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「メサイア (ヘンデル)」の版間の差分

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{{sound|Handel - messiah - 44 hallelujah.ogg|『メサイア』第2部最終曲「ハレルヤ・コーラス」William C. Cutter指揮、MIT Concert Choir}}
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'''メサイア'''(Messiah)は、[[ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル|ヘンデル]]によって作曲された[[オラトリオ]]。HWV.56。
'''メサイア''' (Messiah) は、[[ゲオルク・フリードリヒ・ヘンデル|ヘンデル]]によって作曲された[[オラトリオ]]。HWV.56。


== 概要 ==
== 概要 ==
題は「[[メシア]]」([[救世主]])の[[英語]]読みに由来。[[聖書]]から歌詞を取り(ただし、文脈に合わせて人称代名詞を変更している)、[[イエス・キリスト]]の生涯を題材とした[[独唱]]曲・[[重唱]]曲・[[合唱]]曲で構成されている。ただし、聖書でイエスの生涯を直接描いている[[福音書]]から採用されているテキストは少なく、むしろ[[イザヤ書]]などの[[預言書]]に描かれている救世主についての預言を通して、間接的に救世主たるイエスを浮き彫りにする手法が採られている。
題は「[[メシア]]」([[救世主]])の[[英語]]読みに由来。[[聖書]]から歌詞を取り(ただし、文脈に合わせて人称代名詞を変更している)、[[イエス・キリスト]]の生涯を題材とした[[独唱]]曲・[[重唱]]曲・[[合唱]]曲で構成されている。ただし、聖書でイエスの生涯を直接描いている[[福音書]]から採用されているテキストは少なく、むしろ[[イザヤ書]]などの[[預言書]]に描かれている救世主についての預言を通して、間接的に救世主たるイエスを浮き彫りにする手法が採られている。


歌詞は[[欽定訳聖書]]と『英国国教会[[祈祷書]]』(The Book of Common Prayer、1662)の[[詩編]]から採られており、全て[[英語]]である。[[管弦楽]]の伴奏で合唱・[[独唱]]が繰り返される形式を主とし、管弦楽のみの[[シンフォニア]]や、[[通奏低音]]のみの伴奏によるレチタティーヴォも含む。演奏時間は2時間半前後。初演は、[[1742年]][[4月13日]]、[[アイルランド]]の[[ダブリン]]。その後、ヘンデルの生前何度にも亘って改訂・再演され、現在用いられる楽譜にもいくつかの版がある。
歌詞は[[欽定訳聖書]]と『英国国教会[[祈祷書]]』 (The Book of Common Prayer, 1662) の[[詩編]]から採られており、全て[[英語]]である。[[管弦楽]]の伴奏で合唱・[[独唱]]が繰り返される形式を主とし、管弦楽のみの[[シンフォニア]]や、[[通奏低音]]のみの伴奏によるレチタティーヴォも含む。演奏時間は2時間半前後。初演は、[[1742年]][[4月13日]]、[[アイルランド]]の[[ダブリン]]。その後、ヘンデルの生前何度にも亘って改訂・再演され、現在用いられる楽譜にもいくつかの版がある。


[[ヨハン・ゼバスティアン・バッハ|バッハ]]の[[マタイ受難曲]]、[[ヨハネ受難曲]]と並ぶ、よく知られた宗教的作品である。[[バロック音楽]]、[[宗教音楽]]、[[声楽曲]]といったジャンルの中で常に上位に位置付けられる。合唱の効果も秀逸で、第2部最後の「[[ハレルヤ]](Hallelujah)」(通称「ハレルヤコーラス」)は特に有名である。[[1743年]]、初めて[[ロンドン]]で演奏された際、国王[[ジョージ2世 (イギリス王)|ジョージ2世]]が、ハレルヤコーラスの途中に起立し、後に観客総立ち([[スタンディングオベーション]])になったという逸話がある(現在では、史実ではないと考えられている)。これは、かつて英国で全知全能の神を讃える賛歌が演奏される際には起立する習慣があったことによる。日本においてメサイア[[コンサート]]で聴衆がハレルヤコーラスの部分で立ち上がるのは、この逸話に端を発している<ref>[http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201012070149.html 「芸大メサイア」60年 日本流の「儀式」定着] - 朝日新聞 2010年12月7日</ref>。
[[ヨハン・ゼバスティアン・バッハ|バッハ]]の[[マタイ受難曲]]、[[ヨハネ受難曲]]と並ぶ、よく知られた宗教的作品である。[[バロック音楽]]、[[宗教音楽]]、[[声楽曲]]といったジャンルの中で常に上位に位置付けられる。合唱の効果も秀逸で、第2部最後の「[[ハレルヤ]] (Hallelujah) 」(通称「ハレルヤコーラス」)は特に有名である。[[1743年]]、初めて[[ロンドン]]で演奏された際、国王[[ジョージ2世 (イギリス王)|ジョージ2世]]が、ハレルヤコーラスの途中に起立し、後に観客総立ち([[スタンディングオベーション]])になったという逸話がある(現在では、史実ではないと考えられている)。これは、かつて英国で全知全能の神を讃える賛歌が演奏される際には起立する習慣があったことによる。日本においてメサイア[[コンサート]]で聴衆がハレルヤコーラスの部分で立ち上がるのは、この逸話に端を発している<ref>[http://www.asahi.com/showbiz/music/TKY201012070149.html 「芸大メサイア」60年 日本流の「儀式」定着] - 朝日新聞 2010年12月7日</ref>。


後世の[[編曲]]の中では、[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]による編曲([[ドイツ語]]テキストを使用)が最もよく知られている。
後世の[[編曲]]の中では、[[ヴォルフガング・アマデウス・モーツァルト|モーツァルト]]による編曲([[ドイツ語]]テキストを使用)が最もよく知られている。
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以下に曲の分け方の一例と、その出だしの歌詞を挙げて構成とする。
以下に曲の分け方の一例と、その出だしの歌詞を挙げて構成とする。


=== 第1部メシア到来の預言と誕生、メシアの宣教 ===
=== 第1部: メシア到来の預言と誕生、メシアの宣教 ===
<!--速度指示、調性等については、資料がありませんでした。可能な方は、補充願います。[[利用者:JunK|JunK]]-->
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#(Symphony)
#(Symphony)
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#For unto us a Child is born...
#For unto us a Child is born...
#:「ひとりのみどりごがわれわれのために生れた…(イザヤ書9:6)」 合唱
#:「ひとりのみどりごがわれわれのために生れた…(イザヤ書9:6)」 合唱
#Pifa(Pastoral Symphony)
#Pifa (Pastoral Symphony)
#:パイファ(田園交響曲)
#:パイファ(田園交響曲)
#There were shepherds abiding in the field...
#There were shepherds abiding in the field...
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#:「彼のくびきは負いやすく…(マタイ伝11:30)」 合唱
#:「彼のくびきは負いやすく…(マタイ伝11:30)」 合唱


=== 第2部メシアの受難と復活、メシアの教えの伝搬 ===
=== 第2部: メシアの受難と復活、メシアの教えの伝搬 ===
#Behold the Lamb of God...
#Behold the Lamb of God...
#:「見よ、世の罪を取り除く神の子羊…([[ヨハネによる福音書|ヨハネ伝]]1:29)」 合唱
#:「見よ、世の罪を取り除く神の子羊…([[ヨハネによる福音書|ヨハネ伝]]1:29)」 合唱

2011年8月31日 (水) 21:15時点における版

メサイア (Messiah) は、ヘンデルによって作曲されたオラトリオ。HWV.56。

概要

題は「メシア」(救世主)の英語読みに由来。聖書から歌詞を取り(ただし、文脈に合わせて人称代名詞を変更している)、イエス・キリストの生涯を題材とした独唱曲・重唱曲・合唱曲で構成されている。ただし、聖書でイエスの生涯を直接描いている福音書から採用されているテキストは少なく、むしろイザヤ書などの預言書に描かれている救世主についての預言を通して、間接的に救世主たるイエスを浮き彫りにする手法が採られている。

歌詞は欽定訳聖書と『英国国教会祈祷書』 (The Book of Common Prayer, 1662) の詩編から採られており、全て英語である。管弦楽の伴奏で合唱・独唱が繰り返される形式を主とし、管弦楽のみのシンフォニアや、通奏低音のみの伴奏によるレチタティーヴォも含む。演奏時間は2時間半前後。初演は、1742年4月13日アイルランドダブリン。その後、ヘンデルの生前何度にも亘って改訂・再演され、現在用いられる楽譜にもいくつかの版がある。

バッハマタイ受難曲ヨハネ受難曲と並ぶ、よく知られた宗教的作品である。バロック音楽宗教音楽声楽曲といったジャンルの中で常に上位に位置付けられる。合唱の効果も秀逸で、第2部最後の「ハレルヤ (Hallelujah) 」(通称「ハレルヤコーラス」)は特に有名である。1743年、初めてロンドンで演奏された際、国王ジョージ2世が、ハレルヤコーラスの途中に起立し、後に観客総立ち(スタンディングオベーション)になったという逸話がある(現在では、史実ではないと考えられている)。これは、かつて英国で全知全能の神を讃える賛歌が演奏される際には起立する習慣があったことによる。日本においてメサイアコンサートで聴衆がハレルヤコーラスの部分で立ち上がるのは、この逸話に端を発している[1]

後世の編曲の中では、モーツァルトによる編曲(ドイツ語テキストを使用)が最もよく知られている。

ハレルヤコーラスは、日本の中学校で、合唱コンクール卒業式に歌われることが多い。

演奏時間

約2時間半(各60分、60分、30分)

楽器編成

オーボエ2、ファゴット2、トランペット2、ティンパニ一対、弦5部、通奏低音(チェンバロの代わりに普通はオルガンソプラノアルトテノールバス独唱、4部の混声合唱

構成

構成はまず3部に分けられ、さらに、それぞれの部が何曲かに分けられる場合が多い。 ただし、ヘンデル自身が番号を付けて分けたわけではなく、統一された番号の付け方がある訳ではない。 以下に曲の分け方の一例と、その出だしの歌詞を挙げて構成とする。

第1部: メシア到来の預言と誕生、メシアの宣教

  1. (Symphony)
  2. Comfort ye...
    「慰めよ、わが民を慰めよ…(イザヤ書40:1-3)」 レチタティーヴォ・アコンパニャート(以下、単に「アコンパニャート」と呼称)(テノール独唱)
  3. Every valley shall be exalted...
    「もろもろの谷は高くせられ…(イザヤ書40:4)」 アリア(テノール独唱)
  4. And the glory of the Lord shall be revealed...
    「こうして主の栄光があらわれ…(イザヤ書40:5)」 合唱
  5. Thus saith the Lord of Hosts...
    「まことに、万軍の主はこう言われる…(ハガイ書2:6-7、マラキ書3:1)」 アコンパニャート(バス独唱)
  6. But who may abide the day of His coming...
    「だが、その来る日には、だれが耐え得よう…(マラキ書3:2)」 アリア(アルト独唱)
  7. And He shall purify the sons of Levi...
    「彼はレビの子孫を清め…(マラキ書3:3)」 合唱
  8. Behold, a virgin shall conceive...
    「見よ、おとめがみごもって…(イザヤ書7:14、マタイ伝1:23)」 レチタティーヴォ(アルト独唱)
  9. O thou that tellest good tidings to Zion...
    「よきおとずれをシオンに伝える者よ…(イザヤ書40:9,60:1)」 アリア(アルト独唱)と合唱
  10. For, behold, darkness shall cover the earth...
    「見よ、暗きは地をおおい…(イザヤ書60:2-3)」 アコンパニャート(バス独唱)
  11. The people that walked in darkness...
    「暗やみのなかに歩んでいた民は…(イザヤ書9:2)」 アリア(バス独唱)
  12. For unto us a Child is born...
    「ひとりのみどりごがわれわれのために生れた…(イザヤ書9:6)」 合唱
  13. Pifa (Pastoral Symphony)
    パイファ(田園交響曲)
  14. There were shepherds abiding in the field...
    「羊飼いたちが夜、野宿しながら…(ルカ伝2:8-11,13)」 レチタティーヴォ(ソプラノ独唱)
  15. Glory to God in the highest...
    「いと高きところでは、神に栄光があるように…(ルカ伝2:14)」 合唱
  16. Rejoice greatly, O daughter of Zion...
    「シオンの娘よ、大いに喜べ…(ゼカリア書9:9-10)」 アリア(ソプラノ独唱)
  17. Then shall the eyes of the blind be opened...
    「その時、見えない人の目は開かれ…(イザヤ書35:5-6)」 レチタティーヴォ(ソプラノ独唱またはアルト独唱)
  18. He shall feed His flock like a shephard...
    「主は羊飼いのようにその群れを養い…(イザヤ書40:11、マタイ伝11:28-29)」 アリア(ソプラノ独唱またはソプラノ・アルト独唱)
  19. His yoke is easy...
    「彼のくびきは負いやすく…(マタイ伝11:30)」 合唱

第2部: メシアの受難と復活、メシアの教えの伝搬

  1. Behold the Lamb of God...
    「見よ、世の罪を取り除く神の子羊…(ヨハネ伝1:29)」 合唱
  2. He was despised...
    「彼は侮られて…(イザヤ書53:3,50:6)」 アリア(アルト独唱)
  3. Surely He hath borne our griefs...
    「まことに彼はわれわれの病を負い…(イザヤ書53:4-5)」 合唱
  4. And with His stripes...
    「彼の打たれた傷によって…(イザヤ書53:5)」 合唱
  5. All we like sheep...
    「われわれはみな羊のように迷って…(イザヤ書53:6)」 合唱
  6. All they that see Him...
    「すべて彼を見る者は…(詩篇22:7)」 アコンパニャート(テノール独唱)
  7. He trusted in God...
    「彼は主にみをゆだねた…(詩篇22:8)」 合唱
  8. Thy rebuke hath broken His heart...
    「そしりが彼の心を砕いたので…(詩篇69:20)」 アコンパニャート(テノール独唱またはソプラノ独唱)
  9. Behold, and see...
    「尋ねて見よ…(哀歌1:12)」 アリア(テノール独唱またはソプラノ独唱)
  10. He was cut off out of the land...
    「彼はいけるものの地から断たれ…(イザヤ書53:8)」 アコンパニャート(テノール独唱またはソプラノ独唱)
  11. But thou didst not leave His soul in hell...
    「あなたは彼の魂を陰府(よみ)に捨ておかれず…(詩篇16:10)」 アリア(テノール独唱またはソプラノ独唱)
  12. Lift up your heads...
    「門よ、こうべをあげよ…(詩篇24:7-10)」 合唱
  13. Unto which of the angels...
    「いったい、神は御使いたちの…(ヘブライ書1:5)」 レチタティーヴォ(テノール独唱)
  14. Let all the angels of God worship Him...
    「神の御使いたちはことごとく…(ヘブライ書1:6)」 合唱
  15. Thou art gone up on high...
    「あなたはとりこを率い…(詩篇68:18)」 アリア(アルト独唱またはソプラノ独唱)
  16. The Lord gave the word...
    「主は命令を下される…(詩篇68:11)」 合唱
  17. How beautiful are the feet of them...
    「ああ麗しいかな…(ローマ書10:15)」 アリア(ソプラノ独唱)
  18. Their sound is gone out into all lands...
    「その声は全地にひびきわたり…(ローマ書10:18)」合唱
  19. Why do the nations...
    「なにゆえ、もろもろの国びとは…(詩篇2:1-2)」 アリア(バス独唱)
  20. Let us break their bonds asunder...
    「われらは彼らのかせをこわし…(詩篇2:3)」 合唱
  21. He that dwelleth in heaven...
    「天に座する者は笑い…(詩篇2:4)」 レチタティーヴォ(テノール独唱)
  22. Thou shalt break them...
    「おまえは鉄のつえをもって…(詩篇2:9)」 アリア(テノール独唱)
  23. Hallelujah...
    「ハレルヤ、全能者にして主なるわれらの神は…(黙示録19:6,11:15,19:16)」 合唱(※慣例として、この曲の演奏にあたっては独唱者も起立して合唱に加わる場合が多い。)

第3部:メシアのもたらした救い〜永遠のいのち

  1. I know that my Redeemer liveth...
    「わたしは知る、わたしをあがなう者は生きておられる…(ヨブ記19:25-26、コリント前書15:20)」 アリア(ソプラノ)
  2. Since by man came death...
    「それは、死がひとりの人によってきたのだから…(コリント前書15:21-22)」 合唱
  3. Behold, I tell you a mystery...
    「ここで、あなたがたに奥義を告げよう…(コリント前書15:51-52)」 アコンパニャート(バス独唱)
  4. The trumpet shall sound...
    「ラッパが響いて…(コリント前書15:52-54)」 アリア(バス独唱)
  5. Then shall be brought...
    「そのとき、聖書に書いてある言葉が成就する…(コリント前書15-54)」 レチタティーヴォ(アルト独唱)
  6. O death, where is thy sting?...
    「死よ、お前の勝利は、どこにあるのか…(コリント前書15:55-57)」 デュエット(アルト・テノール二重唱)、合唱
  7. If God be for us...
    「もし、神がわたしたちの味方であるなら…(ローマ書8:31,33-34)」 アリア(ソプラノ独唱またはアルト独唱)
  8. Worthy is the Lamb...
    「ほふられた小羊こそは…(黙示録5:12-13)」 合唱
    • Amen...
      「アーメン(黙示録5:14)」 合唱 (通称「アーメンコーラス」。譜面上は、独立した演奏番号は与えられず、前段の"Worthy is the Lamb..."と一体で記されている場合が多い)

脚注

外部リンク