SN 386
SN 386は、386年に中国の天文学者が「客星」と表現した、いて座の方角で見られた過渡的な天文現象である[1]。
超新星残骸 SNR G11.2-0.3
SN 386は一般的に4'の円形の殻を持つ超新星残骸SNR G11.2-0.3と関連があると考えられてきたが[2]、現在ではこの説は真実ではないと見做されている[3][4]。II型超新星の残骸だとみられ、最近の研究でさらに正確に、核が崩壊するタイプのcIIb/Ibc型とされた[3]。
残骸殻の平均拡大速度は、毎年0.0277±0.0180%で、真の直径は約30パーセクであり、年齢は1900±500年と推定されている。地球からの距離は約4,900パーセクと推定されているが、最近の電波観測によると、4,400-7,000パーセクの間という結果であった[3]。
SN 386とSNR G11.2-0.3の関連が否定されたのは、この超新星残骸と地球の間の非常に大きな光の吸収のためであり、赤外線の観測では16等級と推定される。これにより、この恒星は肉眼では見えなかったことが示唆される[3]。
パルサー PSR J1811-1926
SNR G11.2-0.3の中心には高速で自転する中性子星が電波の周波数で観測され、パルサーPSR J1811-1926またはX線源AX J1811-1926とされる。さらに、10-15の小さなパルサー星雲を作り出している[3][5]。このパルサーとその周りのデブリ場は、チャンドラによって観測され、SN 386が中国で観測されたのとほぼ同時期に形成された可能性が示唆されたが[6]、より最近のPSR J1811-1926の回転速度、スピンダウン速度の測定、電波による観測では、より古い2万年前から2万3000年前に形成されたことが示された。これが真実であれば、このパルサーがSN 386と関連しているという結論は明らかに間違っていることになる[3]。このそれぞれの年齢の矛盾は、未だ解決されていない。
パルサーまでの距離は、2003年に約5000パーセクと推定された[7]。
出典
- ^ Clark, D. H.; Stephenson, F. R. (1976). “Which Historical New Stars were Supernovae?” (PDF). Q. J. R. Astron. Soc. 17: 290. Bibcode: 1976QJRAS..17..290C. "The position of the star AD 386 corresponds very well with that of the SNR G11.2-0.3, and this leads us to make the tentative suggestion that this source is the remnant of the star."
- ^ "SNR G11.2-0.3". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2016年5月23日閲覧。
- ^ a b c d e f Borkowski, K. J.; Reynolds, S. P.; Roberts, M.S.E. (2016). “G11.2-0.3: the young remnant of a stripped-envelope supernova”. Astrophysical Journal 819: 160. arXiv:1602.03531. Bibcode: 2016ApJ...819..160B. doi:10.3847/0004-637X/819/2/160.
- ^ Kaspi, V. M.; Roberts, M. E.; Vasisht, G.; Gotthelf, E. V.; Pivovaroff, M.; Kaawai, N. (10 October 2001). “Chandra X-Ray Observations of G11.2-0.3: Implications for Pulsar Ages”. The Astrophysical Journal 560: 372. arXiv:astro-ph/0107292. Bibcode: 2001ApJ...560..371K. doi:10.1086/322515.
- ^ Roberts, Mallory (April 2002). G11.2-0.3 the Remnant of SN 386 AD: Is it too good to be true?. Albuquerque, New Mexico: American Physical Society/American Astronomical Society.
- ^ NASA/CXC/Eureka Scientific/M.Roberts et al, A Textbook Supernova Remnant
- ^ “SIMBAD Astronomical Database”. Results for PSR J1811-1926. 2016年5月23日閲覧。