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アメリカン航空191便墜落事故

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191便が墜落した現場写真

アメリカン航空191便墜落事故(英語:American Airlines Flight 191)とは、アメリカ合衆国の航空会社であるアメリカン航空所属のDC-10が墜落した航空事故である。


事故の概要

1979年5月25日金曜日は、視界もよく晴天であり、航空機が飛行するには理想的な天候であった。イリノイ州シカゴにあるオヘア国際空港から離陸し、ロサンジェルスに向かうアメリカン航空191便(ダグラスDC-10-10 機体記号:N110AA)には乗員13名(運航乗員3名)と乗客258名が搭乗していた。191便はオヘア国際空港の32R滑走路からアメリカ中部夏時間午後3時2分に離陸を開始した。

しかし離陸した直後に左翼第一エンジンが外れる重大な機体破壊に見舞われることになった。この光景は航空管制官は目撃したが191便には知らされていなかった。191便は高度600フィート(200m)まで上昇したが、乗員が右に舵をとっているにもかかわらず左側に燃料の白煙を引きながら112度も傾いてしまった。この事態の原因を乗員は把握していなかったが、エンジンパワー喪失時の緊急マニュアルにしたがい操作してこの情況から脱しようとした。

しかし191便は、減速したため高度325フィートから下降しはじめ、午後3時4分に離陸を始めてから34秒後、4600フィート離れた空き地に激突し、其処にあったモービルハウス(トレーナーハウス)を巻き込み大爆発した。この事故で搭乗者271人全員と地上にいた2人が犠牲となり、2人が重傷を負った。この犠牲者数は2001年アメリカ同時多発テロに伴う旅客機による自爆テロを除けば、アメリカ民間航空史上最悪の数字である。

事故原因

191便の残骸を調査する事故調査官
事故の引きがねになったDC-10のエンジンとパイロン構造

過去にもDC-10は貨物ドアの設計ミスから墜落する事故(詳細はトルコ航空DC-10パリ墜落事故を参照)を起こした前歴があった。そのため、機体欠陥によって再びこのような大惨事を起こしたと見なされたため、アメリカの航空当局は事故原因が判明するまで一時運航停止を命令し、全てのアメリカ国籍のDC-10は地上待機を余儀なくされた。またこの措置はアメリカ合衆国に乗りいれている外国籍のDC-10にも適用されたため、日本航空をはじめとする他国のDC-10ユーザーにも影響が波及し、大きな経済的損失を与えた。

事故機の外れた滑走路上にあった第二エンジンを調査した結果、墜落した機体は、製造メーカーのマクドネルダグラス社の予想もしない仕方で整備が行なわれていた。そのため、通常ありえない亀裂が生じたために離陸のちょっとした衝撃でエンジンが離脱していたのが判明した。

エンジンの正しいオーバーホール手順では、エンジンを主翼から外してからパイロン(継ぎ手)を取り外さなければならない。しかし、専用の整備道具を用意するなど手間がかかるため、この課程を省略する効率向上を狙ってフォークリフトを使ってパイロンにエンジンが付いたまま外していた。このためパイロンに亀裂が入っていた。この損傷のために、飛行中に、左翼の第1エンジンがパイロンもろとも脱落していた。このような亀裂は他の複数のDC-10にもあったことが判明した。なお、この整備方法を考案した整備士であるが事故調査委員会で証言する直前に自殺した。

また乗員が緊急マニュアルにしたがって操縦したにもかかわらず墜落した原因であるが、エンジンが脱落したことで、エンジンから供給されていた油圧が抜け、翼前面の高揚力装置が左側だけ格納されてしまい、左主翼だけが失速したためであった。そのため回復不能の姿勢に陥り、墜落したのであった。

後のフライトシミュレーションによる検証では、この状況下であってもマニュアルとは反対に離陸速度を高速にして上昇すれば安全に離陸でき、そのうえ無事に緊急着陸できたことが判明した。しかし、これは191便の教訓から判明したことであり、操縦乗員には一切の事故責任がなかった。

事故への対策

この事故を招いた原因は、経済効率第一主義の航空会社の不適切な整備方法(当然、マニュアル通りの整備作業に戻された)であったが、それを見逃した航空当局と製造メーカーも非難された。またDC-10の翼前面の高揚力装置が再び離陸中に格納されないようにするため、非常時にこの位置で固定する装置の装着が義務付けられた。

外部リンク