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「精神科」の版間の差分

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逆に歴史を遡ると、精神科と呼ばれる様になる以前には「'''脳病院'''」、「'''癲狂院'''」などの名称が使用されていた。
逆に歴史を遡ると、精神科と呼ばれる様になる以前には「'''脳病院'''」、「'''癲狂院'''」などの名称が使用されていた。



=== 精神科病院での死亡率 ===
立津政順は1958年に「戦争中の松沢病院入院患者死亡率」(精神神経科学雑誌、60:596-605,1958)を発表し、特に敗戦の年1945年には東京都立松沢病院に在籍した1,169名(年初在院668名、年間入院501名)中、478名が死亡し、年間在籍患者数にたいする死亡率が40.9%にのぼっていると発表した。岡田靖雄はその他の病院の死亡率をも検討し、「戦前の精神科病院における死亡率」近代庶民生活史、20,病気・衛生226-240,三一書房,1995. において、死亡率に影響を与える要因として次のことを挙げている。1)病院経営が安定すると死亡率が減少する。2)太平洋戦争前は米価が上がると脚気による死亡率が上がると述べている。それは赤痢、腸チフス、流行性感冒より影響が大であった。第3に患者の入院費用種目であるが、しかし終戦直後の食料不足による栄養障害が最も重要で,松沢病院では62.3%が栄養障害による,そして1000カロリー以下のことも多かったのではないかとしている。


== 精神保健福祉法について ==
== 精神保健福祉法について ==

2008年10月18日 (土) 14:52時点における版

精神科(せいしんか、Department of Psychiatry)は医療機関における診療科目の一つである。精神疾患を主な診療対象とする。

各種診療形態

外来のみの診療を行う診療所(クリニック)、入院施設を有する精神科病院総合病院の一部門としての精神科の3種類の診療形態があり、それぞれ機能分化している。

  • 診療所は街中にあることが多く、通院に便利、気軽に受診しやすいなどの特徴がある。
  • 精神科病院は入院施設も備えており様々な症状の患者に対応できる、作業療法デイケアなど様々な治療方法を備えているため集中的な治療ができるなどの特徴がある。2006年10月の精神保健福祉法改正前は、法律上「精神病院」と呼ばれていた。第二次世界大戦前には「脳病院」「癲狂院」などと呼ばれていた所もある。
  • 総合病院の精神科は利便性や専門性においては前二者の中間的な存在であるが、身体的合併症を持った精神疾患患者の治療が可能、他科(内科・外科など)に入院中の患者の精神的ケアを行う、いわゆるリエゾン精神医学が可能などの特徴がある。

成人を対象とした通常の診療以外に専門的な分野として小児精神医学、児童思春期精神医学、産業精神医学、老年期精神医学、リエゾン精神医学司法精神医学などの分野がある。

歴史

年表および総論

  • 1950年 精神衛生法施行。私宅監置(患者を自宅に軟禁すること)が禁止された。
  • 1964年 ライシャワー駐日大使刺傷事件後、精神障害者の隔離政策が進行。精神病院の病床数が増加した。
  • 1968年 WHOのクラーク勧告にて、日本の閉鎖的、収容的な精神医療のあり方が非難された。
  • 1984年 宇都宮病院事件では、閉鎖的環境の病棟で看護スタッフが患者をリンチ死。他にも類似の事件が続発し、日本の精神医療が国内外から非難された。
  • 1987年 精神衛生法が改正され精神保健法を制定。入院患者の人権保護、社会復帰施設について指針が定められた。
  • 1989年の「保健婦助産婦看護婦学校養成所指定規則」の改正までは、男性看護師(旧称・看護士)は、女性看護師(旧称・看護婦)と異なり、精神科病棟での勤務を前提とした教育体制が取られていた。改正後は男女とも同一の教育カリキュラムとなっている。
  • 1995年 精神保健法が改正され精神保健福祉法へと変更された。
  • 2006年 障害者自立支援法施行。
  • 2006年 精神病院の用語整理法成立。障害者自立支援法、精神保健福祉法、覚せい剤取締法などで使われる法律用語は精神科病院となる。

精神科病院は、精神障害者への差別から診察に訪れにくいイメージが強かったため、近年では医療機関名の呼称を「メンタルクリニック」などにしたり、診療科目として「神経科」「心療内科」「メンタルヘルス科」と標榜したりして、外来患者が訪れやすくする工夫がされるようになった(一部の私立大学医学部附属病院とその関連病院では、病院内の診療科目名に「メンタルクリニック」を用いている例もある)。

逆に歴史を遡ると、精神科と呼ばれる様になる以前には「脳病院」、「癲狂院」などの名称が使用されていた。


精神保健福祉法について

精神科での診療は医療法の他、精神保健福祉法にのっとって行われなければならない。 総合病院も含む精神科病床への入院には、任意入院医療保護入院措置入院応急入院がある。このうち任意入院は自らの意志に基づいた入院で、可能な限り任意入院を行うべきであると同法第22条の3に定められている。しかし精神疾患に罹患した患者の場合、自らが病気に罹患していることや治療が必要であることを理解しない場合も多い。その際、精神保健指定医が診察した上で、医療及び保護が必要であると認めた場合は、保護者の同意を得て医療保護入院(本人の意志によらない入院)を行うことができる。措置入院は、自傷他害(自らや他者を傷つけること)のおそれがある場合、主に警察官から保健所への通報により保健所が手配した精神保健指定医2名の鑑定を経て行われる。入院形態には他に応急入院緊急措置入院がある。なお、「患者の移送に黄色い救急車(もしくは緑の救急車)が使われる」という話は嘘(都市伝説)である。

  • 2006年4月、障害者自立支援法が施行。患者の収入に応じた応益負担による自立支援医療が実施される。通院治療においてこの制度を使うと健康保険を使用した時、医療費全体の原則10%負担となる。なお、患者の世帯収入が少ない場合は負担額の上限が設けられ、月額上限2,500円から20,000円の間となる。この制度を利用する場合、病院の医師ケースワーカーに相談し医師に診断書を作成してもらい、住民票のある市区町村に診断書と申請書類を提出することが求められる。付記事項として、障害者自立支援法施行以前は、精神保健福祉法第32条の規定に通院医療費公費負担制度があった。これは、通院による精神病等の治療が非常に長期にわたることから公費で通院費を補助する制度であった。健康保険を使用した時、医療費全体の30%負担であるが、この制度を使うと全体の5%負担で済んだ。障害者自立支援法施行のため、2006年3月をもってこの制度は廃止された。

2002年6月現在、全国の精神科病床入院患者のうち任意入院212,015人(64.2%)、医療保護入院112,661人(34.1%)、措置入院2,767人(0.8%)、その他2,607人(0.8%)となっている(厚生統計協会「国民衛生の動向」より)。なお精神科病床入院患者のうち7万人が、いわゆる「社会的入院」と考えられている。

入院

入院施設のある病院の場合、開放病棟閉鎖病棟の2種類がある。可能な限り開放処遇とすべきであるが、症状が重く自殺等の自傷行為や他者を傷つける行為(自傷他害という)の危険が切迫している場合などで精神保健指定医の診察の結果、閉鎖処遇が必要と判断した場合、患者の保護および治療のため、精神保健福祉法に従った手続きを行い閉鎖処遇をとることがある。なお、閉鎖病棟では患者のプライバシーや人権は軽視される場合もある。

入院施設は急性期治療病棟療養型病床群に分けられる。急性期治療病棟は、精神疾患において急性期と慢性期では求められる医療の質・量が全く異なることから、急性期において重点的なチーム治療を行い早期の退院、社会復帰を行うことを可能にするため、1998年4月の診療報酬改定の際に創設された制度である。療養型病床群に比べて看護スタッフの割合を多くとること、入院期間が平均3ヵ月以内であることなどが義務付けられ、そのかわり診療報酬が高く設定されているシステムである。

入院中は、医師看護師臨床心理士作業療法士薬剤師精神保健福祉士などによるチーム医療が行われ、カンファレンスを行いスタッフ間での意見の交換が頻回に行われるべきである。また薬物療法などにあたっては根拠に基づいた医療が行われるべきである。

社会復帰について

病院によっては社会生活に順応するための作業所を併設したり、デイケアなどのサービスを行うものもある。また援護寮福祉ホーム、第3者によるグループホームなどの設置も徐々に増えており、亜急性期の患者では社会復帰が比較的スムーズに行われている。

しかし慢性長期入院群では、高齢化、長期入院による生活能力の低下、家族機能の低下などから社会復帰が困難な例が多い。

関連項目

外部リンク