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「日本酒辛口ブーム」の版間の差分

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
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Iwai.masaharu (会話 | 投稿記録)
日本酒」2006-05-18T06:56:31(UTC)の版より「辛口ブーム」の節を転記。(GFDL違反で削除されたものの再作成)
(相違点なし)

2008年3月29日 (土) 12:50時点における版

1980年代から現在にいたるまで、日本酒をめぐる無視できない潮流として辛口ブームがある。

このブームの到来の理由として、以下のようなものが考えられる。

第一は、三増酒への反動である。

それまでの三増酒が、水飴などの糖類を加えた甘ったるい味が多かったので、「甘い酒」=「悪い酒」といった一方的なイメージが消費者のあいだに定着し、その反動として、三増酒の時代が本格的に終わった1980年代後半からは日本酒においては辛口に価値がおかれるようになった、とする考え方である。

第二に、ビールからの影響である。

昭和62年1987年に、あるビールの大手メーカーが辛口であることをセールスポイントにかかげたヒット商品を売り出し、これが大ブレークし、やがて日本酒にも「辛ければ辛いほどおいしい」かのような定式が波及してきたことも考えられる。

第三に、食生活、とくに外食産業における主流となる味の変化である。

第四に、時代の空気である。

ポストモダンなどという語がもっともらしく語られ、重厚長大に価値をおいた前世代への反感と反省から軽薄短小を新たな時代的価値とした1980年代の空気が、奥行きや深さや旨みのある味よりも、軽く明快な「辛口」を日本酒に求めた、とする考え方である。
たとえば新潟では、以前はもっと堂の入った旨みやほのかな甘みを持った地酒の産地であったが、これ以後「端麗辛口」が新潟の酒のキャッチフレーズのように思われる風潮が生まれた。
端麗辛口とされる条件の一つとして、酒の透明度の高さがあるが、そこには、かつて鑑評会に、酒に色がつくことを減点対象としていた時代があり、そのため透明度の高い酒が評価されるようになっていた。酒の色を抜く方法として一般的なものは、活性炭などによる炭素濾過であるが、たしかに濾過は色とともに雑味も抜くものの、これが過ぎるとその酒が持っている旨味も抜けてしまう。そのため濾過は、蔵人たちのあいだで「炭屋」と呼ばれる濾過工程の専門家がいるほど難しい作業である。

こうしたさまざまな経緯から、ここ二十年余り辛口ブームは続いてきたが、今に至って同じ銘柄でも辛口版と甘口版を造って世に問う醸造元や、無濾過濁り酒霞み酒などどっしりとした造りをセールスポイントにする酒が増えてきたところをみると、バブル時代に生んだ辛口ブームの行方も非常に関心が寄せられている。

さて、昭和15年(1940年)に始まった日本酒級別制度への批判が高まり、平成4年(1992年)にはこれが完全に撤廃された。それに代わって日本酒の分類として平成2年(1990年)から使われるようになったのが、のちに分類の項で詳しく述べられるような「普通酒」「特定名称酒」など9種類の名称である。