス "Superbus" の運行が開始された[3]。リーズの導入事例では、片方向のみの整備区間が多いこと[3]や、バスレーンの整備もあわせて行われていることが特徴である[3]。リーズでは、ガイドウェイバスを将来のLRT計画の補完として位置づけている[3]。その後、2001年にブラッドフォードでリーズと同様のガイドウェイバス "Quality Bus" が運行されているが、こちらはバスを都市交通の主体と位置づけている[3]。その後2003年にはロンドン郊外のクローリーで "Sussex Fastway" として、2004年にはエジンバラでも "Fastlink" として導入が行なわれた[3]

これらイギリスのガイドウェイバスの特徴として、ダブルデッカーの運行が行なわれている点が挙げられる[22]。2005年時点では6箇所にガイドウェイバスの整備計画が存在する[3]。このうちケンブリッジでは延長27.4kmで、完成すれば世界最長のガイドウェイバスとなる[3]

類似システム

同様にバス車両をベースとしたシステムを列挙する。詳細は各記事を参照。

中央案内軌条式
フランスナンシーなどで実用化されている「TVR」など、道路上に埋め込まれた案内軌条により車両の誘導を行うシステム[10]
電波磁気誘導式
オランダで実用化されている「フィリアス」や日本で実用化された「IMTS」など、道路上に埋め込まれた磁気マーカーを読み取って車両の誘導を行うシステム。
光学式
アメリカ合衆国ラスベガスなどで実用化されている「CiViS」など、道路上に描かれた案内線を光学的に読み取って車両の誘導を行うシステム[10]

脚注

注釈

  1. ^ 鉄道車両を使用する場合、運行する全区間において軌道の整備が必要である。
  2. ^ 文献では「1mあたりの建設費は600DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。
  3. ^ 文献では「1kmあたり0.42DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。
  4. ^ 文献では「1kmあたり0.06DM(ドイツマルク)」とされている。同じ文献に記載の「1ドイツマルク=65円」に従って換算した数字。

出典

参考文献

書籍

  • 鈴木文彦『路線バスの現在・未来 PART2』グランプリ出版、2001年。ISBN 4876872279 

雑誌記事

  • 大滝裕之「ライン・ルール地方の都市交通」『鉄道ジャーナル』第340号、鉄道ジャーナル社、1995年2月、139-143頁。 
  • 森村譲「オーストラリア アデレードの近郊輸送網」『鉄道ジャーナル』第350号、鉄道ジャーナル社、1995年12月、115-117頁。 
  • 吉見宏「世界のガイドウェイバス」『鉄道ジャーナル』第466号、鉄道ジャーナル社、2005年8月、86-90頁。 
  • 和田由貴夫「『ヨーロッパのバスを訪ねるバスラマの旅』から」『バスラマ・インターナショナル』第27号、ぽると出版、1995年1月、9-18頁。 
  • 「今最先端の”バス技術”集合!」『バスラマ・インターナショナル』第5号、ぽると出版、1991年5月、57-71頁。 
  • 「名古屋ガイドウェイバスが運行開始」『バスラマ・インターナショナル』第65号、ぽると出版、2001年5月、12-18頁。 

関連項目

外部リンク