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[[ファイル:Runny_hunny.jpg|230px|thumb|蜂蜜]] |
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'''蜂蜜'''(はちみつ)とは[[ミツバチ]]が花の蜜を採集し、巣の中で加工、貯蔵したものをいう<ref name="角田1997-154">[[#角田1997|角田1997]]、154頁。</ref>。自然界で最も甘い蜜といわれ<ref name="清水2003-2">[[#清水2003|清水2003]]、2頁。</ref>、本来はミツバチの食料であるが、しばしば他の生物が採集して食料としている<ref>[[#清水2003|清水2003]]、4頁。</ref>。約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、ビタミン、ミネラルなど微量の[[有効成分]]を含む<ref name="清水2003-28-31">[[#清水2003|清水2003]]、28-31頁。</ref>。 |
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'''蜂蜜'''(はちみつ)とは[[ミツバチ]]が[[巣]]の中に貯蔵する天然の[[甘味料]]である。[[花]]から集めた[[蜜]]を主原料にしている。 |
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== 採集 == |
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=== ミツバチによる花の蜜の採集 === |
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ミツバチは花から得た蜜を巣に蓄えるが、蜜を得たとき体内で転化[[酵素]]([[インベルターゼ]])が加えられ分解される。そのため、[[スクロース]]を中心とした花の蜜は巣の中で成分が次第に変化してゆく。ミツバチの巣はハチの[[代謝]][[熱]]によって常に35℃前後に保たれ、なおかつ働き蜂の送風行動によって常に換気されているため[[水|水分]]が蒸発し[[糖分]]が80%ほどになる。 |
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{{See also|ミツバチ}} |
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[[ファイル:Honeybee landing on milkthistle02.jpg|thumb|220px|花の蜜を採集する[[セイヨウミツバチ]]]] |
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蜂蜜のもととなる花の蜜は、メスのミツバチによって採集される。採集された花の蜜はショ糖液、つまり水分を含んだ[[スクロース]](ショ糖)の状態で胃の前部にある蜜嚢(蜜胃<ref>[[#原1988|原1988]]、39頁。</ref>)と呼ばれる器官に貯えられる。蜜嚢が蜂蜜で満たされるとミツバチは巣へ戻る<ref>[[#清水2003|清水2003]]、19頁。</ref>。 |
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一般にミツバチが採集した花の蜜が蜂蜜であると考えられがちである<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、32頁。</ref>が、花の蜜が巣の中で加工、貯蔵されたものが蜂蜜であり<ref name="角田1997-154"/>、両者の性質には物理的、化学的な違いがある<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、34-35頁。</ref>。まず、花の蜜は蜂蜜よりも糖濃度が低い。一般に花の蜜の糖度は蜜蜂が採集した段階で40%未満であるが、巣に持ち帰られた後で水分の発散が行われる結果、蜂蜜の糖度は80%前後に上昇する<ref>[[#清水2003|清水2003]]、19-20頁。</ref>。また、水分発散のための作業の一つとして、蜜蜂は巣の中で口器を使って蜜を膜状に引き延ばすのであるが、この時蜜蜂の唾液に含まれる酵素([[インベルターゼ]]、転化酵素)が蜜に混入し、その作用によって蜜の中の[[スクロース]](ショ糖)が[[グルコース]](ブドウ糖)と[[フルクトース]](果糖)に分解される<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、34-35頁。</ref>。 |
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[[成分]]は[[グルコース|ブドウ糖]]、[[フルクトース|果糖]]のほか[[オリゴ糖|イソマルトオリゴ糖]]<ref>[http://hfnet.nih.go.jp/contents/detail30lite.html イソマルトオリゴ糖] 国立健康・栄養研究所「「健康食品」の安全性・有効性情報」</ref>、[[グルコノラクトン]]、各種[[ビタミン]]、[[ミネラル]]、[[アミノ酸]]などで高い[[栄養価]]をもち、1gあたり12.307[[ジュール|kJ]](2.94[[カロリー#栄養学における「カロリー」|kcal]])の[[熱量]]がある。 |
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ミツバチの口器を通してはこの他に、本来花の蜜には含まれない物質が混入する。一例として[[コリン (栄養素)|コリン]]が挙げられる。コリンはミツバチの[[咽頭腺]]から分泌される[[ローヤルゼリー]]に含まれる物質で、これはミツバチが花の蜜の水分の発散と並行して、同じく口器を用いて咽頭腺から分泌されたローヤルゼリーを[[女王蜂]]の幼虫に与える作業を行うため、ローヤルゼリー中のコリンが蜂蜜に混入するためと考えられる<ref name="渡辺2003-35-37">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、35-37頁。</ref>。 |
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蜂蜜は純粋な[[化合物]]ではなく[[混合物]]であるため、[[物性]]の値には幅がある(特に水分の量に依存する)。[[比重]]は約1.4。結晶化する温度は10 - 15℃であり、素材となった花の種類に左右される。蜂蜜はどろっとした液体の代表とも言え、蜂蜜の[[粘度]]は5,000 - 6,000cP(センチ[[ポアズ]])に達する。なお、水の粘度は摂氏20度で1cP、[[トマトケチャップ]]は2,000 - 3,000cP、[[マヨネーズ]]は2,000cP程度である。 |
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ちなみに、中国の明代の薬学書『[[本草綱目]]』は皇腐珍奇という霊的な作用によって大便から蜂蜜が生成されると説いており、この説は同じく明代の産業技術書『[[天工開物]]』や日本の江戸時代の類書『[[和漢三才図会]]』に受け継がれた。日本ではこの説に対し、江戸時代の本草学者[[貝原益軒]]が蜂蜜は花の蜜から作られると反論した。日本初の養蜂書『[[家蜂畜養記]]』の著者[[久世敦行]]も同様に反論を行った<ref>[[#原1988|原1988]]、116-118頁。</ref>。 |
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蜂蜜は糖の[[溶解度]]ギリギリであり、低温になると溶解度を上回ってしまい[[結晶]]化(糖が[[析出]])する。結晶化するのはブドウ糖で、結晶化しない蜜の部分には果糖が多く含まれている。[[冷蔵庫]]はもちろん、[[冬|冬期]]には室内でも固まってしまうことがある。湯煎をするなどして温めれば元の液状になり、品質上は全く問題はない。花粉などの不純物が多いと、結晶しやすくなる。「低温で固まれば純粋蜂蜜で、固まらなければ加糖蜂蜜」といわれることがあるが純粋ハチミツでも不純物を濾過しているものは結晶しにくいため、この方法で見分けることはできない。また、蜂蜜は[[スクロース|ショ糖]]よりも体に吸収されやすい。これは蜂蜜が[[単糖類]]の[[グルコース|ブドウ糖]]と[[フルクトース|果糖]]から構成され、これ以上消化する必要がないからである<ref>{{ref harvard |文献(渡辺2)|文献(渡辺,a)|a}}、pp.85 </ref>。 |
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== 蜂蜜の |
=== 人による蜂蜜の採集 === |
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{{See also|養蜂}} |
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{{multiple image |
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| image1 = Cueva arana.jpg |
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| caption1 = 蜂蜜採集の様子を描いた{{仮リンク|アラニア洞窟|en|Cuevas de la Araña en Bicorp}}の岩壁彫刻の模写 |
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| image2 = Beekeper collecting swarm.jpg |
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| caption2 = ミツバチを採集する養蜂家 |
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}} |
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{{仮リンク|エバ・クレーン|en|Eva Crane}}の研究によれば、1万年前にはすでに人類による採蜜が始まっていた<ref>"The Archaeology of Beekeeping", Eva Crane(1983)</ref>。人類は当初、野生のミツバチの巣から蜂蜜を採集していた<ref name="清水2003-12">[[#清水2003|清水2003]]、12頁。</ref>。[[1919年]]にスペインの{{仮リンク|アラニア洞窟|en|Cuevas de la Araña en Bicorp}}で発見された[[新石器時代]]の岩壁彫刻は人類とハチミツの関係を示す最古の資料とされ、片手に籠状の容器を持って[[梯子#縄梯子|縄梯子]]を登って天然の洞穴に近づき、蜂蜜の採集を試みる人物が描かれている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、20-21頁。</ref>。この壁画では洞穴とミツバチが非常に大きく描かれており、古代人の蜂蜜への関心の高さとミツバチに対する恐怖の大きさを表していると解釈することができる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、21頁。</ref>。 |
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やがて人類は[[養蜂]]、すなわちミツバチを飼育して蜂蜜を得る方法を身につけた。エジプトではおよそ5000年前に粘土製の管状の巣箱を用いた養蜂が始められ、巣箱を移動させながら蜜を採集させること(転地養蜂)も行われた<ref name="清水2003-12"/>。[[ギリシア神話]]には養蜂の神[[アリスタイオス]]が登場する<ref>[[#原1988|原1988]]、84頁。</ref>。 |
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養蜂は、閉鎖空間の中に巣を作るというミツバチの習性を利用し、内側をくり抜いた丸太や土管、わら縄製の[[スケップ]]、木製の桶などを用いて行われる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、16頁。</ref>。かつては巣を切り取り、押しつぶして蜜を搾り取る方法が採用されていたが、これはミツバチに大きなダメージを与えるものであった<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、38頁。</ref>。現代的な養蜂では木製の枠の中に巣を作らせ、蜜が貯まると[[遠心分離器]]にかける方法が採用されている<ref name="渡辺2003-39">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、39頁。</ref>。遠心分離器の活用によってミツバチ一群あたりの蜂蜜の採集量はおよそ5倍ないし10倍に増加した<ref name="渡辺2003-39"/>。 |
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採集した蜂蜜には微量の花粉や巣の破片が含まれている。市場に流通している蜂蜜の多くは、それらをろ過した後で容器に詰められている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、41-42頁。</ref>。ただしろ過には限界があり、若干残留する<ref>[[#原1988|原1988]]、167-168頁。</ref>。 |
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== 成分と性質 == |
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=== 成分 === |
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蜂蜜は約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、微量の[[有効成分]]([[ビタミン]]{{#tag:ref|[[ビタミンB1]]、[[ビタミンB2]]、[[ビタミンB6]]、[[ビタミンC]]、[[ビタミンK]]、[[ニコチン酸]]、[[パントテン酸]]、[[葉酸]]、[[ピオチン]]、[[コリン (栄養素)|コリン]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、102-107頁。</ref>。|group="†"}}、[[ミネラル]]{{#tag:ref|[[カルシウム]]、[[マンガン]]、[[カリウム]]、[[ナトリウム]]、[[マグネシウム]]、[[鉄]]、[[銅]]、[[硫黄]]、[[塩素]]、[[リン]]、[[ケイ素]]、[[ケイ酸]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、108頁。</ref><ref name="清水2003-29"/>。|group="†"}}、[[アミノ酸]]{{#tag:ref|[[プロリン]]、[[グルタミン酸]]、[[アラニン]]、[[ロイシン]]、[[イソロイシン]]など<ref name="清水2003-29"/>。|group="†"}}、[[有機酸]]{{#tag:ref|[[グルコン酸]]、[[コハク酸]]、[[酒石酸]]、[[酢酸]]、[[酪酸]]、[[シュウ酸]]、[[乳酸]]など10種類<ref>[[#清水2003|清水2003]]、29-30頁。</ref>。|group="†"}}、[[酵素]]{{#tag:ref|[[グルコースオキシターゼ]]、[[アミラーゼ]]、[[カタラーゼ]]<ref name="清水2003-30">[[#清水2003|清水2003]]、30頁。</ref>、[[インベルターゼ]]<ref name="清水2003-30"/><ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、93頁。</ref>、[[ジアスターゼ]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、94頁。</ref>など。|group="†"}}、[[色素]]{{#tag:ref|[[クロロフィル]]、[[カロテノイド]]、[[メラノイジン]]<ref name="清水2003-30"/>。|group="†"}}、香気物質{{#tag:ref|[[酢酸エチル]]、[[酢酸]]、1-フェニールアルコールなど約50種類。一般に、色が濃いものほど香気が強い<ref name="清水2003-30"/>。|group="†"}})も含まれる<ref name="清水2003-28-31"/>。有効成分が蜂蜜の中で果たす働きについては未解明な点も多い<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、84頁。</ref>。ビタミン、ミネラル、アミノ酸の多くは花粉に由来する<ref name="清水2003-29"/>。 |
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糖分のほとんどは[[グルコース]](ブドウ糖)と[[フルクトース]](果糖)<ref name="清水2003-28">[[#清水2003|清水2003]]、28頁。</ref>で、少量の[[オリゴ糖]]<ref name="清水2003-28"/>と[[スクロース]](ショ糖)<ref name="清水2003-28"/><ref name="渡辺2003-90-91">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、90-91頁。</ref>、さらに[[デキストリン]]も含まれる<ref name="渡辺2003-91-92">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、91-92頁。</ref>。 |
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グルコースとフルクトースが主成分であることから、蜂蜜は消化の必要なしに、手早くエネルギーを得ることができる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、31頁。</ref>。グルコースとフルクトースの比率を比較すると、フルクトースの方が若干多い傾向にある<ref>[[#清水2003|清水2003]]、54頁。</ref><ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、88頁。</ref>。グルコースとフルクトースはともに[[単糖]]であり、摂取後体内でそれ以上消化・分解する必要がなく、短時間で体内に吸収される<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、6-7頁。</ref>。さらにフルクトースの吸収速度がグルコースのおよそ半分であることから、吸収によって血糖濃度が急激に変動することはない<ref>[[#原1988|原1988]]、23頁。</ref>。 |
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スクロースは蜜蜂に採集される花の蜜の主成分であり、巣の中で蜂蜜に転化しなかったものである<ref name="渡辺2003-90-91"/>。標準的な蜂蜜に占めるスクロースやデキストリンの割合はせいぜい1ないし3%まで、5%を超える蜂蜜については分解が十分に進んでいないか、純粋ではない、つまり蜂蜜以外のものが混入していることを疑う必要がある<ref name="渡辺2003-91-92"/>。デキストリンは、人工的に作られたグルコースや水飴に大量に含まれる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、157頁。</ref>。ただし甘露蜜([[#甘露蜜|後述]])は一般にデキストリンが10%前後前後含まれる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、92頁。</ref>。 |
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ミネラルの一つである[[鉄]]には[[タンニン]]と化学反応を起こして黒くなるという性質がある。そのため、紅茶の中に蜂蜜を入れて黒く変色するかどうかで蜂蜜の純粋かどうかを判別することができるといわれることがある。しかし蜂蜜には金属を溶解させる性質があり、鉄を含む金属の容器に貯蔵された場合、蜂蜜に溶け込んだ容器の鉄分がタンニンと反応を起こすため、確実な方法とはいえない<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、153頁。</ref>。 |
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ビタミンのうち約9割は活性型で少量の摂取で効果が見込める上、きわめて安定しており果物と比べ貯蔵中の減少率が非常に少ない<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、101頁。</ref>。ビタミンの含有量は蜜源植物の種類によって大きく異なり、また脱臭脱色をすると大幅に、場合によってはほとんど全て失われてしまう<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、99-100頁。</ref>。 |
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酵素のうち[[インベルターゼ]](転化酵素)は、前述のようにスクロースをグルコースとフルクトースに分解する働きを持ち、ミツバチが採集した花の蜜を蜂蜜に変化させる役割を担う<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、34-35・93頁。</ref>スクロースの分解が十分に進んでいない蜂蜜を採集した場合、インベルターゼの腹滝によって貯蔵中に分解が進む<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、93頁。</ref>。インベルターゼは熱によって機能を失う。そのため、分解が十分に進んでいない蜂蜜を加熱して水分を除去した場合、濃度を見ると標準的な蜂蜜だがショ糖の含有量が不自然に多い製品が出来上がってしまう<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、93-94頁。</ref>。[[グルコースオキシターゼ]]は、グルコースから有機酸([[グルコン酸]])を作り出す<ref name="清水2003-30">[[#清水2003|清水2003]]、30頁。</ref>。[[ジアスターゼ]]は[[デンプン]]をデキストリンや[[マルトース]](麦芽糖)に分解する働きをもつ。ドイツやオランダ、スイスの一部ではジアスターゼの含有量が少ない蜂蜜を、人為的な加工がされている可能性があるとして低く評価する傾向がある。しかしジアスターゼの含有量は蜜源植物の種類によって異なる面もあり、さらに長期間貯蔵中すると減少する<ref name="渡辺2003-94-95">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、94-95頁。</ref>。アメリカの専門家の多くはジアスターゼの含有量に基づく商品価値の査定に否定的である<ref name="渡辺2003-94-95"/>。 |
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=== 性質 === |
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==== 結晶化 ==== |
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[[ファイル:Cristallizzazione del miele IMG 0371.JPG|thumb|150px|結晶が沈殿した蜂蜜]] |
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蜂蜜には低温中で粒状の結晶ができ白く固まる性質があるが、これはグルコースの性質によるものである<ref>[[#清水2003|清水2003]]、28-29・58-59頁。</ref><ref>[[#清水2003|清水2003]]、78頁。</ref>。ただし低温であればあるほど結晶化しやすいというわけではなく、結晶化しやすいのは[[摂氏]]5度ないし14度弱であり、摂氏マイナス18度弱以下になるとほとんど結晶化しなくなるといわれている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、80頁。</ref>。グルコースを多く含む蜂蜜ほど早く結晶化し<ref name="清水2003-29">[[#清水2003|清水2003]]、29頁。</ref>、グルコースの含有量が少なくフルクトースを多く含む蜂蜜は結晶化しにくい<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、78頁。</ref>。また、結晶化が早いと結晶のきめが細かくなる傾向がある<ref>[[#清水2003|清水2003]]、59頁。</ref><ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、81頁。</ref>。どのように結晶化していくかは、蜂蜜の比重によって異なる。比重の軽い蜂蜜の場合、液体状の蜂蜜より比重の大きい結晶が底に沈殿するため、底の方から結晶化するかのような印象を与える。比重の重い蜂蜜の場合、液体状の蜂蜜と結晶の比重の差がほとんど同じであるため、蜂蜜全体が結晶化していく<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、80-81頁。</ref>。加熱することで結晶は溶けるが、加熱し過ぎると色が濃くなったり風味が若干変化するなどの影響が生じる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、59-60頁。</ref>。結晶をした蜂蜜は再び結晶しにくいが、溶け残った結晶があるとそれを核として再び結晶化が進行する<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、82頁。</ref>。結晶ができない蜂蜜は純粋ではないといわれることがある。これは多くの蜂蜜について妥当な判別法であるが、アカシアを蜜源とするものなど一部には純粋であってもなかなか結晶できない蜂蜜もある<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、154頁。</ref>。結晶を見て蜂蜜に砂糖が混入していると勘違いされることがある<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、78頁。</ref>。 |
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==== 水素イオン指数 ==== |
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蜂蜜の[[水素イオン指数]]は3.2ないし4.9と弱酸性であるが、これは有機酸を含むためである<ref>[[#清水2003|清水2003]]、29-30頁。</ref>。しかしながら、食品が身体に与える影響の観点からは、蜂蜜は[[酸性食品とアルカリ性食品|アルカリ性食品]]である。これは蜂蜜に含まれるカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムがアルカリ性を示すミネラルであり、さらに有機酸が体液をアルカリ性に変える働きをもつからである<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、16-17頁。</ref>。水素イオン指数は弱酸性であるが、蜂蜜を摂取する際には酸味が感じられない傾向にある。これはグルコースおよびフルクトースの甘みが強く、かつ有機酸の7割を占めるグルコン酸の酸味がまろやかであるためである<ref>[[#清水2003|清水2003]]、29-30頁。</ref>。 |
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==== カロリー ==== |
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蜂蜜の標準カロリーは、100[[グラム]]あたり約294キロカロリー<ref>[[#清水2003|清水2003]]、31頁(『四訂日本食品成分表』を根拠として挙げている。)。</ref>、または356キロカロリー<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、98頁。Huber Mackeyによる調査結果。</ref>で、卵の約2.5倍、牛乳の約6倍に相当する<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、98頁。</ref>。 |
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==== 甘味度 ==== |
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蜂蜜の甘味度は、採集された花の種類によって若干差があるものの、同重量のスクロースとほぼ同じとされる<ref name="清水2003-54">[[#清水2003|清水2003]]、54頁。</ref>。蜂蜜はフルクトースを多く含むが、フルクトースには甘味度が低温で高く、高温で低くなるという特徴がある<ref name="清水2003-54"/>。 |
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==== 風味 ==== |
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蜂蜜は甘さとともに、独特の風味を持つ。これは蜂蜜に含まれるビタミン、ミネラル、アミノ酸、有機酸、酵素などの微量成分に由来する。風味はミツバチが蜜を採集した花の種類によっても異なる<ref name="清水2003-55">[[#清水2003|清水2003]]、55頁。</ref>。 |
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==== 浸透圧 ==== |
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蜂蜜は浸透性が高いことで知られるが、これはグルコースとフルクトースの浸透性がともに高いからである<ref name="清水2003-55"/>。 |
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== 利用法 == |
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=== 食用 === |
=== 食用 === |
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[[ファイル:Med u sacu karlovic1.jpg|thumb|巣ごと容器に入れられた蜂蜜(単蜜)]] |
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もっとも日常的に親しまれる利用法は食用である。[[スプレッド]]として[[パン]]や[[ホットケーキ]]に塗って食べるほか[[リコッタ]]などの軽い[[チーズ]]、あるいは[[ヨーグルト]]などの[[乳製品]]に添えることがある。 |
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[[ファイル:Pa amb sobrassada i mel.jpg|thumb|{{仮リンク|ソブラサーダ|en|Sobrassada}}と蜂蜜を乗せたパン料理]] |
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蜂蜜と[[人類]]の関わりは古く、英語には「蜂蜜の歴史は人類の歴史」ということわざがある<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、20頁。</ref>。蜂蜜は人類が初めて使用した甘味料といわれている<ref>[[#清水2003|清水2003]]、53頁。</ref>。[[イングランド]]南部では、紀元前2500年頃に壺型の土器に蜂蜜が入れられていた痕跡が発見されている<ref>[[#マン・ジョーンズ(編)2002|マン・ジョーンズ(編)2002]]、1頁。</ref>。 |
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人類は当初、巣房(ミツバチの巣を構成する六角形の小部屋)ごと食べる形{{#tag:ref|巣ごと食べる蜂蜜を単蜜という<ref>[[#原1988|原1988]]、165頁。</ref>。|group="†"}}で蜂蜜を摂取した<ref>[[#清水2003|清水2003]]、7-8頁。</ref>。古代エジプトで蜂蜜は、[[イナゴマメ]]と並び主要な甘味料であった<ref>[[#原1988|原1988]]、97頁。</ref>。蜂蜜が人々の食生活に広く浸透し始めたのは古代ギリシャ時代のこと<ref name="渡辺2003-24">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、24頁。</ref>で、ギリシア神話には巣に入った蜂蜜が供される場面が登場する<ref>[[#清水2003|清水2003]]、8頁。</ref>。古代ギリシャでは多くの文芸作品、さらには[[プラトン]]、[[アリストテレス]]といった哲学者の著作にも蜂蜜が登場する。アリストテレスの記述をもとにした試算では、当時の[[アッティカ]]の自由市民1人あたりの消費量は20世紀後半の日本の国民1人あたりの消費量をはるかに上回っている<ref name="渡辺2003-24"/>。それに応じて養蜂も盛んに行われ、[[プルタルコス]]の『[[対比列伝]]』には、政治家[[ソロン]]が活躍した時代に養蜂場間の距離規制(300プース以上離さなくてはならない)に関する法律が制定されたという話題が登場する<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、24-25頁。</ref>。 |
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==== 調味料 ==== |
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紀元前15世紀、[[トトメス3世]]時代のエジプトの遺跡の壁画には、養蜂とともに蜂蜜入りのパン菓子を作る様子が描かれている<ref>[[#清水2003|清水2003]]、45-46頁。</ref>。約300年後の[[ラムセス3世]]の墓の壁画にも同様の絵が描かれており、菓子の種類が増えていることが読み取れる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、46頁。</ref>。 |
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エジプトのパン菓子はギリシャに伝わった<ref name="清水2003-48">[[#清水2003|清水2003]]、48頁。</ref>。古代[[アテナイ]]の喜劇作家[[アリストパネス]]の作品『[[アカルナイの人々]]』([[紀元前425年]]発表)の中にも蜂蜜入りのパンが登場する<ref>[[#清水2003|清水2003]]、46-47頁。</ref>。当時、ギリシャ産の蜂蜜を使って72種類のパン菓子が作られていたといわれる<ref name="清水2003-47">[[#清水2003|清水2003]]、47頁。</ref>。同時に、パンと菓子の分化も進んでいった<ref name="清水2003-47"/>。当時蜂蜜は大変高価で、[[キュレネ]]の遺跡からは土地の権利と引き換えに蜂蜜を手に入れた入植者について記述された碑文が出土している<ref name="清水2003-48"/>。製菓、製パンにおいて蜂蜜は、甘みを加えるだけでなく天然酵母の発酵を促進する機能も有している<ref name="清水2003-47"/>。その後、蜂蜜を使ったパンや菓子はローマ、さらにヨーロッパ全土へと広まった<ref name="清水2003-48"/>。古代ローマにおいて蜂蜜はパン以外の料理にも用いられた。ローマの美食家[[マルクス・ガウィウス・アピキウス]]の著書『アピキウスの料理書』に収録されているレシピは西洋料理の起源とされるが、500点中170点ほどが蜂蜜を使用した料理に関するものである<ref>[[#清水2003|清水2003]]、50-52頁。</ref>。 |
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東洋においては中国の[[戦国時代 (中国)|戦国時代]]、[[屈原]]による[[楚辞]]『招魂』の中に「粔籹蜜餌」という名の蜂蜜を用いた菓子が登場する<ref>[[#清水2003|清水2003]]、48-49頁。</ref>。「粔籹」は餅米粉と小麦粉、蜂蜜を混ぜて揚げた菓子を指し、「餌」[[キビ]]を臼でついて作った餅を指すことから、これはきび団子風の餅に蜂蜜をかけたもの、または餅に蜂蜜を混ぜて作ったものと推測される<ref name="清水2003-49">[[#清水2003|清水2003]]、49頁。</ref>。「粔籹」という語は紀元前2世紀の墳墓、[[馬王堆漢墓]]の副葬品の竹簡にも登場する<ref name="清水2003-49"/>。「粔籹」は日本にも伝わり、平安時代中期発行の『[[和名類聚抄]]』に登場する。ただしここでは製法について「蜜と米を和し煮詰めて作る」と紹介されており、内容が変化している。ちなみに『和名類聚抄』において本来の「粔籹」は、「環餅」(まがり)として紹介されている<ref name="清水2003-49"/>。 |
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魚料理に用いると、魚の臭みを減らす働きをする。これは蜂蜜に含まれる酸が魚の臭みの原因である[[アミン]]の揮発性をなくすためである<ref name="清水2003-56">[[#清水2003|清水2003]]、56頁。</ref>。煮魚や照り焼きを作る際に味噌や醤油に蜂蜜を混ぜると、香りの良さが向上する。これは蜂蜜の香り自体が魚の臭いを覆うだけでなく、蜂蜜に含まれるグルコースとフルクトースが魚のタンパク質や味噌・醤油のアミノ酸とアミノカルボニル反応と呼ばれる反応を起こし、それによって生じた香り成分がアミンと結合し、魚臭さを打ち消すことによる<ref name="清水2003-56"/>。 |
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肉料理に用いると、浸透性の高さによって肉の組織に浸透し、過熱による肉の収縮・硬化を防ぐ。また、蜂蜜に含まれる有機酸は肉の保水性を高め、肉を軟化させる。さらに蜂蜜に含まれるグルコースとフルクトースは熱によって短時間でカラメル化するため、肉の表面が固められ、内部に水分やうまみを閉じ込めることができる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、57頁。</ref>。 |
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炊飯の際に蜂蜜を加えると、グルコースとフルクトースが米の内部に浸透し保水性を高め、さらに加熱されたアミラーゼが米に含まれるデンプンをブドウ糖に転化することで味を高める効果をもたらす<ref>[[#清水2003|清水2003]]、57-58頁。</ref>。 |
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その他、調味料としての蜂蜜はリンゴ、レンコウ、ゴボウなどの褐色変化を防ぐ、イースト菌の発酵を促進するといった効果をもたらす<ref>[[#清水2003|清水2003]]、58頁。</ref>。 |
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==== 蜂蜜酒 ==== |
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{{main|蜂蜜酒}} |
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[[ファイル:Met Flasche und Glas.jpg|thumb|170px|蜂蜜酒]] |
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蜂蜜に蜂蜜と水が混ざった液体(蜂蜜水)の糖分が発酵すると、アルコールへと変化する。その結果出来上がるのが[[蜂蜜酒]]で、人類最古の酒とされる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、9頁。</ref>。蜂蜜は発酵しやすく、水で割って温かいところに置くだけで蜂蜜酒を作ることができる<ref>[[#原1988|原1988]]、91頁。</ref>。蜂蜜酒は古代のヨーロッパ、とりわけ北欧で愛飲され、人々の暮しと密接に関わっていた<ref name="清水2003-10">[[#清水2003|清水2003]]、10頁。</ref>。北欧神話には蜂蜜酒が度々登場する<ref>[[#原1988|原1988]]、92頁。</ref>。古代ギリシャ人は[[ワイン]]を飲むようになる前は蜂蜜酒を愛飲しており、ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神[[ディオニューソス]]はもとは蜜酒の神であったといわれている<ref name="渡辺2003-2">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、2頁。</ref>。ローマ時代には各家庭が常備薬として蜜酒を置いた<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、25頁。</ref>。「[[ハネムーン]]」という言葉は、夫婦が新婚の1か月間を蜂蜜酒を飲みながら過ごすという古代ゲルマン民族の風習が起源であるともいわれている<ref name="清水2003-10"/><ref name="渡辺2003-2"/><ref name="原1988-93">[[#原1988|原1988]]、93頁。</ref>{{#tag:ref|これとは別に、ムーンは月を指し、「蜂蜜のように甘い夫婦の愛情も月のように欠けていく」という意味だとする説もある<ref name="原1988-93"/>。|group="†"}}。ビールやワインの登場後も蜂蜜酒はヨーロッパにおいて[[地酒]]として愛飲された<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、3頁。</ref>。 |
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古代ローマの文献には次のような蜂蜜酒の製造法が記録されている。 |
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重要な製菓材料であり、チョコレート、キャンディー、カステラ等の製造にも用いられる。また、[[照焼き]]、[[煮物]]などで甘味とともに色ツヤを良くするためにも使われる。そのほか、保存性の高さを利用した蜂蜜漬けなどがある。 |
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{{Quotation|酒は水とハチ蜜だけでもつくれる。そのためには[[天水]]を5年間貯えておくのがよいとされている。もっと練達の人々は、降って間もない雨水を用いる。すなわち、それを3分の1量に煮詰め、古いハチ蜜1に水3の割合で加え、その混合物を[[シリウス|シリウス星]]が昇った後、40日間[[太陽光|天日]]に曝しておく。|[[#清水2003|清水2003]]、9-10頁。}} |
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[[砂糖]]の替わりに[[甘味料]]として、[[コーヒー]]や[[紅茶]]、[[ジュース]]等の[[飲み物]]にも用いる。蜂蜜の主成分である果糖は低温では[[甘味]]を感じやすいが、高温では感じにくくなる。温かい飲み物に蜂蜜を使う場合は、量が多くなりがちなので注意が必要である。[[紅茶]]にハチミツを入れると黒く変色してしまう。これは紅茶に含まれる[[タンニン]]とハチミツに含まれる[[鉄|鉄分]]が結合し、タンニン鉄が生成されるためである。 |
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蜂蜜酒の発酵について人類は当初、蜂蜜に含まれる野生酵母に頼っていたが、発酵の早さや発酵の結果得られる風味を調整する技法を身につけていった<ref name="清水2003-10"/>。 |
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[[大韓民国|韓国]]では[[ユズ|柚子]]を蜂蜜、[[砂糖]]と煮込んで[[マーマレード]]状にしたものに湯を注して飲む「ユジャ(柚子)茶」などの[[韓国伝統茶|伝統茶]]があるほか、蜂蜜そのものを湯に溶かして「ボルクル(蜂蜜)茶」(「クル(蜜)茶」とも)と称して飲用する。また水に溶いたものは「クル(蜜)ムル(水)」といい、特に[[酒|酒類]]を飲みすぎた後に適した飲料だとされている。 |
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[[オラウス・マグヌス]]の著書『[[北方民族文化誌]]』には、中世の北欧における、「生ビール風蜂蜜酒」というべき蜂蜜酒の製法として次のようなものが記されている。 |
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適度な濃度に薄めたものを[[発酵]]させ、[[蜂蜜酒]]を作る。[[ヨーロッパ]]や[[アメリカ合衆国|アメリカ]]ではハニーワインあるいは[[ミード]]({{Lang-en-short|[[:en:Mead|Mead]]}})と呼ばれ、新婚家庭で新婦が作り新郎に飲ませる習慣があった([[新婚旅行|ハネムーン]]の語源という)。[[エチオピア]]ではテジといい、伝統的に作られている。 |
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{{Quotation|上等のハチミツ1に対し水4を用意する。鍋に半量の水を取ってハチミツを混ぜ入れ、[[リンネル]]をかぶせた杓子で泡を少しずつ除きながら煮立てる。次に別の鍋に残りの水を入れ、リンネル袋に入れた[[ホップ]]の花を煮立て、半分量まで煮詰めて、苦みを出す。木製の容器に両方を移して混合して厚い布で覆いをし、ぬるくなってからビールの沈殿物あるいはパン種を加える。翌日この混合液をリンネルの布で漉して別の容器に移し、蓋をして保存する。8日目、あるいは緊急の場合にはそれよりも以前に飲んでも大丈夫である。しかしその飲み物は古くなればなるほど純粋でうまく体にも良いものになる。|[[#清水2003|清水2003]]、9-10頁。}} |
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[[アフリカ]]中央部の[[コンゴ民主共和国]]北東部の[[熱帯雨林]](イトゥリの森)に暮らすムブティ族([[ピグミー]])は、採取可能な季節に蜂蜜を[[主食]]としている。ムブティ族は、小形の鹿などを長さ数百mの網で捕捉する[[狩猟]][[民族]]である。しかし、5月から6月を中心にほぼ蜂蜜だけを摂る<ref>小川『世界の食文化11 アフリカ』{{ref harvard |文献(小川)|[文献(小川)]|^}}のp.265 (ムブティ族は特定の季節に)「日々の食料のほぼ七割(重量にして)ほどもが蜂蜜で占められる」</ref>。 |
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=== 薬用 === |
=== 薬用 === |
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{{Medical}} |
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殺菌、消炎作用があり創傷の際の[[消毒]]に使える他、[[医薬品]]として[[口内炎]]の治療などに使われる。[[薬局方|日本薬局方]]に医薬品として記載されている。ただし砂糖水などの甘味料で水増ししたものにはこれらの薬効は薄いとされる。[[漢方薬]]では[[生薬]]の粉末を蜂蜜で練って[[丸剤]](丸薬)をつくる。八味丸(別名:[[八味地黄丸]]、桂茯腎気丸)や桂枝茯苓丸といった方剤がこの方法で造られる{{ref harvard |文献(大塚)|[文献(大塚)]|^}}。また[[甘草]]や[[キバナオウギ|黄耆]]などの生薬を蜂蜜とともに炒め、薬効を変化させることも行われている。 |
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蜂蜜については人類の長年にわたる経験をもとに、古来様々な薬効が謳われてきた<ref name="渡辺2003-114">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、114頁。</ref>。[[旧約聖書]]には、「心地良い言葉は、蜂蜜のように魂に甘く、身体を健やかにする」ということわざが登場する。この言葉から、人類が早くから蜂蜜の健康上の効能について認識していたことがうかがえる<ref name="清水2003-2"/>。 |
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古代エジプトの医学書[[エーベルス・パピルス]]および[[エドウィン・スミス・パピルス]]には内用薬{{#tag:ref|エーベルス・パピルスからは、蜂蜜が[[瀉下薬]]、[[駆虫薬]]として活用されていたことが読み取れる。渡辺孝は、現代においてもあまり知られていない蜂蜜の駆虫作用が紀元前1600年代に知られていたことは注目も値すると述べている<ref name="渡辺2003-23">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、23頁。</ref>。|group="†"}}および外用薬([[軟膏剤]]、[[湿布薬]]<ref>[[#清水2003|清水2003]]、24頁。</ref>、[[坐薬]]<ref>[[#原1988|原1988]]、114頁。</ref>)への蜂蜜の活用が描かれている<ref>[[#清水2003|清水2003]]、24-25頁。</ref>。『[[旧約聖書]]』の「サムエル記・上」には疲労と空腹により目のかすみを覚えた[[ヨナタン]]が蜂蜜を食べて回復する逸話が登場する<ref>[[#清水2003|清水2003]]、25頁。</ref>。 |
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=== 工芸材料 === |
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蜂の巣からハチミツを搾り取った後に残る蜂の巣の主材を、[[蜜蝋]](みつろう)という。働き蜂は体内から蜜蝋を分泌し、巣作りをする。[[蝋燭]]、蝋型、[[塗料]]などの原料に利用される。 |
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古代ギリシャでは医学者の[[ヒポクラテス]]が[[炎症]]や[[潰瘍]]、[[ニキビ|吹き出物]]などに対する蜂蜜の治癒効果を称賛している<ref>[[#マン・ジョーンズ(編)2002|マン・ジョーンズ(編)2002]]、4頁。</ref>。古代ローマの皇帝[[ネロ]]の侍医[[アンドロマコス]]は、蜂蜜を使った膏薬テリアカを考案した。テリアカは[[狂犬病]]に罹った犬や毒蛇に噛まれた際の、さらには[[ペスト]]の治療薬として用いられた<ref>[[#原1988|原1988]]、122-123頁。</ref>。テリアカの存在は[[奈良時代]]に日本へ伝えられ、江戸時代になってオランダ人によって現物が持ち込まれた<ref>[[#原1988|原1988]]、123-124頁。</ref>。 |
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== 栄養価 == |
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おおよそ糖質が8割を占め2割は水分である。ミネラルやビタミン等を豊富に含む。 |
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中国の本草書『[[神農本草経]]』(成立は[[後漢]]から[[三国時代 (中国)|三国時代]]の頃)には「石蜜」と呼ばれる野生の蜂蜜の効用について、「心腹の邪気による病を治し、驚きやすい神経不安の病やてんかんの発作をしずめる。五臓の心臓・肝臓・肺臓・腎臓・脾臓を安らかにし、諸不足に気を益し、中を補い、痛みを止め、解毒し多くの病を除き、あらゆる薬とよく調和する。これを長く服用すれば、志を強くし、身体の動きが軽くなり、飢えることもなく、老いることもない」と記されており<ref>[[#清水2003|清水2003]]、25-26頁。</ref>、中国最古の処方集である『[[五十二病方]]』([[戦国時代_(中国)|戦国時代]])には蜂蜜を用いた利尿剤の処方が記されている<ref>[[#清水2003|清水2003]]、26頁。</ref>。明代の薬学書『本草綱目』には「十二臓腑ノ病ニ宜シカラズトイフモノナシ」と、あらゆる疾病に対し有効な万能薬と記述されている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、30頁。</ref>。同書には[[張仲景]]による医学書『[[傷寒論]]』を引用する形で、蜂蜜を使った外用薬(坐薬)の作り方も登場する<ref>[[#原1988|原1988]]、113-114頁。</ref>。 |
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== 保存法 == |
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* 蜂蜜は半永久的に保存が可能である。販売用の商品では[[賞味期限]]が表示されていることがあるが、期限切れであっても味・ビンともにほとんど影響はない。ただし長期間保存すると[[結晶]]した蜂蜜が沈殿する。結晶化した蜂蜜も使用に影響はないが、やや硬い。結晶化した蜂蜜は[[湯煎]]で温めると溶かすことができる。湯煎の時はビンのふたを開けたまま行う。密閉したまま湯煎するとビンが破裂する恐れがある。 |
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日本では平安時代の医学書『[[大同類聚方]]』に「須波知乃阿免」、すなわち「巣蜂の甘い味」として蜂蜜が登場している<ref>[[#清水2003|清水2003]]、27頁。</ref>。 |
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== 品質と安全性 == |
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=== 品質 === |
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日本では蜂蜜の品質に関して情報公開、消費者保護、公正競争の確保などを目的として、「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)が定められている。 |
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[[漢方薬]]では[[生薬]]の粉末を蜂蜜で練って[[丸剤]](丸薬)をつくる。例として[[八味地黄丸]]がある<ref>[[#原1988|原1988]]、118-119頁。</ref><ref>[[#大塚1956|大塚1956]]</ref>。江戸時代の医師[[栗本昌蔵]]は、著書の中で丸薬を作る際の蜂蜜の使い方について解説している<ref>[[#原1988|原1988]]、120頁。</ref>。 |
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「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」では、「はちみつ類」として、'''はちみつ'''、'''精製はちみつ'''、'''加糖はちみつ'''、'''巣はちみつ'''、'''巣はちみつ入りはちみつ'''の5種類が定められている。 |
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; はちみつ |
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: みつばちが植物の花みつを採集し、巣房に貯え熟成した天然の甘味物質であって、別表に定める性状を有し、別表に定める組成基準に適合したもの<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)第2条(1)の定義</ref> |
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: 「はちみつ」には、精製はちみつ又はローヤルゼリー、花粉、香料、果汁若しくはビタミンを加えたものを含む<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)第2条(6)</ref> 。ただし、精製はちみつを使用したもの又は添加物を含むものについては、「'''純粋はちみつ'''」など「純粋」又は「Pure」の文言を表示に用いることができない<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約施行規則」第3条</ref> |
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; 精製はちみつ |
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: はちみつから臭い、色等を取り除いたものであって、別表に定める組成基準に適合したもの<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)第2条(2)の定義</ref> |
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: [[2002年]]10月、公正取引委員会は全国はちみつ公正取引協議会からの申請により「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」を変更し、従来「脱臭・脱色はちみつ」と呼んでいたものを「はちみつから臭い、色等を取り除いたものを『精製はちみつ』とする」と新たに定義づけた。 |
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; 加糖はちみつ |
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: はちみつに異性化液糖その他の糖類を加えたものであって、はちみつの含有量が重量百分比で60パーセント以上のもの<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)第2条(3)の定義</ref><ref>{{PDFlink|[http://www.jfftc.org/cgi-bin/data/bunsyo/A-6.pdf はちみつ類の表示に関する公正競争規約 公正競争規約施行規則]}} 全国公正取引協議会連合会</ref> |
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: なお、国際基準では加糖を一切認めていないといわれる。 |
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; 巣はちみつ |
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: 新しく作られて幼虫のいない巣房にみつばちによって貯えられたはちみつで、巣全体又は一部を封入したまま販売されるもの<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)第2条(4)の定義</ref> |
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; 巣はちみつ入りはちみつ |
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: はちみつに巣はちみつを加えたもの<ref>「はちみつ類の表示に関する公正競争規約」(昭和44年11月13日公正取引委員会告示第56号)第2条(5)の定義</ref> |
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==== 薬効とその科学的根拠 ==== |
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日本で蜂蜜として取引される商品の中には異性化糖、砂糖水などの甘味料が含まれる商品が存在することがある |
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古来謳われてきた薬効について科学的な検証を行ったところ、ある程度の信憑性が確認されている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、114頁。</ref>。 |
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<ref>[http://www.honeykoutori.or.jp/index.html 全国はちみつ公正取引協議会のWebサイト]のトップ・ページにある「平成18年度定期検査において異性化液糖の混入等が疑われた13社に対する追加調査報告について」(平成19年8月28日)より [[2007年]][[12月13日]]閲覧</ref>。 |
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(「純粋はちみつ」と銘打ってあるものの中にもこの手の時に粗悪なものが存在する)。異性化糖は、花の少ない冬季の餌として蜂に与えた物が残って意図せず混入する場合と、収穫後の増量目的として意図的に混入される場合がある。これらの異性化糖や水分の人工的な混合については、現状の分析技術では人工甘味料として添加されている「[[異性化糖]]と蜂蜜の区別は困難」とする説<ref>[http://www.nougyou-shimbun.ne.jp/modules/bulletin5/article.php?storyid=419 「異性化糖とはちみつ、区別は困難 主成分同じ」] 掲載日:[[2008年]][[1月14日]] 日本農業新聞 閲覧:2008年[[1月29日]]</ref> |
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や、科学的な分析では混入の事実は判別可能であるが混入の比率までを正確に判定することはできないとする説<ref>{{PDFlink|[http://www.tamagawa.ac.jp/hsrc/contents/pages/news/HoneybeeSci_preview_honey2007.pdf ハチミツの真正評価と その問題点]}} 玉川大学 ミツバチ化学研究センター</ref> |
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があり、いずれにしても判定は困難である。 |
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ビタミン、ミネラルなどを添加した場合、[[食品衛生法]]により成分の表示が必要になる。 |
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蜂蜜は古来、外科的な治療に用いられてきた<ref>[[#清水2003|清水2003]]、31頁。</ref>。古代ローマの軍隊では蜂蜜に浸した包帯を使って傷の治療を行っていた<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、132頁。</ref>。蜂蜜には強い殺菌力ことが確認されており、[[サルモネラ|チフス菌]]は48時間以内に、[[サルモネラ|パラチフス菌]]は24時間、[[赤痢菌]]は10時間で死滅する<ref name="渡辺2003-135">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、135頁。</ref>。また、皮膚の移植片を清浄で希釈や加工のされていない蜂蜜の中に入れたところ、12週間保存することに成功したという報告がある<ref>[[#マン・ジョーンズ(編)2002|マン・ジョーンズ(編)2002]]、10頁。</ref>。蜂蜜の殺菌力の根拠についてカナダのロックヘッドは、浸透圧が高いことと、水素イオン指数が3.2ないし4.9で弱酸性であることを挙げている<ref name="渡辺2003-135"/>。蜂蜜の持つ高い糖分は細菌から水分を奪って増殖を抑える効果をもたらし{{#tag:ref|蜂蜜の吸水性は膿を吸い出す効果や、火傷が水ぶくれになるのを防ぐ効果ももたらす<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、133頁。</ref>。|group="†"}}<ref>[[#清水2003|清水2003]]、31・55頁。</ref>、3.2ないし4.9という水素イオン指数は細菌の繁殖に向いていない<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、136頁。</ref>。しかしながらポーランドのイズデブスカによって、蜂蜜に水を混ぜて濃度を10分の1に薄めても殺菌力を発揮することが確認され、ロックヘッドの主張と両立しないことが明らかとなった<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、135-136頁。</ref>。アメリカのベックは、皮膚のただれた箇所に蜂蜜を塗って包帯を巻くと[[リンパ]]が分泌され、それにより殺菌消毒の効果が得られると主張している<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、132-133頁。</ref>。前述のように蜂蜜に含まれる酵素グルコースオキシターゼは、グルコースから有機酸(グルコン酸)を作り出す<ref name="清水2003-30"/>が、その過程で生じる[[過酸化水素]]には殺菌作用がある<ref>[[#清水2003|清水2003]]、31-32・55-56頁。</ref>。人類は古くから蜂蜜がもつ殺菌力に気付いていたと考えられ<ref name="清水2003-56">[[#清水2003|清水2003]]、56頁。</ref>、防腐剤として活用した{{#tag:ref|ローマの美食家[[マルクス・ガウィウス・アピキウス]]の著書『アピキウスの料理書』には肉や野菜を蜂蜜につけて保存する方法について記されている<ref name="清水2003-56"/>。|group="†"}}{{#tag:ref|古代エジプトでは[[ミイラ]]を作る際の材料の一つとして用いられたとされる<ref>[[#原1988|原1988]]、124-125頁。</ref>。[[アレクサンドロス3世]]が[[バビロン]]で死亡すると、死体を蜂蜜に漬けてアレクサンドリアまで運ばれたと伝えられている<ref>[[#原1988|原1988]]、126-127頁。</ref>。|group="†"}}。 |
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=== 安全性 === |
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; [[ボツリヌス菌#ボツリヌス症|ボツリヌス症]](乳幼児ボツリヌス症) |
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: 蜂蜜中には[[ボツリヌス菌]]の胞子([[芽胞]])が含まれていることがある。蜂蜜中でボツリヌス菌が繁殖して[[毒素]]を作ることはなく、また通常蜂蜜中のボツリヌス菌は[[消化管]]内で[[胃酸]]により殺菌されたり[[腸内細菌|腸内細菌叢]]により[[繁殖]]を阻まれるため危険性はほとんどないとされているが消化器官・腸内細菌叢が未発達な[[乳児]]の場合、[[腸|腸管]]までボツリヌス菌が届いてしまうことがある。[[1987年]][[10月20日]]、[[厚生省]]から「一歳未満の乳児には与えてはいけない」旨の通達が出された。芽胞は高温高圧による[[滅菌]]処理(120℃で4分以上)の加熱で不活性化されるが、蜂蜜においては酵素が変質するのでこの処理は不向きである<ref name="r1">[http://www.honey-comb.jp/honeyknowledge.html 有限会社福島商事-蜂蜜の知識]</ref>。 |
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<!--(芽胞は高温に耐えるので[[オートクレーブ]]の様な高温高圧の滅菌処理でないと芽胞の除去は困難であるが、蜂蜜にこの処理を行うと変質の恐れがある{{要出典}})。--> |
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; アレルギー |
|||
: 特定の[[植物]]への[[アレルギー]]がある場合は、採取した植物が判明している商品の利用が望ましい。特に[[ソバ]]の花から採った蜂蜜は注意すべきである。 |
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; [[有毒植物]] |
|||
: [[トリカブト]]、[[レンゲツツジ]]の[[花粉]]や蜜は有毒である<ref>Sutlupinar, N. et al. 1993. Poisoning by toxic honey in Turkey. Arch. Toxicol . 67:148-50.</ref><ref name="niah">[http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/plants/pieris.html アセビ ‐写真で見る家畜の有毒植物と中毒。] 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所</ref>。 |
|||
: ツツジ科植物の有毒性は古くから知られ、紀元前4世紀のギリシャの軍人・著述家の[[クセノフォン]](Xenophon)は著書の中で兵士たちがツツジ属植物や[[ハナヒリノキ]](''Leucothoe grayana'')の蜜に由来する蜂蜜で中毒した様子を記録<ref>[http://www.drugsinfo.jp/2007/10/05-163400 「蓮華躑躅(レンゲツツジ)の毒性」] 医薬品情報21(2007年[[10月5日]])]</ref>。 |
|||
; [[添加物]] |
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: 日本では養蜂家が小規模なことや養蜂に適した環境が少ないこともあり、国産蜂蜜は[[輸入]]品にくらべ一般に高価である。輸入品に比べ品質が高く安全と思われているが実際には国産品から検出されてはいけないとされる[[抗生物質]]が検出されるなど、必ずしも外国産と比べ安全とは言いきれない。<!-- 2005年時点の1kg当り小売価格は、国産蜂蜜が4,000~6,000円。一方、中国からの輸入品は2,000円前後で販売されている。(追記した本人が出典を忘れてしまったためコメントアウト) -->日本養蜂はちみつ協会によると、国産蜂蜜の価格は1kgあたり1500円から4000円であるという<ref>日本養蜂はちみつ協会『[http://bee.lin.go.jp/hn/faq/index.html はちみつQ&A]』より「国産はちみつはいくらくらいしますか」</ref>。2002年には、中国産ハチミツから[[抗生物質]]である[[ストレプトマイシン]]が繰り返し検出された事例がある。 |
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蜂蜜は古来[[瀉下薬]]として用いられ<ref name="清水2003-32">[[#清水2003|清水2003]]、32頁。</ref><ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、22・116頁。</ref>、同時に[[下痢]]にも効くとされてきた<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、116頁。</ref>。蜂蜜に含まれるグルコン酸には腸内の[[ビフィズス菌]]を増やす効能があり、これが便秘に効く理由と考えられる<ref name="清水2003-32"/>。フランスの医学者ドマードは、悪性の下痢を発症し極度の[[栄養失調]]状態にある生後8か月の乳児に水と蜂蜜だけを8日間、続けてヤギの乳と水を1:2の割合で混ぜたものを与えたところ、健康状態を完全に回復させることに成功したと報告している。これは、蜂蜜のもつ殺菌作用によって腸内環境が改善されたためと考えられている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、117頁。</ref>。 |
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== 蜂蜜の種類 == |
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蜂蜜は蜜の元となる花([[蜜源植物]])の種類によって[[味]]、[[色]]、[[におい|香り]]、成分が大きく異なる。 |
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古代エジプトの医学書中には盲目の馬の目を塩を混ぜた蜂蜜で3日間洗ったところ目が見えるようになったという記述が登場する<ref name="渡辺2003-23"/>。また、[[マヤ文明]]では[[ハリナシバチ]]が作った蜂蜜を眼病の治療に用いていた<ref>[[#マン・ジョーンズ(編)2002|マン・ジョーンズ(編)2002]]、10-11頁。</ref>。その後、蜂蜜が[[白内障]]の治療に有効であることが科学的に明らかとなった<ref>[[#マン・ジョーンズ(編)2002|マン・ジョーンズ(編)2002]]、11頁。</ref>。 |
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; [[ゲンゲ|レンゲ]] |
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: 色が薄く香りも少なく癖のない味で、日本でよく好まれる。 |
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; [[ニセアカシア]] |
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: 色は薄い褐色で香りも少なく味に癖がなく、日本でも好まれる。一般にアカシアの蜂蜜として売られているものはニセアカシアの蜂蜜である。日本国内の生産量はニセアカシアの蜂蜜が最も多く、おおむね半分がニセアカシアのものである<ref name="YM2006">[http://chubu.yomiuri.co.jp/tokushu/saizensen/saizensen060820_1.htm ニセアカシア「要注意リスト」に 駆除の動き 養蜂業者に危機感 2006年8月20日 ]YOMIURI ONLINE(読売新聞) 閲覧 2010年1月9日</ref>。 |
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; [[ミカン]] |
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: 近年ミカンの受粉にミツバチをつかうミカン農家が増えたためミカン産地を中心に多く出回っている。柑橘系の香りがあり味も癖がない。日本国内での蜜源植物の作付け面積としてはミカンの蜂蜜が最も多く、次いで[[リンゴ]]であるが、蜂蜜の生産量とは比例しない<ref name="YM2006"/>。 |
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; [[カラスザンショウ]] |
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: さっぱりとした甘味で、ミントのような清涼感がある。 |
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; [[クローバー]] |
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: 世界で最も生産量が多い。強めの甘い香りがあるが、味はマイルド。 |
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; [[ソバ]] |
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: 黒砂糖に似た味がし、独特の香りがある。色は黒い。鉄分が多く貧血によいほか、[[ルチン]]を含んでおり[[高血圧]]の改善も期待できるとされる。ただし、アレルギーには注意すること。 |
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; [[クリ]] |
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: [[苦味]]とコク、強い香りがあり好き嫌いが別れる。色は黒い。ヨーロッパでは好まれる。 |
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; [[ラベンダー]] |
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: ラベンダー花その物の香りがある。寝る前に湯などに溶かして飲むと精神の沈静となる。 |
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; [[コーヒー]] |
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: 強い香りとコクがある。 |
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; [[w:en:Eucryphia lucida|レザーウッド]] |
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: [[オーストラリア]]の[[タスマニア島]]の世界自然遺産の森に自生する[[w:en:Eucryphia lucida|レザーウッド]]の花を蜜源とする。限られた少数の養蜂家が採取しており、コクのある甘みと清涼感が特徴である。 |
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; ハニーデュー |
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: [[アブラムシ]]などの分泌する[[甘露]]を蜜源とするもの。甘露分泌昆虫の吸う[[樹液]]に由来するとも言える。花蜜を蜜源としない、生成過程においてミツバチに加えて更に別の昆虫が介在するなど異色の蜂蜜である。風味も他の蜂蜜との違いがきわめて大きい。 |
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; ホワイトハニー |
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: 色は白く、[[ハワイ]]の植物のキアヴェから採取する。 |
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; 百花蜜(雑蜜) |
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: 複数種の蜜源植物から蜂が集めた蜜を商品化したもの。蜜源や採蜜時期によって品質にバラつきがある。 |
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; comb honey |
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: [[コムハニー]]は蜂蜜が含まれた巣をそのままパッケージしたものである。 |
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; [[マヌカ]] |
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ニュージーランド特産の蜂蜜で、[[マヌカハニー]]({{Lang-en-short|[[:en:Manuka honey|Manuka honey]]}})とよばれる。[[ピロリ菌]]駆除力、[[殺菌]]力を持ち、[[民間療法]]で、[[胃炎]]に対し、効果があることが報告されている<ref>{{cite journal |author= McGovern DP, Abbas SZ, Vivian G, Dalton HR. |title= Manuka honey against Helicobacter pylori. |journal= J R Soc Med |volume=92 |pages=439 |year=1999 |id=PMID 10656024}}</ref><ref>[http://www.watsonandson.net.nz/waikato.htm ワイカト大学生物化学研究所ハニー・リサーチ・センターの報告書(翻訳)]</ref>。 |
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整腸・美肌にも良い健康食品として知られている。 |
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欧米には「ハチミツが[[悪性腫瘍|ガン]]にきくという漠然とした"信仰"に近いもの」が根強く存在する<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、128頁。</ref>。1952年に西ドイツのアントンらが19000人あまりを対象に職業別の悪性腫瘍発症率を調べたところ、ほとんどの職業において1000人中2人の割合であったところ、養蜂業の従事者については1000人中0.36人の割合であった。この結果からは養蜂業従事者の生活習慣の中に悪性腫瘍を抑制する要因があることが読み取れるが、それを蜂蜜の摂取に求める見解がある<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、128-129頁。</ref>{{#tag:ref|ミツバチにさされることに求める見解もある<ref name="渡辺2003-129">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、129頁。</ref>。|group="†"}}。フランスのアヴァスらは、動物実験によってハチミツに悪性腫瘍を抑制する作用があることを確認している<ref name="渡辺2003-129"/>。また、前述のように蜂蜜には生成の過程でローヤルゼリーに含まれる物質が混入すると考えられている<ref name="渡辺2003-35-37">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、35-37頁。</ref>が、カナダのタウンゼンドらはローヤルゼリーの中に悪性腫瘍を抑制する物質(10ヒドロゲン酸)を発見している<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、129-130頁。</ref>。 |
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他に[[ナタネ]]、[[ビワ]]、[[ユリノキ]]、[[トチ]]、[[シナノキ]]などがある。また、[[商品]]化せずにそのまま蜂の餌にさせるものも含めれば蜜源は多岐にわたる。 |
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二日酔いには蜂蜜入りの冷たい水が有効であるとされる<ref name="清水2003-32"/>。蜂蜜に含まれるフルクトースは肝臓がもつアルコール分解機能を強化する効果をもち<ref name="清水2003-32"/>、さらにコリンやパントテン酸にも肝臓の機能を高める作用がある<ref name="渡辺2002-121">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、121頁。</ref>。デンマークの医師ラーセンは、泥酔者に蜂蜜を飲ませたところ、短時間で酔いから覚めたと報告している。また、ルーマニアのスタンリューは124人の肝臓病患者が蜂蜜を摂取することにより全快したと報告している<ref name="渡辺2002-121"/>。 |
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== 生産量 == |
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2002年の全世界の蜂蜜の生産量は132万トンである。全体の20.3%が中国で生産された<ref>FAOSTAT[http://faostat.fao.org/site/340/DesktopDefault.aspx?PageID=340]のWebページ</ref>。 |
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古代ローマの詩人[[オウィディウス]]は『恋愛術(恋の技法)』の中で、精力剤としてヒュメトス産の蜂蜜を挙げている。蜂蜜の精力増強作用について、19世紀の科学者は懐疑的であったが、20世紀に入りイタリアのセロナは0.9グラムの蜂蜜中に20国際単位の発情物質が含まれることと発表した<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、118-119頁。</ref>。 |
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# [[中華人民共和国|中国]] - 26.8万トン<ref>[http://bee.lin.go.jp/bee/tokei/04.html 社団法人 日本養蜂はちみつ協会『各種統計-世界の養蜂状況』]</ref> |
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# [[アメリカ合衆国|アメリカ]] - 18.8万トン |
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# [[アルゼンチン]] - 8.5万トン |
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# [[トルコ]] - 7.5万トン |
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# [[メキシコ]] - 5.9万トン |
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蜂蜜には血圧を下げる効能があるといわれてきた<ref name="渡辺2002-121"/>。蜂蜜にはカリウムが多く含まれるが、食塩を過剰に摂取した際にカリウムを摂取すると血圧を下げることができる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、122頁。</ref>。また、蜂蜜に含まれるコリンには高血圧の原因となる[[コレステロール]]を除去する効果がある<ref name="渡辺2002-121"/>。 |
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6位以下は順に[[ウクライナ]]、[[ロシア]]、[[インド]]、[[カナダ]]、[[スペイン]]である。日本の生産量は3000トン。これは[[イギリス]]、[[イスラエル]]、[[アフガニスタン]]、[[カメルーン]]各国の生産量と等しい。 |
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古代エジプトや中国の文献には、蜂蜜の駆虫作用に関する記述がみられ、[[甘草]]と小麦粉、蜂蜜から作った[[漢方薬]]「甘草粉蜜糖」は駆虫薬として知られる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、122頁。</ref>。{{和暦|1952}}に日本の[[岐阜県]][[岐阜市]]にある小学校で実験が行われ、蜂蜜を飲んだ小学生の便からは回虫の卵がなくなるという結果が得られた<ref name="渡辺2003-123">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、123頁。</ref>。蜂蜜に含まれるどの成分が駆虫作用をもたらすかについては明らかになっていない<ref name="渡辺2003-123"/>。 |
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日本の蜂蜜輸入量は4.5万トン。このうち90%を中華人民共和国、ついでアルゼンチンに依存している。 |
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その他に、鎮静作用<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、119-120頁。</ref>が認められ、咳止め<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、125-127頁。</ref>、[[神経痛]]および[[リウマチ]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、127-128頁。</ref>、[[消化性潰瘍]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、114-116頁。</ref>、[[糖尿病]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、130-132頁。</ref>に対する効能が謳われている。 |
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その後、2003年には世界生産が134万トン、2004年には135万トンとわずかに拡大し続けている。 |
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== |
=== 芳香剤 === |
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蜂蜜は古来、芳香剤として利用されてきた<ref name="原1988-171">[[#原1988|原1988]]、171頁。</ref>。古代エジプトには蜂蜜と[[没薬]]、[[松脂]]、[[ワイン]]に浸した[[ショウブ|菖蒲]]や[[シナモン]]を混ぜて作られた{{仮リンク|キフィー|en|Kyphi}}と呼ばれる[[煉香]]があった<ref name="原1988-171"/>。古代の中国にも蜂蜜を用いた煉香があった<ref name="原1988-171"/>。[[平安時代]]の日本にも蜂蜜を使った香があり、『[[源氏物語]]』「[[鈴虫]]」の冒頭には「荷葉の方をあはせたる名香、蜜をかくしほろろげて、たき匂はしたる」{{#tag:ref|国文学者の[[山岸徳平]]はこれを、「荷葉の香の仕方(方法)を、調合に用いた名香は、蜂蜜を目立たぬように少し加えて、ぼろぼろと脆くして焚いた匂いが」と訳している<ref name="渡辺2003-28">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、28頁。</ref>。|group="†"}}という記述が登場する<ref name="渡辺2003-28"/>。[[敦明親王|小一条院]]皇后の[[女房]]であった人物は、蜂蜜を用いた香には虫が湧くという記録を残している<ref name="原1988-172">[[#原1988|原1988]]、172頁。</ref>。香の中には飴のようになめて使うものもあり、服用を続けると顔を洗った水や抱いた子供にまで匂いが移ったとされる<ref name="原1988-172"/>。タバコの中には香りの調整に蜂蜜を使用しているものもある<ref>[[#原1988|原1988]]、172-173頁。</ref>。 |
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{{Main|養蜂}} |
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[[ギリシア神話]]によれば、人間に養蜂を教えたのは[[アリスタイオス]]である。蜂蜜と[[人類]]の関わりは古く、[[エバ・クレーン]]の研究によれば、1万年前にはすでに採蜜が始まっていた<ref>"The Archaeology of Beekeeping", Eva Crane(1983)</ref>。その証拠に[[スペイン]]の[[アラニア洞窟]]で発見された約1万年前の壁画に蜂の巣から蜜を取る女性の姿が描かれている<ref name="BCC2008">"{{PDFlink|[http://bycommonconsent.files.wordpress.com/2008/02/apiculture.pdf "A Brief Survey of Ancient Near Eastern Beekeeping]}}", Ronan James Head(2008年2月17日)閲覧2010年3月17日, "Evidence for apiculture in Mesopotamia is scarce.""One notable problem surrounds the Mesopotamian word for “honey.” Akkadian dišpu |
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(Sumerian làl) refers either to date syrup (Arabic dibs), or honey and it is difficult to know |
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which one is intended in a given passage."</ref>。[[メソポタミア文明]]の[[楔形文字]]にも蜂蜜に関することがらが記載され{{要検証|date=2010年3月}}<ref name="BCC2008">"{{PDFlink|[http://bycommonconsent.files.wordpress.com/2008/02/apiculture.pdf "A Brief Survey of Ancient Near Eastern Beekeeping]}}", Ronan James Head(2008年2月17日)閲覧2010年3月17日, "Evidence for apiculture in Mesopotamia is scarce.""One notable problem surrounds the Mesopotamian word for “honey.” Akkadian dišpu |
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(Sumerian làl) refers either to date syrup (Arabic dibs), or honey and it is difficult to know |
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which one is intended in a given passage."</ref>、[[古代エジプト]]の[[壁画]]に養蜂の様子がえがかれている<ref name="BCC2008">"{{PDFlink|[http://bycommonconsent.files.wordpress.com/2008/02/apiculture.pdf "A Brief Survey of Ancient Near Eastern Beekeeping]}}", Ronan James Head(2008年2月17日)閲覧2010年3月17日, "Evidence for apiculture in Mesopotamia is scarce.""One notable problem surrounds the Mesopotamian word for “honey.” Akkadian dišpu |
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(Sumerian làl) refers either to date syrup (Arabic dibs), or honey and it is difficult to know |
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which one is intended in a given passage."</ref>。[[中国]]でも古来より食されていたらしく、例えば[[袁術]]はその死の間際に蜂蜜入りの飲み物を所望したという話が伝わっている。蜂蜜はこのような[[歴史]]から世界最古の甘味料ともいわれている。 |
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=== 化粧品 === |
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[[古代ギリシア]]の[[哲学者]]・[[アリストテレス]]は著書『動物誌』にて、養蜂について記述している。そこではミツバチが集める蜜は花の分泌物ではなく、花の中にたまった露であると述べている。 |
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蜂蜜は、古代エジプト・ギリシャの時代から化粧品に用いられ、[[クレオパトラ7世]]は蜂蜜を用いて化粧をし<ref name="渡辺2003-134">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、134頁。</ref>、古代ローマの皇帝ネロの妻は蜂蜜とロバの乳を混ぜたローションを使っていたと伝えられている<ref name="原1988-169">[[#原1988|原1988]]、169頁。</ref>。蜂蜜を用いたもっとも有名な化粧品の一つとして、パックが挙げられる<ref name="渡辺2003-134"/>。蜂蜜の糖分には肌を整える働きがあり<ref name="渡辺2003-134"/>、ビタミンB1には血行をよくし、新陳代謝を高める作用がある<ref>[[#原1988|原1988]]、170-171頁。</ref>。 |
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== 蜂蜜の種類 == |
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[[旧約聖書]]では[[イスラエル人]]の約束の地・[[カナン]]が「乳と蜜の流れる場所」と描写されており、ハチミツは豊饒さのシンボルとして扱われている。 |
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{{See also|はちみつ類の表示に関する公正競争規約}} |
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=== 蜜源植物による分類 === |
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[[ファイル:ゲンゲ.jpg|thumb|200px|日本における代表的な蜜源植物である<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、55頁。</ref><ref>[[#清水2003|清水2003]]、37頁。</ref><ref>[[#角田1997|角田1997]]、127頁。</ref>レンゲ]] |
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蜜源となりうる花が複数ある場合、複数の花の蜜が混じった蜂蜜ができるのではないかと考えられがちである。しかしミツバチには一つの花から蜜を採集すると、可能な限り他の花の蜜を採集しないという性質がある(訪花の一定性)<ref name="渡辺2003-43">[[#渡辺2003|渡辺2003]]、43頁。</ref>。さらに蜜蜂には[[ミツバチのダンス]]と呼ばれる8の字に飛び回る行動によって仲間に蜜源を知らせる習性があるが、豊富な蜜源については激しく飛び回って知らせる一方、貧弱な蜜源についてはほとんど、時にはまったく教えようとしない<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、43-46頁。</ref>。このような理由から、現実には(厳密にはわずかな混入は避けられないが)ほぼ純粋に一つの花から蜜を採集して作られた蜂蜜を採集することが可能である<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、43・46頁。</ref>。蜂蜜は主要な蜜源によってレンゲ蜜、アカシア蜜などと分類され<ref>[[#清水2003|清水2003]]、35頁。</ref>、蜜源が複数ある場合には「百花蜜」と呼ばれる<ref>[[#清水2003|清水2003]]、42-43頁。</ref>。人間の手で蜜がブレンドされた場合も百花蜜という<ref>[[#清水2003|清水2003]]、43頁。</ref>。 |
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[[中世]]ヨーロッパでは照明用の[[蝋燭|ロウソク]]の原料である蜜蝋をとるために、[[修道院]]などで養蜂が盛んに行われた。 |
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蜂蜜の風味や色は、蜜源となった花の種類によって異なる。同じ種類の花から作られた蜂蜜でも地域によって(主に採蜜法の違いから{{#tag:ref|採蜜をこまめに行う地域では蜜源植物が一つであるといって差し支えない蜂蜜がとれるが、1年に1、2回しか採蜜しない地域では様々な蜜源の蜂蜜が混合し純粋性が損なわれる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、54頁。</ref>。|group="†"}})品質が異なる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、53-54頁。</ref>。国や地域によって好みが分かれる蜂蜜もあり、たとえばソバ蜜は日本で敬遠される一方、フランスでは[[ジンジャーブレッド]]の原料として重宝されている<ref>[[#清水2003|清水2003]]、36-42頁。</ref>。同様に[[シナノキ]]の蜂蜜はドイツやロシアでは最高級品とされるが、日本では[[ゲンゲ|レンゲ]]や[[アカシア]]、[[トチノキ]]、さらにはドイツではあまりに評価が低くミツバチの餌にされている[[ナタネ]]の蜂蜜よりも格が落ちる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、50-51頁。</ref>。養蜂家の渡辺孝は、香りの強い蜂蜜が日本では敬遠され、ヨーロッパでは好まれる傾向があると指摘する<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、51頁。</ref>。 |
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[[19世紀]]にいたるまでは蜂蜜を得るには蜂の巣を壊してコロニーを壊滅させ、巣板を取り出すしかなかった。[[1853年]]、[[アメリカ合衆国|アメリカ]]のラングストロス(L.L.Langstroth)は、可動式巣枠を備えた[[養蜂箱]]や蜜を絞るための遠心分離器を発明し、蜂蜜や蜜蝋の採取時にコロニーを崩壊させずに持続的にミツバチを飼育する技術である近代養蜂の開発に成功した。彼はこの成果を『巣とミツバチ』"The Hive and the Honey Bee"に著している。現在に至るまで養蜂の基本的な手法はラングストロスの方法と変化していない。 |
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なお、一部ではミツバチが採蜜のために訪れるとは考えにくい花([[クローバー]]など)や、開花時期の関係から採蜜が不可能な花([[ウメ]]など)の名前を冠する蜂蜜が販売されていることもあり、注意を要する<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、74-75頁。</ref>。 |
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日本における養蜂のはじまりは『大日本農史』によれば[[642年]]とされている。[[平安時代]]には、宮中への献上品の中に蜂蜜の記録がある。[[江戸時代]]には、巣箱を用いた養蜂などがはじまったとされる。日本における古典的な養蜂はニホンミツバチを使ったものであり、現在の一般的な[[セイヨウミツバチ]]によるそれとはやや異なる。現在も山間部ではニホンミツバチによる養蜂が行われている地域がある。[[明治]]時代に入り西洋種のミツバチが輸入され、近代的な養蜂器具が使われるようになり養蜂がさかんになる。<!-- 戦後、[[高度成長期]]に開発が進み[[農薬]]の使用が増えるなど養蜂に適した環境が少なくなり、(『養蜂の科学』のpp.152-154には日本国内における養蜂業者、蜂群、ハチミツ生産量などが掲載されているが高度成長期をはさんだ変化は見られない) -->現在、[[市場]]で幅を利かせる蜂蜜は中国などからの安価な輸入品と一部の国からの輸入や国産の高級蜂蜜に二極分化している。 |
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=== 蜂蜜の色による分類 === |
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== ミツバチ == |
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[[ファイル:A bewildering choice of honey^ - geograph.org.uk - 226304.jpg|thumb|さまざまな色の蜂蜜]] |
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{{Main|ミツバチ}} |
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アメリカ合衆国では、蜂蜜の色を基準にした分類法も存在する。ただし色が同じ蜂蜜の味が同じとは限らず、蜜源植物が同じであっても貯蔵される巣の状態によって色が異なる<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、54-55頁。</ref>。 |
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[[ファイル:European honey bee extracts nectar.jpg|right|thumb|セイヨウミツバチ]] |
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ミツバチ(ミツバチ科ミツバチ属)は世界に9種存在する。とくに[[セイヨウミツバチ]]は全世界で養蜂に使われ24の亜種が知られている。日本では[[ニホンミツバチ]]、[[セイヨウミツバチ]]、2種が養蜂に使われる。また、[[果菜|果菜類]]の[[受粉]]用に[[マルハナバチ]](ミツバチ科マルハナバチ属)が使われることもある。 |
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=== 物質の状態による分類 === |
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古くから使われていたニホンミツバチに比べより多くの蜜を採集するセイヨウミツバチが[[1877年]]に日本に導入された。セイヨウミツバチは繁殖力も旺盛なことから[[野生]]化しニホンミツバチを駆逐してしまうのではないかと言われた。実際養蜂のためにセイヨウミツバチを導入した[[北米]]では野生化している。しかし日本では天敵の[[スズメバチ#オオスズメバチ Vespa mandarinia japonica|オオスズメバチ]]の存在があり現在まで野生化していない。 |
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採集された蜂蜜は液体であるが、これを固体の状態にした蜂蜜も存在する。具体的には粉末にしたもの<ref>[[#原1988|原1988]]、149頁。</ref>、飴玉状のものがある<ref>[[#原1988|原1988]]、167頁。</ref>。 |
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=== 蜜 |
=== 甘露蜜 === |
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[[アブラムシ]]が分泌する甘い体液をミツバチが採集したものを甘露蜜という。これは厳密には蜂蜜の定義に当てはまらないものであるが、ドイツでモミなどの針葉樹に寄生するアブラムシに由来する甘露蜜がモミのハチミツ(''Tannenhonig'')として最高級品の扱いを受けるなど、ゲルマン諸国で人気が高い<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、75頁。</ref>。 |
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ミツバチは蜜源を見つけると仲間に[[ダンス]]で方向と距離を伝える。蜜を持ち帰った働きバチは貯蔵係のハチに蜜を渡すが、そのとき貯蔵係は糖度の高い蜜を優先して受け取り糖度の低い蜜を持ったハチは待たされる。このことによってよりよい蜜源へ働きバチを集中的に動員できる。 |
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{{Clear}} |
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== 安全性 == |
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[[ファイル:Clostridium_botulinum.jpg|thumb|180px|[[ボツリヌス菌]]。乳児が蜂蜜を摂取すると、乳児ボツリヌス症を発症することがある]] |
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[[ファイル:Honey_comb.jpg|thumb|right|蜂の巣(巣板)]] |
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小児科学者の[[詫摩武人]]は、臨床実験の結果、蜂蜜を与えられた乳幼児には砂糖を与えられた乳幼児と比べて発育がよく、下痢などの疾病の発症率が低下する、赤血球数および血色素量が増加するなど複数の好ましい現象が確認されたと報告している<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、137-138頁。</ref>。その他にも蜂蜜が乳幼児の発育の好ましい結果をもたらすという報告が多くされている<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、137頁。</ref>。ギリシア神話には、[[ゼウス]]<ref>[[#渡辺2003|渡辺2003]]、116-117頁。</ref><ref>[[#原1988|原1988]]、84頁。</ref>やその子[[ディオニューソス]]<ref>[[#清水2003|清水2003]]、33頁。</ref>が蜂蜜と羊の乳を与えられて育つ逸話が登場する。 |
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自然の状態では、ミツバチの巣は巣板と呼ばれる鉛直方向に伸びる平面状の構造のみからなる。ミツバチが利用した空間の形状によっては巣板が傾いていることもある。巣板の数はミツバチの種によって異なる。養蜂に用いるニホンミツバチやセイヨウミツバチは複数枚の巣板を形成し、自然の状態でも10枚以上にのぼることがある。コミツバチなどは巣板を1枚しか作らないため、養蜂には向かない。 |
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<br style="clear:both" /> |
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しかしながら蜂蜜の中には[[芽胞]]を形成し活動を休止した[[ボツリヌス菌]]が含まれている場合がある。通常は摂取してもそのまま体外に排出されるが、乳児が摂取すると(芽胞の発芽を妨げる[[腸内細菌#腸内細菌叢とその構成|腸内細菌叢]]が備わっていないため)体内で発芽して毒素を出し、中毒症状([[乳児ボツリヌス症]])を引き起こすことがあるため、注意を要する<ref>[[#清水2003|清水2003]]、33-34頁。</ref>。芽胞は高温高圧による[[滅菌]]処理(120℃で4分以上)の加熱で不活性化されるが、蜂蜜においては酵素が変質するのでこの処理は不向きである<ref>{{Cite web|url = http://www.honey-comb.jp/honeyknowledge.html|title = 蜂蜜の知識|publisher = 有限会社福島商事|language = 日本語|accessdate = 2011年9月28日}}</ref>。日本では1987年に[[厚生省]]が「1歳未満の乳児には与えてはならない」旨の通達を出している<ref>{{Cite web|url = http://homepage3.nifty.com/kodomoER/ikuji/q19y03b.htm|title = 離乳食などにハチミツを用いない方が良いのはなぜ?|work=広島舟入こども相談室|publisher = |language = 日本語|accessdate = 2011年9月28日}}</ref>。同省の調査によると、およそ5%の蜂蜜からボツリヌス菌の芽胞が発見された<ref>[[#原1988|原1988]]、141頁。</ref>。 |
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== 動物と蜂蜜 == |
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蜂蜜は栄養価が高いため、[[ヒト]]以外の[[動物]]にも好まれる。蜂の巣を襲い、蜂蜜を摂取する代表的な動物が[[クマ]]、[[ラーテル]](ミツアナグマ)である。 |
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[[トリカブト]]、[[レンゲツツジ]]の[[花粉]]や蜜は有毒である<ref>Sutlupinar, N. et al. 1993. Poisoning by toxic honey in Turkey. Arch. Toxicol . 67:148-50.</ref><ref>{{Cite web|url = http://niah.naro.affrc.go.jp/disease/poisoning/plants/pieris.html|title = アセビ|work=写真で見る家畜の有毒植物と中毒|publisher = 独立行政法人 農業・食品産業技術総合研究機構 動物衛生研究所|language = 日本語|accessdate = 2011年9月28日}}</ref>。ツツジ科植物の有毒性は古くから知られ、紀元前4世紀のギリシャの軍人・著述家の[[クセノフォン]]は兵士たちがツツジ属植物や[[ハナヒリノキ]]の蜜に由来する蜂蜜を食べ中毒症状を起こした様子を記録している<ref>{{Cite web|url = http://www.drugsinfo.jp/2007/10/05-163400|title = 蓮華躑躅(レンゲツツジ)の毒性|publisher = 医薬品情報 21|language = 日本語|accessdate = 2011年9月29日}}</ref>。古代ローマ時代にも[[グナエウス・ポンペイウス]]率いる軍勢が敵の策略にはまり、ツツジに由来する蜂蜜を食べて中毒症状を起こしたところを襲われ兵士が殺害されたという話がある<ref>[[#原1988|原1988]]、128頁。</ref>。 |
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さらに、他の動物の手を借りることで蜂蜜を得る[[鳥類]]が存在する。主に[[サハラ砂漠|サハラ]]以南の[[アフリカ大陸]]に分布する[[キツツキ目]][[ミツオシエ科]]のいくつかの[[種 (分類学)|種]](コミツオシエ(Indicator minor)など)は、蜂蜜と蜜蝋を好む。蜂の巣を見つけるとヒトやラーテルなど他の動物に近づき、[[声|鳴き声]]と特徴的な滑空で位置を知らせる。他の動物が蜂の巣を破壊、摂取した後、食べ残しを得る。この習性を利用し、ミツオシエ用の[[笛]]を用いて積極的にミツオシエを呼び寄せる地域もある。 |
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{{Clear}} |
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== 生産量 == |
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世界全体での蜂蜜の生産量は推定約120万トンである<ref name="世界のはちみつ生産量">{{Cite web|url = http://www.rengejirusi.co.jp/n2-2.html|title = 世界のはちみつ生産量|work=はちみつの話 - 生産量と市場|publisher = 日本蜂蜜株式会社|language = 日本語|accessdate = 2011年9月28日}}</ref><ref name="世界の養蜂状況">{{Cite web|url = http://bee.lin.gr.jp/bee/tokei/04.html|title =世界の養蜂状況|publisher = 社団法人 日本養蜂はちみつ協会|language = 日本語|accessdate = 2011年9月28日}}</ref>。主要な国および地域別の生産量を見ると中国が20万トン強、旧ソ連地域が20万トン弱、アメリカが10万トン前後で<ref name="世界のはちみつ生産量"/><ref name="世界の養蜂状況"/>、これら3地域の生産量が全体の半分近くを占める<ref name="世界の養蜂状況"/>。 |
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* [[袁術]]は灊山(せんざん)にいる部下の[[雷薄]]・[[陳蘭]]を頼ったが受け入れられずに受け入れを拒絶され、3日間滞在するうちに兵士の食糧が底をついたため、[[寿春]]から80里ほどにある江亭に滞在した。既に食糧は麦のくずが30石ほどしか残されていなかった。袁術は夏の暑さのため、蜂蜜入りの飲物を所望したが、そのための蜂蜜も無い状況であった。袁術は寝台に腰を下ろしてため息をついた後、「袁術ともあろうものがこんなざまになったか!」と怒鳴り、寝台の下にうつぶせとなって、一[[斗]](当時は約1.98[[リットル]])余りの[[吐血]]をして死んだと伝えられる(『[[呉書]]』)。 |
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* 小説『[[三国志演義]]』では、第二十一回での袁術の死の描写では、雷薄・陳蘭らに略奪を受けついに糧食尽き、最後は蜜水を持ってくるよう料理人に命じたところ「ただ血水があるだけです。蜜水などどこで得られましょう」と言われ、絶望して血を吐いて死んだとなっている。 |
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* [[新婚旅行]]を意味する「ハネムーン」(honey moon)の語源は[[結婚|新婚]]後1ヶ月間、花婿に[[蜂蜜酒|ハチミツ酒]]を飲ませ精力をつけさせるという[[古代]][[ゲルマン人]]の[[習慣]]からきているという説がある。 |
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<!--ここにあった2つは「ミツバチ」へ移動しました。--> |
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* 蜂蜜は保存性に優れ、ほぼ腐る事はないと言われている。これは濃度が高く水分含有量が低すぎるため、細菌の繁殖に適さないからである。この性質のため、蜂蜜酒を作る際は酵母菌が活動できるように蜂蜜を水で薄めて蜂蜜水を用意する。また水で薄めた蜂蜜水は細菌が繁殖する。[[エジプト]]で[[ピラミッド]]の発掘をしていた[[アメリカ合衆国|米国]]の[[考古学|考古]][[学者]]・T.M.デービスが約3300年前の[[粘性]]のある液体が入った[[瓶]]を発見。その香りから全く変質していない蜂蜜だとする誤解も記録されている<ref>{{ref harvard |文献(渡辺2)|文献(渡辺,b)|b}}pp.23 、(1913年にデーヴィスが発掘した際)「三千三百年前のハチミツの甕を発見」、「フタを取ってみると」、「高い香りが立ち上った」。Arthur Weigall, "The Glory of the Pharaos", 1923のpp.127-130よりTheodore M. Davisが1905年にKV46([[:en:KV46]])を発掘した際、ねばねばした液体が保存されている[[アラバスター]]の水差しを発見したこと、当初デイヴィスは蜂蜜がそのまま保存されていたと考えていたことが記されている。"Here were fine alabaster vases, and in one of these we were startled to find a liquid, like honey or syrup, still unsolidified by time."</ref>。当初蜂蜜だと考えられた粘性のある[[液体]]は、[[ミイラ]]製造に用いる[[ナトロン]]([[炭酸ナトリウム]]十水和物 Na<sub>2</sub>CO<sub>3</sub>・10 H<sub>2</sub>O)であった<ref>{{ref harvard |文献(Davis1)|文献(Davis1)|^}} p.23より "Three thousand yeards thereafter I looked into the vase with like expectation ; both of us were disappointed, for it contained only a liquid which was first thought to be honey, but which subsequently proved to be natron."</ref>。 |
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* 漢語「蜜」(*mit)と、ギリシア語で蜂蜜を指す"methy"が同語源であるという説がある。英語では(ギリシア語と同源)"mead"「蜂蜜酒」となっている。 |
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* レンゲで養蜂をする場合、[[養蜂箱|巣箱]]1箱当たり約10aほどのレンゲ畑(田)を要する。 |
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* 都心でも養蜂は可能。東京都千代田区永田町の[[社会民主党 (日本 1996-)|社会民主党]]本部のある[[社会文化会館]]<ref>[http://shop.yumetenpo.jp/goods/goodsList.jsp?st=hanamegumi.com&category=1&action=category お堀一番・お江戸密【社民党本部にて採密】 - ハチミツ関連商品,国産はちみつ専門店蜂蜜花めぐみ]</ref>、同平河町の[[青年会議所|日本青年会議所]]の屋上や東京都中央区銀座<ref>[http://www.gin-pachi.jp 銀座ミツバチプロジェクト]</ref>などで採取している事例がある。 |
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== 脚注 == |
== 脚注 == |
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{{脚注ヘルプ}} |
{{脚注ヘルプ}} |
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=== 注釈 === |
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{{Reflist}} |
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{{Reflist|3|group=†}} |
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=== 出典 === |
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{{Reflist|4}} |
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== 参考文献 == |
== 参考文献 == |
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* {{Cite book|和書 |
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# 渡辺孝、『ハチミツの百科』、真珠書院、[[1987年]]、ISBN 4-88009-212-6 |
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|author = [[大塚敬節]] |
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# {{note label |文献(渡辺2)|文献(渡辺2,a)|a}}{{note label |文献(渡辺2)|文献(渡辺2,b)|b}}渡辺孝、『ハチミツの百科 新装版』、真珠書院、2003年、ISBN 4-88009-215-0 |
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|year = 1956 |
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# 佐々木正己、『養蜂の科学』、サイエンスハウス、[[2003年]]、ISBN 4-915572-66-8 |
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|title = 漢方医学 |
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# {{note label |文献(小川)|文献(小川)|^}}小川了、『世界の食文化11 アフリカ』、農山漁村文化協会、[[2004年]]、ISBN 4-540-04087-1 |
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|series = 創元医学新書 |
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# {{note label |文献(大塚)|文献(大塚)|^}}大塚敬節『漢方医学』 創元社<創元医学新書>、[[1956年]] ISBN 4-422-41110-1 |
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|publisher = [[創元社]] |
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# 角田公次、『ミツバチ 飼育・生産の実際と蜜源植物』、農山漁村文化協会、[[2005年]]、ISBN 4-540-96116-0 |
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|isbn = 4422411101 |
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# 藤原誠太、村上正、『日本ミツバチ 在来種養蜂の実際』、農山漁村文化協会、2005年、ISBN 4-540-99252-X |
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|ref = 大塚1956 |
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# トーマス・D・シーリー、『ミツバチの知恵』、青土社、[[1998年]]、ISBN 4-7917-5660-6 |
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}} |
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# イアン・ショー、ポール・ニコルソン、『大英博物館 古代エジプト百科辞典』、原書房、[[1997年]]、ISBN 4-562-02922-6 |
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* {{Cite book|和書 |
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# {{note label |文献(Davis1)|文献(Davis1)|^}}Theodore M. Davis, "Tomb of Iouiya and Touiyou: The Finding of the Tomb, Notes on Iouiya and Touiyou, Description of the Objects Found in the Tomb, Illustrations of the Objects",Duckworth Publishers, 2000 ISBN 0-7156-2963-8 |
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|author = 清水美智子 |
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|year = 2003 |
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== 関連項目 == |
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|title = はちみつ物語 食文化と料理法 |
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{{Commons&cat|Honey|Honey}} |
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|publisher = 真珠書院 |
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{{Wikinews|子供のせき、風邪薬よりはちみつが効果ある可能性}} |
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|isbn = 4880092169 |
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* [[ミツバチ]] |
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|ref = 清水2003 |
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* [[養蜂]] |
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}} |
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* [[養蜂箱]] |
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* {{Cite book|和書 |
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* [[全国はちみつ公正取引協議会]] |
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|author = 角田公次 |
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* [[蜂蜜酒]] |
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|year = 1997 |
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* [[プロポリス]] |
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|title = ミツバチ 飼育・生産の実際と蜜源植物 |
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* [[ハニートースト]] |
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|series = 新特産シリーズ |
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{{-}} |
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|publisher = 農山漁村文化協会 |
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|isbn = 4540961160 |
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|ref = 角田1997 |
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}} |
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* {{Cite book|和書 |
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|author = 原淳 |
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|year = 1988 |
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|title = ハチミツの話 |
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|publisher = [[六興出版]] |
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|isbn = 4845360381 |
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|ref = 原1988 |
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}} |
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* {{Cite book|和書 |
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|author = 渡辺孝 |
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|year = 2003 |
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|title = ハチミツの百科 新装版 |
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|publisher = 真珠書院 |
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|isbn = 4880092150 |
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|ref = 渡辺2003 |
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}} |
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* {{Cite book|和書 |
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|author = メラ・マン、リチャード・ジョーンズ(編) |
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|others = 松香光夫(監訳) |
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|year = 2002 |
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|title = ハチミツと代替医療 医療現場での可能性を探る |
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|publisher = フレグランスジャーナル社 |
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|isbn = 4894790599 |
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|ref = マン・ジョーンズ(編)2002 |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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{{Notice|ウィキペディアは宣伝目的のリンクを受け入れていません。ご協力をお願いします。[[Wikipedia:外部リンクの選び方]]を参照してください。|お知らせ}} |
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* [http://bee.lin.gr.jp/ 日本養蜂はちみつ協会] |
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* [http://www.nhb.jp/index.html 米国蜂蜜協会] |
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* [http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/0509/01.html 農林水産省「消費者の部屋」] - はちみつの成分や保存方法、また白く固まったときの対処方法 |
* [http://www.maff.go.jp/j/heya/sodan/0509/01.html 農林水産省「消費者の部屋」] - はちみつの成分や保存方法、また白く固まったときの対処方法 |
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* [http://www.jetro.go.jp/world/japan/qa/importproduct_01/04M-010972 天然はちみつの輸入手続について]JETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ) |
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2011年9月29日 (木) 12:13時点における版
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蜂蜜(はちみつ)とはミツバチが花の蜜を採集し、巣の中で加工、貯蔵したものをいう[1]。自然界で最も甘い蜜といわれ[2]、本来はミツバチの食料であるが、しばしば他の生物が採集して食料としている[3]。約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、ビタミン、ミネラルなど微量の有効成分を含む[4]。
採集
ミツバチによる花の蜜の採集
蜂蜜のもととなる花の蜜は、メスのミツバチによって採集される。採集された花の蜜はショ糖液、つまり水分を含んだスクロース(ショ糖)の状態で胃の前部にある蜜嚢(蜜胃[5])と呼ばれる器官に貯えられる。蜜嚢が蜂蜜で満たされるとミツバチは巣へ戻る[6]。
一般にミツバチが採集した花の蜜が蜂蜜であると考えられがちである[7]が、花の蜜が巣の中で加工、貯蔵されたものが蜂蜜であり[1]、両者の性質には物理的、化学的な違いがある[8]。まず、花の蜜は蜂蜜よりも糖濃度が低い。一般に花の蜜の糖度は蜜蜂が採集した段階で40%未満であるが、巣に持ち帰られた後で水分の発散が行われる結果、蜂蜜の糖度は80%前後に上昇する[9]。また、水分発散のための作業の一つとして、蜜蜂は巣の中で口器を使って蜜を膜状に引き延ばすのであるが、この時蜜蜂の唾液に含まれる酵素(インベルターゼ、転化酵素)が蜜に混入し、その作用によって蜜の中のスクロース(ショ糖)がグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)に分解される[10]。
ミツバチの口器を通してはこの他に、本来花の蜜には含まれない物質が混入する。一例としてコリンが挙げられる。コリンはミツバチの咽頭腺から分泌されるローヤルゼリーに含まれる物質で、これはミツバチが花の蜜の水分の発散と並行して、同じく口器を用いて咽頭腺から分泌されたローヤルゼリーを女王蜂の幼虫に与える作業を行うため、ローヤルゼリー中のコリンが蜂蜜に混入するためと考えられる[11]。
ちなみに、中国の明代の薬学書『本草綱目』は皇腐珍奇という霊的な作用によって大便から蜂蜜が生成されると説いており、この説は同じく明代の産業技術書『天工開物』や日本の江戸時代の類書『和漢三才図会』に受け継がれた。日本ではこの説に対し、江戸時代の本草学者貝原益軒が蜂蜜は花の蜜から作られると反論した。日本初の養蜂書『家蜂畜養記』の著者久世敦行も同様に反論を行った[12]。
人による蜂蜜の採集
エバ・クレーンの研究によれば、1万年前にはすでに人類による採蜜が始まっていた[13]。人類は当初、野生のミツバチの巣から蜂蜜を採集していた[14]。1919年にスペインのアラニア洞窟で発見された新石器時代の岩壁彫刻は人類とハチミツの関係を示す最古の資料とされ、片手に籠状の容器を持って縄梯子を登って天然の洞穴に近づき、蜂蜜の採集を試みる人物が描かれている[15]。この壁画では洞穴とミツバチが非常に大きく描かれており、古代人の蜂蜜への関心の高さとミツバチに対する恐怖の大きさを表していると解釈することができる[16]。
やがて人類は養蜂、すなわちミツバチを飼育して蜂蜜を得る方法を身につけた。エジプトではおよそ5000年前に粘土製の管状の巣箱を用いた養蜂が始められ、巣箱を移動させながら蜜を採集させること(転地養蜂)も行われた[14]。ギリシア神話には養蜂の神アリスタイオスが登場する[17]。
養蜂は、閉鎖空間の中に巣を作るというミツバチの習性を利用し、内側をくり抜いた丸太や土管、わら縄製のスケップ、木製の桶などを用いて行われる[18]。かつては巣を切り取り、押しつぶして蜜を搾り取る方法が採用されていたが、これはミツバチに大きなダメージを与えるものであった[19]。現代的な養蜂では木製の枠の中に巣を作らせ、蜜が貯まると遠心分離器にかける方法が採用されている[20]。遠心分離器の活用によってミツバチ一群あたりの蜂蜜の採集量はおよそ5倍ないし10倍に増加した[20]。
採集した蜂蜜には微量の花粉や巣の破片が含まれている。市場に流通している蜂蜜の多くは、それらをろ過した後で容器に詰められている[21]。ただしろ過には限界があり、若干残留する[22]。
成分と性質
成分
蜂蜜は約8割の糖分と約2割の水分によって構成され、微量の有効成分(ビタミン[† 1]、ミネラル[† 2]、アミノ酸[† 3]、有機酸[† 4]、酵素[† 5]、色素[† 6]、香気物質[† 7])も含まれる[4]。有効成分が蜂蜜の中で果たす働きについては未解明な点も多い[30]。ビタミン、ミネラル、アミノ酸の多くは花粉に由来する[25]。
糖分のほとんどはグルコース(ブドウ糖)とフルクトース(果糖)[31]で、少量のオリゴ糖[31]とスクロース(ショ糖)[31][32]、さらにデキストリンも含まれる[33]。
グルコースとフルクトースが主成分であることから、蜂蜜は消化の必要なしに、手早くエネルギーを得ることができる[34]。グルコースとフルクトースの比率を比較すると、フルクトースの方が若干多い傾向にある[35][36]。グルコースとフルクトースはともに単糖であり、摂取後体内でそれ以上消化・分解する必要がなく、短時間で体内に吸収される[37]。さらにフルクトースの吸収速度がグルコースのおよそ半分であることから、吸収によって血糖濃度が急激に変動することはない[38]。
スクロースは蜜蜂に採集される花の蜜の主成分であり、巣の中で蜂蜜に転化しなかったものである[32]。標準的な蜂蜜に占めるスクロースやデキストリンの割合はせいぜい1ないし3%まで、5%を超える蜂蜜については分解が十分に進んでいないか、純粋ではない、つまり蜂蜜以外のものが混入していることを疑う必要がある[33]。デキストリンは、人工的に作られたグルコースや水飴に大量に含まれる[39]。ただし甘露蜜(後述)は一般にデキストリンが10%前後前後含まれる[40]。
ミネラルの一つである鉄にはタンニンと化学反応を起こして黒くなるという性質がある。そのため、紅茶の中に蜂蜜を入れて黒く変色するかどうかで蜂蜜の純粋かどうかを判別することができるといわれることがある。しかし蜂蜜には金属を溶解させる性質があり、鉄を含む金属の容器に貯蔵された場合、蜂蜜に溶け込んだ容器の鉄分がタンニンと反応を起こすため、確実な方法とはいえない[41]。
ビタミンのうち約9割は活性型で少量の摂取で効果が見込める上、きわめて安定しており果物と比べ貯蔵中の減少率が非常に少ない[42]。ビタミンの含有量は蜜源植物の種類によって大きく異なり、また脱臭脱色をすると大幅に、場合によってはほとんど全て失われてしまう[43]。
酵素のうちインベルターゼ(転化酵素)は、前述のようにスクロースをグルコースとフルクトースに分解する働きを持ち、ミツバチが採集した花の蜜を蜂蜜に変化させる役割を担う[44]スクロースの分解が十分に進んでいない蜂蜜を採集した場合、インベルターゼの腹滝によって貯蔵中に分解が進む[45]。インベルターゼは熱によって機能を失う。そのため、分解が十分に進んでいない蜂蜜を加熱して水分を除去した場合、濃度を見ると標準的な蜂蜜だがショ糖の含有量が不自然に多い製品が出来上がってしまう[46]。グルコースオキシターゼは、グルコースから有機酸(グルコン酸)を作り出す[27]。ジアスターゼはデンプンをデキストリンやマルトース(麦芽糖)に分解する働きをもつ。ドイツやオランダ、スイスの一部ではジアスターゼの含有量が少ない蜂蜜を、人為的な加工がされている可能性があるとして低く評価する傾向がある。しかしジアスターゼの含有量は蜜源植物の種類によって異なる面もあり、さらに長期間貯蔵中すると減少する[47]。アメリカの専門家の多くはジアスターゼの含有量に基づく商品価値の査定に否定的である[47]。
性質
結晶化
蜂蜜には低温中で粒状の結晶ができ白く固まる性質があるが、これはグルコースの性質によるものである[48][49]。ただし低温であればあるほど結晶化しやすいというわけではなく、結晶化しやすいのは摂氏5度ないし14度弱であり、摂氏マイナス18度弱以下になるとほとんど結晶化しなくなるといわれている[50]。グルコースを多く含む蜂蜜ほど早く結晶化し[25]、グルコースの含有量が少なくフルクトースを多く含む蜂蜜は結晶化しにくい[51]。また、結晶化が早いと結晶のきめが細かくなる傾向がある[52][53]。どのように結晶化していくかは、蜂蜜の比重によって異なる。比重の軽い蜂蜜の場合、液体状の蜂蜜より比重の大きい結晶が底に沈殿するため、底の方から結晶化するかのような印象を与える。比重の重い蜂蜜の場合、液体状の蜂蜜と結晶の比重の差がほとんど同じであるため、蜂蜜全体が結晶化していく[54]。加熱することで結晶は溶けるが、加熱し過ぎると色が濃くなったり風味が若干変化するなどの影響が生じる[55]。結晶をした蜂蜜は再び結晶しにくいが、溶け残った結晶があるとそれを核として再び結晶化が進行する[56]。結晶ができない蜂蜜は純粋ではないといわれることがある。これは多くの蜂蜜について妥当な判別法であるが、アカシアを蜜源とするものなど一部には純粋であってもなかなか結晶できない蜂蜜もある[57]。結晶を見て蜂蜜に砂糖が混入していると勘違いされることがある[58]。
水素イオン指数
蜂蜜の水素イオン指数は3.2ないし4.9と弱酸性であるが、これは有機酸を含むためである[59]。しかしながら、食品が身体に与える影響の観点からは、蜂蜜はアルカリ性食品である。これは蜂蜜に含まれるカルシウム、マグネシウム、カリウム、ナトリウムがアルカリ性を示すミネラルであり、さらに有機酸が体液をアルカリ性に変える働きをもつからである[60]。水素イオン指数は弱酸性であるが、蜂蜜を摂取する際には酸味が感じられない傾向にある。これはグルコースおよびフルクトースの甘みが強く、かつ有機酸の7割を占めるグルコン酸の酸味がまろやかであるためである[61]。
カロリー
蜂蜜の標準カロリーは、100グラムあたり約294キロカロリー[62]、または356キロカロリー[63]で、卵の約2.5倍、牛乳の約6倍に相当する[64]。
甘味度
蜂蜜の甘味度は、採集された花の種類によって若干差があるものの、同重量のスクロースとほぼ同じとされる[65]。蜂蜜はフルクトースを多く含むが、フルクトースには甘味度が低温で高く、高温で低くなるという特徴がある[65]。
風味
蜂蜜は甘さとともに、独特の風味を持つ。これは蜂蜜に含まれるビタミン、ミネラル、アミノ酸、有機酸、酵素などの微量成分に由来する。風味はミツバチが蜜を採集した花の種類によっても異なる[66]。
浸透圧
蜂蜜は浸透性が高いことで知られるが、これはグルコースとフルクトースの浸透性がともに高いからである[66]。
利用法
食用
蜂蜜と人類の関わりは古く、英語には「蜂蜜の歴史は人類の歴史」ということわざがある[67]。蜂蜜は人類が初めて使用した甘味料といわれている[68]。イングランド南部では、紀元前2500年頃に壺型の土器に蜂蜜が入れられていた痕跡が発見されている[69]。
人類は当初、巣房(ミツバチの巣を構成する六角形の小部屋)ごと食べる形[† 8]で蜂蜜を摂取した[71]。古代エジプトで蜂蜜は、イナゴマメと並び主要な甘味料であった[72]。蜂蜜が人々の食生活に広く浸透し始めたのは古代ギリシャ時代のこと[73]で、ギリシア神話には巣に入った蜂蜜が供される場面が登場する[74]。古代ギリシャでは多くの文芸作品、さらにはプラトン、アリストテレスといった哲学者の著作にも蜂蜜が登場する。アリストテレスの記述をもとにした試算では、当時のアッティカの自由市民1人あたりの消費量は20世紀後半の日本の国民1人あたりの消費量をはるかに上回っている[73]。それに応じて養蜂も盛んに行われ、プルタルコスの『対比列伝』には、政治家ソロンが活躍した時代に養蜂場間の距離規制(300プース以上離さなくてはならない)に関する法律が制定されたという話題が登場する[75]。
調味料
紀元前15世紀、トトメス3世時代のエジプトの遺跡の壁画には、養蜂とともに蜂蜜入りのパン菓子を作る様子が描かれている[76]。約300年後のラムセス3世の墓の壁画にも同様の絵が描かれており、菓子の種類が増えていることが読み取れる[77]。
エジプトのパン菓子はギリシャに伝わった[78]。古代アテナイの喜劇作家アリストパネスの作品『アカルナイの人々』(紀元前425年発表)の中にも蜂蜜入りのパンが登場する[79]。当時、ギリシャ産の蜂蜜を使って72種類のパン菓子が作られていたといわれる[80]。同時に、パンと菓子の分化も進んでいった[80]。当時蜂蜜は大変高価で、キュレネの遺跡からは土地の権利と引き換えに蜂蜜を手に入れた入植者について記述された碑文が出土している[78]。製菓、製パンにおいて蜂蜜は、甘みを加えるだけでなく天然酵母の発酵を促進する機能も有している[80]。その後、蜂蜜を使ったパンや菓子はローマ、さらにヨーロッパ全土へと広まった[78]。古代ローマにおいて蜂蜜はパン以外の料理にも用いられた。ローマの美食家マルクス・ガウィウス・アピキウスの著書『アピキウスの料理書』に収録されているレシピは西洋料理の起源とされるが、500点中170点ほどが蜂蜜を使用した料理に関するものである[81]。
東洋においては中国の戦国時代、屈原による楚辞『招魂』の中に「粔籹蜜餌」という名の蜂蜜を用いた菓子が登場する[82]。「粔籹」は餅米粉と小麦粉、蜂蜜を混ぜて揚げた菓子を指し、「餌」キビを臼でついて作った餅を指すことから、これはきび団子風の餅に蜂蜜をかけたもの、または餅に蜂蜜を混ぜて作ったものと推測される[83]。「粔籹」という語は紀元前2世紀の墳墓、馬王堆漢墓の副葬品の竹簡にも登場する[83]。「粔籹」は日本にも伝わり、平安時代中期発行の『和名類聚抄』に登場する。ただしここでは製法について「蜜と米を和し煮詰めて作る」と紹介されており、内容が変化している。ちなみに『和名類聚抄』において本来の「粔籹」は、「環餅」(まがり)として紹介されている[83]。
魚料理に用いると、魚の臭みを減らす働きをする。これは蜂蜜に含まれる酸が魚の臭みの原因であるアミンの揮発性をなくすためである[84]。煮魚や照り焼きを作る際に味噌や醤油に蜂蜜を混ぜると、香りの良さが向上する。これは蜂蜜の香り自体が魚の臭いを覆うだけでなく、蜂蜜に含まれるグルコースとフルクトースが魚のタンパク質や味噌・醤油のアミノ酸とアミノカルボニル反応と呼ばれる反応を起こし、それによって生じた香り成分がアミンと結合し、魚臭さを打ち消すことによる[84]。
肉料理に用いると、浸透性の高さによって肉の組織に浸透し、過熱による肉の収縮・硬化を防ぐ。また、蜂蜜に含まれる有機酸は肉の保水性を高め、肉を軟化させる。さらに蜂蜜に含まれるグルコースとフルクトースは熱によって短時間でカラメル化するため、肉の表面が固められ、内部に水分やうまみを閉じ込めることができる[85]。
炊飯の際に蜂蜜を加えると、グルコースとフルクトースが米の内部に浸透し保水性を高め、さらに加熱されたアミラーゼが米に含まれるデンプンをブドウ糖に転化することで味を高める効果をもたらす[86]。
その他、調味料としての蜂蜜はリンゴ、レンコウ、ゴボウなどの褐色変化を防ぐ、イースト菌の発酵を促進するといった効果をもたらす[87]。
蜂蜜酒
蜂蜜に蜂蜜と水が混ざった液体(蜂蜜水)の糖分が発酵すると、アルコールへと変化する。その結果出来上がるのが蜂蜜酒で、人類最古の酒とされる[88]。蜂蜜は発酵しやすく、水で割って温かいところに置くだけで蜂蜜酒を作ることができる[89]。蜂蜜酒は古代のヨーロッパ、とりわけ北欧で愛飲され、人々の暮しと密接に関わっていた[90]。北欧神話には蜂蜜酒が度々登場する[91]。古代ギリシャ人はワインを飲むようになる前は蜂蜜酒を愛飲しており、ギリシア神話に登場する豊穣とブドウ酒と酩酊の神ディオニューソスはもとは蜜酒の神であったといわれている[92]。ローマ時代には各家庭が常備薬として蜜酒を置いた[93]。「ハネムーン」という言葉は、夫婦が新婚の1か月間を蜂蜜酒を飲みながら過ごすという古代ゲルマン民族の風習が起源であるともいわれている[90][92][94][† 9]。ビールやワインの登場後も蜂蜜酒はヨーロッパにおいて地酒として愛飲された[95]。
古代ローマの文献には次のような蜂蜜酒の製造法が記録されている。
蜂蜜酒の発酵について人類は当初、蜂蜜に含まれる野生酵母に頼っていたが、発酵の早さや発酵の結果得られる風味を調整する技法を身につけていった[90]。
オラウス・マグヌスの著書『北方民族文化誌』には、中世の北欧における、「生ビール風蜂蜜酒」というべき蜂蜜酒の製法として次のようなものが記されている。
薬用
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蜂蜜については人類の長年にわたる経験をもとに、古来様々な薬効が謳われてきた[96]。旧約聖書には、「心地良い言葉は、蜂蜜のように魂に甘く、身体を健やかにする」ということわざが登場する。この言葉から、人類が早くから蜂蜜の健康上の効能について認識していたことがうかがえる[2]。
古代エジプトの医学書エーベルス・パピルスおよびエドウィン・スミス・パピルスには内用薬[† 10]および外用薬(軟膏剤、湿布薬[98]、坐薬[99])への蜂蜜の活用が描かれている[100]。『旧約聖書』の「サムエル記・上」には疲労と空腹により目のかすみを覚えたヨナタンが蜂蜜を食べて回復する逸話が登場する[101]。
古代ギリシャでは医学者のヒポクラテスが炎症や潰瘍、吹き出物などに対する蜂蜜の治癒効果を称賛している[102]。古代ローマの皇帝ネロの侍医アンドロマコスは、蜂蜜を使った膏薬テリアカを考案した。テリアカは狂犬病に罹った犬や毒蛇に噛まれた際の、さらにはペストの治療薬として用いられた[103]。テリアカの存在は奈良時代に日本へ伝えられ、江戸時代になってオランダ人によって現物が持ち込まれた[104]。
中国の本草書『神農本草経』(成立は後漢から三国時代の頃)には「石蜜」と呼ばれる野生の蜂蜜の効用について、「心腹の邪気による病を治し、驚きやすい神経不安の病やてんかんの発作をしずめる。五臓の心臓・肝臓・肺臓・腎臓・脾臓を安らかにし、諸不足に気を益し、中を補い、痛みを止め、解毒し多くの病を除き、あらゆる薬とよく調和する。これを長く服用すれば、志を強くし、身体の動きが軽くなり、飢えることもなく、老いることもない」と記されており[105]、中国最古の処方集である『五十二病方』(戦国時代)には蜂蜜を用いた利尿剤の処方が記されている[106]。明代の薬学書『本草綱目』には「十二臓腑ノ病ニ宜シカラズトイフモノナシ」と、あらゆる疾病に対し有効な万能薬と記述されている[107]。同書には張仲景による医学書『傷寒論』を引用する形で、蜂蜜を使った外用薬(坐薬)の作り方も登場する[108]。
日本では平安時代の医学書『大同類聚方』に「須波知乃阿免」、すなわち「巣蜂の甘い味」として蜂蜜が登場している[109]。
漢方薬では生薬の粉末を蜂蜜で練って丸剤(丸薬)をつくる。例として八味地黄丸がある[110][111]。江戸時代の医師栗本昌蔵は、著書の中で丸薬を作る際の蜂蜜の使い方について解説している[112]。
薬効とその科学的根拠
古来謳われてきた薬効について科学的な検証を行ったところ、ある程度の信憑性が確認されている[113]。
蜂蜜は古来、外科的な治療に用いられてきた[114]。古代ローマの軍隊では蜂蜜に浸した包帯を使って傷の治療を行っていた[115]。蜂蜜には強い殺菌力ことが確認されており、チフス菌は48時間以内に、パラチフス菌は24時間、赤痢菌は10時間で死滅する[116]。また、皮膚の移植片を清浄で希釈や加工のされていない蜂蜜の中に入れたところ、12週間保存することに成功したという報告がある[117]。蜂蜜の殺菌力の根拠についてカナダのロックヘッドは、浸透圧が高いことと、水素イオン指数が3.2ないし4.9で弱酸性であることを挙げている[116]。蜂蜜の持つ高い糖分は細菌から水分を奪って増殖を抑える効果をもたらし[† 11][119]、3.2ないし4.9という水素イオン指数は細菌の繁殖に向いていない[120]。しかしながらポーランドのイズデブスカによって、蜂蜜に水を混ぜて濃度を10分の1に薄めても殺菌力を発揮することが確認され、ロックヘッドの主張と両立しないことが明らかとなった[121]。アメリカのベックは、皮膚のただれた箇所に蜂蜜を塗って包帯を巻くとリンパが分泌され、それにより殺菌消毒の効果が得られると主張している[122]。前述のように蜂蜜に含まれる酵素グルコースオキシターゼは、グルコースから有機酸(グルコン酸)を作り出す[27]が、その過程で生じる過酸化水素には殺菌作用がある[123]。人類は古くから蜂蜜がもつ殺菌力に気付いていたと考えられ[84]、防腐剤として活用した[† 12][† 13]。
蜂蜜は古来瀉下薬として用いられ[126][127]、同時に下痢にも効くとされてきた[128]。蜂蜜に含まれるグルコン酸には腸内のビフィズス菌を増やす効能があり、これが便秘に効く理由と考えられる[126]。フランスの医学者ドマードは、悪性の下痢を発症し極度の栄養失調状態にある生後8か月の乳児に水と蜂蜜だけを8日間、続けてヤギの乳と水を1:2の割合で混ぜたものを与えたところ、健康状態を完全に回復させることに成功したと報告している。これは、蜂蜜のもつ殺菌作用によって腸内環境が改善されたためと考えられている[129]。
古代エジプトの医学書中には盲目の馬の目を塩を混ぜた蜂蜜で3日間洗ったところ目が見えるようになったという記述が登場する[97]。また、マヤ文明ではハリナシバチが作った蜂蜜を眼病の治療に用いていた[130]。その後、蜂蜜が白内障の治療に有効であることが科学的に明らかとなった[131]。
欧米には「ハチミツがガンにきくという漠然とした"信仰"に近いもの」が根強く存在する[132]。1952年に西ドイツのアントンらが19000人あまりを対象に職業別の悪性腫瘍発症率を調べたところ、ほとんどの職業において1000人中2人の割合であったところ、養蜂業の従事者については1000人中0.36人の割合であった。この結果からは養蜂業従事者の生活習慣の中に悪性腫瘍を抑制する要因があることが読み取れるが、それを蜂蜜の摂取に求める見解がある[133][† 14]。フランスのアヴァスらは、動物実験によってハチミツに悪性腫瘍を抑制する作用があることを確認している[134]。また、前述のように蜂蜜には生成の過程でローヤルゼリーに含まれる物質が混入すると考えられている[11]が、カナダのタウンゼンドらはローヤルゼリーの中に悪性腫瘍を抑制する物質(10ヒドロゲン酸)を発見している[135]。
二日酔いには蜂蜜入りの冷たい水が有効であるとされる[126]。蜂蜜に含まれるフルクトースは肝臓がもつアルコール分解機能を強化する効果をもち[126]、さらにコリンやパントテン酸にも肝臓の機能を高める作用がある[136]。デンマークの医師ラーセンは、泥酔者に蜂蜜を飲ませたところ、短時間で酔いから覚めたと報告している。また、ルーマニアのスタンリューは124人の肝臓病患者が蜂蜜を摂取することにより全快したと報告している[136]。
古代ローマの詩人オウィディウスは『恋愛術(恋の技法)』の中で、精力剤としてヒュメトス産の蜂蜜を挙げている。蜂蜜の精力増強作用について、19世紀の科学者は懐疑的であったが、20世紀に入りイタリアのセロナは0.9グラムの蜂蜜中に20国際単位の発情物質が含まれることと発表した[137]。
蜂蜜には血圧を下げる効能があるといわれてきた[136]。蜂蜜にはカリウムが多く含まれるが、食塩を過剰に摂取した際にカリウムを摂取すると血圧を下げることができる[138]。また、蜂蜜に含まれるコリンには高血圧の原因となるコレステロールを除去する効果がある[136]。
古代エジプトや中国の文献には、蜂蜜の駆虫作用に関する記述がみられ、甘草と小麦粉、蜂蜜から作った漢方薬「甘草粉蜜糖」は駆虫薬として知られる[139]。1952年(昭和27年)に日本の岐阜県岐阜市にある小学校で実験が行われ、蜂蜜を飲んだ小学生の便からは回虫の卵がなくなるという結果が得られた[140]。蜂蜜に含まれるどの成分が駆虫作用をもたらすかについては明らかになっていない[140]。
その他に、鎮静作用[141]が認められ、咳止め[142]、神経痛およびリウマチ[143]、消化性潰瘍[144]、糖尿病[145]に対する効能が謳われている。
芳香剤
蜂蜜は古来、芳香剤として利用されてきた[146]。古代エジプトには蜂蜜と没薬、松脂、ワインに浸した菖蒲やシナモンを混ぜて作られたキフィーと呼ばれる煉香があった[146]。古代の中国にも蜂蜜を用いた煉香があった[146]。平安時代の日本にも蜂蜜を使った香があり、『源氏物語』「鈴虫」の冒頭には「荷葉の方をあはせたる名香、蜜をかくしほろろげて、たき匂はしたる」[† 15]という記述が登場する[147]。小一条院皇后の女房であった人物は、蜂蜜を用いた香には虫が湧くという記録を残している[148]。香の中には飴のようになめて使うものもあり、服用を続けると顔を洗った水や抱いた子供にまで匂いが移ったとされる[148]。タバコの中には香りの調整に蜂蜜を使用しているものもある[149]。
化粧品
蜂蜜は、古代エジプト・ギリシャの時代から化粧品に用いられ、クレオパトラ7世は蜂蜜を用いて化粧をし[150]、古代ローマの皇帝ネロの妻は蜂蜜とロバの乳を混ぜたローションを使っていたと伝えられている[151]。蜂蜜を用いたもっとも有名な化粧品の一つとして、パックが挙げられる[150]。蜂蜜の糖分には肌を整える働きがあり[150]、ビタミンB1には血行をよくし、新陳代謝を高める作用がある[152]。
蜂蜜の種類
蜜源植物による分類
蜜源となりうる花が複数ある場合、複数の花の蜜が混じった蜂蜜ができるのではないかと考えられがちである。しかしミツバチには一つの花から蜜を採集すると、可能な限り他の花の蜜を採集しないという性質がある(訪花の一定性)[156]。さらに蜜蜂にはミツバチのダンスと呼ばれる8の字に飛び回る行動によって仲間に蜜源を知らせる習性があるが、豊富な蜜源については激しく飛び回って知らせる一方、貧弱な蜜源についてはほとんど、時にはまったく教えようとしない[157]。このような理由から、現実には(厳密にはわずかな混入は避けられないが)ほぼ純粋に一つの花から蜜を採集して作られた蜂蜜を採集することが可能である[158]。蜂蜜は主要な蜜源によってレンゲ蜜、アカシア蜜などと分類され[159]、蜜源が複数ある場合には「百花蜜」と呼ばれる[160]。人間の手で蜜がブレンドされた場合も百花蜜という[161]。
蜂蜜の風味や色は、蜜源となった花の種類によって異なる。同じ種類の花から作られた蜂蜜でも地域によって(主に採蜜法の違いから[† 16])品質が異なる[163]。国や地域によって好みが分かれる蜂蜜もあり、たとえばソバ蜜は日本で敬遠される一方、フランスではジンジャーブレッドの原料として重宝されている[164]。同様にシナノキの蜂蜜はドイツやロシアでは最高級品とされるが、日本ではレンゲやアカシア、トチノキ、さらにはドイツではあまりに評価が低くミツバチの餌にされているナタネの蜂蜜よりも格が落ちる[165]。養蜂家の渡辺孝は、香りの強い蜂蜜が日本では敬遠され、ヨーロッパでは好まれる傾向があると指摘する[166]。
なお、一部ではミツバチが採蜜のために訪れるとは考えにくい花(クローバーなど)や、開花時期の関係から採蜜が不可能な花(ウメなど)の名前を冠する蜂蜜が販売されていることもあり、注意を要する[167]。
蜂蜜の色による分類
アメリカ合衆国では、蜂蜜の色を基準にした分類法も存在する。ただし色が同じ蜂蜜の味が同じとは限らず、蜜源植物が同じであっても貯蔵される巣の状態によって色が異なる[168]。
物質の状態による分類
採集された蜂蜜は液体であるが、これを固体の状態にした蜂蜜も存在する。具体的には粉末にしたもの[169]、飴玉状のものがある[170]。
甘露蜜
アブラムシが分泌する甘い体液をミツバチが採集したものを甘露蜜という。これは厳密には蜂蜜の定義に当てはまらないものであるが、ドイツでモミなどの針葉樹に寄生するアブラムシに由来する甘露蜜がモミのハチミツ(Tannenhonig)として最高級品の扱いを受けるなど、ゲルマン諸国で人気が高い[171]。
安全性
小児科学者の詫摩武人は、臨床実験の結果、蜂蜜を与えられた乳幼児には砂糖を与えられた乳幼児と比べて発育がよく、下痢などの疾病の発症率が低下する、赤血球数および血色素量が増加するなど複数の好ましい現象が確認されたと報告している[172]。その他にも蜂蜜が乳幼児の発育の好ましい結果をもたらすという報告が多くされている[173]。ギリシア神話には、ゼウス[174][175]やその子ディオニューソス[176]が蜂蜜と羊の乳を与えられて育つ逸話が登場する。
しかしながら蜂蜜の中には芽胞を形成し活動を休止したボツリヌス菌が含まれている場合がある。通常は摂取してもそのまま体外に排出されるが、乳児が摂取すると(芽胞の発芽を妨げる腸内細菌叢が備わっていないため)体内で発芽して毒素を出し、中毒症状(乳児ボツリヌス症)を引き起こすことがあるため、注意を要する[177]。芽胞は高温高圧による滅菌処理(120℃で4分以上)の加熱で不活性化されるが、蜂蜜においては酵素が変質するのでこの処理は不向きである[178]。日本では1987年に厚生省が「1歳未満の乳児には与えてはならない」旨の通達を出している[179]。同省の調査によると、およそ5%の蜂蜜からボツリヌス菌の芽胞が発見された[180]。
トリカブト、レンゲツツジの花粉や蜜は有毒である[181][182]。ツツジ科植物の有毒性は古くから知られ、紀元前4世紀のギリシャの軍人・著述家のクセノフォンは兵士たちがツツジ属植物やハナヒリノキの蜜に由来する蜂蜜を食べ中毒症状を起こした様子を記録している[183]。古代ローマ時代にもグナエウス・ポンペイウス率いる軍勢が敵の策略にはまり、ツツジに由来する蜂蜜を食べて中毒症状を起こしたところを襲われ兵士が殺害されたという話がある[184]。
生産量
世界全体での蜂蜜の生産量は推定約120万トンである[185][186]。主要な国および地域別の生産量を見ると中国が20万トン強、旧ソ連地域が20万トン弱、アメリカが10万トン前後で[185][186]、これら3地域の生産量が全体の半分近くを占める[186]。
脚注
注釈
- ^ ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンB6、ビタミンC、ビタミンK、ニコチン酸、パントテン酸、葉酸、ピオチン、コリン[23]。
- ^ カルシウム、マンガン、カリウム、ナトリウム、マグネシウム、鉄、銅、硫黄、塩素、リン、ケイ素、ケイ酸[24][25]。
- ^ プロリン、グルタミン酸、アラニン、ロイシン、イソロイシンなど[25]。
- ^ グルコン酸、コハク酸、酒石酸、酢酸、酪酸、シュウ酸、乳酸など10種類[26]。
- ^ グルコースオキシターゼ、アミラーゼ、カタラーゼ[27]、インベルターゼ[27][28]、ジアスターゼ[29]など。
- ^ クロロフィル、カロテノイド、メラノイジン[27]。
- ^ 酢酸エチル、酢酸、1-フェニールアルコールなど約50種類。一般に、色が濃いものほど香気が強い[27]。
- ^ 巣ごと食べる蜂蜜を単蜜という[70]。
- ^ これとは別に、ムーンは月を指し、「蜂蜜のように甘い夫婦の愛情も月のように欠けていく」という意味だとする説もある[94]。
- ^ エーベルス・パピルスからは、蜂蜜が瀉下薬、駆虫薬として活用されていたことが読み取れる。渡辺孝は、現代においてもあまり知られていない蜂蜜の駆虫作用が紀元前1600年代に知られていたことは注目も値すると述べている[97]。
- ^ 蜂蜜の吸水性は膿を吸い出す効果や、火傷が水ぶくれになるのを防ぐ効果ももたらす[118]。
- ^ ローマの美食家マルクス・ガウィウス・アピキウスの著書『アピキウスの料理書』には肉や野菜を蜂蜜につけて保存する方法について記されている[84]。
- ^ 古代エジプトではミイラを作る際の材料の一つとして用いられたとされる[124]。アレクサンドロス3世がバビロンで死亡すると、死体を蜂蜜に漬けてアレクサンドリアまで運ばれたと伝えられている[125]。
- ^ ミツバチにさされることに求める見解もある[134]。
- ^ 国文学者の山岸徳平はこれを、「荷葉の香の仕方(方法)を、調合に用いた名香は、蜂蜜を目立たぬように少し加えて、ぼろぼろと脆くして焚いた匂いが」と訳している[147]。
- ^ 採蜜をこまめに行う地域では蜜源植物が一つであるといって差し支えない蜂蜜がとれるが、1年に1、2回しか採蜜しない地域では様々な蜜源の蜂蜜が混合し純粋性が損なわれる[162]。
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参考文献
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- 角田公次『ミツバチ 飼育・生産の実際と蜜源植物』農山漁村文化協会〈新特産シリーズ〉、1997年。ISBN 4540961160。
- 原淳『ハチミツの話』六興出版、1988年。ISBN 4845360381。
- 渡辺孝『ハチミツの百科 新装版』真珠書院、2003年。ISBN 4880092150。
- メラ・マン、リチャード・ジョーンズ(編)『ハチミツと代替医療 医療現場での可能性を探る』松香光夫(監訳)、フレグランスジャーナル社、2002年。ISBN 4894790599。
外部リンク
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- 日本養蜂はちみつ協会
- 米国蜂蜜協会
- 農林水産省「消費者の部屋」 - はちみつの成分や保存方法、また白く固まったときの対処方法
- 天然はちみつの輸入手続についてJETRO 日本貿易振興機構(ジェトロ)