「インフレターゲット」の版間の差分
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インフレターゲットとは、通貨量を意図的に増加させて緩やかな[[インフレーション]]を起こして、経済の安定的成長を図る政策である。 |
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== 調整インフレ論とインフレターゲット論 == |
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国際的には「'''インフレターゲット'''('''物価上昇率目標''')」政策が、中央銀行の金融政策を律する規律としては一般的である。これは、物価上昇率に対して一定の目標を定めて金融政策を行おうというもので、1990年の[[ニュージーランド]]で導入されたのを始めとし,[[イギリス]]・[[スウェーデン]]・[[カナダ]]等でも実施され、現在は20カ国以上で導入されている。 |
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===日本における導入推進論=== |
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日本についても、1990年代後半の日本における深刻なデフレに対して、ことに借り手である企業の負担となるデットデフレーションDebt Deflationの解消をはかる見地から、アメリカの経済学者[[ポール・クルーグマン]]による、[[中央銀行]](ここでは[[日本銀行]])が長期的に通貨量を増加させることによって、名目金利から'''予想'''物価上昇率(15年間にわたって年4%ずつ)を差し引いた実質金利をマイナスにするといった提案があった。 |
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予想インフレ率を上昇させれば実質利子が低下したり、通貨が下落して輸出が増えたりするので、投資や消費が増え需要不足が解消される。これに対する批判は、インフレを実現する手段がないというものとインフレスパイラルに陥り、物価上昇率をコントロールできなくなるというものがある。しかし、中央銀行がどれだけ多額の債権等を買ってもインフレにならないというのは考えにくく(この点を称して、FRB議長の[[ベン・バーナンキ]]の論を引用して「バーナンキの背理法」と呼ぶ向きもある)、実際に、日本とアメリカを除く有力経済圏の中央銀行では明示的に物価目標(インフレターゲット)を導入しており、また、アメリカにおいても、実質的な金融政策はインフレ率を参照しながら行われているとされている。 |
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インフレターゲット政策については、反論として、物価を目標とした金融緩和がむしろ資産価格のインフレーション([[バブル景気]])を伴う可能性があること<!--http://www.imes.boj.or.jp/japanese/kouen/ki0011.htm-->、また日本銀行の使命としての「[[物価]]の安定」に反しているのではないかとの論もあるが、物価が継続的に下落するデフレーションを放置することも一方で物価の安定の使命にたがうとの反論が国際的には有力である。むしろ、マクロ経済的な需要を安定的に推移させ、金利による物価調整を機能させるためには1~3%程度の緩やかなインフレーションが必要であると国際的には考えられており、そのため、多くの国の中央銀行は物価目標を設定しており、その結果、日本以外の有力経済圏においては、物価上昇率の制御及びデフレーションの防止に成功している。 |
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物価目標の設定は多くの中央銀行で行われているが、設定するインフレ率(例えばイギリスは2.0±1%)や政策目標への拘束力などは様々である。金融政策の透明性向上や予想インフレ率を安定化させることから、日本でも導入を求める声がある。だが、これまでの実施国の多くがインフレ抑制の手段としてこれを用いていることからデフレ克服に用いることに関して疑問視する意見が存在しており、日銀はこの提案を受け入れていない。日銀は0~2%の物価上昇率の目安(日銀の認識を示す目安であって、日銀の政策目標としての規律性は持たない。)を設定しているが、インフレ・バイアスまで考慮するならば、ニュージーランド準備銀行が採用しているように1~3%の幅で目標インフレ率を設定するのが望ましいと考えられている。 |
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== 関連項目 == |
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*[[リフレーション]] |
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*[[マネーサプライ]] |
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2007年6月20日 (水) 12:16時点における版
インフレターゲットとは、通貨量を意図的に増加させて緩やかなインフレーションを起こして、経済の安定的成長を図る政策である。
調整インフレ論とインフレターゲット論
国際的には「インフレターゲット(物価上昇率目標)」政策が、中央銀行の金融政策を律する規律としては一般的である。これは、物価上昇率に対して一定の目標を定めて金融政策を行おうというもので、1990年のニュージーランドで導入されたのを始めとし,イギリス・スウェーデン・カナダ等でも実施され、現在は20カ国以上で導入されている。
日本における導入推進論
日本についても、1990年代後半の日本における深刻なデフレに対して、ことに借り手である企業の負担となるデットデフレーションDebt Deflationの解消をはかる見地から、アメリカの経済学者ポール・クルーグマンによる、中央銀行(ここでは日本銀行)が長期的に通貨量を増加させることによって、名目金利から予想物価上昇率(15年間にわたって年4%ずつ)を差し引いた実質金利をマイナスにするといった提案があった。
予想インフレ率を上昇させれば実質利子が低下したり、通貨が下落して輸出が増えたりするので、投資や消費が増え需要不足が解消される。これに対する批判は、インフレを実現する手段がないというものとインフレスパイラルに陥り、物価上昇率をコントロールできなくなるというものがある。しかし、中央銀行がどれだけ多額の債権等を買ってもインフレにならないというのは考えにくく(この点を称して、FRB議長のベン・バーナンキの論を引用して「バーナンキの背理法」と呼ぶ向きもある)、実際に、日本とアメリカを除く有力経済圏の中央銀行では明示的に物価目標(インフレターゲット)を導入しており、また、アメリカにおいても、実質的な金融政策はインフレ率を参照しながら行われているとされている。
インフレターゲット政策については、反論として、物価を目標とした金融緩和がむしろ資産価格のインフレーション(バブル景気)を伴う可能性があること、また日本銀行の使命としての「物価の安定」に反しているのではないかとの論もあるが、物価が継続的に下落するデフレーションを放置することも一方で物価の安定の使命にたがうとの反論が国際的には有力である。むしろ、マクロ経済的な需要を安定的に推移させ、金利による物価調整を機能させるためには1~3%程度の緩やかなインフレーションが必要であると国際的には考えられており、そのため、多くの国の中央銀行は物価目標を設定しており、その結果、日本以外の有力経済圏においては、物価上昇率の制御及びデフレーションの防止に成功している。
物価目標の設定は多くの中央銀行で行われているが、設定するインフレ率(例えばイギリスは2.0±1%)や政策目標への拘束力などは様々である。金融政策の透明性向上や予想インフレ率を安定化させることから、日本でも導入を求める声がある。だが、これまでの実施国の多くがインフレ抑制の手段としてこれを用いていることからデフレ克服に用いることに関して疑問視する意見が存在しており、日銀はこの提案を受け入れていない。日銀は0~2%の物価上昇率の目安(日銀の認識を示す目安であって、日銀の政策目標としての規律性は持たない。)を設定しているが、インフレ・バイアスまで考慮するならば、ニュージーランド準備銀行が採用しているように1~3%の幅で目標インフレ率を設定するのが望ましいと考えられている。