ヤマザキ春のパンまつり
ヤマザキ春のパンまつり(ヤマザキはるのパンまつり)は、山崎製パン(ヤマザキ)が毎年春期に開催する販売促進キャンペーン[1]。1981年(昭和56年)に開始して以来、フランスのアルク社(旧・デュラン社)製の「白いお皿」を景品として購入者に贈っている[2]。2019年(平成31年・令和元年)までに5億枚の皿が配布されている[3][4]。
概要
例年2月から4月にかけて開催され、ヤマザキが指定する対象商品に貼付された点数シールを規定点数だけ集めると、集めた人全員に景品の「白いお皿」が配布されるというイベントである[1]。なお、北海道地区では季節感を考慮し、他の都府県より開催時期を1か月ずらしている[5]。ヤマザキの商品を取り扱う店舗へシール台紙を持参すると、その場で皿と交換できる[6]。規定点数は年によって相違があり[7]、2011年(平成23年)は24点[8]、2023年(令和5年)は30点であった[7]。点数が変わるのは、為替レート・原材料費・輸送費などの影響を受け、「白いお皿」の原価が毎年変わるためである[7]。また、景品表示法の規定により、取引価格に応じた景品の限度額が定められているため、「白いお皿」の原価が上がると、交換に必要な点数も上がる[9]。
2019年(平成31年・令和元年)までに配布された皿の総数は5億枚にのぼり、ヤマザキは毎年1400万枚ほど交換用に発注している[3][4]。2014年(平成26年)には1440万枚が配布された[6]。毎年の「白いお皿」の配布枚数が多いことから、2016年(平成28年)には「受注するフランスの町が好景気に沸く」という噂がインターネット上で盛り上がり、withnewsがヤマザキに取材したところ、現地のコメントとして、「町全体が好景気に沸くとは言い難いが、雇用創出による地域貢献の側面はある」という回答を得た[3]。
「パンまつり」というキャンペーン名ではあるが、山崎製パン取扱店にて販売されている洋菓子や和菓子、同社が運営しているコンビニエンスストアチェーン店のデイリーヤマザキ・ニューヤマザキデイリーストア・ヤマザキショップ・ヤマザキスペシャルパートナーショップ[注 1]にて販売されている「ヤマザキベストセレクション」名義のプライベートブランド商品(おにぎり・お惣菜・弁当など)[10]も、2015年から応募用点数シールの添付対象となっている[11][12]。また、子会社となった不二家の一部商品にも点数シールが貼付されている。
歴史
1981年(昭和56年)に「春の食パンまつり」として開始した[2][13]。当時からデュラン社製の「白いお皿」を贈っていた[2][13]。ヤマザキにとって、春はパンの売り上げが伸びる時期であり、売り上げが伸びる時期に合わせてパンまつりを開催し始めたとされ、第1回が消費者に支持されたため、毎年のキャンペーンとなった[1]。ただし、今となってはパンまつりの効果で春に売り上げが伸びるのか、春なので売り上げが伸びるのかは不明である[2]。なお、日経産業新聞の1983年(昭和58年)2月17日付の記事では、「パンの需要低迷、とりわけ昨秋から食パンの不振が目立っている」という記述があり[14]、1985年(昭和60年)6月7日付の日本経済新聞でも「需要全体の六割近くを占める食パン販売は昨年六月以降前年同月実績を下回り続け今年になってからは同10%近く減っている。」と報じている[15]。
1982年(昭和57年)は「フランスの香り白いお皿プレゼント」の名称でキャンペーンを開催。このように「パンまつり」の表記がされていなかった年もある[13]。
1983年(昭和58年)には山崎製パン創業35周年を記念して「謝恩パンまつりダブルチャンスプレゼントセール」として開催、白いスープ皿をプレゼントすると共に皿贈呈者の中から抽選で更に景品が当たるキャンペーンも実施した[13][14]。同年からは秋にも販売促進イベントを開始したが、秋のイベントは抽選で景品が当たるというもので、その規模は春に比べて小さいものである[2]。1985年(昭和60年)は食パン販売が不振を極める中で高級ディナー皿を景品とし、同業の敷島製パンも「マイハート・Tシャツプレゼント」を5月から実施した[15]。1999年(平成11年)4月3日付の日経流通新聞の記事では、ヤマザキ春のパンまつりを「恒例の」と表現しており、この頃までには一般に定着したことが窺える[16]。この年には、抽選で東京ディズニーランドのペアチケットが5000組に当たるダブルチャンスキャンペーンも実施した[13][16]。
2011年(平成23年)は東日本大震災を受け一時休止し[3][17]、「白いお皿プレゼントキャンペーン」として実施された[8][13]。2013年(平成25年)2月1日にはヤマザキの公式レシピ本『毎日がパンまつり』が主婦の友社から出版され、付録としてヤマザキ春のパンまつりで使える3点分の点数シールが付いた台紙が封入された[18][19]。2021年(令和3年)はtwitterで「春のパンまつり」にまつわるエピソードを投稿するとQUOカードPay1,000円分が当たるキャンペーンが同時開催された[20]。
白いお皿
ヤマザキ春のパンまつりの景品である「白いお皿」は1981年(昭和56年)の開始当初から継続している[1]。皿の製造業者はパンまつりの開始当初から変わっていない[3]。清潔感があり、食パンを食べる場で使いやすいというのが理由である[1]。皿のデザインは、いくつかの候補を用意し、時代のトレンドやモニターの意見、サイズや使いやすさを踏まえ[9]、皿の製作を手掛けるアルク社とヤマザキが協議して決定している[1]。
皿は陶器ではなく、強化ガラスでできており、軽度の衝撃で割れることがなく、電子レンジで使用することも可能である[3][8]。
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文化
開催回数を重ねるにつれ、ヤマザキ春のパンまつりのファンも世代から世代へ継承され、一種の「国民的祭り」になっている[2]。加藤直美の『コンビニ食と脳科学』では「春のパン祭」が2月の日本の一般的な歳時・行事の1つとして記され、季節感のするイベントに含んでいる[23]。ヤマザキ春のパンまつりに続き、敷島製パンでも1989年(平成元年)春から全員プレゼントキャンペーンを実施しており、そのほかの製パン業者やコンビニエンスストアにもプレゼントキャンペーンが拡大している[2]。
インターネット上では、東映まんがまつり・花王ヘアケア祭りと並び「日本三大祭り」に挙げられている[2][3][8]。「日本三大祭り」と言われ始めた正確な時期は不明ながら、インターネット普及以前のパソコン通信時代からジョークとして使われてきた[8]。
ニュースサイトなどでは、効率的なポイントの集め方[24]、ヤマザキ春のパンまつりを題材としたアンケートの結果[25]や法律にまつわる話題を特集すること[26]がある。2015年(平成27年)には『ヤンキー春のパンまつり』というスマートフォン向けのゲームが登場した[27]。
シール窃盗問題
ヤマザキの商品を取り扱っている店舗では、点数シールだけを窃盗され商品は棚に戻される、という被害が発生している[28][29][30]。シールがはがされる際にパッケージが破損するケースも多いという[28][30]。シールがはがされた商品に対して店舗側は、ヤマザキから送られた予備のシールを貼付して再び棚に陳列・販売したり、シール付きの商品に代えたりし、なるべく廃棄にならないようにしているという[29][30]。シールを窃盗する者は商品棚の前でシールをはがすのではなく、1度買い物かごに入れ棚に戻すという手口であるため店員は発見しにくく、多数の商品の中から1つや2つシールが盗まれても気付きにくいという問題がある[30]。
2018年(平成30年)には、Twitter上で小売店の店員を名乗るユーザーの告発ツイートが多くのリツイートを集め注目された[28][29][30]。
上記小売店での点数シール盗難防止のためか、商品によってはパッケージの外装フィルムに点数部分を印刷したものも実施期間中に販売されていた。この場合、パッケージに印刷された点数部分をはさみで切り抜き、台紙にセロハンテープなどで貼る手間がかかる。
類似キャンペーン
ヤマザキグループ
同様の点数シール添付対象商品を集めてプレゼントされるキャンペーンとして、「夏・秋のおいしいキャンペーン」があり、こちらはオフィシャルスポンサーとして協賛している東京ディズニーリゾートの入場年間パスポートやヤマザキパングループの菓子ブランド各社(ヤマザキビスケット[注 2]、不二家、東ハト、および地域限定の末広製菓、秋田いなふく米菓)の商品詰め合わせなどが贈呈される。こちらは、応募用紙にはがき郵送代分の切手(2022年8月現在63円)を添付するか、なければ市販の日本郵便はがき・切手を貼付した私製はがきを利用して宛先に投函(キャンペーン商品の応募シール最終添付製造日の概ね1週間後が最終締め切り)して、抽選により贈呈される。
同業他社
同じ製パン業のPasco(敷島製パン)とフジパンは調理器具(ホットクック、トースター、プレート)のキャンペーンを春、もしくは秋に行っている。Pascoは過去にトートバッグやシリコン鍋、フジパンも1994年秋からトートバッグをプレゼントしており、95年秋から現在まではミッフィーとコラボ商品が応募者全員にもらえる。
脚注
注釈
出典
- ^ a b c d e f 菅森健吾 (2015年3月15日). “ヤマザキに直撃! 「春のパンまつり」が「春」なワケ”. suumoジャーナル. Livedoor ニュース. 2015年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年6月30日閲覧。
- ^ a b c d e f g h 福光 2013, p. 47.
- ^ a b c d e f g 若松真平 (2015年3月15日). “ヤマザキ「春のパン祭り」仏でも有名? 毎年1400万枚の皿を発注”. withnews. 朝日新聞社. 2016年2月24日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月18日閲覧。
- ^ a b “山崎製パン@春のパンまつり@yamazakipan_cpのツイート(2020年2月1日作成)”. 2020年2月1日閲覧。
- ^ a b “〜新しいお皿で、うれしい春を。〜ヤマザキ 春のパンまつり「白いモーニングディッシュ」プレゼント”. ヤマザキ. 山崎製パン (2015年1月19日). 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ a b あおきめぐみ (2015年1月20日). “ヤマザキ春のパンまつり、2/1スタート 今年のお皿は「白いモーニングディッシュ」”. はてなニュース. はてな. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ a b c “『春のパンまつり』に「引き換えに必要な点数が上がってる」「運営が厳しいのかな…」と心配の声、本社が明かした“法律上の事情”(1/2ページ)”. 週刊女性PRIME. 主婦と生活社 (2023年4月1日). 2023年4月2日閲覧。
- ^ a b c d e 大和哲 (2011年6月13日). “春のパン祭りの白いお皿、実は結構すごい皿。”. ケータイ Watch. Impress Watch. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2021年2月18日閲覧。
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- ^ “デイリーヤマザキ、グループ連携でPB強化 新型店で加盟促進”. 日本食糧新聞 (2013年9月25日). 2020年2月1日閲覧。
- ^ “「パンとは一体どんな概念なのか」 ヤマザキ春のパンまつり、実はおにぎりやパスタも対象だった”. キャリコネニュース(2018年4月20日作成). 2020年2月1日閲覧。
- ^ “その他対象商品”. 山崎製パン(2020年2月1日作成). 2020年2月1日閲覧。
- ^ a b c d e f g “春のパンまつりヒストリー”. 山崎製パン. 2019年10月21日閲覧。
- ^ a b 「山崎製パン、35周年キャンペーン プレゼントなど、健康食パン前面に」日経産業新聞1983年2月17日付、15ページ
- ^ a b 「パン需要喚起に懸命 各社の競争、さらに激化」日本経済新聞1985年6月7日付、朝刊13ページ
- ^ a b "普通食パン 敷島に「超熟」効果"日経流通新聞1999年4月3日付、6ページ
- ^ 夢野うさぎ (2011年3月20日). “「ヤマザキ春のパンまつり」休止のお知らせ/「夏のパンまつり」開催の可能性は!?”. pouch. SOCIO CORPORATION. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ “業界初「ヤマザキ春のパンまつり2013」で使える点数シール3点分つき!「ヤマザキパン」公式レシピ本発売”. 主婦の友社 (2013年). 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ 新刊JP編集部 (2013年2月1日). “「春のパンまつり」開幕に合わせ公式レシピ本登場”. Business Journal. サイゾー. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
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- ^ “山崎製パン”. 山崎製パン. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月2日閲覧。
- ^ “ヤマザキ 春のパンまつり「白いフレンチボウル」プレゼント〜おいしい春を、のせましょう。〜”. 山崎製パン (2014年1月16日). 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月2日閲覧。
- ^ 加藤 2009, pp. 168–171.
- ^ ひにしあい (2015年3月2日). “ヤマザキ春のパン祭り徹底攻略!一番効率的に白いお皿を貰えるパンを調べてきた”. Excite Bit コネタ. エキサイト. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ 石川海老蔵 (2014年8月26日). “国民的行事「ヤマザキ春のパンまつり」に祝祭性を見出せない国民が56.7%と判明”. しらべぇ. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ “食器がもらえる「春のパン祭り」 パンを買わずに「応募シール」を持ち去ったら犯罪?”. 弁護士ドットコムニュース. 弁護士ドットコム (2015年2月8日). 2015年7月8日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月8日閲覧。
- ^ ドン小坂 (2015年5月20日). “スマホゲー『ヤンキー春のパンまつり』配信で、ヤマザキ春のパンまつりを思い出した”. 週刊アスキー. KADOKAWA. 2015年7月1日時点のオリジナルよりアーカイブ。2015年7月1日閲覧。
- ^ a b c gyouza(まぐまぐ編集部) (2018年2月4日). “ヤマザキ春のパンまつりに水をさす、点数シール盗難の現状が酷い”. MAG2NEWS. 2018年2月13日閲覧。
- ^ a b c キャリコネ編集部 (2018年2月5日). “ヤマザキ「春のパンまつり」で点数シールの盗難が問題に 小売店は困惑「商品の袋が破けていることもある」”. キャリコネニュース. 2018年2月13日閲覧。
- ^ a b c d e “ヤマザキ「春のパンまつり」でシール盗難 販売店「はがれた商品には余分にシールもらい対応」”. J-CASTニュース. ジェイ・キャスト (2018年2月9日). 2018年2月13日閲覧。
参考文献
- 加藤直美『コンビニ食と脳科学 : 「おいしい」と感じる秘密』祥伝社〈祥伝社新書, 170〉、2009年8月25日。ISBN 978-4-396-11170-0。
- 福光恵「あなたのうちにも1枚ある? なぜ春にパンまつりか」『AERA』第26巻17号(2013年4月15日号)、朝日新聞出版、2013年4月8日、ISSN 09148833。
関連項目
- 松たか子 - 1998年(平成10年)から本キャンペーンのCMに出演。
- 曽田茉莉江 - CM出演
- 小杉保夫 - CMソング作曲者。小杉本人が歌っているバージョンもある。
- ヴィ・ド・フランス - 『ヤマザキ春のパンまつり』とは別に、同じ白い皿をもらえるキャンペーンを行っている山崎製パンの子会社。
外部リンク