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'''スクミリンゴガイ'''([[学名]] {{snamei|Pomacea canaliculata}})は、リンゴガイ科(リンゴガイ、アップルスネイル)に属する[[淡水]]棲の[[巻貝]]である。俗に'''ジャンボタニシ'''と呼ばれる<ref name="農業新聞20200724">「ジャンボタニシが大量発生 農水省が協議会設置」『[[日本農業新聞]]』2020年7月24日2面</ref>。 |
'''スクミリンゴガイ'''([[学名]] {{snamei|Pomacea canaliculata}})は、リンゴガイ科(リンゴガイ、アップルスネイル)に属する[[淡水]]棲の[[巻貝]]である。俗に'''ジャンボタニシ'''と呼ばれる<ref name="農業新聞20200724">「ジャンボタニシが大量発生 農水省が協議会設置」『[[日本農業新聞]]』2020年7月24日2面</ref>。 |
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[[南アメリカ]]原産<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.mus-nh.city.osaka.jp/tokuten/2020gairai/assets/pdf/press-release01.pdf/ |title=大阪市立自然史博物館第50回特別展「知るからはじめる外来生物 〜未来へつなぐ地域の自然〜」|publisher=[[大阪市立自然史博物館]] |accessdate=2020-08-07}}</ref>。[[日本]]では食用を目的とした[[養殖]]用に[[台湾]]から持ち込まれたのが野生化した[[外来種]]であり、[[イネ]]を[[食害]]することから、[[防除]]対象になっている<ref name="農業新聞20200724"/>。 |
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== 形態 == |
== 形態 == |
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淡水巻貝としては極めて大型である。 |
淡水巻貝としては極めて大型である。成体は殻高50 - 80 mmに達する。 |
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卵は多数が固まった[[卵塊]]を形成し、鮮やかなピンク色で目立ちやすい。ピンク色なのはカロテノイドが含まれているからだと見られている<ref>山口真範・井嶋博 (2020) ジャンボタニシの卵塊に含まれる成分の抽出と分析. 和歌山大学教育学部紀要 70, p.33-35. {{doi|10.19002/AN00257977.70.33}}</ref>。同族間で形態が酷似しており、見た目だけで見分けるのは難しいといわれる。 |
卵は多数が固まった[[卵塊]]を形成し、鮮やかなピンク色で目立ちやすい。ピンク色なのはカロテノイドが含まれているからだと見られている<ref>山口真範・井嶋博 (2020) ジャンボタニシの卵塊に含まれる成分の抽出と分析. 和歌山大学教育学部紀要 70, p.33-35. {{doi|10.19002/AN00257977.70.33}}</ref>。同族間で形態が酷似しており、見た目だけで見分けるのは難しいといわれる。 |
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== 生態 == |
== 生態 == |
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生活リズムとしては原則的に夜行性と見られ、日中は泥に潜って休んでいる個体が多い。泥に潜る行動は休眠以外でも水深が浅いなど貝にとって不利な条件だとよく見られる。原産地も乾季がある気候であり適応している。高水温や餌の量などの条件では潜る率に雌雄差が見られる<ref>和田節・吉田和弘 (2000) スクミリンゴガイ''Pomacea canaliculata'' (Lamarck)の潜土行動;日周性と潜土に影響を及ぼす要因. 九州病害虫研究会報 46, p.88-93. {{doi|10.4241/kyubyochu.46.88}}</ref>。地中で越冬した場合0度で25日、-6度で1日程度ですべての貝が死亡するといい<ref>大矢慎吾・平 剛夫・宮原義雄 (1987) 北部九州におけるスクミリンゴガイの越冬. 日本応用動物昆虫学会誌 31(3), p.206-212/ {{doi|10.1303/jjaez.31.206}}</ref>、気温による死亡率の考え方には平均気温を用いる手法<ref>松下みどり (2012) 冬期の平均気温を用いたスクミリンゴガイの発生予察法の検討. 関東東山病害虫研究会報 59, p.89-90. {{doi|10.11337/ktpps.2012.89}}</ref>や積算気温を用いた手法も提案されている<ref>菖蒲信一郎・御厨初子・山口純一郎・松崎正文・善正二郎・和田節 (2001) 気温データを用いたスクミリンゴガイの水田における越冬死亡率の推定. 日本応用動物昆虫学会誌 45(4), p.203-207. {{doi|10.1303/jjaez.2001.203}}</ref>。泥に潜ることで越冬時の生存率が上がるという<ref>清田洋次・奥原國英 (1987) スクミリンゴガイの越冬経過について. 九州病害虫研究会報 33. p.102-105. {{doi|10.4241/kyubyochu.33.102}}</ref>。 |
生活リズムとしては原則的に夜行性と見られ、日中は泥に潜って休んでいる個体が多い。泥に潜る行動は休眠以外でも水深が浅いなど貝にとって不利な条件だとよく見られる。原産地も乾季がある気候であり適応している。高水温や餌の量などの条件では潜る率に雌雄差が見られる<ref name="和田・吉田(2000)">和田節・吉田和弘 (2000) スクミリンゴガイ''Pomacea canaliculata'' (Lamarck)の潜土行動;日周性と潜土に影響を及ぼす要因. 九州病害虫研究会報 46, p.88-93. {{doi|10.4241/kyubyochu.46.88}}</ref>。地中で越冬した場合0度で25日、-6度で1日程度ですべての貝が死亡するといい<ref>大矢慎吾・平 剛夫・宮原義雄 (1987) 北部九州におけるスクミリンゴガイの越冬. 日本応用動物昆虫学会誌 31(3), p.206-212/ {{doi|10.1303/jjaez.31.206}}</ref>、気温による死亡率の考え方には平均気温を用いる手法<ref>松下みどり (2012) 冬期の平均気温を用いたスクミリンゴガイの発生予察法の検討. 関東東山病害虫研究会報 59, p.89-90. {{doi|10.11337/ktpps.2012.89}}</ref>や積算気温を用いた手法も提案されている<ref>菖蒲信一郎・御厨初子・山口純一郎・松崎正文・善正二郎・和田節 (2001) 気温データを用いたスクミリンゴガイの水田における越冬死亡率の推定. 日本応用動物昆虫学会誌 45(4), p.203-207. {{doi|10.1303/jjaez.2001.203}}</ref>。泥に潜ることで越冬時の生存率が上がるという<ref name="清田・奥原(1987)">清田洋次・奥原國英 (1987) スクミリンゴガイの越冬経過について. 九州病害虫研究会報 33. p.102-105. {{doi|10.4241/kyubyochu.33.102}}</ref>。越冬による死亡率は貝の大きさが関係しており、殻高1cm未満の稚貝は死亡率が高く、逆に殻高3cmを超える大きな個体も死亡率が高い例がしばしば観察される<ref name="清田・奥原(1987)"/><ref>矢野貞彦・中谷政之 (1989) スクミリンゴガイの水稲への加害と越冬状況. 関西病虫害研究会報 31, p.57. {{doi|10.4165/kapps1958.31.0_57}}</ref>。これは稚貝は冷えやすく乾燥にも耐えられないこと、また、大きすぎる貝は地中に潜るのが下手で低温と乾燥に耐えられないのではないかとみられている。 |
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活動水温は25度から30度が適当で、高温側は35度を超えると活動が鈍るという報告が多い<ref name="大矢慎吾ら(1986)/"><ref name="和田・吉田(2000)"/>。また、低温側は17度を下回ると活動停止するという。 |
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⚫ | 止水域を好むとされ、流速が早い場所には定着できない<ref>市瀬克也・吉田和弘 (2001) 河川流域におけるスクミリンゴガイの地理的分布の制限と水田分布の関連. 九州病害虫研究会報 47, p.77-81. {{doi|10.4241/kyubyochu.47.77}}</ref>。貝の分布には他にも水深と化学的酸素要求度(COD)の値も関係しているとされる。CODは少し高い方を好むとされ<ref>市瀬克也・和田節・遊佐陽一・久保田富次郎 (2000) 棲息地別のスクミリンゴガイ密度と環境要因の関与. 九州病害虫研究会報 46, p.78-84. {{doi|10.4241/kyubyochu.46.78}}</ref>、清流よりは適度に富栄養で淀んだ水田のような環境を好むと見られる。 |
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巻貝としては歩行速度が非常に速い。 |
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原産地のアルゼンチンでの観察によれば、餌は水中の腐植や生物遺体の細かい破片、いわゆる[[デトリタス]]が中心であり、新鮮な植物は少ない<ref>Enzo Manara, Mara Anahí Maldonado & Pablo Rafael Martín (2024) You are what you eat: is the apple snail ''Pomacea canaliculata'' a macrophytophage or a detritivore in its native range (southern Pampas, Argentina)? Limnology 25(3) {{doi|10.1007/s10201-024-00755-8}}</ref>。餌として葉が持つ防御物質の[[フェノール]]類の量に反応しており、腐植を好む理由の一つは餌の防御物質が減ることと見られている<ref>Jian-Wen Qiu, Man Ting Chan, King Lun Kwong, Jin Sun (2011) Consumption, survival and growth in the invasive freshwater snail ''Pomacea canaliculata'': does food freshness matter? Journal of Molluscan Studies 77(2), p.189-195. {{doi| 10.1093/mollus/eyr005}}</ref>。 |
原産地のアルゼンチンでの観察によれば、餌は水中の腐植や生物遺体の細かい破片、いわゆる[[デトリタス]]が中心であり、新鮮な植物は少ない<ref>Enzo Manara, Mara Anahí Maldonado & Pablo Rafael Martín (2024) You are what you eat: is the apple snail ''Pomacea canaliculata'' a macrophytophage or a detritivore in its native range (southern Pampas, Argentina)? Limnology 25(3) {{doi|10.1007/s10201-024-00755-8}}</ref>。餌として葉が持つ防御物質の[[フェノール]]類の量に反応しており、腐植を好む理由の一つは餌の防御物質が減ることと見られている<ref>Jian-Wen Qiu, Man Ting Chan, King Lun Kwong, Jin Sun (2011) Consumption, survival and growth in the invasive freshwater snail ''Pomacea canaliculata'': does food freshness matter? Journal of Molluscan Studies 77(2), p.189-195. {{doi| 10.1093/mollus/eyr005}}</ref>。水中の葉のほか、イネの場合は水中で茎を嚙みちぎり、水面に落ちた葉を水中に引き込んで食べているという<ref name="大矢慎吾ら(1986)">大矢慎吾・平井剛夫・宮原義雄 (1986) ラプラタリンゴガイのイネ稚苗食害習性. 九州病害虫研究会報 32, p.92-95. {{doi|10.4241/kyubyochu.32.92}}</ref> |
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日本での観察では一日当たりの摂食量は殻高3cmの個体で約3gだという<ref>大隈光善・福島裕助・田中浩平 (1994) スクミリンゴガイの水田雑草食性と水稲苗の食害防止. 雑草研究 39(2), p.109-113. {{doi|10.3719/weed.39.109}}</ref>。イネよりも[[レタス]]、[[ナス]]、[[メロン]]などの野菜を好む<ref>福島裕助・中村晋一郎・藤吉臨 (2001) 野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動(収量予測・情報処理・環境). 日本作物学会紀事 70(3), p.432-436. {{doi|10.1626/jcs.70.432}}</ref>。愛媛県での観察によるとスクミリンゴガイのいる水田では水田雑草の[[コナギ]]が見られないという<ref>日鷹一雅・嶺田拓也・徳岡美樹 (2007) スクミリンゴガイ''Pomacea canaliculata'' (LAMARCK) の侵入が水田植物相に及ぼす影響評価. 農村計画学会誌 26 special issue, p.233-238. {{doi|10.2750/arp.26.233}}</ref>。 |
日本での観察では一日当たりの摂食量は殻高3cmの個体で約3gだという<ref name="大場光善ら(1994a)">大隈光善・福島裕助・田中浩平 (1994) スクミリンゴガイの水田雑草食性と水稲苗の食害防止. 雑草研究 39(2), p.109-113. {{doi|10.3719/weed.39.109}}</ref>。イネよりも[[レタス]]、[[ナス]]、[[メロン]]などの野菜を好む<ref>福島裕助・中村晋一郎・藤吉臨 (2001) 野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動(収量予測・情報処理・環境). 日本作物学会紀事 70(3), p.432-436. {{doi|10.1626/jcs.70.432}}</ref>。愛媛県での観察によるとスクミリンゴガイのいる水田では水田雑草の[[コナギ]]が見られないという<ref>日鷹一雅・嶺田拓也・徳岡美樹 (2007) スクミリンゴガイ''Pomacea canaliculata'' (LAMARCK) の侵入が水田植物相に及ぼす影響評価. 農村計画学会誌 26 special issue, p.233-238. {{doi|10.2750/arp.26.233}}</ref>。 |
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雄は殻をぶつけ合って競うという。九州における調査では水路の個体と比べ、水田の個体の方が殻が薄い傾向にあるという<ref>吉田和弘・遊佐陽一・和田節・星川和夫 (2008) スクミリンゴガイの殻厚に影響する要因. Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) 66 (3-4), p.217-225. {{{doi|10.18941/venus.66.3-4_217}}</ref>。雌雄異体であり繁殖には交尾を行う。交尾の時間は4時間から20時間、平均12時間にも及ぶ。雄は長時間の交尾の途中で[[精子]]以外に陰茎からの分泌物を雌に与える行動が見られるが、意義などについてはよくわかっていない。雌雄ともに乱交型であり卵塊の卵は複数の雄の遺伝子を含むという<ref>Silvana Burela 著 熊谷菜摘・遊佐陽一 訳 (2015) リンゴガイ類の繁殖生物学. 植物防疫 69(3), p.183-186.</ref> |
性成熟するのはオスは殻高25 [[ミリメートル|mm]]、メスは30 mmで、雌雄異体で雌の方が大きくなる<ref>兼島盛吉・山内昌治・比嘉邦男 (1986) ラプラタリンゴガイの性成熟. 九州病害虫研究会報 32, p.101-103. {{doi|10.4241/kyubyochu.32.101}}</ref>。雄は殻をぶつけ合って競うという。九州における調査では水路の個体と比べ、水田の個体の方が殻が薄い傾向にあるという<ref>吉田和弘・遊佐陽一・和田節・星川和夫 (2008) スクミリンゴガイの殻厚に影響する要因. Venus (Journal of the Malacological Society of Japan) 66 (3-4), p.217-225. {{{doi|10.18941/venus.66.3-4_217}}</ref>。雌雄異体であり繁殖には交尾を行う。交尾の時間は4時間から20時間、平均12時間にも及ぶ。雄は長時間の交尾の途中で[[精子]]以外に陰茎からの分泌物を雌に与える行動が見られるが、意義などについてはよくわかっていない。雌雄ともに乱交型であり卵塊の卵は複数の雄の遺伝子を含むという<ref>Silvana Burela 著 熊谷菜摘・遊佐陽一 訳 (2015) リンゴガイ類の繁殖生物学. 植物防疫 69(3), p.183-186.</ref> |
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水面から離れた植物体表面や岸辺の壁面に産卵し、直後は1個1個の卵を結着している[[粘液]]が柔らかいが、やがて硬質化して付着箇所から容易には剥がれない状態となる。卵塊は鮮やかな鮮紅の[[警戒色]]を呈し、卵内部は[[神経毒]]の{{仮リンク|PcPV2|en|AB toxin}}が満たされて、[[ヒト]]が食した場合は[[苦味]]もあり<ref name="affrc-024918">{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/karc/applesnail/ecology/024918.html |title=九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ 生態 |publisher=[[農業・食品産業技術総合研究機構|農研機構]] |accessdate=2020-02-20}}</ref>、この毒と色彩によって、卵は[[アリ]]以外の全ての捕食者から逃れている<ref>{{Cite news|publisher=American Association for the Advancement of Science |title=ScienceShot: Invasive Snails Protect Their Young With Odd Poison |url=http://news.sciencemag.org/2013/06/scienceshot-invasive-snails-protect-their-young-odd-poison |language=en |author=Erik Stokstad |date=Jun. 3, 2013}}</ref>。[[孵化]]は[[酸素]]を要すため、水中では孵化できない。 |
水面から離れた植物体表面や岸辺の壁面に産卵し、直後は1個1個の卵を結着している[[粘液]]が柔らかいが、やがて硬質化して付着箇所から容易には剥がれない状態となる。卵塊は鮮やかな鮮紅の[[警戒色]]を呈し、卵内部は[[神経毒]]の{{仮リンク|PcPV2|en|AB toxin}}が満たされて、[[ヒト]]が食した場合は[[苦味]]もあり<ref name="affrc-024918">{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/karc/applesnail/ecology/024918.html |title=九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ 生態 |publisher=[[農業・食品産業技術総合研究機構|農研機構]] |accessdate=2020-02-20}}</ref>、この毒と色彩によって、卵は[[アリ]]以外の全ての捕食者から逃れている<ref>{{Cite news|publisher=American Association for the Advancement of Science |title=ScienceShot: Invasive Snails Protect Their Young With Odd Poison |url=http://news.sciencemag.org/2013/06/scienceshot-invasive-snails-protect-their-young-odd-poison |language=en |author=Erik Stokstad |date=Jun. 3, 2013}}</ref>。[[孵化]]は[[酸素]]を要すため、水中では孵化できない。 |
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日本の夏季の気候で2週間程度で孵化し、幼体は水温と栄養状態に恵まれれば、2か月で性成熟する。 |
日本の夏季の気候で2週間程度で孵化し、幼体は水温と栄養状態に恵まれれば、2か月で性成熟する。 |
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温帯および熱帯のアジア各地に移入分布する。中国の個体群はミトコンドリアDNA解析の結果、スクミリンゴガイがアルゼンチン起源、同属近縁の ''P. maculata''はブラジルが起源だと推測されている<ref>Qian-Qian Yang, Su-Wen Liu, Chao He & Xiao-Ping Yu (2018) Distribution and the origin of invasive apple snails, ''Pomacea canaliculata'' and ''P. maculata'' (Gastropoda: Ampullariidae) in China. Scientific Reports volume 8, Article number: 1185. {{doi|10.1038/s41598-017-19000-7}}</ref>。 |
温帯および熱帯のアジア各地に移入分布する。中国の個体群はミトコンドリアDNA解析の結果、スクミリンゴガイがアルゼンチン起源、同属近縁の ''P. maculata''はブラジルが起源だと推測されている<ref>Qian-Qian Yang, Su-Wen Liu, Chao He & Xiao-Ping Yu (2018) Distribution and the origin of invasive apple snails, ''Pomacea canaliculata'' and ''P. maculata'' (Gastropoda: Ampullariidae) in China. Scientific Reports volume 8, Article number: 1185. {{doi|10.1038/s41598-017-19000-7}}</ref>。 |
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日本では北海道、東北地方以外には広く定着している。除草能力の高さから、たびたび起こる無農薬オーガニックが流行する際に「[[除草剤]]代わりの稲守貝」などと称して未発生の水田に積極的に放飼することが一部で行われ、これが日本で分布を拡大する一因となったとされている。 |
日本では北海道、東北地方以外には広く定着している。除草能力の高さから、たびたび起こる無農薬オーガニックが流行する際に「[[除草剤]]代わりの稲守貝」などと称して未発生の水田に積極的に放飼することが一部で行われ、これが日本で分布を拡大する一因となったとされている{{Cite book|和書|author=日本生態学会, 和田節 |title=外来種ハンドブック |publisher=[[地人書館]] |year=2002 |series=スクミリンゴガイ~ 人のいとなみに翻弄される水田の外来種 |NCID=BA58709946 |ISBN=9784805207062 |page=171}}。 |
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== 人間との関係 == |
== 人間との関係 == |
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=== 食用 === |
=== 食用 === |
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淡水巻貝としてはかなり大きく、[[減反政策]]による遊休農地の有効利用策として1981年に台湾経由で輸入されたのが日本における最初とされる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/70310.html |title=スクミリンゴガイ |work=侵入生物データベース |accessdate=2016-11-09}}</ref>[[長崎県]]と[[和歌山県]]に初めて持ち込まれた<ref name="affrc-024906">{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/karc/applesnail/ecology/024906.html |title=九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ 分布と被害 |publisher=|農研機構 |accessdate=2020-02-20}}</ref>。しかし、物流の発達により内陸県でも新鮮な海産物が手に入るようになり、また農薬汚染などのイメージが強い淡水魚介類の食文化は1980年代の日本では衰退傾向にあり根付かなかった。 |
淡水巻貝としてはかなり大きく、[[減反政策]]による遊休農地の有効利用策として1981年に台湾経由で輸入されたのが日本における最初とされる<ref>{{Cite web|和書|url=https://www.nies.go.jp/biodiversity/invasive/DB/detail/70310.html |title=スクミリンゴガイ |work=侵入生物データベース |accessdate=2016-11-09}}</ref>[[長崎県]]と[[和歌山県]]に初めて持ち込まれた<ref name="affrc-024906">{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/karc/applesnail/ecology/024906.html |title=九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ 分布と被害 |publisher=|農研機構 |accessdate=2020-02-20}}</ref>。しかし、物流の発達により内陸県でも新鮮な海産物が手に入るようになり、また寄生虫や農薬汚染などのイメージが強い淡水魚介類の食文化は1980年代の日本では衰退傾向にあり根付かなかった。 |
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寄生虫のリスクがあるため生食はできない。中国では本種が広東住血線虫(''Angiostrongylus cantonensis'')の主要な感染源の一つとなっていると見られている<ref>Shan Lv,Yi Zhang,He-Xiang Liu,Ling Hu,Kun Yang,Peter Steinmann,Zhao Chen,Li-Ying Wang,Jürg Utzinger,Xiao-Nong Zhou (2009) Invasive Snails and an Emerging Infectious Disease: Results from the First National Survey on ''Angiostrongylus cantonensis'' in China. Plos Neglected Tropical Disease 3(2), e368. {{doi|10.1371/journal.pntd.0000368}}</ref>。よく茹でたうえで内臓は除去し食べる。 |
寄生虫のリスクがあるため生食はできない。中国では本種が広東住血線虫(''Angiostrongylus cantonensis'')の主要な感染源の一つとなっていると見られている<ref>Shan Lv,Yi Zhang,He-Xiang Liu,Ling Hu,Kun Yang,Peter Steinmann,Zhao Chen,Li-Ying Wang,Jürg Utzinger,Xiao-Nong Zhou (2009) Invasive Snails and an Emerging Infectious Disease: Results from the First National Survey on ''Angiostrongylus cantonensis'' in China. Plos Neglected Tropical Disease 3(2), e368. {{doi|10.1371/journal.pntd.0000368}}</ref>。よく茹でたうえで内臓は除去し食べる。歩留まりは悪いが味は良いという評価も多い。 |
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⚫ | [[卵]]は[[神経毒]]を含むが、[[タンパク質]]毒のため、加熱によって変性して[[毒性]]を失うことが、[[ハツカネズミ#実験用マウス|マウス]]への投与実験で報告されている<ref>{{Cite journal | author=Heras H. | author2=Frassa MV. | author3=Fernández PE. | author4=Galosi CM. | author5=Gimeno EJ | author6=Dreon MS. | date=2008 | title=First egg protein with a neurotoxic effect on mice. | journal = Toxicon | volume=52 | pages=481-488 |doi=10.1016/j.toxicon.2008.06.022 }}</ref>。しかし、たとえ加熱しても食用に耐えうる味ではない。卵を喫食することは避けられているため、ヒトの[[食中毒]]に関する報告もない。 |
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: [[水田]]に生息して[[田植え]]後の若い[[イネ]]を食害するため、[[東アジア]]・[[東南アジア]]各地で[[イネ]]の[[害虫]]となっている{{R|affrc-024906}}。生息地では、[[用水路]]やイネなどに産みつけられる卵塊の鮮やかなピンク色が目立つので、すぐに分かる。水路の壁一面に卵塊が張り付くこともあり、美観上の問題となっている場所もある。日本の[[農林水産省]]が2020年に設置した水稲病害虫防除対策全国協議会で重点対策の対象に位置付けられており、マニュアルでは春夏は薬剤散布や水田への侵入防止などの対症療法、秋冬は重機を使った耕耘による破砕や泥ごと水路からすくい上げて越冬できなくすることを勧めている<ref>【アグリフォーカス】ジャンボタニシ 冬こそ防除本番/耕起や水路 泥上げ季節またがせず『日本農業新聞』2021年11月30日18面</ref>。 |
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: スクミリンゴガイが[[イネ]]より[[水田雑草]]を好んで食べる性質を利用し、水田の[[除草]]手段として利用する動きもあった<ref>{{Cite journal|和書|author=牧山正男, 伊東太一 |title=スクミリンゴガイ被害の実態と水田浅水管理による抑制効果 |journal=農業土木学会誌 |ISSN=0369-5123 |publisher=農業農村工学会 |year=2005 |volume=73 |issue=9 |pages=793-796,a1 |naid=130004101108 |doi=10.11408/jjsidre1965.73.9_793 |url=https://doi.org/10.11408/jjsidre1965.73.9_793}}</ref>。これには均平な代かきと微妙な水管理が必要である。方法は、稲苗が標的となる[[田植え]]直後に水張りをゼロにし、スクミリンゴガイを眠らせる。その後、1日1mmずつ水深を上げ、[[雑草]]の芽を食べさせる。10日後には一気に5cmの深さにする。こうすれば、株元が固くなった稲よりも生えてくる雑草を好んで食べてくれるので、除草剤なしで栽培が可能であるとされる<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/karc/applesnail/prevention/024935.html|title=九州沖縄農業研究センター:水稲移植栽培でのスクミリンゴガイ対策|publisher=農研機構 |accessdate=2020-07-27}}</ref>。30日程度が経過すれば[[雑草]]の芽がなくても[[イネ]]が十分な大きさになるので食べられることはなくなる。(ただし[[大雨]]などで水面が上がり過ぎると食べられる危険はある)。[[イネ]]が優先的に食べられない理由として水面下が硬い茎になることや、イネがケイ素吸収の特に多い植物で[[細胞壁]]が硬いことが原因としてある<ref>{{Cite web|和書|title=根におけるケイ素吸収・輸送モデルの開発とイネがケイ素を多く吸収できるメカニズムの解明(農業環境技術研究所) |url=https://www.naro.affrc.go.jp/archive/niaes/sinfo/result/result31/result31_28.html |website=www.naro.affrc.go.jp |access-date=2022-06-10 |language=ja}}</ref>。しかし、この行為により生息域が拡大したとの指摘があり<ref>{{Cite book|和書|author=日本生態学会, 和田節 |title=外来種ハンドブック |publisher=[[地人書館]] |year=2002 |series=スクミリンゴガイ~ 人のいとなみに翻弄される水田の外来種 |NCID=BA58709946 |ISBN=9784805207062 |page=171}}</ref>、[[農林水産省]]が放し飼いせず、駆除するように呼びかけている<ref>{{Cite web |url=https://www.maff.go.jp/j/syouan/syokubo/gaicyu/siryou2/sukumi/sukumi.html |title=スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害防止対策について |publisher =農林水産省 |accessdate=2024-03-12}}</ref><ref name="huff240307">{{Cite web |url=https://www.huffingtonpost.jp/entry/story_jp_65e90e19e4b0c77c74151b9c |title=ジャンボタニシの放し飼い、除草目的でも「やめて!」と農水省。「一度侵入・まん延すると根絶は困難」 |publisher =ハフポスト |date=2024-03-07 |accessdate=2024-03-13}}</ref><ref name="tenbou31836">{{Cite web |url=https://tenbou.nies.go.jp/news/jnews/detail.php?i=31836 |title= 鹿嶋市、ジャンボタニシの除去を呼びかけ |publisher =[[国立環境研究所]] |date=2021-05-18 |accessdate=2024-03-12}}</ref>。 |
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イネは特に葉齢4程度までの幼苗が被害を受けやすいとされる。通常田植えは葉齢2.2前後で行うので食害が問題になりやすく、概ね田植え後2週間程度までが被害が大きい。イネを加害するのは殻高15mmを越えた個体で、殻高30mmを超えると7葉期くらいまでなら食べることができる<ref name="大矢慎吾ら(1986)"/>。貝のいない苗床で十分大きくなるまで育ててから田植えを行えばある程度被害を減らせるが、大苗は活着に問題があるとされる。また、農作業の省力化の点で、苗床での育苗を経ずに水田への種籾の直播が見直されつつあり<ref>川崎賢太郎 (2010) 水稲直播栽培技術の採択要因とその効果. 農業経済研究 82(1), p.11-22. {{doi|10.11472/nokei.82.11}}</ref>、この場合は[[発芽]]直後から貝が存在することになるため(特に湛水直播の場合、乾田直播もある)に大きな問題となる。 |
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駆除方法として[[メタアルデヒド]]、[[石灰窒素]]などいくつかの殺貝剤が提案されている。これらは[[カタツムリ]]・[[ナメクジ]]などの陸生貝類の駆除や、水生貝類が媒介する[[地方病 (日本住血吸虫症)|日本住血吸虫症]]でも使われているものである。特に優れているのはメタアルデヒドでスクミリンゴガイに対しては殺貝率の高さだけでなく、忌避率も高く薄い溶液に浸した餌を与えても貝が摂食しない<ref>西内康浩 (1992) スクミリンゴガイに及ぼす農薬の影響. 水産増殖 40(3), p.273-277. {{doi|10.11233/aquaculturesci1953.40.273}}</ref>。メタアルデヒドは当初、水稲には使用できなかったが2008年の見直しで水稲のリンゴガイ類駆除用として農薬登録された。石灰窒素も殺貝率が高い優秀な農薬であるが、散布後10日程度は待ってから植え付けしないと作物に薬害が出るといわれる。 |
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生態節で前述したように浅水を嫌い、浅水状態にすると泥に潜って休眠状態に入ることから、水深を浅くする管理も食害防止に有効である<ref name="大場光善ら(1994a)"/>。これを応用し水田の雑草駆除にも利用できる。苗を植えたあと2週間が食害被害の多い期間なので、この間だけは浅水で管理し、イネの茎が硬くなり食害を受けなくなってからは水を増やすことで、休眠から目覚めた貝がイネ以外の雑草を食べることに期待するというものである。大場ら(1994)が福岡県の水田で行った実験では概ね良好な結果を得られているが、水田内の水が溜まりやすい部分では食害被害も多少出た。この論文内では注意点として'''無被害の水田への貝の放飼は行わないこと'''、'''直播水田には向かないこと'''、'''水深管理ができない水田には向かないこと'''なども指摘している<ref>大隈光善・田中浩平・須藤新一郎 (1994) スクミリンゴガイによる水田雑草防除. 雑草研究 39(2), p.114-119. {{doi|10.3719/weed.39.114}}</ref>。 |
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越冬に伴う貝の死亡率がかなりあることから、これを上昇させようという取り組みも行われている。 |
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貝は[[銅]]を嫌がるといい、銅が有効成分の塗料を用水路の壁面に塗布することで、塗布面より上部の区域への産卵防止効果があるという<ref>田坂幸平・和田節・遊佐陽一・吉田和弘・安東敏弘・土屋史紀・深見公一郎・佐々木豊 (2013) 水路における忌避材によるスクミリンゴガイの産卵抑制. 農作業研究 48(4), p.133-141. {{doi|10.4035/jsfwr.48.133}}</ref> |
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==== 参政党SNS問題 ==== |
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⚫ | 2023年7月、[[参政党]][[奈良県]]支部のSNSが、田植え実習を報告した動画の中で、「慣行農法では嫌われ者のジャンボタニシくん。[[自然農法]]では味方になってくれます。水の量を調整して、ジャンボタニシ君の協力を得て、今後草抜きなしでいけるかな」とジャンボタニシを用いた除草法を紹介した<ref name="jcast240307">{{Cite web |url=https://www.j-cast.com/2024/03/07479249.html |title=ジャンボタニシ放飼「止めて!」農水省が警鐘 X論争で...飛び火のJA福岡市も訴え「推奨している事実一切ない」 |publisher =J-CASTニュース |date=2024-03-07 |accessdate=2024-03-12}}</ref><ref name="jigen240309">{{Cite web |url=https://jigensha.info/2024/03/09/tanishi/ |title=【参政党研究】 党員の「ジャンボタニシ 農法」大炎上で 見えた 危うい 農本主義信仰 |publisher =示現舎 |date=2024-03-09 |accessdate=2024-03-12}}</ref>。2024年2月末には、[[福岡県]]や奈良県で農業を営む参政党の一部党員が、ジャンボタニシを用いて自然農法として推奨するような内容を投稿していたことが判明し<ref name="tv-asahi240314">{{Cite web |url=https://news.tv-asahi.co.jp/news_society/articles/900001820.html |title=ジャンボタニシで除草? 投稿が炎上 農水省が注意喚起 米農家「信じられない」 |publisher =テレビ朝日 |date=2024-03-14 |accessdate=2024-03-14}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://twitter.com/IaaIto/status/1766850107784466584 |title=ジャンボタニシ撒いてたご本人… このタイミングで参政党公認市議選候補とは|publisher =SITO.(シト) - X |date=2024-03-11 |accessdate=2024-03-13}}</ref>、党員内でジャンボタニシ農法が推進されていたことが判明した。福岡県支部の党員は、Xでジャンボタニシ農法を「40年前から地元で行われている有機農法」「地域ぐるみで[[福岡市農業協同組合|JA福岡市]]が指導した」「全国でやったらいい」<ref>{{Cite web |url=https://archive.is/t7ag0 |title=最近、アンチがジャンボタニシ農法を馬鹿のしてるらしい。 |publisher =重松ゆうこ - X |date=2024-02-29 |accessdate=2024-03-12}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://twitter.com/yuko_shigematsu/status/1763215879385538564 |title=17分あたりからジャンボタニシ農法触れてます。 |publisher =重松ゆうこ - X |date=2024-02-29 |accessdate=2024-03-12}}</ref>などと投稿した<ref name="jigen240309" /><ref name="bunka4487">{{Cite web |url=https://bunkaonline.jp/archives/4487 |title=281回 ジャンボタニシ農法と参政党 |publisher =[[コアマガジン]]([[ロマン優光]]) |date=2024-03-08 |accessdate=2024-03-12}}</ref><ref name="kuro240308">{{Cite web |url=https://kurodoraneko15.theletter.jp/posts/3096efa0-db0e-11ee-87c1-4500c012b62d |title=岐路に立つ参政党。ジャンボタニシが追い討ち?<ドラネ考> |publisher =黒猫ドラネコ【トンデモ観察記】 |date=2024-03-08 |accessdate=2024-03-12}}</ref>。この党員は、自身の公式サイトでジャンボタニシ農法を採用した[[無農薬栽培|無農薬]]米を販売している<ref name="jigen240309" /><ref>{{Cite web |url=https://web.archive.org/web/20240312010954/https://yuko-shokuiku.com/post-752/ |title=無農薬米を販売しています |publisher =重松雄子の食育べっぴん塾 |quote=JA福岡市が中心になり開発されたおかげで、ご近所の田んぼも農薬は使われていません。|date=2024-01-05 |accessdate=2024-03-12}}</ref>。3月6日、農林水産省がXで水田での「ジャンボタニシ」の放し飼いは止めるよう注意喚起し<ref name="sankei240312">{{Cite web |url=https://www.sankei.com/article/20240312-GYIVMJHNV5DILJLHQB5KI62HHY/ |title=「気持ち悪いんです、これ」 農水相、ジャンボタニシの放し飼いで注意喚起 イネに被害 |publisher =産経新聞 |date=2024-03-12 |accessdate=2024-03-13}}</ref><ref>{{Cite web |url=https://twitter.com/MAFF_JAPAN/status/1765286854893678988 |title=【 #ジャンボタニシ 放飼は止めてください!】 |publisher =農林水産省 |date=2024-03-06 |accessdate=2024-03-12}}</ref>、[[農林水産大臣]]は、12日に「除草目的でも周囲に悪影響を及ぼすので、放さないように」と呼び掛けた<ref name="sankei240312" /><ref>{{Cite web |url=https://www.maff.go.jp/j/press-conf/240312.html |title=坂本農林水産大臣記者会見概要 |publisher =農林水産省 |date=2024-03-12 |accessdate=2024-03-13}}</ref>。JA福岡市のホームページにはジャンボタニシを用いた除草法が2024年4月現在も掲載されている<ref>{{Cite web |url=https://www.ja-fukuoka.or.jp/upload/save/content/button/cf3ee6934b258ec5a546a876457a52f8.pdf |title=ジャンボタニシ除草 |access-date=2024/4/20 |publisher=JA福岡市}}</ref>が、3月7日の時点で「当組合が『ジャンボタニシ農法を推奨している』という内容の投稿がございますが、そのような事実はございません」と声明を出した<ref name="jcast240307" /><ref name="bunka4487" />。3月9日、参政党は公式ホームページに「党としてジャンボタニシ農法を推奨しているわけではない」「ジャンボタニシは撲滅が必要」「意図的に繁殖させるような行為は一切行われていない」として、「誤解を招く可能性のある発信を行った支部や党員には、発信内容を訂正し、今後はそのような発信を控えるよう指導した」と発表した<ref name="sankei240312" /><ref name="jigen240309" /><ref>{{Cite web |url=https://www.sanseito.jp/news/10584/ |title=SNS上で発信されている「ジャンボタニシ」の件について |publisher =参政党 |date=2024-03-09 |accessdate=2024-03-12}}</ref>。 |
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⚫ | 天敵として、[[カルガモ]]や[[スッポン]]、[[コイ]]などが知られている。大量発生地域ではスッポンの大量放流による駆除が行われている<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/karc/applesnail/prevention/024984.html |title=九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ |publisher=農研機構 |accessdate=2013-06-25}}</ref>が、これら駆除のために放流した天敵を食用に捕らえる人間もいるため、問題となっている<ref>{{Cite news|url=http://mytown.asahi.com/saga/news.php?k_id=42000000607250002 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20060806223238/http://mytown.asahi.com/saga/news.php?k_id=42000000607250002 |archivedate=2006-08-06 |title=ジャンボタニシ退治にスッポン活躍 |website=[[朝日新聞デジタル|asahi.com]] |accessdate=2007-10-20}}</ref>。 |
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; 食用 |
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: 中国、東南アジアでは食用として広く利用されている。運河、水路、水田から網で採取されたスクミリンゴガイは唐辛子や醤油などで調理されて食べられている<ref>{{Cite journal|last=Setalaphruk|first=Chantita|last2=Price|first2=Lisa Leimar|date=2007-10-15|title=Children's traditional ecological knowledge of wild food resources: a case study in a rural village in Northeast Thailand|url=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2100045/|journal=Journal of Ethnobiology and Ethnomedicine|volume=3|pages=33|doi=10.1186/1746-4269-3-33|issn=1746-4269|pmid=17937791|pmc=2100045}}</ref>。中国では「田螺塞肉」という料理も考案されている<ref>{{Cite web |title=田螺塞肉的做法_菜谱_香哈网 |url=https://m.xiangha.com/caipu/94276426.html |website=m.xiangha.com |access-date=2022-04-24}}</ref>。日本でも一部のレストランでスクミリンゴガイを[[フランス料理]]の[[エスカルゴ]]の代替食材として提供する試みがなされている<ref>{{Cite web|和書|title=ジャンボタニシ食材に 食感「エスカルゴのよう」佐倉の伊料理店 プレゼンテ・スギ|url=https://www.chibanippo.co.jp/news/local/815371|website=[[千葉日報]]|accessdate=2021-10-18|language=ja}}</ref>。食用部は主に腹足などの筋肉質であり、内臓を除去して加熱調理で食される。内臓と表面のぬめりには泥臭さがあるため、除去や[[酢]]洗いなどを行うことで取り去ることができる。下処理をすれば臭みが少なく淡白な味で貝としての[[うま味]]があり、養殖のエスカルゴに負けない食味を有する<ref>{{Cite web|和書|title=田んぼのジャンボタニシについて|url=https://icchinosora.com/farm/post-748/|website=icchinosora.com|date=2019-08-16|accessdate=2021-10-03|language=ja|last=イッチ}}</ref>。タニシなどと同様、体内に[[広東住血線虫]]などの[[寄生虫]]が宿主していることがあるため<ref>{{Cite web|和書|url=http://www.naro.affrc.go.jp/laboratory/karc/applesnail/other/025017.html |title=九州沖縄農業研究センター:スクミリンゴガイ 寄生虫(広東住血線虫) |publisher=農研機構 |accessdate=2020-02-20}}</ref>、調理では最初に[[茹で物|茹でる]]ことが勧められている。充分加熱せず喫食した場合、[[寄生虫]]が人体に感染して死亡することもある<ref>{{Cite web|url=https://www.mohw.gov.tw/cp-16-40125-1.html |title= 外勞食用福壽螺引發廣東住血線蟲感染,疾管署呼籲食材應澈底洗淨後熟食|publisher=衛生福利部疾病管控署 |accessdate=2018-03-09}}</ref>。 |
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; 駆除方法 |
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: 先述のように卵は有毒であり、原産地の南アメリカでも[[ヒアリ]]以外の[[天敵]]が存在しない。よって、そのほとんどが幼貝へ無事に孵化することから、本種が爆発的に個体数を増やしているという指摘もある。しかし卵は水中では孵化できない(イネの株や水路の壁のような濡れない場所に産みつけられる)ため、卵塊を見つけ次第水中へ掻き落とすのは、個体数を減らすのに有効な駆除方法である。 |
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: 稲苗よりも野菜に誘引されやすいという性質から、野菜トラップで誘引しスクミリンゴガイの捕獲効率を向上させたという報告もある<ref>{{Cite journal|和書|author=国本桂範, 西川学 |title=野菜トラップによるスクミリンゴガイの捕獲効率の向上 |journal=農作業研究 |ISSN=03891763 |publisher=日本農作業学会 |year=2008 |month=jun |volume=43 |issue=2 |pages=75-82 |naid=10029876076 |doi=10.4035/jsfwr.43.75 |url=https://doi.org/10.4035/jsfwr.43.75 |accessdate=2021-11-29}}</ref>。尚、スクミリンゴガイが好む野菜はメロン、スイカ、レタス、ナスであり、これらを投入することによって, スクミリンゴガイによるイネの被害を回避できる可能性のあることが示唆されている。<ref>{{Cite web|和書|url=https://agriknowledge.affrc.go.jp/RN/2010632175.pdf|title=野菜に対するスクミリンゴガイの選好性と摂餌行動(収量予測・情報処理・環境) |publisher=日本作物学会紀事 |accessdate=2021-11-01}}</ref> |
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:農薬を使わず罠で捕獲する試みもある<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=「ジャンボタニシ ごめんね」 中学生が改良を重ねた「罠」:朝日新聞デジタル |url=https://www.asahi.com/articles/ASQ5T61WBQ5COHGB00K.html?iref=ogimage_rek |website=朝日新聞デジタル |date=2022-05-25 |access-date=2022-10-14 |language=ja}}</ref>。[[三重県]][[松阪市]]北部農林水産事務所は、簡易に製作できる捕獲用[[罠]]を考案した。水稲の[[苗]]箱を2つ向かい合わせ、長辺を結び付けて開閉可能とし、出入り口を3か所空けて、[[ペットボトル]]の飲み口をギザギザに加工して取り付ける。内部に入れた[[米ぬか]]に誘引されて入り込んだスクミリンゴガイは、外部に出られなくなる<ref name="農業新聞20200731">「ジャンボタニシ対策/捕獲:苗箱で100匹超 水稲:茎と葉を固く」『日本農業新聞』2020年7月31日7面</ref>。岐阜県関市では、[[関市立旭ヶ丘中学校]]の生徒が開発した植木鉢とペットボトルを組み合わせた捕獲器を農家に配布している<ref name=":0" />。[[佐世保工業高等専門学校]][[電気電子工学科]]准教授の柳生義人は、スクミリンゴガイが[[負極]]側に集まる習性を利用し、電気でおびき寄せ、[[超音波]]で駆除する方法を開発した<ref>{{Cite news|newspaper=『日本農業新聞』 |date=2019年5月26日 |url=https://www.agrinews.co.jp/p47758.html |title=ジャンボタニシ 捕獲にビリビリ有効 おびき寄せて超音波で駆除 |accessdate=2019-05-26 |deadlinkdate=2020-02-20 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20190531175122/https://www.agrinews.co.jp/p47758.html |archivedate=2019-05-31}}</ref>。 |
:農薬を使わず罠で捕獲する試みもある<ref name=":0">{{Cite web|和書|title=「ジャンボタニシ ごめんね」 中学生が改良を重ねた「罠」:朝日新聞デジタル |url=https://www.asahi.com/articles/ASQ5T61WBQ5COHGB00K.html?iref=ogimage_rek |website=朝日新聞デジタル |date=2022-05-25 |access-date=2022-10-14 |language=ja}}</ref>。[[三重県]][[松阪市]]北部農林水産事務所は、簡易に製作できる捕獲用[[罠]]を考案した。水稲の[[苗]]箱を2つ向かい合わせ、長辺を結び付けて開閉可能とし、出入り口を3か所空けて、[[ペットボトル]]の飲み口をギザギザに加工して取り付ける。内部に入れた[[米ぬか]]に誘引されて入り込んだスクミリンゴガイは、外部に出られなくなる<ref name="農業新聞20200731">「ジャンボタニシ対策/捕獲:苗箱で100匹超 水稲:茎と葉を固く」『日本農業新聞』2020年7月31日7面</ref>。岐阜県関市では、[[関市立旭ヶ丘中学校]]の生徒が開発した植木鉢とペットボトルを組み合わせた捕獲器を農家に配布している<ref name=":0" />。[[佐世保工業高等専門学校]][[電気電子工学科]]准教授の柳生義人は、スクミリンゴガイが[[負極]]側に集まる習性を利用し、電気でおびき寄せ、[[超音波]]で駆除する方法を開発した<ref>{{Cite news|newspaper=『日本農業新聞』 |date=2019年5月26日 |url=https://www.agrinews.co.jp/p47758.html |title=ジャンボタニシ 捕獲にビリビリ有効 おびき寄せて超音波で駆除 |accessdate=2019-05-26 |deadlinkdate=2020-02-20 |archiveurl=https://web.archive.org/web/20190531175122/https://www.agrinews.co.jp/p47758.html |archivedate=2019-05-31}}</ref>。 |
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:水稲の苗を育てる際に、[[竹]]粉を[[乳酸発酵]]させた培土を使い、[[フルボ酸]]をまくと、[[茎]]や[[葉]]が硬くなり、食害されにくくなる<ref name="農業新聞20200731"/>。 |
:水稲の苗を育てる際に、[[竹]]粉を[[乳酸発酵]]させた培土を使い、[[フルボ酸]]をまくと、[[茎]]や[[葉]]が硬くなり、食害されにくくなる<ref name="農業新聞20200731"/>。 |
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:[[千葉県立農業大学校]]の考案した罠は、[[貝殻]]形成に必要な[[カルシウム]]を含むため誘引力が高い[[ドッグフード]]を使い、[[バケツ]]の底に落とし込んで[[酸欠]]死させて脱走を防ぐ<ref name=":1" />。罠を荒らしかねない[[哺乳類]]([[アライグマ]]など)が嫌う[[ハッカ]]も入れる<ref name=":1">「ジャンボタニシの誘引餌にドッグフード グッドな駆除」『日本農業新聞』2021年7月10日13面</ref>。 |
:[[千葉県立農業大学校]]の考案した罠は、[[貝殻]]形成に必要な[[カルシウム]]を含むため誘引力が高い[[ドッグフード]]を使い、[[バケツ]]の底に落とし込んで[[酸欠]]死させて脱走を防ぐ<ref name=":1" />。罠を荒らしかねない[[哺乳類]]([[アライグマ]]など)が嫌う[[ハッカ]]も入れる<ref name=":1">「ジャンボタニシの誘引餌にドッグフード グッドな駆除」『日本農業新聞』2021年7月10日13面</ref>。 |
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=== 飼育 === |
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[[アクアリウム]]市場でスクミリンゴガイの黄変種は、'''ゴールデンアップルスネール'''の商品名で流通している。水槽内のコケ取り[[タンクメイト]]として飼育されるが、[[水草]]入りの水槽で飼育すると水草が食害に遭う。淡水で繁殖するため、水槽内で数が増えすぎる被害も発生する。 |
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== 分類学的位置づけ == |
== 分類学的位置づけ == |
2024年7月11日 (木) 15:08時点における版
スクミリンゴガイ | |||||||||||||||||||||||||||
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分類 | |||||||||||||||||||||||||||
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学名 | |||||||||||||||||||||||||||
Pomacea canaliculata Lamarck, 1819 | |||||||||||||||||||||||||||
和名 | |||||||||||||||||||||||||||
スクミリンゴガイ ジャンボタニシ | |||||||||||||||||||||||||||
英名 | |||||||||||||||||||||||||||
channeled apple snail golden apple snail |
スクミリンゴガイ(学名 Pomacea canaliculata)は、リンゴガイ科(リンゴガイ、アップルスネイル)に属する淡水棲の巻貝である。俗にジャンボタニシと呼ばれる[1]。
形態
淡水巻貝としては極めて大型である。成体は殻高50 - 80 mmに達する。
卵は多数が固まった卵塊を形成し、鮮やかなピンク色で目立ちやすい。ピンク色なのはカロテノイドが含まれているからだと見られている[2]。同族間で形態が酷似しており、見た目だけで見分けるのは難しいといわれる。
-
殻。直径8cm。
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卵。スケールはcm。
-
水辺に産み付けられた卵塊
生態
生活リズムとしては原則的に夜行性と見られ、日中は泥に潜って休んでいる個体が多い。泥に潜る行動は休眠以外でも水深が浅いなど貝にとって不利な条件だとよく見られる。原産地も乾季がある気候であり適応している。高水温や餌の量などの条件では潜る率に雌雄差が見られる[3]。地中で越冬した場合0度で25日、-6度で1日程度ですべての貝が死亡するといい[4]、気温による死亡率の考え方には平均気温を用いる手法[5]や積算気温を用いた手法も提案されている[6]。泥に潜ることで越冬時の生存率が上がるという[7]。越冬による死亡率は貝の大きさが関係しており、殻高1cm未満の稚貝は死亡率が高く、逆に殻高3cmを超える大きな個体も死亡率が高い例がしばしば観察される[7][8]。これは稚貝は冷えやすく乾燥にも耐えられないこと、また、大きすぎる貝は地中に潜るのが下手で低温と乾燥に耐えられないのではないかとみられている。
活動水温は25度から30度が適当で、高温側は35度を超えると活動が鈍るという報告が多い引用エラー: <ref>
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原産地のアルゼンチンでの観察によれば、餌は水中の腐植や生物遺体の細かい破片、いわゆるデトリタスが中心であり、新鮮な植物は少ない[10]。餌として葉が持つ防御物質のフェノール類の量に反応しており、腐植を好む理由の一つは餌の防御物質が減ることと見られている[11]。水中の葉のほか、イネの場合は水中で茎を嚙みちぎり、水面に落ちた葉を水中に引き込んで食べているという[12]
日本での観察では一日当たりの摂食量は殻高3cmの個体で約3gだという[13]。イネよりもレタス、ナス、メロンなどの野菜を好む[14]。愛媛県での観察によるとスクミリンゴガイのいる水田では水田雑草のコナギが見られないという[15]。
性成熟するのはオスは殻高25 mm、メスは30 mmで、雌雄異体で雌の方が大きくなる[16]。雄は殻をぶつけ合って競うという。九州における調査では水路の個体と比べ、水田の個体の方が殻が薄い傾向にあるという[17]。雌雄異体であり繁殖には交尾を行う。交尾の時間は4時間から20時間、平均12時間にも及ぶ。雄は長時間の交尾の途中で精子以外に陰茎からの分泌物を雌に与える行動が見られるが、意義などについてはよくわかっていない。雌雄ともに乱交型であり卵塊の卵は複数の雄の遺伝子を含むという[18]
水面から離れた植物体表面や岸辺の壁面に産卵し、直後は1個1個の卵を結着している粘液が柔らかいが、やがて硬質化して付着箇所から容易には剥がれない状態となる。卵塊は鮮やかな鮮紅の警戒色を呈し、卵内部は神経毒のPcPV2が満たされて、ヒトが食した場合は苦味もあり[19]、この毒と色彩によって、卵はアリ以外の全ての捕食者から逃れている[20]。孵化は酸素を要すため、水中では孵化できない。
日本の夏季の気候で2週間程度で孵化し、幼体は水温と栄養状態に恵まれれば、2か月で性成熟する。
鰓呼吸だけでなく、肺様器官で空気中の酸素を利用して乾燥に強く、乾期などに水中から離れても容易には死亡しない。耐寒性はそれほど高くなく[19]、日本で越冬に成功する個体の大半は、殻高1 - 3センチメートルの幼体である[19]。寿命は環境により変化するが、日本の野外で2年以内、飼育下では4年程度と見られ、天敵は魚類、鳥類、捕食性水生昆虫、大型甲殻類、カメである[19]。
コイ(Cyprinus carpio)は幼貝をよく食べ、九州での野外観察では1日に約50個は捕食していると推定されている[21]。水槽実験では1日200個捕食しているとする結果もあるが、野外で葉泥に潜るために少なくなったとみられている。日本では他にヒル類(成貝も捕食可能)[22]、ヘイケボタル(殻高1cm程度まで)[23]などが報告されている。タイやベトナムでは人が拾い上げることでの貝の生息密度を下げているが、食用にはしていないという[24]
分布
自然分布の野生個体は、南アメリカのラプラタ川流域に生息する[25]。
温帯および熱帯のアジア各地に移入分布する。中国の個体群はミトコンドリアDNA解析の結果、スクミリンゴガイがアルゼンチン起源、同属近縁の P. maculataはブラジルが起源だと推測されている[26]。
日本では北海道、東北地方以外には広く定着している。除草能力の高さから、たびたび起こる無農薬オーガニックが流行する際に「除草剤代わりの稲守貝」などと称して未発生の水田に積極的に放飼することが一部で行われ、これが日本で分布を拡大する一因となったとされている日本生態学会, 和田節『外来種ハンドブック』地人書館〈スクミリンゴガイ~ 人のいとなみに翻弄される水田の外来種〉、2002年、171頁。ISBN 9784805207062。 NCID BA58709946。。
人間との関係
食用
淡水巻貝としてはかなり大きく、減反政策による遊休農地の有効利用策として1981年に台湾経由で輸入されたのが日本における最初とされる[27]長崎県と和歌山県に初めて持ち込まれた[28]。しかし、物流の発達により内陸県でも新鮮な海産物が手に入るようになり、また寄生虫や農薬汚染などのイメージが強い淡水魚介類の食文化は1980年代の日本では衰退傾向にあり根付かなかった。
寄生虫のリスクがあるため生食はできない。中国では本種が広東住血線虫(Angiostrongylus cantonensis)の主要な感染源の一つとなっていると見られている[29]。よく茹でたうえで内臓は除去し食べる。歩留まりは悪いが味は良いという評価も多い。
卵は神経毒を含むが、タンパク質毒のため、加熱によって変性して毒性を失うことが、マウスへの投与実験で報告されている[30]。しかし、たとえ加熱しても食用に耐えうる味ではない。卵を喫食することは避けられているため、ヒトの食中毒に関する報告もない。
農業被害と対策
水田や湿地で栽培する温帯から熱帯にかけての有用作物であるイネ、サトイモ、ヒシ、ハスなどに食害被害が出ている。サトイモは日本本土では通常は畑で栽培されるため(亜熱帯の沖縄ではタイモと言って水上栽培することがある)にあまり注目されず、専らイネに対する被害と対策の研究が進んでいる。
イネは特に葉齢4程度までの幼苗が被害を受けやすいとされる。通常田植えは葉齢2.2前後で行うので食害が問題になりやすく、概ね田植え後2週間程度までが被害が大きい。イネを加害するのは殻高15mmを越えた個体で、殻高30mmを超えると7葉期くらいまでなら食べることができる[12]。貝のいない苗床で十分大きくなるまで育ててから田植えを行えばある程度被害を減らせるが、大苗は活着に問題があるとされる。また、農作業の省力化の点で、苗床での育苗を経ずに水田への種籾の直播が見直されつつあり[31]、この場合は発芽直後から貝が存在することになるため(特に湛水直播の場合、乾田直播もある)に大きな問題となる。
駆除方法としてメタアルデヒド、石灰窒素などいくつかの殺貝剤が提案されている。これらはカタツムリ・ナメクジなどの陸生貝類の駆除や、水生貝類が媒介する日本住血吸虫症でも使われているものである。特に優れているのはメタアルデヒドでスクミリンゴガイに対しては殺貝率の高さだけでなく、忌避率も高く薄い溶液に浸した餌を与えても貝が摂食しない[32]。メタアルデヒドは当初、水稲には使用できなかったが2008年の見直しで水稲のリンゴガイ類駆除用として農薬登録された。石灰窒素も殺貝率が高い優秀な農薬であるが、散布後10日程度は待ってから植え付けしないと作物に薬害が出るといわれる。
熱水を浴びせる駆除方法も試験されている[33]。
生態節で前述したように浅水を嫌い、浅水状態にすると泥に潜って休眠状態に入ることから、水深を浅くする管理も食害防止に有効である[13]。これを応用し水田の雑草駆除にも利用できる。苗を植えたあと2週間が食害被害の多い期間なので、この間だけは浅水で管理し、イネの茎が硬くなり食害を受けなくなってからは水を増やすことで、休眠から目覚めた貝がイネ以外の雑草を食べることに期待するというものである。大場ら(1994)が福岡県の水田で行った実験では概ね良好な結果を得られているが、水田内の水が溜まりやすい部分では食害被害も多少出た。この論文内では注意点として無被害の水田への貝の放飼は行わないこと、直播水田には向かないこと、水深管理ができない水田には向かないことなども指摘している[34]。
越冬に伴う貝の死亡率がかなりあることから、これを上昇させようという取り組みも行われている。
貝は銅を嫌がるといい、銅が有効成分の塗料を用水路の壁面に塗布することで、塗布面より上部の区域への産卵防止効果があるという[35]
参政党SNS問題
2023年7月、参政党奈良県支部のSNSが、田植え実習を報告した動画の中で、「慣行農法では嫌われ者のジャンボタニシくん。自然農法では味方になってくれます。水の量を調整して、ジャンボタニシ君の協力を得て、今後草抜きなしでいけるかな」とジャンボタニシを用いた除草法を紹介した[36][37]。2024年2月末には、福岡県や奈良県で農業を営む参政党の一部党員が、ジャンボタニシを用いて自然農法として推奨するような内容を投稿していたことが判明し[38][39]、党員内でジャンボタニシ農法が推進されていたことが判明した。福岡県支部の党員は、Xでジャンボタニシ農法を「40年前から地元で行われている有機農法」「地域ぐるみでJA福岡市が指導した」「全国でやったらいい」[40][41]などと投稿した[37][42][43]。この党員は、自身の公式サイトでジャンボタニシ農法を採用した無農薬米を販売している[37][44]。3月6日、農林水産省がXで水田での「ジャンボタニシ」の放し飼いは止めるよう注意喚起し[45][46]、農林水産大臣は、12日に「除草目的でも周囲に悪影響を及ぼすので、放さないように」と呼び掛けた[45][47]。JA福岡市のホームページにはジャンボタニシを用いた除草法が2024年4月現在も掲載されている[48]が、3月7日の時点で「当組合が『ジャンボタニシ農法を推奨している』という内容の投稿がございますが、そのような事実はございません」と声明を出した[36][42]。3月9日、参政党は公式ホームページに「党としてジャンボタニシ農法を推奨しているわけではない」「ジャンボタニシは撲滅が必要」「意図的に繁殖させるような行為は一切行われていない」として、「誤解を招く可能性のある発信を行った支部や党員には、発信内容を訂正し、今後はそのような発信を控えるよう指導した」と発表した[45][37][49]。
天敵として、カルガモやスッポン、コイなどが知られている。大量発生地域ではスッポンの大量放流による駆除が行われている[50]が、これら駆除のために放流した天敵を食用に捕らえる人間もいるため、問題となっている[51]。
- 農薬を使わず罠で捕獲する試みもある[52]。三重県松阪市北部農林水産事務所は、簡易に製作できる捕獲用罠を考案した。水稲の苗箱を2つ向かい合わせ、長辺を結び付けて開閉可能とし、出入り口を3か所空けて、ペットボトルの飲み口をギザギザに加工して取り付ける。内部に入れた米ぬかに誘引されて入り込んだスクミリンゴガイは、外部に出られなくなる[53]。岐阜県関市では、関市立旭ヶ丘中学校の生徒が開発した植木鉢とペットボトルを組み合わせた捕獲器を農家に配布している[52]。佐世保工業高等専門学校電気電子工学科准教授の柳生義人は、スクミリンゴガイが負極側に集まる習性を利用し、電気でおびき寄せ、超音波で駆除する方法を開発した[54]。
- 水稲の苗を育てる際に、竹粉を乳酸発酵させた培土を使い、フルボ酸をまくと、茎や葉が硬くなり、食害されにくくなる[53]。
- 千葉県立農業大学校の考案した罠は、貝殻形成に必要なカルシウムを含むため誘引力が高いドッグフードを使い、バケツの底に落とし込んで酸欠死させて脱走を防ぐ[55]。罠を荒らしかねない哺乳類(アライグマなど)が嫌うハッカも入れる[55]。
飼育
アクアリウム市場でスクミリンゴガイの黄変種は、ゴールデンアップルスネールの商品名で流通している。水槽内のコケ取りタンクメイトとして飼育されるが、水草入りの水槽で飼育すると水草が食害に遭う。淡水で繁殖するため、水槽内で数が増えすぎる被害も発生する。
飼料
水田で取れたジャンボタニシの家畜飼料への応用研究がされている。 愛媛県養鶏研究所では採卵鶏の飼料に活用できることが実証された[56]。ただし採取と加熱乾燥のコスト問題が課題として残る。
分類学的位置づけ
「ジャンボタニシ」の呼称があるが淡水生の巻貝というくらいしか共通点は無く、分類学的には非常に疎遠である。
かつてはタニシと同じタニシ上科 Viviparoidea に分類されていた[25]。現在の分類では別上科で、暫定的に同目とされているが新生腹足類内で近縁な関係にはなく[57]、非常に疎遠である。
日本にはリンゴガイ属 Pomacea のうちスクミリンゴガイとラプラタリンゴガイ Pomacea insularum が生息するが、これらは形態では区別が困難である。アジアに主に生息するのはスクミリンゴガイであるが、ラプラタリンゴガイ、Pomacea diffusa、Pomacea scalaris も発見されている[25]。
アジアに移入された種はかつてラプラタリンゴガイとされてきたが、1986年に日本産の種はスクミリンゴガイと同定された[25]。遺伝子解析ではいくつかの県でラプラタリンゴガイも発見されている[58]。
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外部リンク
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- スクミリンゴガイ(ジャンボタニシ)の被害防止対策について(農林水産省)