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|和名 = セイヨウオオマルハナバチ |
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[[画像:Bumblebee October 2007-3a.jpg|thumb |right|250px|盗蜜するセイヨウオオマルハナバチ]] |
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'''セイヨウオオマルハナバチ'''(''Bombus terrestris'')は、[[昆虫綱]]・[[ハチ目]](膜翅目)・[[ミツバチ科]]に分類される[[マルハナバチ]]の一種。[[ |
'''セイヨウオオマルハナバチ'''(''Bombus terrestris'')は、[[昆虫綱]]・[[ハチ目]](膜翅目)・[[ミツバチ科]]に分類される[[マルハナバチ]]の一種。[[ヨーロッパ]]原産で、日本には[[外来種]]として野外に定着している。 |
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== 分布 == |
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[[ヨーロッパ]]原産。 |
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日本や[[オーストラリア]]などに移入分布している<ref name="Bjg"/>。 |
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日本では1991年に[[静岡県]]農業試験場で初めて導入された。2007年までに27都道府県で目撃されている。 |
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== 形態 == |
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体長は女王バチで18-22mm、働きバチで10-18mm<ref name="Bjg"/>。マルハナバチ共通の特徴である丸っこく、毛むくじゃらな体は本種も同じである。胸部と腹部は黄色と黒色の縞模様で、腹部第5節から先端までが白く、日本ではこの「真っ白なお尻」が他のマルハナバチ類と本種とを区別するための大きな特徴となる。[[北海道]]東部に生息する[[在来種]]の[[ノサップマルハナバチ]]の働きバチに姿がよく似る<ref name="Idb">[http://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/60080.html セイヨウオオマルハナバチ] [[国立環境研究所]] 侵入生物DB</ref>。女王バチ・働きバチ・雄バチいずれも斑紋に違いはない<ref name="Bjg"/>。 |
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体長は女王バチで18-22mm、働きバチで10-18mm。胸部と腹部は黄色と黒色の縞模様で、腹部第5節から先端までが白い。 |
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== 生態 == |
== 生態 == |
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市街地など庭先でも普通にみられる。 |
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女王が単独で越冬し、5-6月に土中に営巣する。マルハナバチ類は[[ネズミ]]の古巣を利用して地下に営巣するが、適当な巣が限られるため、他のマルハナバチの巣を乗っ取ることがあり、とくに本種はそうした巣の略奪をよく行う<ref name="Rsinnyu">{{Cite journal|和書|author=鷲谷いづみ|year=1998| title=保全生態学からみたセイヨウオオマルハナバチの侵入問題|journal=日本生態学会誌|volume=48|issue=1|url= http://ci.nii.ac.jp/els/110001880957.pdf?id=ART0002056101&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1313887123&cp=|format=PDF|pages=73-78|accessdate=2011-08-21}}</ref>。[[イギリス]]では、1 つのコロニーから20 個体もの女王バチの死骸が発見されており、同種間で激しい巣の奪い合いが発生しているものと考えられる<ref name="Rsyohin">{{Cite journal|和書|author=米田昌浩・土田浩治・五箇公一|year=2008| title=商品マルハナバチの生態リスクと特定外来生物法|journal=日本応用動物昆虫学会誌|volume=52|issue=2|url= http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaez/52/2/47/_pdf/-char/ja/|format=PDF|pages=47-62|accessdate=2011-08-21}}</ref>。必ずしもネズミの古巣だけを利用するわけではなく、捨てられたカーペットや椅子、芝刈り機といった人工物や人家の床下の断熱材の中に営巣している事例も報告されている<ref name="Rsinnyu"/><ref name="Rsyohin"/>。1つの巣あたりで生産されるハチの数は、働きバチと雄バチで800-1000頭、新女王バチは60-180頭にもなる<ref name="Rhidaka">{{Cite journal|和書|author=松村千鶴・中島真紀・横山潤・鷲谷いづみ|year=2004| title=北海道日高地方で発見されたセイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris L.)の自然巣における高い増殖能力|journal=保全生態学研究|volume=9|issue=1|url=http://ci.nii.ac.jp/els/110004741104.pdf?id=ART0007483740&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1313887332&cp= |format=PDF|pages=93-101|accessdate=2011-08-21}}</ref>。[[ニュージーランド]]では900頭の新女王バチと3000頭の成虫ハチを生産した巣が発見されたこともある<ref name="Rhidaka"/>。この営巣規模の大きさは、他のマルハナバチ類と比較しても圧倒的に巨大で、北海道の調査では本種の1巣あたりの新女王バチの生産数は在来種のハチと比べて約4倍との記録がある<ref name="Rhidaka"/>。 |
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32度以上の環境下に長時間さらされると、花粉で作られた巣が溶け出してしまい、幼虫が死亡する<ref name="Idb"/>。 |
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[[スズメバチ]]のような攻撃性の強いハチではなく、日常生活で刺される事態はまずない。しかし、本種はマルハナバチ類の中では巣の防衛能力が強い種なので、巣を駆除しようする際は細心の注意が必要である<ref name="Rhidaka"/>。 |
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==外来種問題 == |
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セイヨウオオマルハナバチは1980年代に[[オランダ]]と[[ベルギー]]で周年飼育法が確立され、農作物の[[送粉者|花粉媒介昆虫]]として世界中で利用されている<ref name="Rhidaka"/>。 |
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日本では1991年に[[静岡県]]農業試験場で初めて導入された。温室[[トマト]]の受粉に用いるため原産国であるオランダやベルギーから人工増殖コロニーが1992年頃から本格的に大量に輸入され始めた<ref name="Rsinnyu"/>。セイヨウオオマルハナバチの導入によって、労力のかかる[[植物ホルモン]]剤処理を行わずに簡単にトマトの結実が可能となり、トマト生産の効率化に大きく貢献した<ref name="Rkaiketu">{{Cite journal|和書|author=浅田真一・小野正人 |year=1997| title= セイヨウオオマルハナバチを取り巻く諸問題の解決に向けて|journal=保全生態学研究|volume=2|issue=2|url= http://ci.nii.ac.jp/els/110007643244.pdf?id=ART0009462372&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1313892817&cp=|format=PDF|pages=105-113|accessdate=2011-08-21}}</ref>。また、それまで授粉昆虫として利用されてきた[[ミツバチ]]とは異なり、本種は花蜜を分泌しない花でも効率的に訪花する<ref name="Rsyohin"/>。その結果、全国で利用されるようになり、2004 年には年間を通して約70000 コロニーが流通するようになった<ref name="Rsyohin"/>。 |
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セイヨウオオマルハナバチを導入した温室では、換気のために地上近くが開放されており、本種が自由に出入りできる状況にあった<ref name="Rsinnyu"/>。マルハナバチはある程度コロニーが成長すると、新女王バチと雄バチが巣から離れて新たなコロニーを形成するため、容易に野外へ分散してしまう<ref name="Rsinnyu"/>。現在ではトマトの栽培地からかなり距離の離れた山地でも本種が目撃されている。最初の野外への定着記録は、1996年の北海道[[門別町]]の民家の床下で巣が確認されたことである<ref name="Rhidaka"/>。現在は日本では北海道に定着しており、2007年までに27都道府県で目撃されている<ref name="Bjg"/>。[[大雪山]]などの原生的な環境でも発見されている<ref name="Bjg"/>。 |
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=== 影響 === |
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本種の特徴的な習性である花筒が長い花に穴を開ける盗蜜行動は、花の雌雄生殖器官に触れることなく蜜を採取する(つまり花粉がハチの体につくことがない)ため、本来はハチなど昆虫類に送受粉を依存する野生植物の繁殖が阻害される悪影響が懸念される<ref name="Rsinnyu"/>。盗蜜行動が植物の種子生産量を低下させることは、[[エゾエンゴサク]]などで実証されている<ref name="Rsyohin"/>。また、野生の植物だけでなく、観賞用に栽培される[[リンドウ]]でも、盗蜜によって花が傷つき商品価値が低下する農業被害が報告されている<ref name="Rsyohin"/>。オーストラリアの[[タスマニア島]]では年間30kmという驚異的な速さで分布域を拡大させ、21科66種の在来植物から採餌している<ref name="Rtas">{{Cite journal|和書|author= Hingston Andrew |year=1997| title= セイヨウオオマルハナバチが帰化したタスマニアでおこりつつあること|journal=保全生態学研究|volume=2|issue=2|url= http://ci.nii.ac.jp/els/110007643243.pdf?id=ART0009462371&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1313892511&cp=|format=PDF|pages=104|accessdate=2011-08-21}}</ref>。 |
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植物への影響のほかにセイヨウオオマルハナバチによって在来のマルハナバチ類自体が駆逐される危険性もある。飼育下では、在来マルハナバチの巣の近くに本種の女王を送り込むと必ずその巣に侵入して、ときには在来マルハナバチの女王を刺し殺して巣を乗っ取ることが報告されている<ref name="Rsinnyu"/>。原産地のヨーロッパでも本種が他のハチ類を[[競争排除則|競争排除]]して分布を拡大させていることが示唆されている<ref name="Rsinnyu"/>。 |
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[[オオマルハナバチ]]や[[クロマルハナバチ]]、[[エゾオオマルハナバチ]]との間に雑種が生じることによる[[遺伝子汚染]]の問題も指摘されている<ref name="Rsinnyu"/>。1996 年に[[カナダ]]で開催された国際昆虫学会において、セイヨウオオマルハナバチと在来種のエゾオオマルハナバチとの間で雑種が産出されるとの発表が最初の報告であるが、その後の追試験では雑種は産出されていない<ref name="Rsyohin"/>。しかし、交尾を行うことは確認されており、異種間交配により在来種はメスを産むことができなくなるため、本種は事実上は在来種の不妊化を招くことになる<ref name="Rsyohin"/>。 |
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さらには、輸入されたセイヨウオオマルハナバチからマルハナバチ類だけに体内寄生する[[マルハナバチポリプダニ]]が発見されており、在来のマルハナバチ類に病害をもたらす可能性がある<ref name="Rmite">{{Cite journal|和書|author=五箇公一・岡部貴美子・丹羽里美・米田昌浩|year=2000| title=輸入されたセイヨウオオマルハナバチのコロニーより検出された内部奇生性ダニとその感染状況|journal=日本応用動物昆虫学会誌|volume=44|issue=1|url=http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaez/44/1/47/_pdf/-char/ja/ |format=PDF|pages=47-50|accessdate=2011-08-21}}</ref>。[[ダニ]]以外にも[[微胞子虫]]や[[線形動物|センチュウ]]などの[[寄生]]動物が本種とともに侵入することも考えられる<ref name="Rmite"/>。 |
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=== 対策 === |
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日本では導入初期の時点で、本種が野生化すると[[生態系]]へ悪影響を与える可能性が指摘されていたが、当時は自然環境の保全よりも経済性が優先された<ref name="Rsinnyu"/>。1993年には[[日本生態学会]]・[[日本応用動物昆虫学会]]・[[日本昆虫学会]]の研究者が中心となり、セイヨウオオマルハナバチの導入に反対する文書が配布されたが、在来種のマルハナバチの代替え研究が展開され始めたのは1997年になってからであり、その間に本種は分布を大きく広げてしまった<ref name="Rsyohin"/>。その後も、日本生態学会は[[日本の侵略的外来種ワースト100]]に本種を選定するなど、外来種としての危険性を訴える活動を続けた<ref name="Bgh">{{cite book | 和書 | author = 村上興正・鷲谷いづみ(監修) [[日本生態学会]](編著) | title = 外来種ハンドブック | publisher = [[地人書館]] | date = 2002-09-30 | isbn = 4-8052-0706-X|pages=pp.156,217-218 }}</ref>。2006年になって[[外来生物法]]により特定外来生物に指定されたことで、飼育・保管・運搬等が規制され、飼養者に対しては野外逸出防止の適正な施設を整備し、管理を行なうことが義務づけられた<ref name="Rnet">{{Cite journal|和書|author=小出哲哉・山田佳廣・矢部和則・山下文秋|year=2008| title=温室におけるマルハナバチ逃亡防止のためのネット展張技術|journal=日本応用動物昆虫学会誌|volume=52|issue=1|url= http://www.jstage.jst.go.jp/article/jjaez/52/1/19/_pdf/-char/ja/|format=PDF|pages=19-26|accessdate=2011-08-21}}</ref>。しかし、特定外来生物の指定の是非に関しては、農業関係者や[[農林水産省]]が指定に反対の声を上げ、大きな議論が巻き起こった<ref name="Bgs">{{cite book | 和書 | author = [[種生物学会]] | title = 外来生物の生態学 進化する脅威とその対策 | publisher = [[文一総合出版]] | date = 2010-03-31 | isbn = 978-4-8299-1080-1|pages=117-126}}</ref>。 |
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北海道には11種類の在来のマルハナバチ類が生息するが、セイヨウオオマルハナバチによって駆逐される危険性がある。花筒が長い花に穴を開ける盗蜜を行うため、植物の繁殖が阻害される悪影響が懸念される。また、[[エゾオオマルハナバチ]]との間に雑種ができることが知られており、[[遺伝子汚染]]の問題も指摘されている。さらには、輸入されたセイヨウオオマルハナバチからマルハナバチ類だけに体内寄生する[[マルハナバチポリプダニ]]が発見されており、在来のマルハナバチ類に病害をもたらす可能性がある。 |
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[[カナダ]]や[[アメリカ]]では本種の輸入が禁止されており、代わりとして在来種が販売・普及されている<ref name="Rsinnyu"/>。日本でも輸入元の[[商社]]や生産会社の中には在来のマルハナバチへの販売の切り替えを進める企業が現れ、2000年代になってからは根本的にセイヨウオオマルハナバチを利用しないという流れが確立しつつある<ref name="Rsinnyu"/>。しかし、セイヨウオオマルハナバチの代用として園芸送粉に利用されている[[クロマルハナバチ]]などもまた[[外来種|国内外来種]]となりうるため、野外へ逃げ出さないようにする取り組みが求められる<ref name="Rsyohin"/>。マルハナバチ類の野外への逃亡を防止するにはネットを張るなどの対策があるが、3mm 以上の間隙さえあれば簡単に通り抜けてしまうため、厳重なネット防護と細かな施設点検が必要になる<ref name="Rnet"/>。 |
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野外へ定着したセイヨウオオマルハナバチを駆除する活動も盛んに行われており、市民のボランティアが参加して展開する規模の大きな駆除活動になっている<ref name="Rsimin">{{Cite journal|和書|author=小島望 |year=2006| title=市民ボランティアによるセイヨウオオマルハナバチ排除活動 : セイヨウオオマルハナバチ排除活動から今後の外来種対策を考える |journal=保全生態学研究|volume=11|issue=1|url= http://ci.nii.ac.jp/els/110004781866.pdf?id=ART0007519789&type=pdf&lang=jp&host=cinii&order_no=&ppv_type=0&lang_sw=&no=1313892254&cp=|format=PDF|pages=61-69|accessdate=2011-08-21}}</ref>。北海道では「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」を募集して市民参加型の防除活動を実施しており、平成21年度には50419頭を捕獲した<ref name="Ihs">北海道 [http://www.pref.hokkaido.lg.jp/ks/skn/alien/seiyo/seiyo_top.htm セイヨウオオマルハナバチのページ]</ref>。 |
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== 参考文献 == |
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<div class="references-small">{{Reflist|2}}</div> |
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* {{cite book | 和書 | author = 木野田君公| title = 札幌の昆虫| publisher = 北海道大学出版会 | date = 2006-06-10 | isbn = 4-8329-1391-3}} |
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* {{cite book | 和書 | author = 村上興正・鷲谷いづみ(監修) 日本生態学会(編著) | title = 外来種ハンドブック | publisher = 地人書館 | date = 2002-09-30 | isbn = 4-8052-0706-X }} |
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== 外部リンク == |
== 外部リンク == |
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{{Commons|Bombus terrestris}} |
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{{Wikispecies|Bombus terrestris}} |
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* [http://seiyoubusters.com/seiyou/ セイヨウ情勢] |
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[[Category:日本の外来種]] |
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[[Category:特定外来生物]] |
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2011年8月22日 (月) 01:15時点における版
セイヨウオオマルハナバチ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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セイヨウオオマルハナバチ Bombus terrestris
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Bombus terrestris (Linnaeus, 1758) | |||||||||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
セイヨウオオマルハナバチ | |||||||||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||||||||
Buff-tailed bumblebee |
セイヨウオオマルハナバチ(Bombus terrestris)は、昆虫綱・ハチ目(膜翅目)・ミツバチ科に分類されるマルハナバチの一種。ヨーロッパ原産で、日本には外来種として野外に定着している。
分布
ヨーロッパ原産[1]。
形態
体長は女王バチで18-22mm、働きバチで10-18mm[1]。マルハナバチ共通の特徴である丸っこく、毛むくじゃらな体は本種も同じである。胸部と腹部は黄色と黒色の縞模様で、腹部第5節から先端までが白く、日本ではこの「真っ白なお尻」が他のマルハナバチ類と本種とを区別するための大きな特徴となる。北海道東部に生息する在来種のノサップマルハナバチの働きバチに姿がよく似る[2]。女王バチ・働きバチ・雄バチいずれも斑紋に違いはない[1]。
生態
市街地など庭先でも普通にみられる。
本種は舌が短く、花弁の脇に穴を開けて蜜を集める(盗蜜)。そのため、おしべに触れることなく、植物の受粉に貢献することはない。
女王が単独で越冬し、5-6月に土中に営巣する。マルハナバチ類はネズミの古巣を利用して地下に営巣するが、適当な巣が限られるため、他のマルハナバチの巣を乗っ取ることがあり、とくに本種はそうした巣の略奪をよく行う[3]。イギリスでは、1 つのコロニーから20 個体もの女王バチの死骸が発見されており、同種間で激しい巣の奪い合いが発生しているものと考えられる[4]。必ずしもネズミの古巣だけを利用するわけではなく、捨てられたカーペットや椅子、芝刈り機といった人工物や人家の床下の断熱材の中に営巣している事例も報告されている[3][4]。1つの巣あたりで生産されるハチの数は、働きバチと雄バチで800-1000頭、新女王バチは60-180頭にもなる[5]。ニュージーランドでは900頭の新女王バチと3000頭の成虫ハチを生産した巣が発見されたこともある[5]。この営巣規模の大きさは、他のマルハナバチ類と比較しても圧倒的に巨大で、北海道の調査では本種の1巣あたりの新女王バチの生産数は在来種のハチと比べて約4倍との記録がある[5]。
32度以上の環境下に長時間さらされると、花粉で作られた巣が溶け出してしまい、幼虫が死亡する[2]。
スズメバチのような攻撃性の強いハチではなく、日常生活で刺される事態はまずない。しかし、本種はマルハナバチ類の中では巣の防衛能力が強い種なので、巣を駆除しようする際は細心の注意が必要である[5]。
外来種問題
導入
セイヨウオオマルハナバチは1980年代にオランダとベルギーで周年飼育法が確立され、農作物の花粉媒介昆虫として世界中で利用されている[5]。 日本では1991年に静岡県農業試験場で初めて導入された。温室トマトの受粉に用いるため原産国であるオランダやベルギーから人工増殖コロニーが1992年頃から本格的に大量に輸入され始めた[3]。セイヨウオオマルハナバチの導入によって、労力のかかる植物ホルモン剤処理を行わずに簡単にトマトの結実が可能となり、トマト生産の効率化に大きく貢献した[6]。また、それまで授粉昆虫として利用されてきたミツバチとは異なり、本種は花蜜を分泌しない花でも効率的に訪花する[4]。その結果、全国で利用されるようになり、2004 年には年間を通して約70000 コロニーが流通するようになった[4]。
セイヨウオオマルハナバチを導入した温室では、換気のために地上近くが開放されており、本種が自由に出入りできる状況にあった[3]。マルハナバチはある程度コロニーが成長すると、新女王バチと雄バチが巣から離れて新たなコロニーを形成するため、容易に野外へ分散してしまう[3]。現在ではトマトの栽培地からかなり距離の離れた山地でも本種が目撃されている。最初の野外への定着記録は、1996年の北海道門別町の民家の床下で巣が確認されたことである[5]。現在は日本では北海道に定着しており、2007年までに27都道府県で目撃されている[1]。大雪山などの原生的な環境でも発見されている[1]。
影響
本種の特徴的な習性である花筒が長い花に穴を開ける盗蜜行動は、花の雌雄生殖器官に触れることなく蜜を採取する(つまり花粉がハチの体につくことがない)ため、本来はハチなど昆虫類に送受粉を依存する野生植物の繁殖が阻害される悪影響が懸念される[3]。盗蜜行動が植物の種子生産量を低下させることは、エゾエンゴサクなどで実証されている[4]。また、野生の植物だけでなく、観賞用に栽培されるリンドウでも、盗蜜によって花が傷つき商品価値が低下する農業被害が報告されている[4]。オーストラリアのタスマニア島では年間30kmという驚異的な速さで分布域を拡大させ、21科66種の在来植物から採餌している[7]。
植物への影響のほかにセイヨウオオマルハナバチによって在来のマルハナバチ類自体が駆逐される危険性もある。飼育下では、在来マルハナバチの巣の近くに本種の女王を送り込むと必ずその巣に侵入して、ときには在来マルハナバチの女王を刺し殺して巣を乗っ取ることが報告されている[3]。原産地のヨーロッパでも本種が他のハチ類を競争排除して分布を拡大させていることが示唆されている[3]。
オオマルハナバチやクロマルハナバチ、エゾオオマルハナバチとの間に雑種が生じることによる遺伝子汚染の問題も指摘されている[3]。1996 年にカナダで開催された国際昆虫学会において、セイヨウオオマルハナバチと在来種のエゾオオマルハナバチとの間で雑種が産出されるとの発表が最初の報告であるが、その後の追試験では雑種は産出されていない[4]。しかし、交尾を行うことは確認されており、異種間交配により在来種はメスを産むことができなくなるため、本種は事実上は在来種の不妊化を招くことになる[4]。
さらには、輸入されたセイヨウオオマルハナバチからマルハナバチ類だけに体内寄生するマルハナバチポリプダニが発見されており、在来のマルハナバチ類に病害をもたらす可能性がある[8]。ダニ以外にも微胞子虫やセンチュウなどの寄生動物が本種とともに侵入することも考えられる[8]。
対策
日本では導入初期の時点で、本種が野生化すると生態系へ悪影響を与える可能性が指摘されていたが、当時は自然環境の保全よりも経済性が優先された[3]。1993年には日本生態学会・日本応用動物昆虫学会・日本昆虫学会の研究者が中心となり、セイヨウオオマルハナバチの導入に反対する文書が配布されたが、在来種のマルハナバチの代替え研究が展開され始めたのは1997年になってからであり、その間に本種は分布を大きく広げてしまった[4]。その後も、日本生態学会は日本の侵略的外来種ワースト100に本種を選定するなど、外来種としての危険性を訴える活動を続けた[9]。2006年になって外来生物法により特定外来生物に指定されたことで、飼育・保管・運搬等が規制され、飼養者に対しては野外逸出防止の適正な施設を整備し、管理を行なうことが義務づけられた[10]。しかし、特定外来生物の指定の是非に関しては、農業関係者や農林水産省が指定に反対の声を上げ、大きな議論が巻き起こった[11]。
カナダやアメリカでは本種の輸入が禁止されており、代わりとして在来種が販売・普及されている[3]。日本でも輸入元の商社や生産会社の中には在来のマルハナバチへの販売の切り替えを進める企業が現れ、2000年代になってからは根本的にセイヨウオオマルハナバチを利用しないという流れが確立しつつある[3]。しかし、セイヨウオオマルハナバチの代用として園芸送粉に利用されているクロマルハナバチなどもまた国内外来種となりうるため、野外へ逃げ出さないようにする取り組みが求められる[4]。マルハナバチ類の野外への逃亡を防止するにはネットを張るなどの対策があるが、3mm 以上の間隙さえあれば簡単に通り抜けてしまうため、厳重なネット防護と細かな施設点検が必要になる[10]。
野外へ定着したセイヨウオオマルハナバチを駆除する活動も盛んに行われており、市民のボランティアが参加して展開する規模の大きな駆除活動になっている[12]。北海道では「セイヨウオオマルハナバチバスターズ」を募集して市民参加型の防除活動を実施しており、平成21年度には50419頭を捕獲した[13]。
参考文献
- ^ a b c d e f 多紀保彦(監修) 財団法人自然環境研究センター(編著)『決定版 日本の外来生物』平凡社、2008年4月21日、196-197頁。ISBN 978-4-582-54241-7。
- ^ a b セイヨウオオマルハナバチ 国立環境研究所 侵入生物DB
- ^ a b c d e f g h i j k l 鷲谷いづみ「保全生態学からみたセイヨウオオマルハナバチの侵入問題」(PDF)『日本生態学会誌』第48巻第1号、1998年、73-78頁、2011年8月21日閲覧。
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- ^ 北海道 セイヨウオオマルハナバチのページ