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褐藻

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褐藻綱
オオウキモ (Giant Kelp)
分類
ドメイン : 真核生物 Eukaryota
階級なし : ディアフォレティケス Diaphoretickes
階級なし : SARスーパーグループ Sar
階級なし : ストラメノパイル Stramenopiles
階級なし : Gyrista
階級なし : オクロ植物 Heterokontophyta
階級なし : Chrysista
: 褐藻綱 Phaeophyceae
学名
Phaeophyceae Hansgirg, 1886
和名
褐藻綱
英名
Brown algae
  • 本文参照

褐藻(かっそう、英語: Brown algae学名:Phaeophyceae)は、藻類の一群で、褐色を呈しているのが特徴である。海藻として知られる海産の多細胞藻類を中心とする生物群で、極めて大型になるが含まれる。

形態

褐藻の大きさや形態は様々である。最も小さいものでは、糸状の細胞が微細な柔らかい房状に並んだ、体長数センチメートル以下の体を持つ種も知られる[1]。いくつかの種では、生活環のある段階において、数個の細胞のみから成る微視的な体を持つ。 これより遥かに巨大な藻体を持つグループも知られる。 Ascophyllumやケルプはその生育地において最も人目を引く藻である [2]。ケルプでは長さが2フィートのPostelsiaから、現在知られている藻類の中で最大である45メートルを超えるMacrocystis pyriferaまで様々なサイズの藻が知られる[3][4]。 形態に関しては、小さなかさぶた状のものやクッション状のものから[5]ホンダワラのように浮遊性の葉状の体を持つもの、 シオミドロのように繊細なフェルト状の細胞の連鎖からなるもの、ウミウチワのように30センチメートルほどの長さの枝が集まって扇状の藻体を作っている例まで見られる。

こうしたサイズや形態の多様性にもかかわらず、褐藻は他の藻類とは二つの明白な特徴で区別できる。

第1に、 このグループの藻はオリーブグリーンから褐色までの範囲の特徴的な色を呈している[6] 。褐藻の藻体が褐色を呈するのは、光合成色素としてクロロフィルの他にフコキサンチンを持つことによる[7]。フコキサンチンは熱に対して不安定であり、天然では褐色のワカメが食卓では緑色を呈しているのは湯通しによってフコキサンチンが分解されるからである[8]

第2に全ての褐藻は多細胞である。単細胞性あるいは群体性の種は知られていない[6]。 そのような海藻のグループは褐藻のみである。しかし、これは進化の結果というより分類の結果たまたまそうなっているだけなのかも知れない。褐藻と近縁と考えられている他のグループにはいずれも単細胞性あるいは群体性のメンバーが含まれる。

生活環

代表的なコンブ類の生活環。ほとんどの褐藻はこのような形で有性生殖を行なう。

多くのものが単相と複相の2つの世代があって、世代交代のある生活環をもつ。コンブワカメでは複相の体(胞子体)の方がよく発達し、単相の体(配偶体)がごく小さい。しかし、両者にほとんど違いが見られないものや、大きさの関係が逆になっているものもある。ホンダワラ類(アカモク、ウガノモクなど)は複相の体のみで、動物と同じような生活環である。

減数分裂で生じる胞子鞭毛を持つ。配偶子は同型のものもあるが、精子に分化しているものも多い。鞭毛細胞は横に二本の鞭毛を持つ。前向きの一本は羽根型、後ろ向きの一本は鞭型である。

大型種では多年生のものもある。岩の上に固着する根状部のみを残して上が切り落とされ、翌年再びそこから茎を伸ばす。ホンダワラ類では、切り落とされた樹枝状の体がそのまま水面に浮かんだままで、枯れずに残り、長く海面を漂う。これを流れ藻と言い、稚魚のよりどころとなるなど、多くの生物に利用される。

成育環境

ごく一部を除いて海産である。多くは潮下帯以下の、やや深いところに生育する。特に寒冷な地域の海に大型種が多く、その地域での主要な海藻となっている。

系統樹

国際原生生物学会(ISOP)がまとめ、改定を繰り返している系統樹の2020年現在の最新版である2019年のもの[9]には下記の褐藻の系統が記載されている:

人間との関わり

褐藻には多くの食用海藻が含まれる。全ての褐藻は細胞壁アルギン酸を含む。これは化学的に抽出されて安定剤、ゲル化剤乳化剤、食物の増粘剤などに利用される[20]。 利用例の一つとしてリチウムイオン電池が挙げられる [21]。アルギン酸は電池アノードの材料として用いられる。この多糖は褐藻の主要成分であり、そして陸上植物には見られない。

アルギン酸は養殖にも用いられる。たとえばアルギン酸はニジマス免疫力を向上させる。若魚にアルギン酸を加えた飼料を与えると生き残りやすくなる[22]

ケルプを含む褐藻は光合成によって(温暖化ガスである)二酸化炭素を相当量固定している[23]

Sargassum siliquatrumから抽出されるサルガクロマノールGは消炎作用を有することが示されている[24]

人間にとって有害な例としては、カリブ海でホンダワラ類が大量発生して沿岸に漂着し、海浜リゾートの集客に打撃を与えていることが挙げられる[25]

脚注

  1. ^ Connor, J.; Baxter, C. (1989). Kelp Forests. en:Monterey Bay Aquarium. ISBN 1-878244-01-9 
  2. ^ Dittmer, H. J. (1964). Phylogeny and Form in the Plant Kingdom. Princeton, NJ: en:D. Van Nostrand Company. pp. 115?137. ISBN 0-88275-167-0 
  3. ^ Abbott, I. A.; Hollenberg, G. J. (1976). Marine Algae of California. California: en:Stanford University Press. ISBN 0-8047-0867-3 
  4. ^ Cribb, A. B. (1953). “Macrocystis pyrifera (L.) Ag. in Tasmanian waters”. en:Australian Journal of Marine and Freshwater Research 5 (1): 1?34. doi:10.1071/MF9540001. 
  5. ^ Jones, W. E. (1962). “A key to the genera of the British seaweeds”. Field Studies 1 (4): 1-32. http://www.thefsc.org/fieldstudies/documents/vol1.4_23.pdf. 
  6. ^ a b Bold, H. C.; Alexopoulos, C. J.; Delevoryas, T. (1987). Morphology of Plants and Fungi (5th ed.). New York: en:Harper & Row Publishers. pp. 112–131, 174–186. ISBN 0-06-040839-1 
  7. ^ 昆布の加工によるフコキサンチン含有量の変化”. 昆布の栄養機能研究会. 2018年8月5日閲覧。
  8. ^ わかめについて”. 日本わかめ協会. 2018年8月7日閲覧。
  9. ^ a b Adl, Sina M.; Bass, David; Lane, Christopher E.; Lukeš, Julius; Schoch, Conrad L.; Smirnov, Alexey; Agatha, Sabine; Berney, Cedric et al. (2018-09-26). “Revisions to the Classification, Nomenclature, and Diversity of Eukaryotes” (英語). Journal of Eukaryotic Microbiology: jeu.12691. doi:10.1111/jeu.12691. ISSN 1066-5234. PMC PMC6492006. PMID 30257078. https://onlinelibrary.wiley.com/doi/abs/10.1111/jeu.12691. 
  10. ^ a b c d e f g h i j k l m n 真核生物の系譜”. 名古屋大学. 2021年8月11日閲覧。
  11. ^ アステロクラドン目”. 国立科学博物館. 2021年8月11日閲覧。
  12. ^ スキトタムヌス目”. 国立科学博物館. 2021年8月1日閲覧。
  13. ^ モズク増殖試験”. 青森産技. 2021年8月11日閲覧。
  14. ^ 生物 / 真核生物 / ストラメノパイラ / 不等毛植物門 / 褐藻綱”. SINGEN. 2021年8月11日閲覧。
  15. ^ スキトタムヌス目”. 日本の海藻. 国立科学博物館. 2021年8月11日閲覧。
  16. ^ a b クロガシラ目”. 国立科学博物館. 2021年8月11日閲覧。
  17. ^ ウスバオオギ目”. 国立科学博物館. 2021年8月11日閲覧。
  18. ^ a b c d 生物 / 真核生物 / ストラメノパイラ / 不等毛植物門 / 褐藻綱 / チロプテリス目”. SHINGEN. 2021年8月11日閲覧。
  19. ^ 生物 / 真核生物 / ストラメノパイラ / 不等毛植物門 / 褐藻綱 / コンブ目”. SHINGEN. 2021年8月11日閲覧。
  20. ^ Alginic acid”. www.fao.org. 2018年10月4日閲覧。
  21. ^ Kovalenko, Igor; Zdyrko, Bogdan; Magasinski, Alexandre; Hertzberg, Benjamin; Milicev, Zoran; Burtovyy, Ruslan; Luzinov, Igor; Yushin, Gleb (2011-01-01). “A Major Constituent of Brown Algae for Use in High-Capacity Li-Ion Batteries”. Science 334 (6052): 75?79. Bibcode2011Sci...334...75K. doi:10.1126/science.1209150. JSTOR 23059304. 
  22. ^ Gioacchini, Giorgia; Lombardo, Francesco; Avella, Matteo Alessandro; Olivotto, Ike; Carnevali, Oliana (2010-04-01). “Welfare improvement using alginic acid in rainbow trout (Oncorhynchus mykiss) juveniles”. Chemistry and Ecology 26 (2): 111?121. doi:10.1080/02757541003627738. ISSN 0275-7540. https://doi.org/10.1080/02757541003627738. 
  23. ^ Vasquez, Julio A.; Zuniga, Sergio; Tala, Fadia; Piaget, Nicole; Rodriguez, Deni C.; Vega, J. M. Alonso (2014-04-01). “Economic valuation of kelp forests in northern Chile: values of goods and services of the ecosystem” (英語). Journal of Applied Phycology 26 (2): 1081?1088. doi:10.1007/s10811-013-0173-6. ISSN 0921-8971. https://link.springer.com/article/10.1007/s10811-013-0173-6. 
  24. ^ Yoon, Weon-Jong; Heo, Soo-Jin; Han, Sang-Chul; Lee, Hye-Ja; Kang, Gyeoung-Jin; Kang, Hee-Kyoung; Hyun, Jin-Won; Koh, Young-Sang et al. (2012-08-01). “Anti-inflammatory effect of sargachromanol G isolated from Sargassum siliquastrum in RAW 264.7 cells” (英語). Archives of Pharmacal Research 35 (8): 1421?1430. doi:10.1007/s12272-012-0812-5. ISSN 0253-6269. https://link.springer.com/article/10.1007/s12272-012-0812-5. 
  25. ^ 屈指のビーチ真っ黒…「もう商売にならない」カリブの海藻 メキシコ襲来/かさむ清掃費 観光に打撃『日経MJ』2019年6月14日(アジア・グローバル面)。