「敬語」の版間の差分
→日本語における敬語表現: 方言敬語について加筆 |
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|行く||'''いらっしゃる<br/>おいでになる<br/>お越しになる'''<br/>.<ref group="†">「敬語の指針」では「行かれる」で相手に対する敬語の程度が十分な地域もあれば不十分になりかねない地域(例:東京圏)もあることを例示し、敬語には地域差があることを指摘した(参照:[[敬語#方言における敬語表現]])。「お行きになる」は[[統語論|統語]]的に間違いではないが慣習上あまり使われない。</ref>||'''伺う<br/>参上する<br/>上がる<br/>参る'''||参る |
|行く||'''いらっしゃる<br/>おいでになる<br/>お越しになる'''<br/>.<ref group="†">「敬語の指針」では「行かれる」で相手に対する敬語の程度が十分な地域もあれば不十分になりかねない地域(例:東京圏)もあることを例示し、敬語には地域差があることを指摘した(参照:[[敬語#方言における敬語表現]])。「お行きになる」は[[統語論|統語]]的に間違いではないが慣習上あまり使われない。</ref>||'''伺う<br/>参上する<br/>上がる<br/>参る'''||参る |
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|いる||'''いらっしゃる<br/>おいでになる<br/>おられる'''<ref group="†">「おる」と「おられる」の用法は地域差が大きい。「おる」は元々西日本的な表現であり、「おられる」も西日本で多用される。「いる」を常用する東日本では「おる」は謙譲語であるとの意識が強く、「おられる」に抵抗を持つ者もいる。また京阪地域では「おる」は軽い軽蔑語・謙譲語に用いられ本来尊敬語には用いられないが、共通語の影響から現在では「おられる」が多用されている(参照:おられる - ウィクショナリー日本語版[http://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%8A%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B])。「いられる」は[[統語論|統語]]的に間違いではないが、共通語では慣習上使われない。</ref>||'''おる'''||おる |
|いる||'''いらっしゃる<br/>おいでになる<br/>おられる'''<ref group="†">「おる」と「おられる」の用法は地域差が大きい。「おる」は元々西日本的な表現であり、「おられる」も西日本で多用される。「いる」を常用する東日本では「おる」は謙譲語であるとの意識が強く、「おられる」に抵抗を持つ者もいる。また京阪地域では「おる」は軽い軽蔑語・謙譲語に用いられ本来尊敬語には用いられないが、共通語の影響から現在では「おられる」が多用されている(参照:おられる - ウィクショナリー日本語版[http://ja.wiktionary.org/wiki/%E3%81%8A%E3%82%89%E3%82%8C%E3%82%8B])。「いられる」は[[統語論|統語]]的に間違いではないが、共通語では慣習上ほとんど使われない。</ref>||'''おる'''||おる |
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|受ける||||拝受する<ref group="†">主に書き言葉として使用</ref> |
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=== 方言における敬語表現 === |
=== 方言における敬語表現 === |
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敬語(あるいは待遇表現)の運用に関しては |
敬語(あるいは待遇表現)の運用に関しては地域差が存在する。大まかには、東日本では旧城下町など特定の地域・階層で敬語が発達したのに対し、西日本では幅広い地域・階層で敬語が発達し、改まった場面だけでなくくだけた場面でも日常的に敬語を用いる。また、福島県から静岡県にかけての太平洋側や紀伊半島南部などでは、終助詞の使い分けや命令・依頼表現以外では敬語を用いない(いわゆる「無敬語」)。関東地方の太平洋側のうち東京周辺だけは敬語が発達しており、[[言語島]]をなしている。これは中世から近世にかけて上方から敬語が移入されたためであり、現在でも「お寒'''う'''ございます(×お寒くございます)」「ありませ'''ん'''(×ありましない)」などにその名残が見られる。 |
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現在、伝統的な各地方特有の敬語表現は衰退しつつあり、共通語の敬語に置き換わったり、有力な方言の敬語が他地域に広がったり(例:名古屋弁「みえる」の岐阜県への進出)といった現象が起こっている。場面に応じた使い分けで方言の敬語と共通語の敬語が共存している地域もあり、例えば近畿地方では、高い敬意を表す尊敬語「なはる」「お・・・やす」や丁寧語「だす・おます」「どす・おす」は共通語の敬語に押されて衰退したが、くだけた場面でも用いられる軽い尊敬語「はる」は共通語の敬語に置き換えることができないため、依然広く使われている。 |
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一方、東日本では西日本ほど敬語が発達せず、福島東部・栃木・茨城の方言では敬語そのものが存在しない(イントネーションや文末詞の違いで敬意を表す)。共通語の基となった江戸・東京方言の敬語も、敬語が未発達だった関東のなかにあって、中世から近世にかけて京都方言の敬語が接ぎ木されて成立したものである。共通語の敬語において「お寒くございます」「ありましない」とは言わず、「お寒'''う'''ございます」「ありませ'''ん'''」のような西日本的な語形が現れるのはその名残である。 |
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各地方特有の敬語表現は、旧来の身分制度の変化や共通語の敬語の普及から、軽い敬語表現を除き、高齢層以外ではほとんど廃れている。しかし共通語の敬語を用いる場合でも地域差は存在し、例えば東日本(特に関東地方)では「お…になる」を、西日本(特に中国地方)では「…れる」を多用する傾向がある。 |
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=== 参考文献 === |
=== 参考文献 === |
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* [[菊地康人]]著『敬語』[[講談社]][[[講談社学術文庫]]]。ISBN 4061592688 |
* [[菊地康人]]著『敬語』[[講談社]][[[講談社学術文庫]]]。ISBN 4061592688 |
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* 大阪市立大学インターネット講座2004年度 日本語文法の基礎 |
* 大阪市立大学インターネット講座2004年度 日本語文法の基礎 |
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* 宮治弘明「方言敬語の動向」、小林隆・篠崎晃一・大西拓一郎編『方言の現在』第4章283-296頁、明治書院、1996年、ISBN 4-625-42097-0 |
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== 朝鮮語における敬語表現 == |
== 朝鮮語における敬語表現 == |
2011年4月19日 (火) 08:58時点における版
このページのノートに、このページに関する議論があります。 議論の要約:不規則動詞一覧について |
敬語(けいご)とは、言葉で表現する主体(書き手、話し手など)と客体(読み手、聞き手)やその話題中の対象となる人との上下関係、話題中の人物同士の上下関係などを言葉の内に表現するために用いられる語法である。
概要
日本語などで発達しているが、ヨーロッパ近代語では日本語ほど体系的には使われていない。ヨーロッパ近代語に敬語があるかないかは敬語の定義次第である。敬語を広く「人物間の上下関係や親疎関係を反映した言語表現」と定義すれば英語で丁寧な命令文にpleaseを付ける例を始め学校や軍隊で生徒や兵士の教師、上官に対する応答の文末にsir/madamを付ける例、大陸語における2人称代名詞の敬称(動詞の活用も3人称など本来の二人称形と異なる形を用いる)が存在する例などヨーロッパ近代語にも敬語がある。英語の二人称代名詞であるyouももともとは敬称であった。英語話者が家族であろうと親しい友人であろうと常に本来敬称であったyouのみを使うようになったためにyouが敬称としての意味を失い、敬称でない形のthouが忘れ去られるに至ったものである[1]。しかし、日本語のように「人物間の上下関係を反映した言語表現が体系的に文法化された形式」をもつものに限って定義すればヨーロッパ近代語には敬語はないことになる。また、敬語は現代においては主に第三者等との会話で使用され、見知らぬ相手との円滑なコミュニケーションを促す役割も持つ。
日本語における敬語表現
一般的には敬語を尊敬語・謙譲語・丁寧語の3つに分類する。日本語学においてはさらに丁重語・美化語を立てた5分類が多く使われている。文化審議会も、2007年に尊敬語・謙譲語I・謙譲語II(丁重語)・丁寧語・美化語の5分類にするという敬語の指針を答申した[2]。
敬語にはその性質上、話題中の人物を高めるもの(素材敬語)と話し手が対面している聞き手を高めるもの(対者敬語)があるが5分類は従来の3分類を元に両者を区別することで定義されたものである。また、本来丁寧語の一部である美化語は「敬語」からは外されることが多い。中学校では3分類で敬語の学習をしているほか、常体・敬体についても学習している。
3分類 | 5分類 | 特徴 | |
---|---|---|---|
尊敬語 | 尊敬語 | 素材敬語 | 話題中の動作の主体が話し手よりも上位であることを表す語 |
謙譲語 | 謙譲語 | 話題中の動作の客体が話題中の動作の主体よりも上位であることを表す語 | |
丁重語 | 対者敬語 | 聞き手が話し手よりも上位であることを表す語 | |
丁寧語 | 丁寧語 | 聞き手が話し手よりも上位であることを表す語尾の「です」「ます」「ございます」など | |
美化語 | - | 上品とされる言い回し・言葉遣い |
尊敬語
話題中の動作や状態の主体が話者よりも上位である場合に使われる。動詞、助動詞、形容詞の語形変化を指すが名詞の語彙を変えることも尊敬語に含む場合がある(例:だれ→どなた)。
動詞の語形変化には以下のような方法がある。
- 語彙自体を変える - 例:いる・行く→いらっしゃる。食べる→召し上がる。見る→ご覧になる。する→なさる。
- お/ご~になる - 例:待つ→お待ちになる。掛ける→お掛けになる。
- お/ご~なさる - 例:待つ→お待ちなさる。掛ける→お掛けなさる。
- お/ご~です - 例:待つ→お待ちです。掛ける→お掛けです。
- a-れ/られ - 例:待つ→待たれる。掛ける→掛けられる。
形容詞・形容動詞の語形変化には語の前に「お/ご」を付ける。
- 忙しい→お忙しい。多忙→ご多忙。
人名には後に「様」「さん」「殿」「陛下」「先生」「先輩」「閣下」「社長」「部長」など敬称や職階をつける。
名詞には前に「お」「ご」「御(おん)」「み」「尊」「貴」「玉」などをつける。通常大和言葉には「お」を、漢語には「ご」を付けることが多い。「お」「ご」の2つは美化語としても用いられる。「み」以降は付けられる名詞が決まっており、造語力が低い。
- 車→お車
- 亭主→ご亭主
- 心→お心、み心(表記は「御心」で同一)
- 父→ご尊父
- 会社→貴社
- 原稿→玉稿
- 自宅→お住まい
尊敬語はその昔、階級によりその用い方が決められていたものがある。今日においても皇室典範などや慣習によって、それらの用い方も残っているケースもある。ただ日常ではあまり耳慣れない言葉のため、崩御なども単に「死去」や「お亡くなりになる」などと表現することもある。
- 誕生
- ご誕生が一般的だが、古くは皇族の誕生を降誕といった(天から地上に下った神の一族として扱っていたため)
- 死亡
- 法皇・上皇・天皇・三后の死去 - 崩御
- 親王・大臣の死去 - 薨御
- 皇族・三位以上の公卿の死去 - 薨去
- 五位以上の貴族の死去 - 卒去
- それ以下の人物の死去 - 逝去
- 自宅
- 天皇一族 - 御所
- 傍流の各家 - 邸
謙譲語
話題中の動作の客体(間接的である場合もある)が話題中の動作の主体よりも上位である場合に使われる。そのため謙譲語は話題中に2人以上の人物が登場しなければならない。動作の主体を謙(へりくだ)す言い方であり、主体=話し手の場合には自分が謙ることになる(卑しめるという意味ではない)。
動作の客体となる人物は聞き手でも第三者でもよく動作の主体は話し手・聞き手・第三者の誰でもよいのであるが、会話の場にいない人物への敬語が使われなくなってきたため動作の客体が聞き手、動作の主体が話し手である場合が多くなっている。これを受けて謙譲語の一部は動作の客体がいない場合でも使え、聞き手に対する敬意を表す丁重語としても使われるようになった。「やる」の謙譲語の「上げる」のように謙譲の意味が薄れている、または「食う」の謙譲語「食べる」のように謙譲の意味がほぼ消滅した語もある。
謙譲語は客体を高める語である。古文では天皇・皇族や貴族の動作に謙譲語がついた例もある。
語形変化には以下のような方法がある。
- 語彙自体を変える - 行く→伺う。見る→拝見する。する→致す。
- お/ご~する - 待つ→お待ちする。掛ける→お掛けする。相談する→ご相談する。
- お/ご~頂く・申し上げる - 買ってもらう→お買い頂く。辞退する→ご辞退申し上げる。
名詞に関しては規則的に謙譲語を生成することができないが、下記のような例がある。
- 茶→粗茶
- 品→粗品
- 贈り物→つまらない物
- 妻→愚妻(同様に愚息、愚兄、愚弟、愚妹)
- 夫→宿六
- 著作→拙著
- 理論→拙論
- 当社→弊社
なお、物を贈る際に「つまらないもの」と称することが日本語独特の表現のように言われることがあるが英語でも"This is my little gift to you."(小さな贈り物です)のように自らの贈り物について謙遜する表現は存在する。
向かう先のある名詞に関しては接頭語「お/ご」を付けた形も謙譲語として用いられる。
- 手紙→お手紙を差し上げる。辞退→ご辞退を申し上げる。ご連絡を差し上げる。
これらは同じ語形で尊敬語とも謙譲語ともなる。
- 先生へのお手紙。お客様へのご連絡。- 謙譲語
- 先生からのお手紙。お客様からのご連絡。- 尊敬語
丁重語
聞き手が、話し手よりも上位であることを表す動詞の語彙をいう。必ず丁寧語「ます」を伴うことが特徴である。また話し手は、話題中の動作主であるか動作主と同じグループに属する。従来、謙譲語として扱われてきたものであるが謙譲語と違って動作の受け手が存在しなくてもよい。その多くは謙譲語を兼ねているが、丁重語だけに使われるものに「おる(おります)」がある。たんに丁寧語「ます」だけを使うよりもより丁寧である印象を相手に与える。このため自分を上品に見せるための美化語に分類する人もいる[誰?]。
- 今、自宅にいる。→今、自宅にいます。→今、自宅におります。
- 出張で大阪に行った。→出張で大阪に行きました。→出張で大阪に参りました。
- 山田と言う。→山田と言います。→山田と申します。
丁寧語
聞き手が話し手よりも上位である場合に使われる語をいう。広義として聞き手に対する配慮を表すもろもろの語を含める場合があるが、文法的に語末に使われる現代語の「です」「ます」「ございます」、古語の「はべり」「候ふ」などを指す。
聞き手が上位の場合の「です・ます」で終わる文体を敬体、同等や下位にある場合に使われる「だ」や動詞・形容詞の終止形で終わる文体を常体と呼ぶ。
丁寧を表す語形変化は以下の通りであるが文法カテゴリーに応じて語彙を変える場合があり、文法的には丁寧語というよりも丁寧体として分析される。
- ます - 見る→見ます(意志)/見た→見ました(過去)/見ない→見ません(否定)/見よう→見ましょう(勧誘)…
- です
- 形容詞 - 忙しい→忙しいです(現在)/忙しかった→忙しかったです(過去)/忙しくない→忙しくありません(否定)/忙しいだろう→忙しいでしょう(推測)…
- ウ音便を用いて「ございます」に接続させる形(例:忙しゅうございます)が正しい丁寧体とされてきたが、現在は非主流となりつつある。
- 形容動詞 - きれいだ→きれいです(現在)/きれいだった→きれいでした(過去)/きれいではない→きれいではありません(否定)/きれいだろう→きれいでしょう(推測)…
- 名詞+コピュラ - 学生だ→学生です(現在)/学生だった→学生でした(過去)/学生ではない→学生ではありません/学生だろう→学生でしょう(推測)…
- 形容詞 - 忙しい→忙しいです(現在)/忙しかった→忙しかったです(過去)/忙しくない→忙しくありません(否定)/忙しいだろう→忙しいでしょう(推測)…
美化語
美化語とは話者が聞き手に上品な印象を与えるために使う語のことである。文法的に見て敬語とは言えないが、聞き手に対する配慮を示しているということで敬語に準じるものとされることが多い[要出典]。これを丁寧語に分類する人もいる[誰?]。名詞に「お」や「ご」を付けたり、語彙を変えたりして作られる。これには普通に使われるもの、男女に差があるもの、たまに使われるものなどレベルが分けられる。また丁重語を美化語に入れる人もいる[誰?]。美化語の中には女房言葉に由来するものも多い[要出典]。
- 「お/ご」をつける - 店→お店/茶→お茶/菓子→お菓子/食事→お食事/飲み物→お飲み物/下劣→お下劣/下品→お下品…
- 語彙を変える - めし→ごはん/腹→おなか/便所→お手洗い
不規則動詞一覧
「お~になる」「~れる・られる」(尊敬語)、「お~する」(謙譲語)、「~ます」(丁寧語)のようにいろいろな語に適用できる一般的な語形(一般形)ではなく、特定の語形(特定形。補充形とも言える)が用いられる動詞とその特定形の一覧を示す。ただし特定形に限定されず一般形を使える場合も多いことから、「三省堂 Web Dictionary」の一覧表において一般形が挙げられず特定形のみ示されているケースを太字で示す[3][2]。
一般 | 尊敬語 | 謙譲語 | 丁寧語 |
---|---|---|---|
会う | お目に掛かる お目もじする[† 2] | ||
与える やる |
差し上げる 上げる 献上する 献呈する 献じる 進呈する |
上げる[† 3] | |
ある | - | ございます | |
言う | おっしゃる | 申し上げる 申す |
申す |
行く | いらっしゃる おいでになる お越しになる .[† 4] |
伺う 参上する 上がる 参る |
参る |
いる | いらっしゃる おいでになる おられる[† 5] |
おる | おる |
受ける | 拝受する[† 6] | ||
思う | 思し召す[† 7] | 存じる | |
買う | お求めになる 求められる |
- | 求める |
借りる | 拝借する | ||
聞く | (~が)お耳に入る | 伺う 承る 拝聴する | |
着る | 召す お召しになる |
- | |
来る | いらっしゃる おいでになる 見える お見えになる お越しになる |
参る | 参る |
くれる | 下さる 賜わる[† 8] |
- | |
死ぬ | お亡くなりになる 亡くなられる 逝去する |
- | 亡くなる[† 9] |
知らせる | お耳に入れる | ||
知る | ご存じだ[† 10] | 存じる 存じ上げる 承知する | |
する | なさる あそばす[† 11] |
いたす | いたします |
訪ねる | 伺う 参上する 上がる お邪魔する | ||
尋ねる | |||
食べる | 召し上がる 上がる |
頂く 頂戴する |
頂く |
飲む | |||
寝る | お休みになる 休まれる |
- | 休む |
見せる | お目に掛ける ご覧に入れる | ||
見る | ご覧になる | 拝見する | |
命じる | 仰せ付ける[† 12] | - | |
もらう | 頂く 頂戴する 賜わる[† 13] 拝受する[† 13] | ||
読む | 拝読する[† 14] |
- ^ 表中の「-」は、特定形が無く「お~する」の一般形も作れないケース(<向かう先>に人物が想定できない動詞、あるいは<向かう先>に人物があっても慣習上使われなくなった場合)。
- ^ あまり使われない女性語
- ^ 旧来の規範では謙譲語とされていたが「謙譲語から美化語に向かう意味的な変化」が定着しつつあり、文化審議会答申「敬語の指針」において敬語意識の多様性に留意すべき一例とされた。
- ^ 「敬語の指針」では「行かれる」で相手に対する敬語の程度が十分な地域もあれば不十分になりかねない地域(例:東京圏)もあることを例示し、敬語には地域差があることを指摘した(参照:敬語#方言における敬語表現)。「お行きになる」は統語的に間違いではないが慣習上あまり使われない。
- ^ 「おる」と「おられる」の用法は地域差が大きい。「おる」は元々西日本的な表現であり、「おられる」も西日本で多用される。「いる」を常用する東日本では「おる」は謙譲語であるとの意識が強く、「おられる」に抵抗を持つ者もいる。また京阪地域では「おる」は軽い軽蔑語・謙譲語に用いられ本来尊敬語には用いられないが、共通語の影響から現在では「おられる」が多用されている(参照:おられる - ウィクショナリー日本語版[1])。「いられる」は統語的に間違いではないが、共通語では慣習上ほとんど使われない。
- ^ 主に書き言葉として使用
- ^ あまり使われない
- ^ 主に書き言葉として使用
- ^ 日本国語大辞典(小学館)は「尊敬表現や謙譲表現を用いるべき人に対しても、単に「なくなる」ということもできる。」としている。
- ^ 「ご存じだ」は「知っている」の尊敬語(参照:「敬語の指針」(文化審議会答申 平成19年2月2日))。
- ^ あまり使われない
- ^ 日常会話ではあまり使われない。
- ^ a b 主に書き言葉として使用
- ^ 例外として名前等の文字の読み方を尋ねる場合などは「拝読する」ではなく「お読みする」を使う。
敬語以外の待遇表現
敬語以外の待遇表現も話題中の人物に関する素材待遇表現と、聞き手に対する対者待遇表現に分けられる。素材待遇表現には、尊大語・侮蔑語がある。対者待遇表現は丁寧語である「です・ます」をつけないぞんざいな語を用いることで聞き手が同等あるいは下位であることが表現される。また、特に聞き手を卑下し、罵倒する表現を卑罵語として分類することがある。[要出典]
侮蔑語
方言における敬語表現
敬語(あるいは待遇表現)の運用に関しては地域差が存在する。大まかには、東日本では旧城下町など特定の地域・階層で敬語が発達したのに対し、西日本では幅広い地域・階層で敬語が発達し、改まった場面だけでなくくだけた場面でも日常的に敬語を用いる。また、福島県から静岡県にかけての太平洋側や紀伊半島南部などでは、終助詞の使い分けや命令・依頼表現以外では敬語を用いない(いわゆる「無敬語」)。関東地方の太平洋側のうち東京周辺だけは敬語が発達しており、言語島をなしている。これは中世から近世にかけて上方から敬語が移入されたためであり、現在でも「お寒うございます(×お寒くございます)」「ありません(×ありましない)」などにその名残が見られる。
現在、伝統的な各地方特有の敬語表現は衰退しつつあり、共通語の敬語に置き換わったり、有力な方言の敬語が他地域に広がったり(例:名古屋弁「みえる」の岐阜県への進出)といった現象が起こっている。場面に応じた使い分けで方言の敬語と共通語の敬語が共存している地域もあり、例えば近畿地方では、高い敬意を表す尊敬語「なはる」「お・・・やす」や丁寧語「だす・おます」「どす・おす」は共通語の敬語に押されて衰退したが、くだけた場面でも用いられる軽い尊敬語「はる」は共通語の敬語に置き換えることができないため、依然広く使われている。
参考文献
- 菊地康人著『敬語』講談社[講談社学術文庫]。ISBN 4061592688
- 大阪市立大学インターネット講座2004年度 日本語文法の基礎
- 宮治弘明「方言敬語の動向」、小林隆・篠崎晃一・大西拓一郎編『方言の現在』第4章283-296頁、明治書院、1996年、ISBN 4-625-42097-0
朝鮮語における敬語表現
朝鮮語にも日本語と同様に尊敬語・謙譲語・丁寧語の3種類が用言の文法範疇として存在する。
尊敬語
用言の尊敬語は語幹に尊敬を表す接尾辞(日本語の助動詞に相当する要素) -시- -si-を付けることによって形づくられる。また있- it-(いる)、먹- meok-(食べる)、자- ja-(寝る)など一部の用言は語彙自体を尊敬語彙に入れ替えて尊敬語を作り日本語とよく似ている。ただし、語彙自体を入れ替える尊敬語の場合にも尊敬を表す接尾辞 -시- -si-を語形内部に含んでいる。
- 보- bo- 「見る」― 보시- bosi- 「ご覧になる」
- 있- it- 「いる」― 계시- gyesi- 「いらっしゃる」(語彙を入れ替える例)
朝鮮語では日本語のようにウチとソトで尊敬語の使用を変えるということはなく、親や兄姉・先輩など身内の動作・状態に言及する場合も尊敬語を使う(絶対敬語)。
- 아버지는 지금 안 계십니다 abeojineun jigeum an gyesimnida 「父は今いません」(逐語訳:父は今いらっしゃいません)
ただし、上下関係に関して相対的な敬語も用いられうる。例えば、父親に関する話を祖父にするときには父親が主語となる動作であっても尊敬語を用いない。
一部の助詞に尊敬形がある。
- 동생이 dongsaengi 「弟が」 ― 아버지께서 abeojiggeseo 「父が」
- 동생에게 dongsaengege 「弟に」 ― 아버지께 abeojigge 「父に」
名詞の中には尊敬形を持つものもあるが、名詞の尊敬形は文法化されておらず、一部の語彙に散発的に見られるのみである。
- 밥 bap 「ご飯」 ― 진지 jinji 「お食事」
- 나이 nai 「とし」 ― 연세 yeonse 「ご年齢」
- 몸 mom 「体」 ― 옥체 okche 「お体」
謙譲語
もともと朝鮮語には謙譲を表す接尾辞 -옵- -op-、-삽- -sap-、-잡- -jap-があったが現代においては老人がいかめしい文語調の手紙文などでまれに用いるだけで日常生活ではほとんど用いられない。
- 소식을 듣잡고 sosigeul deutjapgo 「知らせをお聞きし」
現代朝鮮語ではいくつかの用言に謙譲語が存在するだけで、文法的な手段で個々の用言から謙譲形を作ることはない。
- 주- ju- 「やる」 ― 드리- deuri- 「差し上げる」
- 묻- mut- 「尋ねる」 ― 여쭙- yeojjup- 「伺う」
- 보- bo- 「会う」 ― 뵙- boep- 「お会いする」
上記の謙譲語の例のうち、드리- deuri-(差し上げる)は補助動詞「(…して)差し上げる」としても用いられる。この場合の謙譲形は極めて生産的である。
- 봐 드리- bwa deuri- 「見て差し上げる」
- 읽어 드리- irgeo deuri- 「読んで差し上げる」
丁寧語
朝鮮語学では待遇法あるいは階称と呼ぶ場合が多い。丁寧―ぞんざいのレベルは上称・中称・等称・下称・略待上称(親しい上称)・略待(半言)の6種類があり、日本語より複雑である。6種類の待遇表現は話し手と聞き手の社会的関係などによって使い分けられる。하- ha- (する)を例にとると、以下のように使い分けられる。
- 합니다 hamnida(上称):主に演説・放送のアナウンスなど公的な場で用いるいかめしい丁寧語。
- 하오 hao(中称):老年層の夫婦間などで用い、若い世代では用いられない。本来は丁寧語であったようだが、現代の語感では非丁寧語として扱われる。
- 하네 hane(等称):主に大学教授などの年配者が学生などの若者に対して用いる非丁寧語。近年、使用が減りつつある。
- 한다 handa(下称):目下に対して用いる非丁寧語。新聞・雑誌などの書き言葉としても用いる。
- 해요 haeyo(略待上称):日常生活で一般的に用いる丁寧語。
- 해 hae(略待):主に親しい間柄で用いる非丁寧語。
中国語における敬語表現
用言の丁寧形があるのはアルタイ語族的特徴である。アルタイ語族ではなくシナ・チベット語族に属し、孤立語である中国語は丁寧語は発達しておらず「です・ます」に相当する丁寧形の体系は存在しない。しかし名詞における敬語が発達しており、尊敬表現としての貴・尊・令と謙譲表現としての敝・拙などの接頭辞がある。例としては貴姓(お名前)、貴庚(ご年齢)、貴體(お体)、貴名(お名前)、貴府(お宅)、尊夫人(奥方)、令尊(お父様)、令堂(お母様)、令郎(お子さん)、敝國(自分の国の謙称)、敝眷(自分の家族の謙称)、敝公司(弊社)、拙作(自分の作品の謙称)、拙見(自分の意見の謙称)、拙夫/賤内(自分の夫/妻の謙称)、寒舍(自分の家の謙称)などがある。
他には、「您貴姓?」(あなたの)の「您」[4]、「歓迎光臨」(いらっしゃいませ)の「光臨」(「来」の尊敬語)などがある。また市場経済導入後の大陸において、「何かを依頼する/働きかける」ときに「…してください/したい」よりも「…することができますか/してもいいですか」という丁寧なニュアンスをもたせるために英語の"Can you ~ ?"または"May I ~ ?"に相当する「能不能」(neng bu neng)、可不可以(ke bu ke yi)を使った疑問文を用いることが多くなっている。
その他の言語における敬語表現
西欧の言語ではフランス語のvous(vouvoyer)、イタリア語のlei(dare del lei)、ドイツ語のSieなど二人称複数主格代名詞を用いる事により敬語を表す。敬語ではない友達言葉の場合はフランス語のtu(tutoyer)、イタリア語のtu (dare del tu)、ドイツ語のdu(duzen)など二人称単数形になる。複数形になる事により語尾の変化などにも(主として動詞の)各単語ごとに相違が現れる。
英語では概要でも述べられているようにかつては二人称単数形thouという単語があり、それに対しての二人称複数形youがあったが現在は二人称には全てyouを用いている。よって語尾変化による敬称と友達言葉の差異はないが、言い回しの変化や直接的表現を避ける事による丁寧語は存在する。つまり、その場に相応しい話し方をするには日本語のように尊敬語・謙譲語・丁寧語などと分類してしまえるような単純化・形式化されたもので済ますわけにはいかず抑揚や態度、話の運び方を含めた総合的な配慮が重要である。
注釈
- ^ 宇賀治正朋『英語史』開拓社、2000年、174頁。
- ^ a b 敬語の指針 (PDF) 文化審議会答申平成19年2月2日
- ^ 参考:ことばの世界 基本語から引く尊敬語・謙譲語・丁寧語 三省堂Web Dictionary
- ^ 「你好」(ニイハオ)で使われる二人称の你(ni3)(ニイ)の敬語形が您(nin2)(ニン)。なお「你好吗?」という挨拶は英語の"How are you?"に由来し、米中・日中の国交回復以前には常用されていない(典拠:司馬遼太郎・陳舜臣『対談 中国を考える』文春文庫)。