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'''ワイルドハント'''(Wild Hunt)は、[[ヨーロッパ]]の大部分の地域に、古くから伝わる[[伝承]]である。いずれの地域においても、想像上の[[猟師]]の一団が、狩猟道具を携え、馬や[[猟犬]]と共に、空や大地を大挙して移動して行くものであると |
'''ワイルドハント'''(Wild Hunt)は、[[ヨーロッパ]]の大部分の地域に、古くから伝わる[[伝承]]である。いずれの地域においても、想像上の[[猟師]]の一団が、狩猟道具を携え、馬や[[猟犬]]と共に、空や大地を大挙して移動して行くものであるといわれている<ref name=ab>Schön, Ebbe. (2004). Asa-Tors hammare, Gudar och jättar i tro och tradition (Fält & Hässler, Värnamo). ISBN 91-89660-41-2 pp. 201-205.</ref> 。 |
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== 概要 == |
== 概要 == |
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[[File:Aasgaardreien peter nicolai arbo.jpg|thumb|right|300px|ワイルドハント [[ペーテル・ニコライ・アルボ]] |
[[File:Aasgaardreien peter nicolai arbo.jpg|thumb|right|300px|ワイルドハント [[ペーテル・ニコライ・アルボ]]作]] |
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猟師たちは死者あるいは[[妖精]](民話の中で、死と関連する妖精)であり<ref name=cd>See, for example, Chambers's Encyclopaedia, 1901, s.v. "Wild Hunt": "[Gabriel's Hounds]...portend death or calamity to the house over which they hang"; "the cry of the Seven Whistlers... a death omen".</ref>、猟師の頭領は[[亡霊]]、[[多神教]]の神、あるいは[[精霊]](男女を問わない)、または歴史上や伝説上の人物であると言われる。例をあげれば、[[テオドリック|東ゴート王テオドリック]]、[[ヴァルデマー4世|デンマーク王ヴァルデマー4世]]、[[ウェールズ]]で霊魂を冥界に導くとされる[[グウィン・アプ・ニート]]、または[[北欧神話]]の神[[オーディン]]、また[[アーサー王]]のこともある。<ref name=ab/><ref>K. M. Briggs, The Fairies in English Tradition and Literature, p 49. University of Chicago Press, London, 1967.</ref><br/>この狩猟団を目にすることは、戦争や[[疫病]]といった、大きな災いを呼び込むものだと考えられており、目撃した者は、死を免れなかった<ref name=cd/>。他にも、狩猟団を妨害したり、追いかけたりした者は、彼らにさらわれて冥土へ連れて行かれたといわれる<ref>Katharine Briggs, An Encyclopedia of Fairies, Hobgoblins, Brownies, Boogies, and Other Supernatural Creatures, "Infringement of fairy privacy", p 233. ISBN 0-394-73467-X</ref>。また、彼らの仲間に加わる夢を見ると、魂が肉体から引き離されるとも信じられていた<ref>Ronald Hutton, The Pagan Religions of the Ancient British Isles: Their Nature and Legacy, p 307, ISBN 0-631-18946-7</ref>。<br/><br/> |
猟師たちは死者あるいは[[妖精]](民話の中で、死と関連する妖精)であり<ref name=cd>See, for example, Chambers's Encyclopaedia, 1901, s.v. "Wild Hunt": "[Gabriel's Hounds]...portend death or calamity to the house over which they hang"; "the cry of the Seven Whistlers... a death omen".</ref>、猟師の頭領は[[亡霊]]、[[多神教]]の神、あるいは[[精霊]](男女を問わない)、または歴史上や伝説上の人物であると言われる。例をあげれば、[[テオドリック|東ゴート王テオドリック]]、[[ヴァルデマー4世|デンマーク王ヴァルデマー4世]]、[[ウェールズ]]で霊魂を冥界に導くとされる[[グウィン・アプ・ニート]]、または[[北欧神話]]の神[[オーディン]]、また[[アーサー王]]のこともある。<ref name=ab/><ref>K. M. Briggs, The Fairies in English Tradition and Literature, p 49. University of Chicago Press, London, 1967.</ref><br/>この狩猟団を目にすることは、戦争や[[疫病]]といった、大きな災いを呼び込むものだと考えられており、目撃した者は、死を免れなかった<ref name=cd/>。他にも、狩猟団を妨害したり、追いかけたりした者は、彼らにさらわれて冥土へ連れて行かれたといわれる<ref>Katharine Briggs, An Encyclopedia of Fairies, Hobgoblins, Brownies, Boogies, and Other Supernatural Creatures, "Infringement of fairy privacy", p 233. ISBN 0-394-73467-X</ref>。また、彼らの仲間に加わる夢を見ると、魂が肉体から引き離されるとも信じられていた<ref>Ronald Hutton, The Pagan Religions of the Ancient British Isles: Their Nature and Legacy, p 307, ISBN 0-631-18946-7</ref>。<br/><br/> |
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==オーディンとの関連== |
==オーディンとの関連== |
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[[File:Christmas throughout Christendom - Odin as the Wild Huntsman.png|right|thumb|250px|オーディンのワイルドハント]] |
[[File:Christmas throughout Christendom - Odin as the Wild Huntsman.png|right|thumb|250px|オーディンのワイルドハント]] |
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[[北欧神話]]ではオーディンの狩猟団とされており、「オーディンの渡り」とも呼ばれる。[[クリスマス]]の時期に主に現れるが、[[春分]]や[[秋分]]の頃にも出現する。これは、その季節に吹く[[暴風]]と関係があるとされ、また、オーディン自身が死者の魂を運ぶ風とする説もある<ref>山室静 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい 世界の神話8』筑摩書房、1982年、53頁</ref> |
[[北欧神話]]ではオーディンの狩猟団とされており、「オーディンの渡り」とも呼ばれる。[[クリスマス]]の時期に主に現れるが、[[春分]]や[[秋分]]の頃にも出現する。これは、その季節に吹く[[暴風]]と関係があるとされ、また、オーディン自身が死者の魂を運ぶ風とする説もある。<ref>山室静 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい 世界の神話8』筑摩書房、1982年、53頁</ref>かつてのゲルマン世界で、クリスマス前後の、[[燻し十二夜]]の頃は雪嵐が多く、その嵐にオーディンの到来を人々は重ね合わせた。また、このころ祖先の霊が帰って来るという言い伝えがあり、今も、特に[[北欧]]ではこの習慣が守られていて、故人の好んだ料理を作って並べ、馬の[[手綱]]を解いて、故人の霊が乗れるようにしておくという。 |
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{{Main|ユール}} |
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また、オ-ディンがもたらす風が、翌年の豊穣を約束するともいわれた。しかし時がたつに連れ、オーディンの群れは[[魔物]]化して行き、多くの精霊や妖怪、悪事を働いた者や非業の死を遂げた者をも引き連れた軍団へと変化して行った。ワイルドハントに出逢ったら、通り過ぎるのを待つか、三つの[[十字架]]を前に並べるともいわれる。この三つの十字架には、キリスト教の影響が窺える。これは日本の[[百鬼夜行]]にも通ずるものがある。かつては物忌の象徴であったものが、いつの間にか恐ろしい物の怪の集団となって行ったのである。<ref>植田重雄著 『ヨーロッパの祭と伝承』 講談社学術文庫 1999年、16-21頁。</ref> |
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また別の地域では、[[聖ニコラウス]]の日に、「オーディン(ヴォーダン)」をはじめとし、[[麦わら]]の妖精シャープ、さまざまな精霊や、化け物の格好をした人々の行列が練り歩く。先頭は道案内の神の[[エケハルト]]で、大天使の[[ミヒャエル]]と共にサンクト・ニコラウスがやって来る。行列のさらに後ろからは、毛皮を着て、色とりどりの面をつけ、角を生やした鬼が続くと言われる。<ref>芳賀日出男 『ヨーロッパ古層の異人たち 祝祭と信仰』 東京書籍、2003年、76-77頁。</ref> |
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==ヨーロッパ各地での伝承== |
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===イングランドとウェールズ=== |
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{{Quotation|多くの人々が、大勢の猟師たちが狩りをしているのを、目または耳にしていた。彼らは黒く、巨大で醜く、黒い[[馬]]または雄の[[ヤギ]]に乗っていた。彼らの連れていた犬は漆黒で、皿のような耳をしていて、恐ろしかった。[[ピーターバラ]]のディアパークの、正のその空に見えた。その町から[[スタンフォード]]まで、森づたいに、その光景が見えていた。その夜[[修道士]]たちは、彼らが[[笛]]を吹いているのを耳にした。|<ref>a b Garmonsway, G.N., The Anglo-Saxon Chronicle, Dent, Dutton, 1972 & 1975, p. 258.</ref>}} |
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[[File:Wistmans 2.JPG|thumb|right|200px|デボンのウィストマンウッドの森]] |
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[[File:Sir Francis Drake by Jodocus Hondius.jpg|thumb|right|120px|サー・フランシス・ドレイク]] |
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ワイルドハントは、時を経るに従って、オーディン以外の神や、民話の[[英雄]]が狩猟団の頭領となっていく。それは[[アーサー王]]であったり、[[ダートムア]]の民間伝承では、[[フランシス・ドレイク|サー・フランシス・ドレイク]]であったりする。[[サマセット]]の[[キャドバリー城]]近くの古い道はキング・アーサー・レインと呼ばれており、19世紀の時点でも、風の強い冬の夜は、アーサー王が犬を連れてそこを疾駆するという話が信じられていた<ref>[17.^ a b Westwood, Jennifer (1985), Albion. A Guide to Legendary Britain. London : Grafton Books. ISBN 0-246-11789-3. p. 8.}</ref>。英国のある場所では、この狩猟団は、宗教上の[[大罪]]を犯した者や、[[受洗]]していない者を追いかける[[地獄]]の猟犬であると言われている。[[デボン]]では、イェス(ヒース)まてゃウィシュトハウンドと呼ばれ、[[コーンウォール]]ではダンドーと犬たち、またはデビルとダンディードッグと呼ばれる。[[ウェールズ]]ではクンアンゥン(地獄の猟犬)、サマセットではガブリエル・ラチェッツまたはレチェッツ(犬)、デボンでは特に、[[ウィストマンウッド]]で見られるという。<ref>18.^ Westwood, Jennifer (1985), Albion. A Guide to Legendary Britain. Pub. Grafton Books, London. ISBN 0-246-11789-3. P. 32.</ref> |
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イングランドで主にワイルドハントの首領と考えられるのは、イングランド オーディン<ref>Hole, Christina. Haunted England: A Survey of English Ghost Lore. p.5. Kessinger Publishing, 1941.</ref>、オーデインの形をしたヘルラ<ref>www.encyclopedia.com/doc/1E1-X-Harlequi.html</ref><ref>cernunnos.tribe.net/thread/d71e3e69-b694-4f44-ab28-5eeb0e6e9a90</ref>サクソンの富豪でノルマンに盾突いた[[エドリック]]<ref>Katharine Briggs, An Encyclopedia of Fairies, Hobgoblins, Brownies, Boogies, and Other Supernatural Creatures, "Wild Hunt", p 436. ISBN 0-394-73467-X</ref>、アーサー王、サー・フランシス・ドレークなどである。 |
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[[ウェールズ]]では[[マリュティノス]](マチルダ・オブ・ザ・ナイトまたはナイト・マリュト)の伝承もある。マリュティノスは、かつては不信心な貴婦人で、[[狩り]]が大好きで、「[[天国]]に狩りがないのなら、行かない方がいいわ」と口にしてしまったため、死後はその望み通りになり、暴れ馬に乗って、[[アラウン]]と共に、泣きわめくような声をあげながら、[[クリスマス]]や[[大晦日]]に、[[アヌンウン]]の[[犬]]の亡霊を走らせるという。<ref>[http://books.google.co.jp/books?id=zmYHrsC6cYIC&pg=PA49&lpg=PA49&dq=Mallt-y-Nos%E3%80%80Matilda+of+the+night&source=bl&ots=e9XAvqrIPs&sig=BncpNPI-DSr_dlnHGw7D9uofY8Q&hl=ja&ei=_YZITpGoCenTmAXswJz3Bg&sa=X&oi=book_result&ct=result&resnum=1&ved=0CBgQ6AEwADgK#v=onepage&q=Mallt-y-Nos%E3%80%80Matilda%20of%20the%20night&f=false Mallt-y-Nos Matilda of the Night Folk-lore and folk-stories of Wales - Googleブックス]</ref> |
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===ドイツ=== |
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時に、狩猟団が[[ドラゴン]]や[[悪魔]]を連れているという話がある。猟師たちは馬、または[[馬車]]に乗っている場合が多く、何頭かの犬を引き連れている。特に若い[[女性]]は、罪があろうとなかろうと、彼らの獲物となる。この話の多くは、ワイルドハントに出くわして難を逃れた人々によるもので、もし彼らの道をふさぐようなことをすれば罰せられ、もし彼らの手助けをすれば、金や[[黄金]]、あるいは、かなり高い確率で、死者や死んだ動物の[[脚]]が与えられる。この人間や動物たちは、呪われて逃れられなかった者たちである。この場合、その人は[[聖職者]]や[[魔術師]]に頼んでワイルドハントを撃退してもらうか、[[塩]]をねだって、脚を取り戻させるように仕向ける。ワイルドハントは塩を渡すことができないからである。多くの場合、狩猟団が通過する間、道の中央より右側にいた人は安全だと言われる。<ref>Hoffmann-Krayer, Eduard; Baechtold-Staeubli, Hanns, ed (2002) (in German). Handwörterbuch des deutschen Aberglaubens. Waage- Zypresse, Nachträge. Handwörterbuecher zur Deutschen Volkskunde. 1. de Gruyter. pp. 191ff. ISBN 3110065975. http://www.google.de/books?id=cqdVHI1lHGkC&pg=PA191.</ref><ref>Neumann, Siegfried; Tietz, Karl-Ewald; Jahn, Ulrich (1999). Neumann, Siegfried; Tietz, Karl-Ewald. ed (in German). Volkssagen aus Pommern und Rügen. Bremen-Rostock: Edition Temmen. pp. 407, 29ff. ISBN 3-86108-733-2.</ref><ref>Simrock, Karl (2002 reprint of 1878 edition) (in German). Handbuch der deutschen Mythologie mit Einschluß der Nordischen. Elibron Classics. Adamant. pp. 191, 196ff. ISBN 1421204282.</ref><ref>http://www.google.de/books?id=_UHobawczmEC&pg=PA197&dq=%22wilde+jagd%22+wode&lr=&as_drrb_is=b&as_minm_is=0&as_miny_is=1980&as_maxm_is=0&as_maxy_is=2010&as_brr=3&cd=1#v=onepage&q=%22wilde%20jagd%22%20&f=false. |
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</ref>ドイツでは、ヴォーダン(オーディン)、ベルヒトルト、ベルネのディートリッヒ、[[ホルタ]]、[[ペルヒタ]]、ビルデヒャイト、ローデンシュタインとハンス・フォン・ハッケルベルクの従者(2人とも安息日を破った罪人)などが首領とされている<ref>Ruben A. Koman, Dalfser Muggen Profiel, Bedum 2006.</ref>。 |
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===スウェーデン=== |
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北欧では、オーディンのワイルドハントは、耳にはしても、めったに見られない。典型的なものとしては、オーディンの2頭の犬が、1頭は騒がしく、1頭は弱々しく吠えるということである。この吠える声は、誰にでも聞き分けられる。多くの地域では、この声が聞こえると、天候が変わると言われているが、[[戦争]]や社会不安の前兆の場合もある。幾つかの報告によると、静かな森で、犬が鼻を鳴らす音と吠える声だけが聞こえたという。スウェーデンでは、特に[[ゴートランド]]にこの伝承が広まっている。ここは、古くからオーディン信仰があった地域でもある。民間伝承のオーディンは、神話で見せる姿とは違い、外部からの影響が大きいのは特筆すべきことである。キリスト教以前の時代から今に至るまで、オーディン信仰は、人びとの信心に強い影響を与えている。 |
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[[File:Thor.jpg|thumb|right|黒ヤギが引くトールの馬車]] |
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ワイルドハントは、古代ゲルマン信仰が発祥なのは明らかである。近年のオーディンの伝承が、オーディン自身と彼の神性とを結びつけようとしないのは、注目されるべきである。何世紀もにわたり、オーディンは[[エウヘメロス]]の説に基づいて、伝説の人物であり、悪魔のように恐ろしく、危険な存在とされて来たが、[[北欧神話]]の主神とのはっきりした関連付けは見られなかった。スウェーデン西部、また東部でも、オーディンは[[貴族]]であり[[王]]ですらあった、[[日曜日]]にも狩りをし、そのため、この世の終わりまで、超自然的なものを追い詰め、狩ることを運命づけられたのだと言い伝えられている。 |
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オーディンは、馬ではなく、やはり北欧神話に登場する[[トール]]が乗っているような馬車で駆け回っているともいわれている。オーディンが現れるという地域には、それぞれの伝説があるようで、[[オーランド]]のガルドローサでは、オーディンが、険しい岩山に馬をつなぎ、馬がつながれた綱を強く引っ張ったところ、岩山は粉々に砕け、そして馬も地上に落ちて、底なし[[沼]]ができたと言われる。[[スモーランド]]のある地域では、犬たちが疲れて来ると、オーディンは大きな[[鳥]]たちを使って狩りをしたという話がある。その鳥は、[[スズメ]]の群れを変身させたものであるという。また、かつて通った道に家が建っていれば、その家は燃やされてしまう。またある伝説によれば、雄牛に[[くびき]]をつけている時は、オーディンは狩りをしないといい、オーディンが狩りをしているときは、地面に身を投げ出して、悪いことをされないようにするのが一番いいやり方だという。スモーランドのアルグールトでは、クリスマスに[[教会]]に行く時は、[[パン]]をひとかけらと[[金属]]を一片もって行くのが一番いいという。もしつばの広い帽子をかぶった狩人<ref>オーディンを指していると考えられる</ref>に出会った場合、自分の前に金属を投げる、しかし犬に最初に出会った場合は、その代わりにパンを投げるのがいいとされる。<ref>Schön, Ebbe. (2004). Asa-Tors hammare, Gudar och jättar i tro och tradition (Fält & Hässler, Värnamo). ISBN 91-89660-41-2 pp. 201-205.</ref> |
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== 関連作品(音楽) == |
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*[[ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ]] |
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*[[みなぎ得一作品の登場人物]] |
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*[[百鬼夜行]] |
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== 脚注 == |
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2011年8月16日 (火) 15:18時点における版
ワイルドハント(Wild Hunt)は、ヨーロッパの大部分の地域に、古くから伝わる伝承である。いずれの地域においても、想像上の猟師の一団が、狩猟道具を携え、馬や猟犬と共に、空や大地を大挙して移動して行くものであるといわれている[1] 。
概要
猟師たちは死者あるいは妖精(民話の中で、死と関連する妖精)であり[2]、猟師の頭領は亡霊、多神教の神、あるいは精霊(男女を問わない)、または歴史上や伝説上の人物であると言われる。例をあげれば、東ゴート王テオドリック、デンマーク王ヴァルデマー4世、ウェールズで霊魂を冥界に導くとされるグウィン・アプ・ニート、または北欧神話の神オーディン、またアーサー王のこともある。[1][3]
この狩猟団を目にすることは、戦争や疫病といった、大きな災いを呼び込むものだと考えられており、目撃した者は、死を免れなかった[2]。他にも、狩猟団を妨害したり、追いかけたりした者は、彼らにさらわれて冥土へ連れて行かれたといわれる[4]。また、彼らの仲間に加わる夢を見ると、魂が肉体から引き離されるとも信じられていた[5]。
オーディンとの関連
北欧神話ではオーディンの狩猟団とされており、「オーディンの渡り」とも呼ばれる。クリスマスの時期に主に現れるが、春分や秋分の頃にも出現する。これは、その季節に吹く暴風と関係があるとされ、また、オーディン自身が死者の魂を運ぶ風とする説もある。[6]かつてのゲルマン世界で、クリスマス前後の、燻し十二夜の頃は雪嵐が多く、その嵐にオーディンの到来を人々は重ね合わせた。また、このころ祖先の霊が帰って来るという言い伝えがあり、今も、特に北欧ではこの習慣が守られていて、故人の好んだ料理を作って並べ、馬の手綱を解いて、故人の霊が乗れるようにしておくという。
また、オ-ディンがもたらす風が、翌年の豊穣を約束するともいわれた。しかし時がたつに連れ、オーディンの群れは魔物化して行き、多くの精霊や妖怪、悪事を働いた者や非業の死を遂げた者をも引き連れた軍団へと変化して行った。ワイルドハントに出逢ったら、通り過ぎるのを待つか、三つの十字架を前に並べるともいわれる。この三つの十字架には、キリスト教の影響が窺える。これは日本の百鬼夜行にも通ずるものがある。かつては物忌の象徴であったものが、いつの間にか恐ろしい物の怪の集団となって行ったのである。[7]
また別の地域では、聖ニコラウスの日に、「オーディン(ヴォーダン)」をはじめとし、麦わらの妖精シャープ、さまざまな精霊や、化け物の格好をした人々の行列が練り歩く。先頭は道案内の神のエケハルトで、大天使のミヒャエルと共にサンクト・ニコラウスがやって来る。行列のさらに後ろからは、毛皮を着て、色とりどりの面をつけ、角を生やした鬼が続くと言われる。[8]
ヨーロッパ各地での伝承
イングランドとウェールズ
ワイルドハントは、時を経るに従って、オーディン以外の神や、民話の英雄が狩猟団の頭領となっていく。それはアーサー王であったり、ダートムアの民間伝承では、サー・フランシス・ドレイクであったりする。サマセットのキャドバリー城近くの古い道はキング・アーサー・レインと呼ばれており、19世紀の時点でも、風の強い冬の夜は、アーサー王が犬を連れてそこを疾駆するという話が信じられていた[10]。英国のある場所では、この狩猟団は、宗教上の大罪を犯した者や、受洗していない者を追いかける地獄の猟犬であると言われている。デボンでは、イェス(ヒース)まてゃウィシュトハウンドと呼ばれ、コーンウォールではダンドーと犬たち、またはデビルとダンディードッグと呼ばれる。ウェールズではクンアンゥン(地獄の猟犬)、サマセットではガブリエル・ラチェッツまたはレチェッツ(犬)、デボンでは特に、ウィストマンウッドで見られるという。[11]
イングランドで主にワイルドハントの首領と考えられるのは、イングランド オーディン[12]、オーデインの形をしたヘルラ[13][14]サクソンの富豪でノルマンに盾突いたエドリック[15]、アーサー王、サー・フランシス・ドレークなどである。
ウェールズではマリュティノス(マチルダ・オブ・ザ・ナイトまたはナイト・マリュト)の伝承もある。マリュティノスは、かつては不信心な貴婦人で、狩りが大好きで、「天国に狩りがないのなら、行かない方がいいわ」と口にしてしまったため、死後はその望み通りになり、暴れ馬に乗って、アラウンと共に、泣きわめくような声をあげながら、クリスマスや大晦日に、アヌンウンの犬の亡霊を走らせるという。[16]
ドイツ
時に、狩猟団がドラゴンや悪魔を連れているという話がある。猟師たちは馬、または馬車に乗っている場合が多く、何頭かの犬を引き連れている。特に若い女性は、罪があろうとなかろうと、彼らの獲物となる。この話の多くは、ワイルドハントに出くわして難を逃れた人々によるもので、もし彼らの道をふさぐようなことをすれば罰せられ、もし彼らの手助けをすれば、金や黄金、あるいは、かなり高い確率で、死者や死んだ動物の脚が与えられる。この人間や動物たちは、呪われて逃れられなかった者たちである。この場合、その人は聖職者や魔術師に頼んでワイルドハントを撃退してもらうか、塩をねだって、脚を取り戻させるように仕向ける。ワイルドハントは塩を渡すことができないからである。多くの場合、狩猟団が通過する間、道の中央より右側にいた人は安全だと言われる。[17][18][19][20]ドイツでは、ヴォーダン(オーディン)、ベルヒトルト、ベルネのディートリッヒ、ホルタ、ペルヒタ、ビルデヒャイト、ローデンシュタインとハンス・フォン・ハッケルベルクの従者(2人とも安息日を破った罪人)などが首領とされている[21]。
スウェーデン
北欧では、オーディンのワイルドハントは、耳にはしても、めったに見られない。典型的なものとしては、オーディンの2頭の犬が、1頭は騒がしく、1頭は弱々しく吠えるということである。この吠える声は、誰にでも聞き分けられる。多くの地域では、この声が聞こえると、天候が変わると言われているが、戦争や社会不安の前兆の場合もある。幾つかの報告によると、静かな森で、犬が鼻を鳴らす音と吠える声だけが聞こえたという。スウェーデンでは、特にゴートランドにこの伝承が広まっている。ここは、古くからオーディン信仰があった地域でもある。民間伝承のオーディンは、神話で見せる姿とは違い、外部からの影響が大きいのは特筆すべきことである。キリスト教以前の時代から今に至るまで、オーディン信仰は、人びとの信心に強い影響を与えている。
ワイルドハントは、古代ゲルマン信仰が発祥なのは明らかである。近年のオーディンの伝承が、オーディン自身と彼の神性とを結びつけようとしないのは、注目されるべきである。何世紀もにわたり、オーディンはエウヘメロスの説に基づいて、伝説の人物であり、悪魔のように恐ろしく、危険な存在とされて来たが、北欧神話の主神とのはっきりした関連付けは見られなかった。スウェーデン西部、また東部でも、オーディンは貴族であり王ですらあった、日曜日にも狩りをし、そのため、この世の終わりまで、超自然的なものを追い詰め、狩ることを運命づけられたのだと言い伝えられている。
オーディンは、馬ではなく、やはり北欧神話に登場するトールが乗っているような馬車で駆け回っているともいわれている。オーディンが現れるという地域には、それぞれの伝説があるようで、オーランドのガルドローサでは、オーディンが、険しい岩山に馬をつなぎ、馬がつながれた綱を強く引っ張ったところ、岩山は粉々に砕け、そして馬も地上に落ちて、底なし沼ができたと言われる。スモーランドのある地域では、犬たちが疲れて来ると、オーディンは大きな鳥たちを使って狩りをしたという話がある。その鳥は、スズメの群れを変身させたものであるという。また、かつて通った道に家が建っていれば、その家は燃やされてしまう。またある伝説によれば、雄牛にくびきをつけている時は、オーディンは狩りをしないといい、オーディンが狩りをしているときは、地面に身を投げ出して、悪いことをされないようにするのが一番いいやり方だという。スモーランドのアルグールトでは、クリスマスに教会に行く時は、パンをひとかけらと金属を一片もって行くのが一番いいという。もしつばの広い帽子をかぶった狩人[22]に出会った場合、自分の前に金属を投げる、しかし犬に最初に出会った場合は、その代わりにパンを投げるのがいいとされる。[23]
関連作品(音楽)
- カール・マリア・フォン・ウェーバー 『魔弾の射手』
- フランツ・リスト 『超絶技巧練習曲』(別名がWilde Jagd、ドイツ語でワイルドハント)
- アーノルト・シェーンベルク 『グレの歌』
- スタン・ジョーンズ 『ゴースト・ライダーズ・イン・ザ・スカイ』
- セリオン Vovin
- Aes Dana Las Chasse Sauvage(フランス語でワイルドハント)
- トーレスト・マン・オン・アース 『ワイルドハント(The Wild Hunt)』日本でのデビューアルバム[24]
- Omnia Crone of War
- Heidevolk (バイキングメタルバンド) Walhalla Wacht
関連作品(ゲーム・漫画)
ゲーム
- Vampire: The Masquerade
- 真・女神転生
- Witcher
- Fate/EXTRA
- 異界戦記カオスフレア
漫画
- 足洗邸の住人たち。(中央七支柱第四軍の団長フレルティが「亡霊騎行」隊長、副隊長エリゴスと特攻隊長バシンが隊員という設定)
関連項目
脚注
- ^ a b Schön, Ebbe. (2004). Asa-Tors hammare, Gudar och jättar i tro och tradition (Fält & Hässler, Värnamo). ISBN 91-89660-41-2 pp. 201-205.
- ^ a b See, for example, Chambers's Encyclopaedia, 1901, s.v. "Wild Hunt": "[Gabriel's Hounds]...portend death or calamity to the house over which they hang"; "the cry of the Seven Whistlers... a death omen".
- ^ K. M. Briggs, The Fairies in English Tradition and Literature, p 49. University of Chicago Press, London, 1967.
- ^ Katharine Briggs, An Encyclopedia of Fairies, Hobgoblins, Brownies, Boogies, and Other Supernatural Creatures, "Infringement of fairy privacy", p 233. ISBN 0-394-73467-X
- ^ Ronald Hutton, The Pagan Religions of the Ancient British Isles: Their Nature and Legacy, p 307, ISBN 0-631-18946-7
- ^ 山室静 『北欧の神話 神々と巨人のたたかい 世界の神話8』筑摩書房、1982年、53頁
- ^ 植田重雄著 『ヨーロッパの祭と伝承』 講談社学術文庫 1999年、16-21頁。
- ^ 芳賀日出男 『ヨーロッパ古層の異人たち 祝祭と信仰』 東京書籍、2003年、76-77頁。
- ^ a b Garmonsway, G.N., The Anglo-Saxon Chronicle, Dent, Dutton, 1972 & 1975, p. 258.
- ^ [17.^ a b Westwood, Jennifer (1985), Albion. A Guide to Legendary Britain. London : Grafton Books. ISBN 0-246-11789-3. p. 8.}
- ^ 18.^ Westwood, Jennifer (1985), Albion. A Guide to Legendary Britain. Pub. Grafton Books, London. ISBN 0-246-11789-3. P. 32.
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